特許第6984563号(P6984563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984563
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】運転席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/203 20060101AFI20211213BHJP
   B60R 21/231 20110101ALI20211213BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20211213BHJP
【FI】
   B60R21/203
   B60R21/231
   B60R21/2338
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-153608(P2018-153608)
(22)【出願日】2018年8月17日
(65)【公開番号】特開2020-26253(P2020-26253A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2020年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅美
(72)【発明者】
【氏名】石黒 直彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−122844(JP,A)
【文献】 特開平07−156733(JP,A)
【文献】 特開2016−043840(JP,A)
【文献】 実開平05−072603(JP,U)
【文献】 特開2013−193492(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0355341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵用のハンドルの中央部に、折り畳まれたエアバッグを収納する構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備え、
前記エアバッグの膨張時における前記ハンドル側部に、前記ハンドル中央部の前面側と対向するように、下方側に延びて、前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保し、前記運転者側部の傾きを抑制する支持膨張部、が配設されている運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
前記ハンドル中央部の前面側への当接時における前記支持膨張部の反力を強めるための反力拡大手段を、配設させて構成されるとともに、
前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に前記支持膨張部の前面側と前記ハンドル側部の前縁側との間にスペースを配設させる構成として
前記反力拡大手段が、膨張完了時の前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル側部における前記支持膨張部より前方側の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との当接時に閉塞され、閉塞前に膨張用ガスを排気可能として、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との相互の当接部位の少なくとも一方に配設されるベントホール、としていることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ベントホールが、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との境界部位に、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側とに跨って配設されていることを特徴とする請求項1に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項3】
車両の操舵用のハンドルの中央部に、折り畳まれたエアバッグを収納する構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備え、
前記エアバッグの膨張時における前記ハンドル側部に、前記ハンドル中央部の前面側と対向するように、下方側に延びて、前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保し、前記運転者側部の傾きを抑制する支持膨張部、が配設されている運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
前記ハンドル中央部の前面側への当接時における前記支持膨張部の反力を強めるための反力拡大手段を、配設させて構成されるとともに、
前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部と前記ハンドル中央部の前面側との間にスペースを配設させる構成として
前記反力拡大手段が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部を前記ハンドル中央部の前面側に押圧可能に、前記支持膨張部を前記ハンドル側部における前記支持膨張部より後方側の後方側部位に結合させて配設される結合部、としていることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項4】
車両の操舵用のハンドルの中央部に、折り畳まれたエアバッグを収納する構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備え、
前記エアバッグの膨張時における前記ハンドル側部に、前記ハンドル中央部の前面側と対向するように、下方側に延びて、前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保し、前記運転者側部の傾きを抑制する支持膨張部、が配設されている運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
前記ハンドル中央部の前面側への当接時における前記支持膨張部の反力を強めるための反力拡大手段を、配設させて構成されるとともに、
前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に前記支持膨張部の前面側と前記ハンドル側部の前縁側との間に、スペースを配設させる構成として
