(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る冷却装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
1.第1実施形態
以下、
図1〜
図8を参照することにより、第1実施形態に係る冷却装置について説明する。
【0013】
1.1 第1実施形態の構成
図1は、第1実施形態に係る冷却装置1、及び冷却装置1を含む半導体装置5の斜視図である。冷却装置1は、放熱基板10と、ウォータージャケット20とを備える。放熱基板10は、ウォータージャケット20に載置される。放熱基板10は、金属、とりわけ銅やアルミニウムなどの熱伝達率の比較的高い金属により構成されることが好適である。載置の方法は、例えば、接着剤を用いた接着によるものでもよく、溶接によるものでもよい。
【0014】
なお、本明細書において、放熱基板10は、「第1部材」の一例である。また、ウォータージャケット20は、「第2部材」の一例である。
【0015】
冷却装置1の内部には、放熱基板10に接する被冷却体を冷却することを目的に、粘性を有する液体の冷媒が流通する。冷媒を冷却装置1に供給するための供給管71がウォータージャケット20に接続される。また、被冷却体を冷却した後の冷媒を冷却装置1から排出するための排出管72が、ウォータージャケット20に接続される。冷媒は図示しないポンプにより、冷却装置1に供給される。
【0016】
なお、以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸及びZ軸を想定する。X軸、Y軸及びZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通である。
図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向及びX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向及びY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向及びZ2方向の両方向を含む方向である。
【0017】
図1において、冷却装置1に冷媒が供給され、冷却装置1から冷媒が排出される方向をY軸方向とする。また、冷却装置1のウォータージャケット20の底面を水平面に設置することを仮定した場合に、当該水平面においてY軸に直交する方向をX軸方向とする。更に、X軸、及びY軸に直交する方向であって、放熱基板10とウォータージャケット20との載置方向をZ軸方向とする。
【0018】
冷却装置1においては、被冷却体が冷却される。被冷却体は、冷却装置1による冷却の対象となる物体である。第1実施形態の被冷却体は、複数の半導体モジュール50A〜50Cである。ここで「半導体モジュール」とは、半導体素子(例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を含む半導体チップ)を樹脂ケースに収容した半導体モジュールである。半導体装置5は、冷却装置1と半導体モジュール50A〜50Cとを備える。3個の半導体モジュール50A〜50Cが、それぞれ3個の領域40A〜40Cにおいて、放熱基板10に接する。冷媒は、Y2方向から、供給管71を経由して、ウォータージャケット20に供給される。供給された冷媒は、放熱基板10の領域40A〜40Cに接する半導体モジュール50A〜50Cを冷却する。半導体モジュール50A〜50Cを冷却した後の冷媒は、ウォータージャケット20から、排出管72を経由してY1方向へと排出される。
【0019】
図2は、放熱基板10をZ2方向からZ1方向に見た場合の平面図である。
図3は、ウォータージャケット20をZ1方向からZ2方向に見た場合の平面図である。
図4は、
図1の断面C1における冷却装置1、供給管71及び排出管72の断面図である。
【0020】
図2及び
図4に示されるように、放熱基板10は、第1基板部11と複数のピンフィン12とを備える。
【0021】
第1基板部11は、被冷却体を設置するための板状の部材である。第1基板部11は、概略的には、設置面13と放熱面14とを含む平板状の部材である。設置面13及び放熱面14の各々は、X−Y平面に平行な平面である。設置面13は、第1基板部11におけるZ1方向に位置する面である。放熱面14は、第1基板部11におけるZ2方向に位置する面である。すなわち、設置面13と放熱面14とは第1基板部11における反対側に位置する。設置面13は「第1面」の一例であり、放熱面14は「第2面」の一例である。
【0022】
設置面13には複数の被冷却体が設置される。具体的には、設置面13には、X方向に間隔をあけて複数の矩形状の領域40A〜40Cが画定され、各領域40に相異なる被冷却体が設置される。すなわち、複数の被冷却体は、設置面13上においてX方向に配列する。各被冷却体は、例えば接着剤により設置面13に固定される。
【0023】
上記のように、第1基板部11はX−Y平面に平行な平板であることが好適であるが、これには限定されない。例えば、設置面13は、被冷却体を載置するために、当該被冷却体の形状に合わせて加工されていてもよい。また、放熱面14には勾配が設けられていてもよく、曲面であってもよい。
【0024】
複数のピンフィン12は、放熱基板10の設置面13に接する被冷却体から放熱するための部分である。複数のピンフィン12は、相互に間隔をあけて放熱面14に設置される。各ピンフィン12は、放熱面14からZ2方向に突出する柱状の突起である。一方で、
