(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画像解析手段が算出した前記第一の変位量および前記第二の変位量と、前記面外変位算出手段が算出した前記面外変位とに基づいて、前記被検物の面内変位を算出する面内変位算出手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変位量測定装置。
前記面外変位算出手段が算出した前記距離の変位および前記面外変位と、前記面内変位算出手段が算出した前記面内変位とに基づいて、前記被検物の状態を判定する状態判定手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項4に記載の変位量測定装置。
被検物の表面を撮像する撮像素子と、前記被検物と前記撮像素子との間に、前記撮像素子の視野の一部を覆うように配置された光路長変換手段と、を備えた装置を用いて行う変位量測定方法であって、
前記撮像素子が撮影した画像を用いて、前記光路長変換手段に覆われていない前記撮像素子の視野で得られた、前記被検物の表面内における第一の変位量と、前記光路長変換手段に覆われた前記撮像素子の視野で得られた、前記被検物の表面内における第二の変位量とを算出することと、
前記第一の変位量および前記第二の変位量に基づいて、前記被検物から前記撮像素子までの距離、および、前記被検物の面外変位を算出することとを含む
変位量測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態はいずれも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0017】
〔第一の実施形態〕
(変位量測定装置100)
図1は、本発明の第一の実施形態に係わる変位量測定装置100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、変位量測定装置100は、撮像装置1および信号処理部2を備えている。
【0018】
撮像装置1は、被検物10の表面を繰り返し撮像することによって、時系列のフレーム画像(以下、時系列画像と呼ぶ)を生成する。すなわち、時系列画像は、複数のフレーム画像で構成されている。時系列画像のフレームレートは、例えば、60Hzである。
【0019】
信号処理部2は、撮像装置1が生成した時系列画像に基づいて、撮像装置1から被検物10までの距離を算出するとともに、フレーム画像間における差異に基づいて、被検物10の表面内における変位を算出する。信号処理部2は、例えば、PC(Personal Computer)やサーバなどの情報機器である。
【0020】
信号処理部2を構成する各部は、情報機器の有する演算資源であるCPU(Central Processing Unit)が、記憶資源であるメモリやHDD(Hard Disk Drive)を用いて、プログラムを動作させることによって、実現することができる。
【0021】
(撮像装置1)
図2は、撮像装置1の構成を概略的に示す図である。
図2に示すように、撮像装置1は、レンズ12および撮像素子13を備えている。また、撮像装置1は、光路長変換部11をさらに備えている。光路長変換部11は、レンズ12に対して、撮像素子13と反対側に配置されている。光路長変換部11は、例えば平板ガラスであってよい。あるいは、光路長変換部11は、空気よりも高い屈折率を有する他の材料で形成されていてもよい。光路長変換部11は、光路長変換手段の一例である。
【0022】
一例において、レンズ12の焦点距離は100mm、撮像素子13の撮像面における画素ピッチは5μmである。この場合、撮像距離が5mならば、撮像素子13は、250μmの画素分解能を得られる。撮像素子13は、水平に2000画素、垂直に2000画素を備えている場合、0.5m×0.5mの範囲を撮像することができる。
【0023】
レンズ12の焦点距離、撮像素子13の画素ピッチ、画素数、およびフレームレートは、被写体(被検物10)に応じて適宜変更されてもよい。
【0024】
撮像装置1は、時系列画像のデータを信号処理部2へ送信する。
【0025】
(信号処理部2)
図1に示すように、変位量測定装置100が備えた信号処理部2は、全変位量算出部3と、面外変位算出部4と、面内変位算出部5とを備える。
【0026】
