(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッド間領域に設けられた前記ゲートトレンチ部のうち前記パッドに最も近い前記ゲートトレンチ部と、前記パッドとの間には、前記エミッタ電極と接続されたダミートレンチ部が設けられている
請求項9に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0018】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の上面と垂直な深さ方向をZ軸とする。
【0019】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。また、本明細書においてP+型(またはN+型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P−型(またはN−型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0020】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差をドーピング濃度とする場合がある。また、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度とする場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の上面の構造を示す図である。半導体装置100は、半導体基板10を備える。半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0022】
本明細書では、上面視における半導体基板10の外周の端部を、外周端140とする。上面視とは、半導体基板10の上面側からZ軸と平行に見た場合を指す。また、上面視における半導体基板10の外周端140のうち、いずれかの端辺を第1の端辺142とする。上面視において第1の端辺142と平行な方向をX軸方向とし、第1の端辺142と垂直な方向をY軸方向とする。
【0023】
半導体装置100は、主活性部120およびエッジ終端構造部90を備える。主活性部120は、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる活性領域のうち、後述するパッド間領域130以外の領域である。例えば活性領域は、半導体装置100に含まれるトランジスタ素子をオン状態に制御している場合、または、トランジスタ素子をオン状態からオフ状態に遷移させた場合に半導体基板10の上面と下面との間で主電流が流れる領域である。主活性部120は、後述する第1のゲートランナー50で囲まれた領域のうち、パッドおよびパッド間領域130以外の領域を指してもよい。
【0024】
主活性部120には、トランジスタ部70およびダイオード部80が設けられている。本明細書では、トランジスタ部70およびダイオード部80をそれぞれ素子部または素子領域と称する場合がある。本例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、主活性部120においてX軸方向に交互に設けられている。
【0025】
半導体基板10の上面の上方には、複数のパッド(
図1の例では、センスパッド114、エミッタパッド115、ゲートパッド116、カソードパッド117およびアノードパッド118)が設けられている。センスパッド114は、電流センス素子119に接続されている。電流センス素子119は、トランジスタ部70と同一の構造を有しており、且つ、トランジスタ部70よりも上面視における面積(チャネルの面積に対応する)が小さい。電流センス素子119に流れている電流を検出することで、半導体装置100全体に流れている電流を推定できる。エミッタパッド115は、半導体基板10の上面の上方に配置されるエミッタ電極と接続されている。ゲートパッド116は、トランジスタ部70のゲート電極と接続されている。本例のゲートパッド116は、後述するゲートランナー部と接続されている。カソードパッド117およびアノードパッド118は、後述する温度センス部110に接続されている。なお、半導体基板10に設けられるパッドの個数および種類は、
図1に示す例に限定されない。
【0026】
それぞれのパッドは、アルミニウム等の金属材料で形成されている。複数のパッドは、主活性部120と、半導体基板10の上面における第1の端辺142との間において、所定の配列方向に配列されている。本例の複数のパッドは、Y軸方向において、素子領域と第1の端辺142とに挟まれて配置されている。
【0027】
複数のパッドの配列方向とは、複数のパッドのうち第1の端辺142と平行な方向における両端に配置された2つのパッド(本例ではセンスパッド114およびアノードパッド118)の上面視における中心を結ぶ直線の方向であってよい。配列方向は、第1の端辺142と平行な方向であってよい。また配列方向は第1の端辺142に対して、30度以内の傾きを有していてもよい。当該傾きは、20度以内であってよく、10度以内であってもよい。本例の配列方向は、第1の端辺142と平行である。
【0028】
上面視において2つのパッドに挟まれた領域をパッド間領域130とする。本例のパッド間領域130は、2つのパッドの領域をX軸と平行な方向に、互いのパッドに向けて延長した場合に重なる重複領域である。本例では、当該重複領域と、第1の端辺142に沿って設けられた第1のゲートランナー50との間の領域も、パッド間領域130に含める。
【0029】
半導体装置100においては、少なくとも一つのパッド間領域130においても、素子領域が設けられる。本例では、少なくとも一つのパッド間領域130において、トランジスタ部70が設けられている。このような構造により、パッド間領域130を有効に利用して、素子領域の面積を増大させることができる。
【0030】
半導体装置100は、トランジスタ部70にゲート電圧を伝達するゲートランナー部を備える。本例の半導体装置100は、ゲートランナー部として、第1のゲートランナー50、第2のゲートランナー51および第3のゲートランナー48を備える。本例では、それぞれのゲートランナーは、半導体基板10の上面の上方に設けられ、半導体基板10の上面とは層間絶縁膜で絶縁されている。
【0031】
