(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底面部から折り立てられた複数の側面部と、前記複数の側面部のそれぞれの上縁から鍔状に延設されたフランジ部と、互いに隣接する前記側面部で前記底面部から立ち上がる端縁のそれぞれから延設されており、前記隣接する前記側面部の一方で容器の外側を向いた面に貼合されて前記隣接する前記側面部どうしを連結する接合面部と、を有する紙製の容器本体と、
前記接合面部の上縁で前記隣接する前記側面部のうち他方の側の一部から突出した切片と、前記接合面部の前記上縁の前記一部以外で前記隣接する前記側面部のうち前記一方の側の他部から突出した接合片と、を有し、前記切片が前記隣接する前記側面部どうしと前記隣接する前記フランジ部どうしとのそれぞれが突き合わされた角部に前記容器本体の外側から重合して配置され、前記接合片が前記一方の前記側面部の前記上縁から延設された前記フランジ部の下面側に貼合された遮蔽構造と、を備えており、
前記遮蔽構造は、前記接合面部の前記上縁から延出した延出片を備え、前記延出片を介して前記切片と前記接合片とがつながっている
ことを特徴とする紙製容器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件を実施するための形態を説明する。
下記の項目「1」では紙製容器の構成について説明する。項目「2」で紙製容器を組み立てるために用いるブランクシートの構成について説明する。項目「3」では紙製容器に用いる材料について説明する。
以下の実施形態では、紙製容器を水平面に載置した状態を基準にして上下方向を定める。また、紙製容器の収容空間に向かう方向を「内側」、その反対方向を「外側」と定める。
【0010】
[1.容器の構成]
<全体構造>
本項目[1]では、
図1〜
図3を用いて実施形態にかかる紙製容器10(以下単に「容器10」ともいう)の構成を説明する。
【0011】
図1および
図2に示すように、容器10は内側に収容空間を有しており上部が開口をなす容器本体11を備えている。容器本体11の開口は図示しない上蓋部材で閉塞され得る。
図2では容器10から上蓋部材を取り外した状態を示している。
容器本体11は、
図4に示す紙製のシート11Sを折って四角トレイ型に成形された箱体である。
【0012】
本実施形態の容器本体11は、収容空間の底面をなす長方形状の底面部1と、底面部1の四辺から折り立てられた複数の側面部3,5とを有している。容器本体11で開口の周囲には、側面部3,5の上縁から容器の外側へ向かって鍔状に延設されたフランジ部7,9が設けられている。フランジ部7,9は、水平方向に沿って延在する幅広な面部(延出面部)を有しており、この面部が上蓋部材(図示せず)を貼合するための貼合面をなす。本実施形態のフランジ部7,9は、後述のように、シートが二層に重ね合わされた二重フランジ構造を有している。
【0013】
本明細書では、底面部1の一対の長辺に立設された側面部のそれぞれを「第一側面部3」と称し、底面部1の一対の短辺に立設された側面部のそれぞれを「第二側面部5」と称する。そして、一対の第一側面部3の上縁から延設されたフランジ部のそれぞれを「第一フランジ部7」と称し、一対の第二側面部5の上縁から延設されたフランジ部のそれぞれを「第二フランジ部9」と称する。
第一フランジ部7の両端部には、側面部3の上縁よりも容器の外側へ突出した第一突出片17(
図2では一つの第一突出片17にのみ符号を付す)が設けられており、第二フランジ部9の両端部には、側面部5の上縁よりも容器の外側へ突出した第二突出片19(
図2では一つの第二突出片19にのみ符号を付す)が設けられている。
【0014】
図2に示すように、第一側面部3において底面部1から立ち上がる端縁3aと、第二側面部5において底面部1から立ち上がる端縁5aとが突き合わされて、容器本体11の角部4をなす。
本明細書では、特に断りのない限り、容器本体11で互いに隣接する側面部3,5で底面部1から立ち上がる端縁3a,5aどうしが突き合わされた角部と、互いに隣接するフランジ部7,9どうしが突き合わされた角部とを、「角部4」と称する。容器本体11の角部4では、第一突出片17と第二突出片19とが重ね合わされている。本実施形態では第一突出片17が第二突出片19の上側に配置されている。
【0015】
