(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のデッドタイムの後の第2のデッドタイムにおいて、前記制御部は、前記整流回路に含まれる複数のスイッチング素子の内、前記第1のデッドタイムにおいてオンしていた複数のスイッチング素子のいずれかをオフにする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
フルブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路と、誘導成分と、前記誘導成分に直列接続された負荷と、前記負荷を短絡する短絡部と、前記スイッチング回路及び前記短絡部を制御する制御部とを含む電力変換装置の制御方法であって、
前記スイッチング回路の入力端子に直流電圧を入力するステップと、
前記スイッチング回路を位相シフト方式で駆動制御するステップと、
第1のデッドタイムにおいて、前記スイッチング回路の前記入力端子に前記直流電圧が入力された状態で、前記負荷が短絡されるように前記短絡部を制御する制御ステップとを含み、
前記負荷は、トランスであり、
前記トランスの1次巻線は、前記スイッチング回路の出力端子間に接続され、
前記短絡部は、前記トランスの2次巻線に接続される、複数のスイッチング素子を含む整流回路であり、
前記スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子の各々は、容量成分が並列接続され、
前記制御ステップは、前記第1のデッドタイムにおいて、前記容量成分に蓄積されているエネルギーが前記誘導成分に移動するように、前記スイッチング回路及び前記整流回路に含まれるスイッチング素子の各々をオン及びオフ制御するステップを含む、制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
フルブリッジ回路を用いたDC/DCコンバータに共通する課題として、軽負荷であるほどZVS制御が難しい問題がある。特許文献1に開示された技術では、スイッチング電流を電流検出回路で検出してZVS制御可能か否かを判断しているため、回路構成及び制御が複雑になるという問題がある。また、伝達モード期間中に短絡ループを形成しているため、制御タイミングの僅かなズレにより過電流が流れる可能性がある。そのため、ロバスト性(堅牢性)が低いという問題もある。
【0010】
したがって、本開示は、簡単な回路構成であり、制御が容易であり、且つ負荷変動の影響を受けずに安定してZVS制御が可能な電力変換装置、それを備えた車両及び制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、簡単な回路構成であり、制御が容易であり、且つ負荷変動の影響を受けずに安定してZVS制御が可能である。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の第1の局面に係る電力変換装置は、フルブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路と、誘導成分と、誘導成分に直列接続された第1の負荷と、第1の負荷を短絡する短絡部と、スイッチング回路及び短絡部を制御する制御部とを含み、制御部は、スイッチング回路を位相シフト方式で駆動制御し、第1のデッドタイムにおいて、スイッチング回路の入力端子に直流電圧が入力された状態で、第1の負荷が短絡されるように短絡部を制御する。これにより、スイッチング回路の構成要素に蓄積されているエネルギーを誘電成分に容易に移動させることができ、ZVS制御が容易になる。
【0014】
(2)好ましくは、第1の負荷は、トランスであり、トランスの1次巻線は、スイッチング回路の出力端子間に接続され、短絡部は、トランスの2次巻線に接続される。
【0015】
(3)より好ましくは、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子の各々は、容量成分が並列接続され、第1のデッドタイムにおいて、制御部は、容量成分に蓄積されているエネルギーが誘導成分に移動するように、スイッチング回路及び整流回路に含まれるスイッチング素子の各々をオン及びオフ制御する。これにより、容量成分のエネルギーにより誘導成分のエネルギーを増大でき、ZVS制御が容易になる。
【0016】