第1のゲートランナー50は、上面視において、半導体基板10の第1の端辺142と、少なくとも一つのパッドとの間を通って設けられている。本例の第1のゲートランナー50は、センスパッド114、エミッタパッド115、ゲートパッド116、カソードパッド117およびアノードパッド118のそれぞれと、第1の端辺142との間を通って、第1の端辺142と平行に設けられている。第1のゲートランナー50は、ゲートパッド116と接続されている。
【0032】
また、第1のゲートランナー50は、半導体基板10の他の端辺と、主活性部120との間において、主活性部120を囲むように設けられている。つまり本例の第1のゲートランナー50は、半導体基板10の各端辺に沿って環状に設けられている。第1のゲートランナー50は、アルミニウム等の金属配線であってよく、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体配線であってもよい。第1のゲートランナー50は、金属配線と半導体配線とが絶縁膜を介して重なって設けられた構造であってもよい。当該絶縁膜には、金属配線と半導体配線とを接続するためのコンタクトホールが設けられている。本例の第1のゲートランナー50は、金属配線である。
【0033】
第2のゲートランナー51および第3のゲートランナー48の材料は、第1のゲートランナー50において説明した材料と同様の材料であってよい。本例において第2のゲートランナー51は金属配線であり、第3のゲートランナー48は半導体配線である。
【0034】
第2のゲートランナー51は、上面視において、少なくとも一つのパッドと、トランジスタ部70との間を通って設けられている。当該少なくとも一つのパッドは、エミッタパッド115以外のパッドである。本例の第2のゲートランナー51は、エミッタパッド115以外の全てのパッドに対して設けられている。第2のゲートランナー51は、Y軸方向において、パッドと、主活性部120(すなわちトランジスタ部70およびダイオード部80)とに挟まれて配置されている。いずれかのパッドにおいては、第2のゲートランナー51は、パッドの2つ以上の辺に沿って配置されてよい。
【0035】
例えば、X軸方向において一方の端に配置されているパッド(本例ではアノードパッド118)は、交差する2つの辺に沿って第2のゲートランナー51が配置されており、且つ、他の2つの辺に沿って第1のゲートランナー50が配置されている。
【0036】
また、X軸方向において他方の端に配置されているパッド(本例ではセンスパッド114)と、エミッタパッド115との間のパッド間領域130には、電流センス素子119が設けられている。電流センス素子119が設けられたパッド間領域130には、トランジスタ部70およびダイオード部80が設けられていなくてよい。一例として、当該パッド間領域130において電流センス素子119が設けられていない領域には、後述するP+型のウェル領域が設けられていてよい。
【0037】
本例の各パッドは、上面視において平行な辺を2組有する。
図1の例では、各パッドは、X軸に平行な2辺と、Y軸に平行な2辺とを有する。パッドの各辺のうち、電流センス素子119と対向する辺には、ゲートランナー部が設けられていなくてよい。本例のセンスパッド114には、主活性部120と対向する1つの辺に沿って第2のゲートランナー51が配置されており、電流センス素子119と対向する辺にはゲートランナー部が設けられておらず、且つ、他の2つの辺に沿って第1のゲートランナー50が配置されている。センスパッド114に沿って配置された第2のゲートランナー51は、他のパッドに沿って設けられた第2のゲートランナー51と、第3のゲートランナー48を介して接続されてよい。
【0038】
より具体的には、X軸方向においてエミッタパッド115を挟んで配置された2つのパッド(本例ではセンスパッド114およびゲートパッド116)に設けられた2つの第2のゲートランナー51が、第3のゲートランナー48を介して接続されてよい。第3のゲートランナー48は、Y軸方向において、主活性部120と、エミッタパッド115およびパッド間領域130との間に配置されている。
【0039】
また、X軸方向において両端以外の位置に設けられたパッド(本例ではゲートパッド116およびカソードパッド117)は、第1の端辺142と対向する辺以外の3辺に沿って、第2のゲートランナー51が配置されており、第1の端辺142と対向する辺に沿って第1のゲートランナー50が配置されている。各パッドの周囲に設けられたゲートランナー部は互いに接続されて、パッドを環状に囲んでいる。
【0040】
トランジスタ部70は、上面視において配列方向とは異なる延伸方向(本例ではY軸方向)に延伸して設けられたゲートトレンチ部を有する。ゲートトレンチ部の構造については後述する。パッド間領域130に設けられたゲートトレンチ部は、第1の端辺142に沿って設けられた第1のゲートランナー50と直接または間接に接続されている。つまり、パッド間領域130に設けられたゲートトレンチ部は、半導体基板10の第1の端辺142に沿って配置された第1のゲートランナー50と直接または間接に接続できる位置まで、Y軸方向に延伸して設けられている。
【0041】
また、延伸方向(Y軸方向)において第2のゲートランナー51と対向して配置された、主活性部120のゲートトレンチ部は、第2のゲートランナー51と直接または間接に接続されている。つまり、パッドと主活性部120との間においてX軸方向に延伸する第2のゲートランナー51と、Y軸方向において対向して配置されたゲートトレンチ部は、当該第2のゲートランナー51と直接または間接に接続されている。
【0042】
このような構成により、主活性部120およびパッド間領域130に設けられたトランジスタ部のゲートトレンチ部を、ゲートランナー部に接続することができる。なお、第1のゲートランナー50および第2のゲートランナー51を金属配線とすることで、それぞれのゲートトレンチ部にゲート電圧を伝達するタイミングのばらつき、および、ゲート電圧の減衰量のばらつきを低減できる。
【0043】
また、主活性部120に設けられたゲートトレンチ部のうち、Y軸方向において第3のゲートランナー48と対向する位置に設けられたゲートトレンチ部は、第3のゲートランナー48と接続されていてよい。また、第1の端辺142とは逆側の端辺に沿って配置された第1のゲートランナー50と対向する位置に設けられたゲートトレンチ部は、第1のゲートランナー50と直接または間接に接続されていてよい。