図4に示されるように、ピンフィン12は、ウォータージャケット20には接しないことが好適である。ピンフィン12は、第1基板部11に対し接着や溶接により接合されてもよい。あるいは、第1基板部11とピンフィン12とを、型を用いることにより一体成型してもよい。
【0025】
ピンフィン12は、被冷却体から第1基板部11を介して伝わる熱を、冷媒に放熱するための部材である。より詳細には、被冷却体に発生する熱は、設置面13から放熱面14に向けて第1基板部11の内部をZ2方向に伝導し、更に第1基板部11から各ピンフィン12に伝導する。ピンフィン12に到達した熱は、ピンフィン12の根元部から先端部に向けてZ2方向に伝導する。
【0026】
図2に示すように、複数のピンフィン12は、複数の行に区分される。複数の行の各々は、X軸方向に沿って相互に間隔をあけて配列する2個以上のピンフィン12の集合である。複数の行は、Y軸方向に相互に間隔をあけて配列する。
【0027】
ピンフィン12は、X軸方向において互いに等間隔に配置されることが好適である。しかし、本実施形態はこれには限定されない。X軸方向において、ピンフィン12同士の間隔はまちまちであってもよい。
【0028】
また
図2に示すように、ピンフィン12は、第1基板部11上に千鳥状に配置されることが好適である。なお、ここで「千鳥状」とは、
図2において、ある行に含まれる複数のピンフィン12が、Y軸方向から見たときに、隣接する行に含まれる複数のピンフィン12の間に位置する配置のことである。
【0029】
ピンフィン12が、第1基板部11上に千鳥状に配列されていることにより、Y2方向からY1方向に流れてきた冷媒が、2つのピンフィン12の間を通過した後すぐに、他のピンフィン12の正面に接触する。このため、冷媒の流動抵抗は大きくなる。これにより、ピンフィン12からより多くの熱を放熱することが可能となる。
【0030】
また、ピンフィン12が、第1基板部11上で千鳥状に配置される場合、とりわけ、ある行に含まれる1つのピンフィン12が、隣接する行に含まれる、X軸方向に互いに隣り合う2つのピンフィン12の中間に位置することが好適である。しかし、本実施形態はこれには限定されない。すなわち、ある行に含まれる1つのピンフィン12が、隣接する行に含まれる、X軸方向に互いに隣り合う2つのピンフィン12の中間からずれた位置に配置されてもよい。
【0031】
なお、本明細書において、ピンフィン12は「放熱部」の一例である。
【0032】
図3及び
図4に示されるように、ウォータージャケット20は、突起部21A〜21Fと、第2基板部22とを備える。第2基板部22は、第1基板部11の放熱面14に対向する面として対向面24を有する。対向面24は、X−Y平面に平行な平面である。対向面24は「第3面」の一例である。放熱面14と対向面24との間の空間が冷媒の流路である。なお、
図4に示すように、第2基板部22は、Z1方向に隆起する箇所を有していてもよい。
【0033】
ウォータージャケット20は、金属、とりわけ銅やアルミニウムなどの熱伝達率の比較的高い金属により構成されることが好適である。突起部21A〜21F、及び第2基板部22は、型を用いることにより一体成型してもよいが、成型の方法は、一体成型には限定されない。突起部21A〜21Fは、第2基板部22に対し、接着や溶接により接合されてもよい。
【0034】
また、突起部21A〜21Fは、多孔質部材であると好適である。しかし、本発明の実施形態はこれには限定されない。
【0035】
また、上記のように、ウォータージャケット20において、第2基板部22の対向面24が、ピンフィン12のZ2方向側の先端に対して離間した状態で、第2基板部22に対して設置されることが好適である。これは、ピンフィン12のZ2方向側の先端と第2基板部22とが接した状態、又は一体化された状態で冷却装置1を製造する場合、ピンフィン12のZ2方向側の先端と第2基板部22とが離間した状態に比較して、それらの寸法公差を小さくする必要が発生するためである。寸法公差を小さくする必要性により、延いては冷却装置1の製造コストが上昇する。一方で、本実施形態では、ピンフィン12のZ2方向側の先端と第2基板部22とで間隔を開けているので、接触する構成と比較して寸法公差の要求が緩和され、結果的に製造コストが低減される。ただし、本発明の実施形態はこれには限定されず、ピンフィン12のZ2方向側の先端と第2基板部22とが接した状態、又は一体化された状態であってもよい。
【0036】
図3において、複数のピンフィン12の、Z2方向からZ1方向への第2基板部22への投映像を点線で示す。突起部21A〜21Fは、対向面24上において、冷媒の流路方向における複数のピンフィン12の間に配置される。より詳細には、複数の突起部21A〜21Fの各々は、第2基板部22の対向面24からZ1方向に突出する。複数の突起部21A〜21Fの各々は、対向面24の全幅にわたりX方向に直線状に延伸する。複数のピンフィン12を区分した複数の行に着目すると、平面視において、Y軸方向に隣り合う行の間に、1個の突起部21が位置する。
【0037】
突起部21A〜21Fは、
図3のX軸方向に延在することが好適である。しかし、本発明の実施形態はこれには限定されない。例えば、複数の突起部21が、相互に間隔を開けて、
図3のX軸方向に配列する構造としてもよい。また、突起部21A〜21Fは、
図3のX軸方向に限らず、冷媒の流路方向に交差する方向であれば、任意の方向に延在してもよい。ここで、「冷媒の流路方向」とは、Y軸方向に相当する。
【0038】
また、
図3において、複数の突起部21A〜21Fが示されるが、本発明の実施形態はこれには限定されない。例えば、複数の突起部21A〜21Fのうち、1つのみの突起部21が設置される構成としてもよい。
