(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二脱りん剤の投入量を、前記溶銑を前記脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.3〜4.0となるように制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の溶銑の脱りん方法。
前記第一脱りん剤及び前記第二脱りん剤の一方又は両方を、生石灰、石灰石、カルシウムフェライト、ドロマイト系石灰、並びに転炉スラグ又は二次精錬スラグであってCaOを含有するものから選択される一種以上を含むものであって、CaO、CaCO3、及びCaF2のCaO等量での合計含有量が30〜100質量%であるものとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶銑の脱りん方法。
【背景技術】
【0002】
溶銑に含まれるP(りん)は、強度、靭性、及び伸び等の鋼の諸特性に悪影響を及ぼすので、鋼の精錬段階でこれを可能な限り取り除く必要がある。
【0003】
溶銑からPを取り除く工程は脱りん精錬と称され、この脱りん精錬ではCaO(又はCaCO
3)を主成分とする化合物である脱りん剤が用いられる。脱りん剤は、脱りん精錬において脱りん能を有するスラグを生成することにより、脱りんに寄与する。脱りん剤の使用量が多いほど、スラグの塩基度が上昇し、スラグの脱りん能が向上する。しかしながら、脱りん剤の使用量が多いとスラグ量も増大する。スラグは環境負荷が高く、これの処理は精錬コストを増大させる。従って、脱りん工程を効率化することにより、脱りん剤の使用量を低減することが望まれる。
【0004】
特許文献1には、スピッティング量を低減して、かつ溶銑中の[P]濃度を0.020%以下とすることができる溶銑の脱りん方法が開示されている。この脱りん方法においては、第一脱りん剤であるCaO含有物が転炉炉上から投入された溶銑をガス攪拌し、かつ、酸素含有ガスを上吹きし、カバースラグを生成して溶銑の予備脱りんを行った後、さらに、溶銑に第二脱りん剤であるCaO含有脱りん剤を、酸素含有ガスをキャリアガスとして吹き付けることとされる。しかしながら特許文献1においては、スラグ量を減少させることが課題とされておらず、また、その方法の開示もない。
【0005】
特許文献2には、同一の転炉で脱りん精錬と脱炭精錬を行うことによるメリットを享受しつつ、P規格の特に厳しい極低りん鋼についても安定的に溶製することのできる転炉精錬方法が開示されている。この転炉精錬方法では、最初の脱りん精錬とその後のスラグ除去を行った後、脱炭精錬を行う前に、フラックスを追加して第2の脱りん精錬を行い、その後にスラグ除去を行い、さらにその後に脱炭精錬を行うことにより、脱炭精錬終了後の溶鋼中P濃度を十分に極低P鋼レベルまで低減することができるとされる。しかしながら特許文献2においては、それぞれの脱りん精錬において脱りん効率を向上させることについて検討されておらず、また、その方法の開示もない。
特許文献3には、溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、CaF
2等のF源を含まない媒溶剤を用いて効率的な溶銑予備脱燐を行う方法が開示されている。この方法は、低燐溶銑の製造方法であって、溶銑予備処理として行われる脱燐処理において、溶銑にCaO源である媒溶剤を添加する前に酸素源を供給することでスラグ中の酸化鉄濃度を高めておき、しかる後、CaO源である媒溶剤を添加することを特徴とするものとされている。しかしながら特許文献3の技術では、媒溶剤を塊状とし、これを少量ずつ添加することが必須とされている。即ち、特許文献の技術では媒溶剤を間欠的に添加することとされているので、スラグの塩基度を安定化させることができない。さらに、特許文献3の技術では、脱りん処理を開始する前に溶銑のSi濃度を0.10wt%以下にすることが必須とされているので、脱りん処理に先だって溶銑の脱珪処理が必須となり、製造効率が悪い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、スラグ量を増大させることなく脱りん精錬の脱りん能力を向上させること(即ち、脱りん精錬の脱りん効率を高めること)について検討を重ねた。具体的に、本発明者らは、脱りん精錬中に溶銑に投入される脱りん剤の滓化率を向上させる手段を検討した。なお本実施形態において、脱りん剤の滓化とは、脱りん剤のCaO及び/又はCaCO