前記反力拡大手段が、前記支持膨張部内に配設されて、前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスの前記支持膨張部側への流入を許容し、逆流を抑制する逆止弁、としていることを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵用のハンドルに搭載する運転席用エアバッグ装置に関し、特に、ハンドルの中央部からの長さ寸法として、左右両側に向かう長さ寸法より、前後両側の少なくとも前部側に向かう長さ寸法を短くした形状のハンドル(異形ハンドル)に対応可能なエアバッグを備えた運転席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転席用エアバッグ装置としては、運転者を保護するためのエアバッグが、異形ハンドルの中央部に折り畳んで収納する構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグでは、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えていた。さらに、エアバッグの膨張時におけるハンドル側部には、異形ハンドルの中央部の前面側と対向するように、下方側に延びて、エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、ハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保し、運転者側部の傾きを抑制する支持膨張部が、配設されていた。エアバッグは、この支持膨張部によって、エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、運転者側部の前部側の下方への落ち込みを防止されて、傾きを抑制された運転者側部により、運転者を、的確に受け止めて保護できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−122844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の運転席用エアバッグ装置では、エアバッグの支持膨張部が、エアバッグの膨張完了時にハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保できるように、容積を大きくしており、エアバッグ自体の容積も増大して、膨張用ガスを供給するインフレーターも、大きな出力のものが必要となり、エアバッグ装置が大型化する課題があった。そのため、エアバッグ装置の大型化を招かないように、エアバッグの支持膨張部の容積を小さくしても、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護できる運転席用エアバッグ装置が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグの支持膨張部の容積を小さくしても、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護できる運転席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転席用エアバッグ装置は、車両の操舵用のハンドルの中央部に、折り畳まれたエアバッグを収納する構成とするとともに、
前記エアバッグの膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備え、
前記エアバッグの膨張時における前記ハンドル側部に、前記ハンドル中央部の前面側と対向するように、下方側に延びて、前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル中央部の前面側に当接して反力を確保し、前記運転者側部の傾きを抑制する支持膨張部、が配設されている運転席用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
前記ハンドル中央部の前面側への当接時における前記支持膨張部の反力を強めるための反力拡大手段を、配設させて構成されるとともに、
前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部と前記ハンドル中央部の前面側との間、若しくは、前記支持膨張部の前面側と前記ハンドル側部の前縁側との間、の少なくとも一方に、スペースを配設させる構成としていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、反力拡大手段の非配設時におけるエアバッグの膨張完了時に、支持膨張部とハンドル中央部の前面側との間、若しくは、支持膨張部の前面側とハンドル側部の前縁側との間、の少なくとも一方に、スペースを配設させる構成としており、支持膨張部の容積が小さく構成されている。そして、膨張を完了させたエアバッグの前部側に運転者が干渉し、エアバッグの支持膨張部をハンドル中央部の前面側に当接させて、運転者側部の傾きを抑制する反力を確保する際、支持膨張部の容積を小さくしていても、反力拡大手段により、ハンドル中央部の前面側に当接する支持膨張部が、安定した大きな反力を確保できて、運転者側部の傾きを抑制できる。そのため、エアバッグ装置では、作動時、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護することができる。
【0008】
したがって、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、エアバッグの支持膨張部の容積を小さくしても、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護できる。
【0009】
そして、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部の前面側と前記ハンドル側部の前縁側との間に、スペースを配設させる構成として、
前記反力拡大手段が、膨張完了時の前記エアバッグの前部側への運転者の干渉時に、前記ハンドル側部における前記支持膨張部より前方側の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との当接時に閉塞され、閉塞前に膨張用ガスを排気可能として、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との相互の当接部位の少なくとも一方に配設されるベントホール、としてもよい。
【0010】
このような構成では、反力拡大手段の非配設時におけるエアバッグの膨張完了時に、支持膨張部の前面側とハンドル側部の前縁側との間に、スペースを配設させて、支持膨張部が容積を小さくしていても、膨張を完了させたエアバッグの前部側に運転者が干渉してくると、支持膨張部がハンドル中央部の前面側に当接した状態として、エアバッグの前部側が、ハンドル側部の前方側部位とともに、下降し、ハンドル側部の前方側部位が支持膨張部の前面側に当接して、ベントホールを閉塞する。そのため、閉塞前まで膨張用ガスを排気していたベントホールが閉塞されることから、エアバッグの内圧低下が抑制されて、エアバッグ自体が支持膨張部も含めて高い内圧を維持できることとなり、ハンドル中央部の前面側に当接していた支持膨張部が、高い内圧を維持して、ハンドル中央部の前面側から高い反力を確保できる。したがって、反力拡大手段を構成するベントホールの閉塞により、ハンドル中央部の前面側に当接する支持膨張部が、容積を小さくしていても、安定した大きな反力を確保できて、運転者側部の傾きを抑制できることから、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護することができる。
【0011】
