特許第6984818号(P6984818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984818ゼルンボン誘導化合物と癌細胞増殖抑制剤およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984818
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ゼルンボン誘導化合物と癌細胞増殖抑制剤およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/07 20060101AFI20211213BHJP
   C07C 67/04 20060101ALI20211213BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20211213BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20211213BHJP
   C07C 69/56 20060101ALI20211213BHJP
   C07C 69/58 20060101ALI20211213BHJP
   C07C 69/587 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 31/23 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 31/232 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C07C69/07CSP
   C07C67/04
   C07C69/24
   C07C69/54 Z
   C07C69/56
   C07C69/58
   C07C69/587
   A61K31/122
   A61P35/00
   A61K31/22
   A61K31/23
   A61K31/231
   A61K31/232
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-168849(P2017-168849)
(22)【出願日】2017年9月1日
(65)【公開番号】特開2019-43893(P2019-43893A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載名 :2017年度(平成29年度)日本農芸化学会大会 講演要旨集 ISSN 2186−7976 「共役系保存型 zerumbone誘導体を用いたヒト白血病T細胞株 Jurkat細胞増殖抑制剤の開発」 掲載アドレス:https://jsbba.bioweb.ne.jp/jsbba2017/download_pdf.php?p_code=3C15a05 掲載日 :平成29年3月5日 〔刊行物等〕 集会名 :日本農芸化学会2017年度(平成29年度)大会 開催日 :平成29年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】北山 隆
(72)【発明者】
【氏名】宇高 芳美
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智広
【審査官】 東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510207(JP,A)
【文献】 特開平01−221344(JP,A)
【文献】 特開2014−028761(JP,A)
【文献】 特開2006−241056(JP,A)
【文献】 特表2019−512009(JP,A)
【文献】 Yasunari Takada et al.,Oncogene,2005年,24,6957-6969
【文献】 Kitayama, Takashi,Tetrahedron,2013年,69(47),10152-10160
【文献】 大西康太,ビタミン,2012年,86(3),133-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物乃至化合物13のうちいずれか1つの化合物。
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【化105】
【化106】
【化107】
【請求項2】
合物3、化合物7、化合物8、化合物12および化合物13のうちいずれか1つの化合物を含有するゼルンボンより高い癌細胞増殖抑制効果を有する癌細胞増殖抑制剤。
【化201】
【化202】
【化203】
【化204】
【化205】
【請求項3】
ゼルンボンにN−ブロモスクシンイミドを反応させ7−ブロモゼルンボンを得る工程と、
前記7−ブロモゼルンボンにN,N−ジメチルホルムアミドを加え攪拌する工程と、
前記7−ブロモゼルンボンとN,N−ジメチルホルムアミドの攪拌物に求核剤を投入し、所定時間攪拌を継続する工程を含み、
前記求核剤が、アクリル酸ナトリウム、クロトン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、α−リノレン酸ナトリウム、エイコサペンタエン酸(EPA)ナトリウム、ドコサヘキサエン酸(DHA)ナトリウムのうちの1つであるゼルンボン誘導化合物の製造方法。
【請求項4】
ゼルンボンにN−ブロモスクシンイミドを反応させ7−ブロモゼルンボンを得る工程と、
前記7−ブロモゼルンボンにN,N−ジメチルホルムアミドを加え攪拌する工程と、
前記7−ブロモゼルンボンとN,N−ジメチルホルムアミドの攪拌物に求核剤を投入し、所定時間攪拌を継続する工程を含み、