【0044】
トランジスタ部70は、IGBT等のトランジスタを含む。ダイオード部80は、半導体基板10の上面において、X軸方向にトランジスタ部70と交互に配置されている。それぞれのダイオード部80には、半導体基板10の下面に接する領域にN+型のカソード領域が設けられている。
図1において実線で示すダイオード部80は、半導体基板10の下面にカソード領域が設けられた領域である。本例の半導体装置100において、半導体基板の下面に接する領域のうちカソード領域以外の領域は、P+型のコレクタ領域である。
【0045】
ダイオード部80は、カソード領域をZ軸方向に投影した領域である。トランジスタ部70は、半導体基板10の下面にコレクタ領域が形成され、且つ、半導体基板10の上面にN+型のエミッタ領域を含む単位構造が周期的に形成された領域である。活性領域のうち、カソード領域をZ軸方向に投影した領域をY軸方向に伸ばした領域もダイオード部80としてよい。ダイオード部80以外の領域をトランジスタ部70としてもよい。X軸方向におけるダイオード部80とトランジスタ部70との境界は、カソード領域とコレクタ領域との境界である。
【0046】
主活性部120において、Y軸方向における両端には、トランジスタ部70が設けられてよい。主活性部120は、第3のゲートランナー48によりY軸方向に分割されてよい。主活性部120のそれぞれの分割領域には、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されている。
図1の例では、X軸方向に延伸する2つの第3のゲートランナー48により、主活性部120が3つに分割されている。また、金属で形成された第1のゲートランナー50および第2のゲートランナー51に沿って、半導体で形成された第3のゲートランナー48が設けられていてもよい。
【0047】
エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面において、第1のゲートランナー50と半導体基板10の外周端140との間に設けられる。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面において第1のゲートランナー50を囲むように環状に配置されてよい。本例のエッジ終端構造部90は、半導体基板10の外周端140に沿って配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0048】
本例の半導体装置100は、温度センス部110、温度センス配線112−1および112−2を備える。温度センス部110は、主活性部120の上方に設けられる。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、主活性部120の中央に設けられてよい。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、トランジスタ部70の上方に設けられてよい。温度センス部110は、主活性部120の温度を検知する。温度センス部110は、単結晶または多結晶のシリコンで形成されるpn型温度センスダイオードであってよい。
【0049】
温度センス配線112は、主活性部120の上方に設けられる。温度センス配線112は半導体配線であってよい。温度センス配線112は、温度センス部110と接続される。温度センス配線112は、半導体基板10の上面において主活性部120と外周端140との間の領域まで延伸し、カソードパッド117およびアノードパッド118と接続される。なお、半導体装置100は、温度センス部110および温度センス配線112を備えなくともよい。また、半導体装置100は、電流センス素子119を備えなくともよい。
【0050】
図2は、
図1における領域Aの近傍を拡大した図である。領域Aは、トランジスタ部70、ダイオード部80、第1のゲートランナー50およびエッジ終端構造部90を含む。本例においては、第1のゲートランナー50に沿って、第3のゲートランナー48が設けられている。第3のゲートランナー48は、第1のゲートランナー50と半導体基板10との間に配置されてよい。第1のゲートランナー50、第3のゲートランナー48および半導体基板10のそれぞれの間は、層間絶縁膜で絶縁されている。本例の半導体装置100は、半導体基板10の内部に設けられ、且つ、半導体基板10の上面に露出する、ガードリング92、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、P+型のウェル領域11、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびP+型のコンタクト領域15を備える。本明細書では、ゲートトレンチ部40またはダミートレンチ部30を単にトレンチ部と称する場合がある。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および第1のゲートランナー50を備える。エミッタ電極52および第1のゲートランナー50は互いに分離して設けられる。
【0051】
第1のゲートランナー50の外側(Y軸方向正側)には、エッジ終端構造部90が配置されている。エッジ終端構造部90は、上述したように1つ以上のガードリング92を有してよい。ガードリング92は、半導体基板10の内部に形成された、P型の領域である。ガードリング92は、第1のゲートランナー50の外側において、第1のゲートランナー50を囲んで環状に設けられる。
【0052】
エミッタ電極52および第1のゲートランナー50と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0053】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25と半導体基板10の上面との間には、酸化膜等の絶縁膜が形成される。
【0054】
第1のゲートランナー50は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホール49を通って、第3のゲートランナー48と接続される。第3のゲートランナー48は、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。第3のゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例では、ゲートトレンチ部40は第3のゲートランナー48と重なる位置までY軸方向に延伸しており、ダミートレンチ部30は第3のゲートランナー48と重ならない範囲でY軸方向に延伸して配置されている。
