(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シール層(C)を構成する共重合体の中で最も低い融点を有する樹脂の融点の温度が、120〜130℃の範囲であり、その含有量が50重量%以上85重量%以下の範囲である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂多層フィルム。
シール層(C)を構成する共重合体の中で最も高い融点を有する樹脂の融点が130℃以上140℃以下であり、その含有量が15〜50重量%の範囲である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂多層フィルム。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン系樹脂フィルムは光学的性質、機械的性質、包装適性などに優れていることから食品包装及び繊維包装などの包装分野に広く使用されている。特に、防曇フィルムは野菜などの青果物包装に広く使用されている。
【0003】
青果物包装においては、昨今の農業人口の低下から農作業の省力化が求められており、自動包装装置の普及が広がっている。青果物の自動包装装置としてはいわゆるピロー包装方式が採用されており、ヒートシールによる製袋工程と、内容物の充填工程を同時に行う事が出来る。
【0004】
ピロー包装による自動包装適性に使用できるものとして、結晶性ポリプロピレンを主成分とする2軸延伸フィルム状物からなる外層と、外層の持つ融点よりも10〜90℃低い融点を持つオレフィン系ポリマーよりなるフィルム状物からなる生野菜包装用積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、特許文献1で開示されたフィルムは、ヒートシール層にプロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体を使用しているので低温シール性とシール強度の両立の点で問題がある。
また、ポリプロピレン系樹脂を主体とした基層と、プロピレン・ブテン−1共重合体及びプロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体を用いたポリオレフィン系樹脂を主体とするヒートシール層とを有する2層以上の積層体からなる包装用フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、シール強度が十分でないという問題がある。
【0005】
一方で、自動包装化されていない青果物もいまだ多数あり、製袋と充填を別途実施する用途もある。その場合の製袋工程の多くは溶断シール方式で実施されている。
青果物包装用フィルムとしてピロー包装、溶断シール包装の兼用が可能であれば、農家やコンバーターなどの消費者の立場で、在庫管理などの面でメリットがある。
しかし、従来のピロー包装可能なフィルムで溶断シールも可能なものはなかった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムの特性
1−1.基層(A)
本発明において、基層(A)は、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体及びプロピレン・ペンテン共重合体からなる群から選らばれた少なくとも1種の重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物を主体とする必要がある。基層全体の融点は145℃以上である事が好ましく、更には150℃以上であることが好ましい。145℃未満ではフィルム全体としての耐熱性に乏しく、自動包装した際に、包装体の外観が損なわれる可能性がある。また、メルトフロ−レ−ト(MFR)は0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲を例示できる。
【0011】
基層(A)を形成する樹脂中には防曇剤を添加する必要がある。防曇剤を添加しない場合、青果物を包装した際に内部が曇り、また腐敗が進みやすくなるため、商品価値が低下してしまう。
本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムの防曇性発現のメカニズムとしては、基層(A)を形成する樹脂中に防曇剤を添加することで、フィルム製造時及びフィルム形成後の保管時に、防曇剤が表面層(B)、シール層(C)へ順次移行し、当該フィルム表面が防曇性を有する状態になる。収穫後も生理作用を持続することが特徴である青果物を包装対象としたときに、その効果を発揮することができる。
そして、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、包装体は冷凍保存よりもむしろ室温雰囲気での保存が望まれるところから、保存、流通時の気温変化を考慮して、5〜30℃の間で温度変化を繰り返す経過中継続して防曇性を示すような防曇剤を選定することが好ましい。
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムの基層(A)を形成する樹脂中に添加する防曇剤としては、例えば、多価アルコ−ルの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができる。かかる防曇剤のフィルム中での存在量は全層換算で0.1〜10重量%、特に0.2〜5重量%が好ましい。
【0013】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0014】
1−2.表面層(B)
本発明において、表面層(B)は、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体及びプロピレン・エチレン共重合体からなる群から選らばれた少なくとも1種の共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を主体とし、ヒートシール立上がり温度が130℃以上140℃以下であるのが好ましい。表面層(B)のヒートシール立上がり温度を130〜140℃にするためには、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体を含むように共重合体を選択するのが好ましい。
表面層(B)のヒートシール立上がり温度とは、本発明のフィルムの表面層(B)の面同士を向かい合わせ、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度である。表面層(B)のヒートシール立上がり温度が130℃以上の場合、ピロー包装のヒートシール時に表面層(B)がシールバ−に融着しにくく、製袋しやすい。また140℃以下の場合、ピロー包装時に背貼り部分が包装体外装部と融着しやすく見栄えが良い、また包装体を重ねた際に背貼り部分が引っかからず、シールが剥がれる不具合が発生しない。
【0015】
