(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)およびカルボキシル基を有するモノマー(ay)を含むモノマー混合物の共重合体(A)と、ロジン系樹脂(B)と、可塑剤(C)(但し、ロジンエステルである場合を除く)と、硬化剤(D)とを含み、
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)は、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含み、かつアルキル基の炭素数の平均値が2.9〜3.7であり、
前記モノマー混合物100質量%中、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)の含有率は60〜98質量%、カルボキシル基を有するモノマー(ay)の含有率は2〜10質量%であり、
ロジン系樹脂(B)は、ロジンエステルであり、
共重合体(A)100質量部に対し、可塑剤(C)2〜15質量部、および硬化剤(D)を0.01〜15質量部含む
ことを特徴とするポリ塩化ビニル用粘着剤。
ロジン系樹脂(B)の軟化点は70〜110℃であり、共重合体(A)100質量部に対し、ロジン系樹脂(B)を5〜10質量部含む、請求項1記載のポリ塩化ビニル用粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細を説明する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリル酸」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリル酸またはメタクリル酸」を表すものとする。「(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)およびカルボキシル基を有するモノマー(ay)を含むモノマー混合物の共重合体(A)」、「(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)」は、それぞれ「共重合体(A)」、「モノマー(ax)」と略記することがある。モノマーとは、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を意味する。
被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方を指す。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0014】
《ポリ塩化ビニル用粘着剤》
本発明のポリ塩化ビニル用粘着剤(単に「粘着剤」と略記することがある)は、共重合体(A)、ロジン系樹脂(B)、可塑剤(C)、および硬化剤(D)を含む。
【0015】
<共重合体(A)>
本発明で使用する共重合体(A)は、モノマー混合物100質量%中、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)を60〜98質量%およびカルボキシル基を有するモノマー(ay)を2〜10質量%含むモノマー混合物の共重合物である。
【0016】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)]
本発明では共重合体(A)を構成するモノマーとして(ax)を用いることで、共重合体(A)に粘着力および凝集力を付与することができる。共重合体(A)を構成する全モノマー100質量%中のモノマー(ax)の含有率は60〜98質量%である必要があり、65質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。また、95質%以下が好ましい。上記範囲内であることで、粘着力と凝集力が両立できる。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)は、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含み、かつアルキル基の炭素数の平均値が2.9〜3.7である。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを用いることができる。
【0019】
アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシルなどが挙げられる。
中でも、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、および(メタ)アクリル酸イソオクチルの少なくともいずれかを含むことが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルヘキシルの少なくともいずれかを含むことがさらに好ましい。
アルキル基の炭素数が3以下のものは共重合体(A)に凝集力を高め耐可塑剤性を付与する機能を持ち、アルキル基の炭素数が4以上のものは共重合体(A)に粘着力を付与する機能を持つため、両者を組み合わせることがとくに好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)は、アルキル基の炭素数の平均値が2.9〜3.7である必要があり、3.0以上であることが好ましく、3.1以上がより好ましい。また、3.6以下であることが好ましく、3.5以下がより好ましく、3.4以下がさらに好ましい。上記範囲内であると、粘着力と可塑剤耐性を両立することができ、さらに透明性を確保できる。
【0021】
なお、本発明においてアルキル基の炭素数の平均値とは下記式(1)に基づいて計算された値である。
アルキル基の炭素数の平均値=N1×M1+N2×M2+・・・・+Nn×Mn (1)
[式(1)中、Ni(i=1、2、・・・、n)は(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)のアルキル基の炭素数、
Mi(i=1、2、・・・、n)は全(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)成分中の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(ax)のmol分率]であり、
上記式(1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)がax1、ax2、・・・、axnのn種類のモノマーから構成される場合の計算式である。
【0022】
[カルボキシル基を有するモノマー(ay)]
本発明の粘着剤は、カルボキシル基を有するモノマー(ay)を用いることで、共重合体(A)に硬化剤(D)との架橋反応の架橋点を付与することができる。共重合体を構成する全モノマー100質量%中のカルボキシル基を有するモノマー(ay)の含有率は、2〜10質量%である必要があり、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、8質量%以下が好ましい。上記範囲内であると、所望の架橋密度が得やすく、ポリオレフィンに対する密着性と耐可塑剤性を両立することができ、さらに透明性を確保できる。
【0023】
カルボキシル基を有するモノマー(ay)は、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、イタコン酸等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0024】
本発明では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)およびカルボキシル基を有するモノマー(ay)以外の、その他モノマーを使用することもできる。
