(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマー分散剤が、ベンジル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含有する水不溶性ポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[インクジェット記録用水性インク]
本発明のインクジェット記録用水性インクは、C.I.ピグメントイエロー74(以下、「PY74」又は単に「顔料」ともいう)を含有するインクジェット記録用水性インクであって、下記の液体クロマトグラフによる方法で測定されたPY74のピークの面積(A
74)に対するPY74以外のピークの総面積(A
E74)の比(A
E74/A
74)が1.4以下である、インクジェット記録用水性インクである。
(液体クロマトグラフによる測定方法)
水性インク4gにイオン交換水を加えて200gとし、2,7−ジメチル−4−オクチン−4,5−ジオールのエチレンオキシド2モル付加物2gを加えて24時間撹拌後、その内の2gを採取して遠心分離し、ジエチルエーテル1.3gを加えてジエチルエーテル相を回収し、該ジエチルエーテルを揮発させた後、アセトニトリル1.0gを加えて検体とし、紫外・可視検出器を備えた高速液体クロマトグラフで、ODSカラムを使用し、カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/10mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH:3)=80/20(体積比)、流量:1.00ml/分、検出波長:400nmの条件で測定する。
【0011】
<液体クロマトグラフによる測定>
本発明において、液体クロマトグラフによる測定方法は上記のとおりである。
PY74は、350nm〜500nmの範囲の紫外光及び可視光を吸収して人の視覚に黄色を認識させる。ここで、紫外・可視検出器とは、紫外線、可視光線、又は近赤外線を検体に照射し、その吸光度を測定して物質の存在を明らかにする装置であり、紫外・可視光検出器を用いてPY74の分析をする際は、検出器の波長を400nmに設定する。
高速液体クロマトグラフによる分析では、電気的ノイズ、サンプル中の溶存気体等に由来するゴーストピークが現れるが、このゴーストピークは公知の方法で識別し、PY74に対応するピーク以外のピークには算入しない。本発明に係る測定条件では、試料を注入した時間を0分とすると保持時間が2.5分付近にゴーストピークが検出される。そこで、本発明に係る液体クロマトグラフによる測定方法においては、試料を注入した時を0分とし、保持時間が2.7分〜10.0分までに検出されるピークを対象とする。PY74のピークは7.4分付近に検出される。
本発明に係る測定方法で検出されるピークは、400nm近辺に吸収を有することから、PY74と類似の化学構造を有すると推察されるが、構造の同定は困難である。
【0012】
本発明に係る測定方法においては、水性インク中に存在する有機不純物を有機溶媒相に移行させ、かつ、測定過程における質量変化を抑制する観点から、水難溶性有機溶媒を含有した状態で行う。水難溶性の有機溶媒としては、2,7−ジメチル−4−オクチン−4,5−ジオールのエチレンオキシド2モル付加物を用いる。
上記の水難溶性有機溶媒を用いると、ポリマー分散剤や界面活性剤が該水難溶性有機溶媒中に優先的に移行し、測定に悪影響を与えるおそれがある。これを防止するため、水難溶性有機溶媒を添加する前に水性インク4gを、水で希釈して200gとする。
また、測定開始前に、遠心分離により、PY74やポリマー分散剤等からなる固体部分と、液体部分を分離する。遠心分離の強度は、効率的に測定を行う観点から、好ましくは1万G時間以上、好ましくは10万G時間以上であり、そして、100万G時間以下、好ましくは50万G時間以下である。
また、分析目的物の分解を抑制し、正確性を向上させる観点から、水難溶性で揮発性の有機溶媒を加えた後、該有機溶媒を常温常圧下で揮発させてから測定する。
水難溶性で揮発性の有機化合物としては、ジエチルエーテルを用いる。
【0013】
本発明によれば、吐出性に優れるインクジェット記録用水性インクを提供することができる。その理由は必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。
インクジェット記録用水性インクに使用される市販のPY74には、一般的に、その製造時に副生する種々の有機化合物が不純物として混在している。副生する有機化合物としては、PY74製造時のジアゾカップリング反応時に副生するジアゾ化合物、ジアゾ化合物に求核反応した化合物等が挙げられる。より具体的には、4−ニトロ−o−アニシジンをジアゾ化してアセト酢酸−o−アニシダイドとカップリング反応させる方法において、2−[(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)アゾ]−N−(2−メトキシフェニル)エタンアミド等の有機化合物が不純物として副生する。その他の不純物としては、PY74を調製する際に添加される顔料誘導体が挙げられる。このような顔料の製造に起因する不純物が水性インク中に多く含まれると、その不純物によって、インクジェット記録の際に吐出不良等の様々な不具合が起こると考えられる。本発明に係る液体クロマトグラフによる測定方法により検出されるピークによる不純物量の指標を用いることにより、吐出性に優れるインクジェット用水系インクを得ることができる。
【0014】
ここで、PY74以外の不純物(有機化合物)を、有機溶媒存在下で高圧分散処理等により分離除去し、PY74の量を基準としたときに、不純物であるPY74以外の有機化合物の量が特定割合以下であるとき、水性インクは吐出性に優れたものになると考えられる。より具体的には、液体クロマトグラフによる方法で測定されたPY74のピークの面積(A
74)に対するPY74以外のピークの総面積(A
E74)の比(A
E74/A
74)が1.4以下であるとき、水性インクは吐出性に優れたものになると考えられる。
前記ピーク面積の比(A
E74/A
74)は、インクジェット吐出ノズルの閉塞等の不具合等を解消し、吐出性を向上させる観点から、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下であり、そして、色味を鮮やかに維持し、クスミを抑制する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.6以上である。
前記ピーク面積の比(A
E74/A
74)を低減する手段として、PY74以外の不純物の少ないロットのPY74を選択する方法、有機溶媒存在下で高圧分散処理によりPY74以外の不純物を分離除去する方法等が挙げられる。