表面層(B)の厚みはフィルム全層に対し1〜10%の範囲となるのが好ましい。10%以下の場合、溶断シール時のポリ溜りと呼ばれる融着樹脂部分が大きくなりすぎず、溶断シール強度がより向上する、1%以上の場合は表面層としての機能を発揮しやすい。
【0016】
表面層(B)の表面には防曇性を有するのが好ましい。これは青果物を包装し、スーパーなどで陳列する際に、結露などにより表面が曇ると見栄えが良くなる。
【0017】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。またフィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を配合することも可能である。
【0018】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを使用配合することができる。また、有機質の微細粒子としては、アクリル、アクリル酸メチル、スチレン−ブタジエンなどの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様にさまざまなものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。以上は後述のシール層(C)にも適合する。
【0019】
1−3.シール層(C)
本発明において、シール層(C)は、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体及びプロピレン・エチレン共重合体からなる群から選らばれた少なくとも1種の共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を主体とし、シール層(C)のヒートシール立上がり温度が115℃以上125℃以下である必要がある。表面層(C)のヒートシール立上がり温度とは、本発明のフィルムの表面層(C)の面同士を向かい合わせ、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度である。
シール層(C)のヒートシール立上がり温度が125℃以下であると、ヒートシール温度が低くても十分な強度を保持してヒートシールすることができるため自動包装する際に高速で運転することができ、また、シール部の密封性に優れ、このため防曇性を有することと相まって生鮮品の鮮度が保持され、内容物の見栄えもよく、包装体の取扱い性が優れている。
シール層(C)のヒートシール立上がり温度が125℃を超える場合は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層(A)との融点差が小さくなり、自動包装の運転速度を十分上げることができず、また、ヒートシール強度を上げるために設定温度を高くするとヒートシール時に積層フィルム全体が収縮することになり、かえってヒートシール部にしわが生ずる原因となってヒートシール部の密封不良の原因となる。
シール層(C)のヒートシール立上がり温度が115℃未満の場合、基層(A)との融点差が大きくなり過ぎることで層間剥離が発生し、自動包装に十分なシール強度を確保できなくなり、また溶断シール強度の低下にもつながる。ヒートシール層(C)のヒートシール立上がり温度を115〜125℃にするためには、プロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体の組み合わせが好ましい。
【0020】
シール層(C)のヒートシール到達強度は3.0N/15mm以上が必要である。3.0N/15mm未満では自動包装体として、内容物の脱落を防止するためには不十分である。
【0021】
シール層(C)を構成するプロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合及びプロピレン・エチレン共重合体の中で最も低い融点を有する樹脂の融点の温度が、120〜130℃の範囲であり、最も低い融点を有する樹脂が50重量%以上、85重量%以下の範囲で添加されているのが好ましい。
85重量%以下の場合、基層(A)との層間強度が増大することでシール強度が十分となり、50重量%以上では低温でのシール強度が十分となる。
従来技術では、低温シール強度を発現するために、シール層樹脂に融点の低いプロピレン−ブテンココポリマーを添加しているが、プロピレン−ブテンコポリマーはブテン成分、エチレン成分が多く含まれるため、コア層のホモポリプロピレン樹脂との相溶性が悪く、界面剥離が発生する。また、シール層厚みを厚くしているため、その傾向が増長され、本来の樹脂が有するシール強度が発現できなかった。
【0022】
シール層(C)を構成するプロピレン・エチレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体、プロピレン・エチレン共重合体の中で最も高い融点を有する樹脂の融点は好ましくは130℃以上、140℃以下であり、その含有量は15重量%以上、50重量%以下であるのが好ましい。より好ましくは130℃以上、135℃以下である。140℃以下では、低温でのヒートシール強度が十分となり、包装体としての信頼性が増すことになり、125℃以上では基層(A)との層間強度が増加しシール強度が十分となる。
このとき、シール層(C)を構成する共重合体の融点の温度が、120〜140℃の範囲であり、120〜130℃の共重合体の含有量が50重量%以上85重量%以下であり、130〜140℃の共重合体の含有量が15重量%以上50重量%以下であることがさらに好ましい。
このとき、シール層(C)を構成する共重合体の融点の温度が、120〜140℃の範囲であり、120〜130℃の共重合体の含有量が60重量%以上85重量%以下であり、130〜140℃の共重合体の含有量が15重量%以上40重量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0023】
シール層(C)の厚みはフィルム全層に対し1.5〜5%の範囲となる必要がある。1.5%未満ではヒートシール強度が不十分となり、5%よりも厚いと溶断シール強度が不十分となる。
【0024】
シール層(C)の表面には防曇性を有する必要がある。これは前述のとおり、青果物を包装し、スーパーなどで陳列、または流通する際に、内容物の生理作用により内部が曇る事を防止するためである。
【0025】
1−4.フィルム厚み
本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムのフィルム厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、包装フィルムとしてのポリプロピレン系フィルムは一般的に10〜100μm程度であり、機械的強度や透明性の点において、より好ましくは、15〜50μm程度である。
【0026】
2.本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムの製膜方法
本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムは以下に示す方法で製造することができるが、これらに制限するものではない。