その他モノマーは、粘着力や凝集力を損なわないモノマーであれば良い。具体的には、水酸基を有するモノマー、アミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、およびアミノ基を有するモノマー等の反応性官能基を有するモノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーおよびその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0025】
水酸基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。水酸基を有するモノマーは、全モノマー100質量%中に0.01〜0.5質量%含むことが好ましい。
【0026】
アミド結合を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびアクリロイルモルホリン等の複素環を有する化合物等が挙げられる。
【0027】
エポキシ基を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、および(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0028】
アミノ基を有するモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0029】
アミド結合を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマーおよびアミノ基を有するモノマーは、全モノマー100質量%中、それぞれ0.1〜1質量%を含むことが好ましい。
【0030】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーは、例えばアクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0031】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイドを有するモノマーは、全モノマー100質量%中、1〜20質量%を含むことが好ましい。
【0032】
その他ビニルモノマーは、酢酸ビニル、およびアクリロニトリルなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
その他ビニルモノマーは、全モノマー100質量%中、1〜20質量%を含むことが好ましい。
【0034】
[共重合体(A)の製造方法]
共重合(A)は、公知の方法により製造することができるが、溶液重合により製造することが好ましい。溶液重合においては、重合する際に使用する溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の等の炭化水素系溶剤を使用することが好ましい。
【0035】
具体的には、溶剤、モノマー、重合開始剤等を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で、反応温度50〜90℃程度に加熱し、4〜12時間で重合反応させるのが一般的である。
【0036】
重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、モノマー100質量部に対して、通常は0.01〜5質量部の範囲内の量で使用される。また、重合反応中に、連鎖移動剤、モノマー、溶媒を適宜添加してもよい。
【0037】
上記重合開始剤の内、アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0038】
また、上記重合開始剤の内、有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0039】
本発明において共重合体(A)の重量平均分子量は、50万以上が好ましく、60万以上がより好ましい。また、120万以下が好ましく、100万以下がより好ましい。上記範囲内であると、粘着剤層の凝集力が所望の範囲内に調整しやすくなり、粘着物性と塗工性の両立が容易になる。
【0040】
上記のような条件において、得られる共重合体の重量平均分子量は、使用する溶媒の種類および量、重合開始剤の種類および量、反応時間、反応温度などの反応条件を調整することにより調節することができる。
【0041】
本発明において共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−50〜−25℃であることが好ましく、−48℃以上がより好ましく、−45℃以上がさらに好ましい。また、−30℃以下がより好ましく、−35℃以下がさらに好ましい。上記範囲内であると、粘着力と可塑剤耐性の両立が容易になる。
【0042】
なお、本発明において共重合体(A)のTgは、下記式(2)(Fox式)に基づいて計算された値であり、Tg(単位:℃)=Tg(単位:K)−273とする。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (2)
[式(2)中、Tgは共重合体(A)のTg(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はモノマーiがホモポリマーを形成した際のTg(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はモノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。なお、ホモポリマーのTgは文献値やカタログ値などの公表値を使用する。]
上記式(2)は、共重合体(A)が、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0043】
<ロジン系樹脂(B)>
ロジン系樹脂(B)は、ロジンエステルである。
本発明の粘着剤は、ロジンエステルを含むことで、ポリオレフィンに対する密着性を高めることができる。
ロジンエステルは、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したものや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステル等が挙げられる。なお、ロジンエステルには、エステル化に用いたアルコールなどの水酸基の一部が未反応で残存している場合もある。エステル化に用いるアルコールは、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0044】
ロジン系樹脂(B)の軟化点は、70〜110℃が好ましい。軟化点を70〜110℃にすると粘着力および透明性を両立することが容易となる。
【0045】
ロジン系樹脂(B)の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましい。また、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と透明性を両立することが容易となる。
【0046】
なお、本発明の課題解決ができる範囲でロジン系樹脂(B)以外の粘着付与樹脂を含んでも良い。例えば、テルペン樹脂、脂環族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0047】
ロジン系樹脂(B)以外の粘着付与樹脂を用いる場合には、共重合体(A)100質量部に対して、0.1〜5質量部配合することが好ましい。
【0048】
ロジン系樹脂(B)以外の粘着付与樹脂の軟化点は、70〜110℃が好ましい。