【0015】
<C.I.ピグメントイエロー74>
本発明に用いられるPY74は、モノアゾ顔料の一種であり、カラーインデックスに収載されている呼称である。同じくカラーインデックスが設定したカラーインデックスナンバーはCI11741が割り当てられている。
PY74は、下記式(I)で代表される化合物である。
【0017】
式(I)中、波線は、隣接する二重結合の幾何異性体がE体及びZ体から選ばれる1種以上であることを示す。式(I)で表される化合物は、好ましくは2−[(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)アゾ]−N−(2−メトキシフェニル)−3−オキソブタンアミドである。
【0018】
(PY74の製造方法)
PY74の製造方法としては、例えば、4−ニトロ−o−アニシジンをジアゾ化してアセト酢酸−o−アニシダイドとカップリング反応させる製造方法(A)が挙げられる。
このカップリング反応において、2−[(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)アゾ]−N−(2−メトキシフェニル)エタンアミド等の不純物が副生する。
製造方法(A)は、好ましくは下記の工程(1)〜(3)を有する。
工程(1):4−ニトロ−o−アニシジンのジアゾ化反応により生成物Aを得る工程
工程(2):アセト酢酸−o−アニシダイド、水酸化ナトリウム及び水を混合した後、酢酸を添加し、その後、更に酢酸ナトリウムを添加して、生成物Bを得る工程
工程(3):前記工程(1)で得られた生成物Aと、工程(2)で得られた生成物Bを混合し、カップリング反応を行う工程
【0019】
工程(1)におけるジアゾ化反応は、例えば、4−ニトロ−o−アニシジンと、亜硝酸又はその塩とを酸性条件下で反応させることで行うことができる。
工程(2)において、酢酸と酢酸ナトリウムの使用量を調整することで、副生物の量をある程度調整することはできるが、その副生量を十分に低減することは困難である。
工程(3)は、工程(1)で得られた生成物Aと、工程(2)で得られた生成物Bを混合し、カップリング反応を行う工程であるが、好ましくは工程(2)で得られた生成物Bに対して工程(1)で得られた生成物Aを添加する。
カップリング反応の温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15℃以下、より更に好ましくは10℃以下である。
工程(3)のカップリング反応後は、必要に応じて、生成物の結晶、粒子形状、粒子径等を所望の範囲に整える等の後処理を行うことができる。
【0020】
本発明においては、保存安定性及びインクへの配合性を向上させる観点から、PY74はポリマー分散剤を用いて水系媒体に分散されることが好ましい。ここで、ポリマー分散剤としては、水溶性ポリマー又は水不溶性ポリマーが挙げられ、PY74は、(i)水溶性ポリマーで分散されたPY74、(ii)PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子等の形態で用いられる。これらの中では、耐擦過性の観点から、(ii)PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態で用いることが好ましい。
なお、「水系媒体」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めている媒体を意味する。
【0021】
(i)水溶性ポリマーで分散されたPY74
水溶性ポリマーで分散されたPY74は、PY74を、アクリル酸又はメタクリル酸を含む、カルボキシル基を有する共重合体等の水溶性ポリマーで分散した水系分散体である。用いられる水溶性ポリマーの市販品としては、JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL683、JONCRYL60J(以上、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
水溶性ポリマーで分散されたPY74は、水溶性ポリマーを溶解した水系媒体にPY74を添加し、例えば、混練機、高圧ホモジナイザー、メディア式分散機等で剪断応力を与えて分散させたPY74を含む水系分散体として用いることが好ましい。
【0022】
(ii)PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子
PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)の形態に特に制限はなく、少なくともPY74と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、該水不溶性ポリマーにPY74が内包された粒子形態、該水不溶性ポリマー中にPY74が均一に分散された粒子形態、該水不溶性ポリマー粒子の表面にPY74が露出された粒子形態、及びこれらの混合物の形態も含まれる。
【0023】
(水不溶性ポリマー:ポリマー分散剤)
顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、PY74を水系媒体中に分散させ、分散を安定に維持するための分散剤としての機能と、記録媒体に対する定着剤としての機能を有することが好ましい。
この水不溶性ポリマーの「水不溶性」とは、水不溶性ポリマーの水分散体が透明とならないことを意味する。また水不溶性ポリマーの水分散体が目視で透明に見えたとしても、レーザー光や通常光による観察でチンダル現象が認められる場合は水不溶性であると判断する。また、ポリマーがイオン性である場合における「水不溶性」の判断は、アニオン性ポリマーの場合、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した状態、カチオン性ポリマーの場合、ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した状態で行う。
本発明に用いる水不溶性ポリマーは、分散性を向上させる観点から、ポリマー鎖に塩生成基(アニオン性基又はカチオン性基)を有するポリマーであることが好ましい。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性基が挙げられる。
水不溶性ポリマーであるポリマー分散剤は、塩生成基を有し、該塩生成基の少なくとも1部が塩基性化合物で中和されたものであることが好ましい。
【0024】
水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられる。また、市販の水不溶性ポリマー粒子の分散液を用いることもできる。
