特許第6984749号(P6984749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984749
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20211213BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20211213BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20211213BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   H01L29/78 652D
   H01L29/78 652C
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 655A
   H01L29/78 655G
   H01L29/78 657D
   H01L29/78 657A
   H01L29/78 657F
   H01L29/78 658A
【請求項の数】12
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2020-525328(P2020-525328)
(86)(22)【出願日】2019年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2019018048
(87)【国際公開番号】WO2019244485
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2020年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2018-118793(P2018-118793)
(32)【優先日】2018年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】今川 鉄太郎
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/056233(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/105729(WO,A1)
【文献】 特開2017−168829(JP,A)
【文献】 特開2016−134387(JP,A)
【文献】 特開2013−084904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ前記半導体基板の上面において予め定められた延伸方向に延伸する複数のトレンチ部と、隣り合う2つの前記トレンチ部の間において前記半導体基板の深さ方向に第2導電型のドーパントを第1の深さおよび第1の注入量で注入して形成される第2導電型のコンタクト領域と、隣り合う2つの前記トレンチ部の間において前記延伸方向に前記コンタクト領域と並んで配置され前記半導体基板の上面に露出する第1導電型のエミッタ領域と、によって、前記延伸方向における長さが隣り合う2つの前記トレンチ部の間の幅以下であって、且つ、前記延伸方向における前記エミッタ領域の長さが前記コンタクト領域の長さよりも大きいセルを形成し、
前記セルの上方に、前記延伸方向におけるコンタクト領域の長さよりも前記トレンチ部の間の開口幅が小さいコンタクトホールを形成し、
前記半導体基板の深さ方向に第2導電型のドーパントを前記第1の深さよりも浅い第2の深さおよび前記第1の注入量以上の第2の注入量で注入して、少なくとも一部が前記コンタクトホールの下方に設けられ、少なくとも一部が前記半導体基板の上面において前記コンタクト領域に前記延伸方向と垂直な配列方向に挟まれるように設けられ、少なくとも一部が上面視で前記コンタクト領域と重なって配置される第2導電型のプラグ領域を形成する
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記延伸方向における前記セルの長さが3.2μm以下となるように前記セルを形成する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記トレンチ部の間の前記コンタクトホールの開口幅が1.0μm以下となるように前記コンタクトホールを形成する
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記トレンチ部の間の前記コンタクトホールの開口幅が、前記トレンチ部の幅よりも小さくなるように、前記コンタクトホールおよび前記トレンチ部を形成する
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記トレンチ部の間の前記コンタクトホールの開口幅が、前記第2の深さよりも大きくなるように、前記コンタクトホールを形成する
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記トレンチ部の間の前記コンタクトホールの開口幅が、前記トレンチ部の間の前記プラグ領域の幅よりも小さくなるように、前記コンタクトホールおよび前記プラグ領域を形成する
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板の深さ方向における前記プラグ領域のドーピング濃度のピーク位置が、前記半導体基板の上面から前記コンタクト領域のドーピング濃度のピーク位置までの深さの1/2よりも浅くなるように、前記プラグ領域および前記コンタクト領域を形成する
請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記延伸方向において前記コンタクト領域の端部とマスクとを重畳させて前記ドーパントを注入することで、前記プラグ領域を形成し、
前記コンタクト領域の端部と前記マスクとが重畳する長さが、前記トレンチ部の間の前記コンタクトホールの開口幅よりも小さくなるように、前記コンタクトホールを形成する
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記コンタクト領域を、第1の温度で第1の時間アニールし、
前記プラグ領域を、前記第1の温度よりも低い第2の温度で第1の時間より短い第2の時間アニールする
請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記半導体基板に、前記第1の深さおよび前記第1の注入量で前記第2導電型のドーパントを注入せず、且つ、前記第2の深さおよび前記第2の注入量で前記第2導電型のドーパントを注入して形成された前記プラグ領域を含むダイオード部を更に形成する
請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体基板に、前記セルを含むメイン半導体素子部を形成すると共に、前記セルと同じ工程で電流検出セルを形成しセンス半導体素子部を形成する
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板と、
前記半導体基板の上面から前記半導体基板の内部まで設けられ、前記半導体基板の上面において予め定められた延伸方向に延伸して設けられたトレンチ部と、
前記半導体基板の内部において、前記トレンチ部よりも浅く設けられた第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板の内部において、前記ベース領域の上方に設けられた第2導電型のコンタクト領域と、
前記半導体基板の内部において、前記コンタクト領域と並んで前記ベース領域の上方に設けられたエミッタ領域と、
前記半導体基板の内部に前記コンタクト領域の深さよりも浅く設けられ、前記コンタクト領域よりもドーピング濃度が高い第2導電型のプラグ領域と、
前記コンタクト領域および前記エミッタ領域の上方に設けられ、前記トレンチ部の間の開口幅が前記延伸方向における前記コンタクト領域の長さよりも小さいコンタクトホールと、
を備え、
前記コンタクト領域と前記エミッタ領域とで形成される延伸方向におけるセルの長さが、隣り合う2つの前記トレンチ部の間の幅以下であって、且つ、前記延伸方向における前記エミッタ領域の長さが前記コンタクト領域の長さよりも大きく、
前記プラグ領域のドーピング濃度を前記半導体基板の深さ方向に積分した第1積分濃度が、前記コンタクト領域のドーピング濃度を前記半導体基板の深さ方向に積分した第2積分濃度以上であり、
前記プラグ領域の少なくとも一部は、前記コンタクトホールの下方に設けられて、
前記プラグ領域の少なくとも一部は、前記半導体基板の上面において前記コンタクト領域に前記延伸方向と垂直な配列方向に挟まれるように設けられ、
前記プラグ領域の少なくとも一部は、上面視で前記コンタクト領域と重なって配置される
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1、2および3参照)。このような半導体装置においては、小型化および微細化が求められている。
特許文献1 特開2017−168829号公報
特許文献2 特開2016−33993号公報
特許文献3 特開2013−187440号公報
【解決しようとする課題】
【0003】
したがって、半導体装置においては、小型化および微細化を達しつつもRBSOA(Reverse Bias Safe Operating Area)耐量の低下を防ぐことが好ましい。
【一般的開示】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。複数のトレンチ部と、第2導電型のコンタクト領域と、第1導電型のエミッタ領域と、によって、セルを形成してよい。複数のトレンチ部は、半導体基板の上面から半導体基板の内部まで設けられ半導体基板の上面において予め定められた延伸方向に延伸してよい。第2導電型のコンタクト領域は、隣り合う2つのトレンチ部の間において半導体基板の深さ方向に第2導電型のドーパントを第1の深さおよび第1の注入量で注入して形成されてよい。第1導電型のエミッタ領域は、隣り合う2つのトレンチ部の間において延伸方向にコンタクト領域と並んで配置され半導体基板の上面に露出してよい。セルは、上記の延伸方向における長さが隣り合う2つのトレンチ部の間の幅以下であって、且つ、延伸方向におけるエミッタ領域の長さがコンタクト領域の長さよりも大きくてよい。セルの上方に、上記の延伸方向におけるコンタクト領域の長さよりもトレンチ部の間の開口幅が小さいコンタクトホールを形成してよい。半導体装置の製造方法において、半導体基板の深さ方向に第2導電型のドーパントを第1の深さよりも浅い第2の深さおよび第1の注入量以上の第2の注入量で注入して、少なくとも一部がコンタクトホールの下方に設けられ、少なくとも一部が半導体基板の上面においてコンタクト領域に延伸方向と垂直な配列方向に挟まれるように設けられ、少なくとも一部が上面視でコンタクト領域と重なって配置される第2導電型のプラグ領域を形成してよい。
【0005】
延伸方向におけるセルの長さが3.2μm以下となるようにセルを形成してよい。
【0006】
トレンチ部の間のコンタクトホールの開口幅が1.0μm以下となるようにコンタクトホールを形成してよい。
【0007】
トレンチ部の間のコンタクトホールの開口幅が、トレンチ部の幅よりも小さくなるように、コンタクトホールおよびトレンチ部を形成してよい。
【0008】
トレンチ部の間のコンタクトホールの開口幅が、第2の深さよりも大きくなるように、コンタクトホールを形成してよい。
