(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本開示にかかる実施の形態の概要)
本開示の実施形態の説明に先立って、本開示にかかる実施の形態の概要について説明する。
図1は、本開示の実施の形態にかかる制御装置1の概要を示す図である。
【0014】
制御装置1は、管理部2と、スケジューラ3と、出射指示部4と、を備えている。管理部2は、測距センサ5が走査するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理する。スケジューラ3は、前記出射不可方向に基づいて、レーザ光の出射をスケジュールする。出射指示部4は、前記スケジュールに従って、前記レーザ光の出射方向を指示する。この構成により、低い安全規格で測距センサを使用可能となる。
【0015】
さらに、測距センサ5が上記の制御装置1を備えていてもよい。制御装置が実行する制御方法によって、低い安全規格で測距センサを使用可能となる。また、制御装置1が実行する制御方法は、コンピュータが実行するプログラムによって、実現可能である。
【0016】
[実施の形態1]
本実施の形態にかかる測距センサは、パルスレーザ光を用いて、距離を測定するものである。具体的には、測距センサは、ライダ(LIDAR;Light Detection and Ranging)である。測距センサは、三次元空間における三次元座標を認識可能である。三次元空間は、直交座標系で表現されてもよいし、極座標系で表現されてもよい。
【0017】
測距センサを用いることで、侵入物又は侵入者(以下、侵入物及び侵入者をまとめて侵入物とする)の侵入を検知することができる。従って、測距センサは、民間施設または公共施設等の監視に用いることが可能となる。例えば、監視対象となる対象施設に、複数の測距センサを配置することで、対象施設の監視が可能となる。
【0018】
図2を用いて、測距センサ201の構成について説明する。
図2は測距センサ201を示す機能ブロック図である。測距センサ201が、パルスレーザ光を測定信号として用いるライダであるとして説明する。測距センサ201は、光信号生成部210と、コリメート部211と、方向制御部213と、集光部215と、検出部216と、信号処理部217と、通信部218と、を備えている。
【0019】
光信号生成部210は、測定信号となる光信号を発生する光源を備えている。具体的には、光信号生成部210は、パルスレーザ光を発生するレーザダイオードなどを有している。光信号生成部210は、所定の繰り返し周波数のパルスレーザ光を測定信号として生成する。光信号生成部210は、測定信号の光強度、繰り返し周波数などを調整することができてもよい。
【0020】
コリメート部211は、レンズ等を備えており、光信号であるパルスレーザ光をコリメートする。例えば、コリメート部211は、パルスレーザ光を平行光束にする。
【0021】
方向制御部213は、光信号の出射方向を制御する。例えば、方向制御部213は、スキャナや光学系を有しており、光信号の出射方向を走査する。方向制御部213は、回転ミラーなどを有しており、光信号を一定の回転速度で走査する。回転ミラーが回転することで、光信号の出射方向を変化させることができる。
【0022】
例えば、水平面(XY平面)と直交するZ方向を回転軸として、360°回転可能な回転ミラーをスキャナとして用いる。このようにすることで、測距センサ201が光信号を全方位に向けて出射することができる。もちろん、走査範囲は0〜360°の全周に限らず、一部の範囲のみであってもよい。つまり、監視したい方向に応じて走査範囲が設定されていてもよい。また、方向制御部213は、走査範囲を可変とする。
【0023】
さらには、方向制御部213は、上下方向にパルスレーザ光を走査してもよい。方向制御部213が、方位角、及び仰角の両方を変えていくことで、3次元走査が可能となる。なお、方位角は、測距センサ201を中心とし、基準となる方位(例えば、真北方向)を0°とする水平面内の角度である。仰角は、水平方向を0°とし、鉛直上方向を90°とする鉛直面内の角度である。
【0024】
方向制御部213で走査された光信号が、測距センサ201から出射する。光信号が出射する方向は、方向制御部213での走査角度、つまり回転ミラーの角度に対応している。パルスレーザ光の繰り返し周期、及び走査速度が一定であるとすると、一定の方位角毎に光信号が出射される。光信号は、測距センサ201の周囲にある対象物で反射する。対象物で反射した光信号を反射光とする。光信号はパルス光であるため、反射光もパルス光となる。
【0025】
集光部215は、レンズ等を有しており、対象物で反射した反射光を集光する。検出部216は、集光部215で集光された反射光を検出する。検出部216は、フォトダイオードなどの光センサを有している。検出部216は、検出光量に応じた検出信号を信号処理部217に出力する。