市販の水不溶性ポリマー粒子の分散液としては、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂からなる粒子の分散液が好ましい。その具体例としては、Neocryl A1127(DSM NeoResins社製、アニオン性自己架橋水系アクリル樹脂)、JONCRYL390(BASFジャパン株式会社製)等のアクリル樹脂、WBR−2018、WBR−2000U(大成ファインケミカル株式会社製)等のウレタン樹脂、SR−100、SR−102(以上、日本エイアンドエル株式会社製)等のスチレン−ブタジエン樹脂、JONCRYL7100、JONCRYL734、JONCRYL538(以上、BASFジャパン株式会社製)等のスチレン−アクリル樹脂及び、ビニブラン701(日信化学工業株式会社製)等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
水不溶性ポリマーは、インクの保存安定性を向上させる観点から、ビニル化合物、ビニリデン化合物、及びビニレン化合物から選ばれる1種以上のビニルモノマーの付加重合により得られる水不溶性ビニル系ポリマーが好ましい。
【0025】
水不溶性ビニル系ポリマーとしては、(a)イオン性モノマー(以下「(a)成分」ともいう)由来の構成単位と、(b)マクロモノマー(以下「(b)成分」ともいう)由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーが好ましく、更に(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ともいう)由来の構成単位、及び(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)由来の構成単位から選ばれる1種以上を含有するものが好ましい。
前記水不溶性ポリマーは、例えば、(a)イオン性モノマー、(b)マクロモノマー、及び必要に応じて更に(c)疎水性モノマー、(d)ノニオン性モノマーを公知の方法により付加重合して得ることができる。
【0026】
<(a)イオン性モノマー>
(a)イオン性モノマーは、水性インクの保存安定性を向上させる観点から、モノマー成分として用いることができる。
(a)イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられるが、水性インクの保存安定性及び吐出性の観点から、アニオン性モノマーが好ましい。アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられるが、カルボキシ基を有するカルボン酸モノマーが好ましい。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられるが、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましく、メタクリル酸が更に好ましい。
【0027】
<(b)マクロモノマー>
(b)マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、水性インクの保存安定性を向上させる観点から用いることが好ましい。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(b)マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロモノマーとしては、水性インクの保存安定性を向上させる観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、後述する(c)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0028】
<(c)疎水性モノマー>
水不溶性ポリマーには、水性インクの保存安定性を向上させる観点から、更に、(c)疎水性モノマーをモノマー成分として用いることが好ましい。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
【0029】
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレン、2−メチルスチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(c)疎水性モノマーは、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
【0030】
<(d)ノニオン性モノマー>
水不溶性ポリマーには、水性インクの保存安定性を向上させる観点から、更に、(d)ノニオン性モノマー((d)成分)をモノマー成分として用いることが好ましい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート 2−エチルヘキシルエーテル等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜6)メタクリレート 2−エチルヘキシルエーテルがより好ましい。
【0031】
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、NKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G、同EH−4E等(新中村化学工業株式会社製)、ブレンマーPE−90、同200、同350等、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800、同1000等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等(日油株式会社製)が挙げられる。これらの中では、特に印字濃度の観点から、NKエステルEH−4E(ポリエチレングリコール[n=4]メタクリレート 2−エチルヘキシルエーテル)が好ましい
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
(モノマー混合物中又は水不溶性ポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
水不溶性ポリマー製造時における、上記(a)〜(d)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量)又は水不溶性ポリマー中における(a)〜(d)成分に由来する構成単位の含有量は、顔料含有ポリマー粒子の水性インク中における分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