【0009】
トレンチ部の間のコンタクトホールの開口幅が、トレンチ部の間のプラグ領域の幅よりも小さくなるように、コンタクトホールおよびプラグ領域を形成してよい。
【0010】
半導体基板の深さ方向におけるプラグ領域のドーピング濃度のピーク位置が、半導体基板の上面からコンタクト領域のドーピング濃度のピーク位置までの深さの1/2よりも浅くなるように、プラグ領域およびコンタクト領域を形成してよい。
【0011】
延伸方向においてコンタクト領域の端部とマスクとを重畳させてドーパントを注入することで、プラグ領域を形成してよい。コンタクト領域の端部とマスクとが重畳する長さが、トレンチ部の間のコンタクトホールの開口幅よりも小さくなるように、コンタクトホールを形成してよい。
【0012】
コンタクト領域を、第1の温度で第1の時間アニールしてよい。プラグ領域を、第1の温度よりも低い第2の温度で第1の時間より短い第2の時間アニールしてよい。
【0013】
半導体基板に、第1の深さおよび第1の注入量で第2導電型のドーパントを注入せず、且つ、第2の深さおよび第2の注入量で第2導電型のドーパントを注入して形成されたプラグ領域を含むダイオード部を更に形成してよい。
【0014】
半導体基板に、セルを含むメイン半導体素子部を形成すると共に、セルと同じ工程で電流検出セルを形成しセンス半導体素子部を形成してよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、半導体基板と、トレンチ部と、第2導電型のベース領域と、第2導電型のコンタクト領域と、エミッタ領域と、第2導電型のプラグ領域と、コンタクトホールとを備えてよい。トレンチ部は、半導体基板の上面から半導体基板の内部まで設けられてよい。トレンチ部は、半導体基板の上面において予め定められた延伸方向に延伸して設けられてよい。第2導電型のベース領域は、半導体基板の内部において、トレンチ部よりも浅く設けられてよい。第2導電型のコンタクト領域は、半導体基板の内部において、ベース領域の上方に設けられてよい。エミッタ領域は、半導体基板の内部において、コンタクト領域と並んでベース領域の上方に設けられてよい。第2導電型のプラグ領域は、半導体基板の内部にコンタクト領域の深さよりも浅く設けられてよい。第2導電型のプラグ領域は、コンタクト領域よりもドーピング濃度が高くてよい。コンタクトホールは、コンタクト領域およびエミッタ領域の上方に設けられてよい。コンタクトホールは、トレンチ部の間の開口幅が上記の延伸方向におけるコンタクト領域の長さよりも小さくてよい。コンタクト領域とエミッタ領域とで形成される延伸方向におけるセルの長さが、隣り合う2つのトレンチ部の間の幅以下であって、且つ、延伸方向におけるエミッタ領域の長さがコンタクト領域の長さよりも大きくてよい。プラグ領域のドーピング濃度を半導体基板の深さ方向に積分した第1積分濃度が、コンタクト領域のドーピング濃度を半導体基板の深さ方向に積分した第2積分濃度以上であってよい。プラグ領域の少なくとも一部は、コンタクトホールの下方に設けられてよい。プラグ領域の少なくとも一部は、半導体基板の上面においてコンタクト領域に延伸方向と垂直な配列方向に挟まれるように設けられてよい。プラグ領域の少なくとも一部は、上面視でコンタクト領域と重なって配置されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を部分的に示す図である。
図2図1における領域Aの拡大図である。
図3図2におけるa−a'断面の一例を示す図である。
図4図2におけるb−b'断面の一例を示す図である。
図5】比較例の半導体装置150の上面を示す図である。
図6図5におけるi−i'断面を示す図である。
図7図5におけるj−j'断面を示す図である。
図8図3におけるc−c'断面に沿ったドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図9】本例の半導体装置100および比較例の半導体装置150のRBSOA破壊直前電流値を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。
図11図10における領域Cの拡大図である。
図12図11におけるe−e'断面の一例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。
図14図13における領域Dの拡大図である。
図15図14におけるf−f'断面の一例を示す図である。
図16図14におけるg−g'断面の一例を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係る半導体装置200の上面の一例を部分的に示す図である。
図18図17における領域Eの拡大図である。
図19図18におけるm−m'断面の一例を示す図である。
図20】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置300の上面の構造を示す図である。
図21図20におけるセンス半導体素子部119近傍の拡大図である。
図22】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の一例を示す図である。
図23】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す図である。
図24図22におけるステップS1022において、ドーパント注入時に用いるマスクの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は重力方向、または、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0019】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。
【0020】
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。また、本明細書においてP+型(またはN+型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P−型(またはN−型)と記載した場合、P型(またはN型)よりもドーピング濃度が低いことを意味する。
【0021】
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化したドーパントの濃度を指す。したがって、その単位は、/cmである。本明細書において、ドナーおよびアクセプタの濃度差(すなわちネットドーピング濃度)をドーピング濃度とする場合がある。この場合、ドーピング濃度はSR法(Spreading Resistance法)で測定できる。また、ドナーおよびアクセプタの化学濃度をドーピング濃度としてもよい。この場合、ドーピング濃度はSIMS法(二次イオン質量分析法)で測定できる。特に限定していなければ、ドーピング濃度として、上記のいずれを用いてもよい。特に限定していなければ、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度としてよい。
【0022】
また、本明細書においてドーズ量とは、イオン注入を行う際に、ウェーハに注入される単位面積あたりのイオンの個数をいう。したがって、その単位は、/cmである。なお、半導体領域のドーズ量は、その半導体領域の深さ方向にわたってドーピング濃度を積分した積分濃度とすることができる。その積分濃度の単位は、/cmである。したがって、ドーズ量と積分濃度とを同じものとして扱ってよい。積分濃度は、半値幅までの積分値としてもよく、他の半導体領域のスペクトルと重なる場合には、他の半導体領域の影響を除いて導出してよい。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の一例を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等のトランジスタを有する半導体チップである。図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0024】
図1は、半導体装置100における半導体基板の活性領域を示している。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に、半導体基板の上面および下面の間で電流が流れる領域を指す。例えば、活性領域は、図1に示したゲート金属層50に囲まれた領域である。
【0025】
半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してもよい。例えばエッジ終端構造部は、図1に示したゲート金属層50よりも、半導体基板の端部側に設けられている。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えば、ガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0026】
本例の半導体装置100は、半導体基板の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート金属層50を備える。エミッタ電極52およびゲート金属層50は互いに分離して設けられる。
【0027】
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。図1においては、それぞれのコンタクトホールに斜線のハッチングを付している。
【0028】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部25が設けられてよい。接続部25は、半導体基板の上面に設けられる。接続部25と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が設けられる。
【0029】
ゲート金属層50は、半導体装置100にゲート電圧を印加する。ゲート金属層50は、半導体基板の上面の上方に設けられたゲートパッドに接続されてよい。ゲートパッドは、ワイヤー等により外部の装置と接続される。ゲート金属層50は、上面視において、活性領域を囲むように設けられてよい。一例として、ゲート金属層50は、上面視において半導体基板の外周に沿って環状に設けられている。
【0030】
ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と接触する。ゲートランナー48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲートランナー48と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が設けられる。ゲートランナー48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲートランナー48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲートランナー48は、コンタクトホール49と重なる位置から、ゲートトレンチ部40の先端部41と重なる位置まで設けられる。先端部41は、ゲートトレンチ部40において、最もゲート金属層50に近い端部である。ゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲート導電部が半導体基板の上面に露出しており、ゲートランナー48と接触する。