【0049】
<可塑剤(C)>
本発明の粘着剤は、可塑剤(C)を含むことで、粘着層に濡れ性を付与しポリオレフィンに対する密着性を高めることができる。可塑剤(C)は、例えば、炭素数1〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数1〜18の単官能アルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル、炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸と2〜4価アルコールとのエステル、炭素数1〜18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル、ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのジエステル、トリエステル、テトラエステル、不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。また、可塑剤は共重合体(A)とロジン系樹脂(B)の相溶化剤として機能し、粘着層の透明性を向上させる場合がある。
【0050】
炭素数1〜18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数1〜18の単官能アルコールとのエステルとしては、例えば、オレイン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソステアリル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、およびフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0051】
炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸と2〜4官能アルコールとのエステルを構成する炭素数14〜18の不飽和脂肪酸と2〜4価アルコールとしては、以下の通りである。炭素数14〜18の不飽和脂肪酸または分岐酸は、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。2〜4官能アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0052】
炭素数1〜18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ−2−エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0053】
ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのエステルとしては乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、2−ヒドロキシミリスチン酸メチル、12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、リシノール酸エチル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0054】
不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂や炭素数8〜18の不飽和脂肪酸をエポキシ化した化合物と、炭素数1〜6の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物等が挙げられる。
【0055】
リン酸エステルは、例えば、リン酸と炭素数2〜18の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物が挙げられ、具体的には、トリブチルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0056】
可塑剤(C)の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して2〜15質量部である必要があり、5質量部以上であることが好ましい。また、10質量部以下であることが好ましい。上記範囲内であると、粘着力と透明性を両立することができる。
【0057】
可塑剤(C)の分子量は、250〜800が好ましく、300以上がより好ましい。また、600以下がより好ましい。分子量が上記範囲内であると、共重合体(A)との相溶性が良く、粘着層にポリオレフィンに対する適度な濡れ性を付与しやすくなる。
【0058】
可塑剤(C)は、共重合体(A)との相溶性の観点からアルキル基を有することが好ましく、アルキル基の炭素数が2〜6であることがより好ましい。炭素数が2〜6のアルキル基を有する可塑剤(C)としては、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジブチル、アセチルクエン酸トリブチル、トリブチルホスフェート等が挙げられる。上記範囲内であると、ポリオレフィンに対する密着性が向上しやすくなる。
【0059】
<硬化剤(D)>
本発明の粘着剤は、硬化剤(D)を含むことで、粘着層の凝集力を高め粘着力と凝集力を両立することができる。硬化剤(D)としては、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤、アジリジン系硬化剤などが挙げられ、その中でも粘着力と凝集力を両立する点から、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、および金属キレート系硬化剤の少なくともいずれかが好ましい。
【0060】
硬化剤(D)の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して0.01〜15質量部である必要がある。上記範囲内であると、適度な架橋密度となり粘着力と凝集力を両立することができる。
【0061】
イソシアネート系硬化剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに上記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、およびポリイソプレンポリオール等の内のいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;またはこれらのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0062】
イソシアネート系硬化剤の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、1.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と凝集力を両立しやすくなる。
【0063】
エポキシ系硬化剤は、例えば、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0064】
エポキシ系硬化剤は、共重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上がより好ましい。また1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と凝集力を両立しやすくなる。
【0065】
金属キレート系硬化剤は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0066】
