特許第6984616号(P6984616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984616
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20211213BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20211213BHJP
   C08L 25/00 20060101ALI20211213BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20211213BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L77/00
   C08L25/00
   C08L23/26
   C08J5/00CES
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-564538(P2018-564538)
(86)(22)【出願日】2018年1月19日
(86)【国際出願番号】JP2018001682
(87)【国際公開番号】WO2018139379
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2020年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-14822(P2017-14822)
(32)【優先日】2017年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵介
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−147648(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/094763(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/094737(WO,A1)
【文献】 特許第6870690(JP,B2)
【文献】 特許第6512288(JP,B2)
【文献】 特表2015−504102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を成形した成形体であって、
第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、
前記連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、
前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの溶融混練物からなり、
前記第1ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が150,000以上350,000未満であり、
前記第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が350,000以上であり、
前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6であり、
前記変性エラストマーは、前記ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーであり、
前記エラストマーは、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーであり、
前記連続相(A)と前記分散相(B)との合計を100質量%とした場合に、前記分散相(B)が70質量%以下であり、
前記第1のポリオレフィン樹脂と第2のポリオレフィン樹脂との合計を100質量%とした場合に、前記第2のポリオレフィン樹脂が80質量%以下であることを特徴とする成形体。
【請求項2】
前記第1のポリオレフィン樹脂、前記第2ポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの合計の割合が0.5質量%以上45質量%以下である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記第1のポリオレフィン樹脂、前記第2ポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの合計を100質量%とした場合に、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの合計の割合が0.5質量%以上27質量%以下である請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、前記第2のポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを含んだ耐衝撃樹脂と、前記第1のポリオレフィン樹脂と、の混合物である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリアミド樹脂は10質量%以上80質量%以下である請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の成形体。
【請求項6】
前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、前記連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する請求項1乃至のうちのいずれかに記載の成形体。
【請求項7】
前記第1のポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂であり、
前記エチレンブロックの少なくとも一部が、前記連続相(A)と前記分散相(B)との界面に凝集されている請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の成形体。
【請求項8】
請求項1に記載の成形体の製造方法であって、
前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの溶融混練物、並びに、前記第2のポリオレフィン樹脂、を溶融混練してなる耐衝撃樹脂と、前記第1のポリオレフィン樹脂と、を混合して成形体原料を得る成形体原料調製工程と、
前記成形体原料を成形して前記成形体を得る成形工程と、を備えることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項9】
前記耐衝撃樹脂は、前記第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(C)と、前記連続相(C)中に分散された、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、
前記分散相(B)は、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、前記連続相(B)中に分散された前記変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する請求項8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記第1のポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂である請求項8又は9に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、耐衝撃特性に優れた成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異種の樹脂を混合して各々の樹脂が単独で発揮できる特性を超える混合樹脂を得ようとする工夫がなされており、例えば、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを併用して混合樹脂における特性を改良しようとする技術が、本発明者らによる下記特許文献1−4において知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−147645号公報
【特許文献2】特開2013−147646号公報
【特許文献3】特開2013−147647号公報
【特許文献4】特開2013−147648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、相容化剤として、ポリアミド樹脂と反応し得る反応性基が付与された変性エラストマーを利用することによって得られた、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とのポリマーアロイ(熱可塑性樹脂組成物)が開示されている。
上記特許文献2には、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含むポリマーアロイにおいて、ポリアミド樹脂として、植物由来ポリアミド樹脂を利用できることが開示されている。
上記特許文献3には、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含むポリマーアロイにおいて、連続相とその連続相内に分散された分散相と、その分散相の中に更に分散された微分散相を有した樹脂相分離構造を有するポリマーアロイが開示されている。
上記特許文献4には、ポリアミド樹脂と相容化剤とを、まず、溶融混合したのち、得られた混合樹脂とポリオレフィン樹脂とを更に溶融混合することにより、耐衝撃性に優れたポリマーアロイが得られることが開示されている。
しかしながら、上記特許文献1−4には、これらのポリマーアロイを単独で製造及び利用することについては検討されているが、このようなポリマーアロイを、他の樹脂に対して利用することに関して検討されていない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを含んだ耐衝撃樹脂を、ポリオレフィン樹脂に配合して得られる耐衝撃性に優れた成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、熱可塑性樹脂を成形した成形体であって、
第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、
前記連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、
前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの溶融混練物からなり、
前記変性エラストマーは、前記ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーであり、
前記エラストマーは、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーであり、
前記連続相(A)と前記分散相(B)との合計を100質量%とした場合に、前記分散相(B)が70質量%以下であり、