【0026】
信号処理部217は、検出部216からの検出信号に対して所定の処理を行う回路やプロセッサを有している。信号処理部217は、検出信号に基づいて、対象物までの距離を算出する。信号処理部217は、光信号であるパルスレーザ光が出射してから、検出部216で検出されるまでの時間を推定する。そして、信号処理部217は、推定された時間に基づいて、対象物までの距離を計測する。つまり、光信号生成部210がパルスレーザ光を発生したタイミングと、検出部216が検出したタイミングとの差分から、信号処理部217が対象物までの距離を算出する。信号処理部217は、光信号が反射される反射位置までの往復時間を求め、往復時間に基づいて対象物の表面までの距離を算出する。
【0027】
このようにすることで、測距センサ201の周囲にある対象物までの距離を測定することができる。さらに、方向制御部213が光信号の出射方向を制御しているため、それぞれの方位において、対象物までの距離を測定することができる。方向制御部213が所定の走査範囲を繰り返し走査することで、測定データが随時更新されていく。
【0028】
通信部218は、有線通信又は無線通信によって、測定データを後述する制御装置に送信する。さらに、通信部218は出射完了通知を制御装置に送信してもよい。出射完了通知は、出射済み方向と出射時間とを示す信号である。通信部218の通信方式は特に限定されるものではい。通信部218は一定間隔毎に最新の測定データを送信する。例えば、走査範囲(例えば、0〜360°)の全体又は一部の測定が終了すると、通信部218は新たに取得された測定データを送信する。そして、測距センサ201が、光信号の走査を繰り返し行うことで、測定データが更新される。
【0029】
なお、測距センサ201の制御装置は、測距センサ201と別の装置であってもよく、測距センサ201に搭載されていてもよい。すなわち、制御装置と測距センサ201とは物理的に単一の装置であってもよく、別々の装置であってもよい。制御装置と測距センサ201とは物理的に単一の装置である場合、通信部218を省略することが可能である。
【0030】
上記のように、測距センサ201は、侵入物の侵入を検知する。例えば、測距センサ201のセンシング範囲に侵入物が侵入すると、測距センサ201の測定データが示す測定距離が短くなる。よって、測距センサ201のセンシング結果に基づいて、侵入を検知することができる。
【0031】
さらに、測距センサ201は、侵入物や侵入者を特定するために、センシング領域を狭くして、高解像度の測定を行っている。高解像度での測定により、侵入物の形状などを識別できるようになる。以下、ライダの走査範囲と解像度の関係について説明する。
【0032】
ライダでは、走査範囲とセンシング密度とが反比例する関係にある。例えば、単位時間当りに測距センサがセンシングするポイント数Nはパルスレーザ光の繰り返し周波数で規定された固定値となる。つまり、単位時間当りにセンシングするポイント数Nは一定である。単位時間当りの走査範囲と、センシング密度を用いると、単位時間当りにセンシングするポイント数Nは、以下のように示される。
N=(単位時間当りの走査範囲)×(センシング密度)
【0033】
単位時間当りの走査範囲は、例えば、方向制御部213による走査速度、つまり、回転ミラーの回転速度で規定される。センシング密度は、例えば、単位角度(3次元走査の場合は、単位立体角)当りに照射されるパルス数で規定される。走査速度が一定であるとすると、走査範囲を狭くすることで、センシングするポイントが狭い範囲に集中する。つまり、走査範囲を狭くすることで、侵入物の表面において、センシングするポイントをより接近させることができる。
【0034】
測距センサ201がセンシング領域を狭くすることで、より高解像度のセンシングを行うことが可能となる。例えば、1秒間当り360°の走査範囲を、1秒間当り10°の走査範囲に変更すると、センシング密度、つまり解像度が36倍となる。侵入物を含む範囲に高いセンシング密度でパルスレーザ光を照射すると、高解像度での測定が可能となり、侵入物を特定することができる。
【0035】
侵入を検知する前は、測距センサ201が広いセンシング範囲で走査を行う低解像度モードとなる。測距センサ201が侵入を検知した後は狭いセンシング範囲で走査を行う高解像度モードとなる。
【0036】
図3を用いて、測距センサ201による侵入物の特定について説明する。
図3は、侵入物115が侵入する前後のセンシング領域221の変化を示す図である。
図3では、侵入前のセンシング領域221が左側に示され、侵入後のセンシング領域221が右側に示されている。
【0037】
侵入物115が侵入する前は、測距センサ201が低解像度モードとなる。測距センサ201が全方位を走査している。つまり、測距センサ201は、レーザ光を広い走査範囲で走査しており、センシング領域221が円形となっている。
