特許第6984557号(P6984557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6984557-シートベルト制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984557
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】シートベルト制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/48 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B60R22/48 105
   B60R22/48 102
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-135170(P2018-135170)
(22)【出願日】2018年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-11614(P2020-11614A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2020年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】澤井 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−045182(JP,A)
【文献】 特開2008−179321(JP,A)
【文献】 特開2007−131113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席乗員を座席に拘束するためのシートベルトと、
前記シートベルトを巻き取るためのスプールと、
前記シートベルトが引き出されたときに、前記スプールをベルト巻き取り方向に回転させる力を前記スプールに対して付与する弾性部材と、
正転及び逆転することが可能なモータと、
前記モータを正転させたときに、前記スプールを前記ベルト巻き取り方向に回転させると共に、前記モータを逆転させたときに、前記スプールと前記モータとの接続を遮断させるように構成された動力伝達機構と、
を備えるシートベルト装置を制御するためのシートベルト制御装置であって、
前記座席乗員に対する前記シートベルトの密着度を変化させることで前記座席乗員に対して前記シートベルトによる体感警報を行う体感警報制御部を備え、
前記体感警報制御部は、
前記モータを正転させたときに前記モータに流れる電流値に基づいて前記モータを正転させる時間を制御し、前記シートベルトの密着度を所定の初期ベルト密着度に制御するフィッティング動作を実施するフィッティング動作実施部と、
前記シートベルトの密着度が前記初期ベルト密着度から段階的に高まるように、前記モータを正転させる正転動作と、前記モータの端子間を短絡させて前記モータをショートブレーキ状態とするブレーキ動作又は前記モータを逆転させる逆転動作の少なくとも一方の動作と、を繰り返す体感警報動作を実施する体感警報動作実施部と、
を備え、
前記体感警報動作を実施する前に、前記フィッティング動作を実施するように構成される、
シートベルト制御装置。
【請求項2】
前記体感警報制御部は、
前記モータを逆転させて前記スプールと前記モータとの接続を遮断させるリリース動作を実施するリリース動作実施部をさらに備え、
前記体感警報動作を実施した後に、前記リリース動作を実施するように構成される、
請求項1に記載のシートベルト制御装置。
【請求項3】
前記フィッティング動作実施部は、
前記モータを正転させる時間を、前記電流値が所定のフィッティング電流値に達するまでの時間とする、
請求項1又は請求項2に記載のシートベルト制御装置。
【請求項4】
前記体感警報動作実施部は、
前記モータに印可する電圧を所定の第1時間だけ所定の第1警報電圧に制御して前記モータを正転させる前記正転動作と、所定のブレーキ動作時間だけ前記モータの端子間を短絡させて前記モータをショートブレーキ状態とする前記ブレーキ動作と、を前記正転動作、前記ブレーキ動作の順で連続して実施すると共に、これらの一連の動作を複数回繰り返す、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のシートベルト制御装置。
【請求項5】
前記体感警報動作実施部は、