全変位量算出部3は、撮像装置1から時系列画像を受信し、受信した時系列画像のフレーム画像間における差異に基づいて、被検物10の表面内における変位量を算出する。
【0027】
例えば、全変位量算出部3は、時系列画像のフレーム画像間の相関または変化に基づいて、画像相関演算によって、被検物10の表面内の変位(全変位量と呼ぶ)を算出してもよい。全変位量算出部3は、画像相関演算において2次曲線補間法を使用することにより、撮像素子13の画素ピッチの1/100のレベルの全変位量を算出することができる。あるいは、全変位量算出部3は、画像相関演算の代わりに、勾配法を用いて、全変位量を算出してもよい。
【0028】
全変位量算出部3は、算出した全変位量に基づいて、2次元空間における変位分布図を生成してもよい。被検物10の表面の法線方向とレンズ12の光軸との間に傾斜がある場合、全変位量算出部3は、透視投影変換を実行することによって、傾斜の角度に相当する補正を行ってもよい。
【0029】
面外変位算出部4は、被検物10の表面から撮像装置1までの距離(奥行距離と呼ぶ)、および、被検物10の表面の法線方向における変位量(面外変位と呼ぶ)を算出する。面外変位算出部4は、面外変位算出手段の一例である。
【0030】
面内変位算出部5は、全変位量算出部3が算出した全変位量から、面外変位算出部4が算出した面外変位を差し引くことによって、被検物10の表面内方向、すなわち被検物10の表面に平行な方向における変位量(面内変位と呼ぶ)を算出する。面内変位算出部5は、面内変位算出手段の一例である。
【0031】
面外変位算出部4による面外変位の算出、および、面内変位算出部5による面内変位の算出には、2次曲面、または等角直線による補間を使用してもよい。また、画像相関の演算のために、SAD(Sum of Absolute Difference)法、SSD(Sum of Squared Difference)法、NCC(Normalized Cross Correlation)法、またはZNCC(Zero−mean Normalized Cross Correlation)法などを用いてもよい。あるいは、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0032】
(撮像装置1の光学配置)
図3は、撮像装置1による被検物の撮影時における光学配置を示す。
【0033】
図3では、あるフレーム画像における被検物10の表面を符号24で示し、次のフレーム画像における被検物10の表面を符号25で示している。以下では、符号24、25によって示される物体面を、以下では表面24、25と呼ぶ。
図3において、xy軸は、歪のない被検物10の表面内方向における互いに直交する2軸であり、z軸は、歪のない被検物10の表面の法線方向である。z軸は、レンズ12の光軸方向と一致する。
【0034】
符号δは、表面24から表面25までの距離を表す。距離δは、被検物10の面外変位である。面外変位δは、光路長変換部11によって覆われていない撮像素子13の視野で得られた、被検物10の表面内における第一の変位量の一例である。
【0035】
符号26は、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野における、表面24の虚像を表す。符号27は、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野における、表面25の虚像を表す。以下では、符号26および符号27を、どちらも虚像面と呼ぶ。
【0036】
光路長変換部11は、撮像素子13から見て、表面24からレンズ12までの距離(奥行距離と呼ぶ)をLからL´=(L−d)に変化させる。この変化量d(=L−L´)のことを、以下では光路長変化量と呼ぶ。光路長変化量dは、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野において、表面24がどれだけ浮き上がって見えるか、すなわち表面24が撮像素子13にどれだけ近づいて見えるかを示す。
【0037】
図3に示すように、撮像装置1が備えた光路長変換部11は、レンズ12の光軸からずらして配置されている。光路長変換部11は、レンズ12の視野の一部を覆っている。また、
図3において、(δ+d)で表される距離は、光路長変換部11に覆われた撮像素子13の視野で得られた、被検物10の表面内における第二の変位量の一例である。
【0038】
(面外変位の算出方法)