【0031】
エミッタ電極52およびゲート金属層50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0032】
ウェル領域11は、ゲート金属層50およびゲートランナー48と重なって設けられている。ウェル領域11は、ゲート金属層50およびゲートランナー48と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、ゲート金属層50側に離れて設けられている。ウェル領域11は、第2導電型の領域である。本例のウェル領域11は、P+型である。
【0033】
半導体装置100は、X軸方向に複数配列されたトレンチ部を有する。以下、本明細書において、配列方向とはX軸方向を指す。本例の半導体装置100には、X軸方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが設けられている。
【0034】
本例のゲートトレンチ部40は、トレンチ部の配列方向(X軸方向)と垂直な延伸方向(Y軸方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの延伸部分39を接続する先端部41を有してよい。以下、本明細書において、延伸方向とはY軸方向を指す。また、本例のダミートレンチ部30は、当該延伸方向に沿って延伸する2つの延伸部分29と、2つの延伸部分29を接続する先端部31を有してよい。
【0035】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの延伸部分39のY軸方向における端部同士を先端部41が接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和することができる。
【0036】
本例において、ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39の間に設けられる。本例において、それぞれの延伸部分39の間には、2本のダミートレンチ部30が設けられるが、1本のダミートレンチ部30が設けられてもよい。
【0037】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和することができる。
【0038】
配列方向において、各トレンチ部の間にはメサ部60が設けられている。メサ部60は、半導体基板の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。メサ部60の上端は、半導体基板の上面であってよい。メサ部60の下端の深さ位置は、各トレンチ部の下端の深さ位置と同一であってよい。本例のメサ部60は、半導体基板の上面において、各トレンチ部に沿って延伸方向に延伸して設けられている。
【0039】
それぞれのメサ部60には、トレンチ部よりも浅い第2導電型のベース領域14が設けられる。本例のベース領域14はP−型である。ベース領域14は、延伸方向にウェル領域11と並んで、半導体基板の上面に露出して設けられる。図1においては、それぞれのメサ部60における一方の端部に配置されたベース領域14を示しているが、それぞれのメサ部60の他方の端部にも、ベース領域14が配置されている。ベース領域14は、2つのトレンチ部にX軸方向に挟まれ、且つ、2つのトレンチ部に接して設けられる。
【0040】
それぞれのメサ部60には、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15が設けられる。本例では、IGBT素子のセル13がエミッタ領域12とコンタクト領域15とにより形成される。IGBT素子のセル13とは、IGBT素子の基本構造であって、この基本構造が多数配置されることで、半導体装置100全体が構成される。本例のエミッタ領域12は、N+型である。本例のコンタクト領域15は、P+型である。エミッタ領域12のドーパントは、例えば、ヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)などである。
【0041】
エミッタ領域12およびコンタクト領域15の下方には、ベース領域14が設けられる。エミッタ領域12およびコンタクト領域15の下方に設けられるベース領域14は、延伸方向にウェル領域11と並んで配置されたベース領域14と、半導体基板の内部においてつながっている。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、半導体基板の深さ方向において、ベース領域14と半導体基板の上面との間に設けられてよい。
【0042】
エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30に接してよく、接しなくてもよい。本例のエミッタ領域12およびコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30に接して設けられる。
【0043】
エミッタ領域12は、半導体基板の上面において、延伸方向にコンタクト領域15と並んで設けられる。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、延伸方向に交互に並んで設けられてよい。即ち、延伸方向において、エミッタ領域12は2つのコンタクト領域15に挟まれ、コンタクト領域15は2つのエミッタ領域12に挟まれてよい。
【0044】
コンタクトホール54は、メサ部60の上方に設けられる。また、エミッタ領域12は、コンタクトホール54の下方にも設けられる。本例のエミッタ領域12は、2本のトレンチ部のそれぞれに接し、当該2本のトレンチ部の一方から他方まで設けられる。
【0045】
コンタクトホール54の下方、且つ、半導体基板の上面においてコンタクト領域15に配列方向に挟まれる領域には、第2導電型のプラグ領域17が設けられる。図1において、プラグ領域17が設けられる領域を破線部にて示している。本例のプラグ領域17は、P++型である。すなわち、プラグ領域17のドーピング濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度よりも高い(図8参照)。とりわけ、本例のプラグ領域17のドーズ量すなわち第2導電型のドーパントの注入量は、コンタクト領域15のドーズ量以上である。すなわち、プラグ領域17のドーピング濃度を半導体基板の深さ方向に積分した第1積分濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度を半導体基板の深さ方向に積分した第2積分濃度以上である。
【0046】
プラグ領域17は、半導体基板の上面に接して設けられる。プラグ領域17の下方には、コンタクト領域15が設けられる。すなわち、プラグ領域17は、コンタクト領域15の深さよりも浅く設けられる。プラグ領域の下方に設けられるコンタクト領域15は、上面視でプラグ領域17を挟んで設けられる2つのコンタクト領域15と、半導体基板の内部においてつながっている。
【0047】
エミッタ領域12、コンタクト領域15およびプラグ領域17の下方には、第1導電型の蓄積領域16が設けられてよい。本例の蓄積領域16は、ドリフト領域よりも不純物濃度が高く、N型である。蓄積領域16は、それぞれのトレンチ部の下端よりも上方に配置されてよい。図1において、蓄積領域16が設けられる範囲を一点鎖線部および矢印にて示している。蓄積領域16のY軸方向の端部は、半導体基板の上面においてエミッタ領域12とベース領域14に挟まれて設けられるコンタクト領域15の下方に配置されてよい。蓄積領域16を設けることで、キャリアの注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0048】
図2は、図1における領域Aの拡大図である。図2に示す通り、本例の半導体装置100は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15がゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30に接して設けられる。また、コンタクトホール54の下方、且つ、半導体基板の上面においてコンタクト領域15に配列方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられる。
【0049】
X軸方向において、ゲートトレンチ部40のX軸正側の端部位置を、位置S1とする。X軸方向において、当該ゲートトレンチ部40のX軸正側に隣り合って配置されたダミートレンチ部30のX軸負側の端部位置を、位置S2とする。当該ゲートトレンチ部40および当該ダミートレンチ部30に挟まれたメサ部60において、コンタクトホール54のX軸負側およびX軸正側の端部位置を、それぞれ位置S3および位置S4とする。
【0050】
幅Wmは、位置S1と位置S2との間のX軸方向における幅、即ちメサ部60の幅である。幅Wttは、配列方向(X軸方向)において隣り合う2つのトレンチ部の間の幅である。幅Wtは、ゲートトレンチ部40のX軸方向の幅、且つ、ダミートレンチ部30のX軸方向の幅である。幅Wtpは、X軸方向に隣り合って設けられる2つのトレンチ部のトレンチピッチである。幅Wtcは、位置S1と位置S3との間のX軸方向における幅である。幅Wtc'は、位置S4と位置S2との間のX軸方向における幅である。幅Wchは、位置S3と位置S4との間のX軸方向における幅、即ちコンタクトホール54の開口幅である。なお、幅Wtcは、幅Wtc'と等しくてよい。
【0051】
幅Wchは、幅Wtcおよび幅Wtc'と等しくてよい。幅Wmは、幅Wchの1.2倍以上3倍以下であってよい。また、幅Wmは、幅Wtcの1.4倍以上3倍以下であってよい。幅Wtは、幅Wchの1.5倍以上3倍以下であってよい。幅Wtは、幅Wtcの1.5倍以上3倍以下であってよい。幅Wtpは、幅Wmの1.3倍以上2.5倍以下であってよい。幅Wchは、幅Wtcおよび幅Wtc'と異なっていてもよい。幅Wtcおよび幅Wtc'は、幅Wchの0.5倍以上2倍以下であってよい。
【0052】
幅Wttは、4μm以下、好ましくは3.2μm以下であってよい。幅Wchは、0.2μm以上0.9μm以下であってよい。幅Wchは、本例では1.0μm以下であってよい。幅Wtは、0.5μm以上1.2μm以下であってよい。幅Wtcおよび幅Wtc'は、0.2μm以上0.9μm以下であってよい。幅Wtpは、2.0μm以上2.8μm以下であってよい。また、幅Wchは、幅Wtcおよび幅Wtc'より小さくてもよい。幅Wch、幅Wtcおよび幅Wtc'は、幅Wtより小さくてもよい。
【0053】
Y軸方向において、上面視におけるコンタクト領域15のY軸正側の端部位置を、位置U1とする。Y軸方向において、上面視における当該コンタクト領域15のY軸負側の端部位置、且つ、当該コンタクト領域15とY軸負側に隣り合って設けられたエミッタ領域12のY軸正側の端部位置を、位置U2とする。Y軸方向において、当該エミッタ領域12のY軸負側の端部位置を、位置U3とする。
【0054】
Y軸方向に隣り合って設けられる1つのコンタクト領域15および1つのエミッタ領域12を、セル13とする。長さWuは、Y軸方向におけるセル13のピッチである。長さWuは、長さWeと長さWcとの和に等しい。長さWeは、エミッタ領域12のY軸方向における長さである。長さWcは、上面視におけるコンタクト領域15のY軸方向における長さである。本例において、長さWcは長さWeよりも小さい。長さWcは、長さWeの0.6倍以上0.9倍以下であってよい。長さWeは、1.2μm以上2.1μm以下であってよい。長さWcは、0.9μm以上1.4μm以下であってよい。