前記第1のポリオレフィン樹脂と第2のポリオレフィン樹脂との合計を100質量%とした場合に、前記第2のポリオレフィン樹脂が80質量%以下であることを要旨とする。
請求項2に記載の成形体は、請求項1に記載の成形体において、前記熱可塑性樹脂は、前記第2のポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを含んだ耐衝撃樹脂と、前記第1のポリオレフィン樹脂と、の混合物であることを要旨とする。
請求項3に記載の成形体は、請求項1又は2に記載の成形体において、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリアミド樹脂は10質量%以上80質量%以下であることを要旨とする。
請求項4に記載の成形体は、請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の成形体において、前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、前記連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有することを要旨とする。
請求項5に記載の成形体は、請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の成形体において、前記ポリアミド樹脂は、ポリアミド6であることを要旨とする。
請求項6に記載の成形体は、請求項5に記載の成形体において、前記第2のポリオレフィン樹脂は、数平均分子量が300,000以上であることを要旨とする。
請求項7に記載の成形体は、請求項1乃至6のうちのいずれかに記載の成形体において、前記第1のポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂であり、
前記エチレンブロックの少なくとも一部が、前記連続相(A)と前記分散相(B)との界面に凝集されていることを要旨とする。
請求項8に記載の製造方法は、請求項1に記載の成形体の製造方法であって、
前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーの溶融混練物、並びに、前記第2のポリオレフィン樹脂、を溶融混練してなる耐衝撃樹脂と、前記第1のポリオレフィン樹脂と、を混合して成形体原料を得る成形体原料調製工程と、
前記成形体原料を成形して前記成形体を得る成形工程と、を備えることを要旨とする。
請求項9に記載の製造方法は、請求項8に記載の成形体の製造方法において、前記耐衝撃樹脂は、前記第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(C)と、前記連続相(C)中に分散された、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、
前記分散相(B)は、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、前記連続相(B)中に分散された前記変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有することを要旨とする。
請求項10に記載の製造方法は、請求項8又は9に記載の成形体の製造方法において、前記第1のポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の成形体によれば、優れた耐衝撃特性を得ることができる。
熱可塑性樹脂が、第2のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含んだ耐衝撃樹脂と、第1のポリオレフィン樹脂と、の混合物である場合には、特に優れた耐衝撃特性を得ることができる。
ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂が10質量%以上80質量%以下である場合には、特定の相構造をより安定して得ることができるため、優れた耐衝撃性を発揮できる成形体とすることができる。
分散相(B)が、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する場合には、多重の相構造となり、より優れた耐衝撃性を有した成形体とすることができる。
ポリアミド樹脂が、ポリアミド6である場合は、第1ポリオレフィン樹脂に由来する引張弾性率を十分に保持することができ、且つ成形体の耐衝撃性を向上することができる。

ポリアミド樹脂がポリアミド6であり、更に、第2のポリオレフィン樹脂の数平均分子量が300,000以上である場合には、とりわけ優れた耐衝撃特性を得ることができる。
第1のポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂であり、エチレンブロックの少なくとも一部が、連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集されている場合には、多重の相構造となり、より優れた耐衝撃性を有した成形体とすることができる。
【0008】
本発明の製造方法によれば、第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、この連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有する本発明の成形体を確実に得ることができる。
耐衝撃樹脂が、第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(C)と、連続相(C)中に分散された、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、分散相(B)が、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する場合には、多重の相構造となった優れた耐衝撃性を有する成形体を確実に得ることができる。
第1のポリオレフィン樹脂が、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂である場合には、エチレンブロックの少なくとも一部が、連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集された多重の相構造を有する成形体を確実に得ることができる。即ち、特に優れた耐衝撃性を有する成形体を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の評価用試験片を構成する樹脂組成物の相構造を説明するための模式図である。
図2】実施例[PA6(No.1)系、PA6(No.2)系、及びPA11系]の各評価用試験片における引張弾性率と耐強化樹脂の添加量の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
本発明の成形体は、熱可塑性樹脂を成形した成形体であって、
第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、
前記連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、
前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの溶融混練物からなり、
前記変性エラストマーは、前記ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーであり、
前記エラストマーは、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーであり、
前記連続相(A)と前記分散相(B)との合計を100質量%とした場合に、前記分散相(B)が70質量%以下であり、
前記第1のポリオレフィン樹脂と第2のポリオレフィン樹脂との合計を100質量%とした場合に、前記第2のポリオレフィン樹脂が80質量%以下であることを特徴とする。
【0012】
[1]各成分について
(1)第1のポリオレフィン樹脂について
上記「第1のポリオレフィン樹脂」(以下、単に「第1ポリオレフィン」ともいう)は、オレフィンの単独重合体、及び/又は、オレフィンの共重合体である。この第1のポリオレフィン樹脂は、本成形体では、連続相(A)に第2のポリオレフィン樹脂とともに含まれる成分である。
第1ポリオレフィンを構成するオレフィンは特に限定されないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。これら重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、ポリオレフィン樹脂は上記重合体の混合物であっても良い。
【0013】
上記ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、及び、エチレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。後者としては、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等が挙げられる(但し、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位である)。
【0014】
また、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、及び、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。
一方、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体を構成するは、他のオレフィンとしては、前述の各種オレフィン(但し、プロピレンを除く)が挙げられる。このうち、エチレン及び1−ブテン等が好ましい。即ち、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体が好ましい。
また、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。これらのうちでは、耐衝撃性に優れるという観点からブロック共重合体が好ましい。とりわけ、他のオレフィンがエチレンであるプロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。このプロピレン・エチレンブロック共重合体は、エチレンブロックを分散相として有するブロック共重合ポリプロピレンである。即ち、ホモポリプロピレンを連続相として、この連続相内にポリエチレンを含んだ分散相が存在するポリプロピレン樹脂である。このようなエチレンブロックを分散相として有するブロック共重合ポリプロピレンは、例えば、インパクトコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、ヘテロファジックポリプロピレン、ヘテロファジックブロックポリプロピレン等とも称される。このブロック共重合ポリプロピレンは、耐衝撃性に優れるという観点において好ましい。