図1に示すように、容器本体11の角部4において、第二側面部5で容器の外側を向いた面に接合面部13が貼合されている。接合面部13は、角部4で端縁3a,5aが突き合わされた側面部3,5どうしを連結する部位である。
接合面部13は、側面部3,5の端縁3a,5aから延出した面状領域である。本実施形態で接合面部13は、容器本体11を第二側面部5側から視たときに逆三角形をなす形状に形成されている。
接合面部13は、第二側面部5(容器本体11の角部4で隣接する側面部3,5の一方)で容器の外側を向いた面に貼合されている。
【0016】
本実施形態の容器10は遮蔽構造50を備えている。
図1に示すように、接合面部13の上縁から突出した部位が遮蔽構造50をなす。
上述のように、本実施形態の容器10は、側面部3,5の端縁3a,5aが突き合わされて角部4が形成された構造である。そのため、側面部3,5どうしとフランジ部7,9どうしとのそれぞれが突き合わされた角部4に、容器10の内側と外側とを連通する隙間が生じ得る。隙間は、例えば、角部4の上端付近、すなわち、側面部3,5の端縁3a,5aの突き合わされた箇所とフランジ部7,9が突き合わされた箇所との境界に生じやすい。
【0017】
遮蔽構造50は、隣接する側面部3,5どうしと隣接するフランジ部7,9どうしとのそれぞれが突き合わされた角部4に生じ得る隙間を容器本体11の外側から塞ぐために設けられている。
図1に示す遮蔽構造50は、接合面部13の上縁で側面部3側(隣接する側面部3,5のうち他方側)の一部から突出した切片51と、接合面部13の上縁の切片51の突出した部分以外で側面部5側(隣接する側面部3,5のうち一方側)の他部から突出した接合片52とを備えている。
切片51は、角部4で側面部3,5とフランジ部7,9との間に生じる隙間を容器本体11の外側から塞ぐ機能部位をなす。接合片52は、第二フランジ部9の下面側に貼合されて、角部4における側面部3,5どうしの連結を補強する機能部位をなす。
【0018】
<遮蔽構造の詳細構成>
本実施形態に係る遮蔽構造50の構成を、
図3を用いて詳説する。
切片51は、接合面部13の上縁から上方へ向かって突出した紙片で形成されている。切片51は、接合面部13の上縁をなす折目(後述
図5の符号L12)で容器の外側へ折り返されて、角部4に容器本体11の外側から重合して配置されている。切片51の配置される個所は、角部4上端の近傍の領域であり、上記の隙間が生じやすい領域である。切片51が隙間に重合して配置されるとは、容器本体11の側面部を外側から視たときに、切片51が上記の隙間に重複して配置されることである。
本実施形態の切片51は、具体的には、第一側面部3(隣接する側面部3,5の他方)の端縁3aの上端に接する頂点を有する三角形状に形成されている。
【0019】
切片51の形状は、上記の三角形状に限定されない。切片51の形状は角部4に生じる微小な隙間を塞ぎ得る面形状であることが好ましい。
切片51の大きさは、特に限定されないが、角部4に生じる微小な隙間を塞ぎ得る大きさであることが好ましい。
【0020】
接合片52は、接合面部13の上縁で切片51の突出した部分以外で側面部5側の他部から突出した紙片で形成されている。本実施形態の接合片52は、切片51よりも大きな三角形状に形成されている。
接合片52の形状は、上記の三角形状に限定されないが、フランジ部9の下面側に確実に貼合させる観点から、フランジ部9の下面側に貼合する貼合面を確保し得る面形状を有することが好ましい。
接合片52の大きさは、特に限定されないが、フランジ部9の下面側に確実に貼合させる観点から、フランジ部9の下面側に貼合する貼合面を確保し得る大きさであることが好ましい。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の遮蔽構造50で、切片51は接合面部13の上縁の第一側面部3側で角部4の近傍に配置されており、接合片52は接合面部13の上縁の第二側面部5側で切片51よりも角部4から第二側面部5側へ離間した位置に配置されている。
すなわち、本実施形態で接合面部13の上縁には、角部4の上端から第二側面部5の延在する方向へ向かって、「小三角形」をなす切片51と「大三角形」をなす接合片52とが並べられている。
【0022】
[2.ブランクシート]
<全体構成>
図4は、容器本体11に用いるブランクシート11Sの展開図である。