(4)さらに好ましくは、第1のデッドタイムにおいて、制御部は、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子の内、1つの第1スイッチング素子に並列接続された容量成分に蓄積されているエネルギーが誘導成分に移動するように、且つ、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子の内、第1スイッチング素子とは別の第2スイッチング素子に並列接続された容量成分が充電されるように、スイッチング回路及び整流回路に含まれるスイッチング素子の各々をオン及びオフ制御する。これにより、第1スイッチング素子の容量成分に蓄積されているエネルギーにより、誘導成分のエネルギーを増大でき、且つ、第2スイッチング素子の容量成分の充電時に、誘導成分のエネルギーを増大させることができ、ZVS制御が一層容易になる。
【0017】
(5)好ましくは、第1のデッドタイムにおいて、制御部は、スイッチング回路の入力端子に入力される直流電圧がトランスの1次巻線に入力されないように、且つ、エネルギーを誘導成分に移動させるための閉回路が形成されるように、スイッチング回路に含まれる複数のスイッチング素子の各々をオン及びオフ制御する。これにより、誘導成分のエネルギーを増大させることができ、ZVS制御が容易になる。
【0018】
(6)より好ましくは、第1のデッドタイムの後の第2のデッドタイムにおいて、制御部は、整流回路に含まれる複数のスイッチング素子の内、第1のデッドタイムにおいてオンしていた複数のスイッチング素子のいずれかをオフにする。これにより、容量成分に蓄積された電荷を引出すことができ、スイッチング素子の端子間電圧が低下するので、ZVS制御が容易になる。
【0019】
(7)さらに好ましくは、制御部は、スイッチング回路の入力端子に直流電圧が入力された状態で、整流回路から電力を出力する伝達モードと、伝達モードに続く第1のデッドタイムと、第1のデッドタイムに続き、誘導成分に蓄積されたエネルギーをスイッチング回路内で還流させる還流モードと、還流モードに続く第2のデッドタイムとが実現されるように、スイッチング回路及び整流回路に含まれる複数のスイッチング素子の各々をオン及びオフ制御する。これにより、スイッチング回路に含まれるスイッチング素子の容量成分に蓄積されているエネルギーを誘導成分に移動させることができ、ZVS制御に必要な電流を増加させることができる。
【0020】
(8)好ましくは、スイッチング回路は、4つのスイッチング素子により構成されたフルブリッジ回路を含み、整流回路は、2つのスイッチング素子を含み、フルブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子の内、トランスの1次巻線の端子であって誘導成分に接続されていない第1端子に接続された2つのスイッチング素子の各々に並列接続された容量成分の和は、一方の端子が1次巻線に接続された誘導成分の他方の端子に接続された2つのスイッチング素子の各々に並列接続された容量成分の和以上である。これにより、ZVS制御が容易になる。
【0021】
(9)より好ましくは、第1端子に接続された2つのスイッチング素子の各々に並列接続された容量成分の少なくとも1つは、容量素子により提供される。これにより、ZVS制御が容易になる条件を満たす容量成分を容易に実現できる。
【0022】
(10)さらに好ましくは、整流回路の出力電流の増大に応じて、誘導成分に流れる電流の第1のデッドタイムにおける増加分は減少する。これにより、スイッチング素子の電流を検出する必要がないので、電力変換装置の回路構成を簡素化でき、スイッチング素子の制御を変更する必要がないので、制御を簡素化できる。
【0023】
(11)好ましくは、誘導成分は、トランスの漏れインダクタンス及びトランスに接続される誘導素子の少なくとも一方を含む。
【0024】
(12)本開示の第2の局面に係る車両は、蓄電装置と、蓄電装置から供給される電力を変換する、上記の電力変換装置と、電力変換装置で変換された電力が供給される第2の負荷とを含む。これにより、スイッチング回路の構成要素に蓄積されているエネルギーを誘電成分に容易に移動させることができ、ZVS制御が容易になる。
【0025】
(13)本開示の第3の局面に係る制御方法は、フルブリッジ接続された複数のスイッチング素子を含むスイッチング回路と、誘導成分と、誘導成分に直列接続された負荷と、負荷を短絡する短絡部と、スイッチング回路及び短絡部を制御する制御部とを含む電力変換装置の制御方法であって、スイッチング回路の入力端子に直流電圧を入力するステップと、スイッチング回路を位相シフト方式で駆動制御するステップと、第1のデッドタイムにおいて、スイッチング回路の入力端子に直流電圧が入力された状態で、負荷が短絡されるように短絡部を制御するステップとを含む。これにより、スイッチング回路の構成要素に蓄積されているエネルギーを誘電成分に容易に移動させることができ、ZVS制御が容易になる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0027】
(回路構成)