【0055】
第1のゲートランナー50に沿って配置された第3のゲートランナー48は、第1のゲートランナー50と重なる位置から、Y軸方向に延伸して、第1のゲートランナー50と重ならない位置まで設けられている。第3のゲートランナー48は、第1のゲートランナー50と重ならない位置において、ゲートトレンチ部40と接続されている。なお、半導体装置100は、第1のゲートランナー50に沿った第3のゲートランナー48を有さなくともよい。この場合、ゲートトレンチ部40は、第1のゲートランナー50と直接接続されていてよい。
【0056】
本明細書において、ゲートトレンチ部40が第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と直接に接続されるとは、ゲートトレンチ部40が第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と重なる位置まで配置されており、ゲートトレンチ部40と第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)とがコンタクトホールで接続されている状態を指す。ゲートトレンチ部40が第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と間接に接続されているとは、第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と重なる第3のゲートランナー48が、第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と重ならない位置までY軸方向に延伸して設けられており、ゲートトレンチ部40が当該第3のゲートランナー48を介して第1のゲートランナー50(または第2のゲートランナー51)と接続されている状態を指す。なお、ゲートトレンチ部40と第1のゲートランナー50とが間接に接続されている場合、ゲートトレンチ部40と第3のゲートランナー48は、第1のゲートランナー50の近傍で接続されている。ゲートトレンチ部40と第3のゲートランナー48の接続点と、第1のゲートランナー50とのY軸方向における距離は、第1のゲートランナー50のY軸方向の幅の10倍以下であってよく、5倍以下であってもよい。同様に、ゲートトレンチ部40と第2のゲートランナー51とが間接に接続されている場合、ゲートトレンチ部40と第3のゲートランナー48は、第2のゲートランナー51の近傍で接続されている。ゲートトレンチ部40と第3のゲートランナー48の接続点と、第2のゲートランナー51とのY軸方向における距離は、第2のゲートランナー51のY軸方向の幅の10倍以下であってよく、5倍以下であってもよい。本明細書では、直接接続と、間接接続とをまとめて、接続と称する場合がある。
【0057】
本例では、エミッタ電極52および第1のゲートランナー50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層にチタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよく、コンタクトホール内においてタングステン等で形成されたプラグを有してもよい。
【0058】
1つ以上のゲートトレンチ部40および1つ以上のダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って所定の間隔で配列される。本例のトランジスタ部70においては、配列方向に沿って1つ以上のゲートトレンチ部40と、1つ以上のダミートレンチ部30とが交互に形成されている。
【0059】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って直線状に延伸する2つの直線部39と、2つの直線部39を接続する先端部41とを有してよい。先端部41の少なくとも一部は、半導体基板10の上面において曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの直線部39において、延伸方向に沿った直線形状の端である端部どうしを先端部41が接続することで、直線部39の端部における電界集中を緩和できる。
【0060】
少なくとも一つのダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部39の間に設けられる。これらのダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同様に直線部29および先端部31を有してよい。他の例では、ダミートレンチ部30は直線部29を有し、先端部31を有さなくてもよい。
図3に示した例では、トランジスタ部70において、ゲートトレンチ部40の2つの直線部39の間に、ダミートレンチ部30の2つの直線部29が配置されている。
【0061】
ダイオード部80においては、複数のダミートレンチ部30が、半導体基板10の上面においてX軸方向に沿って配置されている。ダイオード部80におけるダミートレンチ部30のXY面における形状は、トランジスタ部70に設けられたダミートレンチ部30と同様であってよい。
【0062】
ダミートレンチ部30の先端部31および直線部29は、ゲートトレンチ部40の先端部41および直線部39と同様の形状を有する。ダイオード部80に設けられたダミートレンチ部30と、トランジスタ部70に設けられた直線形状のダミートレンチ部30は、Y軸方向における長さが同一であってよい。
【0063】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11と、コンタクトホール54の延伸方向の端のうち第1のゲートランナー50が設けられる側の端とは、XY面内において離れて設けられる。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、第1のゲートランナー50側の一部の領域はウェル領域11に形成される。ゲートトレンチ部40の先端部41のZ軸方向における底部、ダミートレンチ部30の先端部31のZ軸方向における底部は、ウェル領域11に覆われていてよい。