【0039】
図5は、
図4における領域C2の拡大図である。なお
図5において、ピンフィン12A及びピンフィン12Cは、ピンフィン12B及びピンフィン12Dよりも、X1方向に奥側にあるため、点線で示す。突起部21Bは、第2基板部22上において、ピンフィン12Aとピンフィン12Bとの間に位置する。同様に、突起部21Cは、第2基板部22上において、ピンフィン12Bとピンフィン12Cとの間に位置する。突起部21Dは、隆起部23上において、ピンフィン12Cとピンフィン12Dとの間に位置する。
【0040】
突起部21A〜21Fにおける冷媒の上流側、すなわちY2方向側の面は、第2基板部22の対向面24に対して傾斜する傾斜面25A〜25Fである。具体的には、傾斜面25A〜25Fは、第1基板部11に近い先端部26A〜26Fが第2基板部22に近い基礎部27A〜27Fよりも冷媒の下流側、すなわちY1方向側に位置するように傾斜する。つまり、対向面24と傾斜面25とのなす傾斜角αは、0°を上回り、かつ90°を下回る。とりわけ、本実施形態において、傾斜面25A〜25Fは平面である。また、突起部21A〜21FのX軸に垂直な断面は直角三角形になっており、その斜辺がY2方向側に位置づけられる。
【0041】
突起部21A〜21Fは、Y2方向側の傾斜面25A〜25Fに加え、Y1方向側の背面28A〜28Fを有する。背面28A〜28Fは、対向面24に対して直交する。
【0042】
また、突起部21A〜21FのZ1方向の先端部26A〜26Fは、ピンフィン12A〜12FのZ2方向の先端部15A〜15Fよりも、Z1方向に位置する。つまり、対向面24から突起部21A〜21Fの先端部26A〜26Fまでの距離d1が、対向面24からピンフィン12A〜12Fの先端部15A〜15Fまでの距離d2を上回る。
【0043】
図5において、突起部21B〜21DのZ軸方向の高さd1は、統一されているが、本発明の実施形態はこれには限定されない。具体的には、突起部21B〜21DのZ軸方向の高さd1は、まちまちであってよい。とりわけ、突起部21B〜21DのZ軸方向の高さd1は、冷媒の下流側に位置する突起部21ほど、冷媒の上流側に位置する突起部21よりも高くてもよい。
【0044】
また、
図5において、突起部21B〜21Dの傾斜面25B〜25Dの傾斜角、すなわち傾斜面25B〜25Dの対向面24に対する傾斜角α
B〜α
Dは統一されているが、本発明の実施形態はこれには限定されない。具体的には、突起部21A〜21Fの傾斜面25A〜25Fの傾斜角α
A〜α
Fは、まちまちであってよい。とりわけ、突起部21A〜21Fの傾斜面25A〜25Fの傾斜角α
A〜α
Fは、冷媒の下流側、すなわちY1方向側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角ほど、冷媒の上流側、すなわちY2方向側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角より大きくてもよい。冷却装置1がこのような構成を有することにより、後述のように、冷媒がピンフィン12の根元に近づく度合いを、上流側と下流側とで一様に近づけることが可能となる。
【0045】
また、
図5において突起部21B〜21Dの対向面24におけるY軸方向の位置は、冷媒の流路方向における複数のピンフィン12の間であると共に、ピンフィン12から離間された位置であるが、これには限定されない。例えば、各突起部21B〜21Dの背面28B〜28Dは、当該突起部21B〜21Dの、冷媒の流路方向における下流側のピンフィン12B〜12Dに接触してもよい。
【0046】
図6は、領域C2近傍における冷媒の流れを示す説明図である。
図6において、各々の矢印は、冷媒の流れを示す。
図6に示すように、上流側であるY2方向から、下流側へとY1方向に流入してきた冷媒は、
図6の「FA1」の矢印に示されるように、突起部21Bの傾斜面25Bに接触すると、傾斜面25Bの傾斜に沿って移動する。その後、冷媒がピンフィン12Bに接触すると、
図6の「FB1」の矢印に示されるように、冷媒はピンフィン12Bに沿って、Z1方向に流れる。
【0047】
傾斜面25Bに沿って上昇した冷媒の一部は、突起部21Bの背面28B及びピンフィン12Bに沿ってZ2方向に進行し、ピンフィン12Bと対向面24との隙間をY1方向に通過する。ピンフィン12Bと対向面24との隙間を通過した冷媒は、
図6の「FA2」の矢印に示されるように、突起部21Cの傾斜面25Cに接触すると、傾斜面25Cの傾斜に沿って上昇する。その後、冷媒がピンフィン12Cに当たると、
図6の「FB2」の矢印に示されるように、冷媒はピンフィン12Cに沿って、略Z1方向に流れる。
【0048】
同様に、ピンフィン12Cと対向面24との隙間を通過した冷媒は、
図6の「FA3」の流れに示されるように、突起部21Dの傾斜面25Dに接触すると、傾斜面25Dの傾斜に沿って移動する。
【0049】
これらにより、冷媒はピンフィン12B及び12Cの根元に近づく。そのため、第1基板部11の設置面13が接する被冷却体が効率的に冷却される。より詳細には、上記のように、被冷却体に発生する熱は、設置面13から放熱面14に向けて第1基板部11の内部をZ2方向に伝導し、更に第1基板部11から各ピンフィン12に伝導する。各ピンフィン12の根元に近づく冷媒の流量が増加することにより、各ピンフィン12に伝導した被冷却体からの熱は、より効率的に放熱される。これにより、被冷却体はより効率的に冷却される。
【0050】
