(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記印刷部を構成する複数の線は、前記印刷部を形成する領域内に、予め設定した特定の配線パターンで配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷物。
前記配線パターンは、一方向に向けて線を配列したパターン、同心状に線を配置したパターン、格子状に線を配置したパターン、及び放射状に線を配置したパターンの少なくとも1のパターンであることを特徴とする請求項3に記載の印刷物。
前記配線パターンは、少なくとも1つ以上の凹版により作成され、各凹版のアライメントを合わせて印刷することにより光干渉や視差を生じさせることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の印刷物。
単位面積に配置する前記複数の線の線幅の調整によって、前記印刷部の色の濃淡表現が調整されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷物。
前記複数の線の少なくとも一部の線は、前記印刷基材の表面に対し1.5μm以上の高さを有する凸構造を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の印刷物。
前記凸構造を備える線を複数有し、その凸構造を備えた複数の線は、その線の一部の線の高さが、その他の線の高さの1.5倍以上の高さを有することを特徴する請求項7に記載の印刷物。
前記凸構造を備える線を複数有し、その凸構造を備えた複数の線のうち少なくとも一部の線は、インキを複数積層した多層構造となっていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の印刷物。
アライメントを合わせることにより、凹版に形成された予め設定した特定の配線パターンを前記印刷基材の片面若しくは表裏面に同一平面上に形成又は積層印刷することにより、視認角度により前記印刷部における色が変わることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の印刷物。
前記複数の線の上に一方向に延在し、前記線の延在方向と直交する方向の断面が多角形であるレンズ若しくは曲面形状を任意に組み合わせた形状を有するレンズを備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の印刷物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の第一及び第二の各実施形態について、図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す各実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
[第一実施形態]
本実施形態に係る印刷物1は、
図1に示すように、印刷基材2の表面の一部に、印刷部3を有する。印刷部3は、インキにより形成され且つ連続した色模様として視認される絵柄などの印刷表示で構成されている。なお、印刷部3を構成する印刷表示は、必ずしも明確な柄などの模様が視認可能なように構成されている必要はない。また、本実施形態に係る印刷部3は、印刷基材2上に2以上配置されていてもよい。
本実施形態に係る印刷物1は、印刷基材2と印刷部3とを合わせた総厚さが、例えば5.0μm以上2000.0μm以下の範囲内である。なお、印刷基材2上には、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分を有していてもよい。また、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分の一部として、本実施形態に係る印刷部3が配置されていてもよい。また、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分は、例えば従来のように網点の集合で絵柄その他の印刷表示がなされていてもよい。
【0012】
本実施形態では、絵柄その他の印刷表示からなる印刷部3は、
図2に示すように、例えば、複数本の線4を組み合わせて構成される。本実施形態に係る線4は、目視では視認不可能な線幅Dを有し、その線幅Dは、例えば100μm以下である。このとき、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色等から選択される、少なくとも2色の有色の線4の組合せで印刷部3を構成することで、微細カラー印刷を表現することができる。なお、色の表示としては1色の有色の線4で印刷部3を構成するようにしても構わない。また、1色の有色の線4で印刷部3を構成する場合、線幅Dや後述する線間の隙間Sの調整によって濃淡を持った色表示にすることが好ましい。ここで、本実施形態における「線幅D」とは、線4の延在方向と直交する方向の線幅を意味する。
【0013】
また、印刷部3を表現する複数の線4同士の配置は、隣り合う線4相互の線間の隙間Sが、その隙間Sを構成する2本の線4のうちの線幅Dが狭い線4側の線幅Dの50倍以下になるように設定されている。隙間Sの寸法を線幅Dの50倍以下に設定することで、連続した色模様に視認可能となる。また、隙間Sの寸法が線幅Dの50倍を越えると、線間の非印刷部分(隙間S)が視認されるおそれがある。なお、線4同士が交差していても良く、交差位置では、当然に間隔(隙間S)は「0」である。ここで、本実施形態における「隙間S」とは、隣り合う2本の線4の間に位置する非印刷部分であって、その非印刷部分の延在方向と直交する方向の幅を意味する。
【0014】
また、印刷部3を構成する印刷表現の色の濃淡(印刷部3の色の濃淡表現)は、複数の線4を一方向に沿って並列して印刷部3を構成する場合、単位面積当たりに配置する線4の線幅Dを変更することで調整される。
ここで、従来、網点で印刷を表現する場合、色の濃淡は、網点の大きさを変更することで表現している。すなわち、単位面積当たりのインキの占有率(インキ面積)を変化させることで、色の濃淡を表現している。
これに対し、本実施形態では、同じインキ面積であっても、線幅Dを変更することで色の濃淡を調整することが可能となる。例えば、10μm幅の線4を10μm間隔で配列する代わりに、100μm幅の線4を100μm間隔で配列した場合の方が、インキ面積(この例では面積率が50%)は同じであっても、目視時における色の濃さ(色差計測定値)が濃くなる。このように、本実施形態にあっては、インキ面積を変えることなく色の濃淡調整も可能となる。これによって、本実施形態では、色の濃淡調整の自由度が広がり、微細印刷であっても、より高精細な印刷表現が可能となる。
【0015】
複数の線4で印刷部3を構成する場合、複数の線4を特定の配線パターンで配置して表現する。特定の配線パターンとは、例えば複数の線4を、所定の一方向に向けて配列させるパターン、同心状に配置するパターン、格子状に配置するパターン、放射状に配置するパターンなどが考えられる。もっとも、配線パターンの規則は、上記のパターンに限定されない。線幅Dが100μm以下の線4の組合せであって、線間の隙間Sが、その隙間Sを構成する2本の線4のうちの線幅Dが狭い線4側の線幅Dの50倍以下という配線条件を満足すれば、ランダムな配置など、どのような配線パターンであっても本実施形態は適用可能である。
また、線4は、直線状に延在している必要はなく、蛇行など曲線状に延在していてもよい。又、印刷の際に、インキのかすれなどが発生する可能があるが、線4は、線幅Dの1.5倍以上の線長が有ればよい。なお、以降、色の付いた線4を有色線4と呼ぶこともある。
【0016】
次に、複数色の有色線4を組み合わせて構成される印刷部3の表現例を示す。
図3は、配線パターンが同心円状である場合の模式図である。また、
図3(a)は、印刷部3を正面から視認した状態の模式図であり、
図3(b)は、その拡大模式図である。