金属キレート系硬化剤は、共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下がより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と凝集力を両立しやすくなる。
【0067】
アジリジン系硬化剤は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、およびトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0068】
アジリジン系硬化剤は、共重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。また2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下がより好ましい。上記範囲内であると、粘着力と凝集力を両立しやすくなる。
【0069】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により各種樹脂や添加剤を添加することができる。例えば、酸化防止剤、シランカップリング剤、熱または光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、顔料、染料、香料などを挙げることができる。これらは、必要に応じて有効量を配合することができる。
【0070】
《粘着シート》
本発明の粘着シートは、ポリ塩化ビニルと、粘着剤層とを貼付するために用いられるが、粘着シートが有する基材がポリ塩化ビニルであってもよく、または被着体がポリ塩化ビニルである場合であってもよい。
耐可塑剤性および、ポリオレフィンへの接着性に優れることから、基材にポリ塩化ビニルを用いた粘着シートとし、被着体として、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いる場合に、より好適に使用することができる。
【0071】
粘着シートは、基材、および本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えていることが好ましい。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を有する両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。または、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。
【0072】
粘着剤を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。
【0073】
本発明の粘着シートは、基材にポリ塩化ビニルを用いることが好ましい。ポリ塩化ビニルは耐候性に優れるため、マーキングフィルムなど屋外や日光に曝される用途の基材として好ましい。ポリ塩化ビニルは単独では硬いため、可塑剤を添加することでフィルム状に成型して用いられることが多い。このような可塑剤を含むポリ塩化ビニルは、柔軟性に優れるため、粘着シートとして使用する際の施工性を向上することができる。一方で、基材に含まれる可塑剤の移行が起こりやすいという問題があるが、本発明の粘着シートは、可塑剤移行に対して耐性があるため、このような可塑剤を含むポリ塩化ビニルを基材に用いた場合にも、粘着力および透明性が良好である。
【0074】
その他、粘着シートの基材は、ポリ塩化ビニル以外にも、例えばセロハン、その他プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス、および木材等を用いることができる。基材の形状は、板状およびフィルム状を選択できるが、取り扱いが容易であるフィルム状が好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0075】
前記その他プラスチック基材は、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイドム、ポリスチレン、ポリアミド、およびポリイミド等が挙げられる。
【0076】
本発明において粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜130℃程度の熱風加熱でよい。
【0077】
粘着剤層の厚さは、1〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。1〜200μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整できる。
【0078】
粘着シートの被着体は制限されず、塩化ビニルフィルムの貼り合わせ用粘着剤として好適であるほか、マーキングフィルム、一般ラベル・シール、粘着性光学フィルム、弾性壁材、塗膜防水材、床材、看板やバイク・自動車などの車両等に貼り付けて用いることができる。
なかでも、ポリオレフィンへの接着力が優れることから、ポリプロピレンを外装材とした車両などにも、好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。例中、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味するものとする。以下に例で使用した材料の略号を示すが、Tgはモノマーがホモポリマーとなった際のTgを示す。
また、表中の数値は、特に断りがない限り、部を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0080】
共重合体の重量平均分子量(Mw)の測定は、次の方法により行なった。
<重量平均分子量(Mw)>
Mwは下記の条件により測定した。Mwの決定は、Mwが既知のポリスチレンを標準物質に用いた検量線法により決定した。
装置名:島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結
移動相溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0081】
実施例および比較例に使用した材料を以下に列挙する。
<共重合体(A)>
[(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)]
2EHA : アクリル酸2−エチルヘキシル(炭素数8、分子量184.28、Tg:−70℃)
BA : アクリル酸ブチル(炭素数4、分子量128.17、Tg:−54℃)
EA : アクリル酸エチル(炭素数2、分子量100.12、Tg:−20℃)
MA : アクリル酸メチル(炭素数1、分子量86.09、Tg:10℃)
MMA : メタクリル酸メチル(炭素数1、分子量100.12、Tg:105℃)
[カルボキシル基を有するモノマー(ay)]
AA : アクリル酸(Tg:106℃)
MAA : メタクリル酸(Tg:228℃)
[その他モノマー]
VAc : 酢酸ビニル(Tg:32℃)
HEA : アクリル酸2−ヒドロキシエチル(Tg:−15℃)
【0082】
<ロジン系樹脂(B)>
A−75 : スーパーエステルA−75(ロジンエステル、軟化点75℃、荒川化学社製)
KE−100:パインクリスタルKE−100(ロジンエステル、軟化点100℃、荒川化学社製)
RE−105L:SylvaliteRE−105L(ロジンエステル、軟化点105℃、KRATON社製)
【0083】
<可塑剤(C)>
DEHP:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(分子量390.56)
ATBC:アセチルクエン酸トリブチル(分子量402.48)