ここで、突起部21A〜21Fの傾斜面25A〜25Fの傾斜角、すなわち傾斜面25A〜25Fの対向面24に対する傾斜角α
A〜α
Fが小さいほど、放熱面14と対向面24との間を冷媒が流通する際の抵抗が減少する。これにより、冷却装置1への冷媒の入口と、冷却装置1からの冷媒の出口との間の圧損が、より低くなる。圧損が低くなるほど、冷却装置1に冷媒を流入させるための負荷が小さくなる。これにより冷却装置1に冷媒を供給するためのポンプの故障の頻度が低くなるというメリットが得られる。一方で、突起部21A〜21Fの傾斜面25A〜25Fの傾斜角α
A〜α
Fが大きいほど、冷媒が傾斜面25A〜25Fの傾斜に沿って移動する際の、対向面24に対する角度が大きくなる。このため、ピンフィン12の根元に近づく冷媒の量が増加する。延いては、第1基板部11の設置面13が接する被冷却体が、より効率的に冷却されるというメリットが得られる。
【0051】
例として、傾斜面の傾斜角が、30°、45°、60°、及び75°の4つのパターンの突起部を有するモデルで流体解析をしたところ、傾斜角が30°のモデルにおいて、冷却装置1への冷媒の入口と、冷却装置1からの冷媒の出口との間の圧損が最も低くなった。一方で、傾斜角が75°のモデルにおいて、ピンフィン12の根元に近づく冷媒の量が、最も多かった。
【0052】
図7は、第1の対比例としての冷却装置50における冷媒の流れを示す図である。なお、冷却装置1と冷却装置50とで共通する構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能に関する説明は省略する。また、
図7において、各々の矢印は、冷媒の流れを示していると同時に、長さが長いほど流速が速いことを示す。
【0053】
冷却装置50は冷却装置1とは異なり、突起部21A〜21Fを備えない。このため、たとえばピンフィン12Bと第2基板部22の対向面24との隙間を通過した冷媒は、
図7において「FD1」の矢印に示される流れで、ピンフィン12Bとピンフィン12Cとの間の空間に流入した後、よりZ1方向に加勢されることがない。このため、
図7において「FE1」の矢印で示されるように、ピンフィン12Bとピンフィン12Cとの中間部において、冷媒の流れは略Y軸方向となる。また、
図7において「FF1」の領域に示されるように、冷却装置1の場合とは異なり、ピンフィン12Cの上流側、すなわちY2方向側の端部16Cの近傍において、Z1方向の冷媒の流れは発生しない。これにより、ピンフィン12Cの根元近傍における冷媒の流量が少なくなり、冷却装置50においては、冷却装置1に比較して、冷媒と被冷却体との熱交換量は小さくなってしまう。
【0054】
なお、
図7の「FD1」と「FD2」の矢印に示されるように、ピンフィン12Bと第2基板部22の対向面24との隙間を通過した後の冷媒の流れに比較して、ピンフィン12Cと第2基板部22の対向面24との隙間を通過した後の冷媒の流れは、Z1方向への勢いが弱い。また、
図7の「FE1」と「FE2」の各々の領域の矢印に示されるように、より上流側、すなわちY2方向側の冷媒の流れに比較して、より下流側、すなわちY1方向側の冷媒の流れは、流速が遅く、流量も小さい。とりわけ、Z1方向側において、上流側の冷媒の流れに比較して下流側の冷媒の流れの流速はより遅く、流量もより小さい。これは、
図4を参照すれば分かるように、ピンフィン12と第2基板部22の対向面24との隙間が上流側、すなわち供給管71側であるほど、冷媒の流れがZ2方向からZ1方向に加勢されているためである。
【0055】
このため、上記のように、冷却装置1において、突起部21A〜21FのZ軸方向の高さ、すなわち対向面24から先端部26A〜26Fまでの距離d1は、冷媒の下流側に位置する突起部21ほど、冷媒の上流側に位置する突起部21よりも高くすることが好適である。これにより、冷媒がピンフィン12の根元に近づく度合いを、上流側と下流側とで一様に近づけることが可能となる。
【0056】
同様に、冷却装置1において、突起部21A〜21Fの傾斜面25A〜25Fの傾斜角α
B〜α
Fは、冷媒の下流側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角ほど、冷媒の上流側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角より大きくことが好適である。これにより、冷媒がピンフィン12の根元に近づく度合いを、上流側と下流側とで一様に近づけることが可能となる。
【0057】
図8は、第2の対比例としての冷却装置60における冷媒の流れを示す図である。なお、冷却装置1と冷却装置60とで共通する構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能に関する説明は省略する。また、
図8において、各々の矢印は、冷媒の流れを示す。
【0058】
冷却装置60は冷却装置1とは異なり、X軸に垂直な断面が直角三角形である突起部21A〜21Fの代わりに、X軸に垂直な断面が長方形の突起部61A〜61Fを備える。より詳細には、突起部61A〜61FのX軸に垂直な断面は、一辺がY軸方向、他の一辺がZ軸方向の長方形となっている。
【0059】
図8の「FG1」の矢印に示されるように、Y2方向からY1方向に流入してきた冷媒は、突起部61Bに接触すると、突起部61BのX軸に垂直な断面に沿って、Z1方向に移動した後、断面の角において、Y1方向に流れを変える。すなわち、突起部61Bの近傍を流れる冷媒は、Z1方向に加勢されることなく、ピンフィン12Bに接触する。このため、
図8に示されるように、ピンフィン12Bに接触した冷媒は、「FH1」の矢印の流れと