図3(b)に示すように、2本のマゼンタの有色線4aと1本のシアンの有色線4bとの繰り返しを中心から外周側に向けて同心円状に配置した場合には、印刷部3を目視すると紫色の金属光沢のある球状に見える。この例では、線幅Dを10μmとし、線間の隙間Sを10μmに設定した。なお、同心円状の線間の隙間Sは、同一に設定する必要はない。また、線4で表現される各円の中心は、同じ位置である必要もない。
【0017】
図4は、配線パターンが放射状である場合の模式図である。また、
図4(a)は、印刷部3を正面から視認した状態の模式図であり、
図4(b)は、その拡大模式図である。
図4(b)に示すように、複数のシアンの有色線4bを放射状に配置した場合には、目視すると
図3(a)の場合とは色彩が異なった球状に見える印刷部3を表現出来る。この例では、線幅Dを5μm、最外周での線間の隙間Sを20μmに設定した。
図5は、配線パターンが格子状である場合の模式図である。また、
図5(a)は、印刷部3を正面から視認した状態の模式図であり、
図5(b)は、その拡大模式図である。
図5(b)には、図面の縦方向(y軸方向)に配置されたシアンの有色線(縦線)4bと、図面の横方向(x軸方向)に配置されたイエローの有色線(横線)4cとにより構成された格子状の配線パターンが示されている。ここで、輪郭の線4dをシアンの有色線で円形状に配置した場合には、目視すると薄緑の球状に見える印刷部3を表現出来る。この例では、シアンの有色線4b及びイエローの有色線4cの各線幅Dを10μmとし、線間の各隙間Sを30μmに設定した。なお、上述の縦線と横線との交差角度は、90度でなくてもよい。
【0018】
図6は、線4を一方向に向けて配列した配線パターンの模式図である。また、
図6(a)は、印刷部3を正面から視認した状態の模式図であり、
図6(b)は、その拡大模式図である。
図6(b)には、2本のマゼンタの有色線4aと1本のイエローの有色線4cとを繰り返して配列して構成された配線パターンが示されている。ここで、外周の輪郭の線4dをマゼンタの有色線で円形状に配置した場合には、目視すると赤色の球状に見える印刷部3を表現出来る。この例では、マゼンタの有色線4a及びイエローの有色線4cの各線幅Dを5μmとし、線間の各隙間Sを5μmに設定した。なお、上述の各線4は、互いに平行でなくてもよい。なお、
図6は、配線パターンを構成するマゼンタの有色線4a及びイエローの有色線4cをそれぞれx軸から45°傾けた状態を示している。
【0019】
ここで、
図3から
図6では、各配線パターンを単純にするために、印刷部3の輪郭が円の場合を例示しているが、本実施形態では印刷部3の輪郭は円に限定されるものではない。印刷部3の輪郭は、矩形などの多角形状やその他の形状であってもよい。例えば、同心状の配線パターンの場合には、その多角形状の線4を同心状に配線すればよい。また、各線間の隙間Sは、等間隔である必要もない。
印刷部3で表示(視認)される色は、有色線4の組合せで設定出来る。例えば、赤は、マゼンタの有色線4a:イエローの有色線4c=2:1の面積比となるように、3原色の比率によって再現される。また、橙は、マゼンタの有色線4a:イエローの有色線4c=1:2の面積比となるように、3原色の比率によって再現される。また、緑は、シアンの有色線4b:イエローの有色線4c=1:1の面積比となるように、3原色の比率によって再現される。また、藍は、シアンの有色線4b:マゼンタの有色線4a=2:1の面積比となるように、3原色の比率によって再現される。また、紫は、シアンの有色線4b:マゼンタの有色線4a=1:2の面積比となるように、3原色の比率によって再現される。このように、表現する色に応じて複数の有色線4の比率や配列を設計する。このとき、隣り合う線4の配置を、例えば
図7に示すように規則数列的に配置することで、視認する角度により色が変化するようになる。
【0020】
印刷部3の印刷を凹版印刷によって実施すると、各線4を構成するインキが印刷基材2から盛り上がって印刷されるため好ましい。こうすることで、特定の配線パターンで規則性を持って配置された複数の有色線4の組合せで印刷部3が形成され、且つ各有色線4が盛り上がっているため、複数の有色線4によって凹凸構造が形成される。このため、印刷物1(印刷基材2)の表面に対する、視認する角度を変えることで光が干渉し色が変化して見える。特に、2以上の色の線4を組み合わせた場合に効果的である。
盛り上がっている線4の印刷基材2に対する高さは、1.5μm以上、好ましくは2μm以上である。線4が凹凸を有することで微妙な立体感を有して、規則性を持って配置することで光が効果的に干渉し、視認する角度よる色の変化がより顕著となる。立体構造の場合、印刷基材2に対する視認の角度によって、複数の色の見える比率が変更する結果、色が変化する。
【0021】
例えば、
図7に示すように、同一幅の有色線4の配列を、シアンの有色線4b、シアンの有色線4b、イエローの有色線4cという3本線の組みを、一定方向に繰り返し配列した場合、印刷部3を真上から見ると緑色に視認されるが、シアンが並ぶ側から印刷部3を見ると青緑色に視認され、イエロー側から印刷部3を見ると黄緑色に視認される。このように、2色以上の有色線4の並び方向を工夫することで、見る方向によって視認される色が変化するようになる。
なお、
図8に示すように、凸構造を有するインキ1層の高さ(層厚)Hは5μm以下が好ましい。これは、現状のグラビアオフセット印刷では、1層の安定したインキ膜厚の上限が5μm程度であるためである。安定した凸構造が形成可能であれば、5μmよりも高くても構わない。また、
図8に示すように、インキを2層塗って(2回印刷して)、多層積層(2層積層)とすることで、線4の高さHを5μmよりも高い線として構成するようにしてもよい。なお、
図8では、2層積層したインキを印刷基材2側から順に符号41、42で示している。また、
図9にインキを2層塗って(5回印刷して)、3層積層した場合を例示する。
図9では、3層積層したインキを印刷基材2側から順に符号41、42、43で示している。
【0022】
また、一つの印刷部3を構成する複数の線4の高さHにバラツキがあってもよい。バラツキがあることで、視認する角度による色の変化がより細かくなって精緻化する。この場合、一番低い線4の高さHに対し、一番高い線4の高さHが1.5倍以上であることが好ましい。
また、凸構造を有する線4の高さHにバラツキを持たせる場合に、一部の線4について、異なる色を2層以上積層して高くすることが好ましい。多層構造とする場合には、1層目の線4の高さHに対し、2層目の線4の高さHを1.5倍以上に設定することが好ましい。この場合には、視認する角度による色の変化がより細かくなって精緻化する。
【0023】
また、
図10に示すように、一層目の線4としてその断面形状が三角形状である線で形成し、その一層目の線4の一部である線41上に2層目の線42を積層し、その積層した線42の上面が平坦になるように形成してもよい。
また、凸構造を有する線4の断面形状の上部の形状は、
図11に示すような形状であってもよい。つまり、本実施形態では、線4の断面形状として、半円形、三角形、矩形、台形などが例示できる。なお、本実施形態における「断面形状」とは、線4の延在方向を直交する方向における断面形状を意味する。
ここで、上述した複数の線4で構成される印刷部3は、最大高さ粗さRzが150μm以下、算術平均粗さRaが1.0μm以上7.0μm以下の凹凸を有するように構成されることが好ましい。印刷基材2の表面に対し、複数の線4を構成するインキによる凹凸を上記範囲内にすることで、確実に視認角度による見た目の色の変化を確保することが可能となる。
【0024】
また、
図12に示すように、凹凸を有する印刷部3の上にアクリル樹脂などの透明樹脂からなる表面保護層5を形成して、印刷部3を保護するようにしてもよい。
また、凸構造を有する線4の断面形状の上部に、
図10、