【0064】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれには、各トレンチ部に挟まれたメサ部60が1つ以上設けられる。メサ部60とは、トレンチ部に挟まれた半導体基板10の領域において、トレンチ部の最も深い底部よりも上面側の領域である。
【0065】
各トレンチ部に挟まれたメサ部60には、ベース領域14が形成される。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型(P−型)である。
【0066】
メサ部60のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が形成される。本例のコンタクト領域15はP+型である。半導体基板10の上面においてウェル領域11は、コンタクト領域15のうちY軸方向において最も端に配置されたコンタクト領域15から、第1のゲートランナー50の方向に離れて形成されてよい。半導体基板10の上面において、ウェル領域11とコンタクト領域15との間には、ベース領域14が露出している。
【0067】
トランジスタ部70においては、半導体基板10の内部に形成されたドリフト領域よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が、メサ部60−1の上面に選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。エミッタ領域12の半導体基板10の深さ方向(−Z軸方向)に隣接するベース領域14のうち、ゲートトレンチ部40に接する部分が、チャネル部として機能する。ゲートトレンチ部40にオン電圧が印加されると、Z軸方向においてエミッタ領域12とドリフト領域との間に設けられたベース領域14において、ゲートトレンチ部40に隣接する部分に電子の反転層であるチャネルが形成される。ベース領域14にチャネルが形成されることで、エミッタ領域12とドリフト領域との間にキャリアが流れる。
【0068】
本例では、各メサ部60のY軸方向における両端部には、ベース領域14−eが配置されている。本例では、それぞれのメサ部60の上面において、ベース領域14−eに対してメサ部60の中央側で隣接する領域は、コンタクト領域15である。また、ベース領域14−eに対して、コンタクト領域15とは逆側で接する領域はウェル領域11である。
【0069】
本例のトランジスタ部70のメサ部60−1においてY軸方向両端のベース領域14−eに挟まれる領域には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12がY軸方向に沿って交互に配置されている。コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成されている。
【0070】
トランジスタ部70のメサ部60のうち、ダイオード部80との境界に設けられた1つ以上のメサ部60−2には、メサ部60−1のコンタクト領域15よりも面積の大きいコンタクト領域15が設けられている。メサ部60−2にはエミッタ領域12が設けられていなくてよい。本例のメサ部60−2においては、ベース領域14−eに挟まれた領域全体に、コンタクト領域15が設けられている。
【0071】
本例のトランジスタ部70の各メサ部60−1においてコンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。メサ部60−2におけるコンタクトホール54は、コンタクト領域15の上方に形成される。各メサ部60においてコンタクトホール54は、ベース領域14−eおよびウェル領域11に対応する領域には形成されていない。トランジスタ部70の各メサ部60におけるコンタクトホール54は、Y軸方向において同一の長さを有してよい。
【0072】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と接する領域には、N+型のカソード領域82が形成される。
図2においては、カソード領域82が形成される領域を破線で示している。半導体基板10の下面と接する領域においてカソード領域82が形成されていない領域には、P+型のコレクタ領域が形成されてよい。
【0073】
トランジスタ部70は、Z軸方向においてコレクタ領域と重なる領域のうち、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が形成されたメサ部60と、当該メサ部60に隣接するトレンチ部とが設けられた領域であってよい。ただし、ダイオード部80との境界におけるメサ部60−2には、エミッタ領域12に代えてコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0074】
ダイオード部80のメサ部60−3の上面には、ベース領域14が配置されている。ただし、ベース領域14−eに隣接する領域には、コンタクト領域15が設けられてもよい。コンタクト領域15の上方で、コンタクトホール54が終端している。
【0075】
図3は、
図2におけるB−B断面の一例を示す図である。B−B断面は、ダイオード部80およびトランジスタ部70を含み、エミッタ領域12を通過するXZ面である。
【0076】
本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面のすくなくとも一部を覆って形成される。層間絶縁膜38には、コンタクトホール54等の貫通孔が形成されている。コンタクトホール54により、半導体基板10の上面が露出する。層間絶縁膜38は、PSG、BPSG等のシリケートガラスであってよく、酸化膜または窒化膜等であってもよい。
【0077】
エミッタ電極52は、トランジスタ部70およびダイオード部80において、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に形成される。エミッタ電極52は、コンタクトホール54の内部にも形成されており、コンタクトホール54により露出する半導体基板10の上面21と接触している。