図6の「FB1」の矢印の流れとを比較すれば明らかなように、冷却装置1の場合に比較して、流速が遅く、流量も小さい。
【0060】
Y1方向に流れを変えた冷媒の一部は、突起部61Bの背面62B及びピンフィン12Bに沿ってZ2方向に進行する。
図8の「FG2」の矢印に示されるように、ピンフィン12Bと第2基板部22の対向面24との隙間を通過した冷媒は、突起部61Cに接触すると、突起部61CのX軸に垂直な断面に沿って、Z1方向に移動する。その後、Z1方向に移動した冷媒は、断面の角において、Y1方向に流れを変える。すなわち、突起部61Cの近傍を流れる冷媒は、Z1方向に加勢されることなく、ピンフィン12Cに接触する。このため、
図8に示されるように、ピンフィン12Cに接触した冷媒は、「FH2」の流れと
図6の「FB2」とを比較すれば明らかなように、冷却装置1の場合に比較して、流速が遅く、流量も小さい。
【0061】
同様に、
図8の「FG3」の流れに示されるように、ピンフィン12Cと第2基板部22の対向面24との隙間を通過した冷媒は、突起部61Dに接触すると、突起部61DのX軸に垂直な断面に沿って、Z1方向に移動する。その後、Z1方向に移動した冷媒は、断面の角において、Y1方向に流れを変える。
【0062】
これらにより、冷却装置60において、冷媒はピンフィン12B及び12Cの根元に近づくものの、冷却装置1に比較すると、ピンフィン12B及び12Cの根元に近づく冷媒の量は少量である。
【0063】
一方、冷却装置1においては、突起部21A〜21Fの冷媒の上流側の面が、第2基板部22の対向面24に対して傾斜する傾斜面25A〜25Fであるため、ピンフィン12B及び12Cの根元に近づく冷媒の量が、冷却装置50及び冷却装置60に比較して多量である。そのため、第1基板部11の設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0064】
1.2 第1実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0065】
本実施形態に係る冷却装置1は、被冷却体に接する設置面13と、設置面13の反対側の放熱面14とを含み、放熱面14から突出する複数のピンフィン12を有する放熱基板10を備える。また、冷却装置1は、放熱面14に対向する対向面24を含むウォータージャケット20を備える。これら放熱基板10とウォータージャケット20との間に冷媒が流通する。ウォータージャケット20は、冷媒の流路方向における複数のピンフィン12の間に、対向面24から突出する突起部21を有する。突起部21における冷媒の上流側の面は、放熱面14に近い端部が対向面24に近い端部よりも冷媒の下流側に位置するように、対向面24に対して傾斜する傾斜面である。
【0066】
この構成によれば、放熱面14から突出するピンフィン12の先端付近を通過した冷媒が、対向面24から突出する突起部21によってピンフィン12の根元に近づく。これにより、突起部21を備えない構成に比較して、設置面13が接する被冷却体が効率的に冷却される。
【0067】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、対向面24は、ピンフィン12の先端部15から離間した状態で放熱面14に対向してもよい。突起部21A〜21Fの先端部26A〜26Fは、ピンフィン12の先端部15よりも放熱面14側に位置してもよい。
【0068】
この構成によれば、放熱面14から突出するピンフィン12の先端部15と対向面24との隙間を通過した冷媒が、対向面24から突出する突起部21によって、ピンフィン12の先端部15よりもZ1方向側に流され、ピンフィン12の根元に近づく。これにより突起部21A〜21Fの先端部26A〜26Fが、ピンフィン12の先端部15よりも対向面24側に位置する場合に比較して、設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0069】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、ウォータージャケット20は、流路方向に複数の突起部21を有してもよい。
【0070】
この構成によれば、流路方向に突起部21が複数存在するため、ピンフィン12の根元に近づく冷媒の量がより増加する。これにより、設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0071】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、冷媒の下流側に位置する突起部21の高さは、冷媒の上流側に位置する突起部21の高さよりも高くてもよい。
【0072】
冷却装置1においては、突起部21付近を経由した後、放熱面14に向かう冷媒の流れの強さが、冷媒の下流側ほど弱い。このため、上記の構成によれば、下流側の突起部21ほど、その高さをより高くすることにより、冷媒がピンフィン12の根元に近づく度合いを、上流側と下流側とで一様に近づけることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、冷媒の下流側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角は、冷媒の上流側に位置する突起部21が有する傾斜面25の傾斜角より大きくてもよい。
【0074】