前記求核剤が、ギ酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、クロトン酸ナトリウム、エイコサペンタエン酸(EPA)ナトリウム、ドコサヘキサエン酸(DHA)ナトリウムのうちの1つである前記ゼルンボンより高い癌細胞増殖抑制効果を有する癌細胞増殖抑制剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼルンボンから誘導される新規物質(ゼルンボン誘導化合物)と、それを用いた癌細胞増殖抑制剤およびそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新規医薬開発のために様々な手法が開発されているが、低分子医薬は現在でも最も重要な役割を担っている。その中でも天然物医薬は新規かつ複雑な構造体によって選択的な薬理効果をもたらしている。しかし、複雑な構造体をリード化合物としてさらに開発を進めるには、技術的限界があるのも現実である。
【0003】
またこれまで、優れた薬理活性を有し、かつ分子量の小さいリード化合物を選択して誘導化する医薬開発も行われているが(例えばコンビナトリアルケミストリーなど)、母骨格に変化をもたらすことが困難であるため、薬理活性を制御する活性部位(受容体やタンパク質)への結合活性に劇的な効果を示すことができないことも、現在の医薬開発に大きな問題点を投げかけている。
【0004】
これらの問題点の大きなポイントは、新たな母骨格を得ることが困難である点に尽きる。すなわち、本研究では比較的分子量が小さく、非常に多岐に富んだ薬理活性を有しながら、かつ多様な反応性を有する天然物が求められていた。ハナショウガの主成分であるゼルンボンはこれまでに抗癌効果や、抗HIV、抗炎症作用など、多岐に亘る生理活性が発見されている。ゼルンボンは11員環のフムレン骨格を基本とするセスキテルペンで、炭化水素骨格に酸素が一つ結合している比較的単純な元素のみで構成されている。しかし、酸素の結合によって、二重共役系をもつことが最大の特徴であり、この構造こそが新規骨格でもある。
【0005】
発明者は、この二重共役系の存在が反応多様性を生み出すことをこれまでに示している。そして、この部位の反応性を抑制し、ゼルンボンの特徴的構造を崩さない新規反応を見いだすことにも成功している(特許文献1、非特許文献1)。この発明こそが新薬開発の鍵となると考えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−241056号公報(特許第4418878号)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tetrahedron, 69, 10152−10160 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、リード化合物としてのゼルンボンの有用性を、新規物質を得ることで具体的に示し、さらに得られた新規物質は薬剤としての効果を有することを実際に示すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より具体的に本発明に係る化合物は、ゼルンボンから誘導される7−ブロモゼルンボンに脂肪酸を組み込んだ新規物質を提供する。求核剤として用いられた塩は、アクリル酸ナトリウム、クロトン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、α−リノレン酸ナトリウム、エイコサペンタエン酸(EPA,Eicosapentaenoic acid)ナトリウム、ドコサヘキサエン酸(DHA,Docosahexaenoic acid)ナトリウムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化合物では、非常に多くの生理活性が知られる、脂肪酸の一つであるEPAを用い、ゼルンボンとのカップリングに初めて成功した。そして予想通りEPAを含む脂肪酸類縁体とゼルンボンとのカップリング体の多くがヒト白血病細胞増殖抑制効果を有することを見いだした。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明に係る新規物質(ゼルンボン誘導化合物)について実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0012】
また以下の説明において、合成した化合物については、以下の機器を用いて各種測定を行い反応および生成物を確認した。
【0013】
NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置は、日本電子製FT−NMR JNM−270EX, Bruker AVANCE III Nanobay400を用いた。
【0014】
GC(Gas Chromatography)装置は、島津製作所GC−2010を用いた。カラムは、Ineart Cap5 (GL Science)を用いた。
【0015】
GCMS(Gas Chromatography Mass Spectrometry:クロマトグラフ質量分析)装置は、6890N (Agilent J&W Technologies)を用いた。カラムは、HP−5(Agilent J&W technologies)を用いた。
【0016】
減圧機器は、真空機工株式会社GLD−050を用いた。ロータリーバキュームエバポレーターは、東京理化機械株式会社N−1000を用いた。UVランプは、井内盛栄堂SE−140を用いた。融点測定器は、ヤナコグループMP−J3を用いた。
【0017】
本発明に係る化合物を得るための基本的な反応を説明する。ゼルンボン(化合物1)から誘導された7−ブロモ−2,9,9−トリメチル−6−メチレンシクロウンデカ−2,10−ジエノン(エキソオレフィン型臭素化ゼルンボン、以下「7−ブロモゼルンボン」と呼ぶ:化合物2)をリード化合物とし、(1)式で表す反応でゼルンボン誘導化合物を得た。なお、以下の構造式の下の数字は化合物番号を示す(以下同じ)。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