3が溶融してスラグになることを言う。本実施形態において、滓化率とは、脱りん後塩基度(脱りん吹錬終了後に採取されたスラグの塩基度を測定して得られた値)を、装入塩基度(溶銑及び添加物のSiが全てSiO
2になり、投入された脱りん剤のCaO(又はCaCO
3)が全て溶融CaOになったと仮定した場合のスラグの塩基度)で割った値として定義される値である。一方「実装入塩基度」とは、スラグの成分を測定して得られる値、即ち実績値である。滓化率は、脱りん剤中のCaO及び/又はCaCO
3の溶融の度合いを示す指標である。スラグの塩基度とは、スラグ中の溶融CaO量と溶融SiO
2量との比であり、下記式Aによって算出される。
スラグの塩基度=スラグ中の溶融CaO量/スラグ中の溶融SiO
2量:式A
【0012】
脱りん剤とは、CaO(又はCaCO
3等)を主成分とする化合物である。脱りん剤中に含まれるCaCO
3は、溶銑の熱によって短時間のうちに分解されてCaO及びCO
2となる。脱りん剤の一例として、生石灰、石灰石、及びドロマイト系石灰等の副材、転炉スラグ及び二次精錬スラグ等であってCaO等を含有するもの、並びにそれらの混合物等がある。脱りん剤に含まれるCaO(CaCO
3等由来のCaOを含む、以下同じ)によって、脱りん吹錬(脱りんのために酸素を溶銑に吹き込むこと)中に以下の化学反応が生じる。
2[P]+5(FeO)→(P
2O
5)+5[Fe]:式B
(P
2O
5)+3(CaO)→(3CaO・P
2O
5):式C
式B及びCに記載された、角括弧で囲まれた化学式は溶銑中の成分の化学式であり、丸括弧で囲まれた化学式はスラグ中の成分の化学式である。脱りん吹錬においては、まず式Bに示されるように、[P]、即ち溶銑中のPが、(FeO)、即ちスラグ中のFeOによって酸化されてP
2O
5となる。次に式Cに示されるように、このP
2O
5が(CaO)、即ちスラグ中の溶融CaOに固定されて、安定化された化合物である(3CaO・P
2O
5)が生成される。式B及び式Cに示されるように、(CaO)が脱りんのために非常に重要である。
【0013】
スラグ中の溶融CaO量を増大させるための手段として、溶銑への脱りん剤の投入量を増大させることが考えられる。しかしながら、脱りん剤の投入量の増大は、スラグ量の増大を招来し、脱りん精錬の環境負荷を増大させる。脱りん剤の投入量を抑制しながらスラグ中の溶融CaO量を増大させるためには、投入される脱りん剤の滓化率を可能な限り高める必要がある。滓化率が高ければ高いほど、脱りん剤の投入量に対するスラグ中溶融CaO量の割合が高まり、高効率で脱りんを実施することができる。
【0014】
本発明者らは、検討を重ねた結果、脱りん吹錬の開始前に第一脱りん剤を溶銑に投入し、脱りん吹錬の開始後一定期間をおいてから第二脱りん剤を溶銑に投入した場合に、脱りん剤の滓化率が著しく向上することを見出した。この現象は、以下のメカニズムによって生じたものと推定される。
【0015】
図1はCaO−SiO
2−Fe
tO三元系状態図である。脱りん剤のCaOは、当初は、
図1の三元系状態図の左下部に位置するCaOとなっている。このCaOは比較的融点が高いので、スラグ中に未溶融状態で存在する。しかし、脱りん精錬において脱りん吹錬を行うと、溶銑中のSiが酸化されて、スラグ中のSiO
2濃度が上昇する。SiO
2濃度の上昇に伴い、脱りん剤のCaOはCaO−SiO
2−Fe
tOの三元系化合物となる。即ち、脱りん剤のCaOは矢印に沿って、
図1の左下部から中央部に移動する。
図1の中央部に位置する化合物の融点は、CaOの融点よりも低い。従って、SiO
2濃度の上昇に伴って、脱りん剤のCaOが溶融しやすくなる。
【0016】
脱りん吹錬開始の時点では、SiO
2がスラグ中にほとんど存在しない。従って、脱りん吹錬開始の時点では第一脱りん剤はほとんど溶融しておらず、この段階で第二脱りん剤を添加すると、第一脱りん剤が十分に溶融しないものと推定される。その後、脱りん吹錬の進展に伴ってスラグ中のSiO
