(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の車両は
図10に示すように構成されている。
すなわち、エンジンルーム(但し、電気自動車の場合はモータルーム)と車室とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル101を設け、該ダッシュパネル101の車幅方向両側上部から車両前方に延びるエプロン102を設けると共に、エプロン102よりも車幅方向内側下方において上記ダッシュパネル101から車両前方に延びるフロントサイドフレーム103を設け、左右一対のフロントサイドフレーム103の前端には、クラッシュカンを介してバンパビーム104を取付けている。
【0003】
また、上記ダッシュパネル101の下部後端には、フロアパネル105を連設し、該フロアパネル105の車幅方向中央には、車室内に突出して車両の前後方向に延びるトンネル部106を設け、上記フロアパネル105の後端には、キックアップ部107を介して後方に延びるリヤフロア108を連設している。
【0004】
上記ダッシュパネル101の車幅方向外端において車両上下方向に延びるヒンジピラー109を設け、ヒンジピラー109の下端部には、車両前後方向に延びるサイドシル110を連結する一方で、ヒンジピラー109の上端部には、車両の後方かつ上方に延びるフロントピラー111を連結している。
【0005】
上記フロントピラー111の後端部には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール112を連結し、このルーフサイドレール112の後端部には、車両の後方かつ下方に延びるリヤピラー113を連結している。
【0006】
上記ルーフサイドレール112の前後方向中間部とサイドシル110の前後方向中間部とを、車両の上下方向に延びるセンタピラー114で連結し、ヒンジピラー109、フロントピラー111、ルーフサイドレール112、センタピラー114、サイドシル110で囲繞されたフロントドア開口部115を形成し、このフロントドア開口部115をフロントドアで開閉可能に覆うよう構成している。
【0007】
上記ルーフサイドレール112の後部とサイドシル110の後部とを、中間ピラー116およびリヤホイールハウス部117で上下方向に連結し、センタピラー114、ルーフサイドレール112、中間ピラー116、リヤホイールハウス部117、サイドシル110で囲繞されたリヤドア開口部118を形成し、このリヤドア開口部118をリヤドアで開閉可能に覆うよう構成している。
【0008】
さらに、左右のフロントピラー111上端部をフロントヘッダ119で連結し、左右のリヤピラー113上端部をリヤヘッダ120で連結し、左右のセンタピラー114上端対応位置のルーフサイドレール112間をルーフレイン121で連結し、フロントヘッダ119、リヤヘッダ120および左右のルーフサイドレール112間をルーフパネル122で覆う一方、上記リヤヘッダ120には荷室開口を開閉可能に覆うリフトゲート123を取付けている。
加えて、フロアパネル105の前後方向中間部には、サイドシル110とトンネル部106とを車幅方向に連結し、かつ左右一直線状に並ぶフロアクロスメンバ124を設けている。
【0009】
図10で示した従来の車両においては、車両前突時の荷重は、
図11に矢印で示すように、フロントサイドフレーム103、フロアフレーム(図示せず)、リヤサイドフレーム(図示せず)に伝達されると共に、フロントサイドフレーム103後端からトルクボックスを介してサイドシル110に伝達された後に、リヤサイドフレームに伝達される。
【0010】
また、車両側突時の荷重は、
図12に矢印で示すように、下方部においては、ドアからセンタピラー114およびサイドシル110に伝達された後に、フロアクロスメンバ124からトンネル部106を介して反対側のフロアクロスメンバ124に伝達されると共に、リヤサイドフレームからリヤクロスメンバ(図示せず)を介して反対側のリヤサイドフレームに伝達され、上方部においては、ドアサッシュ部からルーフサイドレール112に伝達された後に、ルーフレイン121、フロントヘッダ119、リヤヘッダ120を介して反対側のルーフサイドレール112に伝達される。
【0011】
このように、従来構造の車両においては、前突荷重、側突荷重の何れもが、フレーム部材を用いて荷重伝達されており、フロアパネル105、ルーフパネル122等のパネル部材は、衝突荷重の荷重伝達には寄与していない構造となっている。
【0012】
ところで、特許文献1には、対向する内壁と外壁との間に中空部が形成され、この中空部に所定厚みを有するコア材が封入された二重壁パネルが開示されており、上記コア材として減衰材を用い、当該減衰材を、互いに接触状態で固着されていない球状の粒状態あるいは繊維状物質で形成することにより、音のエネルギを運動のエネルギに変えるよう構成して、防音性および断熱性に優れるものである。