図3を参照して、面外変位算出部4が面外変位を算出する方法を説明する。
【0039】
光路長変換部11の厚さをt、屈折率をnとすると、上述した光路長変化量dは、以下の式1で表される。
(式1)
【0040】
例えば、光路長変換部11は、厚さtが30mmの平板形状であり、屈折率nが1.5であるとき、光路長変化量dは、式1によって、10mmとなる。
【0041】
図3に示すように、表面24がz方向にδだけ移動したとき、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野において、表面24の座標xの像である撮像素子13上の座標xiは、x方向にδgx(xi)だけ変位する。表面24の座標xの変位δを面外変位と呼ぶのに対して、撮像素子13に投影された座標xiの変位δgx(xi)を、以下では投影面外変位と呼ぶこととする。
【0042】
一方、光路長変換部11を介さない撮像素子13の視野において、表面24の座標xの像は、撮像素子13上の座標xiでx方向にδax(xi)だけ変位する。レンズ12の焦点距離をfとするとき、δgx(xi)およびδax(xi)は、それぞれ、以下の式2、式3で表される。
(式2)
(式3)
【0043】
光路長変換部11を介さない撮像素子13の視野において、表面24上におけるx方向の座標xと、撮像素子13上におけるx方向の座標xiとの関係は、以下の式4によって表される。
(式4)
【0044】
一方、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野において、虚像面26上におけるx方向の座標xと、撮像素子13上におけるx方向の座標xiとの関係は、以下の式5によって表される。
(式5)
【0045】
式2に示すδgx(xi)を、式5に示すxiで除算したものをMgx(xi)とし、式3に示すδax(xi)を、式4に示すxiで除算したものをMax(xi)とする。Mgx(xi)およびMax(xi)は、以下の式6、7で表される。
(式6)
(式7)
【0046】
光路長変化量dは、光路長変換部11の屈折率(>1)によって定まるので、既知の値である。
【0047】
構造物20の表面24、25に面内変位のない場合における全変位量は、投影面外変位(δgx(xi),δax(xi))と一致する。投影面外変位(δgx(xi),δax(xi))は、各フレームにおいてリアルタイムで算出することができるため、式6、式7で表されるMgx(xi)、Max(xi)も、各フレームにおいてリアルタイムで算出することができる。なお、構造物20の面外変位δが、表面24、25内において一定である場合、Mgx(xi)、Max(xi)は、xiによらず一定である。しかしながら、面外変位算出部4は、表面24、25内における面外変位δの差や、計測ノイズがある可能性を考慮して、Mgx(xi)、Max(xi)の平均値を求めてもよい。
【0048】
一例では、ある時刻における、Mgx(xi)、Max(xi)のそれぞれの平均値Mgx_avg、Max_avgが、Mgx_avg=0.001003、Max_avg=0.001001であるとする。これらの値を、Mgx(xi)、Max(xi)として、式6、式7にそれぞれ代入して、式6、式7をδ、Lについての連立方程式として解けば、δは約5mm(5.020015mm)、Lは約5000mm(5020.020015mm)と算出される。
【0049】
また、レンズ12から表面25までの距離(L−δ)は5015mmとなる。
【0050】
このように、レンズ12から表面24までの距離L、および、レンズ12から表面25までの距離(L−δ)のどちらも不明な場合であっても、面外変位算出部4は、式6および式7にしたがって、面外変位δを算出することができる。
【0051】
ここでは、x方向の投影面外変位から、面外変位を算出する方法について述べたが、レンズ12の光軸方向(z方向)およびx方向と直交するy方向についても、同様の方法で、投影面外変位から面外変位を算出することができる。あるいは、後述するように、(x,y)平面における投影面外変位ベクトルの大きさから、投影面外変位を求めた後、ここで説明した方法で、面外変位を算出することもできる。
【0052】
(撮像素子13の視野)
図4は、撮像素子13の視野を示す。より詳細には、
図4は、撮像素子13から、被検物10がどのように見えるかを示す。