【0078】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に形成される。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向(Z軸方向)と称する。コレクタ電極24からエミッタ電極52に向かう方向をZ軸方向の正方向とする。
【0079】
ダイオード部80およびトランジスタ部70における半導体基板10の上面側には、P−型のベース領域14が形成される。半導体基板10の内部においてベース領域14の下方には、N−型のドリフト領域18が配置されている。それぞれのトレンチ部は、半導体基板10の上面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に達して設けられる。
【0080】
当該断面において、トランジスタ部70の各メサ部60−1には、N+型のエミッタ領域12、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に配置されている。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドナーが高濃度に蓄積している。蓄積領域16の下方にはドリフト領域18が設けられる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。つまり、蓄積領域16はトレンチ部にX軸方向で挟まれてよい。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果、Injection‐Enhancement effect)を高めて、トランジスタ部70におけるオン電圧を低減することができる。
【0081】
なお、トランジスタ部70のコンタクト領域15を通過するXZ断面においては、トランジスタ部70の各メサ部60−1には、エミッタ領域12に代えて、コンタクト領域15が設けられている。また、メサ部60−2には、エミッタ領域12に代えて、コンタクト領域15が設けられている。コンタクト領域15は、ラッチアップを抑制するラッチアップ抑制層として機能してよい。
【0082】
当該断面においてダイオード部80の各メサ部60−3には、P−型のベース領域14およびN+型の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に配置される。蓄積領域16の下方にはドリフト領域18が設けられる。ダイオード部80には、蓄積領域16が設けられていなくともよい。
【0083】
トランジスタ部70において、半導体基板10の下面23に隣接する領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられている。ダイオード部80において半導体基板10の下面23に隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられている。
【0084】
本例の半導体基板10には、ドリフト領域18とコレクタ領域22との間、および、ドリフト領域18とカソード領域82との間に、N+型のバッファ領域20が設けられている。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0085】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0086】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0087】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する
、深さ方向に沿った領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0088】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0089】
図4は、
図1における領域Bの近傍を拡大した図である。領域Bは、パッド(本例ではカソードパッド117)、パッドの第1の辺132に沿って配置された第2のゲートランナー51、第1のゲートランナー50およびパッド間領域130を含む領域である。領域Bは、Y軸方向において主活性部120におけるトランジスタ部70と対向しており、ダイオード部80とは対向していない。また、カソードパッド117の第1の辺132は、Y軸方向に平行な辺である。
【0090】
第2のゲートランナー51は、カソードパッド117の第1の辺132と、パッド間領域130との間に配置されている。第2のゲートランナー51と、カソードパッド117との間における半導体基板10の上面には、ウェル領域11が露出していてよい。
【0091】
上述したように、パッド間領域130に設けられたゲートトレンチ部40は、第1のゲートランナー50と直接または間接に接続される。本例のゲートトレンチ部40の先端部41は、第3のゲートランナー48の下方に配置されており、第3のゲートランナー48と接続されている。
【0092】
パッド間領域130に設けられたゲートトレンチ部40は、主活性部120に設けられたゲートトレンチ部40がY軸方向に延伸したトレンチ部であってよい。つまり、主活性部120におけるゲートトレンチ部40と、パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は連続していてよい。
【0093】
また、パッド間領域130には、ダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30も、主活性部120に設けられたダミートレンチ部30が、パッド間領域130まで延伸して設けられていてよい。第1のゲートランナー50の下方にはウェル領域11が設けられており、当該ウェル領域11はY軸方向に延伸して、パッド間領域130の一部にも設けられている。ダミートレンチ部30の先端部31は、当該ウェル領域11と重なる位置に設けられている。エミッタ電極52も、主活性部120から、当該ウェル領域11と重なる位置まで設けられている。ダミートレンチ部30の先端部31は、コンタクトホール56を介してエミッタ電極52と接続している。なお、第2のゲートランナー51の下方にもウェル領域11が設けられており、当該ウェル領域11はX軸方向に延伸して、パッド間領域130の一部にも設けられている。
【0094】
パッド間領域130におけるそれぞれのメサ部60の構造は、
図2および