【0038】
センシング領域221に侵入物115が侵入すると、測距センサ201が高解像度モードになる。測距センサ201は、侵入物115に向けて、センシング領域221を狭くしている。例えば、3次元走査の場合、センシング領域221は、侵入物115に向いた円錐状(コーン状)となる。侵入物115に対するセンシング密度を高くすることで、測距センサ201が高解像でのセンシングを行うことができる。
【0039】
このように、測距センサ201は、侵入物115を検知した場合、センシング領域を狭くして、高解像度モードでのセンシングを行う。つまり、測距センサ201は、侵入物115に向けて高いセンシング密度で光信号を出射する。高解像度でのセンシングを行うことで、侵入物115の形状を検出することが可能となる。侵入物115の形状から侵入物115を特定することが可能となる。一方、侵入物が検知されていない場合は、測距センサ201は、走査範囲を広くして、低解像度モードでの測定を行う。
【0040】
ところで、ライダには、1km以上の遠距離をセンシング可能なものがある。このようなライダの用途の一例として、駅や空港、ショッピングモール等の施設に接近するドローンを遠方から検知するといった用途が存在する。ドローンによる不法侵入が世界的に問題になりつつあり、このようなドローンに対して対策を講じるために、例えば1km〜10kmオーダの遠距離までセンシング可能なライダが測距センサ201として用いられる。
【0041】
このようなライダは、設置場所が市街地に近い場合があることから、レーザクラス1の安全規格(安全基準)を満たすことが好ましい。レーザクラスは、10cm程度の近距離で眼球や皮膚に照射されるケースを想定して決定される。判定方法の1つとして、10cmの距離で直径7mmの範囲に一定期間に照射されるレーザのエネルギー量を求め、各クラスで定められた安全基準と比較する。例えば、レーザクラス1Mでは、光源から100mmで直径7mmの円形開口でのレーザ出力パワーを所定値以下にするように制限されている。
【0042】
一方、レーザ光の反射光がノイズに埋もれないようにレーザ光の出力パワーを高くすることが好ましい。特に、遠距離をセンシングするためには、レーザ光の出力パワーをより高くすることが望まれる。
【0043】
ドローン検出目的において、ドローンの型式を認識する場合、
図4に示すように、解像度は10kmの遠距離で10cm以下が少なくとも必要であると考えられる。10kmの距離で10cmの解像度を得るには、レーザ光の振り幅(走査間隔)を10μrad(マイクロラジアン)にする必要がある。10μradの振り幅で走査した場合、10cmの距離かつ7mmの円形範囲に含まれるレーザの出射回数(パルス数)は7000回となる。このため、より高解像度での測定を短時間で行う場合、レーザのクラスで定めるエネルギー量を超える可能性がある。
【0044】
実際には、10cmの距離で7mmの円形範囲(70mrad(ミリラジアン))にレーザを射出すると、10km先では700mの円形範囲に相当するため、ドローンの大きさ(数10cm〜数m)相当分の円形範囲であれば、レーザの射出回数は数回〜数十回程度となり、レーザのクラスで定めるエネルギー量は超えない可能性もある。しかし、侵入物を検知した時点ではドローンであるかどうかは分かっておらず、その後の高解像度な走査によって判別可能となる。侵入物にはドローンに加え、鳥やゴミ等の可能性があることから、高解像度に走査すべき侵入物の数は一般に複数となる。そのため、700mの円形範囲に侵入した物体全てに高解像度な走査を行った結果、やはりレーザのクラスで定めるエネルギー量を超える可能性がある。
【0045】
つまり、狭いエリア内に短時間に連続してパルスレーザ光を照射すると、レーザの安全規格で規定されるパワーを越えてしまう恐れがある。レーザクラス1を越えるレーザ出力パワーとなったとしても、直ちに危険というわけではないが、ラベルを貼るなどの追加の安全措置が必要となる。そこで、本実施の形態では、測距センサ201が出射するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、制御装置がレーザ光の出射不可方向を管理している。以下、本実施形態にかかる測距センサ201の制御装置について、
図5を用いて説明する。
図5は、制御装置300の構成を示す機能ブロック図である。
【0046】
制御装置300は、エリア管理部301と、センシング要求管理部302と、スケジューラ303と、出射指示部304と、を備えている。なお、制御装置300は、例えば、パーソナルコンピュータ、又はサーバ等のコンピュータであってもよい。制御装置300は、測距センサ201と、有線又は無線を介して通信可能に接続されている。例えば、WiFi(登録商標)等の無線LANなどが用いられていてもよい。あるいは、測距センサ201が制御装置300を備えていてもよい。この場合、例えば、制御装置300は、測距センサ201に内蔵されたプロセッサなどで有ってもよい。