図4は、容器10に組み立てられた状態で内側を向く面(以下、「表面(おもてめん)」という)を上側から視た平面図として描かれている。なお、「内側」,「外側」なる用語は、シート11Sを容器に組み立てた状態での容器の内側,外側に対応している。
【0023】
ブランクシート11Sは、底面部1に対応する長方形の底面シート1Sを有している。底面シート1Sの四辺のうち対向する一対の長辺には折目L1,L2を介して一対の第一側面シート3Sが接続されており、四辺のうち対向する一対の短辺には折目L3,L4を介して一対の第二側面シート5Sが接続されている。
【0024】
第一側面シート3Sで底面シート1Sとは反対側の辺には折目L5を介して第一フランジシート7Sが設けられている。第二側面シート5Sで底面シート1Sとは反対側の辺には折目L7を介して第二フランジシート9Sが設けられている。
第一側面シート3S,第二側面シート5Sのそれぞれは第一側面部3,第二側面部5に対応している。第一フランジシート7S,第二フランジシート9Sのそれぞれは第一フランジ部7,第二フランジ部9に対応している。
【0025】
第一フランジシート7Sは、折目L5を介して第一側面シート3Sに接続された第一領域70S(第一シート片)と、折目L6を介して第一領域70Sに接続された第二領域71S(第二シート片)とに分けられている。第一領域70Sの両端部には第一突出片シート17Sが連設されている。
第二フランジシート9Sは、折目L7を介して第二側面シート5Sに接続された第一領域90S(第一シート片)と、折目L8を介して第一領域90Sに接続された第二領域91S(第二シート片)とに分けられている。第二領域71Sの両端部には第二突出片シート19Sが連設されている。
【0026】
ブランクシート11Sを容器本体11に組み立てた状態で、第一フランジシート7Sは第一領域70S(第一シート片)と第二領域71S(第二シート片)とを折り重ねた二層構造のフランジ部(二重フランジ)をなす。
ブランクシート11Sを容器本体11に組み立てた状態で、第二フランジシート9Sは、第一領域90S(第一シート片)と第二領域91S(第二シート片)とを折り重ねた二層構造のフランジ部(二重フランジ)をなす。
【0027】
第一側面シート3Sには、折目L9を介して第一接合面シート13Sが接続されており、第二側面シート5Sには、折目L10を介して第二接合面シート12Sが接続されている。第一接合面シート13Sと第二接合面シート12Sとのそれぞれは三角形状の領域であり、折目L11を介して互いに接続されている。
第一接合面シート13S(および第二接合面シート12S)は接合面部13に対応している。
【0028】
<遮蔽構造用シート>
容器本体11に組み立てられた状態で遮蔽構造50をなす遮蔽構造用シート50Sが設けられている。
図5は、
図4において破線円で囲んだ部位(遮蔽構造用シート50Sの部位)を拡大して示す要部拡大図である。
図5に示すように、第一接合面シート13Sには折目L12を介して、切片51に対応する切片シート51Sと接合片52に対応する接合片シート52Sとが接続されている。切片シート51Sと接合片シート52Sとのそれぞれは折目L12から第一接合面シート13Sとは反対側へ延設されている。
【0029】
図4、
図5に示す切片シート51Sは、折目L9の一端に接する頂点を有する小三角形状の面状領域である。接合片シート52Sは、折目L11の一端に接する頂点を有する大三角形状の面状領域である。
切片シート51Sは、第一接合面シート13Sと第一突出片シート17S(第一フランジシート7S)との間に設けられており、第一突出片シート17Sとは切り離されている。切片シート51Sは、第一フランジシート7Sと第一側面シート3Sとの間の折目L5(
図4)よりも第一フランジシート7S側へは突出していない。
【0030】
<逆罫線>
本実施形態のブランクシート11Sで各折目L1〜L8に形成された罫線の構成例を説明する。
図6は、
図4のブランクシート11Sで折目L1,折目L5および折目L6を含む領域を拡大して示す説明図であり、
図7は
図6のA−A部分断面図である。
底面シート1Sと四つの側面シート3S,5Sとの間に設けられた各折目L1〜L4には第一罫線が形成されている。
第一罫線は、底面シート1Sに対して第一側面シート3S,第二側面シート5Sが容器の内側へ向かう折り方向へ折り曲げられるように設定された正罫線である。具体的には、
図6,