前記モータに印可する電圧を所定の第1時間だけ所定の第1警報電圧に制御して前記モータを正転させる前記正転動作と、所定のブレーキ動作時間だけ前記モータの端子間を短絡させて前記モータをショートブレーキ状態とする前記ブレーキ動作と、前記モータに印可する電圧を所定の第2時間だけ所定の第2警報電圧に制御して前記モータを逆転させる前記逆転動作と、を前記正転動作、前記ブレーキ動作、前記逆転動作、前記ブレーキ動作の順で連続して実施すると共に、これらの一連の動作を複数回繰り返す、
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のシートベルト制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートベルト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のシートベルト制御装置として、車両の座席乗員を拘束するためのシートベルト(ウエビング)に作用する張力を増減させる動作を複数回繰り返すことで、すなわちシートベルトの巻き取り動作と引き出し動作とを交互に繰り返すことで、座席乗員に対してシートベルトによる体感警報を行うことができるように構成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−022400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来のシートベルト制御装置は、体感警報初期のシートベルトの巻き取り動作によるベルト巻き取り量が、体感警報後期のシートベルトの巻き取り動作によるベルト巻き取り量よりも大きくなるように構成されていた。
【0005】
座席乗員に対するシートベルトの密着度(以下「ベルト密着度」という。)は、座席乗員の姿勢や服装などによって変化する。したがって、体感警報前のベルト密着度が高かった場合には、前述した従来のシートベルト制御装置のように体感警報初期のベルト巻き取り量を相対的に大きくすると、体感警報初期において座席乗員を過度に締め付けるおそれがある。一方でベルト密着度が低かった場合には、前述した従来のシートベルト制御装置のように体感警報初期のベルト巻き取り量を相対的に大きくしたとしても、シートベルトによって座席乗員を十分に締め付けることができず、シートベルトによる体感警報の効力が低下するおそれがある。
【0006】
このように、前述した従来のシートベルト制御装置では、座席乗員に対してシートベルトによる適切な体感警報が実施できなくなる場合がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、座席乗員に対してシートベルトによる適切な体感警報が実施できなくなるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、座席乗員を座席に拘束するためのシートベルトと、シートベルトを巻き取るためのスプールと、シートベルトが引き出されたときに、スプールをベルト巻き取り方向に回転させる力をスプールに対して付与する弾性部材と、正転及び逆転することが可能なモータと、モータを正転させたときに、スプールをベルト巻き取り方向に回転させると共に、モータを逆転させたときに、スプールと前記モータとの接続を遮断させるように構成された動力伝達機構と、を備えるシートベルト装置を制御するためのシートベルト制御装置が、座席乗員に対するシートベルトの密着度を変化させることで座席乗員に対してシートベルトによる体感警報を行う体感警報制御部を備える。体感警報制御部は、モータを正転させたときにモータに流れる電流値に基づいてモータを正転させる時間を制御し、シートベルトの密着度を所定の初期ベルト密着度に制御するフィッティング動作を実施するフィッティング動作実施部と、シートベルトの密着度が初期ベルト密着度から段階的に高まるように、モータを正転させる正転動作と、モータの端子間を短絡させてモータをショートブレーキ状態とするブレーキ動作又はモータを逆転させる逆転動作の少なくとも一方の動作と、を繰り返す体感警報動作を実施する体感警報動作実施部と、を備え、体感警報動作を実施する前にフィッティング動作を実施するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のこの態様によれば、座席乗員に対してシートベルトによる適切な体感警報が実施できなくなるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態によるシートベルト装置、及びシートベルト装置を制御するための電子制御ユニットの概略構成図である。