図11(b)(c)に示すように、傾斜面となる傾斜部を有してもよい。凸構造を有する線4の断面形状は、凹版印刷用の印刷版に形成する溝の断面形状を調整することで可能である。凸構造を有する線4の断面形状の上部に傾斜面を有している場合には、印刷基材2に対し斜めから印刷部3を見た場合に、傾斜面が色の変化のバラエティを更に増やすことが出来て、色の変化のランダム化が生じる。
【0025】
なお、本実施形態において、印刷部3を構成する複数の線4の全部若しくは一部が、凸構造を有している必要はないものの、凸構造を有することで見る角度による色の変化を顕著にもたらすことが出来る。なお、線4が凸構造を有さない場合には、凸版印刷で線4を印刷してもよい。
このように、本実施形態によれば、微細な線4を組み合わせて色が連続して視認可能な絵柄模様などの印刷表現を形成可能となることで、高精細な印刷物(微細印刷物)1を得ることが可能となる。なお、印刷基材2は、シート状に限定されず、玩具などの立体物であっても良く、その立体物が有する表面に印刷部3が形成されていてもよい。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る印刷物1に設けた印刷部3の表示を、予め設定した特定の配線パターンにすることで光の干渉を生じさせることが可能となる。そのため、本実施形態に係る印刷物1に、例えば、簡易ホログラムによる偽造防止や、意匠性を付与することが可能となる。
上述した線4で構成される印刷部3、即ちインキの微小な盛り上がり(凸構造)を有する印刷部3は、例えばグラビアオフセット印刷法による凹版印刷で印刷することで形成することが可能である。その一例を次に説明する。
【0027】
(印刷装置の概略構成)
グラビアオフセット印刷用の印刷装置10は、
図13に示すように、凹版からなる印刷版13と転写用のブランケット12とを備えている。
印刷版13は、母材表面の転写面に、印刷する印刷部3に応じた凹部13aが形成され、その凹部13aにインキ16が充填されると共に、ドクターブレード19によって余分なインキが掻き取られる。なお、印刷版13は、印刷版固定用定盤17の上面に固定される。
【0028】
ブランケット12は、回転可能なブランケット胴14の表面に固定されている。ブランケット胴14は回転可能に台車(不図示)に支持されており、台車は架台上を移動可能に架台に支持されている。そして、ブランケット12は、印刷版13上を転動することで印刷版13の印刷面の凹部13aから、その表面(印刷面)にインキ16が転写され、更に転写されたインキ16を、基材固定用定盤18に固定された印刷基材2の表面(印刷面)に転写する。
ブランケット12は、上述のようにインキ16の授受を行うことにより転写印刷を行う。ブランケット12の表面すなわち印刷面は、例えばゴム層からなる。このゴム層として用いられるゴム材料としては、ブランケット12として公知の各種の材料を用いることができる。これらのゴム材料は、インキ16及びインキ16に用いられる溶剤の種類に対応して選択され、例えばシリコンゴムなどの溶剤吸収性のあるものが好適である。
【0029】
ゴム層単独でブランケット12を形成することも可能であるが、ゴム層はベース基材の上に設けてもよい。なお、ゴム材料で形成されるゴム層は、ベース基材上でゴム材料を硬化させることも、フィルム上のゴム材料をベース基材と貼り合わせることで設けることも可能である。ベース基材は、印刷時にブランケット胴14に取り付けられることから、例えば可撓性のあるフィルムや金属薄板で構成される。ただし、ベース基材としては、コスト及び寸法安定性から、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系フィルム、あるいはポリイミドフィルムが好適である。また、ベース基材とゴム層の間には、必要に応じてプライマー層や接着層が設けられる。また、ベース基材の下には必要に応じてクッション層が設けられる。クッション層としてはスポンジ状の材料を用いることができる。ブランケット12は、その幅方向の両端部を不図示の取付器具によって巻き締めることによって、略円筒形のブランケット胴14に固定される。
【0030】
印刷版13は、詳細は後述するが、印刷部3を構成する配線パターンに対応する複数の溝(凹部13a)を銅版、ニッケル版などの金属版、あるいはガラス版に形成し、その表面にクロムめっきやカーボンめっきによる耐摩擦性皮膜を形成してなる。また、耐摩擦性皮膜を形成した上表皮に対して、ダイヤモンドライクカーボン、フッ素系やシリコーン系の撥油剤を塗工もしくは蒸着やスパッタ等の方法を用いて表面平滑性を向上させる加工を施してもよい。
ここで、印刷部3は複数の線4から構成させるため、印刷部3を印刷するための凹部13aは、本実施形態では、線状に延在する複数の溝で構成される。
【0031】
そして、上記溝からなる凹部13aに対し、インキ16が充填されると共に、ドクターブレード19によって不要なインキが掻き取られる。
凹部13aに充填されるインキ16は、印刷分野で知られている光の3原色(赤、緑、青)や減法混色の3原色(黄、紅、藍)の他墨(黒)のインキを用いることができる。本実施形態では、印刷版13毎に、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色のうちのいずれかの発色に相当するインキを凹部13aに充填する。
インキの発色顔料としては、プロセス印刷で利用されているジスアゾイエロー、ブリリアントカーミン、フタロシアニンブルー等が有名であるが、これに限定されず、印刷分野で知られている有機顔料・無機顔料を適宜用いることができる。
【0032】
無機顔料としては、例えば、金属粒子の他、二酸化チタン、亜鉛華、鉄黒に代表される酸化物の他、水酸化物、硫化物、セレン化物、フェロシアン化物、クロム酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、炭素等がある。有機顔料としては、例えば、炭素化合物の他、ニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、レーキ系、フタロシアニン系、縮合多環材料の他、蓄光や残光顔料、紫外や赤外等ある特定の波長の光に反応して発光する金属酸化物や量子ドット等がある。
また、これら顔料を1種類用いてもよいし、複数を混合して利用してもよい。
【0033】
また、これら色を目的とした顔料に対し、導電性を目的として金属微粒子や導電性金属酸化物微粒子あるいは金属ナノワイヤや金属塩化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリプロピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体)などの導電性ポリマー等を混合して利用してもよい。
インキに含まれる溶剤としては、例えばドデカン、テトラデカンを使用する。インキに含まれる溶剤は任意のものを用いることができる。例えば、速乾性インキでは、常温で乾燥する沸点の低い溶剤(MEK、エタノール、アセトンなど)を、水性インキでは水(精製水)を、オイル系インキでは常温で蒸発しないオイル(脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、高級アルコールなど)を用いることが可能である。なお、溶剤の種類に応じて、その溶剤に対し吸収性を有するブランケット12の材料を選択することが好ましい。
【0034】
顔料以外のインキ材料として用いる樹脂材料は、透明樹脂や、色付きの樹脂、あるいは、不透明な樹脂を用いてもよい。すなわち、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の汎用プラスチックを用いることが可能である。
【0035】
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂))、COP(シクロオレフィンポリマー)、MS(メタクリル酸スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリルスチレン共重合体)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、アクリル樹脂))、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等などの熱可塑性樹脂を用いることが可能である。