(b)成分の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(c)成分を含有する場合、(c)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
また、[(a)成分/〔(b)成分+(c)成分〕]の質量比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.60以下である。
【0033】
(水不溶性ポリマーの製造)
水不溶性ポリマーは、前記モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、炭素数3〜5のケトン類、エーテル類、エステル類等が挙げられる。これらの中では、脂肪族アルコール、ケトン類、又はこれらと水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤が挙げられ、重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の連鎖移動剤が挙げられる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
【0034】
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、顔料への吸着性、及び分散安定性の観点から、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下である。
なお、重量平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0035】
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散体として下記の工程I及び工程IIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー、有機溶媒、PY74、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を60MPa以上の圧力で高圧分散処理した後、30℃以下で15時間以上保持して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体(以下、「顔料水分散体」ともいう)を得る工程
【0036】
(工程I)
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次にPY74、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、PY74の順に加えることが好ましい。
水不溶性ポリマーを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1〜4の脂肪族アルコール、炭素数3〜8のケトン類、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、PY74への濡れ性、水不溶性ポリマーの溶解性、及び水不溶性ポリマーのPY74への吸着性の観点から、炭素数4〜6のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
【0037】
(中和)
水不溶性ポリマーの塩生成基、例えばカルボキシ基の少なくとも一部を中和する場合は、pHが7以上11以下になるようにすることが好ましい。
中和剤としては、得られる水性インクの保存安定性、吐出性の観点から、アルカリ金属水酸化物が用いられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
水不溶性ポリマーのカルボキシ基の中和度は、得られる水性インクの保存安定性、吐出性の観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、また、好ましくは300モル%以下、より好ましくは200モル%以下、更に好ましくは150モル%以下である。
ここで中和度とは、アルカリ金属水酸化物のモル当量数を水不溶性ポリマーのカルボキシ基のモル当量数で除した値である。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤の使用量から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
【0038】
(顔料混合物の分散処理)
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の分散体を得る。分散体を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけでPY74粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に、強い剪断応力を加えて本分散を行い、PY74粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程Iの予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
【0039】
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、PY74を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。この場合、処理圧力やパス回数の制御により、PY74を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0040】
本発明では、工程Iの最初の高圧分散処理の開始から後述する工程IIで有機溶媒を除去する前まで、水不溶性ポリマー、有機溶媒、PY74、及び水を含有する混合物を、30℃以下で15時間以上保持する。
有機溶媒の存在下で15時間以上保持することで、PY74以外のピーク成分が有機溶媒中に抽出され、例えば、更に固形分をろ過する等の操作により、PY74以外のピーク成分が除去されると考えられる。
また、本発明において高圧分散処理した後の30℃以下での保持時間は、工程Iで最初の高圧分散処理の開始から、工程IIで有機溶媒を除去する前までの30℃以下で保持した時間を合計する。保持時間は高圧分散終了後にまとめて設定してもよいし、複数回の高圧分散の間に複数回保持の操作を設定してもよい。
保持する温度は、PY74以外のピーク成分を除去する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは25℃以下である。
保持する時間は、PY74以外のピーク成分を除去する観点から、好ましくは20時間以上であり、そして、色味を鮮やかにし、クスミを抑制する観点から、好ましくは180時間以下、より好ましくは100時間以下である。