冷却装置1においては、突起部21付近を経由した後、放熱面14に向かう冷媒の流れが、冷媒の下流側ほど弱い。このため、上記の構成によれば、突起部21の傾斜面25の傾斜角を、下流側ほどより急にすることにより、冷媒がピンフィン12の根元に近づく度合いを、上流側と下流側とで一様に近づけることが可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、突起部21は、複数のピンフィン12同士の間を、流路方向に交差する方向に延在してもよい。
【0076】
この構成によれば、突起部21が、複数のピンフィン12同士の間を、冷却装置1の流路方向に交差する方向に延在することにより、冷却装置1の流路方向から見て、ピンフィン12とピンフィン12との間を流れる冷媒を、ピンフィン12の根元に近づけることが可能となる。
【0077】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、複数のピンフィン12の放熱面14における配列が千鳥状であってもよい。
【0078】
この構成によれば、複数のピンフィン12の第2面における配列が格子状である場合に比較して、冷却装置1の流路方向から見て、ピンフィン12とピンフィン12との間を流れる冷媒が、それらのピンフィン12の間を通り過ぎた後、すぐに他のピンフィン12の正面に接触する。このため、冷媒の流動抵抗が大きくなる。これにより、ピンフィン12からより多くの熱を放熱することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、突起部21の背面28が、ピンフィン12に接触してもよい。
【0080】
この構成によれば、ピンフィン12の先端部15の近傍を経由した冷媒が、次のピンフィン12に衝突するまでに、突起部21の傾斜面25を流れる距離がより長くなる。このため、ピンフィン12の根元に近づく冷媒の量がより増加する。これにより、設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0081】
また、本実施形態に係る冷却装置1において、突起部21は多孔質部材であってもよい。
【0082】
この構成によれば、突起部21が多孔質部材であることで、突起部21自体の冷媒と接する面積が拡大すると共に、かつ、突起部21近傍における冷媒の流れがかく乱される。このため、ピンフィン12に様々な方向から冷媒が接触する。これにより、ピンフィン12がより多くの熱を放熱することが可能となる。
【0083】
2.第2実施形態
以下、
図9を参照することにより、第2実施形態に係る冷却装置について説明する。
【0084】
2.1 第2実施形態の構成
図9は、
図6に対応する、第2実施形態に係る冷却装置1Aの断面図である。なお、説明の簡略化のため、第1実施形態に係る冷却装置1と第2実施形態に係る冷却装置1Aとで共通する構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能に関する説明は省略する。また、以降では主として、第2実施形態に係る冷却装置1Aが、第1実施形態に係る冷却装置1と相違する点について説明する。
【0085】
冷却装置1Aは、冷却装置1とは異なり、突起部21A〜21Fの代わりに、突起部29A〜29Fを備える。突起部21A〜21Fにおいては、傾斜面25A〜25Fが平面であった。突起部29A〜29Fは、これとは異なり、曲面の傾斜面30A〜30Fを備える。
【0086】
より詳細には、傾斜面30A〜30Fの対向面24に対する勾配は、冷媒の流路方向であるY軸方向において、冷媒の下流側であるY1方向ほど急になる。
【0087】
図9に示すように、上流側であるY2方向から、下流側へとY1方向に流入してきた冷媒は、
図6の「FA4」の矢印に示されるように、突起部29Bの傾斜面30Bに接触すると、傾斜面30Bの傾斜に沿って移動する。その後、冷媒がピンフィン12Bに接触すると、
図6の「FB3」の矢印に示されるように、冷媒はピンフィン12Bに沿って、Z1方向に流れる。
【0088】
この際、第2実施形態に係る冷却装置1Aにおいては、冷媒が突起部29Bの傾斜面30Bに沿って移動するに伴い、対向面24に対する移動の角度が急になる。これにより、「FA4」に示される冷媒の流れは、第1実施形態の場合に比較して、Z1方向に加勢される度合いがより一層高くなる。このため、
図9に示されるように、ピンフィン12Bに接触した冷媒は、「FB3」の流れと
図6の「FB1」の流れとを比較すれば明らかなように、第1実施形態の場合に比較して、流速がより速く、流量もより大きい。
【0089】
Y1方向に流れを変えた冷媒の一部は、突起部29Bの背面28B及びピンフィン12Bに沿ってZ2方向に進行し、ピンフィン12Bと対向面24との隙間をY1方向に通過する。ピンフィン12Bと対向面24との隙間を通過した冷媒は、
図9の「FA5」の矢印に示されるように、突起部29Cの傾斜面30Cに接触すると、傾斜面30Cの傾斜に沿って移動する。その後、冷媒がピンフィン12Cに接触すると、
図9の「FB4」の矢印に示されるように、冷媒はピンフィン12Cに沿って、Z1方向に流れる。
【0090】
この際、冷媒が突起部29Bの傾斜面30Bに沿って移動した場合と同様に、冷媒が突起部29Cの傾斜面30Cに沿って移動するに伴い、対向面24に対する移動の角度が急になる。これにより、「FA5」に示される冷媒の流れは、第1実施形態の場合に比較して、Z1方向に加勢される度合いがより一層高くなる。このため、
図9に示されるように、ピンフィン12Cに接触した冷媒は、「FB4」の流れと
図6の「FB2」の流れとを比較すれば明らかなように、第1実施形態の場合に比較して、流量が大きい。
【0091】
同様に、ピンフィン12Cと対向面24との隙間を通過した冷媒は、