【0013】
また、上記二重壁パネルは、自動車のエンジン室と車室との隔壁および、その他の隔壁として用いられるものである。
しかしながら、上記特許文献1に開示された二重壁パネルは、衝突性能については寄与度が低く、二重壁パネルを如何にして衝突荷重の伝達に有効利用するかという観点で改善の余地があった。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0037】
図面は自動車のパネル構造を示し、
図1は本実施形態に係るパネル構造を備えた自動車の斜視図、
図2は
図1のA−A線矢視断面図、
図3は
図1のB−B線に沿う要部の矢視断面図である。
【0038】
<車体構造>
図1において、エンジンルーム1(但し、電気自動車の場合はモータルーム)と車室2とを車両の前後方向に仕切るダッシュパネル3を設け、該ダッシュパネル3の車幅方向両側上部から車両前方に延びるエプロン4を設けると共に、エプロン4よりも車幅方向内側かつ下方において上記ダッシュパネル3から車両前方に延びるフロントサイドフレーム5を設けて、左右一対のフロントサイドフレーム5の前端には、クラッシュカンを介して車幅方向に延びるバンパビーム6を取付けている。
上記フロントサイドフレーム5は、フロントサイドフレームアウタとフロントサイドフレームインナとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。
【0039】
また、上記ダッシュパネル3の下部後端には、車室2の床面を形成するフロアパネル7を連設し、このフロアパネル7の車幅方向中央には、車室2内に突出して車両の前後方向に延びるトンネル部8を設け、上記フロアパネル7の後端には、上下方向に延びるキックアップ部9を介して後方に延びるリヤフロア10を連設している。
【0040】
上記ダッシュパネル3の車幅方向外端において車両上下方向に延びるヒンジピラー11を設け、ヒンジピラー11の下端部には、車両前後方向に延びるサイドシル12を連結する一方で、ヒンジピラー11の上端部には、車両の後方かつ上方に傾斜して延びるフロントピラー13を連結している。
【0041】
上記ヒンジピラー11はヒンジピラーアウタとヒンジピラーインナとを接合固定して、車両の上下方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。同様に、上記フロントピラー13もフロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合固定して、斜め方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。
【0042】
上記フロントピラー13の後端部には、車両前後方向に延びるルーフサイドレール14を連結し、このルーフサイドレール14の後端部には、車両の後方かつ下方に傾斜して延びるリヤピラー15を連結している。
図2に示すように、上記ルーフサイドレール14は、ルーフサイドレールアウタ14aとルーフサイドレールインナ14bとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面14cを有する車体強度部材である。また、上記リヤピラー15は、リヤピラーアウタとリヤピラーインナとを接合固定して、斜め方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。
【0043】
図1に示すように、ルーフサイドレール14の前後方向中間部とサイドシル12の前後方向中間部とを、車両の上下方向に延びるセンタピラー16で連結している。該センタピラー16は、センタピラーアウタとセンタピラーインナとを接合固定して、車両上下方向に延びる閉断面を有する車体強度部材である。
【0044】
そして、ヒンジピラー11、フロントピラー13、ルーフサイドレール14、センタピラー16、サイドシル12で囲繞されたフロントドア開口部17を形成し、このフロントドア開口部17を、サイドドアとしてのフロントドア18(
図2参照)で開閉可能に覆うよう構成している。
【0045】
また、
図1に示すように、ルーフサイドレール14の後部とサイドシル12の後部とを、中間ピラー19およびリヤホイールハウス部20で上下方向に連結し、センタピラー16、ルーフサイドレール14、中間ピラー19、リヤホイールハウス部20、サイドシル12で囲繞されたリヤドア開口部21を形成し、このリヤドア開口部21をリヤドア(図示せず)で開閉可能に覆うよう構成している。
【0046】
さらに、