図2図2は、ベルト装着時にモータ印可電圧を或る一定の電圧(正電圧)に制御したときの、モータ電流値とベルト密着度との関係を示した図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態による体感警報制御の動作について説明するタイムチャートである。
図4図4は、本発明の第2実施形態による体感警報制御の動作について説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるシートベルト装置100、及びシートベルト装置100を制御するための電子制御ユニット200の概略構成図である。
【0013】
シートベルト装置100は、例えば車両などの移動体の座席に取り付けられて、座席乗員を座席に拘束するための装置である。本実施形態によるシートベルト装置100は、シートベルト1と、スプール2と、渦巻きバネ3と、動力伝達機構4と、モータ5と、電圧調整回路6と、バッテリ7と、電流センサ8と、を備える。
【0014】
シートベルト1は、座席乗員を座席に拘束するための帯状のベルトである。
【0015】
スプール2は、スプール回転軸21と、スプール回転軸21に固定されてスプール回転軸21と一体となって回転する円筒状のベルト巻き取り部22と、を備え、シートベルト1をベルト巻き取り部22の外周面に層状に巻き取って収納するための部材である。シートベルト1の基端部は、ベルト巻き取り部22の外周面に固定されており、スプール回転軸21を一方向(巻き取り方向)に回転させることで、シートベルト1がその基端側からベルト巻き取り部22に巻き取られる。一方で、シートベルト1をその先端側から引っ張ることで、スプール回転軸21が反対方向(引き出し方向)に回転してベルト巻き取り部22に巻き取られたシートベルト1が引き出される。
【0016】
渦巻きバネ3は、スプール回転軸21の一端部(図中左側)に取り付けられる。渦巻きバネ3は、スプール回転軸21が引き出し方向に回転させられたときに、スプール回転軸21を巻き取り方向に回転させる力をスプール回転軸21に対して付与する。すなわち渦巻きバネ3は、シートベルト1が引き出されたときに、シートベルト1を巻き戻そうとする力を発生させる。渦巻きバネ3がスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させる力は、シートベルト1の引き出し量(以下「ベルト引き出し量」という。)に応じて変化し、ベルト引き出し量が多くなるほど大きくなる。
【0017】
この渦巻きバネ3のバネ力によって、ベルト装着時においては、シートベルト1に対してベルト引き出し量に応じた適度な張力を発生させて、シートベルト1によって座席乗員を座席に拘束することができ、ベルト非装着時(シートベルト1に引き出し方向の力が作用していないとき)においては、シートベルト1をベルト巻き取り部22に巻き取って収納することができる。
【0018】
動力伝達機構4は、スプール回転軸21の他端部(図中右側)と、モータ出力軸51と、に連結される。動力伝達機構4は、その内部にクラッチ41を有しており、モータ5に正電圧を印可してモータ出力軸51を正転させたときにクラッチ41が係合してスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させることができるように構成されると共に、モータ5に負電圧を印可してモータ出力軸51を逆転させたときにクラッチ41が外れるように構成される。クラッチ41が外れることによって、スプール回転軸21とモータ出力軸51との接続が遮断される。
【0019】
モータ5は、後述する体感警報制御を実施するときに駆動されて、動力伝達機構4を介してスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させる。モータ5は、モータ5に印可する電圧(以下「モータ印可電圧」という。)を調整するための電圧調整回路6を介してバッテリ7に接続される。モータ印可電圧は、電子制御ユニット200によって電圧調整回路6を制御することで任意の電圧に制御される。
【0020】
本実施形態では、モータ5としてDCモータを使用しており、モータ負荷が高くなるほど、モータ負荷に比例してモータ5に電圧を印可したときにモータ5に流れる電流の値(以下「モータ電流値」という。)が大きくなる。モータ電流値は、電流センサ8によって検出することができるようになっており、電流センサ8の出力信号は、電子制御ユニット200に入力されるようになっている。
【0021】