【0047】
エリア管理部301は、レーザ光の出射不可方向を管理する第1の管理部である。エリア管理部301は、レーザ光の出射不可方向を示すセンシング不可エリアを記憶するメモリを有している。具体的には、エリア管理部301は、センシング不可エリアマップ305を用いて、出射不可方向を管理している。
【0048】
例えば、センシング不可エリアマップ305は、レーザ光の出射方向を2次元に展開したマップである。センシング不可エリアマップ305は、レーザ光の出射方向の方位角を横方向(θ軸)とし、仰俯角を縦方向(φ軸)とする2次元マップデータである。センシング不可エリアマップ305でのθφ座標が、レーザ光を出射する出射方向に対応する。
【0049】
エリア管理部301は、スケジューラ303又は測距センサ201から出射完了通知を受け取る。出射完了通知は、レーザ光を出射した出射済み方向及びその出射時間に関する情報を含んでいる。エリア管理部301は、出射完了通知を受け取ると、センシング不可エリアマップ305を作成する。センシング不可エリアマップ305は、センシング不可エリア305bを示すマップである。
【0050】
例えば、エリア管理部301は、パルス毎に、出射済み方向305aを出射時間とともに記録する。そして、設定期間内に出射されたパルス数分だけ、出射済み方向305aの履歴を保存する。レーザ光の出射の可否は一定時間内のレーザ光の総エネルギー量によって決まる。したがって、エリア管理部301は、設定期間におけるレーザ光のエネルギーの合計値(積分値)を算出する。エリア管理部301は、エネルギーの合計値(積分値)が安全規格に基づく閾値を越えてしまうエリアをセンシング不可エリア305bとして特定する。具体的には、レーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、センシング不可エリア305bを算出する。
【0051】
例えば、エリア管理部301は、1パルス毎に、候補エリアマップ
3051を作成する。候補エリアマップ
3051は、1つの出射済み方向305aに対応する候補エリア305dを示すマップである。出射済み方向305aから所定の距離以内にあるエリアが、候補エリア305dとなる。エリア管理部301は、測距センサ201から出射完了通知を受け取る毎に、新たな候補エリアマップ
3051をエントリとして追加していく。
【0052】
エリア管理部301は、設定期間内に出射されるパルス数分の候補エリアマップ
3051を作成する。よって、エリア管理部301は、複数の候補エリアマップ
3051をメモリに記憶する。エリア管理部301は、複数の候補エリアマップ3501を足し合わせることで、センシング不可エリア305bを示すセンシング不可エリアマップ305を作成する。例えば、エリア管理部301は、重複する候補エリア305dの数が多い領域を、センシング不可エリア305bとして算出することができる。
【0053】
このように、エリア管理部301は、出射済み方向305aの履歴に基づいて、センシング不可エリア305bを算出する。レーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーが、安全規格で規定される閾値を越えないように、エリア管理部301は、センシング不可エリア305bを算出する。つまり、短時間に連続してパルスレーザ光照射すると、安全規格を越える方向を特定して、センシング不可エリア305bとする。レーザクラス1Mの場合、光源から100mmで直径7mmの円形開口でのレーザ出力パワーが所定の閾値以上となる方向が、センシング不可エリア305bとなる。センシング不可エリア305bは、光信号生成部210のレーザダイオードの繰り返し周波数、レーザ波長、1パルス当りの出力パワー等の仕様値から決定される。
【0054】
このように、エリア管理部301は、測距センサ201が走査するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理する。また、エリア管理部301は、出射時間に関する時間情報を出射済み方向305aと対応付けて記憶する。時間情報は、時分秒などを含む実時間であってもよい。測定信号の繰り返し周波数が一定である場合、時間情報はパルス数を示す値でもよい。
【0055】
センシング不可エリアマップ305において、センシング不可エリア305b以外の箇所がセンシング可能エリア305cとなっている。エリア管理部301は、センシング不可エリア305b、センシング可能エリア305c、出射済み方向305a、及び時間情報を含むセンシング不可エリアマップ305を作成する。
【0056】