図1に示すように、左右のフロントピラー13上端部を車幅方向に延びるフロントヘッダ22で連結し、左右のリヤピラー15上端部を車幅方向に延びるリヤヘッダ23で連結し、フロントヘッダ22、リヤヘッダ23および左右のルーフサイドレール14で囲繞された空間をルーフパネル24で覆っている。
【0047】
図3に示すように、フロントヘッダ22はフロントヘッダアウタ22aとフロントヘッダインナ22bとを接合固定して、車幅方向に延びる閉断面22cを備えている。同様に、リヤヘッダ23もリヤヘッダアウタ23aとリヤヘッダインナ23bとを接合固定して、車幅方向に延びる閉断面23cを備えている。
【0048】
図2、
図3に示すように、上記ルーフパネル24は、接着剤25を用いて、フロントヘッダ22、リヤヘッダ23、ルーフサイドレール14に固定されている。
図1、
図3に示すように、ダッシュパネル3上端、フロントヘッダ22前端、左右のフロントピラー13,13の車幅方向内側で囲繞されたフロントウインドガラス開口部26には、フロントウインドガラス27が配置されている。
図3に示すように、該フロントウインドガラス27は接着剤28を用いて上記各要素3,22,13に接着固定されている。
【0049】
一方、
図3に示すように、上記リヤヘッダ23には荷室開口を開閉可能に覆うリフトゲート29が取付けられている。また、
図1に示すように、エンジンルーム1の下方部には、床下走行風を整流するアンダカバー30が設けられている。
【0050】
<ドア構造>
図2に示すサイドドアとしてのフロントドア18は、ドア本体部18Mと、ドアガラス18Gと、ドアサッシュ18Sとを備えている。
【0051】
上記ドア本体部18Mは、対向する内壁31と外壁32との間に、これら各壁の面内方向全体に渡る閉断面33が形成され、該閉断面33に所定厚みを有するコア材34が封入された二重壁パネル35から成るドアアウタパネル36と、対向する内壁37と外壁38との間に、これら各壁の面内方向全体に渡る閉断面39が形成され、該閉断面39に所定厚みを有するコア材40が封入された二重壁パネル41から成るドアインナパネル42と、を備えている。
【0052】
上記ドアアウタパネル36の下端部と、ドアインナパネル42の下端部とは接合されており、これら両パネル36,42間には、ドア内部空間43が形成されている。また、フロントドア18の下端部は、サイドシル12とオーバラップしており、そのドアサッシュ18Sの上片部はルーフサイドレール14とオーバラップしている。
【0053】
<トンネル部の構造>
図4は
図2の車両左側の要部拡大断面図であって、
図2、
図4に示すように、上記トンネル部8は、アルミニウムまたはアルミ合金などの軽金属の押出し成形部材にて構成されている。
また、該トンネル部8は、断面門形状の本体部81に対して当該本体部81の下部左右両側から車幅方向外側に向けて突出する外側突出部82が一体形成されており、該外側突出部82は後述する二重壁パネルから成るフロアパネル7の車幅方向内側端部を支持するものである。
【0054】
図4に示すように、上記外側突出部82は、水平な上壁83と、水平な下壁84と、これら上下の各壁の車幅方向外側端部を上下に連結する側壁85と、車幅方向に延びる複数の節部86,87とを備えており、外側突出部82内には車両の前後方向に延びる複数の閉断面S1,S2,S3が形成されると共に、上記側壁85は下方程、車幅方向外側に位置する傾斜状に形成されている。
【0055】
図2に示すように、上記トンネル部8の車外側つまり下側には排気管88(またはプロペラシャフト)が配設されると共に、トンネル部8の下方開放側はトンネルカバー部材89で覆われている。
<サイドシルの構造>
図2、
図4に示すように、上記サイドシル12は、アルミニウムまたはアルミ合金などの軽金属の押出し成形部材にて構成されており、このサイドシル12は後述する二重壁パネルから成るフロアパネル7の車幅方向外側端部を支持するよう構成されている。
【0056】
図4に示すように、上記サイドシル12は、水平な上壁91と、水平な下壁92と、これら上下の各壁の車幅方向内側端部および車幅方向外側端部を上下に連結する内側壁93および外側壁94と、車幅方向に延びる複数の節部95,96とを備えており、サイドシル12内には車両の前後方向に延びる複数の閉断面S4,S5,S6が形成されると共に、上記内側壁93は下方程、車幅方向内側に位置する傾斜状に形成されている。
【0057】
ここで、本実施形態においては、トンネル部8側の外側突出部82における上壁83、節部86,87、下壁84と、サイドシル12側の上壁91、節部95,96、下壁92とは、それぞれ同一の高さ位置になるよう形成されており、
図2に示すように、トンネル部8側の外側突出部82における上壁83と、サイドシル12側の上壁91との間には、シートを支持するシート支持フレーム90が水平に取付けられている。
【0058】
<ダッシュパネルの構造>
ところで、