モータ負荷は、ベルト装着時において動力伝達機構4のクラッチ41が係合しているときは、ベルト密着度(座席乗員に対するシートベルト1の密着度)に応じて変化する。具体的には、例えばシートベルト1と座席乗員との間に適度な隙間が存在している場合など、ベルト密着度が低い場合は、シートベルト1を巻き取るために必要な力が小さくて済むので、モータ負荷は低くなる。そして、ベルト密着度が徐々に高くなっていき、シートベルト1が座席乗員を圧迫するようになると、ベルト密着度が高くなるにつれてシートベルト1を巻き取るために必要な力が大きくなるので、モータ負荷も高くなる。
【0022】
このように、モータ負荷はベルト密着度と相関関係にあるため、図2に示すように、モータ電流値とベルト密着度との間にも相関関係がある。
【0023】
図2は、ベルト装着時にモータ印可電圧を或る一定の電圧(正電圧)に制御してモータ5を正転させたときの、モータ電流値とベルト密着度との関係を示した図である。図2に示すように、ベルト密着度が高くなるにつれて、モータ負荷が高くなるので、モータ電流値も高くなっていく。
【0024】
したがって、本実施形態によるシートベルト装置100では、モータ5に正電圧を印可してスプール回転軸21を回転させているときのモータ電流値を監視することで、ベルト密着度を推定することができる。
【0025】
図1に戻り、電子制御ユニット200は、双方向性バスによって相互に接続された中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入力ポート、及び出力ポートを備えたマイクロコンピュータである。
【0026】
電子制御ユニット200は、体感警報要求が生じたときに、ベルト密着度を変化させることで、座席乗員に対してシートベルト1による体感警報を行う体感警報制御部201を備える。体感警報要求が生じるタイミングとしては、例えばシートベルト装置100が車両の運転席に取り付けられている場合であれば、加速、操舵、及び制動に関する運転操作を自動的に行って車両を走行させる自動運転モードから手動運転モードへの切り替え要求時が挙げられる。また、ドライバモニタカメラ等によって撮影したドライバの外観情報からドライバが居眠りをしていると判断されたときなど、ドライバの覚醒度を高める必要があるときが挙げられる。
【0027】
ところで、体感警報を行う前のベルト密着度は、座席乗員の姿勢や服装、座席乗員によるベルト装着時のベルト引き出し量などによって変化する。したがって、体感警報を行う前のベルト密着度が高かった場合には、体感警報によってベルト密着度を高めると、座席乗員を過度に締め付けるおそれがある。一方で、ベルト密着度が低かった場合には、体感警報の初期において座席乗員をシートベルト1によって十分に締め付けることができず、体感警報の効力が低下するおそれがある。
【0028】
このように、体感警報を行う前のベルト密着度に応じて、体感警報を実施したときに座席乗員が感じるシートベルト1による締め付け度合いが変化する。換言すれば、体感警報を行う前のベルト密着度に応じて、体感警報を実施したときのシートベルト1による締め付け度合いにバラつきが生じることになり、このようなバラつきは、品質のバラつきと感じられるおそれがある。
【0029】
また、体感警報を行った後は、ベルト密着度が高められて座席乗員をシートベルト1によって締め付けている状態となるため、座席乗員にとっては快適な状態とは言えず、座席乗員自身がベルト引き出し量を調整してベルト密着度を低下させなければならないとすると、非常に煩わしい。したがって体感警報を行った後は、ベルト密着度を、体感警報を行う前の状態に自然に戻るようにすることが望ましい。
【0030】
そこで本実施形態では、実際にベルト密着度を段階的に高めていく体感警報動作を実施する前に、まずベルト密着度を予め設定された所定の初期ベルト密着度に制御するフィッティング動作を実施することにした。そして体感警報動作を実施した後に、高めたベルト密着度を初期ベルト密着度に向けて自然に戻せるようにするためのリリース動作を実施することとした。すなわち本実施形態では、フィッティング動作実施部202と、体感警報動作実施部203と、リリース動作実施部204を、を備えるように、体感警報制御部201を構成した。以下、図3を参照して、この本実施形態による体感警報制御の動作について説明する。
【0031】
図3は、本実施形態による体感警報制御の動作について説明するタイムチャートである。
【0032】
時刻t1で、体感警報要求が生じると、電子制御ユニット200は、まずベルト密着度を予め設定された初期ベルト密着度に制御するフィッティング動作を実施する。
【0033】