図1を参照して、本開示の実施形態に係る電力変換装置100は、フルブリッジ回路102、誘導成分Lr、トランス104、同期整流部106及び制御回路108を含む。制御回路108は、フルブリッジ回路102及び同期整流部106を構成する各スイッチング素子のオン/オフを制御する。
【0028】
フルブリッジ回路102は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4を含む。スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4はフルブリッジ接続されてフルブリッジ回路102を構成している。フルブリッジ回路102は、スイッチング回路として機能する。スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4は、還流ダイオードを有するFET(Field Effect Transistor)で構成されている。サージ電流からの保護等を目的として、スイッチング素子及び還流ダイオードは、順バイアス方向が相互に逆向きになるように並列接続されている。なお、スイッチング素子は、FET以外の半導体素子、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等であってもよい。
【0029】
スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4の各々には、容量成分C1、容量成分C2、容量成分C3及び容量成分C4が並列に接続されている。容量成分とは、電荷を蓄積する機能を担う成分を意味し、電気回路においては、印加される交流電圧の位相に対して電流(交流)の位相を90度進める成分をいう。容量成分C1、C2、C3及びC4は、スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4の寄生容量であっても、外付けのコンデンサ等の容量素子(容量デバイス)であってもよい。
【0030】
フルブリッジ回路102の入力端子110及び入力端子112の間には、外部の電源から直流電圧が入力される。フルブリッジ回路102の出力側(出力端子間)には、直列接続された誘導成分Lrとトランス104の1次巻線とが接続されている。スイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4の各々が制御回路108によりオン及びオフ制御されることにより、フルブリッジ回路102は、入力端子110及び112の間に入力される直流電圧を交流電圧に変換してトランス104の1次巻線に出力する。誘導成分Lrは、誘導成分であればよく、トランス104の漏れインダクタンスであっても、外付けのコイルであってもよい。誘導成分は、電磁誘導(磁場と導体が相対的に動いているとき、導体に起電力が生じる現象)を生じる成分を意味し、電気回路においては、印加される交流電圧の位相に対して電流(交流)の位相を90度遅らせる成分をいう。
【0031】
トランス104は、1次巻線、2次巻線及び強磁性のコア(鉄心等)を含む。トランス104の2次巻線は、2つのコイルが直列接続され、その接続ノードが出力端子の1つを担うセンタータップのコイルである。
【0032】
同期整流部106は、スイッチング素子Q101及びスイッチング素子Q102と、インダクタL1と、容量成分C7とを含む。スイッチング素子Q101及びQ102は、還流ダイオードを有するFETで構成されている。スイッチング素子Q101及びQ102の各々には、容量成分C5及び容量成分C6が並列に接続されている。容量成分C5及びC6は、スイッチング素子Q101及びQ102の寄生容量であっても、外付けのコンデンサ等の容量素子であってもよい。後述するように、トランス104及び同期整流部106は、一般化すると、負荷及び短絡部により表される(
図11参照)。
【0033】
同期整流部106の入力側はトランス104の2次巻線の両端子に接続されている。スイッチング素子Q101及びQ102の各々が制御回路108によりオン及びオフ制御されることにより、同期整流部106は、トランス104の2次巻線に発生する交流電圧を整流し、平滑して直流電圧として、出力端子120及び出力端子122から出力する。
【0034】
制御回路108は、例えば半導体素子(PLD、FPGA又はASIC等)により実現される。制御回路108は、CPUと、CPUが実行するプログラムを記憶したメモリにより実現されてもよい。これにより、後述するように、スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4、Q101及びQ102がオン及びオフ制御される。
【0035】
図2を参照して、電力変換装置100は、例えばPHEV又はEV等の車両200に搭載され得る。車両200に搭載される電力変換装置100は、高圧バッテリ204及び低圧バッテリ206等と共に電源部202を構成する。電源部202は、モータ208及び補機系負荷210等、車両200内部の電気装置に電力を供給する。