【0055】
本例では、セル13の長さWuを幅Wtt以下にする。また、コンタクト領域15の長さWcよりもコンタクトホール54の開口幅である幅Wchを小さくする。これにより、セル13が上面視でY軸方向に長い矩形ではなくなるので、Y軸方向におけるセル13の密度を向上させることができる。さらに、セル13は、長さWcよりも長さWeが大きいので、小型化および微細化を達しつつも総エミッタ長さ(Y軸方向においてエミッタ領域12がトレンチ部と接触する長さ)を確保することができる。しかし、このような配置とした場合には、RBSOA耐量が低下するおそれがある。そこで、本例のプラグ領域17を半導体装置100に採用する。
【0056】
また、本例では、コンタクトホール54の開口幅である幅Wchは、トレンチ部の幅Wtよりも小さい。これにより、好適に小型化および微細化を図ることができる。
【0057】
上面視で、プラグ領域17の少なくとも一部は、コンタクト領域15と重なって配置される。即ち、上面視で、プラグ領域17の下方にはコンタクト領域15が設けられ、当該プラグ領域17の少なくとも一部は、当該コンタクト領域15と重なる。本例においては、上面視でプラグ領域17の全体が、コンタクト領域15と重なって配置される。
【0058】
X軸方向において、プラグ領域17のX軸負側およびX軸正側の端部位置を、それぞれ位置T1および位置T2とする。幅Wpxは、位置T1と位置T2との間のX軸方向における幅である。本例においては、位置T1は位置S3と等しく、位置T2は位置S4と等しい。即ち、本例において幅Wpxは幅Wchと等しい。
【0059】
Y軸方向において、プラグ領域17のY軸正側およびY軸負側の端部位置を、それぞれ位置V1および位置V2とする。本例において、長さWpyは位置V1と位置V2との間のY軸方向における長さである。本例においては、位置V1は位置U1と等しく、位置V2は位置U2と等しい。即ち、本例において長さWpyは長さWcと等しい。
【0060】
図3は、図2におけるa−a'断面の一例を示す図である。a−a'断面は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、コンタクト領域15およびプラグ領域17を通るXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面21に設けられている。層間絶縁膜38は、ボロンまたはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜である。層間絶縁膜38は上面21に接していてよく、層間絶縁膜38と上面21との間に酸化膜等の他の膜が設けられていてもよい。層間絶縁膜38には、図1において説明したコンタクトホール54、コンタクトホール49およびコンタクトホール56が設けられている。図3においては、コンタクトホール54を示している。
【0061】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、上面21と電気的に接触する。コンタクトホール54の内部には、タングステン(W)等のコンタクトプラグが設けられてもよい。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で設けられる。
【0062】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。
【0063】
半導体基板10は、第1導電型のドリフト領域18を備える。本例のドリフト領域18は、N−型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が設けられずに残存した領域であってよい。
【0064】
ドリフト領域18の上方には、一つ以上の蓄積領域16が設けられてよい。図3に示す半導体装置100は、一例として蓄積領域16がZ軸方向に一つ設けられる。蓄積領域16が複数設けられる場合は、それぞれの蓄積領域16はZ軸方向に並んで配置されてよい。蓄積領域16は、各トレンチ部の下端よりも上方に設けられてよい。蓄積領域16のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。蓄積領域16を設けることで、キャリアの注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0065】
蓄積領域16の上方には、ベース領域14が設けられる。ベース領域14の上方には、コンタクト領域15が設けられる。蓄積領域16、ベース領域14およびコンタクト領域15は、ゲートトレンチ部40に接して設けられる。蓄積領域16、ベース領域14およびコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30に接して設けられてよい。
【0066】
コンタクト領域15の内部には、上面21に接してプラグ領域17が設けられる。プラグ領域17は、コンタクトホール54の下方に設けられる。本例において、プラグ領域17のX軸方向における幅Wpxは、コンタクトホール54のX軸方向における幅Wchと等しい。
【0067】
メサ部60のX軸方向における中心位置を、位置Smとする。X軸方向において、プラグ領域17は位置Smを中心に、X軸正側および負側に対称に設けられてよい。
【0068】
Z軸方向において、上面21の位置を位置P1とする。Z軸方向において、コンタクト領域15の下端の位置を位置P2とする。Z軸方向において、プラグ領域17の下端の位置を位置P3とする。深さDbは、位置P1と位置P2との間のZ軸方向における深さ、即ちコンタクト領域15の上面21からの深さである。深さDpは、位置P1と位置P3との間のZ軸方向における深さ、即ちプラグ領域17の上面21からの深さである。
【0069】
Z軸方向において、位置P1と位置P2との中点を位置Pmbとする。即ち、位置Pmbはコンタクト領域15の深さ方向における中心位置である。Z軸方向において、位置P1と位置P3との中点を位置Pmpとする。即ち、位置Pmpは、プラグ領域17の深さ方向における中心位置である。
【0070】
本例の半導体装置100は、深さ方向において、プラグ領域17がコンタクト領域15よりも浅い位置に設けられる。深さ方向において、プラグ領域17がコンタクト領域15よりも浅い位置に設けられるとは、プラグ領域17の下端がコンタクト領域15の下端よりも上方に配置されることを指してよい。即ち、位置P3が位置P2よりも上方に位置することを指してよい。プラグ領域17の上面21からの深さDpは、コンタクト領域15の上面21からの深さDbの0.1倍以上0.6倍以下であってよい。なお、プラグ領域17の上面21からの深さDpは、コンタクト領域15の上面21からの深さDbの半分である位置Pmbより浅くてよい。
【0071】
また、深さ方向において、プラグ領域17がコンタクト領域15よりも浅い位置に設けられるとは、プラグ領域17の深さ方向における中心位置が、コンタクト領域15の深さ方向における中心位置よりも上方に配置されることを指してもよい。即ち、位置Pmpが位置Pmbよりも上方に位置することを指してもよい。プラグ領域17の上面21から位置Pmpまでの深さ(1/2)Dpは、コンタクト領域15の上面21から位置Pmbまでの深さ(1/2)Dbの0.1倍以上0.6倍以下であってよい。
【0072】
本例では、コンタクトホール54の開口幅である幅Wchは、深さDpよりも大きい。言い換えれば、プラグ領域17の深さは、微細化したコンタクトホール54の開口幅よりも小さい。これは、プラグ領域17が、RBSOA耐量の低下を回避するために半導体基板の表面に設けた高濃度領域であって、深く拡散させる必要のないことを意味する。
【0073】
ドリフト領域18の下方には、第1導電型のバッファ領域20が設けられてよい。本例のバッファ領域20は、ドリフト領域18よりも不純物濃度が高く、N型である。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。バッファ領域20は、深さ方向のドーピング濃度分布において、複数のピークを有してよく、単一のピークを有してもよい。
【0074】
バッファ領域20の下方には、第2導電型のコレクタ領域22が設けられる。本例のコレクタ領域22は、P+型である。コレクタ領域22は、半導体基板10の下面23に露出して設けられる。
【0075】
半導体基板10には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、上面21からベース領域14および蓄積領域16を貫通して、ドリフト領域18に到達するように設けられる。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0076】
ゲートトレンチ部40は、上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0077】
ゲート導電部44は、深さ方向においてベース領域14よりも長く設けられてよい。ゲートトレンチ部40は、上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に、電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0078】
ダミートレンチ部30は、XZ断面においてゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部においてダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。
【0079】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0080】
図4は、図2におけるb−b'断面の一例を示す図である。b−b'断面は、コンタクトホール54、エミッタ領域12およびプラグ領域17を通るYZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0081】
b−b'断面において、ベース領域14の上方には、エミッタ領域12、コンタクト領域15およびプラグ領域17が設けられる。エミッタ領域12およびプラグ領域17は、上面21に露出して設けられる。b−b'断面において、コンタクト領域15は上面21に露出しない。
【0082】
深さ方向において、エミッタ領域12の下端は、コンタクト領域15の下端よりも上方に設けられてよい。深さ方向において、エミッタ領域12の下端は、プラグ領域17の下端よりも下方に設けられてよく、上方に設けられてもよい。本例のエミッタ領域12の下端は、プラグ領域17の下端よりも下方に設けられる。
【0083】
エミッタ領域12の下端におけるコンタクト領域15のY軸負側およびY軸正側の端部位置を、それぞれ位置K1および位置K2とする。長さWcyは、位置K1と位置K2との間のY軸方向における長さである。上面視において、エミッタ領域12のY軸方向の端部とコンタクト領域15のY軸方向の端部とは重なってよい。即ち、位置K1は、位置U1よりもY軸負側に配置されてよい。位置K2は、位置U2よりもY軸正側に配置されてよい。
【0084】