図4において、符号V1は、光路長変換部11を介さない撮像素子13の視野を表す。符号V2は、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野を表す。
図4では、光路長変換部11は、撮像素子13の全視野のおおよそ半分を覆っている。しかしながら、光路長変換部11の形状および配置は特に限定されない。
【0053】
図4に示すように、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野V2では、光路長変換部11を介さない視野V1に比べて、被検物10が拡大されている。すなわち、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野V2では、
図3に示す光路長変化量dだけ、被検物10が撮像素子13に近付いているように見える。
【0054】
(面内変位がない場合)
図5aは、面内変位がない場合における、被検物10の表面内の全変位量を示す図である。面内変位が存在しない場合、全変位量は面外変位と一致する。
【0055】
図5aにおいて、図中の矢印は、全変位ベクトルを表す。全変位ベクトルは、撮像素子13から見た全変位量の大きさおよび方向を表すが、実際の画像上に存在するものではない。
図5aに示すように、光路長変換部11を介した撮像素子13の視野V2では、光路長変換部11を介さない視野V1に比べて、全変位ベクトルの大きさが拡大されている。
【0056】
図5bは、撮像素子13による測定値δgx(xi)、δax(xi)、およびxiの間の関係を表すグラフである。
図5bに示す座標系の原点は、撮像装置1の撮像中心に対応する。
図5bに示すグラフの傾きは、式6、式7に示すMgx(xi)(=δgx(xi)/xi)、Max(xi)(=δax(xi)/xi)に対応する。
図5bに示すグラフによれば、xiが大きくなるほど、δgx(xi)およびδax(xi)は、それぞれ大きくなる。言い換えれば、撮像中心から離れるほど、全変位ベクトルは大きくなる。
【0057】
(面内変位がある場合)
図6aは、面内変位がある場合における、被検物10の表面内の全変位量を示す図である。面内変位がある場合の全変位量は、投影面外変位と面内変位との総和である。
【0058】
図6aにおいて、細実線の矢印は、投影面外変位ベクトルδ(δxi,δyi)を表す。太実線の矢印は、面内変位ベクトルΔ(Δxi,Δyi)を表す。
【0059】
また、点線の矢印は、全変位ベクトルV(Vxi,Vyi)を表す。全変位ベクトルV(Vxi,Vyi)は、投影面外変位ベクトルδ(δxi,δyi)と面内変位ベクトルΔ(Δxi,Δyi)との合成ベクトルである。
【0060】
図6bは、面内変位がある場合における、撮像素子13による測定値δgx(xi)、δax(xi)、およびxiの間の関係を表す。比較のために、
図6bでは、面内変位がない場合における、測定値δgx(xi)、δax(xi)、およびxiの関係を実線で示している。
【0061】
光路長変換部11を介さない撮像素子13の視野において、投影面外変位ベクトルδ(δxi,δyi)の大きさを表す関数R(x,y)は、以下の式8で表される。
(式8)
【0062】
ここで、上述した式3に基づいて、以下の式を式8に代入した。
【0063】
式8によれば、値x,yが大きくなるほど、関数R(x,y)の値も大きくなる。このことは、投影面外変位が、撮像中心(x,y)=(0,0)から遠くなるほど、大きくなることを表している。式8において、係数の部分をkとおく。すなわち、kは、以下の式9によって規定される。
(式9)
【0064】
式9を用いると、式8は、以下の式10のように表される。
(式10)
【0065】
測定値である全変位ベクトルV(Vxi,Vyi)は、以下の式11のように表される。
(式11)
【0066】
また、全変位ベクトルV(Vxi,Vyi)の大きさRmes(x,y)は、以下の式12のように表される。
(式12)
【0067】
投影面外変位の拡大率R(x,y)が、面内変位ベクトルΔ(Δxi,Δyi)に対して十分に大きいとする。この場合、例えば、以下の式13に示す評価関数E(k)を最小にする比例定数kを算出することによって、式8に示す関数R(x,y)を推定することができる。
(式13)
【0068】
式13において、関数R(x,y,k)は、式10の右辺のkを変数とした関数である。他の例では、評価関数E(k)は、Rmes(x,y)と関数R(x,y)との絶対値和、または他の累乗和であってもよい。