尚、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位である。
【0015】
第1ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、例えば、10,000以上500,000以下とすることができ、100,000以上450,000以下が好ましく、200,000以上400,000以下がより好ましい。
更に、例えば、後述する第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が300,000以上である場合には、第1ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は150,000以上300,000未満にすることができる。また、第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量が350,000以上である場合には、第1ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は150,000以上350,000未満にすることができる。
尚、第1ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。また、本発明においては、第1ポリオレフィン樹脂としてホモポリマーを用いる場合、上述の数平均分子量の各数値範囲は、各々重量平均分子量の数値範囲へ読み換えることができる。
【0016】
また、第1ポリオレフィン樹脂は、後述するポリアミド樹脂に対して親和性を有さないポリオレフィンであり、且つ、ポリアミド樹脂に対して反応し得る反応性基も有さないポリオレフィンである。この点において、後述する変性エラストマーとしてのオレフィン系成分とは異なっている。
【0017】
(2)第2のポリオレフィン樹脂について
上記「第2のポリオレフィン樹脂」(以下、単に「第2ポリオレフィン」ともいう)は、オレフィンの単独重合体、及び/又は、オレフィンの共重合体である。この第2のポリオレフィン樹脂は、本成形体では、連続相(A)に第1のポリオレフィン樹脂とともに含まれる成分である。
第2ポリオレフィンを構成するオレフィンは特に限定されず、第1ポリオレフィンの場合と同様のオレフィンを例示できる。
【0018】
第1ポリオレフィンと第2ポリオレフィンとは、同じ樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよい。
第1ポリオレフィンと第2ポリオレフィンとが異なる樹脂である場合としては、例えば、第1ポリオレフィン及び第2ポリオレフィンのうちのいずれか一方が、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂(ブロック共重合ポリプロピレン樹脂等)であり、他方が非ブロック共重合ポリオレフィン樹脂である場合が挙げられる。
これらのうちでは、第1ポリオレフィンが、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリプロピレン樹脂であり、第2ポリオレフィンが非ブロック共重合ポリオレフィン樹脂である形態が、耐衝撃性の観点から好ましい。更に、非ブロック共重合ポリオレフィン樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂が好ましい。
尚、ここでいう非ブロック共重合ポリオレフィン樹脂は、エチレンブロックの分散相を有さない共重合ポリオレフィン樹脂を意味する。従って、エチレンブロックの分散相を有さないブロック共重合ポリオレフィン樹脂は、本明細書では、非ブロック共重合ポリオレフィン樹脂に含まれるものとする。
【0019】
上述のうち、第1ポリオレフィンが、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリプロピレン樹脂であり、第2ポリオレフィンが非ブロック共重合ポリプロピレン樹脂である形態を用いた場合、本成形体は、第1ポリプロピレン樹脂及び第2ポリプロピレン樹脂を構成したホモポリプロピレンによって形成された連続相(A)と、この連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、第1ポリプロピレン樹脂を構成したエチレンブロックからなる分散相(B’)とを有することとなる。加えて、エチレンブロックの少なくとも一部は、連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集される。これによって、特に優れた耐衝撃性を発揮させることができる。
【0020】
第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、例えば、10,000以上(通常、700,000以下)とすることができ、100,000以上であることが好ましく、より好ましくは200,000以上である。
尚、第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。また、本発明においては、第2ポリオレフィン樹脂としてホモポリマーを用いる場合、上述の数平均分子量の各数値範囲は、各々重量平均分子量の数値範囲へ読み換えることができる。
【0021】
また、後述のポリアミドが、ポリアミド6である場合には、この第2ポリオレフィン樹脂の数平均分子量は、300,000以上(通常、700,000以下)とすることができ、310,000以上が好ましく、350,000以上がより好ましく、370,000以上が更に好ましく、400,000以上がより更に好ましく、450,000以上が特に好ましく、470,000以上がより特に好ましく、
500,000以上がとりわけ好ましい。
この場合、第1のポリオレフィン樹脂の引張弾性率を十分に保持しつつ、成形体の耐衝撃性を向上することができる。
尚、数平均分子量の上限値は、例えば、上述のように700,000以下とすることができ、更に650,000以下とすることができ、更に600,000以下とすることができる。
【0022】
また、第2ポリオレフィン樹脂のMFR(メルトフローレート)は、特に限定されない。通常、ポリオレフィン樹脂の分子量(数平均分子量を含む)とMFRとは比例関係を示す。例えば、第2ポリオレフィン樹脂のMFRは、25g/10min以下であることが好ましい。MFRの下限は特に限定されないが、例えば、1g/10min以上とすることができる。このMFRは、22g/10min以下が好ましく、19g/10min以下がより好ましく、16g/10min以下が更に好ましく、13g/10min以下がより更に好ましく、10g/10min以下が特に好ましく、9g/10min以下がより特に好ましく、8g/10min以下がとりわけ好ましい。
第2ポリオレフィン樹脂のMFRは、JIS K7210に準拠し、温度230℃且つ荷重21.18N(2.16kgf)の条件で測定される。
【0023】
尚、第2ポリオレフィン樹脂は、後述するポリアミド樹脂に対して親和性を有さないポリオレフィンであり、且つ、ポリアミド樹脂に対して反応し得る反応性基も有さないポリオレフィンである。この点において、後述する変性エラストマーとしてのオレフィン系成分とは異なっている。
【0024】
(3)ポリアミド樹脂について
上記「ポリアミド樹脂」は、アミド結合(−NH−CO−)を介して複数の単量体が重合されてなる鎖状骨格を有する重合体である。このポリアミド樹脂は、本成形体では、分散相(B)に変性エラストマーとともに含まれる成分である。
【0025】
ポリアミド樹脂を構成する単量体としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω−ラウリルラクタムなどのラクタムなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
更に、ポリアミド樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との共重合により得ることもできる。この場合、単量体としてのジアミンには、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン、キシリレンジアミン(p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミンなど)等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0027】
更に、単量体としてのジカルボン酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
即ち、ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M−5T、ポリアミド9T/2M−8T等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、本発明では、上述の各種ポリアミド樹脂のうち、植物由来ポリアミド樹脂を用いることができる。植物由来ポリアミド樹脂は、植物油等の植物に由来する成分から得られた単量体を用いる樹脂であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。
植物由来ポリアミド樹脂としては、ポリアミド11(以下、単に「PA11」ともいう)、ポリアミド610(以下、単に「PA610」ともいう)、ポリアミド612(以下、単に「PA612」ともいう)、ポリアミド614(以下、単に「PA614」ともいう)、ポリアミド1010(以下、単に「PA1010」ともいう)、ポリアミド1012(以下、単に「PA1012」ともいう)、ポリアミド10T(以下、単に「PA10T」ともいう)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記のうち、PA11は、炭素原子数11である単量体がアミド結合を介して結合された構造を有する。PA11には、単量体として、ヒマシ油を原料とするアミノウンデカン酸を用いることができる。炭素原子数が11である単量体に由来する構成単位は、PA11内において全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
PA610は、炭素原子数6である単量体と、炭素原子数10である単量体と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。PA610には、単量体として、ヒマシ油を原料とするセバシン酸を用いることができる。炭素原子数6である単量体に由来する構成単位と、炭素原子数10である単量体に由来する構成単位とは、PA610内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
PA1010は、炭素原子数10であるジアミンと、炭素原子数10であるジカルボン酸と、が共重合された構造を有する。PA1010には、単量体として、ヒマシ油を原料とする1,10−デカンジアミン(デカメチレンジアミン)及びセバシン酸を用いることができる。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位と、炭素原子数10であるジカルボン酸に由来する構成単位とは、PA1010内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0031】