【0036】
電力変換装置100は、高圧バッテリ204と低圧バッテリ206又は補機系負荷210との間で電圧を変換するために使用される。これにより、電源部202は、電力の供給先(電気装置)に応じた電圧を補機系負荷210に直接、又は低圧バッテリ206を介して間接に供給できる。また、電力変換装置100は、外部の交流電源から供給される交流電力により高圧バッテリ204及び低圧バッテリ206を充電するためにも使用され、高圧バッテリ204及び低圧バッテリ206に適切な充電電圧を供給する。なお、補機系負荷210は、エンジン及びモータ等を稼動するのに必要な付属機器であり、主としてセルモータ、オルタネータ及びラジエータクーリングファン等を含む。補機系負荷210は、照明、ワイパー駆動部、ナビゲーション装置、エアコン及びヒータ等を含んでもよい。
【0037】
(動作)
図3を参照して、電力変換装置100の動作に関して説明する。
図3において、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102を付した各波形は、各スイッチング素子をオン及びオフ制御する信号(制御回路108の出力信号)の変化を表すタイミングチャートである。横軸は時間を表し、全ての時間軸は同じである。即ち、上下方向の点線は同じタイミング(同時刻)を表す。縦軸は電圧、例えばFETのゲート電圧(FETをオンさせるハイレベル又はオフさせるローレベル)を表す。
図3の最下段には、電力変換装置100の出力電流が0である場合における誘導成分Lrに流れる電流を模式的に示している。
図3の最下段の縦軸は電流値を表す。スイッチング素子Q3及びQ4ペアの制御信号は、スイッチング素子Q1及びQ2ペアの制御信号に対して一定の時間差(位相差)をもった形となっている。即ち、スイッチング素子Q1〜Q4は位相シフト方式で駆動制御されている。
【0038】
制御サイクルの1周期は、期間A、期間B、期間C、期間D、期間A’、期間B’、期間C’及び期間D’から構成される。期間A、B、C及びDは前半の半周期を構成し、期間A’、B’、C’及びD’は後半の半周期を構成する。即ち、期間A’、B’、C’及びD’における波形は、それぞれ対応する期間A、B、C及びDにおいて、スイッチング素子Q1及びQ2を交換し、スイッチング素子Q3及びQ4を交換し、且つ、スイッチング素子Q101及びQ102を交換したものである。したがって、期間A’、B’、C’及びD’においては、共振コイルLrに流れる電流の向きは、対応する期間A、B、C及びDとは逆になる。
【0039】
期間Aにおいて、スイッチング素子Q1、Q4及びQ101はオンされ、スイッチング素子Q2、Q3及びQ102はオフされる。期間Aは、電力変換装置100の1次側(フルブリッジ回路102の側)から2次側(同期整流部106の側)へ電力を伝達させ、同期整流部106から出力する伝達モードの期間である。
【0040】
期間Aに続く期間B(以下、第1のデッドタイムともいう)において、スイッチング素子Q1及びQ101はオンされたまま、スイッチング素子Q4はオフされ、スイッチング素子Q102はオンされる。即ち、第1のデッドタイムにおいては、フルブリッジ回路102内の1つのスイッチング素子(ここでではスイッチング素子Q1)のみをオンさせ、同期整流部106内の2つスイッチング素子の両方をオンさせる。これにより、トランス104の2次巻線が短絡される。
【0041】
期間Bに続く、期間Cにおいて、スイッチング素子Q1、Q101及びQ102はオンされたまま、スイッチング素子Q3はオンされる。期間Cは、誘導成分Lrに蓄えられたエネルギーを、電力変換装置100の1次側(フルブリッジ回路102内)において還流させる還流モードの期間である。
【0042】
期間Cに続く期間D(以下、第2のデッドタイムともいう)において、スイッチング素子Q3及びQ102はオンされたまま、スイッチング素子Q1及びQ101はオフされる。即ち、第2のデッドタイムにおいては、フルブリッジ回路102内の1つのスイッチング素子(ここではスイッチング素子Q3)のみをオンさせ、同期整流部106内の2つスイッチング素子の一方(ここではスイッチング素子Q102)のみがオンされる。
【0043】
期間Dに続く期間A’〜D’の各々においては、上記したように、対応する期間A〜Dの制御において、スイッチング素子Q1及びQ2を交換し、スイッチング素子Q3及びQ4を交換し、且つスイッチング素子Q101及びQ102を交換した制御になっている。
【0044】