この場合、前記ベントホールは、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側との境界部位に、前記ハンドル側部の前方側部位と前記支持膨張部の前面側とに跨って配設されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、膨張を完了させたエアバッグの前部側に運転者が干渉してくると、エアバッグの前部側が、ハンドル側部の前方側部位とともに、下降し、直ちに、ハンドル側部の前方側部位が支持膨張部の前面側に当接して、ベントホールを閉塞することから、迅速に、支持膨張部が高い反力を確保できる。
【0013】
また、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部と前記ハンドル中央部の前面側との間に、スペースを配設させる構成として、
前記反力拡大手段が、一端側を前記支持膨張部に連結し、他端側を前記エアバッグの外周壁の一部に連結させて、前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部を前記ハンドル中央部の前面側に押圧するように配設される可撓性を有した連結材、としていてもよい。
【0014】
このような構成では、反力拡大手段としての連結材の配設されない状態でのエアバッグの膨張時、支持膨張部とハンドル中央部の前面側との間に、スペースが配設される状態として、支持膨張部が容積を小さくしていても、連結材を配設させた状態でエアバッグが膨張すると、連結材が支持膨張部をハンドル中央部の前面側に押圧することから、支持膨張部が大きな反力を確保できる。したがって、反力拡大手段を構成する連結材により、ハンドル中央部の前面側に当接する支持膨張部が、容積を小さくしていても、安定した大きな反力を確保できて、運転者側部の傾きを抑制できることから、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護することができる。
【0015】
また、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部と前記ハンドル中央部の前面側との間に、スペースを配設させる構成として、
前記反力拡大手段が、前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部を前記ハンドル中央部の前面側に押圧可能に、前記支持膨張部を前記ハンドル側部における前記支持膨張部より後方側の後方側部位に結合させて配設される結合部、としていてもよい。
【0016】
このような構成では、反力拡大手段としての結合部の配設されない状態でのエアバッグの膨張時、支持膨張部とハンドル中央部の前面側との間に、スペースが配設される状態として、支持膨張部が容積を小さくしていても、結合部を配設させた状態でエアバッグが膨張すると、支持膨張部を折り曲げるようにハンドル側部の後方側部位に結合させた結合部により、膨張する支持膨張部自体をハンドル中央部の前面側に押圧させることができることから、支持膨張部が大きな反力を確保できる。したがって、反力拡大手段を構成する結合部により、ハンドル中央部の前面側に当接する支持膨張部が、容積を小さくしていても、安定した大きな反力を確保できて、運転者側部の傾きを抑制できることから、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護することができる。
【0017】
また、本発明に係る運転席用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、前記反力拡大手段の非配設時における前記エアバッグの膨張完了時に、前記支持膨張部の前面側と前記ハンドル側部の前縁側との間に、スペースを配設させる構成として、
前記反力拡大手段が、前記支持膨張部内に配設されて、前記エアバッグ内に流入する膨張用ガスの前記支持膨張部側への流入を許容し、逆流を抑制する逆止弁、としていてもよい。
【0018】
このような構成では、反力拡大手段の非配設時におけるエアバッグの膨張完了時に、支持膨張部の前面側とハンドル側部の前縁側との間に、スペースを配設させる状態として、支持膨張部が容積を小さくしていても、逆止弁を配設させた状態でエアバッグが膨張すると、支持膨張部は、逆止弁により、膨張用ガスを流入させて逆流させないことから、高い内圧を維持する。そのため、膨張を完了させたエアバッグの前部側に運転者が干渉してきても、支持膨張部は、高い内圧を維持した状態で、ハンドル中央部の前面側に当接し、大きな反力を確保することができる。したがって、反力拡大手段を構成する逆止弁により、ハンドル中央部の前面側に当接する支持膨張部が、容積を小さくしていても、安定した大きな反力を確保できて、運転者側部の傾きを抑制できることから、エアバッグの前部側に干渉する運転者を的確に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の運転席用エアバッグ装置の使用状態を示す概略平面図である。
図2】第1実施形態の運転席用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図1のII−II部位に対応する。
図3】第1実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図4】第1実施形態のエアバッグのハンドル側部を製造した状態を示す平面図であり、ベントホールの配置状態を示した図を併せて示す。
図5】第1実施形態の運転席用エアバッグ装置の作動時におけるエアバッグの膨張完了時と、膨張完了時のエアバッグの前部側に運転者が干渉した状態と、を示す図である。
図6】第2実施形態の運転席用エアバッグ装置に使用するエアバッグにおける連結材を省いた状態での膨張時の概略斜視図である。
図7】第2実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図8】第2実施形態のエアバッグの底面図である。
図9】第2実施形態の運転席用エアバッグ装置における反力拡大手段としての連結材を配設させていない状態でのエアバッグの膨張完了時と、連結材を配設させた状態でのエアバッグの膨張完了時と、を示す図である。
図10】第3実施形態の運転席用エアバッグ装置に使用するエアバッグの底面図である。
図11】第3実施形態の運転席用エアバッグ装置の作動時を示す図である。
図12】第4実施形態の運転席用エアバッグ装置に使用するエアバッグの製造時を説明する図である。
図13】第4実施形態の運転席用エアバッグ装置における反力拡大手段としての結合部を配設させていない状態でのエアバッグの膨張完了時と、結合部を配設させた状態でのエアバッグの膨張完了時と、を示す図である。
図14】第5実施形態の運転席用エアバッグ装置のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図15】第5実施形態のエアバッグの製造時を説明する図である。
図16】第5実施形態の運転席用エアバッグ装置における反力拡大手段としての連結材を配設させていない状態でのエアバッグの膨張完了時と、連結材を配設させた状態でのエアバッグの膨張完了時と、を示す図である。
図17】第6実施形態の運転席用エアバッグ装置の作動時を示す図である。