図3に示すように、上記ダッシュパネル3は、上下方向に延びるダッシュパネル本体3Aと、該ダッシュパネル本体3Aの上端から後方かつ上方に延びてフロントウインドガラス27の下端を支持する上片部3Uと、ダッシュパネル本体3Aの下端から後方かつ下方に延びてフロアパネル7に連結される下片部3Lとを備えている。
【0059】
<二重壁パネルの構造>
図3に示すように、上記ダッシュパネル3は乗員空間としての車室2の前方側の壁部を形成し、上記フロアパネル7、キックアップ部9、リヤフロア10は車室2の下方側の壁部を形成し、上記ルーフパネル24は車室2の上方側の壁部を形成するものである。
そして、これらの各壁部(ダッシュパネル3、フロアパネル7、キックアップ部9、リヤフロア10、ルーフパネル24)は二重壁パネル50にて形成されている。
【0060】
図2、
図3に示すように、上記二重壁パネル50は、対向する内壁51と外壁52との間に、これら各壁の内部全体に閉断面53(つまり密閉空間)が形成され、該閉断面53に所定厚みを有する。コア材54が封入され、該コア材54で密閉中間層55を形成したものであり、内壁51と外壁52の周縁部は、二重壁パネル50の周縁部で、互いに連接されている。
上記各壁部を形成する二重壁パネル50の内壁51は車室2側に位置しており、外壁52は車外側に位置している。
【0061】
ここで、上記内壁51、外壁52は、アルミニウム、マグネシウム、鉄その他の金属やポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFRPやGFRP等の繊維強化プラスチックその他の樹脂で形成される。また、上記コア材54の所定厚みとしては、実用性を考慮して15mm〜50mmの範囲が好ましい。
【0062】
密閉中間層55は、二重壁パネル50の閉断面53内にコア材54が充填されて形成されており、防音性および断熱性の少なくとも一方の性能(この実施形態では両方)を有している。コア材54は、例えば、繊維質または連続気泡構造を有する材質で形成されており、固体相と気相とが混在して構成されている。気相としては、例えば、空気、SF6(六フッ化硫黄)ガスなどの簡易圧縮性に優れた気体、または、キセノンガスやクリプトンガスなどの各種ガスが用いられる。また、気相として、負圧または真空を適用してもよい。
ここで、上記密閉中間層55内にコア材54を充填する構造に代えて、密閉中間層55を空気層にて構成する構造を採用してもよい。
【0063】
図3に示すように、乗員空間である車室2の前方側の壁部を形成するダッシュパネル3において、ダッシュパネル本体3Aの内壁51と外壁52とは、平坦かつ平行に形成されており、上片部3Uおよび下片部3Lの内壁51と外壁52とは、平坦かつ略平行に形成されており、これらの各内壁51と外壁52とのパネル面に対する水平な方向の剛性を略等しく設定して、側突に対する耐力が内壁51と外壁52とで略等しくなるよう構成している。
【0064】
上記剛性を略等しくする手段としては、内壁51と外壁52との材質および板厚を同一にする手段と、内壁51と外壁52との材質を異ならせて、上記剛性が略等しくなるよう板厚を調整する手段と、の何れを用いてもよい。
【0065】
図2、
図3に示すように、フロアパネル7、キックアップ部9、リヤフロア10、ルーフパネル24を構成する二重壁パネル50の内壁51と外壁52とは、平坦かつ平行に形成されており、これらの各内壁51と外壁52とのパネル面に対する水平な方向の剛性を略等しく設定して、前突および側突に対する耐力が内壁51と外壁52とで略等しくなるよう構成している。なお、上記剛性を略等しくする手段については上述同様である。
【0066】
図2、
図4の(a)に示すように、フロアパネル7を構成する二重壁パネル50において、密閉中間層55の車幅方向内側端部を覆う内側壁56と、密閉中間層55の車幅方向外側端部を覆う外側壁57とを設けている。
上記内側壁56は下側程、車幅方向外側に位置するよう形成されており、上記外側壁57は、下側程、車幅方向内側に位置するよう形成されている。
【0067】
そして、トンネル部8側の側壁85の傾斜構造(傾斜角度)と、フロアパネル7側の内側壁56の傾斜構造(傾斜角度)とを同一または略同一に設定すると共に、サイドシル12側の内側壁93の傾斜構造と、フロアパネル7側の外側壁57の傾斜構造とを同一または略同一に設定して(側壁85と内側壁93との開き角度に対して、内側壁56と外側壁57との開き角度が大きい場合を含む)、二重壁パネル50から成るフロアパネル7を上記側壁85と内側壁93との間に楔構造にて嵌合固定している。
【0068】
また、床下走行風整流の観点で、フロアパネル7の下面と、トンネル部8側における外側突出部82の下壁84の下面と、サイドシル12の下壁92の下面と、が面一状になるよう形成される一方で、側突荷重伝達性の観点で、二重壁パネルの内壁51の上面は、上側の各節部86,95の上面と同一高さ位置になるよう形成されている。