図7に示すように、折目L1には、容器の内側を向く面に対して凸設された正罫線200が形成されている。折目L2〜L4にも折目L1と同様な正罫線200が形成されている。すなわち、
図1〜
図3の容器10で、底面部1と側面部3,5との間には、容器の内側を向いた面に対して凸設された正罫線で底面部1に対して側面部3,5が折り曲げられた折目L1〜L4(第一折目)が設けられている。
【0031】
一方、第一フランジシート7S,第二フランジシート9Sにおいて、側面シート3S,5Sと第一領域70S,90Sとの間の折目L5,L7に設けられた第二罫線と、第一領域70S,90Sと第二領域71S,91Sとの間の折目L6,L8に設けられた第三罫線とは、第一罫線の折り方向とは逆向きの逆折り方向への剛性が低下された逆罫線で形成されている。このため、折目L5〜L8のそれぞれでは、シートが第一罫線の折り方向とは逆向きの折り方向へ折り返しやすくなっている。
【0032】
具体的には、
図6,
図7に示すように、折目L5および折目L6には、容器の内側を向く面に対して凹設された逆罫線210が形成されている。折目L7およびL8にも折目L5および折目L6と同様な逆罫線210が形成されている。すなわち、
図1〜
図3の容器10で、側面部3,5と第一領域70S,90Sに対応する部分との間、および、第一領域70S,90Sに対応する部分と第二領域71S,91Sに対応する部分との間には、容器の内側を向いた面に対して凹設された逆罫線でシートが折り曲げられた折目L5〜L8(第二折目、第三折目)が設けられている。
【0033】
<製造方法>
図4に示すブランクシート11Sは、下記の手順1および2で組み立てられて
図1および
図2に示す容器本体11に成形される。
手順1:第一領域70S,90Sに第二領域71S,91Sを折り重ねる折り重ね工程
手順2:折り重ね工程で得たシート11Sから容器10を組み立てる成形工程
【0034】
具体的には、手順1において、まず、折目L6,L8を介して第一領域70S,90Sに対して第二領域71S,91Sを容器の外側へ向かう方向へ折り返す。次に、折り返した第二領域71S,91Sを第一領域70S,90Sの下面側に重ね合わせる。それから、第二領域71S,91Sと第一領域70S,90Sとを接着する。
これにより、シート11Sは、
図2に示すように第一領域70S,90Sの下面側に第二領域71S,91Sを折り重ねた状態になる。この第一領域70S,90Sと第二領域71S,91Sとが重ね合わされた二重折り部位がフランジ部7,9(二重フランジ)をなす。すなわち、フランジ部7,9はシートが二層に重ね合わされた二重フランジ構造を有している。フランジ部7,9が二重フランジ構造を有しているため、フランジ部7,9の強度を確保することができる。
【0035】
次に、手順2において、折目L1,L2,L3,L4を介して底面シート1Sに対して一対の第一側面シート3Sと一対の第二側面シート5S(四つの側面シート)を容器の内側へ向かう方向へ折り立てる。それから、第一側面シート3Sと第二側面シート5Sとの隣接する辺どうしを突き合わせる。
【0036】
そして、折目L11を介して第二接合面シート12Sと第一接合面シート13Sとを折り重ね、折り重ねた第一接合面シート13Sと第二接合面シート12Sとを、第二側面シート5Sに重ね合わせる。これにより、第一接合面シート13Sと第二接合面シート12Sが互いに接着されるとともに、第一接合面シート13Sおよび第二接合面シート12Sが、第二側面シート5Sで容器の外側を向く面に接着されて、接合面部13が形成されている。
このとき、切片シート51Sは、第一側面シート3Sと第二側面シート5Sとを突き合わせた角部4で上端側近傍に配置される。また、接合片シート52Sは、第二フランジシート9Sで容器の下側を向く面に接着される。
【0037】
折目L5,L7を介して第一側面シート3S,第二側面シート5S(四つの側面シート)に対して第一領域70S,90S(第一フランジシート7S,第二フランジシート9S)を容器の外側へ向かう方向へ折り返す。さらに、第一領域70Sに設けられた第一突出片シート17Sが、第二領域91Sに設けられた第二突出片シート19Sの上面側に重ね合わされて、第二突出片シート19Sの上面側に接着される。これにより、第二フランジ部9の延出面部(第二フランジシート9Sの第一領域90Sに対応する部分)の端面と第一突出片シート17Sの側縁とが突き合わされるとともに、第一フランジ部7の延出面部(第一フランジシート7Sの第一領域70Sに対応する部分)の端面と第二突出片シート19Sの側縁とが突き合わされ、かつ、第一突出片17(第一突出片シート17Sに対応する部分)と第二突出片19(第二突出片シート19Sに対応する部分)とが重ね合わされる。
