(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984631
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】電気装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20211213BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20211213BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20211213BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20211213BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20211213BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20211213BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20211213BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
B22F3/105
B22F3/16
B22F7/04 A
B33Y10/00
B33Y80/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-82028(P2019-82028)
(22)【出願日】2019年4月23日
(65)【公開番号】特開2020-181844(P2020-181844A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潔
【審査官】
平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−232366(JP,A)
【文献】
特開2016−027598(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2019/0110357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00
B29C 64/00−64/40
B29C 67/00−67/08
B29C 67/24−69/02
B29C 73/00−73/34
B29D 1/00−29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00−99/00
C22C 1/04−1/05
C22C 33/02
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に伝熱体を有する電気部品を準備する工程と、
三次元焼結金属印刷機を用いて、前記伝熱体と直接接触し、前記伝熱体に焼結により結合するヒートシンクを形成する工程と、
を有し、
前記ヒートシンクを形成する工程の前に、
第2の面に収納部を有する保持治工具を準備する工程と、
前記伝熱体が前記第2の面から露出するようにして前記電気部品を前記収納部内に収納する工程と、
前記三次元焼結金属印刷機の印刷テーブル上に前記保持治工具を固定する工程と、
を有することを特徴とする電気装置の製造方法。
【請求項2】
前記伝熱体の材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金であることを特徴とする請求項1に記載の電気装置の製造方法。
【請求項3】
前記ヒートシンクを形成する工程は、
金属粉末を塗布する工程と、
前記金属粉末にレーザ光を照射して焼結する工程と、
を繰り返す工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属粉末の材料は、少なくとも前記ヒートシンクの前記伝熱体と接触する部分を形成する段階において、前記伝熱体の材料と同一とすることを特徴とする請求項3に記載の電気装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の面を前記第2の面と面一にすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気装
置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置等の半導体装置に含まれる半導体モジュールは、大規模な発熱をする。このため、半導体モジュールにヒートシンクが取り付けられている。また、半導体モジュールとヒートシンクとの間の隙間を埋めるために、半導体モジュールとヒートシンクとの間には、シリコーン等の熱伝導材(thermal interface material:TIM)が挟まれている。
【0003】
これまで、放熱性の向上のために種々のヒートシンクが提案されている。また、3Dプリンタを用いてヒートシンクを製造する方法も提案されている。
【0004】
しかしながら、TIMの熱伝導率はヒートシンクの熱伝導率より低いため、十分な放熱性が得られないことがある。また、半導体装置の使用時間が長くなると、熱サイクルによってTIMのポンプアウトが生じて、放熱性が低下することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−27595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、優れた放熱性を得ることができる電気装
置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、第1の面に伝熱体を有する電気部品
を準備する工程と、三次元焼結金属印刷機を用いて、前記伝熱体と直接接触し、前記伝熱体に焼結により結合するヒートシンクを形成する工程と、を有し、前記ヒートシンクを形成する工程の前に、第2の面に収納部を有する保持治工具を準備する工程と、前記伝熱体が前記第2の面から露出するようにして前記電気部品を前記収納部内に収納する工程と、前記三次元焼結金属印刷機の印刷テーブル上に前記保持治工具を固定する工程と、を有する電気装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優れた放熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図(その1)である。
【
図2】本開示の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図(その2)である。
【
図3】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
【
図4】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
【
図5】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