具体的には電子制御ユニット200は、前述した通りモータ電流値とベルト密着度との間には相関関係があるため、モータ印可電圧が所定のフィッティング電圧(正電圧)となるように電圧調整回路6を制御し、モータ電流値が初期ベルト密着度に相当する電流値(以下「フィッティング電流値」という。)になるまで、モータ5によってスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させてシートベルト1を巻き取る。すなわち電子制御ユニット200は、モータ5を正転させたときのモータ電流値に基づいてモータ5を正転させる時間を制御して、シートベルト1の密着度を所定の初期ベルト密着度に制御する。
【0034】
時刻t2で、モータ電流値がフィッティング電流値に達すると、電子制御ユニット200はフィッティング動作を終了させる。
【0035】
具体的には電子制御ユニット200は、モータ5の端子間が短絡するように電圧調整回路6を制御してモータ5をショートブレーキ状態とする。これにより、モータ出力軸51を停止させると共に、停止させた後にモータ出力軸51が自由に回転するのを抑制することができるので、ベルト密着度は初期ベルト密着度に維持される。
【0036】
そしてフィッティング動作を終了させてから所定時間経過した後の時刻t3で、電子制御ユニット200は、実際にベルト密着度を段階的に高めていく体感警報動作を実施する。
【0037】
具体的には電子制御ユニット200は、まずモータ印可電圧を時刻t3から所定の第1時間(例えば数十〜数百[ms])だけ所定の第1警報電圧(正電圧)に制御し、モータ5によってスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させてシートベルト1を巻き取る動作を実施する。すなわち、シートベルト1によって第1時間だけ座席乗員を締め付けてベルト密着度を初期ベルト密着度から高める動作を実施する。
【0038】
次に電子制御ユニット200は、モータ印可電圧を第1時間だけ第1警報電圧に制御した後の時刻t4から時刻t5の期間において、高めたベルト密着度を一時的に低下させてシートベルト1による締め付けを一時的に軽減させる動作を実施する。
【0039】
具体的には電子制御ユニット200は、時刻t4から所定のブレーキ動作時間(例えば数十〜数百[ms])だけモータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とし、モータ出力軸51を停止させると共に、停止させた後にモータ出力軸51が自由に回転するのを抑制する。
【0040】
このモータ5をショートブレーキ状態としているブレーキ動作期間の前には、モータ印可電圧を第1警報電圧に制御して初期ベルト密着度の状態からさらにシートベルト1を巻き取っている。そして、ベルト密着度が初期ベルト密着度よりも高くなっている状態というのは、シートベルト1が座席乗員に密着して座席乗員を締め付けている状態であるため、シートベルト1は座席乗員からベルト密着度に応じた反力を受けており、シートベルト1に対してシートベルト1を引き出す方向の力が作用することになる。そのため、この時刻t4以降のブレーキ動作期間においては、シートベルト1に対して、モータ印可電圧を第1警報電圧に制御している期間に巻き取った分だけ引き出そうとする反力が座席乗員から作用する。
【0041】
したがって、この座席乗員から受ける反力によって、シートベルト1が引き出されて動力伝達機構4を介してモータ5が逆転させられることになるが、モータ5がショートブレーキ状態とされているので、モータ5の逆転を抑制しようとする制動力(ショートブレーキ状態による電磁気学的な負荷)が生じることになる。その結果、時刻t4以降は、この座席乗員から受ける反力が、モータ5の逆転を抑制しようとする制動力を下回るまでは、シートベルト1が引き出され、ベルト密着度が初期ベルト密着度に向かって低下することになる。なおこの図3では、この時刻t4から時刻t5までのブレーキ動作期間において、座席乗員から受ける反力が、モータ5の逆転を抑制しようとする制動力を上回っている例を示している。また本実施形態では、このブレーキ動作期間において、ベルト密着度が初期ベルト密着度まで低下することがないように、ブレーキ動作時間を設定している。
【0042】
そして電子制御ユニット200は、ベルト密着度が初期ベルト密着度に低下する前の時刻t5で、再度モータ印可電圧を第1時間だけ第1警報電圧に制御し、この一連の動作、すなわちモータ5を正転させる正転動作と、モータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作と、を交互に繰り返す。本実施形態では、この一連の動作を3回繰り返したもの1回の体感警報動作としてカウントし、計3回の体感警報動作を連続して実施するようにしている。
