(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
<粗紡機の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る粗紡機の一部分を省略した概略側面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る粗紡機の他の部分を省略した概略側面図である。また、
図3は、本発明の実施形態に係る粗紡機の一部破断部を含む概略正面図である。なお、
図1〜
図3においては、それぞれ図面の中で線の重なりをできるだけ避けるために、粗紡機の構成を一部省略して示すとともに、構成全体を簡略化して示している。
【0017】
本実施形態の粗紡機は、機台1の長手方向Xと平行に配置されたボビンレール2と、ボビンレール2を昇降させる昇降装置3(
図1参照)と、ボビンレール2を支持する揺動レバー4および揺動レバー4にバランス力を付与する付与機構5を有するバランス装置6と、バランス力を解除するバランス力解除装置7と、昇降装置3および揺動レバー4からボビンレール2を受け取るレール受け装置8と、を備えている。ボビンレール2の上方にはフライヤ20(
図1参照)が配置されている。
【0018】
(ボビンレール)
ボビンレール2は、機台1の長手方向Xに長い長尺状のレールである。ボビンレール2は昇降可能に配設されている。ボビンレール2の上面には複数のボビンホイール2aが設けられている。ボビンホイール2aは、機台1の前後方向に千鳥状に2列に並んで配置されている。各々のボビンホイール2aは、図示しない駆動機構によって回転駆動される。各々のボビンホイール2aは、ボビンを着脱可能に支持するとともに、図示しない駆動機構によりボビンを回転させる。ボビンレール2の底部には凸部9と脚部10が設けられている。凸部9は、ボビンレール2の短手方向の中間部に配置され、脚部10は、凸部9を挟んでボビンレール2の短手方向の両側に配置されている。また、凸部9は、ボビンレール2の長手方向全体に形成されている。
【0019】
(昇降装置)
昇降装置3は、
図1および
図3に示すように、機台1の長手方向Xと平行に配置された駆動軸11と、ボビンレール2を下から受けて支持するレール支持部材12と、駆動軸11の駆動力をレール支持部材12に伝達する動力伝達機構13と、を備えている。
【0020】
駆動軸11は、たとえば、図示しないモータを動力源として正逆方向に回転駆動するものである。駆動軸11は、機台1のフレーム部材14に軸受15によって回転自在に支持されている。機台1のフレーム部材14は、機台1の長手方向Xに所定の間隔で複数配置され、駆動軸11は、複数のフレーム部材14を貫通するように水平に配置されている。
【0021】
レール支持部材12は、
図1に示すように、機台1の長手方向Xから見てL字形に形成されている。レール支持部材12は、水平に配置された支持部16と、垂直に配置されたスライダ部17とを一体に有している。支持部16の上面には、ボビンレール2の脚部10に対応して第1受け部18が設けられている。第1受け部18は、ボビンレール2をレール支持部材12で支持する場合に、ボビンレール2の脚部10に接触する部分となる。スライダ部17は、ガイド部材19によって上下方向に移動自在に支持されている。ガイド部材19は垂直な向きで機台1に固定されている。ガイド部材19には凹状のガイド溝19aが形成され、このガイド溝19aにスライダ部17の凸部(不図示)が嵌合することにより、ガイド部材19に沿ってスライダ部17が移動自在に支持されている。
【0022】
動力伝達機構13は、ピニオン21と、リフターラック22とによって構成されている。ピニオン21は、駆動軸11に同軸に取り付けられ、駆動軸11と一体に回転するものである。ピニオン21はリフターラック22に噛み合っている。リフターラック22は、レール支持部材12のスライダ部17にボルト等によって固定されている。
【0023】
上記構成からなる昇降装置3においては、図示しない動力源により駆動軸11が回転すると、駆動軸11と一体にピニオン21が回転するとともに、ピニオン21に噛み合うリフターラック22が上下方向に移動する。また、リフターラック22が上下方向に移動すると、リフターラック22と一体にレール支持部材12が移動(昇降)する。このため、レール支持部材12の支持部16にボビンレール2を乗せて支持し、その状態で駆動軸11を回転させることにより、駆動軸11の回転方向および回転量に応じてボビンレール2を昇降動作させることができる。具体的には、