プラグ領域17は、上面視においてY軸方向にコンタクト領域15と重なるように設けられてよい。即ち、プラグ領域17のY軸負側の端部位置V1は、位置K1よりもY軸正側に配置されてよい。プラグ領域17のY軸正側の端部位置V2は、位置K2よりもY軸負側に配置されてよい。長さWcyは、長さWpyよりも大きくてよい。
【0085】
上述の小型化および微細化により、セル13の長さWuが幅Wtt以下になると、XY平面内においてエミッタ電極52とコンタクト領域15との接触領域が制限されるので、エミッタ電極52とコンタクト領域15との接触抵抗が増加する。なお、エミッタ電極52とコンタクト領域15との間に、バリアメタルやタングステンプラグが介在している場合も、当該接触抵抗が増加する。長さWuが3.2μm以下の微細素子においては、接触抵抗が増加する傾向が顕著となる。また、幅Wtpが3.0μm以下の微細素子においても、当該接触抵抗の増加が生じるおそれがある。このため、半導体装置100は小型化および微細化によりラッチアップが生じやすい。このため、半導体装置100のRBSOA耐量が低下しやすい。
【0086】
本例の半導体装置100は、半導体基板10の内部に設けられたプラグ領域17を備える。プラグ領域17は、コンタクト領域15よりもドーピング濃度が高い。また、上面視でプラグ領域17の少なくとも一部がコンタクト領域15と重なって配置される。また、プラグ領域17が深さ方向において、コンタクト領域15よりも浅い位置に設けられる。また、本例のプラグ領域17のドーズ量が、コンタクト領域15のドーズ量以上に設定される。このため、半導体装置100を微細化しても、ラッチアップが生じにくい。このため、半導体装置100のRBSOA耐量の低下を防ぐことができる。また、半導体装置100のRBSOA耐量のばらつきを抑制することができる。
【0087】
図5は、比較例の半導体装置150の上面を示す図である。比較例の半導体装置150は、プラグ領域17が設けられない点で、図1に示す本例の半導体装置100と異なる。
【0088】
図6は、図5におけるi−i'断面を示す図である。i−i'断面において、比較例の半導体装置150は、プラグ領域17が設けられない。比較例の半導体装置150は、コンタクトホール54の下方において、コンタクト領域15が上面21に露出している。
【0089】
図7は、図5におけるj−j'断面を示す図である。j−j'断面において、比較例の半導体装置150は、プラグ領域17が設けられない。比較例の半導体装置150は、エミッタ領域12に挟まれる領域において、コンタクト領域15が上面21に露出している。
【0090】
比較例の半導体装置150においては、プラグ領域17が設けられない。このため、半導体装置150を微細化するとラッチアップが生じやすい。このため、半導体装置150のRBSOA耐量が低下しやすい。また、半導体装置150のRBSOA耐量のばらつきを抑制することが困難である。
【0091】
図8は、図3におけるc−c'断面に沿ったドーピング濃度分布の一例を示す図である。図8においては、図6におけるz−z'断面に沿ったドーピング濃度分布を合わせて示している。図8に示す通り、本例の半導体装置100におけるプラグ領域17のドーピング濃度のピーク濃度は、コンタクト領域15のドーピング濃度のピーク濃度よりも高い。また、本例の半導体装置100におけるプラグ領域17のドーピング濃度を半導体基板10の深さ方向に積分した第1積分濃度が、コンタクト領域15のドーピング濃度を半導体基板10の深さ方向に積分した第2積分濃度以上である。このため、本例の半導体装置100は、比較例の半導体装置150よりも、エミッタ電極52とコンタクト領域15との接触抵抗の増加が抑制される。このため、本例の半導体装置100は、比較例の半導体装置150よりもラッチアップが生じにくく、RBSOA耐量が低下しにくい。
【0092】
深さ方向において、プラグ領域17のドーピング濃度のピーク位置を位置P4とする。深さ方向において、コンタクト領域15のドーピング濃度のピーク位置を位置P5とする。深さ方向において、位置P4は位置P5よりも浅い位置に設けられてよい。すなわち、本例のプラグ領域17は、コンタクト領域15のドーズ量以上のドーズ量を、コンタクト領域15よりも浅い深さに集中させて配置した領域である。これにより、上述のRBSOA耐量の低下抑制の効果を奏する。
【0093】
上面21からコンタクト領域15のドーピング濃度のピーク位置(位置P5)までの深さを、深さDcとする。深さ方向において、上面21から深さDcの1/2の深さ位置を、位置P6とする。深さ方向において、プラグ領域17のドーピング濃度のピーク位置(位置P4)は、位置P6よりも浅い位置に設けられてよい。本例の半導体装置100は、コンタクト領域15のドーピング濃度のピーク位置P5までの深さDcの1/2よりも浅い位置にプラグ領域17が設けられてもよい。
【0094】
図9は、本例の半導体装置100および比較例の半導体装置150のRBSOA破壊直前電流値を示す図である。図9から分かるように、本例の半導体装置100のRBSOA破壊直前電流値は、比較例150のRBSOA破壊直前電流値よりも大きい。
【0095】
本例の半導体装置100は、コンタクト領域15よりもドーピング濃度が高いプラグ領域17の少なくとも一部が、上面視でコンタクト領域15と重なって配置され、プラグ領域17がコンタクト領域15よりも浅い位置に設けられる。比較例の半導体装置150は、プラグ領域17が設けられない。このため、本例の半導体装置100は、比較例の半導体装置150よりもラッチアップが生じにくく、RBSOA耐量を大きくすることができる。
【0096】
また、プラグ領域17に相当するプラグ領域のドーズ量をコンタクト領域15のドーズ量未満に設定した半導体装置と、本例の半導体装置100とを比較したところ、プラグ領域のドーズ量をコンタクト領域15のドーズ量未満に設定した半導体装置では、ラッチアップの抑制やRBSOA耐量の低下の抑制という効果が充分に得られないことが確認された。これは、本例のセル13の配置では、エミッタ電極52とコンタクト領域15との接触領域が制限されるので、RBSOA耐量の向上のためには、プラグ領域17をコンタクト領域15よりも浅い深さに拡散させるだけでなく、プラグ領域17のドーズ量をコンタクト領域15のドーズ量以上に設定する必要があることを示している。
【0097】
図10は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。図10に示す半導体装置100は、プラグ領域17のY軸方向の長さが、図1に示す半導体装置100におけるプラグ領域17のY軸方向の長さよりも短い点で、図1に示す半導体装置100と異なる。本例の半導体装置100は、延伸方向においてプラグ領域17がコンタクト領域15に含まれるように設けられる。即ち、プラグ領域17のY軸正側の端は、コンタクト領域15のY軸正側の端よりもY軸負側に設けられる。プラグ領域17のY軸負側の端は、コンタクト領域15のY軸負側の端よりもY軸正側に設けられる。
【0098】
図11は、図10における領域Cの拡大図である。図11に示す通り、本例のプラグ領域17のY軸方向の長さは、図2に示す例におけるプラグ領域17のY軸方向の長さよりも短い。
【0099】
Y軸方向において、プラグ領域17のY軸正側およびY軸負側の端部位置を、それぞれ位置V1'および位置V2'とする。本例において、長さWpy'は位置V1'と位置V2'との間のY軸方向における長さである。本例においては、位置V1'は位置U1よりもY軸負側に配置される。また、位置V2'は位置U2よりもY軸正側に配置される。即ち、本例において、長さWpy'は長さWcよりも小さい。
【0100】
本例の半導体装置100においては、コンタクトホール54の下方、且つ、位置V1'と位置U1とのY軸方向における間には、コンタクト領域15が設けられる。コンタクトホール54の下方、且つ、位置V2'と位置U2とのY軸方向における間にも、コンタクト領域15が設けられる。即ち、本例の半導体装置100においては、上面視でプラグ領域17がコンタクト領域15に囲まれるように設けられる。上面視において、本例のプラグ領域17の面積は、図1に示す半導体装置100のプラグ領域17の面積よりも小さい。
【0101】
図12は、図11におけるe−e'断面の一例を示す図である。図11および図12に示す通り、本例の半導体装置100において、プラグ領域17のY軸方向の長さWpy'は、コンタクト領域15のY軸方向の長さWcよりも短い。プラグ領域17は、上面視においてY軸方向にコンタクト領域15と重なるように設けられる。本例においては、プラグ領域17とエミッタ領域12とのY軸方向における間には、コンタクト領域15が上面21に露出する。なお、図11におけるd−d'断面の構成は、図3におけるa−a'断面の構成に等しい。
【0102】
本例の半導体装置100のその他の構成は、図1に示す半導体装置100と同様である。本例の半導体装置100によれば、長さWpy'が長さWcよりも小さいので、プラグ領域17がエミッタ領域12に接触しない。プラグ領域17がエミッタ領域12と接触すると、ゲートトレンチ部40近傍のベース領域14のピーク濃度が低減する場合がある。即ち、プラグ領域17がエミッタ領域12と離間して設けられることにより、ゲート閾値電圧Vthを決めるベース領域14のピーク濃度が低減するのを抑制できる。また、プラグ領域17がエミッタ領域12と離間して設けられることにより、プラグ領域17の位置がY軸方向にずれた場合においてもゲート閾値電圧Vthの変動を小さくできる。
【0103】
図13は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面の他の一例を部分的に示す図である。図13に示す半導体装置100は、プラグ領域17のY軸方向の長さが、図1に示す半導体装置100におけるプラグ領域17のY軸方向の長さよりも長く、且つ、プラグ領域17のX軸方向の長さが、図1に示す半導体装置100におけるプラグ領域17のX軸方向の長さよりも長い点で、図1に示す半導体装置100と異なる。
【0104】
本例の半導体装置100は、プラグ領域17のY軸正側の端がコンタクト領域15のY軸正側の端よりもY軸正側に設けられ、プラグ領域17のY軸負側の端がコンタクト領域15のY軸負側の端よりもY軸負側に設けられる。また、本例の半導体装置100は、プラグ領域17のX軸正側の端がコンタクト領域15のX軸正側の端よりもX軸正側に設けられ、プラグ領域17のX軸負側の端がコンタクト領域15のX軸負側の端よりもX軸負側に設けられる。
【0105】
図14は、図13における領域Dの拡大図である。図14に示す通り、本例のプラグ領域17のY軸方向の長さは、図2に示す例におけるプラグ領域17のY軸方向の長さよりも長い。また、本例のプラグ領域17のX軸方向の長さは、図2に示す例におけるプラグ領域17のX軸方向の長さよりも長い。
【0106】
Y軸方向において、プラグ領域17のY軸正側およびY軸負側の端部位置を、それぞれ位置V1''および位置V2''とする。本例において、長さWpy''は位置V1''と位置V2''との間のY軸方向における幅である。本例においては、位置V1''は位置U1よりもY軸正側に配置される。また、位置V2''は位置U2よりもY軸負側に配置される。本例において、長さWpy''は長さWcよりも大きい。
【0107】