【0069】
式13にしたがって、光路長変換部11を介さない撮像素子13の視野における比例定数ka(式9のkに対応)を算出することができる。こうして算出した比例定数kaをxiで除算したものは、
図5b、
図6bに図示した投影面外変位グラフの傾きMax(xi)の代表値Max_repに相当する。すなわち、代表値Max_repは、式4を用いると、式14の通りとなる。なお、同様の方法により、y方向についても、投影面外変位グラフの傾きの代表値を算出することができる。
(式14)
【0070】
また、光路長変換部11を介す撮像素子13の視野における比例定数kg(式9のkに対応)は、式8、式9におけるLをL´(=L−d)に置き換えることによって求められる。この場合、
図5b、
図6bに示す投影面外変位グラフの傾きMgx(xi)の代表値Mgx_repは、式5を用いると、以下の式15の通りとなる。
(式15)
こうして求められたMgx_rep、Max_repを、式6、式7のMgx(xi)、Max(xi)として、式6、式7のそれぞれに代入すると、以下の式16、17が得られる。
(式16)
(式17)
【0071】
式16、17を未知数δ、Lについて解けば、面外変位δ、および奥行距離Lが算出される。また、算出された面外変位δから、投影面外変位ベクトルδ(δxi,δyi)も算出される。なお、これらの演算は、面外変位算出部4によって行われる。
【0072】
面内変位算出部5は、全変位ベクトルV(Vxi,Vyi)から、面外変位算出部4が算出した投影面外変位ベクトルδ(δxi,δyi)を減算することによって、面内変位ベクトルΔ(Δxi,Δyi)を算出する。
【0073】
(変形例1;光路長変換部)
図7は、本実施形態に係わる光路長変換部11の一変形例に係わる光路長変換部11aを示す図である。
図7に示すように、光路長変換部11aは、複数のミラー51で構成されている。光路長変換部11aにおいては、被検物10からの光が、複数のミラー51の間で何度も反射した後、レンズ12に入射する。
【0074】
(変形例2;光路長変換部)
図8は、本実施形態に係わる光路長変換部11の他の変形例に係わる光路長変換部11bを示す図である。
図8に示すように、光路長変換部11bは、複数の部分111、112を含む。複数の部分111、112は、互いに異なる屈折率を有する。そのため、部分111を介した撮像素子13の視野と、部分112を介した撮像素子13の視野とでは、拡大率が異なるので、撮像素子13からの被検物10の見え方は、部分111と部分112との間で異なる。
【0075】
(動作フロー)
図9を参照して、変位量測定装置100の動作フローを説明する。
図9は、変位量測定装置100が実行する変位量測定方法の流れを示すフローチャートである。
【0076】
図9に示すように、まず、全変位量算出部3は、撮像装置1が被検物10の表面を撮像することによって得られた時系列画像を受信する(S1)。
【0077】
全変位量算出部3は、時系列画像に含まれる第m(=>1)枚目と第m+1枚目のフレーム画像の組を用いて、被検物10の表面内における全変位量を算出する(S2)。
【0078】
次に、面外変位算出部4は、上述した式8〜式13にしたがって、撮像素子13による測定値Vxi、Vyi(
図6aに示す全変位べクトルのxi,yi成分)から、奥行距離Lおよび面外変位δをそれぞれ算出する(S3)。
【0079】
面内変位算出部5は、全変位量算出部3が算出した全変位量から、面外変位算出部4が算出した面外変位から求められた投影面外変位を減算することによって、被検物10の表面内における面内変位を算出する(S4)。
【0080】
その後、全変位量算出部3は、時系列画像に含まれる所定のn(>1)枚のフレーム画像について、全変位量を算出したかどうかを判定する(S5)。所定のn枚のフレーム画像について、全変位量を算出していない場合(S5でNo)、フローは、ステップS1に戻り、全変位量算出部3は、時系列画像に含まれる次のフレーム画像の組、つまり、第m+1枚目と第m+2枚目のフレーム画像を用いて、全変位量を算出する。
【0081】
一方、全変位量算出部3が、所定のn枚のフレーム画像について、全変位量を算出した場合(S5でYes)、フローは終了する。
【0082】
(欠陥と変位量との関係)
図10〜