PA614は、炭素原子数6である単量体と、炭素原子数14である単量体と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。PA614には、単量体として、植物由来であり炭素原子数14のジカルボン酸を用いることができる。これらの炭素原子数6である単量体に由来する構成単位と、炭素原子数14である単量体に由来する構成単位とは、PA614内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
PA10Tは、炭素原子数10であるジアミンと、テレフタル酸と、がアミド結合を介して結合された構造を有する。PA10Tには、単量体として、ヒマシ油を原料とする1,10−デカンジアミン(デカメチレンジアミン)を用いることができる。これらの炭素原子数10であるジアミンに由来する構成単位と、テレフタル酸に由来する構成単位とは、PA10T内においてその合計が、全構成単位のうちの50%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0032】
上記5種の植物由来ポリアミド樹脂のなかでも、PA11は、他の4種の植物由来ポリアミド樹脂に対し、低吸水性、低比重及び植物化度の高さの観点においてより優れている。
ポリアミド610は、吸水率、耐薬品性、及び衝撃強度の点ではPA11よりも劣るが、耐熱性(融点)及び剛性(強度)の観点において優れている。更には、ポリアミド6やポリアミド66と比べ、低吸水性で寸法安定性が良いため、ポリアミド6やポリアミド66の代替材として使用することができる。
ポリアミド1010は、PA11に比べて、耐熱性及び剛性の観点において優れている。更には、植物化度もPA11と同等であり、より耐久性の必要な部位に使用することができる。
ポリアミド10Tは、分子骨格に芳香環を含むため、ポリアミド1010に比べて、より融点が高く高剛性である。そのため、過酷環境下での使用(耐熱部位、強度入力部位)が可能である。
【0033】
また、本発明では、上述の各種ポリアミド樹脂のうち、ポリアミド6を用いた形態とすることができる。
この場合、第1ポリオレフィン樹脂に由来する引張弾性率を十分に保持することができ、且つ成形体の耐衝撃性を向上することができる。また、上述のポリアミド11等の他のポリアミドを用いる場合よりも、相対的に少ない含有割合で、性能(特に、引張弾性率)が同等以上の成形体を得ることができ、コスト的にも有利となる。
【0034】
(4)変性エラストマーについて
上記「変性エラストマー」は、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーである。即ち、ポリアミド樹脂と反応し得る反応性基が付与されたエラストマーである。この変性エラストマーは、本成形体では、分散相(B)に、ポリアミド樹脂とともに含まれる成分である。
更に、この変性エラストマーは、第2ポリオレフィン樹脂に対して親和性を有する成分であることが好ましい。即ち、ポリアミド樹脂と第2ポリオレフィン樹脂とに対する相容化作用を有する成分であることが好ましい。更に換言すれば、ポリアミド樹脂と第2ポリオレフィン樹脂との相容化剤であることが好ましい。
【0035】
上記エラストマー(即ち、変性エラストマーの骨格を構成する骨格樹脂)は、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体(即ち、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体、及び、プロピレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体)を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーである。これらは1種のみ用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
【0036】
上記炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。
【0037】
エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1−ブテン共重合体(EBR)、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体(EOR)等が挙げられる。
また、プロピレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体としては、プロピレン・1−ブテン共重合体(PBR)、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
一方、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、及びその水添体が挙げられる。
上記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
即ち、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、SEBSが好ましい。
【0040】
また、ポリアミド樹脂に対する反応性基(上記エラストマーに付与される反応性基)としては、酸無水物基(−CO−O−OC−)、カルボキシル基(−COOH)及びエポキシ基{−CO(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造)}、オキサゾリン基(−CNO)及びイソシアネート基(−NCO)等が挙げられる。これらは1種のみ付与されていてもよいし、2種以上付与されていてもよい。
尚、変性エラストマーの変性量は限定されず、変性エラストマーは1分子中に1以上の反応性基を有すればよい。更に、変性エラストマーは1分子中に1以上50以下の反応性基を有することが好ましく、3以上30以下がより好ましく、5以上20以下が特に好ましい。
【0041】
変性エラストマーとしては、例えば、反応性基を導入できる各種単量体を原料モノマーとして用いた重合体(反応性基を導入できる単量体を原料モノマーの一部に用いた重合により得られた変性エラストマー)、骨格樹脂を含む重合体の酸化分解物(酸化分解により反応性基が形成された変性エラストマー)、骨格樹脂に対する有機酸のグラフト重合物(有機酸のグラフト重合により反応性基が導入された変性エラストマー)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0042】
反応性基を導入できる単量体としては、重合性不飽和結合と酸無水物基とを有する単量体、重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有する単量体、重合性不飽和結合とエポキシ基とを有する単量体などが挙げられる。
具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等の酸無水物、及びマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの化合物のうちでは、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0043】
変性エラストマーの分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が、10,000以上500,000以下であることが好ましく、35,000以上500,000以下であることがより好ましく、35,000以上300,000以下であることが特に好ましい。尚、重量平均分子量はGPC法(標準ポリスチレン換算)により測定される。
【0044】
(5)他の成分について
本成形体には、第1ポリオレフィン樹脂、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマー以外に、他の熱可塑性樹脂、難燃剤、難燃助剤、充填剤、着色剤、抗菌剤、帯電防止剤等の各種添加剤を配合できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤(ハロゲン化芳香族化合物)、リン系難燃剤(窒素含有リン酸塩化合物、リン酸エステル等)、窒素系難燃剤(グアニジン、トリアジン、メラミン、及びこれらの誘導体等)、無機系難燃剤(金属水酸化物等)、ホウ素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、硫黄系難燃剤、赤リン系難燃剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
難燃助剤としては、各種アンチモン化合物、亜鉛を含む金属化合物、ビスマスを含む金属化合物、水酸化マグネシウム、粘土質珪酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
充填剤としては、ガラス成分(ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等)、シリカ、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維)、黒鉛、珪酸化合物(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等)、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩及び硫酸塩、有機繊維(芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維、植物性繊維等)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
着色剤としては、顔料及び染料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
(6)相構造について
本成形体では、第1ポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂が連続相(A)を形成している。また、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーが分散相(B)を形成している。そして、分散相(B)は、連続相(A)中に分散されている。この相構造は、第2のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含んだ耐衝撃樹脂と、第1のポリオレフィン樹脂と、の混合物である熱可塑性樹脂を成形することによって得ることができる。
更に、本成形体では、分散相(B)を構成しているポリアミド樹脂及び変性エラストマーのうち、ポリアミド樹脂が、分散相(B)内で連続相(B)を形成し、且つ、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーのうちの少なくとも変性エラストマーが、分散相(B)内で微分散相(B)を形成することができる。このような分散相(B)内に、更に、微分散相(B)を有する多重の相構造を有する場合には、より優れた耐衝撃性を有した成形体とすることができる。