本例の半導体装置100は、コンタクトホールの下方において、プラグ領域17がコンタクト領域15よりもY軸方向に突出して設けられる。言い換えると、本例の半導体装置100は、コンタクトホールの下方において、プラグ領域17が、エミッタ領域12とコンタクト領域とのX軸方向に沿った境界よりも、エミッタ領域12側に突出して設けられる。
【0108】
X軸方向において、プラグ領域17のX軸正側およびX軸負側の端部位置を、それぞれ位置T2'および位置T1'とする。本例において、幅Wpx'は位置T1'と位置T2'との間のX軸方向における幅である。本例においては、位置T1'は位置S3よりもX軸負側に配置される。また、位置T2'は位置S4よりもX軸正側に配置される。本例において、幅Wpx'は幅Wchよりも大きい。
【0109】
本例の半導体装置100は、X軸方向において、上面視でプラグ領域17がコンタクトホール54の外側まで設けられる。本例のプラグ領域17は、X軸方向においても、端部位置V1''および端部位置V2''においてエミッタ領域12側に突出して設けられる。すなわち、トレンチ部の間のコンタクトホール54の開口幅Wchが、トレンチ部の間のプラグ領域17の幅Wpx'よりも小さい。
【0110】
図15は、図14におけるf−f'断面の一例を示す図である。図15に示す通り、本例の半導体装置100において、プラグ領域17のX軸方向の幅Wpx'は、コンタクトホール54のX軸方向の幅Wchよりも長い。本例においては、プラグ領域17のX軸方向の両端が、上面視で層間絶縁膜38と重なるように設けられる。
【0111】
図16は、図14におけるg−g'断面の一例を示す図である。図16に示す通り、本例の半導体装置100におけるプラグ領域17のY軸方向の長さWpy''は、コンタクト領域15のY軸方向の長さWcよりも長い。
【0112】
位置V1''は、エミッタ領域12の底部におけるコンタクト領域のY軸負側の端部位置K1よりも、Y軸正側に配置されてよい。位置V2''は、エミッタ領域12の底部におけるコンタクト領域のY軸正側の端部位置K2よりも、Y軸負側に配置されてよい。
【0113】
位置V1''は、位置K1よりもY軸負側に配置されてもよい。位置V2''は、位置K2よりもY軸正側に配置されてもよい。即ち、上面21において、プラグ領域17が、位置K1よりもさらに、エミッタ領域12のY軸負側に突出するように設けられてもよい。また、プラグ領域17が、位置K2よりもさらに、エミッタ領域12のY軸正側に突出するように設けられてもよい。
【0114】
本例の半導体装置100において、位置V1''は位置K1よりもY軸正側に配置され、且つ、位置V2''は位置K2よりもY軸負側に配置される。すなわち、プラグ領域17の端部位置は平面視でエミッタ領域12の内部に位置するが、位置K1および位置K2には達しない。したがって、ゲート閾値電圧Vthを決めるベース領域14のピーク濃度が低減されるのを抑制できる。
【0115】
図17は、本発明の実施形態に係る半導体装置200の上面の一例を部分的に示す図である。本例の半導体装置200は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等のトランジスタを含むトランジスタ部70、および、還流ダイオード(FWD:Free Wheel Diode)等のダイオードを含むダイオード部80を有する半導体チップである。本例の半導体装置200は、図1に示す半導体装置100に配列方向(X軸方向)に並んで、ダイオード部80が設けられる。図17においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0116】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面23側に第1導電型のカソード領域82が設けられた領域である。本例のカソード領域82は、N+型である。カソード領域82は、下面23側に露出しており、下面23に設けられた電極と接触している。
【0117】
本明細書では、カソード領域82とZ軸方向において重なる領域をダイオード部80とする。つまり、半導体基板10の上面21に対して、下面23と垂直な方向にカソード領域82を投影したときの投影領域をダイオード部80とする。また、当該投影領域を、Y軸方向に活性領域の端まで延長した延長領域もダイオード部80としてよい。活性領域については後述する。Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の両方に垂直な方向である。ダイオード部80は、投影領域および延長領域のうち、上面21に第2導電型の領域が設けられた領域を指してもよい。
【0118】
トランジスタ部70は、活性領域におけるダイオード部80以外の領域を指してよい。トランジスタ部70は、下面23に露出したコレクタ領域22を有する。トランジスタ部70は、上面21に対してコレクタ領域22を投影したときの投影領域であって、且つ、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域を指してもよい。
【0119】
エミッタ電極52およびゲート金属層50と、上面21との間には層間絶縁膜38が設けられるが、図17では省略している。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、上面21におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と電気的に接続される。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と電気的に接続される。コンタクトホール54およびコンタクトホール56の内部には、タングステン(W)等のコンタクトプラグが設けられてよい。
【0120】
ゲート金属層50は、トランジスタ部70にゲート電圧を印加する。ゲート金属層50は、コンタクトホール49を通って、ゲートランナー48と電気的に接続される。コンタクトホール49の内部には、タングステン(W)等のコンタクトプラグが設けられてよい。
【0121】
本明細書では、トランジスタ部70のうち、配列方向におけるダイオード部80との境界領域を、境界部90と称する。境界部90には、1つ以上のメサ部62が含まれている。メサ部62には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部62の上面には、上面視においてベース領域14にY軸方向に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられている。メサ部62は、トランジスタ部70のターンオフ時等に、ホール等のキャリアをエミッタ電極52側に引き抜く機能を有する。
【0122】
メサ部62において、コンタクトホール54の下方、且つ、上面21においてコンタクト領域15に配列方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられてよい。図17において、プラグ領域17が設けられる領域を破線部にて示している。プラグ領域17は上面21に接して設けられる。
【0123】
メサ部62において、プラグ領域17の下方にはコンタクト領域15が設けられる。プラグ領域17の下方に設けられるコンタクト領域15は、上面視でプラグ領域17を挟んで設けられる2つのコンタクト領域15と、半導体基板10の内部においてつながっている。メサ部62において、当該2つのコンタクト領域15のそれぞれは、メサ部62を挟んでY軸方向に延伸する2本のダミートレンチ部30のそれぞれに接して設けられる。なお、メサ部62は、2本のゲートトレンチ部40に挟まれてもよい。
【0124】
ダイオード部80のメサ部64には、エミッタ領域12が設けられなくてよい。メサ部64の上面には、上面視においてコンタクト領域15にY軸方向に挟まれた領域にベース領域14が設けられている。
【0125】
メサ部64において、コンタクトホール54の下方、且つ、上面21においてベース領域14に配列方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられてよい。図17において、プラグ領域17が設けられる領域を破線部にて示している。プラグ領域17は上面21に接して設けられる。
【0126】
メサ部64において、プラグ領域17の下方にはベース領域14が設けられる。プラグ領域17の下方に設けられるベース領域14は、上面視でプラグ領域17を挟んで設けられる2つのベース領域14と、半導体基板10の内部においてつながっている。メサ部64において、当該2つのベース領域14のそれぞれは、メサ部64を挟んでY軸方向に延伸する2本のダミートレンチ部30のそれぞれに接して設けられる。
【0127】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面23と隣接する領域には、カソード領域82が設けられる。図17においては、カソード領域82が設けられる領域を一点鎖線部および矢印にて示している。半導体基板10の下面23と隣接する領域においてカソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。
【0128】
エミッタ領域12、コンタクト領域15、ベース領域14およびプラグ領域17の下方には、蓄積領域16が設けられてよい。蓄積領域16は、ダイオード部80には設けられなくてもよい。
【0129】
図18は、図17における領域Eの拡大図である。図17に示す通り、本例の半導体装置200は、トランジスタ部70において、コンタクトホール54の下方、且つ、上面21においてコンタクト領域15にX軸方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられる。境界部90においては、コンタクトホール54の下方、且つ、上面21においてコンタクト領域15にX軸方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられる。ダイオード部80においては、コンタクトホール54の下方、且つ、上面21においてベース領域14にX軸方向に挟まれる領域には、プラグ領域17が設けられる。
【0130】
図19は、図18におけるm−m'断面の一例を示す図である。m−m'断面は、トランジスタ部70におけるゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、コンタクト領域15およびプラグ領域17、並びにダイオード部80におけるダミートレンチ部30、ベース領域14およびプラグ領域17を通るXZ面である。
【0131】
図19に示す通り、本例の半導体装置200において、プラグ領域17はコンタクトホール54の下方に、上面21に接して設けられる。トランジスタ部70においては、プラグ領域17の下方にはコンタクト領域15が設けられる。ダイオード部80においては、プラグ領域17の下方にはベース領域14が設けられる。なお、図18におけるn−n'断面の構成は、図4におけるb−b'断面の構成に等しい。
【0132】
図20は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置300の上面の構造を示す図である。半導体装置300は、活性領域120およびエッジ終端構造部92を備える。活性領域120は、エッジ終端構造部92の内側の領域である。エッジ終端構造部92は、ウェル領域11を有してよい。ウェル領域11のドーピング濃度は、ベース領域14のドーピング濃度よりも高い。活性領域120は、半導体基板10の上面から下面、または下面から上面に、半導体基板10の内部を深さ方向に電流が流れる領域としてもよい。