【0069】
図4の(a)に示すように、二重壁パネル50の内壁51と、サイドシル12の上側の節部95と、トンネル部8における外側突出部82の上側の節部86とを同一高さ位置に設けると、側突荷重を節部95、内壁51を介してトンネル部8側の節部86に伝達して、その荷重分散を図ることができる。
【0070】
ここで、上記二重壁パネル50の左右両端部は締結部材を用いて、サイドシル12およびトンネル部8に締結することが好ましく、押出し成形部材から成るサイドシル12、トンネル部8に対しては、ウエルドナットの溶接が困難であるから、ボルト締結部位にタッピングネジを形成するか、またはターンナットを用いることが有効である。
【0071】
図2、
図4の(a)に示すように、フロアパネル7を構成する二重壁パネル50における内壁51の上面には、カーペット58が敷設されている。
ここで、
図4の(b)に示すように、トンネル部8側の側壁85と、フロアパネル7側の内側壁56との間、並びに、サイドシル12側の内側壁93と、フロアパネル7側の外側壁57との間には、接着剤59を介設し、二重壁パネル50から成るフロアパネル7を骨格部材(トンネル部8、サイドシル12)間に嵌合接着固定してもよい。
【0072】
図1で示したアンダカバー30についても、フロアパネル7と同様に二重壁パネル50にて形成されている。なお、図中、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0073】
<衝突時の荷重伝達について>
このように構成した自動車のパネル構造において車両前突時の荷重は、
図5に矢印で示すように、上方部においては、エプロン4からフロントピラー13およびダッシュパネル3に伝達された後に、フロントウインドガラス27およびフロントピラー13からフロントヘッダ22とルーフサイドレール14に伝達され、フロントヘッダ22の車幅方向に延びる面全体で二重壁パネル50から成るルーフパネル24に伝達され、当該ルーフパネル24の二重壁閉断面構造で前突荷重を受けることができる。
【0074】
また、下方部においては、フロントサイドフレーム5およびアンダカバー30に伝達された前突荷重は、トルクボックスを介してサイドシル12に伝達されると共に、ダッシュパネル3の下端部からフロアパネル7に伝達され、当該フロアパネル7の二重壁閉断面構造で前突荷重を受けることができる。
【0075】
一方で車両側突時に荷重は、
図6に矢印で示すように、上方部においては、フロントドア18のドアサッシュ18S(
図2参照)からルーフサイドレール14に伝達された後に、二重壁パネル50から成るルーフパネル24に伝達され、当該ルーフパネル24の二重壁閉断面構造で側突荷重を受けることができる。
【0076】
また、前方部においては、フロントドア18のドア本体部18M(
図2参照)前側からヒンジピラー11に伝達された後に、二重壁パネル50から成るダッシュパネル3に伝達され、当該ダッシュパネル3の二重壁閉断面構造で側突荷重を受けることができる。
【0077】
さらに、下方部においては、フロントドア18の下部からサイドシル12に伝達された後に、二重壁パネル50から成るフロアパネル7に伝達され、当該フロアパネル7の二重壁閉断面構造で側突荷重を受けることができる。
なお、リヤドア側に側突荷重が入力された場合でもフロントドア18側と略同様にルーフパネル24、キックアップ部9、リヤフロア10の各二重壁閉断面構造で側突荷重を受けることができる。
【0078】
上述したように、本実施形態の自動車のパネル構造は、対向する内壁51と外壁52との間に、密閉中間層55が形成された二重壁パネル50を設け、該二重壁パネル50で乗員空間(車室2参照)の前後、左右、上下の少なくとも何れかの壁部が構成された自動車のパネル構造であって、上記壁部は少なくともルーフパネル24とフロアパネル7であって、上記ルーフパネル24とフロアパネル7の内壁51と外壁52とのパネル面に対する水平な方向の剛性を略等しく設定したものである(
図2、
図3参照)。
【0079】
上記構成によれば、前突荷重または側突荷重をルーフパネル24とフロアパネル7とに分散できるとともに、その際ルーフパネルとフロアパネルの各パネルの内壁51と外壁52とのパネル面に対する水平な方向の剛性を略等しく設定したので、前突荷重または側突荷重をフロアパネル7とルーフパネル24との二重壁閉断面構造の広い範囲で受けることができ、耐衝突性能を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の自動車のパネル構造においては、上記乗員空間(車室2参照)の前方側の壁部を形成するダッシュパネル3を設け、上記ダッシュパネル3は内壁51と外壁52との剛性が略等しい二重壁パネル50で構成されたものである(