2量が増大したとしても、第一脱りん剤の未溶融物がスラグ中に残存し、滓化率が低下するものと考えられる。一方、SiO
2が十分に生成するまで第二脱りん剤の投入を待機した場合、第一脱りん剤の滓化が進んだ状態で第二脱りん剤を投入することになるので、第一及び第二脱りん剤の両方が十分に滓化されると考えられる。
【0017】
以上述べた技術思想に基づく本実施形態に係る溶銑の脱りん方法は、溶銑のSi含有量を測定する工程と、溶銑に第一脱りん剤を投入する工程と、溶銑を脱りん吹錬する工程と、を備え、脱りん吹錬する工程において、さらに第二脱りん剤が溶銑に投入され、第二脱りん剤の投入開始時期が、溶銑のSi含有量が脱りん吹錬によって0.10質量%以下になってから、溶銑への酸素吹込み量が3.0Nm
3/tとなるまでの間とされる。以下に、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法について詳細に述べる。
【0018】
本実施形態に係る溶銑の脱りん方法では、まず、溶銑の初期成分のSi含有量が測定される。溶銑の初期成分のSi含有量の測定値は、第二脱りん剤の投入タイミングを決定するために必要とされる。また、溶銑の初期成分のSi含有量の測定値は、第一脱りん剤の投入量を決定するために用いられてもよい。後述する脱りん吹錬終了時のスラグの塩基度の推定のために、溶銑のSi以外の元素の含有量を測定してもよい。なお、溶銑の初期成分とは、脱りん吹錬前の溶銑の成分を意味する。溶銑のSi含有量等の測定は、溶銑を炉に装入してから実施しても、その前に実施してもよい。また、溶銑が凝固した状態にある際(即ち銑鉄の形態である際)に上述の測定を実施することも当然妨げられない。
溶銑の初期成分におけるSi含有量は特に限定されないが、0.25質量%以上とすることが好ましい。上述のように、脱りん吹錬中にSiO
2濃度が上昇することに伴って、脱りん剤のCaOが溶融しやすくなる。即ち、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法では、滓化を一層促進する観点から、スラグ中のSiO
2濃度を上昇させることが好ましい。従って、脱りん吹錬の開始前の溶銑の初期成分に、ある程度の量のSiが含まれることが好ましい。そのため、酸素を吹き込む前の溶銑のSi含有量が0.25質量%以上であることが好ましい。溶銑の初期成分におけるSi含有量を0.27質量%以上、0.30質量%以上、又は0.32質量%以上としてもよい。
【0019】
次に、溶銑に第一脱りん剤を投入する。第一脱りん剤の形態及び投入量は特に限定されず、溶銑の成分、及び鋼成分の目標値等に応じて適宜設定することができる。投入ロスを防止する観点から、第一脱りん剤の形態は塊状であることが好ましい。
【0020】
また、第一脱りん剤の投入量は、第一脱りん剤のCaO等量と溶銑の初期成分におけるSi含有量のSi等量との比(即ち、第一脱りん剤のCaO等量/溶銑の初期成分のSi含有量のSiO
2等量)が0.60〜2.00になるように制御されることが好ましい。脱りん剤のCaO等量とは、脱りん剤中のCaが全てCaOを形成していると仮定した場合の、脱りん剤のCaO含有量である。溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量とは、溶銑のSiが全てSiO
2になったと仮定した場合のSiO
2量である。上述の条件を満たして第一脱りん剤を投入した場合、脱りん吹錬の進行によって溶銑中のSiが実質的に全てSiO
2となった時点でのスラグの塩基度がおおむね0.60〜2.00となる。
【0021】
第一脱りん剤のCaO等量と溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量との比を0.60以上とすることにより、脱りんを高い水準で実施することができる。これは、スラグ中に溶融CaOを十分に供給し、スラグの脱りん能を向上させられるからであると考えられる。一方、第一脱りん剤のCaO等量と溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量との比を2.00以下とすることにより、CaOの滓化率を高く保ち、脱りん効率を一層高く保つことができる。第一脱りん剤のCaO等量と溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量との比は、さらに好ましくは0.80以上、0.85以上、又は0.90以上である。第一脱りん剤のCaO等量と溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量との比は、さらに好ましくは1.50以下、1.20以下、1.15以下、又は1.10以下である。