このように、制御回路108は、伝達モード、第1のデッドタイム、還流モード及び第2のデッドタイムを順に繰返す。第1のデッドタイムにおいては、同期整流部106を構成する2つのスイッチング素子Q101及びQ102を同時にオンさせる。これにより、フルブリッジ回路102のスイッチング素子Q3(オフ状態)に並列接続された容量成分C3に蓄積されているエネルギーを誘導成分Lrに移動させる。これにより、ZVS制御に必要な電流を増加させることができる。
【0045】
第2のデッドダイムにおいて、誘導成分Lrに蓄えられたエネルギーを用いてスイッチング素子Q2の端子間電圧(FETのドレイン−ソース間電圧)を低下させる(即ち、容量成分C3に蓄積されたチャージを引出す)。スイッチング素子Q2の端子間電圧が低下した状態でスイッチング素子Q2をオンさせる。これにより、ZVS制御が容易になる。
【0046】
図4及び
図5を参照して、期間B(第1のデッドタイム)に関してより具体的に説明する。
図4及び
図5においては、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102の各々のオン状態及びオフ状態を、括弧を付したON及びOFFで示し、電流の方向を矢印で示している。
【0047】
図4は、期間Bにおけるスイッチング素子Q3の放電電流、即ち、スイッチング素子Q3に並列接続された容量成分C3に蓄積されたエネルギーが誘導成分Lrに移動する様子を示している。容量成分C3の容量をC
3で表し、外部電源から供給されるフルブリッジ回路102への入力電圧をEとすると、容量成分C3に蓄積されたエネルギーは、C
3・E
2/2である。これにより、誘導成分のエネルギーを増大でき、ZVS制御が容易になる。
【0048】
図5は、期間Bにおけるスイッチング素子Q4の充電電流、即ち、スイッチング素子Q4に並列接続された容量成分C4を充電する際のエネルギーが誘導成分Lrに蓄積される様子を示している。容量成分C4の容量をC
4で表すと、フルブリッジ回路102の入力電圧Eにより外部電源から供給されるエネルギーはC
4・E
2であり、容量成分C4に蓄積されるエネルギーはC
4・E
2/2である。誘導成分Lrに蓄積されるエネルギーは、後述するように、C
4・E
2/2となる。これにより、誘導成分のエネルギーをさらに増大でき、ZVS制御が一層容易になる。
【0049】
このように、期間Bにおいて誘導成分Lrには、(C
3+C
4)・E
2/2のエネルギーが蓄積され、誘導成分Lrの電流値は増大する。したがって、誘導成分Lrのエネルギーの増加量は、誘導成分Lrの電流値I及び電流値Iの増加分ΔIを用いて、式1のように表せる。
L・(I+ΔI)
2/2−L・I
2/2=(C
3+C
4)・E
2/2 ・・・(式1)
【0050】
式1は、式2のように変形できる。
ΔI=−I+(I
2+(C
3+C
4)・E
2/L)
1/2 ・・・(式2)
式2から、Iが大きいほどΔIが減少することが分かる。軽負荷においては、ΔIが大きく、その分ZVS制御が容易になる。一方、ZVS制御が容易な重負荷においては、ΔIは小さく、その影響は小さい。
【0051】
上記のように、期間Bにおいて、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102をオン及びオフ制御することにより、出力電流の大きさに応じて誘導成分Lrの電流値の増加分ΔIが自動的に調整され、出力電流が大きくなるとΔIは自動的に抑制される。したがって、特許文献1のように、スイッチング素子の電流を検出する必要がないので、電力変換装置の回路構成を簡素化できる。
【0052】
また、ΔIが自動的に抑制されることにより、ΔIによる誘導損失の増加を回避するための対策が不要である。そのためには、負荷電流(電力変換装置100の出力電流)が変化しても、同じ制御を行えばよく、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102を制御するための信号(FETのゲート信号)を、負荷変動に応じて変更する必要がない。したがって、スイッチング素子の制御を簡素化できる。
【0053】
さらに、伝達モード期間(期間A)中に、短絡ループを形成する必要がない。したがって、制御タイミングのずれによる過電流が発生することがなく、電力変換装置のロバスト性を向上できる。
【0054】
なお、ZVS制御を容易にするためには、式3が成り立つことが好ましい。
L・(I+ΔI)
2/2≧(C
1+C
2)・E
2/2 ・・・(式3)
ここで、C
1及びC
2は、スイッチング素子Q1に並列接続された容量成分C1の容量、及びスイッチング素子Q2に並列接続された容量成分C2の容量を表す。上記の式1及び式3において、I=0とすると、C
3+C
4≧C
1+C
2が得られる。即ち、軽負荷(I≒0)の場合を含めてZVS制御を容易にするためには、C
3+C
4≧C
1+C