【0036】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂やメラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド等の当該分野でよく知られている熱硬化性樹脂を用いることが可能である。
また、上記以外にも、インキ材料として用いる樹脂材料として、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、POM(ポリオキシメチル)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニルサルフィド)等のエンジニアプラスチックや、スーパーエンジニアプラスチックを用いることも可能である。この他にも電離放射線によって硬化するアクリルやウレタン、エポシキ、ポリエステル、チオール等の樹脂を用いることが可能である。
【0037】
(混入する光散乱粒子)
また、インキには光散乱粒子が混入されていてもよい。すなわち、光散乱粒子は、印刷物1を構成する、異なる色相のインキいずれかに含まれていてもよいし、積層した複数の層のうちいずれかに含まれていてもよい。
インキに混入させる光散乱粒子としては、例えば、真球形状粒子や不定型形状粒子が用いられる。また、光散乱粒子の材料としては、例えば、無機微粒子や有機微粒子で構成される粒子が用いられる。
【0038】
具体例としては、アクリル系粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体や、メラミン−ホルマリン縮合物の粒子、ポリウレタン系粒子、ポリエステル系粒子、シリコーン系粒子、フッ素系粒子、エポキシ粒子これらの共重合体、スメクタイト、カオリナイト、タルク等の粘土化合物粒子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化ストロンチウム等の無機酸化物粒子、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ガラス粒子等の無機微粒子を挙げることができる。
【0039】
これらの高い屈折率を有する透明な粒子は、一種類の粒子だけを混合して使用してもよいし、複数種類を混ぜて使用してもよい。また、無機微粒子や有機微粒子の表面に塗工や蒸着等によって表面加工を施したものを、一種類で使用してもよいし、複数種類を混ぜて使用してもよい。すなわち、混入する光散乱粒子には、異なる屈折率を有する少なくとも二つの光散乱粒子を含んでもよい。
なお、混入する光散乱粒子には、異なる屈折率を有する光散乱粒子の代わりに、異なるヘイズ値を有する2つ以上の光散乱粒子を含んでもよい。なお、光散乱粒子を混入する代わりに、線4を構成した状態のインキが空気を含む微細な空洞を含有するようにしてもよい。例えば、印刷するインキの材料中に発泡剤を含有させておき、その発泡剤を発泡させて、空洞を形成する。
【0040】
本実施形態における印刷基材2は、その上面に印刷によって印刷部3を含む印刷層が形成される。印刷層は、印刷基材2上面の全面に形成されている必要はない。又、本実施形態に係る印刷図柄以外の印刷が形成されてもよい。
印刷基材2は、例えば、ソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、無アルカリアルミノ硼珪酸ガラスなどのガラス板、あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)などからなるプラスチック板、プラスチックフィルムの他、クリーンペーパーやコート紙、カレンダー紙等の当該分野で知られている加工紙、ポリアクリル酸ナトリウムやポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等の当該分野で知られている水溶性ポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン等の当該分野で知られている生体適応性ポリマーが用いられる。
また、印刷基材2はシート状の材料に限られず、中空又は中実のいずれでも良く、また任意の平面又は曲面を、印刷部3を形成する印刷面とすることができる。
【0041】
(印刷方法)
次に、印刷方法について説明する。
ここで、印刷部3が例えば
図7に示すように2色の有色線4で構成される場合には、印刷する色毎に個別に2種類の印刷版13を用意して、順番に2つの印刷版13を使用した凹版印刷を行う。なお、印刷版13は、印刷する色毎に用意するほか、多層塗りを行う場合にも、その積層分の印刷版13を用意して、順番に凹版印刷を行う。
また、印刷版13毎に凹部13aを構成する溝の深さや幅を変更してもよい。又、一つの印刷版13に形成する複数の溝の一部の溝の幅や深さを他の溝の幅や深さと異なるように設計してもよい。
【0042】
以下の説明では、一つの印刷版13による一回分の凹版印刷について説明する。複数の凹版印刷を使用する場合には、上記の印刷処理を繰り返せばよい。
印刷版13を、例えばインキ溜め(不図示)においてインキに浸漬し、続けてドクターブレード19により、印刷版13の凹部13aにインキを導くと共に、印刷版13の表面から溢れ出た余分なインキを取り去る。こうすることで、
図13に示すように、印刷版13の凹部13aにインキ16を充填することができる。この際、ドクターブレード19の剪断応力によるインキの粘度変化に応じてドクターブレード19の速度は5〜300mm/secの範囲内で任意に設定することが望ましい。
【0043】
次に、
図13に示す矢印方向に向けての台車(不図示)の移動及びブランケット胴14の軸回転によって、ブランケット12の印刷面が、印刷版13に充填されたインキ16に連続的に接触する。これによって、ブランケット12の印刷面にインキ16が転写される。ブランケット12への転写速度は、例えば、10mm/secで行うことができる。このとき、ブランケット12の印刷面がインキ16内の溶剤を吸収可能な吸収性を有する材料から構成することで、ブランケット12の印刷面に形成されたインキ16の濡れ広がりが抑制される。その後、台車の移動により、インキ16が転写されたブランケット12は、印刷基材2の設置位置まで移動される。
【0044】
続けて、
図13の左側に示すように、台車の移動及びブランケット胴14の軸回転により、ブランケット12上に転写されたインキ16は、印刷基材2の印刷面に転写される。すなわち、回転するブランケット12が印刷基材2に押し付けられてインキ16の転写が行われる。ブランケット12の印刷面の回転速度は、台車の移動速度に同期させた速度に設定されている。なお、印刷基材2への転写速度は、例えば、100mm/secで行うことができる。転写されずにブランケット12の印刷面に残ったインキ16の部分は、例えば、不図示のクリーニングローラーで除去される。なお、本実施形態では転写の際に台車を移動させる場合を例示しているが、ブランケット胴14と印刷版固定用定盤17との相対位置、ブランケット胴14と基材固定用定盤18との相対位置の変化を実現できる限り、印刷版固定用定盤17、基材固定用定盤18を移動させても良く、台車、印刷版固定用定盤17、及び基材固定用定盤18の3つをそれぞれ移動させてもよい。
【0045】
その後、印刷基材2上に転写されたインキ16は硬化される。この硬化は、例えば、焼成、加熱、自然乾燥、電離放射線硬化、冷却(熱可塑性材料を含む導電性インキを用いる場合)など、使用するインキの種類及び成分に応じた各種の手段によって実行することができる。加熱による場合には、例えば、赤外線ヒータを用いることができる。これらの何れか1つ又は1つ以上を組み合わせて用いて硬化させることにより印刷物1が得られる。