図1の時計回り方向に駆動軸11を回転させるとボビンレール2が上昇し、
図1の反時計回り方向に駆動軸11を回転させるとボビンレール2が下降する。このため、昇降装置3の駆動方向に関しては、駆動軸11を
図1の時計回り方向に回転する方向が、ボビンレール2を上昇させる方向に相当し、駆動軸11を
図1の反時計回り方向に回転させる方向が、ボビンレール2を下降させる方向に相当する。
【0024】
(バランス装置)
バランス装置6の構成は、すでに出願人が出願している特開平5−71023号公報に記載のものと基本的に同様である。以下、バランス装置6が有する揺動レバー4および付与機構5の構成について説明する。
【0025】
(揺動レバー)
揺動レバー4は、機台1の長手方向Xで隣り合うフレーム部材14間に1つずつ設けられている。揺動レバー4の数は、必要に応じて変更可能である。揺動レバー4の一端部には受け口23が設けられている。受け口23は、揺動レバー4によってボビンレール2を支持するときに、ボビンレール2の凸部9に接触する部分であって、凹状に形成されている。揺動レバー4の他端部には係合部24が設けられている。係合部24は鍵型に形成されている。係合部24は、ガイドローラ30に係合している。このため、揺動レバー4は、ガイドローラ30と係合部24の係合位置を中心に揺動する。ガイドローラ30は、フレーム部材14に固定された支軸33に回転自在に支持されている。また、揺動レバー4には引っ掛け部4aが形成されている。引っ掛け部4aは、揺動レバー4の前寄りに形成されている。揺動レバー4がボビンレール2を支持する位置と、レール支持部材12がボビンレール2を支持する位置とは、互いに干渉しないように、機台1の長手方向Xに位置をずらして設定されている。
【0026】
(付与機構)
付与機構5は、回転軸25に取り付けられたバランスカム26と、回転軸25に取り付けられたバランスプーリ27と、バランスカム26に一端が固定されたバランスチェーン28と、バランスプーリ27を一方向に付勢する付勢力を発生させる付勢部材としてのバネ29と、を備えている。
【0027】
回転軸25は、機台1の長手方向Xと平行に配置されている。また、回転軸25は、機台1の長手方向Xで隣り合うフレーム部材14間に掛け渡して設けられている。回転軸25の両端部は、それぞれに対応するフレーム部材14に軸受31によって回転自在に支持されている。バランスカム26は、回転軸25と一体に回転するものである。回転軸25の回転中心からバランスカム26のカム面までの距離は、回転軸25の回転中心まわりの円周方向において連続的に変化している。バランスカム26のカム面は、バランスカム26の回転によってバランスチェーン28が巻き取られる面を意味する。
【0028】
バランスプーリ27は、回転軸25の中心軸方向において、バランスカム26と隣り合う位置に配置されている。バランスプーリ27は、回転軸25と同軸に配置され、回転軸25およびバランスカム26と一体に回転するものである。バランスプーリ27にはチェーン32が巻かれている。バランスプーリ27に対するチェーン32の巻き付き方向と、バランスカム26に対するバランスチェーン28の巻き付き方向は、回転軸25の回転中心まわりで互いに反対方向になっている。
【0029】
バランスチェーン28は、バネ29の力を利用してバランスカム26に加えられる回転力を揺動レバー4に伝達するものである。バランスチェーン28の一端28aはバランスカム26に固定され、バランスチェーン28の他端28bは揺動レバー4の引っ掛け部4aに固定されている。
【0030】
バネ29は、バランス力の発生源となるもので、バランスプーリ27の回転方向においてバランスプーリ27を一方向に付勢している。バネ29は引っ張りコイルバネによって構成されている。バネ29の付勢力は、バランスプーリ27に巻かれたチェーン32を斜め下方に引き込む方向に加えられている。バネ29の一端は付勢力調整部37を介してチェーン32に連結されている。バネ29の他端は、スタッド36に固定されている。スタッド36は、たとえば、金属製のピンによって構成されるもので、フレーム部材14の下端部近傍に固定されている。
【0031】
付勢力調整部37は、
図2に示すように、雄ネジを有するネジ棒38と、雌ネジを有するナット部材39と、を備えている。ネジ棒38はチェーン32の一端に連結され、ナット部材39はバネ29の一端に連結されている。また、ナット部材39の雌ネジは、ネジ棒38の雄ネジに螺合している。これにより、ナット部材39を回転させると、ネジ棒38の中心軸方向にナット部材39が移動する。また、ナット部材39が移動すると、バネ29が伸縮する。このため、ナット部材39を回転させることでバネ29の付勢力を調整することができる。