図14を参照して、荷重によって構造物20に生じる欠陥と、構造物20の表面内における変位量との関係を説明する。ここでいう変位量とは、面内変位のことである。撮像装置1が撮影する表面は、荷重がかかる表面に対して、反対側の表面であるとする。また、構造物20の両端は固定されているとする。
【0083】
(構造物20が健全である場合;欠陥なし)
図10は、構造物20が健全である場合に、荷重によって構造物20にどのような応力が生じるのかを示す。
図10に示すように、構造物20が健全である場合、構造物20の表面には、圧縮応力および引張応力が生じる。歪量とは、構造物20の変形の大きさおよび方向を表す値であり、面内変位の微分によって算出される。
【0084】
図10に示すように、荷重がかかる表面には、圧縮応力が生じる一方、撮像装置1が撮影する表面には、引張応力が生じる。その結果、撮像装置1が撮影する構造物20の表面には歪が生じる。歪は、歪量によって表されるが、歪量は、面内変位の微分量である。したがって、構造物20の表面に歪が生じたとき、表面内において、変形の大きさが変化している。
【0085】
このように、構造物20が健全である場合、構造物20の表面において、歪に伴って、面内変位の大きな変化が生じることが特徴である。
【0086】
(構造物20に欠陥がある場合)
(ケース1.ひび割れ)
図11は、撮像装置1が撮影する構造物20の表面にひび割れが存在する場合に、荷重によって構造物20に生じる応力および歪を示す。
図11に示すように、撮像装置1が撮影する表面において、ひび割れの近傍では、引張応力による歪および面内変位が存在する。しかしながら、ひび割れから離れた領域では、引張応力の伝達が弱まるため、歪量は小さくなり、面内変位は一定になることが特徴である。
【0087】
(ケース2.剥離)
図12は、撮像装置1が撮影する構造物20の表面に剥離が存在する場合に、荷重によって構造物20に生じる応力および歪を示す。
図12に示すように、撮像装置1が撮影する表面において、構造物20の表面が剥離している部分では、歪量はほとんど0に近いため、面内変位は一定である。しかし、構造物20の表面が剥離していない部分では、引張応力による面外変位および歪が生じるため、面内変位が変化する。
【0088】
このように、構造物20の表面に剥離が存在する場合、剥離の近傍とそれ以外とで、面内変位の変化に差があることが特徴である。また、剥離していない部分と剥離している部分との間で、面外変位に差が生じることも特徴である。
【0089】
(ケース3.内部空洞)
図13は、構造物20の内部に空洞が存在する場合に、荷重によって構造物20に生じる応力および歪を示す。
図13に示すように、内部空洞は、荷重による応力を分散させる働きをするので、撮像装置1が撮影する表面において、歪量は小さくなる。すなわち、構造物20にひび割れが存在する場合と同様に、構造物20の内部に空洞が存在する場合も、撮像装置1が撮影する表面において、面内変位はほとんど一定である。
【0090】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、構造物と撮像素子との間に、撮像素子の視野の一部を覆うように、光路長変換部が配置される。光路長変換部を介した撮像素子の視野の一部において、被検物から撮像素子までの間の光路長が長くなる。すなわち、撮像素子は、一度に2つの異なる光路長から、構造物の表面を撮像することができる。
【0091】
信号処理部は、光路長変換部に覆われていない撮像素子の視野と、光路長変換部に覆われた撮像素子の視野とにおいて、構造物の面外変位および奥行距離を算出する。信号処理部は、構造物の表面内における全変位量から、投影面外変位を減算することによって、面内変位を算出する。信号処理部は、このように算出した面内変位、面外変位、および奥行距離の情報を出力する。例えば、ユーザは、出力されたこれらの情報に基づいて、構造物の欠陥の有無および欠陥の種類を判断する。したがって、構造物の欠陥を非接触で精度良く検出することができる。
【0092】
加えて、本実施形態の構成では、ただ1つの撮像部のみを用いるので、構造物の撮影にかかるコストを削減することができる。
【0093】
〔第二の実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下で説明する。本実施形態では、変位量および奥行距離を算出した後、欠陥の有無及び欠陥の種類を判定する構成を説明する。