図18】第6実施形態の運転席用エアバッグ装置のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図19】第6実施形態のエアバッグの逆止弁の部位を示す正面図と断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、車両の操舵用に使用するハンドルWの中央部Bに搭載されている。このハンドルWは、左右両側に操作把持部HL,HRを有して、中央部Bの中央(操舵軸SSの配設部位)からの左右両側へ向かう長さ寸法XL,XRより、中央部Bの中央から前部BF側へ向かう長さ寸法YFを短くした形状の異形ハンドルとしている。換言すれば、ハンドルWの中央部Bの前部BF側に、リング部Rの部位を配設させずに、左右の把持部HL,HRとともに、中央部Bの後部BB側に、リング部Rの後部RBを配設させた形状としている。そして、中央部Bとリング部Rとが4つのスポーク部S(SFL,SFR,SBL,SBR)により連結されている。中央部Bの下部には、操作時の回転中心となる操舵軸SSに連結されるボス3が配設されている。ハンドルWは、ハンドル本体1とエアバッグ装置Mとから構成されている。
【0021】
ハンドル本体1は、中央部B、スポーク部S、及び、リング部Rの剛性を確保するために、鋼材等の金属材からなる芯材2を配設させて構成され、ボス3は、芯材2の中央の下部側に配設されている。また、芯材2の周囲には、適宜、合成樹脂製の被覆層4が配設されている。中央部Bの下面側は、合成樹脂製のロアカバー5に覆われている。
【0022】
第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター9、折り畳んだエアバッグ20の上方を覆うエアバッグカバー15、エアバッグ20とインフレーター9とを収納保持するとともにエアバッグカバー15を保持するケース11、及び、インフレーター9とともにエアバッグ20をケース11に取り付けるためのリテーナ7、を備えて構成される。
【0023】
リテーナ7は、四角環状の板金製として、エアバッグ20の流入用開口27の周縁を押えて、エアバッグ20をケース11に取り付けるとともに、インフレーター9をケース11に取り付けるように、四隅に、ケース11にナット止めされる図示しないボルトを備えている。インフレーター9は、上部に複数のガス吐出口9bを備えた円柱状の本体部9aと、本体部9aの外周面から突出するフランジ部9cと、を備え、フランジ部9cには、リテーナ7の図示しない各ボルトを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0024】
ケース11は、略直方体形状の板金製とし、ハンドルWの中央部Bの上部側に配置されて、折り畳まれたエアバッグ20を収納する収納部位を構成し、長方形状の底壁部11aと、底壁部11aの外周縁から上方に延びる四角筒形状の側壁部11dと、を備えて構成されている。底壁部11aには、インフレーター9の本体部9aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔11bが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ7の図示しないボルトを貫通させる4つの貫通孔11c(図1参照)が形成されている。側壁部11dは、上端の係止爪(図符号省略)をエアバッグカバー15の側壁部17に係止させたり、リベット12止めして、エアバッグカバー15の側壁部17を保持している。また、ケース11の側壁部11dの上端には、エアバッグ装置Mを中央部Bの上部に配設固定するために、芯材2に対し、ボルト止め等して、連結固定されるブラケット部11eが配設されている。
【0025】
エアバッグカバー15は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ20の上方を覆う天井壁部16と、天井壁部16の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部17と、を備えて構成されている。天井壁部16には、膨張するエアバッグ20に押されて前後両側に開く2枚の扉部16a,16aが形成されている。
【0026】
エアバッグ20は、膨張完了時の外周壁21が、運転者Dを受け止め可能な運転者側部42と、運転者側部42の外周縁43に対して外周縁23を接続させて、ハンドルWに支持されるハンドル側部22と、を備えて構成されている。運転者側部42とハンドル側部22とは、相互に重ねて、平らに展開させると、円板状としている。また、エアバッグ20の膨張時におけるハンドル側部22には、ハンドルWの中央部Bの前面Bf側と対向するように、下方側に延びて、図5のBに示すように、エアバッグ20の前部20a側への運転者Dの干渉時に、ハンドルWの中央部Bの前面Bf側に当接して反力RFを確保し、運転者側部42の傾きを抑制する支持膨張部32が配設されている。そして、このエアバッグ20に配設される反力拡大手段70としては、図4,5に示すように、ベントホール71としている。
【0027】
ハンドル側部22は、図4に示すように、中央に、膨張用ガスを流入させるためのインフレーター9を挿入させる円形の流入用開口27を配設させ、流入用開口27の周縁を取付座28としている。取付座28には、リテーナ7の図示しないボルトを挿通させる取付孔28aが四箇所に形成されている。
【0028】
なお、ハンドル側部22には、エアバッグ20の膨張完了時の余剰の膨張用ガスGを排気するベントホール29,29が開口されている。但し、開口面積の総和としては、ベントホール29に比べて、反力拡大手段70を構成するベントホール71の開口面積が、大きく設定されている。
【0029】
また、第1実施形態のエアバッグ20では、ベントホール71を設けない状態も、ベントホール71を設けた状態も、ともに、車両搭載状態での膨張完了時、支持膨張部32の前面33側とハンドル側部22の前縁23a側との間には、スペースSPfが配設される状態としている(図5のA参照)。
【0030】
エアバッグ20を形成するバッグ用素材としては、図3に示すように、運転者側部42を形成する円板状の運転者側素材60と、ハンドル側部22を形成するハンドル側素材50と、ハンドル側部22の取付座28の補強用の補強布62と、を備えて構成されている。これらの素材60,50,32は、それぞれ、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製の糸から織られて形成された可撓性を有した布帛からなって、ハンドル側素材50は、支持膨張部32の部位も形成できるように構成されている。
【0031】
ハンドル側素材50は、流入用開口27の周縁を構成する開口側構成部51と、ハンドル側部22の前縁23a側を形成する三日月状のハンドル前側構成部54と、開口側構成部51とハンドル前側構成部54とを連結する支持用後側構成部52及び支持用前側構成部53と、を備えて構成されている。支持用後側構成部52と支持用前側構成部53とは、支持膨張部32の後面34側と前面33側とを形成する部位である。支持用前側構成部53とハンドル前側構成部54との境界部位における左右方向の中央には、円形に開口した反力拡大手段70としてのベントホール71が形成されることとなる。
【0032】