【
図6】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その4)である。
【
図7】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その5)である。
【
図8】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その6)である。
【
図9】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その7)である。
【
図10】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その8)である。
【
図11】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図(その9)である。
【
図12】参考例の半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
【
図13】参考例の半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
【
図14】参考例の半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
【
図15】本開示の実施形態の変形例に係る半導体装置の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、本開示においては、X1−X2方向、Y1−Y2方向、Z1−Z2方向を相互に直交する方向とする。なお、便宜上、Z1−Z2方向を上下方向とする。また、平面視とは、Z1側から対象物を見ることをいう。
【0011】
図1及び
図2は、本開示の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
図1と
図2との間では、X1−X2方向に延びる直線を軸にして、視点を180度回転させている。
図1及び
図2に示すように、本開示の実施形態に係る半導体装置1は、半導体モジュール100と、ヒートシンク200とを有する。なお、半導体装置1は、特許請求の範囲の「電気装置」の一例である。また、半導体モジュール100は、特許請求の範囲の「電気部品」の一例である。
【0012】
半導体モジュール100は、例えば、電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)等を含むパワーモジュールである。半導体モジュール100のZ1側の面110(
図3参照)には、金属の伝熱体111(
図3参照)が設けられている。伝熱体111は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金製である。伝熱体111が、銅又は銅合金製であってもよい。また、伝熱体111は、高熱伝導性を有していれば、金属以外の部材であってもよい。半導体モジュール100のZ2側の面120には、外部端子121、122及び123が設けられている。面110は第1の面の一例である。
【0013】
ヒートシンク200は、ベース部210と、放熱部220とを有する。放熱部220は、ベース部210からZ1側に立ち上がる複数のフィン221を備える。詳細は後述するが、ベース部210は半導体モジュール100の面110上に、直接、三次元印刷法により形成されている。このため、ヒートシンク200は伝熱体111に焼結により結合している。例えば、ヒートシンク200の伝熱体111と接する部分の材料は、伝熱体111の材料と同一であることが好ましい。ヒートシンク200の全体の材料が伝熱体111の材料と同一でもよい。また、ヒートシンク200の材料が、連続的に又は段階的に変化していてもよい。例えば、伝熱体111の材料がアルミニウムである場合、ヒートシンク200の全体の材料がアルミニウムであってもよく、ヒートシンク200の伝熱体111と接する部分の材料がアルミニウムで、この部分から離間するにつれて組成が変化するアルミニウム合金であってもよい。
【0014】
半導体装置1においては、ヒートシンク200が伝熱体111に焼結により結合している。つまり、例えば、TIM等のヒートシンク200よりも熱伝導率が低い部材がヒートシンク200と伝熱体111との間に介在しない。このため、伝熱体111の熱がヒートシンク200に直接伝わり、優れた放熱性を得ることができる。
【0015】
例えば、半導体モジュール100はパワーモジュールであり、半導体装置1は電力変換装置であるが、これらに限定されない。半導体モジュール100が通信モジュール等であってもよく、半導体装置1が通信装置等であってもよい。
【0016】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。
図3〜
図11は、半導体装置1の製造方法を示す図である。この製造方法では、印刷ステージ及びレーザを備えた三次元焼結金属印刷機を用いた三次元印刷法によりヒートシンク200を形成する。
【0017】
先ず、
図3及び
図4に示すように、半導体モジュール100を準備する。
図3と
図4との間では、X1−X2方向に延びる直線を軸にして、視点を180度回転させている。上記のように、半導体モジュール100のZ1側の面110に伝熱体111が設けられ、Z2側の面120に外部端子121、122及び123が設けられている。半導体モジュール100の準備では、例えば、半導体基板上に素子を形成し、その後に、トランスファ成形により、素子が形成された半導体基板を樹脂で封止する。半導体モジュール100は、インジェクション成形やポッティング成形などにより、素子が形成された半導体基板が樹脂で封止されてもよい。
【0018】
次いで、
図5に示すように、三次元焼結金属印刷機の印刷ステージ上に半導体モジュール100を保持する保持治工具300を準備する。保持治工具300は、印刷ステージに接する面320と、面320とは反対側の面310とを有する。面310には、半導体モジュール100を収納する溝状の収納部311が形成されている。収納部311は、例えば面310を彫り込むことで形成することができる。また、収納部311の内側には、収納部311内で半導体モジュール100を支持する支持部312が設けられている。面310は第2の面の一例である。
【0019】
図6に示すように、収納部311に半導体モジュール100を収納する。このとき、半導体モジュール100の面110と保持治工具300の面310とが同一の方向(Z1側)を向くようにし、好ましくは、面110と面310とを面一とする。
【0020】
続いて、
図7に示すように、半導体モジュール100を収納した保持治工具300を三次元焼結印刷機の印刷ステージ400上に固定する。例えば、印刷ステージ400の表面は鉛直上方を向くが、印刷ステージ400の表面が鉛直上方から傾斜する方向を向いていてもよい。
【0021】
次いで、