図3において説明した、主活性部120におけるメサ部60の構造と同一であってよい。パッド間領域130のメサ部60−1の上面には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12がY軸方向に交互に設けられている。
【0095】
また、パッド間領域130において、X軸方向においてカソードパッド117と最も近くに配置されたゲートトレンチ部40と、カソードパッド117との間には、ダミートレンチ部30が設けられていてよい。ダミートレンチ部30には、エミッタ領域12が設けられていないメサ部60−2が隣接して配置されている。メサ部60−2は、X軸方向において複数個配置されていてよい。これにより、パッド間領域130において、パッドと、エミッタ領域12との間隔を大きくすることができる。
【0096】
また、パッド間領域130において、X軸方向においてカソードパッド117と最も近いゲートトレンチ部40と、カソードパッド117との間に、コンタクトホール54が設けられていてよい。また、パッド間領域130において、X軸方向においてカソードパッド117と最も近いダミートレンチ部30と、カソードパッド117との間に、コンタクトホール54が設けられていてもよい。パッド間領域130において、X軸方向においてカソードパッド117と最も近いトレンチ部と、カソードパッド117との間に、コンタクトホール54が設けられていてよい。
【0097】
また、主活性部120からパッド間領域130までY軸方向に連続して設けられたメサ部60は、Y軸方向における先端部分を除き、主活性部120およびパッド間領域130で同一の構造を有してよい。例えば、メサ部60−1の上面には、主活性部120およびパッド間領域130の両方において、コンタクト領域15およびエミッタ領域12がY軸方向に交互に設けられていてよい。
【0098】
また、メサ部60の構造は、パッド間領域130と主活性部120とで異なっていてもよい。例えば一部のメサ部60−2は、パッド間領域130においてはエミッタ領域12が設けられておらず、主活性部120においてはコンタクト領域15およびエミッタ領域12が交互に配置されていてもよい。
【0099】
図5は、
図1における領域Cの近傍を拡大した図である。領域Cは、パッド(本例ではカソードパッド117)、パッドの第2の辺134に沿って配置された第2のゲートランナー51、主活性部120のトランジスタ部70およびダイオード部80を含む領域である。また、カソードパッド117の第2の辺134は、X軸方向に平行な辺であり、且つ、主活性部120と対向している辺である。
【0100】
第2のゲートランナー51は、カソードパッド117の第2の辺134と、トランジスタ部70およびダイオード部80との間に配置されている。第2のゲートランナー51と、カソードパッド117との間における半導体基板10の上面には、ウェル領域11が露出していてよい。
【0101】
上述したように、Y軸方向において第2のゲートランナー51と対向して配置されたゲートトレンチ部40は、第2のゲートランナー51と直接または間接に接続されている。本例のゲートトレンチ部40の先端部41は、第3のゲートランナー48の下方に配置されており、第3のゲートランナー48と接続されている。
【0102】
また、第2のゲートランナー51の下方にはウェル領域11が設けられており、当該ウェル領域11はY軸方向に延伸して、第2のゲートランナー51よりも主活性部120側まで設けられている。ダミートレンチ部30の先端部31は、当該ウェル領域11と重なる位置に設けられている。ダミートレンチ部30の先端部31は、コンタクトホール56を介してエミッタ電極52と接続している。
【0103】
図4および
図5に示した構造により、それぞれのゲートトレンチ部40を、金属の第1のゲートランナー50および第2のゲートランナー51に直接にまたは間接に接続しやすくなる。これにより、それぞれのゲートトレンチ部40に印加するゲート電圧の遅延および減衰のばらつきを低減できる。
【0104】
また、上面視におけるパッドと第2のゲートランナー51との距離D1は200μm以下であってよい。距離D1は、150μm以下であってよく、120μm以下であってよく、100μm以下であってもよい。また、距離D1は、半導体基板10のZ軸方向における厚みの1.5倍以下であってよく、1倍以下であってもよい。Y軸方向における距離D1が上記の条件を満たしてよく、X軸方向における距離D1が上記の条件を満たしてもよい。パッドと第2のゲートランナー51との距離を小さくすることで、活性領域の面積を大きくできる。
【0105】
図6は、上面視におけるエミッタ電極52の配置例を示す図である。エミッタ電極52は、主活性部120と、少なくとも一部のパッド間領域130の上方に設けられてよい。本例のエミッタ電極52は、電流センス素子119が設けられたパッド間領域130の上方には設けられていない。また、エミッタ電極52は、エミッタパッド115と重なる位置にも設けられていてよい。
【0106】
図7は、カソード領域82の配置例を示す図である。本例におけるパッド間領域130には、カソード領域82が設けられていない。つまり、主活性部120に設けられたカソード領域82は、パッド間領域130まで延伸して設けられていない。ただし、カソード領域82以外のダイオード部80の構造は、パッド間領域130に設けられてよい。このような構造により、N+型のカソード領域82と、比較的に深く形成されたP+型のウェル領域11との距離を確保でき、パッド間領域130に素子領域を設けたことによる耐圧低下を抑制できる。
【0107】
なお、Y軸方向においてパッド間領域130と対向して配置されたカソード領域82−1は、Y軸方向においてパッドまたは第2のゲートランナー51と対向して配置されたカソード領域
82−2よりも、Y軸方向に長く設けられていてよい。ただし、カソード領域82−1は、パッド間領域130までは延伸していない。これにより、カソード領域82の面積を増大させつつ、カソード領域82とウェル領域11との距離を確保しやすくなる。
【0108】
なお、第1の端辺142に沿って配置された複数のパッドのそれぞれは、少なくとも一部分が、ダイオード部80(カソード領域82)とY軸方向において対向する位置に設けられていてよい。これにより、主活性部120に設けられたトランジスタ部70の構造を、パッド間領域130まで延伸して設けやすくなる。このため、トランジスタ部70の面積を容易に増大させることができる。