エリア管理部301は、設定期間分の履歴からセンシング不可エリアマップ305を作成して、メモリに保存する。エリア管理部301は、設定期間分、つまり所定パルス数分だけ、出射済み方向305a及び出射時間等の履歴を管理している。エリア管理部301は、出射時間から設定時間以上経過した出射済み方向305aを履歴から削除する。なお、センシング不可エリアマップ305は、出射済み方向305aに対応したキューを集めたデータ構造となっていてもよい。
【0057】
なお、エリア管理部301は、1パルス毎に、センシング不可エリアマップ305を更新してもよく、複数パルスを含む所定時間毎にセンシング不可エリアマップ305を、更新してもよい。エリア管理部301は、データが更新される毎に、新たな候補エリアマップ
3051を追加するとともに、古くなった候補エリアマップ
3051を削除する。
【0058】
センシング要求管理部302は、センシングすべき方向を示すセンシング要求を管理する第2の管理部である。ここでは、センシング要求管理部302は、要求ビットマップ306を記憶するメモリを有している。要求ビットマップ306は、センシング要求の有無を示すマップである。要求ビットマップ306は、センシング不可エリアマップ305と同様に、レーザ光の出射方向を展開した2次元マップである。
【0059】
つまり、要求ビットマップ306は、
方位角を横方向(θ軸)とし、仰俯角を縦方向(φ軸)とする2次元マップデータである。そして、要求ビットマップ306は、センシング要求がある方向を第1の値(例えば、1)とし、センシング要求がない方向を第2の値(例えば、0)とするビットマップとなっている。
【0060】
例えば、測距センサ201が低解像度モードでのセンシング中に侵入物115を検知した場合、制御装置300は、測距センサ201を高解像度モードに移行するように制御する。つまり、制御装置300は、侵入物115を含むように測距センサ201のセンシング領域221を狭くする。測距センサ201のセンシング領域への侵入物が侵入した場合に、制御装置300は、低解像度モードよりも侵入物の方向に高密度にセンシングを行うように、測距センサ201を制御する。これにより、センシング要求が行われ、要求ビットマップ306が、要求エリア306aと、非要求エリア306bとに分離される。
【0061】
要求エリア306aは、センシング要求がある方向を含むエリアであり、センシング領域221が侵入物115を含むように設定される。つまり、要求エリア306aは、センシングすべき方向を含んでいる。非要求エリア306bは、センシング要求がある方向を含まないエリアである。つまり、非要求エリア306bは、センシングしない方向、又はセンシングが終了した方向を含んでいる。センシング要求管理部302は、センシング領域221に応じて、要求エリア306aのビットを0から1に書き換える。
【0062】
センシング要求管理部302は、測距センサ201等から出射完了通知を受け取る。センシング要求管理部302は、出射完了通知に応じて、要求ビットマップ306を更新する。センシング要求管理部302は、出射完了通知を受信すると、出射済み方向305aに対応するビットを1から0に書き換える。
【0063】
このように、センシング要求管理部302は、要求ビットマップ306を管理している。さらに、センシング要求管理部302は、センシング要求の優先度を管理してもよい。つまり、単一の要求エリア306aを複数に分割して優先度を与え、優先度が高いエリアからセンシングを行うようにしてもよい。また、高解像度にセンシングを行うエリアが同時に複数発生することも起こりうることから、要求エリア306aを複数設定してもよい。また、複数設定した要求エリア306aに対して、優先度を与えることも可能である。
【0064】
スケジューラ303は、出射済み方向及び出射時間の履歴に基づいて、レーザ光の出射をスケジューリングする。具体的には、スケジューラ303は、センシング不可エリアマップ305と要求ビットマップ306とを参照して、測定信号の出射スケジュールを決定する。
【0065】
スケジューラ303は、要求ビットマップ306からセンシング要求がある方向を読み出す。スケジューラ303は、センシング不可エリアマップ305を参照して、センシング要求がある方向が、センシング不可エリア305bとなっているか否かを判定する。スケジューラ303は、センシング要求がある方向、かつ、センシング不可エリア305bではない方向をスケジュールに登録する。スケジュールは、例えば、出射方向を出射順に並べたキュー形式で規定されていてもよい。
【0066】
スケジューラ303は、センシング要求がある方向、かつ、センシング不可エリアである方向を、待機バッファに格納する。待機バッファに格納された方向は、設定時間経過後に、測定信号が出射されるようになる。これにより、安全規格を満たすように、測距センサ201を制御することができる。スケジューラ303は、センシング不可エリアマップ305と要求ビットマップ306とを参照して、出射方向(θφ座標)と出射順を決定する。また、出射順は、上記したようにセンシング要求の優先度に基づいて設定されていてもよい。