2であることが好ましい。容量成分C3及びC4の少なくとも一方に、外付けのコンデンサ等の容量素子を使用すれば、容量素子の容量を調整することにより、上記の条件を容易に満たすことができる。したがって、ZVS制御が容易になる。
【0055】
(容量成分C4充電時の誘導成分Lrのエネルギー増加)
図6及び
図7を参照して、期間Bにおける、容量成分と誘導成分との間でのエネルギー移動に関して説明する。
図6及び
図7においても、
図4及び
図5と同様に、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102の各々のオン状態及びオフ状態を、括弧を付したON及びOFFで示し、電流の方向を矢印で示している。
【0056】
期間Aから期間Bに切替わった直後においては、電流は
図6に示すように流れる。
図6は、
図4及び
図5の電流方向を表す矢印を全て含む。即ち、期間Bにおいては、上記したスイッチング素子Q3の放電電流とスイッチング素子Q4の充電電流とが共に発生している。
【0057】
期間Aから期間Bに切替わるタイミング(時刻t)を0(t=0)とし、t=0における誘導成分Lrの電流をI
0で表し、フルブリッジ回路102への入力電圧をEとする。その場合、時刻tにおけるスイッチング素子Q3の端子間電圧(FETのドレイン−ソース間電圧)V
3、スイッチング素子Q4の端子間電圧V
4、及び、誘導成分Lrの電流iは、次のように表される。
【0058】
V
3=−I
0・Z・sinωt+E・cosωt
V
4=I
0・Z・sinωt+E・(1−cosωt)
i=E・Z
−1・sinωt+I
0・cosωt ・・・・(式4)
ここで、誘導成分LrのインダクタンスをLで表し、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4の各々に並列接続された容量成分C3及び容量成分C4の容量をC
3及びC
4で表すと、Z及びωは次のように表される。
Z=(L/(C
3+C
4))
1/2 ・・・・(式5)
ω=1/(L(C
3+C
4))
1/2
【0059】
上記のV
3に関する式は、次の式6のように変形できる。
V
3=(I
02・Z
2+E
2)
1/2・sin(ωt+α) ・・・・(式6)
ここで、位相αは、次の式7及び式8を満たす値である。
cosα=−I
0・Z/(I
02・Z
2+E
2)
1/2 ・・・・(式7)
sinα=E/(I
02・Z
2+E
2)
1/2 ・・・・(式8)
【0060】
式6から、t
1=(π−α)/ωにおいてV
3=0となることが分かる。時刻t
1以降においては、スイッチング素子Q3に内蔵されたダイオードを介して電流が流れ始める。これにより、
図6に示した電流の流れは、
図7に示すように変化する。配線抵抗が小さく無視できるとすると、エネルギー消費(発熱等によるエネルギー損失)の要因がないので、時刻t=t
1以降において、誘導成分Lrのエネルギーが維持される。即ち、期間Bにおける誘導成分Lrのエネルギー変化Δεは、Δε=(時刻t=t
1におけるエネルギー)−(t=0の蓄積エネルギー)により算出できる。
【0061】
t=t
1における誘導成分Lrの電流値i(t
1)は、上記の式4と、ωt
1=π−αであることを用いて、次のように表される。
i(t
1)=E・Z
−1・sin(π−α)+I
0・cos(π−α)=E・Z
−1・sinα−I
0・cosα
さらに、上記の式7及び式8を用いると、電流値i(t
1)は式9のように表される。
i(t
1)=(I
02・Z
2+E
2)
1/2/Z ・・・・(式9)
【0062】
t=0からt=t
1の間の誘導成分Lrのエネルギー変化Δεは、次のように表される。
Δε=L・(i(t
1))
2/2−L・(i(0))
2/2
したがって、i(0)=I
0と、上記の式9とを用いると、エネルギー変化Δεは、次のようになる。
Δε=L・E
2・Z
−2/2
さら、式5を用いると、エネルギー変化Δεは、次のようになる。
Δε=(C
3+C
4)・E
2/2
【0063】
容量成分C3の放電による誘導成分Lrのエネルギー増加はC
3・E
2/2であるので、容量成分C4充電時の誘導成分Lrのエネルギー増加は、次のように表される。
Δε−C
3・E
2/2=C
4・E
2/2
【0064】
(第1変形例)
電力変換装置100を構成する同期整流部は、
図1に示したように、センタータップのコイルに接続された同期整流部106に限定されない。同期整流部は、
図8に示したような回路であってもよい。
図8を参照して、第1変形例に係る同期整流部116は、スイッチング素子Q103及びQ104と、インダクタL2及びL3と、容量成分C10とを含む。
図8には、トランス104(