このエアバッグ20の製造は、補強布62をハンドル側素材50の開口側構成部51の所定位置に縫合して、流入用開口27とベントホール71,29とを孔開け加工して形成し、ハンドル側素材50の支持用前側構成部53と支持用後側構成部52との間の境界部位50bに折目を付けて折り、重ねた支持用後側構成部52と支持用前側構成部53との側縁52aL,53aL相互と側縁52bR,53bR相互とを縫合するとともに、重ねた開口側構成部51の前縁51bLとハンドル前側構成部54の後縁54bLとの相互と、開口側構成部51の前縁51bRとハンドル前側構成部54の後縁54bRとの相互と、をそれぞれ縫合すれば、支持膨張部32を設けたハンドル側部22を形成することができる。その後、エアバッグ20の外周面側となる部位相互を重ねるように、ハンドル側部22に形成したハンドル側素材50に運転者側素材60を重ね、外周縁50a(開口側構成部51とハンドル前側構成部54との外縁51a,54a),60a相互を縫合し、縫代が外周側に表われないように、流入用開口27を利用して、反転させれば、エアバッグ20を製造することができる。
【0033】
このように製造したエアバッグ20は、図示しないボルトを取付孔28aから突出させてリテーナ7を内部に収納した状態で、折り畳む。ついで、リテーナ7の図示しないボルトを貫通孔11cから突出させつつ、折り畳んだエアバッグ20をケース11の底壁部11a上に載置させるとともに、図示しないリテーナ7のボルトをフランジ部9cに挿通させつつ、インフレーター9の本体部9aを挿通孔11bからケース11内に挿入し、リテーナ7の図示しないボルトに所定のナットを締結すれば、ケース11にエアバッグ20とインフレーター9とを取り付けることができる。ついで、エアバッグカバー15をケース11に被せて、リベット12止め等すれば、運転席用エアバッグ装置Mを組み立てることができる。組み立てたエアバッグ装置Mは、インフレーター9に作動用信号を入力させる所定のリード線を結線しつつ、車両の操舵軸SSにナットN止めしたハンドル本体1に対して、ブラケット部11eを取り付ければ、車両に搭載することとができる。
【0034】
第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mでは、インフレーター9が作動して、ガス吐出口9bから膨張用ガスGが吐出されれば、膨張用ガスGが流入用開口27を経てエアバッグ20内に流入して、エアバッグ20が膨張する。そして、エアバッグカバー15の扉部16a,16aを押し開いて、エアバッグ20が、図1,2の二点鎖線や図5のAに示すように、収納部位としてのケース11から突出して、ハンドルWの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。その際、支持膨張部32が、前面33側とハンドル側部22の前縁23a側との間に、スペースSPfを配設させて、容積を小さくした状態で、後面34側をハンドルWの中央部Bの前面Bf側に対向させるように、配設される。なお、第1実施形態のエアバッグ20では、既述したように、反力拡大手段70としてのベントホール71を設けない状態も、ベントホール71を設けた状態も、ともに、車両搭載状態での膨張完了時、支持膨張部32の前面33側とハンドル側部22の前縁23a側との間には、スペースSPfが配設される状態としている(図5のA参照)。
【0035】
そして、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mでは、図5のBに示すように、膨張を完了させたエアバッグ20の前部20a側の運転者側部42に運転者Dが干渉してくると、支持膨張部32がハンドル中央部Bの前面Bf側に当接した状態として、エアバッグ20の前部20a側が、ハンドル側部22における支持膨張部32の前方側の前方側部位24とともに、下降し、ハンドル側部22の前方側部位24が支持膨張部32の前面33側に当接して、ベントホール71を閉塞する。そのため、図5のA,Bに示すように、閉塞前まで膨張用ガスGを排気していたベントホール71が閉塞されることから、エアバッグ20の内圧低下が抑制されて、エアバッグ20自体が支持膨張部32も含めて高い内圧を維持できることとなり、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接していた支持膨張部32が、高い内圧を維持して、ハンドル中央部Bの前面Bf側から高い反力RFを確保できる。
【0036】
したがって、第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mでは、反力拡大手段70を構成するベントホール71の閉塞により、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32が、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20の前部20a側に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【0037】
特に、第1実施形態では、反力拡大手段70としてのベントホール71が、ハンドル側部22の前方側部位24と支持膨張部32の前面33側との境界部位に、ハンドル側部22の前方側部位24と支持膨張部32の前面33側とに跨って配設されている。
【0038】
そのため、第1実施形態では、膨張を完了させたエアバッグ20の前部20a側における運転者側部42に運転者Dが干渉してくると、エアバッグ20の前部20a側が、ハンドル側部22の前方側部位24とともに、下降し、直ちに、ハンドル側部22の前方側部位24が支持膨張部32の前面33側に当接して、ベントホール71を閉塞することから、迅速に、支持膨張部32が高い反力RFを確保できる。
【0039】
なお、反力拡大手段としてのベントホールとしては、第1実施形態のように、ハンドル側部22の前方側部位24と支持膨張部32の前面33側との境界部位に跨って配設されるベントホール71の他、エアバッグ20の前部20a側に運転者Dが干渉する際に閉塞される構成であれば、図4のBの二点鎖線に示すように、ハンドル側部22の前方側部位24側に設けられるベントホール711や、支持膨張部32の前面33側に設けられるベントホール712でもよい。
【0040】
また、エアバッグの膨張時におけるハンドル中央部Bの前面Bf側への当接時における支持膨張部の反力を強めるための反力拡大手段としては、図6〜9に示す第2実施形態の運転席用エアバッグ装置MAのエアバッグ20Aに設けた連結材としてのストラップ73(L,R)を、反力拡大手段70Aとしてもよい。
【0041】
この第2実施形態の運転席用エアバッグ装置MAは、エアバッグ20Aが、ストラップ73の非配設状態で膨張を完了させた際、図6図9のAに示すように、ハンドル側部22Aの支持膨張部32Aが、後面34とハンドルWの中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbを配設させる点と、前面33側をエアバッグ20Aの前縁23a側から下方に延びるように配設させている点と、が、第1実施形態のエアバッグ20と構成を異ならせている。
【0042】