【0067】
出射指示部304は、スケジュールに従って出射指示を測距センサ201に出力する。測距センサ201の方向制御部213は、スキャナを制御して、出射指示の示す出射方向に、測定信号を出力する。つまり、スケジュールに沿った出射順で、測距センサ201から測定信号が出力されるように、測距センサ201が測定信号を走査する。
【0068】
測距センサ201は、測定信号を出射すると、出射完了通知をエリア管理部301、及びセンシング要求管理部302に出力する。上記の通り、出射完了通知は、出射済み方向及び出射時間を含んでいる。そして、エリア管理部301は、出射完了通知に基づいて、センシング不可エリアマップ305を更新する。センシング要求管理部302は、出射完了通知に基づいて、要求ビットマップ306を更新する。
【0069】
このようにすることで、安全規格を越えないように、方向制御部213が測定信号を走査することができる。測距センサ201をより低いクラスのレーザ機器とすることができる。例えば、測距センサ201をレーザクラス1Mのレーザ機器として取り扱うことができる。よって、必要な安全措置を緩和することができる。
【0070】
さらに、エリア管理部301が、出射済み方向と出射時間の履歴を管理している。そして、エリア管理部301は、履歴から出射不可方向を含むセンシング不可エリアを算出している。これにより、エリア管理部301は、容易に出射不可方向を管理することができる。
【0071】
出射指示部304は、センシングすべき方向を示すセンシング要求を管理している。センシング要求がある方向であり、かつ前記出射不可方向ではない方向にレーザ光の出射を指示することで、容易にスケジューリングを行うことができる。
【0072】
図6を用いて、本実施の形態にかかる制御方法について説明する。
図6は、測距センサ201の制御方法を示すフローチャートである。
【0073】
スケジューラ303がセンシング要求の有無を確認する(S11)。ここでは、スケジューラ303は、待機バッファと要求ビットマップ306の両方を確認する。スケジューラ303が、要求ビットマップ306を参照して、センシング要求があるか否かを確認する(S12)。センシング要求がない場合(S12のNO)、S11に戻る。例えば、センシング要求があった全ての方向に対して、測定信号が出射済みの場合は、スケジューラ303は、センシング要求がないと判定する。あるいは低解像度モードの場合はあらかじめ定められたスケジュールに従ってセンシングを行う自動走査モードとし、スケジューラ303が明示的に制御を行うセンシング要求がないと判定してもよい。センシング要求があると判定されるまで、S11、S12の処理を繰り返す。
【0074】
センシング要求がある場合(S12のYES)、スケジューラ303は、センシング不可エリアマップ305を参照して、センシング要求がある方向がセンシング可能か否かを判定する(S13)。センシング要求がある方向がセンシング可能でない場合(S13のNO)、スケジューラ303は、センシング要求を待機バッファに追加する(S14)。そして、S11に戻って、処理を繰り返す。S11では、スケジューラ303が、待機バッファ及び要求ビットマップ306の両方を確認している。
【0075】
センシング要求がある方向がセンシング可能な場合(S13のYES)、スケジューラ303は、出射方向をスケジューリングする(S15)。例えば、スケジューラ303は、出射方向と出射順を決定し、キューに登録する。出射指示部304は、スケジュールに従って出射指示を行う(S16)。つまり、出射指示部304が、スケジュールされた出射順で、出射方向を測距センサ201に指示する。これにより、測距センサ201は、スケジュールされた順番で測定信号を出射する。つまり、方向制御部213が出射指示に基づいて、走査角度を制御する。
【0076】
次に、エリア管理部301は、出射完了通知に基づいて、出射時間をセンシング不可エリアマップ305に記録する(S17)。例えば、エリア管理部301は、新たなセンシング不可エリアマップ305を追加する。エリア管理部301は、出射済み方向305aに基づいて、センシング不可エリア305bを算出する(S18)。センシング不可エリア305bは、上記の通り、所望の安全規格を満たすように決定される。従って、出射済み方向305aの周辺が、センシング不可エリア305bとなる。
【0077】
エリア管理部301は、センシング不可エリアマップ305にセンシング不可エリア305bを登録する(S19)。これらの処理により、エリア管理部301は、センシング不可エリアを示す方向と、時間情報とを対応付けて、メモリに記憶することができる。さらに、センシング要求管理部302が要求ビットマップ306を更新する(S20)。つまり、センシング要求管理部302は、要求ビットマップ306において出射済み方向に対応するビットを下げる。