【0047】
また、本成形体では、第1のポリオレフィン樹脂が、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂である場合には、ブロック共重合ポリオレフィン樹脂を構成するエチレンブロックの少なくとも一部を、連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集させることができる。このような相構造を有する場合にも、より優れた耐衝撃性を有した成形体とすることができる。
【0048】
本成形体の連続相(A)内に含まれた分散相(B)の大きさは特に限定されないが、その平均径(平均粒子径)は、10000nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以上8000nm以下、更に好ましくは100nm以上4000nm以下である。この分散相(B)の平均径は、電子顕微鏡を用いて得られる画像において、無作為に選択された50個の分散相(B)の最大長さの平均値(nm)である。
【0049】
本成形体の分散相(B)内に含まれた微分散相(B)の大きさは特に限定されないが、その平均径(平均粒子径)は、5nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上600nm以下、更に好ましくは10nm以上400nm以下、特に好ましくは15nm以上350nm以下である。この微分散相(B)の平均径は、電子顕微鏡を用いて得られる画像において、無作為に選択された100個の微分散相(B)の最大長さの平均値(nm)である。
【0050】
(7)配合割合について
本成形体において、連続相(A)と分散相(B)との合計を100質量%とした場合に、分散相(B)は70質量%以下である。即ち、通常、第1ポリオレフィン樹脂と第2ポリオレフィン樹脂との合計量をWとし、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計量をWとした場合に、WとWとの合計を100質量%とすると、Wの割合は70質量%以下である。この範囲では、優れた耐衝撃性、剛性及び成形性をバランスよく得ることができる。この割合は、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上48質量%以下がより好ましく、4質量%以上45質量%以下が特に好ましい。
【0051】
更に、第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂の含有割合は特に限定されないが、第1ポリオレフィン樹脂と第2ポリオレフィン樹脂との合計を100質量%とした場合に、第2のポリオレフィン樹脂の含有割合は80質量%以下である。この第2のポリオレフィン樹脂の含有量は、更に、1質量%以上70質量%以下とすることができ、更には1質量%以上60質量%以下とすることができ、更には3質量%以上40質量%以下とすることができ、更には5質量%以上30質量%以下とすることができ、更には10質量%以上25質量%以下とすることができる。
【0052】
加えて、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の含有割合は、10質量%以上80質量%以下とすることができる。この範囲では、優れた耐衝撃特性とともに、優れた剛性を有する成形体を得ることができる。この割合は、12質量%以上78質量%以下が好ましく、14質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上73質量%以下が更に好ましく、30質量%以上71質量%以下がより更に好ましく、34質量%以上68質量%以下が特に好ましく、40質量%以上64質量%以下がより特に好ましい。この範囲では、連続相(A)内に、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを、分散相(B)としてより小さく分散させることができる。更に、比重の大きなポリアミド樹脂の使用量を減じて成形体の比重を低下させることができる。これにより、軽量でありながら、優れた耐衝撃特性及び剛性を有する成形体を得ることができる。
更に、このような機械的特性を十分に維持しながら、ポリアミド樹脂の含有量を減じることができることにより、成形体の表面の艶を抑えて落ち着いた外観を得ることができる。従って、直接視認される外装材や内装材への適用ができ、優れた意匠性を発揮できる。
【0053】
また、上記ポリアミドが、ポリアミド6である場合には、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の含有割合は、10質量%以上80質量%以下とすることができ、12質量%以上68質量%以下が好ましく、14質量%以上65質量%以下がより好ましく、16質量%以上63質量%以下が更に好ましく、18質量%以上61質量%以下がより更に好ましく、20質量%以上58質量%以下が特に好ましく、25質量%以上54質量%以下がより特に好ましい。
この範囲では、優れた耐衝撃特性とともに、優れた剛性を有する成形体を得ることができる。また、連続相(A)内に、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを、分散相(B)としてより小さく分散させることができる。更に、比重の大きなポリアミド樹脂の使用量を減じて成形体の比重を低下させることができる。これにより、軽量でありながら、優れた耐衝撃特性及び剛性を有する成形体を得ることができる。また、第1ポリオレフィン樹脂に由来する引張弾性率を十分に保持することができ、且つ成形体の耐衝撃性を向上することができる。更には、上述のポリアミド11等の他のポリアミドを用いる場合よりも、相対的に少ない含有割合で、第1ポリオレフィン樹脂に由来する引張弾性率が十分に保持されており、且つ耐衝撃性に優れる成形体を得ることができる。
【0054】
また、第1ポリオレフィン樹脂、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及び、変性エラストマーの合計を100質量%とした場合におけるポリアミド樹脂の含有量は、0.5質量%以上30質量%以下とすることができる。この割合は、1質量%以上22質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0055】
更に、第1ポリオレフィン樹脂、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及び、変性エラストマーの合計を100質量%とした場合における変性エラストマーの含有量は、0.5質量%以上30質量%以下とすることができる。この範囲では、優れた耐衝撃特性とともに、優れた剛性を有する成形体を得ることができる。この割合は、1質量%以上22質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0056】
本成形体の比重は特に限定されないが、通常、1.05以下とすることができる。この比重は、本成形体におけるポリアミド樹脂の含有量が1質量%以上40質量%以下、ポリプロピレン樹脂の含有量が50質量%以上75質量%以下、且つ、無水マレイン酸変性されたオレフィン系熱可塑性エラストマーの含有量が5質量%以上30質量%以下である場合に、特に0.89以上1.05以下とすることができ、更には0.92以上0.98以下とすることができる。即ち、本成形体は、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂と同等の比重であっても、これらの樹脂よりも格段に優れた耐衝撃性及び剛性を得ることができる。
【0057】
(8)成形体の種類について
本成形体の形状、大きさ及び厚さ等も特に限定されず、その用途も特に限定されない。
本成形体は、自動車、鉄道車両(車両全般)、航空機機体(機体全般)、船舶・船体(船体全般)、自転車(車体全般)等の乗物に利用される各種用品等として用いられる。
このうち自動車用品としては、外装部品、内装部品、エンジン部品、電装部品等が挙げられる。具体的には、自動車用の外装部品としては、ルーフレール、フェンダー、フェンダーライナー、ガーニッシュ、バンパー、ドアパネル、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、フューエルリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル(プルハンドル)、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパー、エンジンアンダーカバー、フロアーアンダーカバー、ロッカーモール、カウルルーバー、カウル(自動二輪車)等が挙げられる。
【0058】
自動車用の内装部品としては、ドアトリム基材(FR、RR、BACK)、ポケット、アームレスト、スイッチベース、加飾パネル、オーナメントパネル、EA材、スピーカーグリル、クォータートリム基材等のトリム系部品;ピラーガーニッシュ;カウルサイドガーニッシュ(カウルサイドトリム);シールド、背裏ボード、ダイナミックダンパー、サイドエアバッグ周辺部品等のシート系部品;センタークラスター、レジスター、センターボックス(ドア)、グラブドア、カップホルダー、エアバッグ周辺部品等のインストルメントパネル系部品;センターコンソール;オーバヘッドコンソール;サンバイザー;デッキボード(ラゲージボード)、アンダートレイ;パッケージトレイ;ハイマウントストップランプカバー;CRSカバー;シートサイドガーニッシュ;スカッフプレート;ルームランプ;アシストグリップ;安全ベルト部品;レジスターブレード;ウォッシャーレバー;ウインドレギュレーターハンドル;ウインドレギュレーターハンドルのノブ;パッシングライトレバー等が挙げられる。
【0059】
自動車用のエンジン部品としては、オルタネータターミナル、オルタネータコネクタ、ICレギュレータ、ライトディヤ用ポテンシォメータベース、排気ガスバルブ、燃料パイプ、冷却パイプ、ブレーキパイプ、ワイパーパイプ、排気パイプ、吸気パイプ、ホース、チューブ、エアインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレタメインボディー、キャブレタスペーサ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパッドウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー等が挙げられる。
【0060】
自動車用の電装部品としては、電池周辺部品、エアコン用サーモスタッド、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、クリーナーケース、フィルターケース、パワートレーン等が挙げられる。
【0061】