【0022】
なお、脱りん吹錬の開始前に溶銑に別途Siを添加する場合、及び第一脱りん剤にSiが含まれる場合等、スラグのSiO
2源が溶銑に限られない場合、溶銑以外に由来するSiも第一脱りん剤の投入量の決定する際に考慮されるべきである。例えば、脱りん剤使用量の削減のために、脱りん精錬によって生じるスラグを別の脱りん精錬においてリサイクル使用する場合、溶銑以外に由来するSiO
2源が生じることとなる。この場合、溶銑以外に由来するSiも「溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量」に含めればよい。即ち、脱りん吹錬におけるSi酸化反応の終了時におけるスラグの、装入量に基づく塩基度の推定値が0.60〜2.00になるように、第一脱りん剤及びその他の添加物の装入量が制御されればよい。
【0023】
次に、溶銑を脱りん吹錬する。脱りん吹錬は、溶銑への酸素の吹込みによって実施される。この脱りん吹錬において、第二脱りん剤を溶銑に投入する。この脱りん吹錬において、第二脱りん剤の投入開始のタイミングを、以下に説明されるように制御する。
【0024】
溶銑への第二脱りん剤の投入開始を、溶銑のSi含有量を脱りん吹錬によって0.10質量%以下とした時点の後、且つ、この時点以降の溶銑への酸素の吹込み量が3.0Nm
3/tとなるまでの間とする。ここで「Nm
3/t」とは、溶銑1トンあたりの酸素吹込み量(Nm
3)である。溶銑への第二脱りん剤の投入開始時期を
図2に示す。
図2は、脱りん吹錬における酸素の吹込みが進行するにつれて溶銑のSi含有量が低下する様子を模式的に示すグラフであり、グラフの縦軸は溶銑のSi含有量(質量%)を示し、横軸は酸素の溶銑への吹込み量(Nm
3/t)を示す。
図2のハッチング領域が、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法における溶銑への第二脱りん剤の投入開始時期である。
【0025】
溶銑への第二脱りん剤の投入開始時期は、溶銑のSi含有量が脱りん吹錬によって十分に低下した時点、即ち溶銑のSi含有量が0.10質量%以下に低下した時点以降とされる必要がある。溶銑のSi含有量が十分に低下する前に第二脱りん剤の投入を開始した場合、スラグ中のSiO
2が不足し、第一脱りん剤が十分に溶融する前に第二脱りん剤を投入することとなるので、脱りん剤の溶融が妨げられて滓化率が低下し、脱りん効率が損なわれる。溶銑への第二脱りん剤の投入開始時期を、溶銑のSi含有量が0.05質量%以下、又は0.01質量%以下に低下した時点以降にしてもよい。
【0026】
一方、溶銑への第二脱りん剤の投入は、上述の溶銑のSi含有量が0.10質量%以下に低下した時点以降に酸素の吹込みを継続し、この吹込み量が3.0Nm
3/tになるまでの間に開始しなければならない。溶銑への第二脱りん剤の投入が遅れた場合、脱りん効率が損なわれる。これは、不安定なP
2O
5を安定化させる働きを有するスラグ中の溶融CaOが不足した状態で脱りん吹錬が進行するからであると推定される。好ましくは、溶銑への第二脱りん剤の投入は、溶銑のSi含有量が0.10質量%以下に低下した時点から酸素を2.5Nm
3/t、2.0Nm
3/t、又は1.5Nm
3/t吹き込むまでの間に開始される。なお、溶銑のSi含有量が0.10質量%以下に低下した時点は、通常の方法により、溶銑の初期成分、第一脱りん剤等の添加物の成分及び投入量、及び溶銑への酸素の吹込み量等から推定することができる。なお、一般的には困難であるが、脱りん吹錬中の溶銑のSi含有量の変化をリアルタイム測定することが可能であれば、溶銑の初期成分のSi含有量の測定を省略することもできる。
【0027】