そして、反力拡大手段70Aを構成する連結材としてのストラップ73L,73Rは、運転者側素材60等と同様に、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製の糸から織られて形成された可撓性を有した布帛からなり、支持膨張部32Aの左右の側縁32aと、エアバッグ20Aのハンドル側部22Aと運転者側部42との外周縁23,43相互の左右の側縁20bと、を連結するように配設されている。ストラップ73L,73Rの長さ寸法STL(図7参照)は、エアバッグ20Aの膨張完了時、支持膨張部32Aの後面34側をハンドルWの中央部Bの前面Bf側に押し付けて、支持膨張部32Aが中央部Bの前面Bf側から反力RFを確保できるように、設定されている。
【0043】
エアバッグ20Aを製造するエアバッグ用素材としては、図7に示すように、ハンドル側部22Aが、第1実施形態のハンドル側部22と相違して、支持膨張部32Aの前面33側がエアバッグ20Aの前縁23aと連なるように、ハンドル前側構成部54Aの前縁54cに、相互に縫合する縫合部54d,54dが形成されている点と、ストラップ73の非配設状態でのエアバッグ20Aの膨張完了時に、支持膨張部32AがハンドルWの中央部Bの前面Bf側から離れるように、開口側構成部51Aの前縁51b(L,R)やハンドル前側構成部54の後縁54b(L,R)が前方側にずれて配置されている点と、が異なっている。
【0044】
エアバッグ20Aの製造は、ハンドル前側構成部54Aの前縁54cの縫合部54d,54d相互を縫合する点と、ストラップ73L,73Rを縫合する点とが異なっているだけで、他の工程は、第1実施形態と略同様である。すなわち、まず、補強布62をハンドル側素材50Aの開口側構成部51Aの所定位置に縫合して、流入用開口27やベントホール29を孔開け加工して形成し、ついで、ハンドル前側構成部54Aの前縁54cの縫合部54d,54d相互を縫合した後、ハンドル側素材50Aの支持用前側構成部53Aと支持用後側構成部52Aとの間の境界部位50bに折目を付けて折り、重ねた支持用後側構成部52Aと支持用前側構成部53Aとの側縁52aL,53aL相互と側縁52bR,53bR相互とを縫合するとともに、重ねた開口側構成部51Aの前縁51bLとハンドル前側構成部54Aの後縁54bLとの相互と、開口側構成部51Aの前縁51bRとハンドル前側構成部54Aの後縁54bRとの相互と、をそれぞれ縫合すれば、支持膨張部32を設けたハンドル側部22を形成することができる。その後、エアバッグ20Aの外周面側となる部位相互を重ねるように、ハンドル側部22Aに形成したハンドル側素材50Aに運転者側素材60を重ね、その際、ストラップ73L,73Rの端部73a側も間に配設しつつ、外周縁50a(開口側構成部51Aとハンドル前側構成部54Aとの外縁51a,54a),60a相互を縫合し、縫代が外周側に表われないように、流入用開口27を利用して、反転させ、そして、図8に示すように、支持膨張部32Aの左右の側縁32aに、ストラップ73L,73Rの端部73b側を縫合すれば、エアバッグ20Aを製造することができる。
【0045】
このようにエアバッグ20Aを製造した後には、第1実施形態と同様に、図示しないリテーナ7を収納してエアバッグ20Aを折り畳み、図示しないケース11に対して、エアバッグ20Aや図示しないインフレーター9を組み付け、さらに、エアバッグカバー15を取り付けてエアバッグ装置MAを組み立て、そして、車両に搭載済みのハンドル本体1に組み付ければ、エアバッグ装置MAを車両に搭載することができる。
【0046】
この第2実施形態でも、エアバッグ20Aが、反力拡大手段70Aとしてのストラップ73(L,R)の非配設時におけるエアバッグ20Aの膨張完了時に、支持膨張部32Aとハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbを配設させる構成として、反力拡大手段70Aが、一端73b側を支持膨張部32Aに連結し、他端73a側をエアバッグ20Aの外周壁21の一部に連結させて、エアバッグ20Aの膨張完了時に、支持膨張部32Aをハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧するように配設される可撓性を有した連結材としてのストラップ73L,73R、としている。
【0047】
そのため、第2実施形態では、図9のAに示すように、反力拡大手段70Aとしてのストラップ(連結材)73(L,R)の配設されない状態でのエアバッグ20Aの膨張時、支持膨張部32Aとハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbが配設される状態として、支持膨張部32Aが容積を小さくしていても、ストラップ73(L,R)を配設させた状態でエアバッグ20Aが膨張すると、図9のBに示すように、ストラップ73(L,R)が支持膨張部32Aをハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧することから、支持膨張部32Aが大きな反力RFを確保できる。
【0048】
したがって、第2実施形態でも、反力拡大手段70Aを構成するストラップ(連結材)73L,73Rにより、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32Aが、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20Aの前部20a側の運転者側部42に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【0049】
また、支持膨張部をハンドルWの中央部Bの前面Bf側に押し付ける反力拡大手段の連結材としては、図10,11に示す第3実施形態の運転席用エアバッグ装置MBのエアバッグ20Bのように、支持膨張部32Bとハンドル側部22Bにおける支持膨張部32Bの後方側となる後方側部位25とを連結する1本のストラップ74としてもよい。
【0050】
この第3実施形態の運転席用エアバッグ装置MBでは、エアバッグ20Bが、2本のストラップ73が1本のストラップ74に変更された他、支持膨張部32Bを有したハンドル側部22Bは、支持膨張部32Aを有したハンドル側部22Aと同様な構成としている。すなわち、このエアバッグ装置MBでも、反力拡大手段70Bとしてのストラップ(連結材)74の非配設時におけるエアバッグ20Bの膨張完了時に、図9のAに示すと同様に、支持膨張部32Bとハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbを配設させる構成としている。
【0051】
そして、反力拡大手段70Bの連結材としてのストラップ74が運転者側素材60等と同様に、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製の糸から織られて形成された可撓性を有した布帛からなり、ストラップ74の一方の端部74bを支持膨張部32Bの先端部32b付近に連結し、他方の端部74aを、外周壁21としてのハンドル側部22Bにおける支持膨張部32Bの後方側部位25に連結させている。端部74bは、縫合により連結され、端部74aは、図示しないリテーナ7のボルトに係止されて、取付座28に連結されている。ストラップ74の長さ寸法STLも、ストラップ73L,73Rと同様に、エアバッグ20Bの膨張完了時、支持膨張部32Bの後面34側をハンドルWの中央部Bの前面Bf側に押し付けて、支持膨張部32Bが中央部Bの前面Bf側から反力RFを確保できるように、設定されている。