【0032】
上記構成の揺動レバー4および付与機構5を有するバランス装置6においては、付与機構5によって揺動レバー4に上向きのバランス力が付与され、このバランス力によって揺動レバー4の一端(受け口23)側が引き上げられている。また、揺動レバー4の受け口23でボビンレール2の凸部9を受けた状態では、バランス力による引き上げ力が揺動レバー4からボビンレール2に加えられている。このため、昇降装置3によってボビンレール2を昇降動作させるときの負荷を軽減することができる。
【0033】
なお、
図3においては、機台1の長手方向Xでフレーム部材14の両側にバランスプーリ27、付勢力調整部37、バネ29等を配置しているが、これに限らず、たとえば、フレーム部材14の片側だけにそれらの部材を配置してもよい。
【0034】
(バランス力解除装置)
バランス力解除装置7は、付与機構5によって揺動レバー4に付与されるバランス力を解除するためのものである。バランス力解除装置7は、ボビンレール2を下降させる方向に昇降装置3を所定量だけ駆動した場合に、付与機構5によって揺動レバー4に付与されているバランス力を一時的に解除することにより、揺動レバー4をボビンレール2から分離させる。そのための構成として、バランス力解除装置7は、
図1および
図2に示すように、回転軸25に取り付けられた第1プーリ41と、駆動軸11に取り付けられた第2プーリ42と、第1プーリ41と第2プーリ42とを連結する連結部材としてのベルト43と、を備えている。
【0035】
第1プーリ41は、回転軸25に同軸に取り付けられ、回転軸25と一体に回転するものである。第1プーリ41は、機台1の長手方向Xにおいて、バランスカム26やバランスプーリ27とは異なる位置に配置されている。
【0036】
第2プーリ42は、駆動軸11に同軸に取り付けられ、駆動軸11と一体に回転するものである。第2プーリ42は、機台1の長手方向Xにおいて、第1プーリ41と同じ位置に配置されている。第2プーリ42の外径は、第1プーリ41の外径よりも大きく設定されている。
【0037】
ベルト43は、たとえば、非伸縮性の平ベルトを用いて構成されている。ベルト43は第1プーリ41と第2プーリ42にそれぞれ巻かれている。また、ベルト43の一端は第1プーリ41に固定され、ベルト43の他端は第2プーリ42に固定されている。
図4Aおよび
図4Bは、第1プーリ41に対するベルト43の固定構造の一例を示すもので、
図4Aは機台1の長手方向Xから見た図、
図4Bは
図4AのK方向から見た図である。第1プーリ41には係止溝41aが形成されている。係止溝41aは、第1プーリ41の外周面からスリット状に切り込むかたちで形成され、その一部は幅広になっている。これに対して、第1プーリ41の一端はループ状に折り返され、その折り返し部分に係止ピン44が差し込まれている。係止ピン44は、係止溝41aの幅広部分でベルト43のループ部分に差し込まれ、これによってベルト43の一端部が第1プーリ41の係止溝41aから抜けないように固定されている。なお、図示はしないがベルト43の他端も同様の構造によって第2プーリ42に固定されている。
【0038】
また、ベルト43には
図2に示すように当接部材46が当接している。当接部材46は、回転軸25の回転中心を中心に回転移動自在に設けられている。当接部材46は、たとえば金属等のような比重の大きい材料で構成されている。また、当接部材46は押圧ローラ47を有している。押圧ローラ47は、当接部材46の端部に回転自在に設けられている。
図2においては、当接部材46の重心位置が、回転軸25の真下よりも時計回り方向に偏っている。このため、当接部材46には、当接部材46の自重によって反時計回り方向の回転力が加わっている。当接部材46は、この回転力を利用して押圧ローラ47をベルト43に当接し、これによってベルト43の弛みを取り除いている。すなわち、当接部材46は、ベルト43の弛みを抑制する機能を有している。
【0039】
(レール受け装置)
レール受け装置8は、