第二脱りん剤の投入量は特に限定されず、溶銑の成分、及び鋼成分の目標値等に応じて適宜設定することができる。第二脱りん剤の形態は粉状とする。第二脱りん剤を粉状とすることにより、ランスから吹き付けられるキャリアガスを介して、第二脱りん剤を連続的に溶銑中に投入することが可能となる。第二脱りん剤の連続投入により、スラグ塩基度の急激な変化を抑制することが可能となる。スラグ塩基度を安定化させることにより、急激なスラグフォーミング現象の発生を防止し、操業を安定化させることができる。さらに、第二脱りん剤を粉状とすることにより、第二脱りん剤の滓化率を向上させ、スラグの組成を制御しやすくすることもできる。この場合、粉状の第二脱りん剤はキャリアガスを用いて溶銑に吹き込まれることが好ましい。
【0028】
第二脱りん剤の投入量は、溶銑を脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.3〜4.0となるように制御されることが好ましい。さらに好ましくは、第二脱りん剤の投入量は、溶銑を脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.3〜3.0となるように制御される。
第二脱りん剤投入後のスラグの装入塩基度と、脱りん後スラグ塩基度及び脱りん率との間には線形関係が見られる。この装入塩基度が大きいほど、脱りん後スラグ塩基度及び脱りん率が向上する傾向にある。脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.3以上となるように第二脱りん剤の投入量を制御した場合、スラグの脱りん能を一層向上させ、溶銑の脱りんを高い水準で実施することができる。脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.5以上、2.0以上、又は2.5以上となるように第二脱りん剤の投入量が制御されてもよい。一方、脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が4.0以下となるように第二脱りん剤の投入量を制御した場合、スラグ量の増大を抑制し、脱りん効率を一層高く保ち、脱りん工程の環境負荷を一層低減することができる。脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が3.5以下、3.0以下、2.8以下、又は2.3以下となるように第二脱りん剤の投入量が制御されてもよい。なお、溶銑を脱りん精錬する工程の終了時のスラグの装入塩基度が1.3〜4.0となる第二脱りん剤の投入量は、通常の方法により、溶銑の初期成分、第二脱りん剤の成分、第一脱りん剤等の添加物の成分及び投入量、及び溶銑への酸素の吹込み量等から推定することができる。第二脱りん剤の最適な投入量は、上述の種々の条件に影響されるが、通常の条件下では1.0〜5.0tとなることが多いと考えられる。
【0029】
第一脱りん剤及び第二脱りん剤の種類は、スラグの塩基度を上述のように制御できる限り、特に限定されない。例えば生石灰、石灰石、カルシウムフェライト、ドロマイト系石灰、並びに転炉スラグ又は二次精錬スラグであってCaOを含有するものから選択される一種以上を含むものであって、CaO、CaCO
3、及びCaF
2のCaO等量での合計含有量が30〜100質量%であるものを、第一脱りん剤及び第二脱りん剤の一方又は両方として使用可能である。
【0030】
上述の要件が満たされる限り、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法は追加の工程を備えてもよい。例えば、脱りん後の溶銑をさらに脱炭精錬に供しても良く、この脱炭精錬は脱りん精錬を実施した炉において連続的に実施しても、脱りん精錬を実施した炉とは別の炉で実施してもよい。
【0031】
また、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法を実施するための装置も特に限定されない。本発明者らが知見したところでは、例えば