【化3】
【0021】
(1)式で示されるように7−ブロモゼルンボンにDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)と求核剤となる脂肪酸塩を加え、室温で反応させることで、ゼルンボンに脂肪酸を導入した新規化合物を得る。
【0022】
まず、ゼルンボンから7−ブロモゼルンボンを得る方法について説明する。
<エキソオレフィン型臭素化ゼルンボンの合成>
20mLスクリュー管にゼルンボン(化合物1)を200mg(0.92mmol)入れ、CHCN/HO(1/1)3mLを加えて溶解し、NBS(N−ブロモスクシンイミド)1.1eq(180.1mg,1.01mmol)を加えて室温で1分間激しく攪拌した。その後HOを適量加え、反応溶液を吸引ろ過し、水でよく洗浄した。得られた白色固体を乾燥し、化合物2(7−ブロモゼルンボン)を収率85.5%で233.9mg得た。なお、「CHCN」はアセトニトリルである。また、「eq」は「モル当量」を表す(以下同じ)。
【0023】
(2E,10E)−7−ブロモ−2,9,9−トリメチル−6−メチレンシクロウンデカ−2,10−ジエン−1−オン ((2E,10E)−7−Bromo−2,9,9−trimethyl−6−methylenecycloundeca−2,10−dien−1−one):化合物2,
融点:83.0−84.0℃,
IR(KBr):1655cm−1
H NMR(CDCl):δ1.10(s,3H,CH at C4),1.19(s,3H,CH at C4),1.74(s,3H,CH at C8),2.21(dd,1H,J=2.1 and 14.7Hz,CH at C3),2.37−2.59(m,6H,CH at C3,C10, and C11),4.75(d,1H,J=14.7Hz,CH at C2),5.10(s,1H,CH at C1),5.45(s,1H,CH at C1),5.86(t,1H,J=6.3Hz,CH at C9),5.97(d,1H,J=16.2Hz,CH at C5),6.56(d,1H,J=16.2Hz,CH at C6);
13C NMR(CDCl):δ12.4(CH at C8),24.0(CH at C4),27.2(CH at C4),28.0(C2),31.8(C11),38.9(C4),50.3(C10),55.3(C2),114.7(C1),127.7(C11),138.9(C8),148.0(C9),150.1(C1),160.3(C6),203.1(C7);
HRMS:m/z 計算値(C1521BrO):296.0776,実測値:296.0786.
【0024】
以下、7−ブロモゼルンボンに求核剤を用いて作成した新規な化合物を示す。
<求核剤にギ酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2(7−ブロモゼルンボン)を50mg(0.17mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、ギ酸ナトリウム1.5eq(17.2mg,0.168mmol)を加え、室温で44時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。なお、「TLC」は「Thin−Layer−Chromatography」であり、「Hexane」はヘキサン、「AcOEt」はエチルアセテートである。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープンカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=10/1)で分離精製し、無色オイル(化合物3)(Rf=0.28)を収率51.9%で21.8mg得た。
【0025】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチルホルマート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl formate):化合物3,
Yield(51.9%:colorless oil),
IR(KBr):2967,2931,1713,1647cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ1.10(s,3H,CH at C4),1.24(s,3H,CH at C4),1.79(s,3H,CH at C8),2.17−2.71(brm,6H,CH at C3,C10, and C11),4.55(brd,1H,CH at CHOCO),4.75(brd,1H,CH at CHOCO),5.50(t,J=8.3Hz,1H,CH at C2),5.83(d,1H,J=16.4Hz,CH at C5),5.99(m,1H,CH at C9),6.01(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),8.11(s,1H,CH at COH);
13C NMR(CDCl):δ12.0(CH at C8),24.0(CH at C4),24.8(C10),29.7(CH at C4),35.6(C11),37.3(C4),42.3(C3),60.4([C]HOCO),127.4(C6),132.0(C2),133.8(C1),138.6(C8),148.9(C9),159.7(C5),160.8(CH at C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C1622NaO):285.1467,実測値:285.1468.