【0133】
活性領域120には、トランジスタ部70およびダイオード部80が設けられている。本例では、トランジスタ部70およびダイオード部80は、活性領域120においてX軸方向に交互に設けられている。X軸方向に隣り合う1つのトランジスタ部70および1つのダイオード部80は、メイン半導体素子部121を構成する。しかし、いわゆるRC−IGBT(逆導通型IGBT)でない場合には、トランジスタ部70がメイン半導体素子部121を構成するものとしてよい。すなわち、メイン半導体素子部121とは、主電流が流れる半導体素子部を指す。
【0134】
半導体基板10の上面21の上方には、複数のパッドが設けられている。図20の例においては、センスパッド114、エミッタパッド115、ゲートパッド116、カソードパッド117およびアノードパッド118が設けられている。センスパッド114は、センス半導体素子部119に接続されている。
【0135】
センス半導体素子部119は、トランジスタ部70と同一の構造を有しており、且つ、トランジスタ部70よりも上面視における面積(チャネルの面積に対応する)が小さい。センス半導体素子部119に流れている電流を検出することで、半導体装置300全体に流れている電流を推定することができる。
【0136】
エミッタパッド115は、半導体基板10の上面21の上方に配置されるエミッタ電極52と接続されている。ゲートパッド116は、トランジスタ部70のゲート電極と接続されている。本例のゲートパッド116は、後述するゲートランナー部と接続されている。カソードパッド117およびアノードパッド118は、後述する温度センス部110に接続されている。なお、半導体基板10に設けられるパッドの個数および種類は、図20に示す例に限定されない。
【0137】
それぞれのパッドは、アルミニウム等の金属材料で形成されている。複数のパッドは、活性領域120と、半導体基板10の上面21における第1の端辺142との間において、所定の配列方向に配列されている。本例の複数のパッドは、Y軸方向において、素子領域と第1の端辺142とに挟まれて配置されている。複数のパッドの配列方向とは、複数のパッドのうち第1の端辺142と平行な方向における両端に配置された2つのパッド(本例ではセンスパッド114およびアノードパッド118)の上面視における中心を結ぶ直線の方向であってよい。配列方向は、第1の端辺142と平行な方向(本例においてはX軸方向)であってよい。X軸方向においてそれぞれのパッドが設けられる領域には、半導体基板10の上面にウェル領域11が露出していてよい。
【0138】
半導体装置300は、トランジスタ部70にゲート電圧を伝達するゲートランナー部を備える。本例の半導体装置300は、ゲートランナー部として、第1のゲートランナー46および第2のゲートランナー51を備える。本例では、それぞれのゲートランナーは、半導体基板10の上面21の上方に設けられ、半導体基板10の上面21とは層間絶縁膜38で絶縁されている。
【0139】
第1のゲートランナー46は、上面視において、半導体基板10の第1の端辺142と、少なくとも一つのパッドとの間を通って設けられている。本例の第1のゲートランナー46は、センスパッド114、エミッタパッド115、ゲートパッド116、カソードパッド117およびアノードパッド118のそれぞれと、第1の端辺142との間を通って、第1の端辺142と平行に設けられている。第1のゲートランナー46は、ゲートパッド116と接続されている。
【0140】
また、第1のゲートランナー46は、半導体基板10の他の端辺と、活性領域120との間において、活性領域120を囲むように設けられている。つまり本例の第1のゲートランナー46は、半導体基板10の各端辺に沿って環状に設けられている。第2のゲートランナー51は、活性領域120の上方に設けられてよい。第2のゲートランナー51は、X軸方向の両端において、第1のゲートランナー46と接続される。
【0141】
第1のゲートランナー46および第2のゲートランナー51は、アルミニウム等の金属配線であってよく、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体配線であってもよく、金属配線と半導体配線とが絶縁膜を介して重なって設けられていてもよい。当該絶縁膜には、金属配線と半導体配線とを接続するためのコンタクトホールが設けられている。
【0142】
X軸方向において負側の端に配置されているパッド(本例ではセンスパッド114)と、エミッタパッド115との間には、センス半導体素子部119が設けられている。センス半導体素子部119は、後述するようにウェル領域11に囲まれてよい。センス半導体素子部119は、トランジスタ部70やダイオード部80とは分断されてよい。トランジスタ部70およびダイオード部80は、図17の半導体装置200と同じ構成としてよい。
【0143】
エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面21において、第1のゲートランナー46と半導体基板10の外周端140との間に設けられる。エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面21において第1のゲートランナー46を囲むように環状に配置されてよい。本例のエッジ終端構造部92は、半導体基板10の外周端140に沿って配置されている。エッジ終端構造部92は、半導体基板10の上面21側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部92は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0144】
本例の半導体装置300は、温度センス部110、温度センス配線112−1および112−2を備える。温度センス部110は、活性領域120の上方に設けられる。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、活性領域120の中央に設けられてよい。温度センス部110は、半導体基板10の上面視で、トランジスタ部70の上方に設けられてよい。また、温度センス部110は、トランジスタ部70とダイオード部80とにまたがって配置されてもよい。温度センス部110は、活性領域120の温度を検知する。温度センス部110は、単結晶または多結晶のシリコンで形成されるpn型温度センスダイオードであってよい。
【0145】
温度センス配線112は、活性領域120の上方に設けられる。温度センス配線112は、アルミニウムで形成されてよい。温度センス配線112は、エミッタ電極52と同じアルミニウム配線をエッチングして形成されてよい。温度センス配線112は、温度センス部110と接続される。温度センス配線112は、半導体基板10の上面21において活性領域120と外周端140との間の領域まで延伸し、カソードパッド117およびアノードパッド118と接続される。
【0146】
図21は、図20におけるセンス半導体素子部119近傍の拡大図である。図21に示す通り、本例のセンス半導体素子部119は、活性領域120においてウェル領域11に囲まれて設けられる。とりわけ、本例のセンス半導体素子部119は、プラグ領域17を有する。具体的には、本例のプラグ領域17は、図2に示す半導体装置100と同じ構成であってよい。センス半導体素子部119は、メイン半導体素子部121のトランジスタ部70と同じ工程で形成されてよい。センス半導体素子部119のセル13の平面形状およびピッチを、図2に示す半導体装置100におけるセル13の平面形状およびピッチとそれぞれ同じとすることで、電流検出精度の向上を図ることができる。
【0147】
センス半導体素子部119のセル13の平面形状およびピッチは、図2に示す半導体装置100におけるセル13の平面形状およびピッチと、それぞれ同じでなくてもよい。センス半導体素子部119のセル13の平面形状およびピッチは、図2に示す半導体装置100におけるセル13の平面形状およびピッチと、それぞれ異なっていても、センス半導体素子部119は、プラグ領域17を有すればよい。これにより、センス半導体素子部119のラッチアップの抑制およびRBSOA耐量向上の効果を奏することが可能となる。
【0148】
センス半導体素子部119は、図11に示す半導体装置100と同じ構成であってもよく、図14に示す半導体装置100と同じ構成であってもよい。また、センス半導体素子部119は、トランジスタ部70と同様に、トレンチ部(ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30)と、コンタクト領域15と、プラグ領域17を備えてよい。
【0149】
図22は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の概要の一例を示す図である。本例の半導体装置の製造方法においては、第2導電型のコンタクト領域15を形成するステップと、第2導電型のプラグ領域17を形成するステップとを実施する。以下、図22に沿って説明する。
【0150】
ステップS1002において、半導体基板10に第2導電型のウェル領域11を、上面21から予め定められた深さまで形成する。続くステップS1004において、半導体基板10の上面21から半導体基板10の内部まで設けられ、上面21において予め定められた延伸方向(Y軸方向)に延伸し、延伸方向に直交する配列方向(X軸方向)に並んで設けられた複数のトレンチ部を形成する。当該トレンチ部は、ウェル領域11の深さよりも浅い深さに形成されてよい。当該トレンチ部は、半導体装置100および半導体装置200において、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30を構成する。
【0151】
ステップS1006において、トレンチの内壁を窒化または酸化し、ゲート絶縁膜42およびダミー絶縁膜32を形成する。続いて、トレンチにポリシリコン等の導電材料を充填し、ゲート導電部44およびダミー導電部34を形成する。
【0152】
ステップS1007において、上面21から第2導電型のドーパントを注入する。第2導電型のドーパントは、例えば、ボロン(B)、インジウム(In)などである。ステップS1007においてドーパントが注入された領域は、後のステップS1014のアニールによりベース領域14となる領域である。
【0153】
ステップS1008において、上面21から第1導電型のドーパントを注入する。第1導電型のドーパントは、例えば、ヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)などである。ステップS1008においてドーパントが注入された領域は、後のステップS1014のアニールにより蓄積領域16となる領域である。
【0154】
ステップS1010において、配列方向(X軸方向)において隣り合う2つのトレンチ部の間において、半導体基板10の深さ方向に上面21から第2導電型のドーパントを、第1の深さおよび第1の注入量で注入する。第2導電型のドーパントは、例えば、ボロン(B)、インジウム(In)などである。ステップS1010においてドーパントが注入された領域は、後のステップS1014のアニールによりコンタクト領域15となる領域である。
【0155】