なお、ブランケット12の膨潤量が所定の基準値に達すると、印刷待機時にブランケット12に吸収された溶剤が乾燥させられる機能を印刷装置10が備えていてもよい。
また、ブランケット12の印刷面の材質、使用するインキの種類及びインキ内の溶剤の種類は、上述した以外の各種のものを選択することができる。
ブランケット12は、円筒形のブランケット胴14に固定して使用したが、インキ転写時のブランケット12の印刷面形状は円筒形以外の曲面や平面であってもよい。印刷基材2はシート状のほか樹脂成形品などのように、印刷面が曲面であるものであってもよい。
【0046】
(印刷版の形成)
本実施形態に係る印刷版13は、印刷版母材9の表面を切削加工することにより形成される。また、本実施形態に係る印刷版13の凹部13aは、目的の印刷部3の印刷領域形状及び印刷の配線パターンに応じた複数の線状の溝により形成される。従来は、網点に応じたドットに対応した凹部の集合であったが、本実施形態では、印刷部3を構成する線4に応じた線状の溝によって、印刷部3の凹部13aが形成されている。
【0047】
図14に示すように、印刷版母材9は、例えばAl、Ni、Feからなる円筒体9dの表面に、内径側から外径側に向けて順に、銅めっき層9a、剥離層9b及び銅バラード層9cを同心円状に積層して形成されている。
溝形成に際しては、印刷版母材9を円の中心を軸として回転させ、外表面を形成する銅バラード層9cに向けて径方向に切削刃を作用させて切削を実施することで、線状の溝からなる複数の凹部13aが形成される。
【0048】
切削の深さは、例えば20μmである。溝で構成される凹部13aは印刷版母材9の周方向に延在していても良く、また、螺旋方向に延在していてもよい。切削による凹部13aの形成(切り込み移動)と、印刷版母材9と切削刃との回転軸に沿った相対移動(送り移動)とを交互に行うことで、溝で構成される凹部13aを周方向に延在させることができる。また、切り込み移動と送り移動とを同時かつ連続的に行うことで、凹部13aを螺旋方向に延在させることができる。軸に向かう切削刃の切り込み深さを無段階又は複数段階で変化させることで、凹部13aの幅を変化させることも可能である。印刷する線4が蛇行して延在する場合には、溝も蛇行するように形成する。
【0049】
凹部13aの幅や深さは、目的の配線パターン及びインキで形成する各線4の盛り上がり量(高さH)に応じた値に設定する。これによって、印刷版13を用いて印刷基材2上にインキ16を転写した際に、印刷基材2上に転写されるインキの線幅Dや高さHが目的とする配線パターン及びインキ16で形成する各線4の盛り上がり量(高さH)となった印刷物1を得ることが可能となる。こうすることで、単位面積当りのインキ面積が変化したり、同一インキ面積であっても各線4の線幅Dが異なったりすることで、印刷物1の色の濃淡を表現することが可能となる。
【0050】
本実施形態では、凹部13aの形成は切削刃を用いて行われる。切削刃は、単一のノーズ部と、これを挟む2つの斜行部を有し、斜行部は切削刃の切り込み方向と非平行かつ非垂直に延在する。また、切削刃は、ノーズ部に隣接する少なくとも1つの斜行部を有するのが好適である。
本実施形態における印刷版13の製造に用いられる切削刃は、単一のノーズ部と、これを挟む2つの斜行部を有する。2つの斜行部の延在方向は、切削刃の切り込み方向に対して互いに異なっており、一方の斜行部が切り込み方向に対してなす角度は任意に選択することが可能である。
【0051】
このような切削工程の後、耐磨耗性を高めるために、銅バラード層9cの表面の全体に、クロムめっき層(不図示)が形成される。また、クロムめっき層の上に蒸着によりDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を形成(不図示)することにより表面の平滑性を向上させる。そして、剥離層9bから銅バラード層9cを剥離することにより、
図15に示されるような凹部13aを有する平板の印刷版13が得られる。
本実施形態における凹部13aの形状は、深さ方向に対して線対称であっても非対称であってもよく、少なくとも1つ以上の形状を組み合わせた形であってもよい。なお、
図15や
図16に示す形状は、本実施形態における凹部13aの形状の一例である。ここで、
図15は、印刷版13の凹部13aの一例を説明する概念図であり、(a)は斜視図を、(b)は平面図をそれぞれ表す。また、
図16は、印刷版13の凹部13aの一例を説明する概念図であり、(a)は斜視図を、(b)は平面図をそれぞれ表す。
【0052】
本実施形態では切削刃を用いて印刷版13を製作したが、例えばダイシングソーやレーザー、マシニングセンタによる切削にて製作してもよい。また、多段エッチング法や多段めっき法により印刷版13を製作してもよい。
また、本実施形態では金属部材を版として用いたが、石英や金属から樹脂転写したものを印刷版13として用いてもよい。
本実施形態に係る印刷版13を含む印刷装置10によって印刷基材2上に転写されたインキ16の厚みは1層当り5μm以下でありインキ単層で印刷物1としてもよい。また、印刷基材2上に転写されたインキ16上に再度同じ加工を施し、同一若しくは異なるインキ16を積層してもよい。こうすることで、例えば、
図10や
図12に示す積層した線4の印刷が可能となる。
【0053】
また、アライメント機能を用いて、印刷基材2上に転写されたインキ16と任意の間隔で同一若しくは異なるインキ16を単層若しくは多層で転写してもよい。
本実施形態に係る印刷版13を含む印刷装置10によって印刷基材2上に転写されたインキ16を、硬化若しくは焼成することによって、
図8に示すように印刷基材2上に印刷部3が形成された印刷物1が得られる。なお、
図8は、印刷基材2の印刷面に垂直な断面における断面形状を示す。図示のとおり、転写及び乾燥後の線4の断面形状は、凹部13aの断面形状に対応して対称若しくは非対称になる。
【0054】
[第二実施形態]
本実施形態に係る印刷物1は、
図17に示すように、印刷基材2の表面の一部に、印刷部3を有する。印刷部3は、インキにより形成され且つ連続した色模様として視認される絵柄などの印刷表示で構成されている。なお、印刷部3を構成する印刷表示は、必ずしも明確な柄などの模様が視認可能なように構成されている必要はない。また、本実施形態に係る印刷部3は、印刷基材2上に2つ以上配置されていてもよい。
本実施形態に係る印刷物1は、印刷基材2と印刷部3とを合わせた総厚さが、例えば5.0μm以上300.0μm以下の範囲内である。なお、印刷基材2上には、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分を有していてもよい。また、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分の一部として、本実施形態に係る印刷部3が配置されていてもよい。また、本実施形態に係る印刷部3以外の印刷部分は、例えば従来のように網点の集合で絵柄その他の印刷表示がなされていてもよい。
【0055】
本実施形態では、絵柄その他の印刷表示からなる印刷部3は、例えば
図18に示すように、複数本の線4を組み合わせて構成される。本実施形態に係る線4は、目視では視認不可能な線幅Dを有し、その線幅Dは、例えば100μm以下である。このとき、
図19に示すように、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色等から選択される、少なくとも1色以上の有色の線4の組合せで印刷部3を構成することで、微細カラー印刷を表現できる。なお、
図18(a)には、印刷基材2のA面側に形成した印刷部3の構成が示されている。また、
図18(b)には、印刷基材2のB面側に形成した印刷部3の構成が示されている。
【0056】
印刷部3を表現する線4は、
図19に示すように、各線4を構成するパターンが線4e、線4f、線4gと複数ある場合には、隣り合う線4相互の対応する線間である線4eと4fの間が線間の隙間Sに相当する。また、仮に各線4を構成するパターンが4eと4e′のみ(単層塗り)の場合には、