例えば、積層数に見合う押出し機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で溶融積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して積層フイルムとし、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、チューブ延伸法等で延伸する方法を例示することができる。
ここで、逐次2軸延伸法にて製造する際の条件を例示すると、T型のダイスより溶融押出しした樹脂をキャスティング機にて冷却固化させて、原反シートを作成する。
溶融積層する際の温度は、240℃から300℃の範囲で、各層に使用される原料樹脂の融点を目安にして設定することが好ましい。また、キャスティングするロール温度は、樹脂の結晶化を抑え、透明性を向上させる目的で15℃から40℃の間に設定する事が好ましい。
次に、延伸に適した温度まで原反シートを加熱後、延伸ロール間の速度差を利用してシートの流れ方向に延伸する、この際の延伸倍率は、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると3倍から6倍の間に設定することが好ましい。延伸温度も、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると100℃から150℃の間に設定することが好ましい。
次に、縦延伸したシートの両耳部をテンタークリップで把持し、熱風で延伸に適した温度まで加熱しながらシートの流れと直角方向に、順次拡げながら延伸する。この際の横延伸倍率は、厚み変動と生産性を考慮して7倍から10倍の間に設定することが好ましい。延伸温度も、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると130℃から180℃の間に設定することが好ましい。
最後に、熱固定処理を150℃から200℃の範囲で行うことが好ましい。
【0027】
本発明のポリプロピレン系樹脂多層フィルムは、印刷性、ラミネート性等を向上させるために表面処理を行うことができる。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示でき、特に制限はない。連続処理が可能であり、このフィルムの製造過程の巻き取り工程前に容易に実施できるコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理を行うのが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の具体例を実施例によってさらに説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中における特性は下記の方法により評価をおこなった。
【0029】
(1)層厚み
自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムを1cm×1cmのサイズに切り出し、UV硬化性樹脂に包埋し、UVを5分間照射し固化させた。その後、ミクロトームにて断面試料を作製し、微分干渉顕微鏡にて観察し、表面層(B)、シール層(C)の厚みを測定した。サンプルは5点測定し、平均値を算出した。
【0030】
(2)ヒートシール立上がり温度
自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムのヒートシール層同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm
2、時間は1秒でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度を云い、5cm×20cmのフィルムのヒートシール層面同士を向かい合わせ、5℃ピッチで温度設定したヒートシールバー(シール面1cm×3cm)5個で同時にヒートシールして、その中央部を15mmの幅にカットし、引張試験機の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引張った際のそれぞれの強度を測定し、ヒートシール強度を算出した(単位はN/15mm)。横軸に温度、縦軸にヒートシール強度をとった線形グラフを描き、ヒートシール強度が1N/15mmを超える温度をヒートシール立上がり温度とした。
【0031】
(3)到達ヒートシール強度
自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムのヒートシール層同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm
2、時間は1秒でヒートシールし、その中央部を15mmの幅にカットし、引張試験機の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引張った際のヒートシール強度から算出した(単位はN/15mm)。
シール温度の上限を150℃とし、最大強度となった数値を到達ヒートシール強度とした。
【0032】
(4)防曇性
1.500ccの上部開口容器に50℃の温水を300cc入れる。
2.フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
3.5℃の冷室中に放置する。
4.容器内温水が完全に雰囲気温度まで冷却された状態で、フィルム面の露付着状況を5段階で評価した。
評価1級:全面露なし(付着面積0)
評価2級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
評価4級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
評価5級:全面露付着(付着面積3/4以上)
【0033】
(5)自動包装適性
自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムのヒートシール層同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm
2、時間は1秒でヒートシールした。
その際のシールバーへの表面層(B)の融着有無と、ヒートシール立ち上がり温度から以下の基準で評価した。
○:シールバーへの融着なし・立ち上がり温度115℃以上125℃以下
△:シールバーへの融着なし・立ち上がり温度115℃未満または125℃より高い
×:シールバーへの融着あり
【0034】
(6)溶断シール強度
溶断シール機(共栄印刷機械材料(株)製:PP500型)を用いて、自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムの溶断シール袋を作成した。
条件:溶断刃;刃先角度60°
シール温度;370℃
ショット数;120袋/分
上記溶断シール袋の溶断シール部を15mm幅にカットし、緩みを除いた状態で両端を引張試験機の把持部に把持(つかみ間隔:200mm)して、引張速度200mm/分で引張り、シール部が破断したときの強度から溶断シール強度(N/15mm)を算出した。測定回数は5回実施し平均した。20N/15mm以上で、溶断シール適性良好と判断した。