【0043】
この一連の動作を繰り返すことで、図3に示すように、徐々にベルト密着度を初期ベルト密着度から高めていって、シートベルト1による締め付けを徐々に強めていくことができる。そのため、1回の体感警報動作の中で、段階的に体感警報による緊迫度を高めていくことができるので、メリハリのある体感警報を実施して、体感警報の効果を高めることができる。
【0044】
そして電子制御ユニット200は、体感警報動作を実施した後の時刻t6で、体感警報動作を実施することで高められたベルト密着度を初期ベルト密着度に向けて自然に戻せるようにするためのリリース動作を実施する。
【0045】
具体的には電子制御ユニット200は、モータ印可電圧を所定のリリース時間(例えば500[ms])だけ所定のリリース電圧(負電圧)に制御し、モータ5によってスプール回転軸21を引き出し方向に回転させて、シートベルト1に対してシートベルト1を引き出す方向の力を一時的に作用させると共に、動力伝達機構4のクラッチ41を外してスプール回転軸21とモータ出力軸51との接続を解除する。これにより、モータ5の逆転を抑制しようとする制動力(ショートブレーキ状態による電磁気学的な負荷)が生じなくなるため、モータ5をショートブレーキ状態としていたときと比較して、ベルト密着度の低下速度を早くすることができると共に、シートベルト1が座席乗員から受ける反力によって自然にシートベルト1を引き出すことができ、ベルト密着度を初期ベルト密着度まで低下させることができる。
【0046】
そのため、体感警報動作を実施した後に、座席乗員自身にベルト引き出し量の調整をさせることなく、シートベルト1によって座席乗員を締め付けている状態から適度に締め付けている状態まで戻すことができる。なお図3に示す例では、リリース動作の終了時点と、ベルト密着度が初期ベルト密着度となる時点とが一致している例を示しているが、必ずしもこれらのタイミングは一致するわけではなく、リリース時間は、リリース動作が終了する前に、ベルト密着度が初期ベルト密着度となるように適宜設定すればよいものである。
【0047】
また本実施形態では、リリース動作中はモータ印可電圧を継続してリリース電圧に制御しているが、一旦動力伝達機構4のクラッチ41が外れれば、シートベルト1は座席乗員から受ける反力によって自然に引き出されることになるので、リリース動作開始時にモータ5を逆転させて動力伝達機構4のクラッチ41を外し、それ以降はモータ5に対する電圧の印可を停止するようにしても良い。
【0048】
以上説明した本実施形態によれば、座席乗員を座席に拘束するためのシートベルト1と、シートベルト1を巻き取るためのスプール2と、シートベルト1が引き出されたときに、スプール2をベルト巻き取り方向に回転させる力をスプール2に対して付与する渦巻きバネ3(弾性部材)と、正転及び逆転することが可能なモータ5と、モータ5を正転させたときに、スプール2をベルト巻き取り方向に回転させると共に、モータ5を逆転させたときに、スプール2とモータ5との接続を遮断させるように構成された動力伝達機構4と、を備えるシートベルト装置100を制御するための電子制御ユニット200(シートベルト制御装置)が、座席乗員に対するシートベルト1の密着度を変化させることで座席乗員に対してシートベルトによる体感警報を行う体感警報制御部201を備える。
【0049】
そして体感警報制御部201は、モータ5を正転させたときにモータ5に流れる電流値(モータ電流値)に基づいてモータ5を正転させる時間を制御し、シートベルト1の密着度を所定の初期ベルト密着度に制御するフィッティング動作を実施するフィッティング動作実施部202と、シートベルト1の密着度が初期ベルト密着度から段階的に高まるように、モータ5を正転させる正転動作と、モータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作と、を繰り返す体感警報動作を実施する体感警報動作実施部203と、を備え、体感警報動作を実施する前にフィッティング動作を実施するように構成される。
【0050】
具体的にはフィッティング動作実施部202は、モータ5を正転させる時間を、モータ電流値が所定のフィッティング電流値に達するまでの時間とするように構成されている。
【0051】
また体感警報動作実施部203は、モータ5に印可する電圧を所定の第1時間だけ所定の第1警報電圧に制御してモータ5を正転させる正転動作と、所定のブレーキ動作時間だけモータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作とを、正転動作、ブレーキ動作の順で連続して実施すると共に、これらの一連の動作を複数回繰り返すように構成されている。