図3参照)。
【0081】
上記構成によれば、側突荷重を、フロアパネル7、ルーフパネル24に加えてダッシュパネル3の二重壁閉断面構造の広い範囲で受けることができる。
【0082】
<他の実施形態>
図7の(a)は被覆層を外周面側に設けた二重壁パネルの断面図、
図7の(b)は側突荷重により二重壁パネルの内壁と外壁が一時的に二重壁外方向に撓む状態を示す説明図である。
図7に示すこの実施形態では、二重壁パネル50の内壁51および外壁52が樹脂パネル61,62で形成されている。
【0083】
上記樹脂パネル61,62を形成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFRPやGFRP等の繊維強化プラスチックを用いることができる。
また、上記二重壁パネル50のパネル面における車幅方向外方の端部側から当該二重壁パネル50の側端縁の上下方向中間に延びるテーパ状の傾斜部63,64が設けられている。
【0084】
上側の傾斜部63は内壁51に形成されており、下側の傾斜部64は外壁52に形成されている。
そして、車両の前後、左右の少なくとも何れかの方向視において、上記二重壁パネル50の車室側の面と、車外側の面との双方、詳しくは、内壁51と外壁52との全外周面側が高歪速度域で引張り強度が高い被覆層で覆われている。ここで、高歪速度域とは、車両の衝突域を示し、1〜10
3/sの範囲である。また、引張り強度が高い被覆層70は、例えば、高強度ラバーで形成される。
【0085】
二重壁パネル50の内壁51と外壁52の外周面側に上記被覆層70(高強度ラバーの層)を形成する場合、コーティングによるコーティング層としてもよく、または、フィルム貼付けによる貼付けフィルム層としてもよい。
【0086】
被覆層70としてコーティング層を採用した場合には、当該被覆層70をスプレー塗布等により形成できるので、樹脂パネル61,62の生産性が良く、特に、
図7に示すように、被覆層70を外周面側に設ける際には、外方から被覆層70を形成することができるので、樹脂パネル61,62生産性のさらなる向上を図ることができる。
【0087】
被覆層70として貼付けフィルム層を採用した場合には、内壁51、外壁52を樹脂の押出し成形により連続断面に形成する際、上記貼付けフィルム層を押出し成形時に同時に貼付けることができるので、樹脂パネル61,62の生産性を確保することができる。
【0088】
図7の(a)に示す自動車のパネル構造において、サイドシル12の外方から側突荷重が入力すると、上側の傾斜部63は、その外端から内端にかけて上方に傾斜しており、下側の傾斜部64は、その外端から内端にかけて下方に傾斜しているので、これら傾斜部63,64により二重壁パネル50の内壁と外壁の二重壁外への変形が誘発され、側突荷重により樹脂パネル61,62が
図7の(a)に示すノーマル状態から
図7の(b)に示すように、一旦二重壁外方向に撓むが、高強度ラバー等により形成された被覆層70により樹脂パネル61,62の割れを防止すると共に、当該被覆層70の復元力(矢印a,b参照)により、上記撓みを抑制して、安定した高エネルギの吸収が可能になる。なお、
図7の(b)において、仮想線αはサイドシル12の側突前の位置を示す。
【0089】
このように、
図7に示した実施形態においては、上記二重壁パネル50の内壁51および外壁52は樹脂パネル61,62で構成され、車両の前後、左右の少なくとも何れかの方向視において、上記二重壁パネル50の車室2側の面と車外側の面との少なくとも何れか一方の面が、高歪速度域で引張り強度が高い被覆層70で覆われたものである(
図7参照)。
【0090】
上記構成によれば、二重壁パネル50を樹脂パネル61,62で形成した際、上記被覆層70を設けることで、衝突荷重による樹脂パネル61,62の割れを防止することができ、安定した高エネルギの吸収が可能になる。また、二重壁パネルを特別高価な材料で成形する必要はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、繊維強化プラスチックなど一般的に知られている安価な材料で形成できる
。
また、上記実施形態においては、上記被覆層70は、内壁51、外壁52の外周面側に設けられたものである(
図7参照)。
【0091】
上記構成によれば、被覆層70を外周面側に設けたので、衝突荷重により樹脂パネル61,62が一旦二重壁外方向に撓んだ際、被覆層70の復元力により、この撓みを抑制して、安定した高エネルギの吸収が可能になる。
【0092】
さらに、上記実施形態においては、上記二重壁パネル50のパネル面の端部側から当該二重壁パネル50の側端縁中間に延びるテーパ状の傾斜部63,64が設けられたものである(
図7参照)。