【0035】
(実施例1)
(1)使用樹脂
下記製造例で使用した各層を構成する樹脂は次の通りである。
[PP−1]:プロピレン単独重合体:住友化学工業(株)製「FS2011DG3」,MFR:2.5g/10分,融点:158℃
[PP−2]:プロピレン・エチレン・ブテン−1ランダム共重合体:住友化学工業(株)製「FSX66E8」,エチレン含有量:2.5モル%,ブテン含有量:7モル%,MFR:3.1g/10分,融点:133℃
[PP−3]:プロピレン・ブテン−1共重合体:住友化学工業(株)製「SPX38F4」,ブテン含有量:25モル%,MFR:8.5g/10分,融点:128℃
【0036】
(2)基層(A)樹脂構成
[PP−1]に、防曇剤としてグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB−123)を0.16重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミン(松本油脂製薬(株)、TB−12)を0.2重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、エレックス334)を0.6重量%添加したものを[PP−4]として、基層(A)形成樹脂として100重量%使用した。
【0037】
(3)表面層(B)樹脂構成
[PP−2]に、有機ポリマー微粒子(CS30:住友化学工業(株):粒子径3.5μm)1.5重量%、防曇剤としてグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB−123)を0.45重量%を樹脂温度240℃になるようにして溶融混合しペレット状にした。
この原料を[PP−5]として、表面層(B)形成用樹脂として100重量%使用した。
【0038】
(4)シール層(C)樹脂構成
[PP−2]を20重量%、[PP−3]を80重量%混合したものをシール層(C)形成用樹脂として使用した。
【0039】
3台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により表面層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、第3の押出機よりシール層(C)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(B)/基層(A)/シール層(C)の順番に、Tダイ内にて厚み比が表面層(B)/基層(A)/シール層(C)=0.6/18.7/0.7になるように積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。
引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は168℃、延伸部温度は155℃であった。
【0040】
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を163℃にて実施した後、表面層(B)表面に春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、次いで、シール層(C)に同様にコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは20μmであった。
得られた多層フィルムは本発明の要件を満足するものであり、低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを30μmとしてシール層(C)の厚み比率を2.3%、表面層の厚み比率を2.0%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを40μmとしてシール層(C)の厚み比率を1.8%、表面層の厚み比率を1.5%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
シール層(C)の厚み比率を3.0%、表面層の厚み比率を1.5%とした以外は、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0044】
(実施例5)
シール層(C)の[PP−3]添加量を70重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0045】
(実施例6)
シール層(C)の[PP−3]添加量を50重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
シール層(C)の厚み比率を10%にした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、溶断シール性に劣るものとなった。
フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0047】
(比較例2)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを40μmとしてシール層(C)の厚み比率を1%、表面層の厚み比率を1.5%にした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、シール立上がり温度が高く、自動包装適性が劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0048】
(比較例3)
シール層(C)の[PP−3]添加量を40重量%にした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、シール立上がり温度が高く、自動包装適性が劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0049】
(比較例4)
シール層(C)の[PP−3]添加量を100重量%にした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは溶断シール性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0050】
(比較例5)
シール層(C)の[PP−2]の添加を[PP−4]に変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、シール立上がり温度が高く、自動包装適性が劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0051】
(比較例6)
シール層(C)の厚み比率を6.0%、表面層の厚み比率を3.0%に変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、シール到達強度が小さく、また立上がり温度が高く、自動包装適正に劣った。さらに、溶断シール性にも劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】