更に、本成形体は、上述の乗物以外の非乗物用途においても各種用品等として用いられる。即ち、例えば、ロープ、スパンボンド、研磨ブラシ、工業ブラシ、フィルター、運搬用コンテナ、トレイ、運搬用台車、その他一般資材等の工業・産業資材;
コネクター、コイル、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、小型変速ギヤ、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等の電子部品;
発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット等の電気機器;
【0062】
産業用ロボットの筐体、介護用ロボットの筐体、ドローン(遠隔操作によって飛行する飛行物体、自律的に飛行する飛行物体)の筐体、
VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・LD部品、CD・DVD部品、照明部品、冷蔵庫部品、洗濯機部品、エアコン部品、タイプライター・ワープロ部品、オフィスコンピューター部品、PC、ゲーム機、タブレット端末、携帯電話、スマートフォン、電話機及び関連部品、ファクシミリ部品、複写機部品、掃除・洗浄機器、モーター部品等の家電・事務製品;
カメラ、時計、顕微鏡、双眼鏡、望遠鏡、メガネ等の光学、精密機器;
食品トレイ、収納ボックス、収納トレイ、アタッシュケース、スーツケース、ヘルメット、水筒、瓶等の収納ケース、洗面用具、筆記用具、文房具、本立て、スキンケア器具、用具、食器、洗濯用具、掃除用具、衣料ハンガー、食品容器、開閉蓋(ガラス瓶等)等の日用品、生活用品;
【0063】
おもちゃ等の娯楽品;
草刈り機の筐体、カバー、電動工具の筐体、カバー、各種クリップ等の工作・一般機械・部品;
テニスラケットストリング、スキー板・ボード、プロテクタ(野球、サッカー、モータスポーツ)、シューズ、シューズソール(靴底、スポーツシューズ用ソール)、アウトドア・登山用具等のスポーツ用品;
衣装ケース、テーブル、椅子(チェアー)、シューズボックス、台所用具、トイレ用具、入浴用具等の家具関係用品;
内外壁・屋根、断熱材、ドア・扉関連部品、窓材関連部品、床材関連部品、免震・制振部品、雨戸、雨どい、上水・下水関係部品(ライフライン関連)、駐車ガレージ、ガス・電気関係部品(ライフライン関連)、土木関係部品、信号機器、道路標識、パイロン、センターポール、ガードレール(ガードワイヤ)、工事用器材等の住宅、土木関係用品;
マウスピース、医療機器、医薬品容器等の医療関係用品;
靴等の衣料関係用品、
農機具、農耕用具、植木鉢(プランタ)、漁具、養殖関係器具、林業具等の農業・林業・水産業関係用品;などが挙げられる。
更に、各種ペレット形状に成形されたペレットも挙げられる。
【0064】
[2]製造方法について
本発明の成形体の製造方法は、前述の成形体の製造方法であって、成形体原料調製工程と、成形工程と、を備えることを特徴とする。
本方法によれば、予め必要な耐衝撃樹脂を形成したうえで、第1ポリオレフィンと混合して成形するため、第1ポリオレフィンに対する熱履歴を抑制することができる。即ち、ポリアミド樹脂、変性エラストマー及び第2ポリオレフィン樹脂に対しては、溶融混練する回数に応じた熱履歴が蓄積されるものの、第1ポリオレフィン樹脂に対しては、成形時の1回のみの熱負荷によって、成形体を得ることができる。そして、このような製造方法によっても、前述の連続相(A)と分散相(B)とを有した成形体を得ることができる。
【0065】
上記「成形体原料調製工程」は、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーの溶融混練物、並びに、第2のポリオレフィン樹脂、を溶融混練してなる耐衝撃樹脂と、第1のポリオレフィン樹脂と、を混合して成形体原料を得る工程である。
本方法では、予め耐衝撃樹脂を得たうえで、この耐衝撃樹脂を、第1ポリオレフィン樹脂に配合することによって、成形体原料を得ている。即ち、例えば、予め得られた耐衝撃樹脂からなるペレットと、第1ポリオレフィン樹脂からなるペレットと、をドライブレンドすることによって成形体原料を得ることができる。
【0066】
上述の溶融混練物は、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの溶融混練によって得られる熱可塑性樹脂組成物である。この際に利用できるポリアミド樹脂及び変性エラストマーの各々の種類等については前述の通りである。
この溶融混練物は、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の配合割合が、10質量%以上80質量%以下となるように、両樹脂を溶融混練して得ることができる。これにより、溶融混練物と第2のポリオレフィン樹脂と混合した際に、第2ポリオレフィン樹脂中にポリアミド樹脂を分散させた耐衝撃樹脂を得ることができる。即ち、耐衝撃樹脂中で、第2ポリオレフィン樹脂を含む連続相(C)を形成し、この連続相(C)中にポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)を分散させた相構造を得ることができる。更には、分散相(B)が、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する多重の相構造を得ることができる。
この割合は、12質量%以上78質量%以下が好ましく、14質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上73質量%以下が更に好ましく、30質量%以上71質量%以下がより更に好ましく、34質量%以上68質量%以下が特に好ましく、40質量%以上64質量%以下がより特に好ましい。この範囲では、第2ポリオレフィン樹脂中にポリアミド樹脂をより小さく分散させた耐衝撃樹脂を得ることができる。
尚、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の含有割合を50質量%以上とした高ポリアミド樹脂タイプの耐衝撃樹脂にするという観点では、50質量%以上80質量%以下とすることができる。
【0067】
また、上記ポリアミドが、ポリアミド6である場合には、この溶融混練物は、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の配合割合が、10質量%以上80質量%以下とすることができる。この割合は、12質量%以上68質量%以下が好ましく、14質量%以上65質量%以下がより好ましく、16質量%以上63質量%以下が更に好ましく、18質量%以上61質量%以下がより更に好ましく、20質量%以上58質量%以下が特に好ましく、25質量%以上54質量%以下がより特に好ましい。この範囲では、第2ポリオレフィン樹脂中にポリアミド樹脂をより小さく分散させた耐衝撃樹脂を得ることができる。
【0068】
溶融混練物を得る際の混練方法は特に限定されないが、例えば、押出機(一軸スクリュー押出機及び二軸混練押出機等)、ニーダ及びミキサ(高速流動式ミキサ、バドルミキサ、リボンミキサ等)等の混練装置を用いて行うことができる。これらの装置は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、2種以上を用いる場合には連続的に運転してもよく、回分的に(バッチ式で)運転してもよい。また、各成分は一括して混合してもよしい、複数回に分けて添加投入(多段配合)して混合してもよい。
【0069】
更に、溶融混練物を得る際の混練温度は特に限定されず、溶融混練を行うことができる温度であればよく、各成分の種類により適宜調整することができる。特に、いずれもの樹脂が溶融された状態で混練されることが好ましい。具体的には、この混練温度は、190〜350℃とすることができ、好ましくは200〜330℃、更に好ましくは205〜310℃である。
【0070】
上述の耐衝撃樹脂は、第2ポリオレフィン樹脂と上述の溶融混練物との溶融混練によって得られる熱可塑性樹脂組成物である。この際に利用できる第2ポリオレフィン樹脂の種類等については前述の通りである。
この耐熱衝撃樹脂は、第2ポリオレフィン樹脂と上述の溶融混練物との合計を100質量%とした場合に、第2ポリオレフィン樹脂の配合割合が、20質量%以上75質量%以下となるように、両樹脂を溶融混練して得ることができる。これにより、第2ポリオレフィン樹脂中にポリアミド樹脂を分散させることができる。即ち、耐衝撃樹脂中で、第2ポリオレフィン樹脂を含む連続相(C)を形成し、この連続相(C)中にポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)を分散させた相構造を得ることができる。更には、分散相(B)が、ポリアミド樹脂を含む連続相(B)と、連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(B)と、を有する多重の相構造を得ることができる。
この割合は、25質量%以上70質量%以下が好ましく、35質量%以上65質量%以下がより好ましい。この範囲では、第2ポリオレフィン樹脂中にポリアミド樹脂をより小さく分散させた耐衝撃樹脂を得ることができる。
耐衝撃樹脂を得る際の混練方法は特に限定されず、前述の溶融混練物を得る場合と同様の装置、運転方法、混練温度を挙げることができる。
【0071】
また、第2ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂の合計を100質量%とした場合におけるポリアミド樹脂の含有割合は、60質量%以下(通常、1質量%以上)とすることができる。この割合は、5質量%以上55質量%以下が好ましく、15質量%以上53質量%以下がより好ましく、19質量%以上50質量%以下が更に好ましく、21質量%以上48質量%以下がより更に好ましく、23質量%以上46質量%以下が特に好ましく、25質量%以上44質量%以下がより特に好ましく、28質量%以上43質量%以下がとりわけ好ましい。
【0072】
また、上記ポリアミドが、ポリアミド6である場合には、第2ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂の合計を100質量%とした場合におけるポリアミド樹脂の含有割合は、60質量%以下(通常、1質量%以上)とすることができ、5質量%以上45質量%以下が好ましく、7質量%以上43質量%以下がより好ましく、9質量%以上40質量%以下が更に好ましく、11質量%以上38質量%以下がより更に好ましく、13質量%以上36質量%以下が特に好ましく、15質量%以上34質量%以下がより特に好ましく、18質量%以上33質量%以下がとりわけ好ましい。
【0073】
更に、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及び、変性エラストマーの合計を100質量%とした場合におけるポリアミド樹脂の含有量は、1質量%以上60質量%以下とすることができる。この割合は、3質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上45質量%以下がより好ましく、7質量%以上40質量%以下が更に好ましく、9質量%以上35質量%以下がより更に好ましく、12質量%以上30質量%以下が特に好ましい。