上記構成によれば、上記テーパ状の傾斜部63,64にて二重壁パネル50の内壁と外壁の二重壁外方向への変形を誘発することができるので、衝突時に二重壁パネルの内壁と外壁を二重壁外方向への変形させたい場合に有効となる。
【0093】
なお、必要に応じてトンネル部8における外側突出部82の側壁85と対向する二重壁パネル50の車幅方向内方側にも傾斜部63,64と左右略対称形状のテーパ状で、かつ、その長さが相対的に短い小形状の傾斜部を形成してもよい。
【0094】
図7で示した実施形態においても、その他の構成、作用、効果については
図4で示した先の実施形態とほぼ同様であるから、
図7において、
図4と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0095】
<他の実施形態>
図8の(a)は被覆層を内周面側に設けた二重壁パネルの断面図、
図8の(b)は側突荷重により二重壁パネルの内壁と外壁が一時的に二重壁内方向に撓む状態を示す説明図である。
図8に示すこの実施形態では、二重壁パネル50の内壁51および外壁52が樹脂パネル61,62で形成されている。
【0096】
上記樹脂パネル61,62を形成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFRPやGFRP等の繊維強化プラスチックを用いることができる。
また、二重壁パネル50のパネル面における車幅方向外側の上端部側から車幅方向外上に延びる傾斜面65aを有する突起部65と、車幅方向外側の下端部側から車幅方向外下に延びる傾斜面66aを有する突起部66と、車幅方向内側の下端部側から車幅方向内下に延びる傾斜面67aを有する突起部67と、が形成されている。
【0097】
ここで、上側の突起部65は内壁51に形成されており、下側の突起部66,67は外壁52に形成されている。
そして、車両の前後、左右の少なくとも何れかの方向視において、二重壁パネル50を形成する外壁52の車室側の面(上側の面)と、二重壁パネル50を形成する内壁51の車外側の面(下側の面)との少なくとも何れか一方の面(この実施形態では双方の面)、並びに、内側壁56と外側壁57の閉断面53側の面が、高歪速度域で引張り強度が高い被覆層70で覆われている。
【0098】
すなわち、二重壁パネル50の全内周面側に上記被覆層70が設けられており、該被覆層70としては
図7で示した実施形態と同様に、高強度ラバーを用いている。
ここで、上記被覆層70はコーティング層または貼付けフィルム層により形成される。
【0099】
図8の(a)に示す自動車のパネル構造において、サイドシル12の外方から側突荷重が入力すると、上側の突起部65は、その外端から内端にかけて下方に傾斜しており、車幅方向外側下部の突起部66は、その外端から内端にかけて上方に傾斜しており、車幅方向内側下部の突起部67は、その車幅方向内側から車幅方向外側にかけて上方に傾斜しているので、これらの各突起部65,66,67により二重壁パネル50の内壁と外壁の二重壁内方向への変形が誘発され、側突荷重により樹脂パネル61,62が
図8の(a)に示すノーマル状態から
図8の(b)に示すように、一旦内方向に撓むが、高強度ラバー等により形成された被覆層70により樹脂パネル61,62の割れを防止すると共に、当該被覆層70の復元力(矢印c,d参照)により、上記撓みを抑制して、安定した高エネルギの吸収が可能になる。
このように、
図8に示した実施形態においては、上記被覆層70は、内壁51、外壁52の内周面側に設けられたものである(
図8参照)。
【0100】
上記構成によれば、被覆層70を内周面側に設けたので、衝突荷重により樹脂パネル61,62が一旦二重壁内方向に撓んだ際、被覆層70の復元力により、この撓みを抑制し、底付き変形を防止して、安定した高エネルギの吸収が可能になる。
【0101】
また、上記被覆層70が内周面側に設けられるので、当該被覆層70の耐久性が向上すると共に、上記内壁51にカーペット58(
図4参照)を溶着する際、内壁51を構成する素材と、カーペット58を構成する素材との相性の制約が緩和される。
【0102】
また、上記実施形態においては、上記二重壁パネル50のパネル面の端部側から車幅方向外上または車幅方向外下に延びる傾斜面65a,66aを有する突起部65,66が設けられたものである(
図8参照)。
上記構成によれば、上記突起部65,66にて二重壁パネル50の内壁51と外壁52の二重壁内方向への変形を誘発することができるので、衝突時に二重壁パネルの内壁と外壁を二重壁内方向へ変形させたい場合に有効となる。
【0103】
なお、必要に応じて、トンネル部8における外側突出部82の側壁85と対向する二重壁パネル50の車幅方向内方側上部にも突起部65と左右略対称形状のテーパ状で、かつ、その長さが相対的に短い小形状の突起部を形成してもよい。