このように、側面部3,5の上縁から容器の外側へ向かって張り出されたフランジ部7,9が形成されている。
なお、上記の接着には、ヒートシールや、超音波溶着,ホットメルト剤による接着,テープ材による接着等、公知の手法を適宜使用することができる。成形速度の向上を考慮すると、ヒートシールによる接着が好ましい。
【0038】
[3.材料]
次に、容器10の各部に適用される材料について述べる。
【0039】
容器本体11(ブランクシート11S)に用いる紙素材は、紙は、一般的に用いられている紙であれば特に限定されず、植物由来のパルプを主成分とする紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。
具体的には、クラフト紙,上質紙,板紙,紙器用原紙,ミルクカートン原紙,カップ原紙,ライナ紙,塗工紙,片艶紙,グラシン紙、グラファン紙等が挙げられる。これらのなかでも、クラフト紙,上質紙、板紙,紙器用原紙,カップ原紙,片艶紙が好ましい。剛性の面から、板紙の中では高級板紙,特殊板紙,カップ原紙,クラフト紙がより好ましい。クラフト紙としては、晒クラフト紙、未晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が挙げられる。印刷適性や衛生面から、晒クラフト紙および片艶晒クラフト紙が好ましい。
【0040】
また、表裏ライナと中芯との三層で構成されたダンボールを使用しても良い。特に容器本体11の強度と成形加工性とを両立させる観点から、ダンボールの厚みの小さいマイクロフルートが好ましい。
紙素材の坪量は、強度と成形加工性の観点から、好ましくは200〜800[g/m
2]であり、より好ましくは200〜700[g/m
2]であり、さらに好ましくは200〜500[g/m
2]であり、よりさらに好ましくは300〜500[g/m
2]である。
【0041】
紙素材の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.4〜1.2[g/cm
3]であり、より好ましくは0.5〜1.0[g/cm
3]であり、さらに好ましくは0.6〜0.9[g/cm
3]であり、よりさらに好ましくは0.7〜0.9[g/cm
3]である。
紙素材の厚さは、強度と成形加工性の観点から、好ましくは200〜1000[μm]であり、より好ましくは250〜1000[μm]であり、さらに好ましくは300〜700[μm]であり、よりさらに好ましくは300〜500[μm]である。
【0042】
紙素材には、種々の添加剤が含有されてよい。内添サイズ剤としては、ロジン系,アルキルケテンダイマー系,アルケニル無水コハク酸系,スチレン−アクリル系,高級脂肪酸系、石油樹脂系等が挙げられる。内添サイズ剤以外に、公知のその他の内添剤を添加してもよい。その他の内添剤としては、填料,紙力増強剤,歩留り向上剤,pH調整剤,濾水性向上剤,耐水化剤,柔軟剤,帯電防止剤,消泡剤,スライムコントロール剤,染料・顔料等が挙げられる。
【0043】
填料としては、二酸化チタン,カオリン,タルク,炭酸カルシウム等が挙げられる。
紙素材の表裏面には、耐水性付与等を目的としたラミネートを施すことが好ましい。
具体的には、ポリエチレン,ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂,ナイロン6等の脂肪族ポリアミド系樹脂,ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0044】
紙素材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。
抄紙機としては、長網抄紙機,ギャップフォーマー型抄紙機,円網式抄紙機,短網式抄紙機等が挙げられる。
抄紙機によって形成された紙層は、例えば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダードライヤーを使用してもよい。