【0094】
(変位量測定装置200)
図14は、本実施形態に係わる変位量測定装置200の構成を示すブロック図である。変位量測定装置200は、撮像装置1を用いて、構造物20の表面の時系列画像を撮像し、時系列画像から構造物20の各部分の変位を算出するとともに、撮像装置1から構造物20までの距離も算出する。
【0095】
例えば、構造物20が、荷重によって、
図10〜
図13に示すような変形をしたとする。この場合、変位量測定装置200は、変形前後の時系列画像から、奥行距離、面外変位、および、面内変位を測定する。状態判定部73は、変位量測定装置200から、奥行距離、面外変位、および、面内変位に係わるデータを取得し、取得したデータを用いて、構造物20の状態を診断する。
【0096】
具体的には、状態判定部73は、奥行距離および変位量と、構造物20の劣化の状態との間の対応関係を示す情報を取得する。例えば、状態判定部73は、欠陥を判定するための閾値の情報、または、欠陥の種類に対応する特徴的な変位および歪のパターン(
図11〜
図13)を示す情報を取得してもよい。状態判定部73は、取得したこれらの情報に基づいて、構造物20のひび割れや剥離や内部空洞といった欠陥の有無、および欠陥の種類を判定する。
【0097】
(動作フロー)
図15は、本実施形態に係わる変位量測定装置200による状態判定方法を示すフローチャートである。
図15において、ステップS1からステップS6までは、
図9のフローチャートに示す変位量測定方法と同様である。なお、本実施形態では、ステップS1からステップS6までの説明を省略する。
【0098】
図15に示すように、ステップS6の後、状態判定部73は、構造物20の状態を診断する(S7)。
【0099】
上述したステップS7の後、状態判定部73は、構造物20の状態の診断結果を、表示装置などの外部機器へ出力してもよい。これにより、ユーザは、出力された診断結果を見て、例えば、構造物20の修理または精密調査の要否を判断することができる。
【0100】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、構造物の表面内における変位量および奥行距離を一度に算出する。そして、算出した変位量および奥行距離に基づいて、構造物の欠陥の有無、および欠陥の種類を判定する。そのため、構造物の遠隔から非接触で、構造物の状態を診断することができる。
【0101】
〔第三の実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下で説明する。本実施形態では、構造物に瞬間的な荷重(本実施形態では撃力と呼ぶ)を与えた場合の、構造物の応答について説明する。
【0102】
本実施形態に係わる変位量測定装置の構成は、前記第二の実施形態に係わる変位量測定装置200と同じ(
図14)である。
【0103】
(応答)
図16は、構造物20の表面に対し、極短時間の撃力を与えた場合(インパルス刺激という)の応答(インパルス応答という)を示すグラフである。インパルス応答とは、インパルス刺激に対する、構造物20の変位および歪の時間変化のことである。
【0104】
図16のグラフAは、構造物20が健全な状態である場合のインパルス応答を示す。グラフAが示すように、構造物20が健全な状態である場合、構造物20内で、応力が素早く伝達されるため、変位は大きくかつ収束が速い。
【0105】
図16のグラフB、Cは、それぞれ、構造物20が劣化した状態である場合のインパルス応答を示す。ここでいう劣化とは、例えば、ひび割れ、剥離、または内部空洞(
図11〜
図13)などである。グラフB、Cが示すように、構造物20が劣化した状態である場合、構造物20が健全な状態である場合よりも、変位が小さくかつ収束が遅い。
【0106】
本実施形態において、変位量測定装置の状態判定部73(
図14)は、閾値またはパターンマッチングなど、前記第二の実施形態において説明した手段を用いて、あるいは、上述したインパルス応答の特徴的なパターンに基づいて、構造物20が健全な状態であるか、あるいはひび割れや剥離や内部空洞といった欠陥を有するかどうかを判定する。
【0107】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、インパルス応答が示す構造物の特性を利用して、構造物の状態を判定する。したがって、構造物が欠陥を有するかどうかを、より正確に判定することができる。