図2に示すように、移動用の車輪51を有する台車構造になっている。レール受け装置8は、車輪51の回転によって機台1の前後方向(短手方向)に移動可能に設けられている。レール受け装置8は、たとえば図示しない駆動源の駆動によって機台1の前後方向に移動する自走式の台車によって構成されている。レール受け装置8の上面には、ボビンレール2の脚部10に対応して第2受け部52が設けられている。第2受け部52は、ボビンレール2をレール受け装置8で受け取る場合に、ボビンレール2の脚部10に接触する部分となる。また、レール受け装置8の上面には、ボビンレール2の凸部9に対応して逃げ部53が設けられている。逃げ部53は、レール受け装置8の上面に凹状にへこんで形成されている。逃げ部53は、ボビンレール2をレール受け装置8の上に乗せて支持する場合に、ボビンレール2の凸部9との干渉を避けるためのものである。
【0040】
レール受け装置8は、上述したレール支持部材12と同様にボビンレール2を下から受けて支持するものである。レール受け装置8がボビンレール2を支持する位置と、レール支持部材12がボビンレール2を支持する位置とは、互いに干渉しないように、機台1の長手方向Xに位置をずらして設定されている。また、レール受け装置8がボビンレール2を支持する位置と、揺動レバー4がボビンレール2を支持する位置とは、互いに干渉しないように、機台1の長手方向Xに位置をずらして設定されている。
【0041】
<粗紡機の動作>
次に、本発明の実施形態に係る粗紡機の動作について
図5A〜
図5Gを用いて説明する。本実施形態では粗紡機の動作を8つのステップに分けて説明する。
【0042】
(第1ステップ)
まず、
図5Aに示すように、ボビンレール2の上面に空のボビン55を装着した状態で昇降装置3の駆動によりボビンレール2を上昇させる。これにより、ボビン55はフライヤ20の内側に挿入される。昇降装置3の駆動によってボビンレール2を上昇させる場合は、駆動軸11と一体にピニオン21を回転させる。そうすると、
図1において、ピニオン21に噛み合うリフターラック22が上昇するとともに、リフターラック22と一体にレール支持部材12が上昇する。これにより、レール支持部材12の支持部16に乗せられたボビンレール2を、ボビン55と一緒に上昇させることができる。
【0043】
また、昇降装置3の駆動によってボビンレール2を上昇させる場合、揺動レバー4は、バネ29の付勢力に応じたバランス力を受けながら、ボビンレール2の上昇に従って
図5Aの時計回り方向に移動する。
【0044】
(バランス力とモーメントの関係)
ここで、付与機構5によって揺動レバー4に付与されるバランス力と回転軸25に作用するモーメントの関係について説明する。
バランス力は、駆動軸11の回転によってボビンレール2を昇降させるために必要な駆動力を軽減するものである。ボビンレール2の全重量を昇降装置3のレール支持部材12で受けて昇降動作させる場合は、駆動軸11を回転させる動力源に大きな負荷がかかる。このため、揺動レバー4は、ボビンレール2の重量の一部を、付与機構5が付与するバランス力で受けている。このため、バランス力は、ボビンレール2の重量によって揺動レバー4に加わる力とは反対方向、すなわち上向きに付与する必要がある。したがって、付与機構5は、バランスチェーン28を用いて揺動レバー4に上向きのバランス力を付与している。
【0045】
一方、回転軸25には、互いに力の方向が逆方向となる2つのモーメントが作用する。第1のモーメントは、揺動レバー4がバランスチェーン28を下向きに引っ張ることにより、バランスカム26を介して回転軸25に作用するモーメントである。第2のモーメントは、バネ29がチェーン32を下向きに引っ張ることにより、バランスプーリ27を介して回転軸25に作用するモーメントである。
【0046】
ボビンレール2の昇降用の動力源に無理な力が加わることなく、ボビンレール2を円滑に昇降させるためには、回転軸25に作用する第1のモーメントと第2のモーメントのバランスを、ボビンレール2の昇降位置に関係なくほぼ一定に保つ必要がある。ただし、ボビンレール2が昇降すると、ボビンレール2の昇降位置によってバネ29の伸縮量が変化する。また、バネ29の伸縮量が変化すると、それに応じて第2のモーメントが変化する。具体的には、第2のモーメントは、バネ29が最も伸びたときに最大となり、バネ29が最も縮んだときに最小となる。
【0047】
これに対して、第1のモーメントは、揺動レバー4が支持するボビンレール2の重量に依存する。ボビンレール2の重量は、粗糸の巻き取りを開始してから終了するまでほぼ一定である(正確には、ボビン55に巻き取られる粗糸の重量によって多少変化する。)。このため、第1のモーメントがボビンレール2の昇降位置によって変化するように、バランスカム26のカム面が形成されている。具体的には、ボビンレール2の上昇によってバランスカム26が