図8に示すように、保持治工具300の面310上に剥離シート500を貼り付ける。剥離シート500の材料としては、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーン等の耐熱性樹脂を用いることができる。
【0022】
その後、ヒートシンク200の形成を開始する。ヒートシンク200の形成では、
図9に示すように、半導体モジュール100の面110上に金属粉末230を塗布し、塗布した金属粉末230に、三次元焼結印刷機のレーザ410からレーザ光420を照射することで、金属粉末230を焼結して焼結金属を得る。このとき、金属粉末230を、形成しようとするヒートシンク200の立体形状に積層していくことで、
図10に示すように、ベース部210及び放熱部220を備えたヒートシンク200が形成される。
【0023】
ヒートシンク200の形成後には、
図11に示すように、半導体モジュール100を収納した保持治工具300を印刷ステージ400から取り外す。
【0024】
次いで、半導体モジュール100を収納部311から取り出す。このとき、保持治工具300の面310上に剥離シート500が設けられているため、ヒートシンク200が平面視で半導体モジュール100からはみ出すように形成されていても、ヒートシンク200が一体的に形成された半導体モジュール100は、収納部311から容易に取り出すことができる。剥離シート500は保持治工具300上に残存してもよく、ヒートシンク200上に残存してもよく、いずれに残存する場合でも、剥離シート500を容易に剥すことができる。
【0025】
このようにして半導体装置1を製造することができる。そして、このような方法で製造された半導体装置1では、ヒートシンク200が伝熱体111に焼結により結合している。
【0026】
なお、ヒートシンク200の形成に用いる金属粉末230の材料は特に限定されないが、伝熱体111と接する部分に用いる金属粉末230の材料は、伝熱体111の材料と同一とすることが好ましい。その後に、伝熱体111の材料と同一の材料の金属粉末230を継続して使用してもよく、また、ヒートシンク200の形成に連れて金属粉末230の材料の組成を、連続的に又は段階的に変化させてもよい。
【0027】
ここで、上記の実施形態との比較のために、参考例について説明する。
図12〜
図14は、参考例の半導体装置の製造方法を示す図である。この参考例では、半導体モジュール100とは別に、
図12に示すように、単体のヒートシンク200を作製する。そして、下記のように、長手方向(X1−X2方向)の両端2箇所でねじを用いてヒートシンク200を半導体モジュール100に固定する。
【0028】
半導体モジュール100は、トランスファ成形などにより、素子が形成された半導体基板を樹脂で封止することで作製することができる。ヒートシンク200が半導体モジュール100にねじ留めされると、ねじ留めの荷重によって面110が凹状に反りやすい。面110が凹状に湾曲すると、TIMが設けられても熱伝導性が低下する。そこで、
図13に示すように、トランスファ成形の後に面110を凸状に加工する。
【0029】
ヒートシンク200は、例えば、鋳造により作製することができる。三次元焼結印刷機を用いた三次元印刷法により単体のヒートシンク200を作製することもできる。鋳造により作製したヒートシンク200も、三次元印刷法により作製したヒートシンク200も、そのままでは、ベース部210の半導体モジュール100側となる面の平坦度は低い。そこで、この面を研磨して、平坦度を高める。
【0030】
半導体モジュール100及びヒートシンク200を個別に作製した後、
図14に示すように、ベース部210上にTIM600を50μm〜200μmの厚さで設け、その上に半導体モジュール100を載置し、ねじ700により2箇所でヒートシンク200を半導体モジュール100に固定する。
【0031】
この参考例では、TIM600が介在するため、ヒートシンク200が焼結により伝熱体111に直接結合した実施形態に係る半導体装置1ほどの熱伝導性は得られない。また、熱サイクルによってTIM600のポンプアウトが生じて、熱伝導性が低下し得る。
【0032】
更に、半導体モジュール100の面110を凸状に加工する工程、ヒートシンク200のベース部210の半導体モジュール100側となる面を研磨する工程の分だけ、半導体装置1の製造方法よりも工数が多くなる。上述の半導体装置1の製造方法では、三次元印刷法により面110上にヒートシンク200を形成するため、ねじ留めに伴う反りは生じない。また、ベース部210の半導体モジュール100側の面は、自己整合的に半導体モジュール100側の面に倣う。例えば、半導体モジュール100側の面に荒れが存在していたとしても、金属粉末230が荒れの凹部を埋めていき、ベース部210の半導体モジュール100側の面は、半導体モジュール100側の面に倣うようになる。
【0033】
なお、
図9では、ヒートシンク200を半導体モジュール100の面110上のみに形成しているが、
図15に示すように、ヒートシンク200を剥離シート500上にはみ出すように形成してもよい。この場合でも、ヒートシンク200のベース部210の保持治工具300側の面と保持治工具300の面310との間に剥離シート500が介在しているため、ヒートシンク200が一体的に形成された半導体モジュール100は、収納部311から容易に取り出すことができる。剥離シート500はベース部210上に残存してもよく、保持治工具300上に残存してもよく、いずれに残存する場合でも、剥離シート500を容易に剥すことができる。ヒートシンク200を剥離シート500上にはみ出すように形成した場合、製造される半導体装置1では、平面視で、ヒートシンク200が半導体モジュール100からはみ出すこととなる。
【0034】
また、保持治工具300に設ける収納部311は複数でもよい。複数の収納部311の各々に半導体モジュール100を収納した状態で、半導体モジュール100の各々にヒートシンク200を三次元印刷法により形成することで、複数の半導体装置1を同時並行で形成することができる。あるいは、複数の半導体モジュール100を共通に冷却するためのヒートシンク200を、複数の半導体モジュール100の伝熱体111に跨って、三次元印刷法により形成することができる。
【0035】
また、上記実施形態では、電気部品が半導体モジュール100である例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、電気部品は、抵抗器やコンデンサあるは銅などで形成された導体あるいはトランス、インダクタなど、伝熱体111を有する発熱部品であればよい。
【0036】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体装置
100 半導体モジュール
110、120 面
111 伝熱体
200 ヒートシンク
210 ベース部
220 放熱部
221 フィン
230 金属粉末
300 保持治工具
310、320 面
311 収納部
312 支持部
400 印刷ステージ
410 レーザ
420 レーザ光
500 剥離シート