【0052】
これにより、フィッティング動作によってベルト密着度を常に一定の初期ベルト密着度に制御してから体感警報動作を実施することができる。そのため、体感警報動作を実施したときに、座席乗員をシートベルト1によって過度に締め付けたり、又は座席乗員をシートベルト1によって十分に締め付けることができずに体感警報の効力が低下したりするのを抑制することができる。
【0053】
また本実施形態によれば、体感警報動作を実施することで、徐々にベルト密着度を高めていって、シートベルト1による締め付けを徐々に強めていくことができる。したがって、段階的に体感警報による緊迫度を高めていくことができるので、メリハリのある体感警報を実施して、体感警報の効果を高めることができる
【0054】
また本実施形態による体感警報制御部201は、モータ5を逆転させてスプール2とモータ5との接続を遮断させるリリース動作を実施するリリース動作実施部204をさらに備え、体感警報動作を実施した後にリリース動作を実施するように構成される。
【0055】
これにより、シートベルト1が座席乗員から受ける反力によってシートベルト1が自然引き出されることになる。そのため、体感警報動作を実施した後に、座席乗員自身にベルト引き出し量の調整をさせることなく、シートベルト1によって座席乗員を締め付けている状態から適度に締め付けている状態(初期ベルト密着度)まで戻すことができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、体感警報動作実施部203の構成が第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0057】
図4は、本実施形態による体感警報制御の動作について説明するタイムチャートである。
【0058】
前述した第1実施形態では、時刻t3で体感警報動作が開始されると、モータ5を正転させる正転動作と、モータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作と、を交互に繰り返すことで、ベルト密着度を段階的に高めていた。
【0059】
これに対して本実施形態では、図4に示すように、体感警報動作時において、モータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作期間の間に、モータ5を逆転させる逆転動作を実施するようにしている。
【0060】
すなわち本実施形態では、時刻t3で体感警報動作が開始されると、電子制御ユニット200は、第1実施形態と同様に、まずモータ印可電圧を時刻t3から所定の第1時間(例えば数十〜数百[ms])だけ所定の第1警報電圧(正電圧)に制御し、モータ5によってスプール回転軸21を巻き取り方向に回転させてシートベルト1を巻き取る動作を実施する。すなわち、シートベルト1によって第1時間だけ座席乗員を締め付ける動作を実施する。
【0061】
次に電子制御ユニット200は、モータ印可電圧を第1時間だけ第1警報電圧に制御した後の時刻t11から、所定のブレーキ動作時間(例えば数十〜数百[ms])だけモータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とし、モータ出力軸51を停止させると共に、停止させた後にモータ出力軸51が自由に回転するのを抑制する。これにより、時刻t11以降は、第1実施形態と同様に、ベルト密着度が初期ベルト密着度に向けて低下していく。
【0062】
このとき本実施形態では、時刻t11から所定のブレーキ動作時間だけ経過した後の時刻t12から、電子制御ユニット200によってモータ印可電圧を所定の第2時間(例えば数十〜数百[ms])だけ所定の第2警報電圧(負電圧)に制御し、モータ5によってスプール回転軸21を引き出し方向に回転させて、シートベルト1に対してシートベルト1を引き出す方向の力を一時的に作用させる。このとき、動力伝達機構4のクラッチ41を外してスプール回転軸21とモータ出力軸51との接続を解除させてもよい。これにより、時刻t11から時刻t12までのブレーキ動作期間よりも、ベルト密着度の低下速度を速めることができる。
【0063】
そして、時刻t12から第2時間だけ経過した後の時刻t13で、再度、所定のブレーキ動作時間(例えば15[ms])だけモータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とし、ベルト密着度の低下速度を遅くする。