図19に表記する隙間Sとなることは勿論である。
ここで、印刷部3を表現する複数の線4同士の配置は、隣り合う線4相互の線間の隙間Sが、その隙間Sを構成する2本の線4のうちの線幅Dが狭い線4側の線幅Dの50倍以下になるように設定されている。隙間Sの寸法を線幅Dの50倍以下に設定することで、連続した色模様に視認可能となる。また、隙間Sの寸法が線幅Dの50倍を越えると、線間の非印刷部分(隙間S)が視認されるおそれがある。なお、線4同士が交差していてもよく、交差位置では当然に、間隔(隙間S)は「0」である。
【0057】
本実施形態では、第一実施形態と同様に、印刷部3を表現する複数の線4同士は、凹版を用いて形成される。
図19に図示する4h及び4h′のように、同一平面上に1つの凹版を用いて特定の配線パターンで配置してもよく、夫々異なる凹版のアライメントを合わせて印刷を行うことにより、
図19に図示する線4e、線4f、線4g及び線4e′、線4f′、線4g′のように、特定の配線パターンで配置してもよい。なお、異なる凹版を用いて印刷を行う場合には、線間隔はあってもなくてもよいが、好ましくは、混色を避けるために2μm以上は隙間を置くことが望ましい。
印刷部3を表現する複数の線4同士は、
図20に図示するように、同一平面上に異なる凹版のアライメントを合わせて印刷を行うことにより積層して配置してもよい。この際、同一の凹版を用いて積層を行なうことにより、特定の部位のみ嵩高く配置してもよい。
【0058】
また、印刷部3を構成する印刷表現の色の濃淡(印刷部3の色の濃淡表現)は、複数の線4を一方向に沿って並列して印刷部3を構成する場合、単位面積当たりに配置する線4の線幅Dを変更することで調整される。
また、本実施形態によれば、同じインキ面積であっても、線幅Dを変更することで色の濃淡を調整することが可能となる。なお、この線幅Dの変更による色の濃淡調整については、第一実施形態で説明している。よって、ここではその詳細な説明については省略する。
また、本実施形態では、複数の線4で印刷部3を構成する場合、複数の線4を特定の配線パターンで配置して表現する。なお、この複数の線4による特定の配線パターンの配置については、第一実施形態で説明している。よって、ここではその詳細な説明については省略する。
【0059】
次に、複数色の有色線4を組み合わせて構成される印刷部3の表現例を示す。
図29は、配線パターンが同心円状である場合の模式図であって、実質的に
図3(b)と同じ模式図である。
図29に示すように、2本のマゼンタの有色線4iと1本のシアンの有色線4jとの繰り返しを中心から外周側に向けて同心円状に配置した場合には、印刷部3を目視すると紫色の金属光沢のある球状に見える。この例では、線幅Dを10μmとし、線間の隙間Sを10μmに設定した。なお、同心円状の線間の隙間Sは、同一に設定する必要がない。また、線4で表現される各円の中心は、同じ位置である必要もない。
【0060】
また、
図30は、配線パターンを90°間隔で分画した区画が直交する直線で配置した場合の模式図である。
図30に示すように、同一色で直交する直線を配置した場合、線4kと線4lが同一の線幅、線間隔であっても、印刷部3を目視すると光の干渉から異なる色に見える。この例では、線幅Dを10μmとし、線間の隙間Sを10μmに設定した。なお、同心状の線間の隙間Sは、同一に設定する必要はない。
図31は、アライメントをあわせることにより、印刷基材2の表裏面(A面及びB面)に、
図29と
図30に示した各配線パターンを同一中心で配置した場合の模式図である。先に示したように、夫々単独では有色の金属光沢様や角度による異なる色に視認されるが、これらを表裏で合わせることにより角度により色の異なる金属光沢様の絵柄が作成される。
【0061】
図32は、線4を一方向に向けて配列した配線パターンの模式図である。
図32に示すように、シアンの有色線4mとイエローの有色線4nとを繰り返して配列することで緑色の球状の印刷部3が表現される。この例では、線幅Dを10μmとし、線間の隙間Sを20μmに設定した。なお、各線は互いに平行でなくてもよい。
また、
図33は、線4を一方向に向けて配列した配線パターンの模式図である。
図33に示すように、黒線を一定間隔で配列することで球状の印刷部3が表現される。この例では、黒線は、線幅Dを10μmとし、線間の隙間Sを10μmに設定した。
【0062】
図34は、アライメントをあわせることにより、印刷基材2の表裏面(A面及びB面)に、
図32と
図33に示した各配線パターンを重ねて配置した場合の模式図である。先に示したように、各々単独では緑や黒といった異なる色に視認されるのみだが、これらを表裏で合わせることにより、視認角度により色が異なる絵柄が作成される。
図35は、
図34に示した例が視認角度によって色が異なる現象を図解した模式図である。
図35に示すように、視点C1から視認した場合は、B面(裏面)の透過光により黒のみが視認される。これに対し、視点C2から視認した場合は、線4e′の色がB面での線間隔の隙間から視認可能となる。
【0063】
また、視点C3から視認した場合は、線4g′の色がB面での線間隔の隙間から視認可能となる。さらに、視点C4から視認した場合は、線4f′の色がB面での線間隔の隙間から視認可能となる。そのため、線4でこれらを構成することにより、透過光の光路差の少ない薄い印刷基材2においても、隙間から視認が可能となり、印刷物1の印刷基材2を薄くすることが可能となる。
ここで、
図32から
図34では、各配線パターンを単純にするために、印刷部3の輪郭が円の場合を例示しているが、本実施形態では印刷部3の輪郭は円に限定されるものではない。印刷部3の輪郭は、矩形などの多角形状やその他の形状であってもよい。例えば、同心状の配線パターンの場合には、その多角形状の線4を同心状に配線すればよい。また、各線間の隙間Sは等間隔である必要もない。
【0064】
また、本実施形態では、印刷部3で表示(視認)される色は、有色線4の組合せで設定できる。ここで、この有色線4の組合せについては、第一実施形態で説明している。よって、ここではその詳細な説明を省略する。
なお、印刷部3の印刷を凹版印刷によって実施すると、各線4を構成するインキが印刷基材2から盛り上がって印刷されるため好ましい。こうすることで、特定の配線パターンで規則性を持って配置された複数の線4の組合せで印刷部3が形成され、且つ各線4が盛り上がっているため、複数の線4によって凹凸構造が形成される。このため、印刷物1(印刷基材2)の表面に対する、視認する角度を変えることで光が干渉し色が変化して見える。若しくは印刷基材2の表裏面(A面及びB面)に印刷をすることによる視差から視認する角度を変えることで色が変化して見える。特に、2以上の色の線4を組み合わせた場合に効果的である。
【0065】
盛り上がっている線4の印刷基材2に対する高さは、第一実施形態と同様に、1.5μm以上、好ましくは2μm以上である。線4が凹凸を有することで微妙な立体感を有して、規則性をもって配置することで光が効果的に干渉し、視認する角度よる色の変化がより顕著となる。
例えば、
図35に示すように、同一幅の有色線4の配列を、マゼンタの有色線4e、マゼンタの有色線4f、イエローの有色線4gという3本線の組みを、表面(A面)に一定方向に繰り返し配列し、かつ裏面(B面)に黒線4hを繰り返し配列することで、印刷部3を真上から見ると黒色に視認されるが、マゼンタが並ぶ側から印刷部3を見るとピンク色に視認され、イエロー側から印刷部3を見ると黄色に視認される。このように、2色以上の有色線4の並び方向を工夫することで、見る方向によって視認される色が変化するようになる。
【0066】
なお、
図19に示すように、凸構造を有するインキ1層の高さ(層厚)Hは、第一実施形態と同様、5μm以下が好ましい。ここで、凸構造を有するインキ1層の高さHについては、第一実施形態で説明している。よって、ここではその詳細な説明を省略する。
また、本実施形態では、第一実施形態と同様、
図22や