図1)の2次巻線を左端のインダクタにより示している。ここでは、2次巻線は、センタータップではない通常のコイルである。スイッチング素子Q103及びQ104は、還流ダイオードを有するFETにより構成されている。スイッチング素子Q103及びQ104の各々には、容量成分C8及びC9が並列に接続されている。容量成分C8及びC9は、スイッチング素子Q103及びQ104の寄生容量であっても、外付けのコンデンサ等の容量素子であってもよい。
【0065】
スイッチング素子Q103及びQ104の各々が制御回路108によりオン及びオフ制御されることにより、同期整流部116は、トランスの2次巻線に発生する交流電圧を整流し、平滑して直流電圧として出力する。
図1において、同期整流部106に代替して、
図8の同期整流部116を使用する場合、スイッチング素子Q103及びQ104の各々のオン及びオフ制御は、対応するスイッチング素子Q101及びスイッチング素子Q102の制御と同様に行えばよい。即ち、
図3に示したタイミングチャートにおいて、スイッチング素子Q101及びQ102の各々をスイッチング素子Q103及びQ104に代替したタイミングチャートを用いればよい。
【0066】
これにより、
図3の最下段に示したように、電力変換装置100の出力電流が0である場合における誘導成分Lrに流れる電流波形を実現でき、上記した効果を奏する。
【0067】
(第2変形例)
また、電力変換装置100を構成する同期整流部は、
図9に示したような、半波整流回路であってもよい。
【0068】
図9を参照して、第2変形例に係る同期整流部126は、スイッチング素子Q105、ダイオードD1、インダクタL4及び容量成分C12を含む。
図9には、トランス104(
図1)の2次巻線を左端のインダクタにより示している。ここでは、2次巻線は、センタータップではない通常のコイルである。スイッチング素子Q105は、還流ダイオードを有するFETにより構成されている。スイッチング素子Q105には、容量成分C11が並列に接続されている。容量成分C11は、スイッチング素子Q105の寄生容量であっても、外付けのコンデンサ等の容量素子であってもよい。なお、ダイオードD1は、スイッチング素子Q105と同様のスイッチング素子であってもよい。
【0069】
スイッチング素子Q105が制御回路108によりオン及びオフ制御されることにより、同期整流部126は、トランスの2次巻線に発生する交流電圧を整流し、平滑して直流電圧として出力する。例えば、フルブリッジ回路102のスイッチング素子Q1及びQ4をオンすることにより、ダイオードD1に順方向電流が流れる場合(スイッチング素子Q105はオフ)を考える。その場合、スイッチング素子Q4をオフするタイミングで始まる第1のデッドタイムにおいて、スイッチング素子Q105をオンし、トランスの2次巻線を短絡させることにより、上記と同様の効果を奏する。
【0070】
(第3変形例)
図1に示した電力変換装置100において、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102のオン及びオフ制御のタイミングチャートは、
図3に示したものに限定されない。例えば、
図10に示すタイミングチャートであってもよい。
【0071】
第3変形例に係るタイミングチャートは、
図3と同様である。即ち、
図10を参照して、制御サイクルの1周期は、期間A、B、C、D、A’、B’、C’及びD’から構成される。期間A、B、C及びDは前半の半周期を構成し、期間A’、B’、C’及びD’は後半の半周期を構成する。期間A’、B’、C’及びD’における波形は、それぞれ対応する期間A、B、C及びDにおいて、スイッチング素子Q1及びQ2を交換し、スイッチング素子Q3及びQ4を交換し、且つ、スイッチング素子Q101及びQ102を交換したものである。
図10のタイミングチャートが
図3のタイミングチャートと異なるのは、2箇所における電圧レベルだけである。その2箇所において、
図3のタイミングチャートの電圧を破線で示す。したがって、重複説明を繰返さず、主として
図3と異なる点に関して説明する。
【0072】
図10の期間Bにおいて時間が経過すると、スイッチング素子Q3と並列接続されたコンデンサC3の電荷が放電されスイッチング素子Q3の端子間電圧(FETのドレイン−ソース間電圧)が0V以下になる。そうなれば、スイッチング素子Q3の逆並列ダイオード(還流ダイオード)が導通し、還流モード(期間C)に移行する。そのため、
図10のタイミングチャートによる回路動作は、スイッチンズ素子及びダイオードのどちらに電流が流れるかの違いはあるものの、
図3のタイミングチャートによる回路動作と同じになる。
【0073】
期間Cに続く期間D(第2のデッドタイム)において、スイッチング素子Q102はオンされたまま、スイッチング素子Q1及びQ101はオフされる。即ち、フルブリッジ回路102内のスイッチング素子が全てオフされ、同期整流部106内の2つスイッチング素子の一方(ここではスイッチング素子Q102)のみがオンされた状態になる。