【0052】
そのため、この第3実施形態の運転席用エアバッグ装置MBでも、反力拡大手段70Bとしてのストラップ(連結材)74の配設されない状態でのエアバッグ20Bの膨張時、支持膨張部32Bとハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbが配設される状態として、支持膨張部32Bが容積を小さくしていても、ストラップ74を配設させた状態でエアバッグ20Bが膨張すると、図11に示すように、ストラップ74が支持膨張部32Bをハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧することから、支持膨張部32Bが大きな反力RFを確保できる。したがって、第3実施形態でも、反力拡大手段70Bを構成するストラップ(連結材)74により、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32Bが、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20Bの前部20a側の運転者側部42に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【0053】
さらに、反力拡大手段としての連結材としては、エアバッグに、別途、連結するストラップから構成せずに、図12,13に示す第4実施形態の反力拡大手段70Cのように、エアバッグ20Cの膨張完了時に、支持膨張部32Cをハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧可能に、支持膨張部32Cをハンドル側部22Cにおける支持膨張部32Cより後方側の後方側部位25に結合させて配設される結合部77、としてもよい。結合部77は、縫合により形成されている。また、このエアバッグ20Cでは、ストラップ73,74を設けていないだけで、支持膨張部32Cを有したハンドル側部22Cが、第2,3実施形態の支持膨張部32A,32Bを有したハンドル側部22A,22Bと同様な構成としている。
【0054】
そのため、この第4実施形態でも、反力拡大手段70Cとしての結合部77の配設されない状態でのエアバッグ20Cの膨張時には、図13のAに示すように、支持膨張部32Cの後面34とハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbが配設される状態として、支持膨張部32Cが容積を小さくしている。しかし、反力拡大手段70Cとしての結合部77を設けたエアバッグ20Cが膨張すると、図13のBに示すように、支持膨張部32Cを折り曲げるようにハンドル側部22Cの後方側部位25に結合させた結合部77により、膨張する支持膨張部32C自体をハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧させることができることから、支持膨張部32Cが大きな反力RFを確保できる。
【0055】
したがって、第4実施形態でも、反力拡大手段70Cを構成する結合部77により、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32Cが、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20Cの前部20a側に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【0056】
また、第2,3実施形態のストラップ73,74のように、別途、エアバッグに連結する連結材を設けずに、支持膨張部をハンドル中央部の前面側に押し付ける反力拡大手段としては、図14〜16に示す第5実施形態の運転席用エアバッグ装置MDのエアバッグ20Dのように、ハンドル側部22Dを形成するハンドル側素材50D自体に設けられる余代75(L,R)を連結材としてもよい。この左右の余代75L,75Rは、縫合代を大きくしたものであり、ハンドル側素材50Dにおける支持用前側構成部53Dの側縁53aLとハンドル前側構成部54Dの後縁54bLとを連結するように延設したり、あるいは、支持用前側構成部53Dの側縁53aRとハンドル前側構成部54Dの後縁54bRとを連結するように延設したものである。
【0057】
この第5実施形態のエアバッグ20Dのハンドル側部22Dは、図14に示すハンドル側素材50Dから形成されており、ハンドル側素材50Dは、第1実施形態のハンドル側素材50と異なる点として、ベントホール71を有さない点と、反力拡大手段70Dとしての余代75(L,R)を連結させない、すなわち、反力拡大手段70Dの非配設状態でのエアバッグ20Dの膨張完了時に、図16のAに示すように、支持膨張部32Dの後面34がハンドルWの中央部Bの前面Bf側から離れるように、開口側構成部51Dの前縁51b(L,R)やハンドル前側構成部54Dの後縁54b(L,R)が前方側にずれて配置されている点と、が異なっている。
【0058】
このエアバッグ20Dの製造は、第1実施形態と略同様であり、補強布62をハンドル側素材50Dの開口側構成部51Dの所定位置に縫合して、流入用開口27とベントホール29とを孔開け加工して形成し、ハンドル側素材50Dの支持用前側構成部53Dと支持用後側構成部52Dとの間の境界部位50bに折目を付けて折り、重ねた支持用後側構成部52Dと支持用前側構成部53Dとの側縁52aL,53aL相互と側縁52bR,53bR相互とを縫合するとともに、重ねた開口側構成部51Dの前縁51bLとハンドル前側構成部54Dの後縁54bLとの相互と、開口側構成部51Dの前縁51bRとハンドル前側構成部54Dの後縁54bRとの相互と、をそれぞれ縫合すれば、支持膨張部32Dを設けたハンドル側部22Dを形成することができる。そしてその後、図15のA,Bに示すように、支持膨張部32Dの後面34側をハンドル側部22Dにおける支持膨張部32Dより後方側の後方側部位25に重ね、ついで、余代75L,75Rの外縁75aを間にして、ハンドル側部22Dに形成したハンドル側素材50Dに運転者側素材60を重ね、外周縁50a(開口側構成部51Dとハンドル前側構成部54Dとの外縁51a,54a),60a相互を縫合し、縫代が外周側に表われないように、流入用開口27を利用して、反転させれば、エアバッグ20Dを製造することができる。エアバッグ20Dを製造した後は、第1実施形態と同様に、折り畳んで、所定の組付作業を行えば、エアバッグ装置MDを組み立てることができて、ハンドルWとともに車両に搭載することができる。
【0059】
この第5実施形態の運転席用エアバッグ装置MDでも、反力拡大手段70Dとしての余代75(L,R)の配設されない状態では、図16のAに示すように、支持膨張部32Dとハンドル中央部Bの前面Bf側との間に、スペースSPbが配設される状態として、支持膨張部32Dが容積を小さくしている。しかし、反力拡大手段70Dとしての余代75(L,R)をエアバッグ20Dの外周壁21に結合させた状態のエアバッグ20Dが膨張すると、図16のBに示すように、支持膨張部32Dの左右の側縁32aとエアバッグ20Dの外周壁21における左右の側縁20bとを結合した余代75(L,R)により、膨張する支持膨張部32Dの後面34側がハンドル中央部Bの前面Bf側に押圧されることから、支持膨張部32Dが大きな反力RFを確保できる。