保持する際には、PY74以外のピーク成分を除去する観点から、攪拌することが好ましい。撹拌の回転数は、好ましくは12回転/分以上であり、好ましくは120回転/分以下である。
【0041】
(工程II)
工程IIでは、工程Iで得られた分散体から、有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)を得ることができる。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましい。
有機溶媒を除去する方法としては、例えば、減圧条件で有機溶媒を留去する方法、固形分をろ過して水に再分散させる方法等が挙げられる。
有機溶媒を留去して得られた顔料水分散体は、PY74以外のピーク成分を顔料水分散体から除去する観点から、さらに固形分をろ過して水に再分散させることが好ましい
【0042】
得られた顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水性インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水性インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、水性インク中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粒子の膨潤や収縮、粒子間の凝集を生じさせないことが好ましく、顔料水分散体中の平均粒径と同じであることがより好ましい。水性インク中の顔料含有ポリマー粒子の好ましい平均粒径の態様は、顔料水分散体中の平均粒径の好ましい態様と同じである。
本発明においては、得られる水性インクの耐水性、保存安定性、吐出性等を向上させる観点から、顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーの塩生成基の一部を水不溶性多官能エポキシ化合物等の架橋剤と反応させ、顔料含有ポリマー粒子の表層部を架橋し、架橋構造を形成させることも好ましい。
【0043】
[インクジェット記録用水性インクの製造方法]
前記の工程I及び工程IIを有する方法により得られたPY74を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体(顔料水分散体)は、そのまま水性インクとして使用することができるが、更に下記工程IIIを行う方法により、水性インクを製造することが好ましい。
工程III:工程IIで得られた水分散体に、水及び水溶性有機溶媒から選ばれる1種以上を配合する工程
本発明の水性インクの製造方法においては、水性インクの濃度を調整し、吐出性を向上させる観点から、少なくとも水を配合することが好ましい。
【0044】
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒の「水溶性」とは、水と任意の割合で混合できる性質を意味する。
水溶性有機溶媒としては、沸点が100℃以上270℃以下であるものを用いることが好ましく、沸点の異なる複数の有機溶媒を用いる場合は、各有機溶媒の沸点の加重平均値が100℃以上270℃以下となる範囲で用いることがより好ましい。
水溶性有機溶媒の沸点の加重平均値は、吐出性を向上させる観点から、更に好ましくは150℃以上、より更に好ましくは180℃以上であり、そして、更に好ましくは260℃以下、より更に好ましくは255℃以下である。
水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、分子量200〜600のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量300〜1200のポリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、ペトリオール等が挙げられる。
これらの中では、不純物量を低減し、吐出性を向上させる観点から、1,2−ヘキサンジオール(沸点224℃)、トリメチロールプロパン(沸点160℃)、分子量200〜600のポリエチレングリコール(沸点250℃)、及びジエチレングリコール(沸点244℃)から選ばれる1種以上が好ましい。
また、ペンタエリスリトール(沸点276℃)、トリエチレングリコール(沸点287℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、グリセリン(沸点290℃)等の沸点が270℃を越える水溶性有機溶媒を、沸点が260℃未満の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0045】
多価アルコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点276℃)等を沸点が270℃未満の水溶性有機溶媒と組み合わせて用いることができる。これらの中では、不純物量を低減し、吐出性を向上させる観点から、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
これらの中でも、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上の化合物が好ましく、多価アルコール1種以上と多価アルコールアルキルエーテル1種以上の併用がより好ましい。
【0046】
本発明のインクジェット記録用水性インクの製造方法においては、更に必要に応じて、水性インクに通常用いられる、表面張力を調整する界面活性剤、印刷媒体への濡れ広がりや浸透性を制御する浸透剤、インクの乾燥を抑制する保湿剤、湿潤剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加し、更にフィルター等によるろ過処理を行うことができる。
本発明の製造方法により得られる水性インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
【0047】
(PY74(顔料)の含有量)
水性インク中の顔料の含有量は、水性インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、吐出安定性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましく7.0質量%以下である。
(顔料と水不溶性ポリマーとの合計含有量)
水性インク中の顔料と水不溶性ポリマーとの合計含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上であり、そして、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である。