【0078】
上記の処理を繰り返すことで、センシング要求がある全方向についてセンシングが完了する。これにより、侵入物115を高解像度でセンシングすることができるため、測距センサ201又は制御装置300が侵入物115を特定することが可能となる。つまり、高解像度モードでは、レーザ光の振り角(走査間隔)を狭くすることができるため、侵入物115の形状や大きさを特定することができる。さらに、振り角を狭くした場合でも、レーザの安全規格を満たすように操作を行うことができる。よって、必要な安全措置を緩和することができる。
【0079】
次に、
図7を用いて、センシング不可エリアマップ305を更新する処理を説明する。
図7は、エリア管理部301における処理を説明するためのフローチャートである。なお、
図7では、設定時間分だけ記憶された複数の候補エリアマップ3051のそれぞれをセンシング不可エリアマップ305のエントリとしている。
【0080】
まず、エリア管理部301がセンシング不可エリアマップ305の先頭エントリの時間と現在時間を比較する(S31)。先頭エントリとその時間とは、最も古いエントリと、それに対応する出射時間である。エリア管理部301は、先頭エントリの時間と現在時間との比較結果から、設定時間以上経過しているか否かを判定する(S32)。
【0081】
先頭エントリの時間から、設定時間以上経過している場合(S32のYES)、該当エントリを削除する(S33)。そして、処理を終了する。先頭エントリの時間から、設定時間以上経過していない場合(S32のNO)、エリア管理部301は、エントリを削除せずに、処理を終了する。
【0082】
このようにすることで、所望の安全規格を満たすように出射方向を制御することができる。出射済み方向305aに出射した出射時間から設定時間以上経過すると、レーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーが安全規格を満たすようになる。このため、出射済み方向305aの周辺にレーザ光を出射可能となる。エリア管理部301が、設定時間以上経過した古いエントリを削除する。
【0083】
上記の説明では、高解像度モードの場合に、エリア管理部301が、出射不可方向を管理している。つまり、低解像度モードは、センシング密度が高くならないため、安全規格を越える恐れがない。よって、低解像度モードでは、制御装置300は、出射不可方向の管理、及びスケジューリングなどの処理を行わなくてもよい。もちろん、常時、出射不可方向の管理等を行ってもよい。つまり、低解像度モード、及び高解像度モードの両方で、エリア管理部301が出射不可方向の管理、及びスケジューリングなどを行ってもよい。
【0084】
制御装置300の各構成要素は、例えば、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって実現可能である。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールするようにしてもよい。なお、各構成要素は、上記のようにソフトウェアによって実現されることに限定されず、何らかの回路素子等のハードウェアによって実現されてもよい。また、上記構成要素の1つ以上は、物理的に別個のハードウェアによってそれぞれ実現されてもよい。
【0085】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0086】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0087】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0088】
(付記1)
測距センサが走査するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理する第1の管理部と、
前記出射不可方向に基づいて、レーザ光の出射をスケジュールするスケジューラと、
前記スケジュールに従って、前記レーザ光の出射方向を指示する出射指示部と、を備えた測距センサの制御装置。
(付記2)
前記第1の管理部が、
前記レーザ光が出射された出射済み方向、及び出射時間の履歴を管理しており、
前記履歴から前記出射不可方向を含むセンシング不可エリアを算出している付記1に記載の測距センサの制御装置。
(付記3)
センシングすべき方向を示すセンシング要求を管理する第2の管理部を備え、
前記センシング要求がある方向であり、かつ前記出射不可方向ではない方向にレーザ光の出射を指示する付記1、又は2に記載の測距センサの制御装置。
(付記4)
前記測距センサのセンシング領域への侵入物の侵入を検知する前には、低解像度モードでセンシングを行い、