また、前記のようにして得られた紙に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
なお、容器10の容器本体11に用いる材料は、上記紙素材に限らず、種々の紙製資材を用いることができる。
【0045】
[4.作用効果]
本実施形態によれば、接合面部13を第二側面部5で容器の外側を向く面に貼合することで、切片51(遮蔽構造50)が角部4に容器本体11の外側から重合して配置されている。これにより、切片51の面状領域が、角部4に生じ得る隙間を容器本体11の外側から塞ぐことができる。そのため、切片51を設けるだけの簡単な構造で、紙製容器10の密閉性を確保することができる。接合片52がフランジ部9の下面側に貼合しているため、角部4で折り曲げられた接合面部13の反発力が切片51に加わる。この反発力によって切片51が角部4付近に配置されやすくなり、隙間を塞ぎやすくなる。
【0046】
切片51が端縁3aの上端に接する頂点を有する小三角形状に形成されていることで、角部4の折れ曲がり形状に切片51が追従変形しやすくなり、隙間をより確実に塞ぐことができる。
切片51が微小な面状領域を有する紙片で形成されているため、接合面部13の上縁から切片51が突出していても、切片51はフランジ部7,9に干渉しない。そのため、紙製容器10の成形性を損なうことなく密閉性を確保することができる。
切片51よりも大きい三角形状の接合片52をフランジ部9の下面側に貼合しているため、角部4で側面部3,5どうしを確実に連結することができる。
【0047】
さらに、フランジ部7,9が二重フランジ構造を有しており、また、二重フランジをなすシート片(第一領域70S,90Sと第二領域71S,91S)が逆罫線の設けられた折目L5,L6,L7,L8で折り返されることから、紙製容器10の成形性を確保しやすくなる。紙製容器10の形状に歪みが少なくなるため、切片51を所望の位置に確実に配置でき、隙間をより確実に塞ぐことができる。
【0048】
[5.そのほか]
上述の各実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
例えば、紙製容器10の形状は上述した形状に限らない。
具体的には、紙製容器10は、第一フランジ部7が長辺をなし第二フランジ部9が短辺をなす形状に限らず、第一フランジ部7が短辺をなし第二フランジ部9が長辺をなす形状であってもよい。
【0049】
図8は、第一フランジ部7が短辺をなし第二フランジ部9が長辺をなす紙製容器を組み立てるために用いるブランクシート11S′を示す。ランクシート11Sと共通の要素には共通の符号を付与して説明を省略する。
ブランクシート11S′を容器に組み立てた場合、第二接合面シート12S′が第一側面シート3S′に対応する第一側面部3の外側の面に貼合された接合面部をなすものとする。
【0050】
この場合、第二接合面シート12S′の縁部に遮蔽構造用シート50XSが設けられている。遮蔽構造用シート50XSは、折目L10の一端に接する頂点を有する小三角形状の切片シート51XSと、折目L11一端に接する頂点を有する大三角形状の接合片シート52XSとを備えている。すなわち、遮蔽構造用シート50XSは、折目L11に対して遮蔽構造用シート50Sと線対称をなす。その他の構成は
図4,
図5の遮蔽構造用シート50Sと共通している。
ブランクシート11S′を組み立てた紙製容器は、遮蔽構造用シート50XSに対応する遮蔽構造を備えており、遮蔽構造50を備えた紙製容器10と同様に、密閉性を確保することができる。
【0051】
図9は、別の実施形態に係る遮蔽構造150を備えた紙製容器100を下面側から視た拡大斜視図である。紙製容器100は、遮蔽構造150を備える点で
図1〜
図3の紙製容器10と異なり、容器本体110の構成は
図1〜
図3の容器本体11と共通している。容器本体11と共通の要素には共通の符号を付与して説明を省略する。
【0052】
遮蔽構造150は、接合面部13の上縁から延出した延出片153を備えている。延出片153は、接合面部13の上縁で容器の外側へ折り返されている。
延出片153において、側面部3側(隣接する前記側面部のうち他方側)の一部から鋭角に突出した角部を有する面状領域が切片151をなし、切片151(一部領域)以外の他の領域が接合片152をなす。すなわち、切片151と接合片152とは、延出片153を介してつながっている。
【0053】