図3に例示される、キャリアガスを用いて粉状の第二脱りん剤5を吹き込むためのランスを有する上底吹き転炉1が、本実施形態に係る溶銑の脱りん方法を実施するために好ましい。上底吹き転炉1を用いて溶銑の脱りん精錬を行う場合、第二脱りん剤5は、溶銑に上吹き酸素6を吹き込むランス4の直下及びその近傍に投入することが好ましい。ランス4の直下及びその近傍は、溶銑中のSi及びC等の酸化熱によって非常に高温になっている領域、即ち火点7である。この領域に第二脱りん剤5を投入することにより、第二脱りん剤5を一層効率的に溶融させることができる。なお、
図3においては上吹き酸素6を吹き込むランス4を用いて第二脱りん剤5を吹き込む実施形態が図示されているが、第二脱りん剤5を吹き込むための別のランスを上底吹き転炉1に設けてもよい。また、上底吹き転炉を用い、且つ同一の転炉で脱りん精錬、スラグ除去、及び脱炭精錬を行う転炉精錬により、全体の精錬時間を短縮し、脱りん剤の使用量を一層低減し、さらに精錬での熱ロスを低減することが可能となる。
【0032】
粉状の第二脱りん剤を溶銑に吹き込む際に用いられるキャリアガスの種類も特に限定されず、例えばAr、N
2、CO
2、及びO
2からなる群から選択される一種以上のガスを、キャリアガスとして使用可能である。費用、及び設備の安定性等を考慮すると、N
2ガスを用いた第二脱りん剤の吹込みが好ましいと考えられる。脱りん吹錬の段階の溶銑では、溶銑のN取り込みを妨げる働きを有するCの含有量が高いので、N
2を用いた第二脱りん剤の吹込みを溶銑に行ったとしても、溶銑中に取り込まれるNの量は無視できる程度に小さいと考えられる。
【実施例】
【0033】
脱りん工程において、粉状の第二脱りん剤の吹込みを、以下のいずれかの段階で実施した。以下、溶銑のSi含有量が脱りん吹錬によって0.10質量%以下になった時点を「脱Si完了時」と称する。
第1段階(比較例):脱Si完了から40秒前
第2段階(比較例):脱Si完了から20秒前
第3段階(発明例):脱Si完了直後
第4段階(発明例):脱Si完了から20秒後
なお、上述の第4段階は、脱Si完了時以降の溶銑への酸素の吹込み量を3.0Nm
3/tとする前である。
【0034】
なお、第二脱りん剤の吹込みのタイミング以外の操業条件は以下の通りである。
・第一脱りん剤の形態:塊状の、生石灰、石灰石及び転炉スラグの混合物(CaO等量25質量%以上)
・第二脱りん剤の形態:粉状の生石灰
・第一脱りん剤のCaO等量と、溶銑の初期成分におけるSi含有量のSiO
2等量との比:0.60〜2.00の範囲内
・キャリアガス種類:N
2【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
実験結果を表1〜表4、及び
図4〜
図6に示す。表1〜表4に示される値は、第1段階〜第4段階それぞれにおける実験結果である。「塊CaO」列及び「粉CaO」列は、第一脱りん剤及び第二脱りん剤それぞれの投入量を示す。「初期成分Si含有量」は、溶銑の初期成分(脱りん吹錬開始前の成分)におけるSi含有量である。
図4〜
図6は、表1〜表4に示されるデータをグラフ化したものである。
【0040】
図4に示されるグラフの横軸は装入塩基度(溶銑及び添加物のSiが全てSiO
2になり、投入された第一脱りん剤及び第二脱りん剤のCaが全て溶融CaOになったと仮定した場合のスラグの塩基度)であり、縦軸は脱りん率である。脱りん率とは、脱りん吹錬によるP含有量の減少量(脱りん吹錬前の溶銑のP含有量の測定値から脱りん吹錬後の溶銑のP含有量の測定値を引いた値)を、脱りん吹錬前の溶銑のP含有量の測定値で割った値、即ち以下の式で算出値である。
脱りん率=([P]i−[P]f)/[P]i
上記式において[P]iは脱りん吹錬前の溶銑のP含有量の測定値であり、[P]fは脱りん吹錬後の溶銑のP含有量の測定値である。
【0041】
図5に示されるグラフの横軸は装入塩基度であり、縦軸は脱りん後スラグ塩基度(脱りん吹錬終了後に採取されたスラグの塩基度を測定して得られた値)である。
図6は、第1段階〜第4段階における平均滓化率を示すグラフである。上述のように、脱りん後スラグ塩基度を装入塩基度で割った値が滓化率であり、第1段階〜第4段階それぞれでの滓化率の平均値を、第1段階〜第4段階それぞれの平均滓化率としている。
【0042】
図4に示されるように、発明例の脱りん率は、従来の脱りん方法による比較例と比較して著しく改善した。さらに、
図5及び
図6に示されるように、発明例の滓化率は、従来の脱りん方法による比較例と比較して著しく改善した。