【0074】
したがって、
図10に示したタイミングチャートによっても、
図3に示したタイミングチャートと同様に、上記した効果を奏する。
【0075】
上記では、
図1、
図8及び
図9に示したように、トランス104と、同期整流部106、116又は126とを含む構成の電力変換装置を説明したが、これに限定されない。
図1、
図8及び
図9の回路構成は、
図11に示すように一般化できる。
図11に示した電力変換装置130は、例えば
図1においてトランス104及び同期整流部106をそれぞれ負荷132及び短絡部134に代替したものである。負荷132は、一般的な負荷であり、トランスであってもよい。短絡部134は、制御回路108による制御を受けて負荷132の両端子を短絡及び開放する。短絡部134は、スイッチング素子Q1〜Q4と同様の素子(例えばFET)であってもよい。
【0076】
電力変換装置130においても、
図3又は
図10に示したようにスイッチング素子Q1〜Q4をオン及びオフ制御し、それに応じて短絡部134により負荷132の両端子を短絡又は開放する。これにより、
図1に示した電力変換装置100と同様に、ZVS制御が容易になる。
【0077】
上記では、電力変換装置が車両に搭載される場合を説明したが、これに限定されない。電力変換装置は、車載以外の用途に使用されてもよい。
【0078】
(実施例)
以下に、回路シミュレータを用いたシミュレーション結果を示し、本開示の有効性を示す。シミュレーションでは、
図1に示した回路及び
図3に示したタイミングチャートを用い、各要素に関して表1の値を設定した。
【0080】
シミュレーション結果を
図12に示す。
図12には、電力変換装置100の出力電流が0A、25A、50A、75A及び100Aの場合のシミュレーション結果である5つのグラフを示す。全てのグラフにおいて、縦軸及び横軸のスケールは同じである。各グラフには、期間Bにおける誘導成分Lrの電流I
Lrの増加分ΔIの値を付記している。
【0081】
図12から、出力電流が0A、25A、50A、75A及び100Aと増大するにつれて、誘導成分Lrの電流の増加分ΔIは1.7A、0.8A、0.4A、0.3A及び0.3Aと減少していることが分かる。電力変換装置100の出力電流は、誘導成分Lrの電流値に比例するので、このことは、式2に関して説明したように、誘導成分Lrの電流値が大きいほど増加分ΔIが減少することと整合している。即ち、出力電流が大きい重負荷時には、誘導成分Lrの電流の増加分ΔIは自動的に減少するので、後述する比較例のようにΔIによる誘導損失の増加を回避するための対策は不要であり、出力電流が変化しても同じ制御を行えばよい。
【0082】
(比較例)
比較例として、
図13に示した回路構成の電力変換装置を用いてシミュレーションを行った。
図13に示した回路は、
図3に示した回路において、スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102の各々に並列に接続されている容量成分C1〜C6を削除したものである。それ以外の構成は
図3と同じである。
図13の回路の各要素の値には、表1と同じ値を設定した。
【0083】
スイッチング素子Q1〜Q4、Q101及びQ102のオン及びオフ制御のタイミングチャートとして、
図3と同様のものを使用した。但し、スイッチング素子Q101及びQ102をオンするタイミングは、共に68ns早くした。即ち、
図3のタイミングチャートにおいて、スイッチング素子Q101を、期間A’の終了時(期間B’の開始時)よりも前にオンし、スイッチング素子Q102を、期間Aの終了時(期間Bの開始時)よりも前にオンした。これは、特許文献1の制御タイミングを模したものである。
【0084】
シミュレーション結果を
図14に示す。
図14には、
図12と同様に、電力変換装置の出力電流が0A、25A、50A、75A及び100Aの場合のシミュレーション結果である5つのグラフを示す。全てのグラフにおいて、縦軸及び横軸のスケールは同じである。各グラフには、期間Bにおける誘導成分Lrの電流I
Lrの増加分ΔIの値を付記している。
【0085】
図14から、出力電流が0A、25A、50A、75A及び100Aと増大しても、誘導成分Lrの電流の増加分ΔIは4.1A、3.9A、3.8A、3.8A及び3.8Aと殆ど変化しない(わずかに減少している)ことが分かる。したがって、重負荷時においては、ΔIによる誘導損失の増加を回避するための対策(例えば、2次側短絡(トランスの2次巻線の短絡)の停止)が必要となる。即ち、スイッチング素子の制御を出力電流に応じて切替えることが必要となる。
【0086】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。