【0074】
また、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及び、変性エラストマーの合計を100質量%とした場合における変性エラストマーの含有量は、1質量%以上70質量%以下とすることができる。この割合は、2質量%以上65質量%以下が好ましく、3質量%以上60質量%以下がより好ましく、5質量%以上55質量%以下が更に好ましく、7質量%以上50質量%以下がより更に好ましく、13質量%以上47質量%以下が特に好ましく、17質量%以上45質量%以下がとりわけ好ましい。
【0075】
上述の成形体原料は、第1ポリオレフィン樹脂と上述の耐衝撃樹脂とを混合して得られる熱可塑性樹脂の混合物である。この際に利用できる第1ポリオレフィン樹脂の種類等については前述の通りである。
この成形体原料は、第1ポリオレフィン樹脂と上述の耐衝撃樹脂との合計を100質量%とした場合に、第1ポリオレフィン樹脂の配合割合が、20質量%以上99.5質量%以下となるように、両樹脂を混合して得ることができる。これにより、第1ポリオレフィン樹脂に対する熱履歴の負荷を抑制した成形体原料を得ることができる。
特に、上記第1ポリオレフィン樹脂の配合割合は、30質量部以上99質量部以下とすることができ、更には40質量部以上98質量部以下とすることができ、更には45質量部以上97質量部以下とすることができ、更には52質量部以上96質量部以下とすることができ、更には55質量部以上95質量部以下とすることができる。
【0076】
また、前述のように、本方法により得られる成形体には、第1ポリオレフィン樹脂、第2ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマー以外に、難燃剤、難燃助剤、充填剤、着色剤、抗菌剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を含有できる。これらの添加剤を成形体に添加する場合、これらの添加剤を担持する担体として、耐衝撃樹脂を用いることができる。
【0077】
上記「成形工程」は、成形体原料調製工程で得られた成形体原料を成形して成形体を得る工程である。
この成形工程では、どのような成形方法を用いてよく特に限定されない。成形方法としては、射出成形、押出成形(シート押出、異形押出)、Tダイ成形、ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、中空成形、真空成形、圧縮成形、プレス成形、スタンピングモールド成形、トランスファ成形等が例示される。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0078】
尚、本方法によれば、熱可塑性樹脂を成形した成形体であって、第1のポリオレフィン樹脂及び第2のポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、前記連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相(B)と、を有し、前記分散相(B)は、前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの溶融混練物からなり、前記変性エラストマーは、前記ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーであり、前記エラストマーは、エチレン若しくはプロピレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体を骨格としたオレフィン系熱可塑性エラストマー、又は、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーであり、前記連続相(A)と前記分散相(B)との合計を100質量%とした場合に、前記分散相(B)が70質量%以下であり、前記第1のポリオレフィン樹脂と第2のポリオレフィン樹脂との合計を100質量%とした場合に、前記第2のポリオレフィン樹脂が80質量%以下である成形体を、得ることができる。
この成形体は、上述の方法によって、第1ポリオレフィンが元来有する剛性を十分に維持しながら、耐衝撃性には著しく優れた特性を得ることができる。更に、すべてのポリオレフィンを当初から配合する場合に比べて、ポリオレフィンの一部を第1ポリオレフィン樹脂として配合することによって、第1ポリオレフィン樹脂に対する熱履歴が抑制された成形体とすることができる。即ち、前記第2のポリオレフィン樹脂、前記ポリアミド樹脂及び前記変性エラストマーを含んだ耐衝撃樹脂と、前記第1のポリオレフィン樹脂と、の混合物を成形してなる成形体を得ることができる。
但し、本願出願時において、第1ポリオレフィン樹脂に対する熱履歴が、第2ポリオレフィン樹脂に対する熱履歴よりも小さいという特性を直接特定することは不可能である。また、仮にできるとしても、現在の分析技術をもってしても、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、このような特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するものであり、非実際的事情が存在する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1−1]評価用成形体の製造
<1>耐衝撃樹脂
得られる耐衝撃樹脂の全体を100質量%とした場合に、第2ポリオレフィンが55質量%、ポリアミド樹脂が15質量%、変性エラストマーが30質量%の割合で含まれる耐衝撃樹脂を以下の手順で調製した。
【0080】
(1)溶融混合物の調製
下記ポリアミド樹脂のペレットと下記変性エラストマーのペレットとをドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行い、ペレタイザーを介して、溶融混練物のペレットを得た。
・ポリアミド樹脂:ポリアミド6(No.1)、BASF社製、品名「ウルトラミッド B3S」、重量平均分子量18,000、融点220℃
・変性エラストマー:無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体(変性EBR)、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」、MFR(230℃)=1.5g/10分
【0081】
(2)耐衝撃樹脂の調製
上記(1)で得られた溶融混合物のペレットと、下記第2ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で混合を行い、ペレタイザーを介して、耐衝撃樹脂のペレットを得た。
・第2ポリオレフィン樹脂:ポリプロピレン樹脂(No.1)、ホモポリマー、プライムポリマー社製、品名「プライムポリプロ F113G」、数平均分子量520,000、融点160℃、MFR3g/10min
【0082】
<2>実施例1−5の成形体の作製
得られる成形体の全体を100質量%とした場合に、第1ポリオレフィンが80質量%、耐衝撃樹脂が20質量%の割合で含まれる成形体(実施例1)、第1ポリオレフィンが75質量%、耐衝撃樹脂が25質量%の割合で含まれる成形体(実施例2)、第1ポリオレフィンが70質量%、耐衝撃樹脂が30質量%の割合で含まれる成形体(実施例3)、第1ポリオレフィンが60質量%、耐衝撃樹脂が40質量%の割合で含まれる成形体(実施例4)、及び、第1ポリオレフィンが40質量%、耐衝撃樹脂が60質量%の割合で含まれる成形体(実施例5)を各々以下の手順で作製した。
【0083】
上記[1−1](2)で得られた耐衝撃樹脂のペレットと、下記第1ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドして、成形体原料を得た。得られた成形体原料を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)のホッパーに投入し、設定温度210℃、金型温度60℃の射出条件で物性測定用試験片を射出成形した。
・第1ポリオレフィン樹脂:エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂、サンアロマー株式会社製、品名「YS559N」、融点165℃
【0084】
<3>比較例の成形体の作製
(1)比較例1の成形体の作製
下記ポリオレフィン樹脂(実施例の成形体における第1ポリオレフィン樹脂と同じ)を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)のホッパーに投入し、設定温度210℃、金型温度60℃の射出条件で物性測定用試験片を射出成形した。
・第1ポリオレフィン樹脂:エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂、サンアロマー株式会社製、品名「YS559N」、融点165℃
【0085】
(2)比較例2−3の成形体の作製
従来より耐衝撃性付与を目的として利用されている下記耐衝撃性付与剤のペレットと、下記ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドして得た成形体原料を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)のホッパーに投入し、設定温度210℃、金型温度60℃の射出条件で物性測定用試験片を射出成形した。
・ポリオレフィン樹脂:エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂、サンアロマー株式会社製、品名「YS559N」、融点165℃
・耐衝撃付与剤:三井化学株式会社製、品名「タフマー DF810」
【0086】
[1−2]評価用成形体の評価
(1)シャルピー衝撃強度の測定
上記[1−1]で得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の各評価用試験片を用いて、JIS K7111−1に準拠してシャルピー衝撃強度の測定を行った。その結果を表1に示す。尚、このシャルピー衝撃強度の測定では、ノッチ(タイプA)を有する試験片を用い、温度23℃において、エッジワイズ試験法による衝撃の測定を行った。
【0087】
(2)モルフォルジー観察
上記(1)のシャルピー衝撃強度測定に供した実施例1〜5の各試験片から切り出した試料を、樹脂包埋する。その後、ダイヤモンドナイフ装着のウルトラミクロトームにてトリミング・断面作製を行い、金属酸化物による蒸気染色を施す。得られた染色後の断面から採取した超薄切片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式「HT7700」)を用いて観察することにより、相構造を確認する。その結果を表1に示した。