【0109】
また、X軸方向において最も端に配置されたパッドと、第1のゲートランナー50とのX軸方向における距離D2は、500μm以下であってよい。当該パッドを、第1のゲートランナー50の近くに配置することで、X軸方向においてパッド間領域130を大きくできる。距離D2は300μm以下であってよく、200μm以下であってよく、100μm以下であってもよい。距離D2は、半導体基板10の厚みの1.5倍以下であってよく、1倍以下であってもよい。
【0110】
図8は、
図7における領域Dの近傍を拡大した図である。領域Dは、パッド間領域130において、主活性部120のダイオード部80およびトランジスタ部70とY軸方向で対向する領域である。
【0111】
図7において説明したように、パッド間領域130には、カソード領域82が設けられていない。ただし、Y軸方向においてパッド間領域130と対向して配置されたダイオード部80のダミートレンチ部30は、パッド間領域130まで延伸して設けられている。また、当該ダイオード部80のメサ部60−3も、パッド間領域130まで延伸して設けられている。
【0112】
このような構造により、パッド間領域130と、主活性部120との間で構造の連続性を維持しつつ、カソード領域82とウェル領域11との距離を確保できる。構造の連続性を維持することで、電界が局所的に集中することを抑制できる。
【0113】
図9は、カソード領域82の他の配置例を示す図である。本例におけるパッド間領域130には、カソード領域82が設けられている。例えば、主活性部120に設けられたカソード領域82が、パッド間領域130まで延伸して設けられている。このような構造により、カソード領域82の面積を増大させて、ダイオード部80として動作する素子領域を大きくできる。
【0114】
なお、カソード領域82とウェル領域11とのX軸方向における距離が近くなりすぎる場合、主活性部120のカソード領域82をパッド間領域130まで延伸させないことが好ましい。一例として、カソード領域82とウェル領域11とのX軸方向における距離が200μm以上となることを条件として、カソード領域82をパッド間領域130まで延伸させてよい。当該距離は、100μm以上であってよく、半導体基板10の厚み以上であってもよい。
【0115】
図10は、
図9における領域Eの近傍を拡大した図である。領域Eは、パッド間領域130において、主活性部120のダイオード部80およびトランジスタ部70とY軸方向で対向する領域である。
【0116】
図9において説明したように、パッド間領域130には、カソード領域82が設けられている。また、ダミートレンチ部30およびメサ部60−3も、パッド間領域130まで延伸して設けられている。このような構造により、ダイオード部80の面積を大きくできる。
【0117】
図11は、
図1における領域Bの他の例を示す。本例では、パッド間領域130に設けられたゲートトレンチ部40のうち、X軸方向においてパッドに最も近いゲートトレンチ部40−1には、エミッタ領域12が接して設けられていない。これにより、パッドと、エミッタ領域12との距離をより大きくできる。ゲートトレンチ部40−1に隣接するメサ部60には、エミッタ領域12に代えてコンタクト領域15が設けられてよい。
【0118】
図12は、主活性部120およびパッド間領域130におけるゲートトレンチ部40の配置例を示す図である。上述したように、パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は、主活性部120におけるゲートトレンチ部40と連続して設けられてよい。同様に、ダミートレンチ部30も、パッド間領域130および主活性部120で連続して設けられてよい。
【0119】
図13は、主活性部120およびパッド間領域130におけるゲートトレンチ部40の他の配置例を示す図である。本例では、パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は、主活性部120のゲートトレンチ部40とは分離している。パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は、X軸方向に延伸して設けられてよい。パッド間領域130のゲートトレンチ部40は、Y軸方向に設けられた第2のゲートランナー51と直接または間接に接続してよい。本例のゲートトレンチ部40は、X軸方向におけるパッド間領域130の両端に設けられた第2のゲートランナー51と直接または間接に接続している。パッド間領域130におけるダミートレンチ部30も、ゲートトレンチ部40と平行な方向に延伸して設けられてよい。
【0120】
なお、パッド間領域130とY軸方向において対向する主活性部120のゲートトレンチ部40は、パッド間領域130と主活性部120との間に配置された第3のゲートランナー48と接続されてよい。第3のゲートランナー48は、X軸方向におけるパッド間領域130の両端に設けられた第2のゲートランナー51と接続している。このような構造によっても、それぞれのゲートトレンチ部40をゲートランナー部に接続できる。
【0121】
図14は、主活性部120およびパッド間領域130におけるゲートトレンチ部40の他の配置例を示す図である。本例では、パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は、主活性部120のゲートトレンチ部40とは分離している。本例では、パッド間領域130におけるゲートトレンチ部40は、Y軸方向に延伸して設けられている。
【0122】
パッド間領域130のゲートトレンチ部40は、第1のゲートランナー50と直接または間接に接続してよい。パッド間領域130とY軸方向において対向する主活性部120のゲートトレンチ部40は、パッド間領域130と主活性部120との間に配置された第3のゲートランナー48と接続されてよい。このような構造によっても、それぞれのゲートトレンチ部40をゲートランナー部に接続できる。
【0123】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0124】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。