(水溶性有機溶媒の含有量)
水性インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、不純物である有機化合物の含有量を低減する観点、及びインク組成物の保存安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、インク組成物の印字濃度の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
(水の含有量)
水性インク中の水の含有量は、インク組成物の保存安定性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上であり、そして、インク組成物の印字濃度の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0048】
(水性インク物性)
水性インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは3.0mPa・s以上であり、更に好ましくは5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは9.0mPa・s以下であり、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
水性インクのpHは、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは8.0以上であり、更に好ましくは8.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは9.5以下である。
【0049】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のインクジェット記録用水性インク、及びインクジェット記録用水性インクの製造方法を開示する。
<1> C.I.ピグメントイエロー74を含有するインクジェット記録用水性インクであって、下記の液体クロマトグラフによる方法で測定されたC.I.ピグメントイエロー74のピークの面積(A
74)に対するC.I.ピグメントイエロー74以外のピークの総面積(A
E74)の比(A
E74/A
74)が1.4以下である、インクジェット記録用水性インク。
(液体クロマトグラフによる測定方法)
水性インク4gにイオン交換水を加えて200gとし、2,7−ジメチル−4−オクチン−4,5−ジオールのエチレンオキシド2モル付加物2gを加えて24時間撹拌後、その内の2gを採取して遠心分離し、ジエチルエーテル1.3gを加えてジエチルエーテル相を回収し、該ジエチルエーテルを揮発させた後、アセトニトリル1.0gを加えて検体とし、紫外・可視検出器を備えた高速液体クロマトグラフで、ODSカラムを使用し、カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/10mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH:3)=80/20(体積比)、流量:1.00ml/分、検出波長:400nmの条件で測定する。
【0050】
<2> 前記ピーク面積の比(A
E74/A
74)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.4以上、より更に好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である、上記<1>に記載の水性インク。
<3> C.I.ピグメントイエロー74が、4−ニトロ−o−アニシジンをジアゾ化してアセト酢酸−o−アニシダイドとカップリング反応させる方法により得られるものである、上記<1>又は<2>に記載の水性インク。
<4> C.I.ピグメントイエロー74が、ポリマー分散剤により水系媒体に分散されている、上記<1>〜<3>のいずれかに記載の水性インク。
<5> C.I.ピグメントイエロー74が、C.I.ピグメントイエロー74を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態で用いられる、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の水性インク。
<6> 水不溶性ポリマーが、ポリマー鎖に塩生成基を有するポリマーである、上記<5>に記載の水性インク。
<7> 水不溶性ポリマーが、ビニル化合物、ビニリデン化合物、及びビニレン化合物から選ばれる1種以上のビニルモノマーの付加重合により得られる水不溶性ビニル系ポリマーである、上記<5>又は<6>のいずれかに記載の水性インク。
<8> 水不溶性ビニル系ポリマーが、好ましくは(a)イオン性モノマー由来の構成単位と、(b)マクロモノマー由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーであり、より好ましくは更に(c)疎水性モノマー由来の構成単位、及び(d)ノニオン性モノマー由来の構成単位から選ばれる1種以上を含有するビニル系ポリマーである、上記<5>〜<7>のいずれかに記載の水性インク。
【0051】
<9> 水不溶性ポリマー中における(a)イオン性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である、上記<5>〜<8>のいずれかに記載の水性インク。
<10> 水不溶性ポリマー中における(b)マクロモノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、上記<5>〜<9>のいずれかに記載の水性インク。
<11> 水不溶性ポリマーが(c)疎水性モノマー由来の構成単位を含有する場合、(c)疎水性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である、上記<5>〜<10>のいずれかに記載の水性インク。
<12> 水不溶性ポリマーが(d)ノニオン性モノマー由来の構成単位を含有する場合、(d)ノニオン性モノマー由来の構成単位の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である、上記<5>〜<11>のいずれかに記載の水性インク。
<13> [(a)成分/〔(b)成分+(c)成分〕]の質量比が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.10以上であり、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.60以下である、上記<8>〜<12>のいずれかに記載の水性インク。