その結果、実施例1〜5においては、図1の模式図に示すように、第1ポリオレフィン樹脂及び第2ポリオレフィン樹脂を含む連続相1[連続相(A)]、連続相(A)中に分散されたポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む分散相2[分散相(B)]、ポリアミド樹脂を含む連続相3[連続相(B)]、連続相(B)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相4[微分散相(B)]、第1ポリオレフィン樹脂が有したエチレンブロックが連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集された凝集相5[凝集相(D)]、が各々認められる。尚、凝集相(D)は、第1ポリオレフィン樹脂中のエチレンブロックのみでなく、変性エラストマーを含む。
また、相構造に関する結果は、表1にも併記した。
【0088】
(3)引張弾性率の測定
上記[1−1]で得られた実施例1〜5及び比較例1〜3の各評価用試験片を用いて、JIS K7161に準拠して引張弾性率の測定を行った。その結果を表1に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
[1−3]効果
表1の結果から、耐衝撃樹脂を用いて得られた実施例1〜5の成形体は、比較例1の第1ポリオレフィン樹脂により構成された成形体よりも著しく高いシャルピー衝撃強度を示しており、優れた耐衝撃性を有していることが確認できた。更には、耐衝撃樹脂の添加による引張弾性率の低下は極めて低く抑えられており、剛性が十分に保持されていることが確認できた。
また、耐衝撃樹脂を用いたことによる上記効果は、従来の添加材を用いた比較例2及び3の結果との比較からも明かであった。
更に、上述したように、図1の結果から、本成形体では、連続相1[連続相(A)]と分散相2[分散相(B)]とが形成されていることが分かる。更に、分散相(B)内には、微分散相4[微分散相(B)]が形成されていることが分かる。加えて、第1ポリオレフィン樹脂として、エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂を用いることで、エチレンブロック(EPR)の少なくとも一部が、連続相(A)と分散相(B)との界面に凝集されていることが分かる(凝集相5参照)。このような凝集によって、より優れた耐衝撃性が得られているものと考えられる。
【0091】
[2−1]評価用成形体の製造(実施例6〜9)
<1>耐衝撃樹脂
実施例6〜9で用いられる耐衝撃樹脂においては、得られる耐衝撃樹脂の全体を100質量%とした場合に、第2ポリオレフィンが55質量%、ポリアミド樹脂が15質量%、変性エラストマーが30質量%の割合で含まれる耐衝撃樹脂を以下の手順で調製した。
【0092】
(1)溶融混合物の調製
下記ポリアミド樹脂のペレットと下記変性エラストマーのペレットとをドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行い、ペレタイザーを介して、溶融混練物のペレットを得た。
・ポリアミド樹脂:ポリアミド6(No.2)、宇部興産株式会社製、品名「1010X1」、重量平均分子量20,000、融点215℃
・変性エラストマー:無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体(変性EBR)、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」、MFR(230℃)=1.5g/10分
【0093】
(2)耐衝撃樹脂の調製
上記(1)で得られた溶融混合物のペレットと、下記第2ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で混合を行い、ペレタイザーを介して、耐衝撃樹脂(ペレット形状)を得た。
・第2ポリオレフィン樹脂:ポリプロピレン樹脂(No.1)、ホモポリマー、プライムポリマー社製、品名「プライムポリプロ F113G」、数平均分子量520,000、融点160℃、MFR3g/10min
【0094】
<2>実施例6−9の成形体の作製
得られる成形体の全体を100質量%とした場合に、第1ポリオレフィンが80質量%、耐衝撃樹脂が20質量%の割合で含まれる成形体(実施例6)、第1ポリオレフィンが60質量%、耐衝撃樹脂が40質量%の割合で含まれる成形体(実施例7)、第1ポリオレフィンが40質量%、耐衝撃樹脂が60質量%の割合で含まれる成形体(実施例8)、及び、第1ポリオレフィンが20質量%、耐衝撃樹脂が80質量%の割合で含まれる成形体(実施例9)を各々以下の手順で作製した。
【0095】
上記[2−1](2)で得られた耐衝撃樹脂と、下記第1ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドして、成形体原料を得た。得られた成形体原料を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)のホッパーに投入し、設定温度210℃、金型温度60℃の射出条件で物性測定用試験片を射出成形した。
・第1ポリオレフィン樹脂:エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂、サンアロマー株式会社製、品名「YS559N」、融点165℃
【0096】
[2−2]評価用成形体の製造(実施例10〜13)
<1>耐衝撃樹脂
実施例10〜13で用いられる耐衝撃樹脂においては、得られる耐衝撃樹脂の全体を100質量%とした場合に、第2ポリオレフィンが55質量%、ポリアミド樹脂が25質量%、変性エラストマーが20質量%の割合で含まれる耐衝撃樹脂を以下の手順で調製した。
【0097】
(1)溶融混合物の調製
下記ポリアミド樹脂のペレットと下記変性エラストマーのペレットとをドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で溶融混練を行い、ペレタイザーを介して、溶融混練物のペレットを得た。
・ポリアミド樹脂:ポリアミド11、アルケマ社製、品名「リルサン BMN O」、重量平均分子量18,000、融点189℃
・変性エラストマー:無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体(変性EBR)、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」、MFR(230℃)=1.5g/10分
【0098】
(2)耐衝撃樹脂の調製
上記(1)で得られた溶融混合物のペレットと、下記第2ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、L/D=59)に投入し、混練温度210℃、押出速度2.0kg/時間、スクリュー回転数200回転/分の条件で混合を行い、ペレタイザーを介して、耐衝撃樹脂(ペレット形状)を得た。
・第2ポリオレフィン樹脂:ポリプロピレン樹脂(No.2)、ホモポリマー、日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバテック MA1B」、数平均分子量312,000、融点165℃、MFR21g/10min
【0099】
<2>実施例10−13の成形体の作製
得られる成形体の全体を100質量%とした場合に、第1ポリオレフィンが90質量%、耐衝撃樹脂が10質量%の割合で含まれる成形体(実施例10)、第1ポリオレフィンが80質量%、耐衝撃樹脂が20質量%の割合で含まれる成形体(実施例11)、第1ポリオレフィンが70質量%、耐衝撃樹脂が30質量%の割合で含まれる成形体(実施例12)、及び、第1ポリオレフィンが60質量%、耐衝撃樹脂が40質量%の割合で含まれる成形体(実施例13)を各々以下の手順で作製した。
【0100】
上記[2−2](2)で得られた耐衝撃樹脂と、下記第1ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドして、成形体原料を得た。得られた成形体原料を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)のホッパーに投入し、設定温度210℃、金型温度60℃の射出条件で物性測定用試験片を射出成形した。
・第1ポリオレフィン樹脂:エチレンブロックの分散相を有するブロック共重合ポリオレフィン樹脂、サンアロマー株式会社製、品名「YS559N」、融点165℃
【0101】
[2−3]評価用成形体の評価
(1)引張弾性率の測定
上記[2−1]及び[2−2]で得られた実施例6〜13の各評価用試験片を用いて、JIS K7161に準拠して引張弾性率の測定を行った。その結果を表2に示した。
また、実施例1〜5[PA6(No.1)系の耐衝撃樹脂]、実施例6〜9[PA6(No.2)系の耐衝撃樹脂]、及び実施例10〜13[PA11系の耐衝撃樹脂]の各評価用試験片における引張弾性率と耐衝撃樹脂の添加量の相関を示すグラフを図2に示した。
【0102】
(2)モルフォルジー観察
上記(1)の引張弾性率測定に供した実施例6〜13の各試験片から切り出した試料を、樹脂包埋した。その後、ダイヤモンドナイフ装着のウルトラミクロトームにてトリミング・断面作製を行い、金属酸化物による蒸気染色を施した。得られた染色後の断面から採取した超薄切片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式「HT7700」)を用いて観察することにより、相構造を確認した。その結果を表2に示した。
【0103】
【表2】
【0104】
[2−4]効果
表2の結果から、上述の実施例1〜5とは異なるポリアミドを用いた耐衝撃樹脂を添加して得られた実施例6〜13の成形体においても、上述の実施例1〜5及び比較例1と比較して、引張弾性率の低下は極めて低く抑えられており、剛性が十分に保持されていることが確認できた。
また、図2の結果から、ポリアミド樹脂としてPA6を含む耐衝撃樹脂を用いて得られた成形体[PA6(No.1)系(実施例1〜5)、PA6(No.2)系(実施例6〜9)]は、ポリアミド樹脂としてPA11を含む耐衝撃樹脂を用いて得られた成形体[PA11系(実施例10〜13)]よりも、高剛性が保たれることが確認できた。尚、この傾向は、耐衝撃樹脂の添加量が低い範囲においてより顕著であった。
この結果から、ポリアミドとして、ポリアミド6を用いる場合には、ポリアミド11を用いる場合よりも、相対的に少ない含有割合で、第1ポリオレフィン樹脂に由来する引張弾性率が十分に保持されており、且つ耐衝撃性に優れる成形体が得られることが分かった。
【0105】
尚、本発明においては、上記の具体的な実施例に記載されたものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
即ち、例えば、上述の実施例では、耐衝撃樹脂のペレットと第1ポリオレフィン樹脂のペレットとをドライブレンドして得られた成形体原料を成形して成形体を得ているが、当然ながら、耐衝撃樹脂のペレットと第1ポリオレフィン樹脂のペレットとを溶融混練して得られたペレットを成形体原料として利用することができる。
【0106】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0107】
1;連続相(A)、
2;分散相(B)、
3;連続相(B)、
4;微分散相(B)、
5;凝集相(D)。
図1
図2