図23に示すように、凹凸を有する印刷部3の上にアクリル樹脂などの透明樹脂からなる表面保護層5を形成して、印刷部3を保護するようにしてもよい。また、この表面保護層5にレンズ機能を持たせてもよい。また、この表面保護層5に、微細粒子を分散混入させてもよい。微細粒子としては、真球形状もしくは不定型形状粒子が用いられる。
【0067】
また、
図24に示すように、印刷部3上にレンズ6を形成してもよい。レンズ6は、例えば、紙面奥行き方向に延設されている。また、本実施形態で使用可能なレンズは、例えば、表面形状が平坦面と凸状の曲面とを有するシリンドリカルレンズアレイや、プリズムレンズアレイもしくはマイクロレンズアレイもしくはこれらを複合してなる形状のレンズアレイである。また、上述したレンズアレイ以外にも略同一又は非対称の多角錐、円錐もしくは多角台錐もしくは円台錐もしくは多角柱もしくは円柱などの柱状、もしくは直方体もしくは球状もしくは半球状もしくは楕円体が、少なくとも1種類以上、ストライプ状もしくは点状、もしくは不規則に配列されて成型されたレンズを用いることができる。
【0068】
また、
図25に示すように、印刷部3の上に不均一にレンズ6を形成してもよい。また、
図25に示すように印刷部3上にレンズ6を形成してもよいが、
図26に示すように、予め形成されたレンズ6の裏面側に印刷部3を形成してもよく、例えば粘着材を介して一体形成してもよい。一体形成の方法としては、
図27に示すように、粘着材7を介して印刷基材2の裏面(B面)同士に接着してもよく、
図28に示すように、印刷部3の上に接着してもよい。
一体形成するために用いる粘着材7としては、例えば、酢酸ビニルの他、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘着材が挙げられる。いずれの場合も高温で使用されるため、100℃で貯蔵弾性率G':1.0E+04Pa以上であることが望ましい。これよりも貯蔵弾性率の値が低い場合、使用中に粘着材7と印刷基材2がずれてしまう可能性がある。
【0069】
粘着材7やレンズ6の中に屈折率の異なる有機粒子や無機粒子などの透明粒子等を混ぜてもよい。また、粘着材7は、両面テープ状のものでもよいし、単層のものでもよい。また、粘着材7は、予めシート状に加工したものを用いてもよいし、印刷基材2の所望箇所に直接塗布してもよい。また、粘着材7と隣接する面には、予めコロナ処理を施してもよい。
接・粘着剤層(粘着材7)を塗工する方法として、例えば、押出し塗工でもよく、コンマコーター等の各種塗工装置、印刷方式、ディスペンサーやスプレーを用いる方法、又は筆等を用いた手作業による塗工であってもよい。
【0070】
微細粒子の材料としては、無機微粒子又は有機微粒子からなる粒子が用いられる。具体例としては、アクリル系粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン−ホルマリン縮合物の粒子、ポリウレタン系粒子、ポリエステル系粒子、シリコーン系粒子、フッ素系粒子、これらの共重合体、スメクタイト、カオリナイト、タルクなどの粘土化合物粒子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化ストロンチウムなどの無機酸化物粒子、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ガラス粒子などの無機微粒子を挙げることができる。また、これら粒子を1種類で使用してもよいし、複数種類を混ぜて使用してもよい。
【0071】
なお、微細粒子の代わりに空気を含む微細な空洞を作成する場合、予め主材となる材質中に含有された発泡剤を発泡させて作成してもよい。また、無機微粒子や有機微粒子の表面に塗工や蒸着等によって表面加工を施したものを1種類で使用してもよいし、複数種類を混ぜて使用してもよい。
また、凸構造を有する線4の断面形状の上部に、傾斜面となる傾斜部を有してもよい。凸構造を有する線4の断面形状は、凹版印刷用の印刷版に形成する溝の断面形状を調整することで可能である。凸構造を有する線4の断面形状の上部に傾斜面を有している場合には、印刷基材2に対して斜めから印刷部3を見た場合に、傾斜面が色の変化のバラエティを更に増やすことができて、色の変化のランダム化が生じる。
【0072】
なお、本実施形態において、印刷部3を構成する複数の線4の全部若しくは一部が、凸構造を有している必要はないものの、凸構造を有することで見る角度による色の変化を顕著にもたらすことができる。なお、線4が凸構造を有さない場合には、凸版印刷で線4を印刷してもよい。
このように、本実施形態によれば、微細な線4を組み合わせて色が連続して視認可能な絵柄模様などの印刷表現を形成可能となることで、高精細な印刷物(微細印刷物)1を得ることが可能となる。なお、印刷基材2は、シート状に限定されず、玩具などの立体物であっても良く、その立体物が有する表面に印刷部3が形成されていてもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る印刷物1に設けた印刷部3の表示を、予め設定した特定の配線パターンにすることで光の干渉を生じさせることが可能となる。そのため、本実施形態に係る印刷物1に、例えば、簡易ホログラムによる偽造防止や、意匠性を付与することが可能となる。
上述した線4で構成される印刷部3、即ちインキの微小な盛り上がり(凸構造)を有する印刷部3は、第一実施形態と同様に、例えばグラビアオフセット印刷法による凹版印刷で印刷することで形成することが可能である。
【0074】
(印刷装置の概略構成)
本実施形態で使用可能なグラビアオフセット印刷用の印刷装置は、第一実施形態で説明した印刷装置10と同じものである。また、印刷装置10で用いる材料等も第一実施形態で説明した材料等と同じである。よって、ここでは、それらの詳細な説明については省略する。
【0075】
(混入する光散乱粒子)
本実施形態では、インキに光散乱粒子を混入してもよい。ここで、このインキに混入可能な光散乱粒子は、第一実施形態で説明した光散乱粒子と同じものである。よって、ここでは、その詳細な説明については省略する。
【0076】
(印刷方法)
本実施形態における印刷方法は、第一実施形態で説明した印刷方法と同じである。よって、ここでは、その詳細な説明については省略する。
なお、本実施形態において、複数の凹版からなる印刷版13を使用して配線パターンを重ねる場合には、アライメントを合わせるための印刷処理を施してもよい。また、アライメント形状は、円や十字、放射線形状でもよく、カメラによる画像認識時に上下左右の合わせ位置が明確に示されているものを利用することができる。アライメントは、印刷物の領域外に設置されており、少なくとも印刷物に対して対角の2点以上存在することが望ましい。アライメント精度は、±10μm以内あることが望ましいが、更に望ましくは±5μm以内あることが望ましい。
アライメント精度が、上記の範囲を逸脱した場合には、線が重なってしまい、設定した色とは異なる色を示すことや、光干渉を生じず、視差画像を作成することが困難になる可能性がある。このように、アライメントを合わせて印刷することで、複数の凹版からなる印刷版13を用いて予め設定した特定の配線パターンを印刷することが可能となる。
【0077】
(印刷版の形成)
本実施形態における印刷版の形成方法は、第一実施形態で説明した印刷版13の形成方法と同じである。よって、ここでは、その詳細な説明については省略する。
【0078】
(その他の形態)
本発明は、上述した各実施形態に示された態様のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
例えば、上述した各実施形態では、平板の印刷版13を用いて転写を行っていたが、これに限られず、円筒形状の印刷版を用いて転写を行ってもよい。
また、上述した各実施形態のうち切削刃を用いるものでは、単一のノーズ部を有する切削刃によって切削を行ったが、これに限られず、複数のノーズ部を有する異形切削刃によって切削を行ってもよい。
【0079】