【0064】
そして、時刻t13からブレーキ動作時間だけ経過した後の時刻t14から、再度、モータ印可電圧を第1時間だけ第1警報電圧に制御し、この一連の動作、すなわちモータ5を正転させる正転動作、モータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作、モータ5を逆転させる逆転動作、及びモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作を順番に実施する動作を繰り返す。本実施形態では、この一連の動作を3回繰り返したものを1回の体感警報動作としてカウントし、計1回の体感警報動作を実施しているが、第1実施形態と同様に、体感警報動作を複数回(例えば3回)連続して実施するようにしても良い。
【0065】
また本実施形態においても、時刻t11から時刻t14までの期間において、ベルト密着度が初期ベルト密着度まで低下することがないように、1回目のブレーキ動作時間、第2時間、及び2回目のブレーキ動作時間を設定している。
【0066】
このようにすることでも、第1実施形態と同様に、徐々にベルト密着度を高めていって、シートベルト1による締め付けを徐々に強めていくことができる。したがって、段階的に体感警報による緊迫度を高めていくことができるので、メリハリのある体感警報を実施して、体感警報の効果を高めることができる。また、ベルト密着度を高めた後のベルト密着度の低下量(ベルト引き出し量)を第1実施形態と比較して多くすることができるので、一層メリハリのある体感警報を実施することができる。
【0067】
そして電子制御ユニット200は、体感警報動作を実施した後の時刻t15で、第1実施形態予同様に、体感警報動作を実施することで高められたベルト密着度を初期ベルト密着度に向けて自然に戻せるようにするためのリリース動作を実施する。
【0068】
なお本実施形態では、体感警報動作実施部203は、体感警報動作時において、モータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作期間の間に、モータ5を逆転させる逆転動作を実施するようにしていたが、ブレーキ動作は実施せずに、正転動作と逆転動作とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0069】
以上説明した本実施形態による体感警報動作実施部203は、モータ5に印可する電圧を所定の第1時間だけ所定の第1警報電圧に制御してモータ5を正転させる正転動作と、所定のブレーキ動作時間だけモータ5の端子間を短絡させてモータ5をショートブレーキ状態とするブレーキ動作と、モータ5に印可する電圧を所定の第2時間だけ所定の第2警報電圧に制御してモータ5を逆転させる逆転動作と、を正転動作、ブレーキ動作、逆転動作、ブレーキ動作の順で連続して実施すると共に、これらの一連の動作を複数回繰り返すように構成される。
【0070】
これにより、第1実施形態と同様の効果が得られるほか、ベルト密着度を高めた後のベルト密着度の低下量(ベルト引き出し量)を第1実施形態と比較して多くすることができるので、一層メリハリのある体感警報を実施することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0072】
例えば上記の実施形態において、体感警報動作の実施回数は特に限られるものではなく、少なくとも1回以上実施すれば良い。また1回の体感警報動作中の一連の動作の繰り返し回数も特に限られるものではない。
【0073】
また上記の第1実施形態では、3回の体感警報動作における各第1警報電圧を全て同じ電圧値としていたが、異なる電圧値としても良い。例えば2回目の体感警報動作の第1警報電圧を1回目の体感警報動作の第1警報電圧よりも小さくし、さらに3回目の体感警報動作の第1警報電圧を2回目の体感警報動作の第1警報電圧よりも小さくするなど、体感警報動作の回数を重ねるごとに第1警報電圧を小さくしてベルト巻き取り量を徐々に少なくしても良いし、また逆に体感警報動作の回数を重ねるごとに第1警報電圧を大きくしてベルト巻き取り量を徐々に多くしても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 シートベルト
2 スプール
3 渦巻きバネ(弾性部材)
4 動力伝達機構
5 モータ
100 シートベルト装置
200 電子制御ユニット(シートベルト制御装置)
201 体感警報制御部
202 フィッティング動作実施部
203 体感警報動作実施部
204 リリース動作実施部
図1
図2
図3
図4