EHDP:2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(分子量362.41)
【0084】
<硬化剤(D)>
TDI/TMP : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(イソシアネート系)
TETRAD X : N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(エポキシ系、三菱ガス化学社製)
アルミキレートA : アルミニウムトリスアセチルアセトネート(金属キレート系、川研ファインケミカル社製)
【0085】
<共重合体(A)の合成>
(共重合体1)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル80部、アクリル酸エチル15部、アクリル酸5部、酢酸エチル120部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記述する。)0.03部を仕込んだ。撹拌しながら加熱を行い重合反応の開始を確認して還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.02部を反応溶液に添加し2時間反応し、さらにAIBN 0.02部を反応溶液に添加し4時間反応を継続した。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分30%の共重合体(A)溶液を得た(共重合体1)。また、共重合体1の重量平均分子量は78万であった。
【0086】
共重合体1における(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)のアルキル基の平均炭素数は3.6であり、以下のように算出した。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)のアルキル基の平均炭素数
= アクリル酸ブチルのアルキル基の炭素数×アクリル酸ブチルのmol分率
+アクリル酸エチルのアルキル基の炭素数×アクリル酸エチルのmol分率
= 4×[(80/128.17)/(80/128.17+15/100.12)]
+2×[(15/100.12)/(80/128.17+15/100.12)]
= 3.6
【0087】
(共重合体2〜16)
表1の材料および配合比率に変更した以外は、共重合体1と同様の方法でそれぞれ共重合体2〜16を合成した。これらの共重合体の内、共重合体1〜12は共重合体(A)に該当し、共重合体13〜16は共重合体(A)ではない共重合体に該当する。
【0088】
【表1】
【0089】
(実施例1)
<粘着剤の作製>
得られた共重合体(A)(共重合体1)の不揮発分100部に対して、ロジン系樹脂(B)としてスーパーエステルA−75を10部、可塑剤(C)としてフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を2部、硬化剤(D)としてトリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体を4部、希釈溶剤として酢酸エチルを添加し、撹拌することで、不揮発分を25%に調整したポリ塩化ビニル用粘着剤を得た。
【0090】
<粘着シートの作製>
厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)上に、乾燥後の厚みが30μmとなるように上記で得られた粘着剤を塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥して粘着剤層を作製した。次いで、この粘着剤層に、厚さ80μmの基材(可塑剤としてアジピン酸エステルを19%含有する透明ポリ塩化ビニル製基材)にラミネートし、さらに23℃50%RHの条件で1週間養生し、粘着シートを得た。
【0091】
(実施例2〜21、比較例1〜5)
表1に示す材料、組成、配合量(質量部)になるよう変更した以外は、実施例1と同様に、それぞれ粘着剤および粘着シートを作製し、測定および評価を行った。
【0092】
(1)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ポリプロピレン(PP)板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した(剥離強度A)。評価は、下記基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:剥離強度Aが15N/25mm以上(優良)
○:剥離強度Aが12N/25mm以上15N/25mm未満(良好)
△:剥離強度Aが8N/25mm以上12N/25mm未満(使用可)
×:剥離強度Aが8N/25mm未満(使用不可)
【0093】
(2)耐可塑剤性
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃50%RHの環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、PP板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、60℃10%RHの環境下で240時間保存した後、23℃50%RHの環境下で3時間放熱し、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した(剥離強度B)。下記基準に基づいて評価した。ただし、B/A=剥離強度B/剥離強度Aとする。
[評価基準]
◎:B/Aが0.80以上(優良)
○:B/Aが0.65以上0.80未満(良好)
△:B/Aが0.50以上0.65未満(使用可)
×:B/Aが0.50未満(使用不可)
【0094】
(3)透明性
得られた粘着シートの粘着層の透明性を目視で確認した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:粘着層は透明である。(良好)
△:粘着層は微かに濁っている。(使用可)
×:粘着層が白化している。(使用不可)
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表2、3の結果から、実施例で得られたポリ塩化ビニル用粘着剤は、基材にポリ塩化ビニル用いた場合においても、経時での粘着力低下が小さく、透明性に優れた粘着シートを形成できることが確認できた。とくに、剥がれが起きやすいポリオレフィンに対する粘着力も良好な結果を有しており、このようなポリオレフィンを外装材とした部材に貼り合わせて用いる場合にも、好適であることが確認できた。
【課題】ポリオレフィンとの貼り合わせにおいて良好な粘着力を有し、基材にポリ塩化ビニルを用いた場合においても経時での粘着力低下が小さく、更に透明性に優れた粘着シートを形成できる粘着剤の提供すること。
【解決手段】2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含み、かつアルキル基の炭素数の平均値が2.9〜3.7である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(ax)およびカルボキシル基を有するモノマー(ay)を含むモノマー混合物の共重合体(A)と、ロジンエステルであるロジン系樹脂(B)と、可塑剤(C)と、硬化剤(D)とを含み、モノマー混合物中、モノマー(ax)の含有率は60〜98質量%、モノマー(ay)の含有率は2〜10質量%であり、共重合体(A)100質量部に対し、可塑剤(C)2〜15質量部、および硬化剤(D)を0.01〜15質量部含むポリ塩化ビニル用粘着剤により解決される。