図2の時計回り方向に回転すると、回転軸25の回転中心からバランスカム26のカム面までの距離の変化に応じて、回転軸25に作用する第1のモーメントが徐々に小さくなるように変化する。これにより、第1のモーメントは、ボビンレール2の上昇にともなってバランスカム26が
図2の時計回り方向に回転すると小さくなる。また、第1のモーメントは、ボビンレール2の下降にともなってバランスカム26が反対方向に回転すると大きくなる。
【0048】
一方、第2のモーメントに関しては、ボビンレール2が上昇すると、それに応じてバネ29が縮み、ボビンレール2が下降すると、それに応じてバネ29が伸びる。このため、第2のモーメントは、ボビンレール2が上昇すると小さくなり、ボビンレール2が下降すると大きくなる。つまり、第1のモーメントと第2のモーメントは、ボビンレール2の昇降動作に応じて互いに同じように増減する。このため、ボビンレール2の昇降動作中は、第1のモーメントと第2のモーメントのバランスを保ちながら、揺動レバー4にほぼ一定のバランス力を付与することができる。したがって、昇降装置3によって揺動レバー4にバランス力を付与することにより、ボビンレール2の昇降用の動力源に無理な力が加わることなく、ボビンレール2を円滑に昇降させることができる。
【0049】
(ベルトの弛み抑制について)
また、上述のようにボビンレール2を上昇させる場合、駆動軸11と回転軸25は、それぞれ、
図5Aの時計回り方向に回転する。このとき、ベルト43は、駆動軸11の回転によって第2プーリ42から送り出される一方、回転軸25の回転によって第1プーリ41に巻き取られる。本実施形態においては、ボビンレール2の上昇にともなって第2プーリ42から送り出されるベルト43の長さが、第1プーリ41に巻き取られるベルト43の長さよりも長くなるように、各プーリの外径などが設定されている。このため、ボビンレール2を上昇させていくと、第1プーリ41と第2プーリ42との間にベルト43の余長が生じる。これに対して、当接部材46は、第1プーリ41と第2プーリ42との間に生じるベルト43の余長分に応じて第1プーリ41のまわりを回転移動する。当接部材46の回転移動は、当接部材46の自重によるものである。これにより、ベルト43には、当接部材46の自重による回転力によって押圧ローラ47が常に当接した状態となる。このため、ベルト43の弛みが抑制される。また、ベルト43には、当接部材46の自重による弱い力しか加わらない。このため、ボビンレール2の昇降用の動力源にほとんど負荷をかけることなく、ベルト43の弛みを抑制することができる。
【0050】
(第2ステップ)
次に、
図5Aに矢印Jで示すように駆動軸11の正逆回転によりボビンレール2を繰り返し昇降動作させるとともに、ボビン55がフライヤ20よりも高速で回転することにより、ボビン55に粗糸(不図示)を巻き取る。また、ボビン55の中心軸方向における粗糸の巻き位置は、駆動軸11の正逆回転によるボビンレール2の昇降動作によって順次変更される。これにより、ボビン55に所定の積層形状で粗糸が巻き取られる。
【0051】
また、上述のように駆動軸11を正逆回転させると、駆動軸11の回転方向に応じてベルト43が第2プーリ42に巻き取られたり、第2プーリ42から送り出されたりする。その際、当接部材46は、第1プーリ41と第2プーリ42との間に生じるベルト43の余長分に応じて第1プーリ41のまわりを双方向に回転移動する。このため、ボビンレール2の昇降動作中もベルト43の弛みが当接部材46によって抑制される。
【0052】
(第3ステップ)
その後、ボビン55への粗糸の巻き取りを終えると、
図5Bに示すように、昇降装置3の駆動によりボビンレール2を下降させる。これにより、粗糸巻き層56を有するボビン(満ボビン)55は、ボビンレール2と共に下降する。また、揺動レバー4は、ボビンレール2の下降に従って揺動する。揺動レバー4の揺動方向は、ボビンレール2を上昇させる場合と反対方向になる。
図5Bの段階では、ボビンレール2が揺動レバー4によって支持されている。また、揺動レバー4には、バランスチェーン28を介してバランス力が付与されている。また、第1プーリ41と第2プーリ42との間には、ベルト43の余長分が僅かに生じている。
【0053】
(第4ステップ)
続いて、
図5Bの状態から駆動軸11を更に回転させることにより、