【0108】
〔第四の実施形態〕
本発明の他の実施形態について、以下で説明する。本実施形態では、課題を解決するための必須構成について説明する。
【0109】
(変位量測定装置300)
図17は、本実施形態に係わる変位量測定装置300の構成を示すブロック図である。
図17に示すように、変位量測定装置300は、撮像素子310、光路長変換部320、画像解析部330、および面外変位算出部340を備えている。
【0110】
撮像素子310は、被検物の表面を撮像する。
【0111】
光路長変換部320は、被検物と撮像素子310との間に、撮像素子310の視野の一部を覆うように配置されている。光路長変換部11は、光路長変換手段の一例である。
【0112】
画像解析部330は、撮像素子310が撮影した画像を用いて、光路長変換部320に覆われていない撮像素子310の視野で得られた、被検物の表面内における第一の変位量と、光路長変換部320に覆われた撮像素子310の視野で得られた、被検物の表面内における第二の変位量とを算出する。画像解析部330は、画像解析手段の一例である。
【0113】
面外変位算出部340は、第一の変位量および第二の変位量に基づいて、被検物から撮像素子310までの距離、および、被検物の面外変位を算出する。面外変位算出部340は、面外変位算出手段の一例である。
【0114】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、被検物と撮像素子との間に、撮像部の視野の一部を覆うように、光路長変換部が配置される。そのため、撮像部の撮像素子は、一度に2つの異なる光路長から、被検物を撮像することができる。このように撮像素子が撮像することによって得られた画像から、被検物の表面内における変位量および奥行距離を一度に算出することができる。これにより、構造物の欠陥を非接触で精度良く検出することができる。
【0115】
〔第五の実施形態〕
本開示の各実施形態において、各装置の各構成要素は、機能単位のブロックを示している。各装置の各構成要素の一部又は全部は、例えば
図18に示すような情報処理装置900とプログラムとの任意の組み合わせにより実現される。
図18は、各装置の各構成要素を実現する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0116】
(ハードウェア構成について)
図18に示すように、情報処理装置900は、一例として、以下のような構成を含む。
【0117】
・CPU(Central Processing Unit)901
・ROM(Read Only Memory)902
・RAM(Random Access Memory)903
・RAM903にロードされるプログラム904
・プログラム904を格納する記憶装置905
・記録媒体906の読み書きを行うドライブ装置907
・通信ネットワーク909と接続する通信インタフェース908
・データの入出力を行う入出力インタフェース910
・各構成要素を接続するバス911
各実施形態における各装置の各構成要素は、これらの機能を実現するプログラム904をCPU901が取得して実行することで実現される。各装置の各構成要素の機能を実現するプログラム904は、例えば、予め記憶装置905やROM902に格納されており、必要に応じてCPU901がRAM903にロードして実行される。なお、プログラム904は、通信ネットワーク909を介してCPU901に供給されてもよいし、予め記録媒体906に格納されており、ドライブ装置907が当該プログラムを読み出してCPU901に供給してもよい。
【0118】
(本実施形態の効果)
本実施形態の構成によれば、前記のいずれかの実施形態において説明した装置が、ハードウェアとして実現される。したがって、前記のいずれかの実施形態において説明した効果と同様の効果を、ハードウェア資源を用いて達成することができる。
【0119】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。上記実施形態(及び実施例)の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2018年6月5日に出願された日本出願特願2018−107913を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。