図9の「FA6」の流れに示されるように、突起部29Dの傾斜面30Dに接触すると、傾斜面30Dの傾斜に沿って移動する。
【0092】
これらにより、第1実施形態に係る冷却装置1の場合に比較して、冷媒はピンフィン12B及び12Cの根元に、より一層近づく。
【0093】
2.2 第2実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0094】
本実施形態に係る冷却装置1Aにおいては、傾斜面30A〜30Fは曲面となっており、とりわけ各々の勾配が、冷媒の下流側になるほど急になっている。
【0095】
この構成によれば、冷媒が、放熱面14から突出するピンフィン12の根元に近づく度合いが、第1実施形態に係る冷却装置1の場合に比較して、より一層高まる。これにより、設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0096】
また、傾斜面30A〜30Fの各々の勾配は、冷媒の上流側になるほど緩やかになっている。
【0097】
この構成によれば、傾斜面の勾配が、冷媒の上流側から急である第1実施形態に係る冷却装置1の場合に比較して、冷却装置1Aへの冷媒の入口と、冷却装置1Aからの冷媒の出口との間の圧損が低くなる。
【0098】
3.第3実施形態
以下、
図10を参照することにより、第3実施形態に係る冷却装置について説明する。
【0099】
3.1 第3実施形態の構成
図10は、
図6に対応する、第3実施形態に係る冷却装置1Bの断面図である。なお、説明の簡略化のため、第1実施形態に係る冷却装置1と第3実施形態に係る冷却装置1Bとで共通する構成要素については、同一の符号を用いると共に、その機能に関する説明は省略する。また、以降では主として、第3実施形態に係る冷却装置1Bが、第1実施形態に係る冷却装置1と相違する点について説明する。
【0100】
冷却装置1Bは、冷却装置1とは異なり、ピンフィン12の代わりにピンフィン17を備える。ピンフィン17は、ピンフィン12が備える先端部15の代わりに、先端部18を備える。
【0101】
図10に示されるように、先端部18は先端部15と異なり、少なくとも冷媒の下流側であるY1方向側の角部がR状となっている。ここで、「R状」とは、先端部18において側面と底面とが曲面状に連続する形状のことである。
図10に示される断面視では、側面と底面とは円弧状に連続する。
【0102】
なお、
図10においては、先端部18において、冷媒の下流側であるY1方向側に限らず、先端部18の側面と底面とを接合する円の全周にわたり、角部がR状である形状が示されている。
【0103】
上流側であるY2方向から、下流側へとY1方向に流入してきた冷媒は、
図10の「FA7」の矢印に示されるように、突起部21Bの傾斜面25Bに接触すると、傾斜面25Bの傾斜に沿って移動する。その後、冷媒がピンフィン12Bに接触すると、
図10の「FB5」の矢印に示されるように、冷媒はピンフィン12Bに沿って、Z1方向に流れる。
【0104】
傾斜面25Bに沿って上昇した冷媒の一部は、突起部21Bの背面28B及びピンフィン17Bに沿ってZ2方向に進行し、ピンフィン17Bと対向面24との隙間をY1方向に通過する。
【0105】
この際、ピンフィン17Bと対向面24との隙間をY1方向に通過する冷媒のうち、よりピンフィン17B側を流れる冷媒は、粘性流体が流路を構成する壁部の形状に沿って流れる「コアンダ効果」により、ピンフィン17Bの先端部18Bの形状に沿って流れる。これにより、
図10の「FC1」の矢印に示されるように、よりピンフィン17B側を流れる冷媒は、先端部18B近傍の通過により、Z1方向に加勢される。
【0106】
冷媒は粘性を有するため、よりピンフィン17B側を流れる冷媒が、Z1方向に加勢されることに伴い、ピンフィン17Bと対向面24との隙間をY1方向に通過する冷媒のうち、より対向面24側を流れる冷媒も、「FC1」の矢印で示される冷媒の流れに引っ張られてZ1方向に加勢される。これにより、「FA8」に示される冷媒の流れは、第1実施形態の場合に比較して、Z1方向に加勢される度合いがより一層高くなる。このため、
図10に示されるように、ピンフィン17Cに接触した冷媒は、「FB6」の流れと
図6の「FB2」の流れとを比較すれば明らかなように、第1実施形態の場合に比較して、流速がより速く、流量もより大きい。
【0107】
Y1方向に流れを変えた冷媒の一部は、突起部21Cの背面28C及びピンフィン17Cに沿ってZ2方向に進行し、ピンフィン17Cと対向面24との隙間をY1方向に通過する。
【0108】
この際、ピンフィン17Cと対向面24との隙間をY1方向に通過する冷媒のうち、よりピンフィン17C側を流れる冷媒は、「FC1」の矢印で示される冷媒の流れと同様に、「コアンダ効果」により、ピンフィン17Cの先端部18Cの形状に沿って流れる。これにより、
図10の「FC2」の矢印に示されるように、よりピンフィン17C側を流れる冷媒は、先端部18C近傍の通過により、Z1方向に加勢される。
【0109】
ピンフィン17Cと対向面24との隙間をY1方向に通過する冷媒のうち、対向面24側を流れる冷媒も、「FC2」の矢印で示される冷媒の流れに引っ張られてZ1方向に加勢される。これにより、「FA9」に示される冷媒の流れは、第1実施形態の場合に比較して、Z1方向に加勢される度合いがより一層高くなる。
【0110】