図5Cに示すように、それまで昇降装置3と揺動レバー4で支持していたボビンレール2をレール受け装置8に受け渡す。この段階で、昇降装置3は、ボビンレール2を下降させる方向に所定量だけ駆動された状態となる。そうすると、昇降装置3のレール支持部材12は、ボビンレール2から分離する。また、揺動レバー4は、バランス力の解除によってボビンレール2から分離する。以下、詳しく説明する。
【0054】
まず、昇降装置3のレール支持部材12は、
図1に示すように、支持部16の第1受け部18でボビンレール2の脚部10を受けながら、駆動軸11の回転に従って下降する。ただし、ボビンレール2の脚部10が、支持部16の第1受け部18からレール受け装置8の第2受け部52に受け渡されると、その後の駆動軸11の回転にともなうレール支持部材12の下降により、支持部16は脚部10から離れて下方に退避する。これにより、レール支持部材12がボビンレール2から分離した状態になる。
【0055】
一方、揺動レバー4は、ボビンレール2の重量をバランス力で受けながら、ボビンレール2の下降に従って揺動する。ただし、そのバランス力は、ボビンレール2の脚部10がレール受け装置8の第2受け部52に受け渡されると、その後の駆動軸11の回転にともなうベルト43の張力により、揺動レバー4に作用しなくなる。その理由は、次のとおりである。
【0056】
まず、上述したように駆動軸11を更に回転させると、駆動軸11と一体に第2プーリ42が回転する。このとき、ベルト43は第2プーリ42に巻き取られ、これによってベルト43に所定の張力が付与される。その際、当接部材46は、ベルト43の張力に押されて
図5Cの時計回り方向に回転移動する。また、駆動軸11の回転によってベルト43が第2プーリ42に巻き取られると、ベルト43を介して第1プーリ41に回転力が加わり、この回転力が回転軸25に第3のモーメントとして作用する。第3のモーメントは、バネ29の付勢力によって回転軸25に作用する第2のモーメントと反対方向に作用する。このため、駆動軸11の回転によってベルト43に強い張力を付与しながら、第1プーリ41と第2プーリ42を回転させると、第1プーリ41と一緒に、回転軸25、バランスカム26およびバランスプーリ27が回転する。そうすると、バランスカム26の回転によってバランスチェーン28が下方に送り出されるとともに、バランスプーリ27の回転によってバネ29が伸ばされる。これにより、バネ29の付勢力を利用して揺動レバー4に付与されていたバランス力は、第1プーリ41と第2プーリ42の間でベルト43の張力によって受けられる。このため、揺動レバー4にバランス力が作用しなくなる。
【0057】
このように、バランス力解除装置7によってバランス力が解除されると、揺動レバー4は、上述のようにバランスカム26の回転によってバランスチェーン28が送り出されたときに、レバー自身の自重によって
図5Cの反時計回り方向に移動する。これにより、揺動レバー4の受け口23がボビンレール2の凸部9から離れて下方に退避する。このため、揺動レバー4がボビンレール2から分離した状態になる。
【0058】
(第5ステップ)
次に、
図5Dに示すように、ボビンレール2を乗せたレール受け装置8を機台1の前方に移動させる。レール受け装置8の移動は、車輪51の回転を利用して行う。このとき、粗糸巻き層56を有するボビン55が装着されたボビンレール2は、レール受け装置8と一緒に機台1の前方に移動する。このため、ボビン55の直上にフライヤ20が存在しなくなる。
【0059】
(第6ステップ)
次に、図示しない自動玉揚げ装置により、粗糸巻き層56を有するボビン55をボビンレール2から取り外した後、
図5Eに示すように、空のボビン55をボビンレール2に取り付ける。すなわち、ボビンレール2に装着されるボビン55を満ボビンから空ボビンに交換する。
【0060】
(第7ステップ)
次に、
図5Fに示すように、レール受け装置8を機台1の後方に向かって移動させる。このとき、空のボビン55が装着されたボビンレール2は、レール受け装置8と一緒に機台1の後方に向かって移動する。これにより、空のボビン55がフライヤ20の直下に配置される。
【0061】
(第8ステップ)
次に、昇降装置3の駆動によってボビンレール2を上昇させることにより、