また、上述した各実施形態では、ブランケット12を介して印刷基材2にインキ16を転写していたが、これに限られず、印刷版13から印刷基材2にインキ16を直接転写してもよい。
また、上述した各実施形態では、インキ16の印刷パターンが印刷基材2の上に形成されていることとしたが、これに限られず、印刷パターンが印刷基材2の上に形成された後に、印刷基材2が除去されて、印刷パターンのみによりその形状を保持する態様としてもよい。
また、上述した各実施形態において、インキ16に付与された導電性は、例えば印刷部3に通電することによる真贋判定や、電気回路部材としての利用など、各種の用途に利用することができる。また、インキ16にクロミック材料を用いた場合には、電力や物理的・化学的作用により可逆反応を示すことによる真贋判定や、電気回路部材としての利用など、各種の用途に利用することができる。
【0080】
(各実施形態の効果)
(1)本実施形態に係る印刷物1は、印刷基材2の表面に、インキにより形成され且つ連続した色模様として視認される印刷部3を有し、印刷部3は、それぞれがインキにより形成され且つ線幅Dが100μm以下である複数の線4の組合せで構成され、複数の線4の隣り合う線4相互の隙間Sは、その隙間Sを構成する隣り合う2本の線4のうち、線幅Sが狭い線4側の線幅Dの50倍以下である。
このような構成であれば、従来とは異なる印刷構造によって高精細かつ微細な絵柄などの連続した色模様の印刷物を得ることができる。また、このような構成であれば、印刷のみで視覚効果画像を作成可能であり、微細な線を用いることからインテグラル方式利用にあたっては、基材の厚みを極端に薄くすることが可能となる。
このため、従来、銀行券やパスポート、有価証券、カード、印紙類、CD、商品タグ等の偽造防止、改竄、複製防止が必要とされる貴重品で利用されてきた回折光によるホログラムや偏光等を利用したホログラムに代えて、本実施形態に係る印刷物1を使用することができる。
【0081】
(2)また、本実施形態に係る印刷部3は、2色以上の有色の線4の組合せで構成されていてもよい。
このような構成であれば、さらに高精細かつ微細な印刷物を得ることができる。
(3)また、本実施形態に係る印刷部3を構成する複数の線4は、印刷部3を形成する領域内に、予め設定した特定の配線パターンで配置されていてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を得ることができる。
(4)また、本実施形態に係る印刷部3を構成する配線パターンは、一方向に向けて線4を配列したパターン、同心状に線4を配置したパターン、格子状に線4を配置したパターン、及び放射状に線4を配置したパターンの少なくとも1のパターンであってもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を得ることができる。
【0082】
(5)また、本実施形態に係る印刷部3は、単位面積に配置する複数の線4の線幅Dの調整によって、印刷部3の色の濃淡表現が調整されているものであってもよい。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物の色の濃淡調整が容易となる。
(6)また、本実施形態に係る複数の線4は、その少なくとも一部の線4が印刷基材2の表面に対し1.5μm以上の高さHを有する凸構造となっていてもよい。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物を、確実性を高めて得ることができる。
【0083】
(7)また、本実施形態に係る印刷部3は、凸構造を備える線4を複数有し、その凸構造を備えた複数の線4は、その線4の一部の線4の高さHが、その他の線4の高さHの1.5倍以上の高さを有していてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を、確実性を高めて得ることができる。
(8)また、本実施形態に係る印刷部3は、凸構造を備える線4を複数有し、その凸構造を備えた複数の線4のうち少なくとも一部の線4は、インキを複数積層した多層構造となっていてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を、確実性を高めて得ることができる。
【0084】
(9)また、本実施形態に係る印刷部3は、凸構造を備える線4を複数有し、その凸構造を備えた複数の線4のうち少なくとも一部の線4は、その線4の延在方向と直交する方向での断面の上部に傾斜面を形成する傾斜部を有していてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を得ることができる。
(10)また、本実施形態に係る配線パターンは、少なくとも1つ以上の凹版により作成され、各凹版のアライメントを合わせて印刷することにより光干渉や視差を生じさせるパターンであってもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を得ることができる。
【0085】
(11)また、本実施形態に係る配線パターンは、アライメントを合わせることにより、凹版に形成された予め設定した特定のパターンを印刷基材2の片面若しくは表裏面に同一平面上に形成又は積層印刷することにより、視認角度により色が変わるパターンであってもよい。
このような構成であれば、複数の凹版を用いてアライメントを合わせて印刷を行うことで、微細な線を組み合わせて色が連続して視認可能な絵柄模様などの印刷表現を形成できる。また、印刷のみで視認角度により色が変化する視差画像を作成することが可能となるだけでなく、従来レンズとの組み合わせには基材厚みが必要であったインテグラル方式のチェンジングを伴う印刷物が、薄い基材でも高精細に得ることができる。
【0086】
(12)また、本実施形態に係る印刷物1は、複数の線4の上に一方向に延在し、その延在方向と直交する方向の断面が多角形であるレンズ6若しくは曲面形状を任意に組み合わせた形状を有するレンズ6を備えていてもよい。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物の視認性を高めることができる。
(13)また、本実施形態に係る印刷物1は、複数の線4の上にレンズ6が不均一に配列されていてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物の視認性を高めることができる。
【0087】
(14)また、本実施形態に係る印刷物1は、複数の線4の表面が透明な樹脂で構成される表面保護層5で覆われていてもよい。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物を保護することができる。
(15)本実施形態に係る印刷版13は、凹版印刷用の印刷版であって、母材表面の印刷面の一部に、幅が100μm以下である複数の線状の溝(凹部13a)を有し、複数の溝は、隣り合う溝相互の隙間が、その隙間を構成する隣り合う2本の溝のうち、溝幅が狭い溝側の溝幅の50倍以下に設定される領域を有する。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物を印刷することができる。
【0088】
(16)また、本実施形態に係る印刷版13は、複数の溝(凹部13a)の少なくとも一部の溝は、他の溝に対し溝の幅若しくは深さが異なっていてもよい。
このような構成であっても、高精細かつ微細な印刷物を印刷することができる。
(17)本実施形態に係る印刷物1の製造方法は、凹版印刷用の印刷版として、母材表面の一部に幅が100μm以下である複数の線状の溝(凹部13a)が形成された複数の印刷版13を使用して、印刷基材2の表面に順次凹版印刷を行うことでインキ16の転写を行って印刷部3を形成し、複数の印刷版13のうちの一の印刷版13に形成された溝は、他の印刷版13に形成された溝に比べて、溝の幅若しくは深さが異なる。
このような構成であれば、高精細かつ微細な印刷物を印刷することができる。