【0060】
したがって、第5実施形態でも、反力拡大手段70Dを構成する余代75(L,R)により、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32Dが、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20Dの前部20a側に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【0061】
また、反力拡大手段としては、図17〜19に示す第6実施形態の運転席用エアバッグ装置MEのように、支持膨張部32E内に配設されて、エアバッグ20E内に流入する膨張用ガスGの支持膨張部32E側への流入を許容し、逆流を抑制する逆止弁79から、反力拡大手段70Eを形成してもよい。
【0062】
このエアバッグ20Eは、図18に示すように、運転者側部42を形成する運転者側素材60、ハンドル側部22Eを形成するハンドル側素材50E、逆止弁79を形成する弁シート80(F,B)、及び、補強布62、から構成されている。さらに、第6実施形態では、ハンドル側素材50Eが、開口側構成部51Eと支持用後側構成部52Eとを連結させた後側素材56と、支持用前側構成部53Eとハンドル前側構成部54Eとを連結させた前側素材57と、から構成されている。これらの素材60,56,57は、第1実施形態の素材50等と同様に、ポリアミドやポリエステル等の合成樹脂製の糸から織られて形成された可撓性を有した布帛から形成されている。
【0063】
2枚の弁シート80(F,B)は、支持膨張部32Eの内周面側の前後で重なるように配設される。すなわち、前後の弁シート80F,80Bは、逆止弁79の膨張用ガスGの流入用の開口79aを間にした左右で、相互に、環状縫合部80d,80dにより縫合されるとともに、前側の弁シート80Fが、上縁側の元部80b側の全域を、支持用前側構成部53Eの内周面側に縫合され、また、後側の弁シート80Bが、上縁側の元部80b側の全域を、支持用後側構成部52Eの内周面側に縫合される。そして、ハンドル側部22Eを製造する際、後側素材56の支持用後側構成部52Eと前側素材57の支持用前側構成部53Eとを、弁シート80F,80Bを間に重ねた状態で、側縁52aL,53aL相互、側縁52aR,53aR相互、及び、先端の先縁52b,53b相互、を縫合する。また、後側素材56の開口側構成部51Eの前縁51bLと前側素材57のハンドル前側構成部54Eの後縁54bLとを縫合するとともに、開口側構成部51Eの前縁51bRとハンドル前側構成部54Eの後縁54bRとを縫合すれば、ハンドル側部22Eを形成することができる。なお、開口側構成部51Eには、あらかじめ、補強布62を縫合して、流入用開口27を孔開け加工により形成しておく。また、側縁52aL,53aL相互、側縁52aR,53aR相互、前縁51bLと後縁54bLとの相互、及び、前縁51bRと後縁54bRとの相互、の縫合時には、弁シート80F,80Bの左右の側縁80c,80c相互も共縫いされる。
【0064】
ハンドル側部22Eが形成されれば、第1実施形態と同様に、運転者側素材60を重ねて、外周縁50a(開口側構成部51Eとハンドル前側構成部54Eとの外縁51a,54a),60a相互を縫合し、縫代が外周側に表われないように、流入用開口27を利用して、反転させれば、エアバッグ20Eを製造することができる。その後、第1実施形態と同様の作業により、エアバッグ装置MEを組み付けて、ハンドルWに搭載すればよい。
【0065】
なお、このエアバッグ20Eの逆止弁79の作用は、次のようである。すなわち、図17のA,Bに示すように、エアバッグ20Eにおける支持膨張部32Eを除くバッグ本体30側に、インフレーター9からの膨張用ガスGが流れて、バッグ本体30が膨張し、さらに、膨張用ガスGは、逆止弁79の開口79aを経て、支持膨張部32E内に流入する。その際、弁シート80F,80Bの先端側のヒレ部80a,80a相互が離れて、膨張用ガスGを流入させる。但し、膨張用ガスGの流入が停止されれば、図17のCに示すように、支持膨張部32E内の内圧により、弁シート80F,80Bのヒレ部80a,80a相互が密着する状態となって、逆止弁79の開口79aをヒレ部(弁部)80a,80aが閉塞し、支持膨張部32E内の膨張用ガスGのバッグ本体30側への逆流が防止されることとなる。
【0066】
また、第6実施形態の運転席用エアバッグ装置MEも、第1実施形態と同様に、反力拡大手段70Eとしての逆止弁79の非配設時におけるエアバッグ20の膨張完了時に、支持膨張部32Eの前面33側とハンドル側部22Eの前縁23a側との間に、スペースSPfを配設させる構成としている(図17のB参照)。なお、第6実施形態のエアバッグ20Eでは、第1実施形態と同様に、反力拡大手段70Eの逆止弁79を設けない状態も、逆止弁79を設けた状態も、ともに、車両搭載状態での膨張完了時、支持膨張部32Eの前面33側とハンドル側部22の前縁23a側との間には、スペースSPfが配設される状態としている(図17のA,B参照)。
【0067】
そして、第6実施形態では、反力拡大手段70Eの非配設時におけるエアバッグ20Eの膨張完了時に、支持膨張部32Eの前面33側とハンドル側部22Eの前縁23a側との間に、スペースSPfを配設させる状態として、支持膨張部32Eが容積を小さくしていても、エアバッグ20Eが膨張すると、支持膨張部32Eは、逆止弁79により、膨張用ガスGを流入させて逆流させないことから、高い内圧を維持する。そのため、図17のCに示すように、膨張を完了させたエアバッグ20Eの前部20a側の運転者側部42に運転者Dが干渉してきても、支持膨張部32Eは、高い内圧を維持した状態で、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接し、大きな反力RFを確保することができる。したがって、反力拡大手段70Eを構成する逆止弁79により、ハンドル中央部Bの前面Bf側に当接する支持膨張部32Eが、容積を小さくしていても、安定した大きな反力RFを確保できて、運転者側部42の傾きを抑制できることから、エアバッグ20Eの前部20a側に干渉する運転者Dを的確に保護することができる。
【符号の説明】
【0068】
20,20A,20B,20C,20D,20E…エアバッグ、
20a…前部、21…外周壁、22,22A,22B,22C,22D,22E…ハンドル側部、23…外周縁、23a…前縁、24…前方側部位、25…後方側部位、32,32A,32B,32C,32D,32E…支持膨張部、33…前面、34…後面、42…運転者側部、43…外周縁、70,70A,70B,70C,70D,70E…反力拡大手段、71,711(24側),712(33側)…ベントホール、73(L,R)…(連結材)ストラップ、73a…他端・端部、73b…一端・端部、74…(連結材)ストラップ、74a…他端・端部、74b…一端・端部、75(L,R)…(連結材)余代、77…結合部、79…逆止弁、
W…ハンドル、B…中央部、Bf…前面、RF…反力、SPf…(前側の)スペース、SPb…(後側の)スペース、G…膨張用ガス、D…運転者、M,MA,MB,MC,MD,ME…運転席用エアバッグ装置。
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