<14> 水不溶性ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは6,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下である、上記<5>〜<13>のいずれかに記載の水性インク。
<15> 水性インク中のC.I.ピグメントイエロー74の含有量が、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましく7.0質量%以下である、上記<1>〜<14>のいずれかに記載の水性インク。
<16> 水性インク中のC.I.ピグメントイエロー74と水不溶性ポリマーとの合計含有量が、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上であり、そして、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である、上記<5>〜<15>のいずれかに記載の水性インク。
【0052】
<17> 下記工程I〜IIIを有する、上記<1>〜<16>のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクの製造方法。
工程I:水不溶性ポリマー、有機溶媒、C.I.ピグメントイエロー74、及び水を含有する混合物を60MPa以上の圧力で高圧分散処理した後、30℃以下で15時間以上保持して、C.I.ピグメントイエロー74を含有する水不溶性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程Iで得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、C.I.ピグメントイエロー74を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程III:工程IIで得られた水分散体に、水及び水溶性有機溶媒から選ばれる1種以上を配合する工程
<18> 工程Iにおける高圧分散処理の圧力が、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、また、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である、上記<17>に記載の水性インクの製造方法。
<19> 工程Iにおける保持温度が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは25℃以下である、上記<17>又は<18>に記載の水性インクの製造方法。
<20> 工程Iにおける保持時間が、好ましくは20時間以上であり、そして、好ましくは180時間以下、より好ましくは100時間以下である、上記<17>〜<19>のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
<21> 工程IIIで用いる水溶性有機溶媒が、沸点が100℃以上270℃以下のものである、上記<17>〜<20>のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
<22> 水溶性有機溶媒が、好ましくは多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上、より好ましくは多価アルコール1種以上と多価アルコールアルキルエーテル1種以上の併用である、上記<17>〜<21>のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
<23> 水性インク中の水溶性有機溶媒の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である、上記<17>〜<22>のいずれかに記載の水性インクの製造方法。
【実施例】
【0053】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量は、次の方法により測定した。
(1)ポリマーの重量平均分子量の測定方法
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度が5×10
−3質量%(固形分濃度換算)になるように水で希釈して行った。
(3)顔料水分散体の固形分濃度の測定
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体1gと硫酸ナトリウム(芒硝)10gとを均一に混合し、蒸発皿(10.5cm
2)に均一に広げて、105℃、2時間、−0.07MPaで減圧乾燥させ、乾燥後の水分散体の重量を測定し、次式により固形分濃度(質量%)を求めた。
固形分濃度(%)=(乾燥後の水分散体の質量/乾燥前の水分散体の質量)×100
【0054】
製造例1(ポリマー分散剤の製造)
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示す各モノマーの合計200部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65)1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、重量平均分子量62,000のポリマー溶液を得た。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
(b)スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製、商品名:AS−6(S)、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基、固形分濃度50%
(d)ポリエチレングリコールモノメタクリレート 2−エチルヘキシルエーテル:新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルEH−4E、エチレンオキシド平均付加モル数=4、末端:2−エチルへキシル基
【0057】
実施例1(水性インク(1)の製造)
(1)水性インク(1)の製造
製造例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をメチルエチルケトン50部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム溶液、和光純薬工業株式会社製、容量分析用)6.7部及びイオン交換水250部を加えて塩生成基を中和(中和度75モル%)し、これにC.I.ピグメントイエロー74(クラリアント社製、商品名:HANSA BRILL. YELLOW 5GXW)75部を加え、予備分散としてプライミクス株式会社製、TKロボミックス(商品名)+TKホモディスパー2.5型を用いて回転数8000/分で60分間分散した。得られた分散液を本分散としてマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で150MPaの圧力で10パス分散処理した。