前記測距センサのセンシング領域への侵入物が侵入した場合に、前記低解像度モードよりも侵入物の方向に高密度にセンシングを行う高解像度モードに移行し、
前記高解像度モードとなった場合に、前記第1の管理部が、レーザ光の出射不可方向を管理する付記1〜3のいずれか1項に記載の測距センサの制御装置。
(付記5)
レーザ光である光信号を発生させる光信号発生部と、
前記レーザ光の出射方向を変えるよう、前記レーザ光を走査する方向制御部と、
前記レーザ光が照射された物体からの反射光を検出する検出器と、
前記物体までの距離を測定するため、前記検出器からの検出信号を処理する信号処理部と、
走査された前記レーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理する第1の管理部と、
前記出射不可方向に基づいて、レーザ光の出射をスケジュールするスケジューラと、
前記スケジュールに従って、前記方向制御部に出射方向を指示する出射指示部と、を備えた測距センサ。
(付記6)
前記第1の管理部が、
前記レーザ光を出射した出射済み方向、及び出射時間の履歴を管理しており、
前記履歴から前記出射不可方向を含むセンシング不可エリアを算出している付記5に記載の測距センサ。
(付記7)
センシングすべき方向を示すセンシング要求を管理する第2の管理部を備え、
前記センシング要求が有る方向であり、かつ前記出射不可方向ではない方向に前記レーザ光の出射を指示する付記5、又は6に記載の測距センサ。
(付記8)
前記測距センサのセンシング領域への侵入物の侵入を検知する前には、低解像度モードでセンシングを行い、
前記測距センサのセンシング領域への侵入物が侵入した場合に、前記低解像度モードよりも侵入物の方向に高密度にセンシングを行う高解像度モードに移行し、
前記高解像度モードとなった場合に、前記第1の管理部が、レーザ光の出射不可方向を管理する付記5〜7のいずれか1項に記載の測距センサ。
(付記9)
測距センサが走査するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理するステップと、
前記出射不可方向に基づいて、レーザ光の出射をスケジュールするステップと、
前記スケジュールに従って、前記レーザ光の出射方向を指示するステップと、を備えた測距センサの制御方法。
(付記10)
前記レーザ光を出射した出射済み方向、及び出射時間の履歴が管理されており、
前記履歴から前記出射不可方向を含むセンシング不可エリアが算出されている付記9に記載の測距センサの制御方法。
(付記11)
センシングすべき方向を示すセンシング要求を管理するステップをさらに備え、
前記センシング要求が有る方向であり、かつ前記出射不可方向ではない方向に前記レーザ光の出射を指示する付記9、又は10に記載の測距センサの制御方法。
(付記12)
前記測距センサのセンシング領域への侵入物の侵入を検知する前には、低解像度モードでセンシングを行い、
前記測距センサのセンシング領域への侵入物が侵入した場合に、前記低解像度モードよりも侵入物の方向に高密度にセンシングを行う高解像度モードに移行し、
前記高解像度モードとなった場合に、レーザ光の出射不可方向が管理される付記9〜11のいずれか1項に記載の測距センサの制御方法。
(付記13)
測距センサが走査するレーザ光の所定の角度範囲当たりの出力パワーに応じて、レーザ光の出射不可方向を管理するステップと、
前記出射不可方向に基づいて、レーザ光の出射をスケジュールするステップと、
前記スケジュールに従って、前記レーザ光の出射方向を制御するステップと、
を備えた測距センサの制御方法をコンピュータに実行させるプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記14)
前記レーザ光を出射した出射済み方向、及び出射時間の履歴が管理されており、
前記履歴から前記出射不可方向を含むセンシング不可エリアが算出されている付記13に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記15)
前記制御方法がセンシングすべき方向を示すセンシング要求を管理するステップをさらに備え、
前記センシング要求が有る方向であり、かつ前記出射不可方向ではない方向に前記レーザ光の出射を指示する付記13、又は14に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
(付記16)
前記測距センサのセンシング領域への侵入物の侵入を検知する前には、低解像度モードでセンシングを行い、
前記測距センサのセンシング領域への侵入物が侵入した場合に、前記低解像度モードよりも侵入物の方向に高密度にセンシングを行う高解像度モードに移行し、
前記高解像度モードとなった場合に、レーザ光の出射不可方向が管理される付記13〜15のいずれか1項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。