図5Gに示すように、レール受け装置8よりも高い位置にボビンレール2を持ち上げる。このとき、ボビンレール2の脚部10は、レール受け装置8の第2受け部52からレール支持部材12の第1受け部18に受け渡される。また、昇降装置3の駆動によって駆動軸11を回転させることにより、第2プーリ42からベルト43を送り出す。そうすると、ベルト43の送り出しによって第3のモーメントが小さくなる。そして、第3のモーメントが第2のモーメントよりも小さくなると、回転軸25、バランスカム26およびバランスプーリ27は、それぞれ、バランス力解除時とは反対方向に回転する。これにより、バランスカム26の回転によってバランスチェーン28が引き上げられるとともに、バランスプーリ27の回転によってバネ29が縮められる。このため、バネ29の付勢力を利用して揺動レバー4に再びバランス力が付与された状態になる。また、第1プーリ41と第2プーリ42の間でベルト43の弛みが当接部材46によって抑制された状態になる。
以降は、上記第1ステップ〜第8ステップの動作が繰り返される。
【0062】
<実施形態の効果>
本発明の実施形態においては、付与機構5によってボビンレール2に付与されているバランス力をバランス力解除装置7によって解除することにより、揺動レバー4をボビンレール2から分離するとともに、バランス力の解除に際してレール受け装置8が昇降装置3および揺動レバー4からボビンレール2を受け取る構成になっている。このため、レール受け装置8を機台1の前方に移動させることができる。これにより、フライヤ20に邪魔されることなく、ボビン55を交換することができる。その結果、バランス装置と自動玉揚げ装置を両立させることができる。
【0063】
また、本発明の実施形態においては、昇降装置3の駆動軸11を利用してバランス力解除装置7がバランス力を解除する構成になっている。具体的には、駆動軸11の回転によって第2プーリ42を回転させ、この回転力により第1プーリ41と第2プーリ42の間でベルト43に所定の張力を加えて第1プーリ41を回転させることにより、バランス力を解除する構成を採用している。これにより、新たな動力源を必要とすることなく、昇降装置3の動力源を利用してバランス力を解除することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態においては、第1プーリ41と第2プーリ42とを連結する連結部材をベルト43によって構成している。このため、第1プーリ41や第2プーリ42に対して、連結部材であるベルト43を多層巻きで巻き付けることができるとともに、駆動軸11の回転によってベルト43を緩めたり張ったりするときにベルト43の巻き付き状態を安定的に維持することができる。多層巻きとは、プーリの径方向にベルトを2層以上に重ねて巻くことをいう。
【0065】
また、本発明の実施形態においては、回転軸25の回転中心を中心に回転移動可能な当接部材46がその自重によってベルト43に当接することにより、ベルト43の弛みを抑制する構成を採用している。このため、駆動軸11の回転によってベルト43を緩めたり張ったりするときに、第1プーリ41や第2プーリ42からベルト43が外れることを抑制することができる。
【0066】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0067】
たとえば、上記実施形態においては、当接部材46によってベルト43の弛みを抑制することにより、第1プーリ41や第2プーリ42からベルト43が外れないようにしたが、本発明はこれに限らない。たとえば、
図6に示すように、機台1の長手方向Xでベルト43を両側から挟む位置に一対の規制部材60を配置し、これらの規制部材60によってベルト43の位置ずれを規制する構成を採用してもよい。一対の規制部材60を備えた構成を採用すれば、ベルト43に弛みが生じる場合でも、第1プーリ41や第2プーリ42からベルト43が外れないよう、ベルト43の位置を適切に維持することができる。
【0068】
なお、一対の規制部材60を備えた構成を採用する場合は、駆動軸11の正逆回転によってボビンレール2を昇降動作させている間、昇降装置3の動力源に余分な負荷をかけないよう、ベルト43を常に弛ませた状態に維持するとよい。また、駆動軸11の回転によって上記
図5Bの状態になったときにベルト43の弛みを解消し、上記
図5Bの状態から
図5Cの状態に遷移するときにベルト43に強い張力が加わってバランス力が解除されるようにするとよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、連結部材の一例としてベルト43を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、たとえば、チェーンやワイヤなどによって連結部材を構成してもよい。