本分散を10パス分繰り返す間、分散液は20℃でマグネティックスターラー(回転数60rpm)を用いて撹拌しながら、0.5時間保持した。本分散の後、マグネティックスターラー(回転数60rpm)を用いて撹拌しながら、さらに分散液を20℃で保持した。20℃以下で保持した時間は合計で48時間であった。
得られた分散体にイオン交換水250部を加えて60℃、減圧下でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、固形分濃度が25%となるまで濃縮して、顔料含有ポリマー粒子の形態である顔料水分散体を得た。
得られた顔料水分散体を、日立工機株式会社製の冷却遠心分離機「himacCR22G」及びロータ(R12A、半径15.1cm)を用い、同社製遠心沈降管500PAボトルに300g入れて、12000回転/分で遠心加速度24300Gをかけ、この状態で6分間保持した。
遠心分離して分取した上澄み液を公称ろ過精度5μmの表面ろ過型フィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、ザルトリウス社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で固形分を濾過した後、適宜イオン交換水で希釈して固形分濃度が20%になるように調整し、PY74を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体(1)を得た。この水分散体(1)中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、121nmであった。
この水分散体(1)は、そのまま分析用水性インク(1)として用いることができる。
【0058】
(2)水性インク(1)の分析
上記(1)で得られた水性インク(1)4gを、株式会社マルエム製のスクリュー管No7(容量50ml)にとり、イオン交換水を加えて200gとした。これに2,7−ジメチル−4−オクチン−4,5−ジオールのエチレンオキシド2モル付加物(日信化学工業株式会社製、商品名:サーフィノール420、水不溶性)2gを加えて室温(23℃)で24時間撹拌し、その内の2gを採取し、日立工機株式会社製、遠心沈降管(パーツNo.S404332A)にいれ、同社製超高速遠心分離機、CS120FNX、及び同社製ロータS110ATを用いて、110000rpmで28分間遠心分離処理した。
遠心分離終了後、遠心沈降管にジエチルエーテル(和光純薬工業株式会社製、試薬)1.3gを加えた後にジエチルエーテル相を回収し、窒素ガスを吹き込んでジエチルエーテルを揮発させた後、アセトニトリル(和光純薬工業株式会社製、HPLC用)1.0gを加えて検体とし、紫外・可視検出器を備えた高速液体クロマトグラフに対応した、超高速シングル四重極型質量分析計(株式会社島津製作所製、LCMS−2020)で分析した結果、3.0分、4.1分、4.9分、7.4分に4つのピークが検出された。
結果を
図1に示す。なお、
図1の2.5分のピークはゴーストピークである。
(高速液体クロマトグラフの分析条件)
・カラム:ODS(オクタデシルシリル基で表面修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲル)昭和電工株式会社製、Shodex C18M 4E (4.6mm×250mm、5μm)
・カラム温度:40℃
・溶離液:アセトニトリル/10mM ギ酸アンモニウム緩衝液(pH:3)=80/20(体積比)
・流量:1.00ml/min
・検出波長:400nm
【0059】
一方、C.I.ピグメントイエロー74(クラリアント社製、商品名:HANSA BRILL. YELLOW 5GXW)0.01gをアセトニトリルに加えて室温(23℃)で24時間撹拌したものを0.2μmのPTFE製メンブランフィルターでろ過して同高速液体クロマトグラフで分析した結果、7.4分にピークが検出された。これは、C.I.ピグメントイエロー74は、本条件では7.4分の位置にピークを有することを示している。
PY74以外の3.1分、4.1分、5.0分の3つのピークの総面積(A
E74)と、PY74の7.4分のピーク面積(A
74)と、それらのピーク面積の比(A
E74/A
74)を、表2に示す。
【0060】
実施例2〜3及び比較例1〜2(分析用水性インク(2)〜(5)の製造)
実施例1において、マイクロフルイダイザーによる本分散後の保持時間を変えて、合計の保持時間が表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして分析用水性インク(2)〜(5)を得た。結果を表2に示す。
【0061】
<インクジェット記録用水性インクの評価>
実施例1〜3、比較例1,2で得られた水性インク25部に、グリセリン7部、トリエチレングリコール7部、トリメチロールプロパン5部を混合(水溶性有機溶媒の沸点の加重平均値は、254.7℃)し、更にアセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製、ノニオン性界面活性剤、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキシド10モル付加物)0.5部、イオン交換水55.5部を混合し、公称ろ過精度5μmの表面ろ過型フィルター(アセチルセルロース製、外径:2.5cm、ザルトリウス社製)を取り付けた容量25mLのシリンジで濾過して評価用水性インク(1)〜(5)を得た。
得られた水性インクを用いて、以下の方法で吐出性を評価した。結果を表2に示す。
(吐出性の評価)
水性インクを市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、商品名:EM930C、ピエゾ方式)を用い、普通紙(ゼロックス社製、商品名:4200)に「はやいモード」で10枚ベタ印字して、10枚目の印字状態を観察し、スジの数(正常に吐出していないノズルの数)を記録した。
スジの数(ノズル欠けの数)が少ない方が、ノズルの閉塞等の不具合による不吐出現象の発生がなく、吐出性が良好であることを示す。
【0062】
【表2】
【0063】
表2における実施例1〜3と比較例1〜2の対比から、実施例1〜3で得られた水性インクは、比較例1〜2で得られた水性インクに比べて、インクジェット記録物にノズル欠けがなく、吐出性が優れていることが分かる。