ステップS1012において、配列方向(X軸方向)において隣り合う2つのトレンチ部の間において、半導体基板10の深さ方向に上面21から第1導電型のドーパントを予め定められた注入量で注入する。第1導電型のドーパントは、例えば、ヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)などである。ステップS1012においてドーパントが注入された領域は、後のステップS1014のアニールによりエミッタ領域12となる領域である。エミッタ領域12は、延伸方向(Y軸方向)にコンタクト領域15と並んで配置される。
【0156】
ステップS1014において、ステップS1007からステップS1012までのステップにおいてドーパントが注入された半導体基板10をアニールする。当該アニールにより、第2導電型のベース領域およびコンタクト領域15、並びに第1導電型の蓄積領域16およびエミッタ領域12を形成する。
【0157】
ステップS1016において、上面21に層間絶縁膜38を形成する。層間絶縁膜38は、半導体装置100および半導体装置200における活性領域上に形成されてよい。
【0158】
ステップS1020において、層間絶縁膜38にコンタクトホール54を形成する。ステップS1020により、コンタクトホール54はエミッタ領域12およびコンタクト領域15の上方に形成される。
【0159】
続くステップS1022において、当該コンタクトホール54を通して、上面21から半導体基板10の深さ方向に、第2導電型のドーパントを第2の深さおよび第2の注入量で注入してよい。第2の深さは、第1の深さよりも浅い。第2導電型のドーパントは、例えば、ボロン(B)、インジウム(In)などである。
【0160】
ステップS1026において、層間絶縁膜38の上面、コンタクトホール54における層間絶縁膜38の側面および上面21に、バリアメタルを形成する。バリアメタルは、一例としてチタン(Ti)または窒化チタン(TiN)である。バリアメタルは、後のステップS1028で形成するコンタクトプラグが半導体基板10の内部へ拡散することを抑制する。続くステップS1028において、当該バリアメタルをアニールする。
【0161】
ステップS1030において、バリアメタルが形成されたコンタクトホール54にコンタクトプラグを形成する。コンタクトプラグは、一例としてタングステン(W)である。
【0162】
図23は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す図である。図23は、図22におけるステップS1010、ステップS1014、ステップS1016、ステップS1020、ステップS1022およびステップ1024を詳細に示している。
【0163】
ステップS1010において、上面21から半導体基板10の深さ方向に、第2導電型のドーパントを第1の深さDbおよび第1の注入量で注入する。ステップS1010におけるドーパントの加速電圧は、100keV以上140keV以下であってよい。当該ドーパントの注入量は、1×1015(/cm)以上5×1015(/cm)以下であってよい。
【0164】
ステップS1014において、第1導電型のドーパントおよび第2導電型のドーパントが注入された半導体基板10を、第1の温度でアニールする。第1の温度は、950℃以上1100℃以下であってよい。アニール時間は、20分以上40分以下であってよい。当該アニールは、窒素(N)雰囲気中で実施してよい。当該アニールにより、第2導電型のコンタクト領域15および第1導電型のエミッタ領域12を形成する。
【0165】
ステップS1016において、上面21に層間絶縁膜38を形成する。層間絶縁膜38は、半導体装置100および半導体装置200における活性領域上に形成されてよい。
【0166】
ステップS1020において、層間絶縁膜38にコンタクトホール54を形成する。ステップS1020により、コンタクトホール54を形成したXY平面内の位置において、上面21を露出させる。続くステップS1022において、層間絶縁膜38をマスクに、当該コンタクトホール54を通して、上面21から第2導電型のドーパントを第2の深さDpおよび第2の注入量で注入する。
【0167】
ステップS1022におけるドーパントの加速電圧は、ステップS1010における加速電圧よりも低い。ステップS1022におけるドーパントの加速電圧は、20keV以上80keV以下であってよい。また、ステップS1022における第2の注入量は、ステップS1010における第1の注入量以上である。具体的には、ステップS1022における第2の注入量は、1×1015(/cm)以上5×1015(/cm)以下であってよい。例えば、第1の注入量を5×1015(/cm)と高く設定した場合でも、第2の注入量をこれ以上に設定しなければプラグ領域17としての良好な特性が得られない。言い換えれば、RBSOA耐量向上のためにコンタクト領域15の不純物濃度を上げるのではなく、コンタクト領域15とは別のプラグ領域17を半導体基板10の表面に形成する場合に、第2の注入量が第1の注入量未満ではコンタクト領域15とは別のプラグ領域17として充分な効果を奏さないおそれがある。
【0168】
続いて、ステップS1024において、ステップS1022において第2導電型のドーパントを注入した半導体基板10を第2の温度でアニールする。第2の温度は、ステップS1014における第1の温度よりも低い。第2の温度は、800℃以上900℃以下であってよい。アニール時間は、ステップS1014のアニールに比較して極めて短くてよく、10分の1以下の時間であってよい。具体的には、5秒以上1分以下であってよい。当該アニールは、窒素(N)雰囲気中で実施してよい。当該アニールにより、第2導電型のプラグ領域17を形成する。
【0169】
なお、ステップS1012においては、上面21から第1導電型のドーパントを、予め定められた注入量で注入する。ステップS1012におけるドーパントの加速電圧は、ステップS1010におけるドーパントの加速電圧よりも低くてよい。ステップS1012におけるドーパントの加速電圧をステップS1010におけるドーパントの加速電圧よりも低くすることにより、ステップS1012において注入される第1導電型のドーパントは、ステップS1010において注入される第2導電型のドーパントよりも、上面21から浅い位置まで注入される。
【0170】
また、ステップS1018においては、層間絶縁膜38をアニールすることによりフロー処理する。当該フロー処理のアニール温度は、940℃以上1000℃以下であってよい。当該フロー処理のアニール時間は、5分以上45分以下であってよい。当該アニールは、窒素(N)雰囲気中で実施してよい。
【0171】
図24は、図22におけるステップS1022において、ドーパント注入時に用いるマスクの一例を示す概念図である。当該概念図は、図18の領域Eとマスクとの上面視における位置関係を示している。ステップS1022において、上面視でマスクが配置される領域を斜線部としている。
【0172】
ステップS1022において、上面21の上方にマスク98を配置する。境界部90を除くトランジスタ部70において、マスク98は、延伸方向においてコンタクト領域15の端部と重畳して配置される。具体的には、マスク98は、位置U1から位置U4まで、および、位置U2から位置U5までの長さWg分コンタクト領域15の端部と重畳して配置される。境界部90を除くトランジスタ部70において、位置U4はマスク98のうち第2導電型のドーパントが注入される領域の上方におけるY軸負側の端である。また、位置U5はマスク98のうち第2導電型のドーパントが注入される領域の上方におけるY軸正側の端である。
【0173】
なお、マスク98の延伸方向における開口部の長さは、長さWcmで表される。長さWgは、長さWcの0.1倍以上0.4倍以下であってよい。長さWgは、0.1μm以上0.6μm以下であってよい。長さWgは、トレンチ部の間のコンタクトホール54の開口幅よりも小さく設定される。長さWcmは、長さWcの0.3倍以上0.7倍以下であってよい。長さWcmは、0.4μm以上0.8μm以下であってよい。
【0174】
マスク98を用いて第2導電型のドーパントを第2の注入量で注入する。上面視におけるトランジスタ部70のマスク98の位置は、上面視におけるステップS1010のトランジスタ部70のマスクの位置と等しくてよい。ステップS1020において、層間絶縁膜38にコンタクトホール54が形成される。このため、ステップS1022においては、上面21の上方に層間絶縁膜38およびコンタクトホール54が配置されている。図24においては、層間絶縁膜38の図示を省略している。
【0175】
ステップS1022においては、上面21の上方に層間絶縁膜38が設けられているので、マスク98が配置されない領域においても、コンタクトホール54以外の領域は上面21に露出していない。したがって、コンタクトホール54を通して、第1の深さよりも浅い第2の位置に第2導電型のドーパントが注入される。ステップS1022において第2導電型のドーパントが注入された領域は、後のステップS1024におけるアニールされ、プラグ領域17が形成される。
【0176】
上述の構成によれば、長さWgがトレンチ部の間のコンタクトホール54の開口幅よりも小さく設定される。このため、アニール等により注入された第2導電型のドーパントが拡散する場合に、第2導電型のドーパントにより構成されるプラグ領域17はエミッタ領域12に接触することとなり、トレンチ部に接触する可能性を抑制することができる。したがって、トレンチ部にプラグ領域17が接触して、ゲート閾値電圧Vthが意図せずに上昇してしまうことを抑制できる。
【0177】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0178】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0179】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、13・・・セル、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、17・・・プラグ領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、46・・・第1のゲートランナー、48・・・ゲートランナー、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲート金属層、51・・・第2のゲートランナー、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56・・・コンタクトホール、60・・・メサ部、62・・・メサ部、64・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、90・・・境界部、92・・・エッジ終端構造部、98・・・マスク、100・・・半導体装置、110・・・温度センス部、112・・・温度センス配線、114・・・センスパッド、115・・・エミッタパッド、116・・・ゲートパッド、117・・・カソードパッド、118・・・アノードパッド、119・・・センス半導体素子部、120・・・活性領域、121・・・メイン半導体素子部、140・・・外周端、142・・・端辺、150・・・半導体装置、200・・・半導体装置、300・・・半導体装置
図1
図2
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