切片151は、角部4の上端近傍に配置されて、側面部3,5とフランジ部7,9との間に生じる隙間を容器100の外側から塞ぐ機能部位をなす。
接合片152は、第二フランジ部9の下面側に貼合されて、角部4における側面部どうしの連結を補強する機能部位をなす。
図9に示すように、切片151と接合片152とは、接合面部13の上縁と向かい合う輪郭線が切片151と接合片152との境界で括れた形状をなす。
【0054】
図10は、
図9の遮蔽構造150を有する容器本体110に用いるブランクシート110Sの平面図であり、
図11は、
図10の破線円で囲まれた箇所の拡大図である。
図10および
図11のブランクシート110Sは、遮蔽構造用シート50Sに替えて遮蔽構造用シート150Sを備える点が
図4,
図5のブランクシート11Sと異なり、その他の構成は共通している。ブランクシート11Sと共通の要素には共通の符号を付与して説明を省略する。
【0055】
図11に示すように、第一接合面シート13Sには折目L12を介して延出片シート153S(150S)が接続されている。延出片シート153Sの一部領域が切片シート151Sをなし、切片シート151S以外の他の領域は接合面シート片152Sをなす。
本実施形態で切片シート151Sは、折目L9の上端から延出した辺に沿って延び、鋭角な角部を有する面状領域をなす。
【0056】
切片シート151Sは、第一フランジシート7Sと第一側面シート3Sとの間の折目L5よりも第一フランジシート7S側へ突出した領域を有する。すなわち、切片シート151Sは、平面視で第一突出片シート17S(第一フランジシート7Sの一部)に少なくとも部分的に重複して配置されている。
第一フランジシート7Sにおいて、第一突出片シート17S(切片シート151Sが重複して配置された領域)は、切片シート151Sの面形状に対応する形状に切り欠かれている。
【0057】
そのため、
図10,
図11のブランクシート110Sを用いて組み立てた紙製容器100(
図9)の遮蔽構造150は、接合面部13の上縁から突出され、かつ、第一フランジ部7の第一突出片17の部分(角部で重ね合わされた突出片の一方)を切り込んで形成された切片151を有する構造である、と言える。
【0058】
上記の遮蔽構造150によれば、延出片153を介して切片151と接合片152とがつながっているため、容器10を成形した状態で切片151と接合片152との形状が崩れにくくなり、隙間の閉塞と側面部3,5どうしの連結とを確実にすることができる。また、第一フランジ部7の一部を切り込んで切片151が形成された形状であるため、接合面部13の上縁から切片151が突出する寸法を大きく設定しやすい。そのため、角部4に生じ得る隙間を塞ぐ面状領域の面積を確保しやすい。また、接合片152により、側面部3,5どうしを確実に連結することができる。
よって、遮蔽構造150を備えた紙製容器100は、上述した遮蔽構造50を備えた紙製容器10と同様の効果を得ることができる。
【0059】
本発明が適用される紙製容器は四角トレイ型に限らず、任意の多角形状の容器であってよい。
また、本発明が適用される紙製容器のフランジ部は二重フランジ構造に限らず、一層のシートのみで構成されたフランジ部であってもよい。また、紙製容器のフランジ部は三枚以上のシートを重ね合わせた多層フランジ構造であってもよい。
遮蔽構造50,150は、紙製容器の複数の角部の一部にだけ設けられていてもよい。密閉性を確保する観点から、遮蔽構造50,150は紙製容器の全ての角部に設けられているのが好ましい。
【解決手段】紙製容器10は、底面部1から折り立てられた複数の側面部3,5と、側面部3,5の上縁から鍔状に張り出されたフランジ部7,9と、互いに隣接する側面部3,5の端縁3a,5aから延設され、側面部3,5の一方の外側の面に貼合されて側面部3,5を連結する接合面部13と、を有する紙製の容器本体11と、遮蔽構造50とを有する。遮蔽構造50は、接合面部13の上縁で隣接する側面部3,5のうち他方側の一部から突出した切片51と、接合面部13の上縁で隣接する側面部3,5のうち一方側の他部から突出した接合片52と、を有する。切片51は隣接する側面部3,5どうしと隣接するフランジ部7,9どうしとのそれぞれが突き合わされた角部4に容器本体11の外側から重合して配置される。接合片52は側面部5の上縁から延設されたフランジ部9の下面側に貼合されている。