【0104】
図8で示した実施形態においても、その他の構成、作用、効果については
図4、
図7で示した実施形態とほぼ同様であるから、
図8において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0105】
<さらに他の実施形態>
図9の(a)は被覆層を内外両周面側に設けた二重壁パネルの断面図、
図9の(b)は側突荷重により二重壁パネルが一時的に撓む状態を示す説明図である。
図9に示すこの実施形態においても、二重壁パネル50の内壁51および外壁52が樹脂パネル61,62で形成されている。
【0106】
上記樹脂パネル61,62を形成する樹脂としては、上述同様に、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFRPやGFRP等の繊維強化プラスチックを用いることができる。
【0107】
この実施形態においては、二重壁パネル50を形成する外壁52のパネル面の下側の端部側から当該二重壁パネル50の車幅方向外側の端縁中間に延びるテーパ状の傾斜部64が設けられると共に、二重壁パネル50を形成する内壁51のパネル面の車幅方向外側の端部側から車幅方向外上または車幅方向外下(この実施例では、車幅方向外上)に延びる傾斜面65aを有する突起部65が設けられている。
【0108】
図9に示すように、この実施形態においては、樹脂パネル61より成る内壁51の内周全体、つまり内壁51の下面全体と、樹脂パネル62より成る外壁52の外周全体、つまり外壁52の下面全体とが被覆層70で覆われている。
【0109】
この被覆層70としては、高歪速度域で引張り強度が高い高強度ラバーを用いることができる。
【0110】
さらに、上記被覆層70は、外壁52における内側壁56の車幅方向内側の面からその上端を介して車幅方向外側の面に折返すよう一体形成されると共に、当該外壁52における外側壁57の車幅方向外側の面からその上端を介して車幅方向内側の面に折返すよう一体形成されている。
【0111】
換言すれば、上記被覆層70は外壁52の内側壁56の上端を含む内外周全体を覆うと共に、外壁52の外側壁57の上端を含む内外周全体を覆うよう構成されており、この構成により内側壁56と外側壁57との衝突耐力の向上を図っている。
また、上記被覆層70は、コーティング層または貼付けフィルム層の何れで形成してもよい。
【0112】
図9の(a)に示す自動車のパネル構造において、サイドシル12の外方から側突荷重が入力すると、上側の突起部65は、その外端から内端にかけて下方に傾斜しており、下側の傾斜部64も、その外端から内端にかけて下方に傾斜しているので、突起部65により内壁51には二重壁内方向への変形が誘発され、傾斜部64により外壁52には二重壁外方向への変形が誘発されて、側突荷重により樹脂パネル61,62が
図9の(a)に示すノーマル状態から
図9の(b)に示すように、車両正面視で一旦車両下方に湾曲する凹形状に撓むが、高強度ラバー等により形成された被覆層70により樹脂パネル61,62の割れを防止すると共に、当該被覆層70の復元力(矢印c,b参照)により、上記撓みを抑制して、安定した高エネルギの吸収が可能になる。
【0113】
このように、
図9に示した実施形態においては、上記二重壁パネル50の側端縁には、該二重壁パネル50のパネル面の端部側から当該二重壁パネル50の側端縁中間に延びるテーパ状の傾斜部64が設けられると共に、二重壁パネル50のパネル面の端部側から車幅方向外上または車幅方向外下(この実施形態では、車幅方向外上)に延びる傾斜面65aを有する突起部65が設けられたものである(
図9参照)。
【0114】
上記構成によれば、上記テーパ状の傾斜部64にて二重壁パネル50の二重壁外方向への変形を誘発し、また、上記突起部65にて二重壁パネル50の二重壁内方向への変形を誘発するので、二重壁パネル50の内壁51と外壁52の両方を同じ方向に変形させたい場合に有効となる。
【0115】
図9で示した実施形態においても、その他の構成、作用、効果については、
図4、
図7、
図8で示した実施形態とほぼ同様であるから、
図9において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0116】
この発明の構成と、上記実施形態との対応において、
この発明の乗員空間は、実施形態の車室2に対応し、以下同様に、
壁部は、ルーフパネル24、フロアパネル7、ダッシュパネル3に対応するも、
この発明は、上記実施形態の構成のみに限定されるものではない。
【0117】
例えば、
図7、
図8、
図9で示した二重壁パネル50の構造を、フロアパネル7の他にダッシュパネル3、キックアップ部9、リヤフロア10、ルーフパネル24、アンダカバー30等の他の壁部に適用してもよい。