なお、先端部18において、少なくとも冷媒の下流側であるY1方向側の角部がR状となっている態様、及び、先端部18の側面と底面とを接合する円の全周にわたり、角部がR状である形状となっている態様について記載したが、第3実施形態に係る冷却装置1Bの態様はこれらには限定されない。例えば、冷媒の上流側であるY2方向側の角部のみがR状となっていてもよい。これにより、ピンフィン17B及び17Cと、対向面24との隙間に冷媒が呼び込まれることで、突起部21C及び21Dと冷媒との衝突を助長することが可能となる。延いては、第1実施形態の場合に比較して、「FA8」及び「FA9」に示される冷媒の流れや「FB6」に示される冷媒の流れが、Z1方向に加勢される度合いがより一層高くなる。
【0111】
3.2 第3実施形態が奏する効果
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0112】
本実施形態に係る冷却装置1Bにおいては、ピンフィン17の先端部18における、冷媒の下流側であるY2方向側の角部はR状である。
【0113】
コアンダ効果によって、放熱面14から突出するピンフィン17の先端部18の形状に沿って冷媒が流れる。上記の構成によれば、ピンフィン17の先端部18における冷媒の下流側の角部をR状にすることにより、ピンフィン17の先端部18近傍を経由した冷媒が、ピンフィン12の先端部15における冷媒の下流側の角部がR状になっていない、第1実施形態に係る冷却装置1の場合に比較して、より一層ピンフィン17の根元に近づく。これにより、設置面13が接する被冷却体がより効率的に冷却される。
【0114】
4.変形例
本開示は、以上に例示した実施形態に限定されない。具体的な変形の態様を以下に例示する。
【0115】
4.1 変形例1
例えば、突起部21において、冷媒の流路方向であるY軸方向に交差するX軸方向における中央側の高さほど、両端側の高さよりも高くしてもよい。本実施例では、供給管71及び排出管72が冷却器の中央側に設けられているためである。
【0116】
図11は、本変形例に係る冷却装置1CをY2方向から断面視した断面図の例である。
冷却装置1Cにおいて、第1基板部11からZ2方向に、複数のピンフィン12G〜12Jが突出する。これら複数のピンフィン12G〜12Jは、
図11の断面視において、X1方向側からX2方向側に向けて、符号順に等間隔に位置する。なお、
図11においては4本のピンフィン12G〜12Jが示されるが、ピンフィン12の本数は任意の複数本であってよい。また、
図11において、複数のピンフィン12G〜12Jは、後述の突起部31から見て、Y1方向に奥側に位置するため、点線で示される。
【0117】
冷却装置1Cにおいて、第2基板部22の対向面24から、突起部31が突出する。突起部31はX軸方向に延伸する。
【0118】
図11には、X軸方向における位置C1〜C3が図示されている。位置C1は、冷却装置1Cの内部の流路における幅方向(X軸方向)の中点の位置である。位置C3は、冷却装置1Cの内部の流路における幅方向の端部の近傍の位置(具体的には位置C1からみてX2方向の位置)である。位置C2は、X軸方向において位置C1と位置C3との間の位置である。
【0119】
突起部31の高さ、すなわちZ軸方向の長さは、X軸方向における位置C1において最も高く、位置C1からX軸方向に離れるに従い低くなる。
【0120】
図11に示す例においては、位置C1における突起部31の高さd3は、位置C2における突起部31の高さd4を上回り、位置C2における突起部31の高さd4は、位置C3における突起部31の高さd5を上回る(d3>d4>d5)。
【0121】
なお、突起部31の高さは、位置C1から離れるに従い低くなるが、位置C1からの距離と低くなる度合いとは比例関係にあってもよく、比例関係になくてもよい。例えば、突起部31の上縁の一部が水平であってもよい。
【0122】
冷却装置1Cの流路方向に交差する方向であるX軸方向における中央側に比較して、両端側は冷媒の流速が遅くなる。このため、突起部31の中央側ほど、その高さを高くする構成により、冷却装置1Cにおける冷媒の流速を、流路方向に交差する方向であるX軸方向に渡って、一様に近づけることが可能となる。
【0123】
なお、冷媒の流路方向であるY軸方向に交差するX軸方向における高さを、中央側の高さほど両端側の高さより高くする態様について述べたが、本変形例に係る冷却装置1Cの態様は、これには限定されない。例えば、供給管71及び排出管72の位置に応じて、X軸方向における任意の箇所の高さを、他の箇所より高くしてもよい。
【0124】
4.2 変形例2
第1実施形態に係る冷却装置1においては、設置面13に設置された被冷却体として半導体モジュール50A〜50Cが冷却されるとした。しかし、被冷却体は半導体モジュールに限定されない。例えば、半導体モジュール50A〜50Cの代わりに、半導体素子が冷却されてもよい。また、半導体部品(半導体モジュール又は半導体素子)以外の要素も被冷却体として冷却可能である。
【0125】
4.3 変形例3
第1実施形態に係る半導体装置5は、冷却装置1を備えるとしたが、本発明の実施形態はこれには限定されない。例えば、半導体装置5は、冷却装置1の代わりに、第2実施形態に係る冷却装置1A又は第3実施形態に係る冷却装置1Bを備えてもよい。
【解決手段】被冷却体に接する第1面13と、第1面13の反対側の第2面14とを含み、第2面14から突出する複数の放熱部12を有する第1部材10と、第2面14に対向する第3面24を含む第2部材20とを備え、第1部材10と第2部材20との間に冷媒が流通する冷却装置1であって、第2部材20は、冷媒の流路方向における複数の放熱部12の間に、第3面24から突出する突起部21を有し、突起部21における冷媒の上流側の面は、第2面14に近い端部26が第3面24に近い端部27よりも冷媒の下流側に位置するように、第3面24に対して傾斜する傾斜面25である。