【0026】
なお、13C帰属データ中に記載した鍵括弧([ ])は、帰属箇所を特定・明示するためにつけたもので、通常アンダーラインが付記されるものである(以下、同様)。また、「’」はダッシュの意味である。
【0027】
【化4】
【0028】
<求核剤にオクタン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を42.3mg(0.142mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、オクタン酸ナトリウム1.5eq(35.5mg,0.214mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープンカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=12/1)で分離精製し、無色オイル(化合物4)(Rf=0.55)を収率69.8%で35.8mg得た。
【0029】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリエチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチルオクタノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl octanoate):化合物4,
Yield(69.8%:colorless oil),
IR(NaCl film):2928,1736,1655cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR (CDCl):δ0.96(t,J=6.6Hz,3H,CH at C8’),1.08(s,3H,CH at C4),1.15−1.28(m,11H,CH at C4’,C5’,C6’, and C7’ and CH at C4),1.63(m,2H,CH at C3’),2.03−2.59(m,6H,CH at C3,C10, and C11),2.31(t,J=7.6Hz,CH at C2’),4.55(brd,1H,CH at CHOCO),4.66(brm,1H,CH at CHOCO),5.46(t,J=7.6Hz,1H,CH at C2),5.83(d,J=16.3Hz,2H,CH at C5),5.99(m,1H,CH at C9),6.01(d,J=16.3Hz,1H,CH at C3);
13C NMR(CDCl):δ11.8(CH at C8),13.8(C8’),23.8(CH at C4),29.1(CH at C4),22.4−34.1(C10,C2’,C3’,C4’,C5’,C6’, and C7’),35.4(C11),37.1(C4),42.1(C3),60.6([C]HOCO),127.1(C6),131.0(C2),134.3(C1),138.2(C8),149.0(C9),159.7(C5),173.5(C1’),203.6(C7);
HRMS:m/z 計算値(C2336):360.2664,実測値:360.2690.
【0030】
【化5】
【0031】
<求核剤にパルミチン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を20.0mg(0.067mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、パルミチン酸ナトリウム1.5eq(28.1mg,0.101mmol)を加え、室温で17時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープンカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=10/1)で分離精製し、無色オイル(化合物5)(Rf=0.48)を収率60.9%で19.4mg得た。
【0032】
(2E,6Z,10E)−6−((ヘキサデシルオキシ)メチル)−2,9,9−トリメチルシクロウンデカ−2,6,10−トリエン−1−オン ((2E,6Z,10E)−6−((Hexadecyloxy)methyl)−2,9,9−trimethylcycloundeca−2,6,10−trien−1−one):化合物5,
Yield(60.9%:colorless oil),
IR(KBr):2920,1701cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.88(t,J=6.6Hz,3H,CH at C16’),1.08(s,3H,CH at C4),1.25(s,27H,CH at C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C11’,C12’,C13’,C14’, and C15’ and CH at C4),1.63(t,J=6.3Hz,2H,CH at C3’),1.79(s,CH at C8),1.99−2.62(m,6H,CH at C3,C10 and C11),2.31(t,J=7.5Hz,2H,CH at C2’),4.55(brd,2H,CH at CHOCO),5.46(t,J=8.3Hz,1H,CH at C2),5.83(d,J=16.3Hz,2H,CH at C5,C6),6.00(d,J=16.3Hz,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ11.5(CH at C8),13.5(C16’),23.4(CH at C4),28.5(CH at C4),22.1−41.7(C4,C10,C11,C2’,C3’,C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C11’,C12’,C13’,C14’, and C15’),41.7(C2’),60.2([C]HOCO),126.7(C6),130.6(C2),133.9(C1),137.8(C8),148.6(C9),159.3(C5),173.2(C1’),203.2(C7);
HRMS:m/z 計算値(C3152):472.3916,実測値:472.3927.
【0033】
【化6】
【0034】
<求核剤にステアリン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を46.0mg(0.155mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、ステアリン酸ナトリウム1.5eq(71.1mg,0.232mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=15/1)で分離精製し、無色オイル(化合物6)(Rf=0.55)を収率12.9%で10.0mg得た。
【0035】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリエチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチルステアレート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl stearate):化合物6,
Yield(12.9%:colorless oil),
IR(KBr):2920,1736,1651cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.88(t,3H,J=6.6Hz,CH at C18’),1.08(s,3H,CH at C4),1.25(s,31H,CH at C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C11’,C12’,C13’,C14’,C15’,C16’, and C17’ and CH at C4),1.63(t,2H,J=7.4Hz,CH at C3’),1.79(s,CH at C8),2.00−2.62(m,6H,CH at C3,C10, and C11),2.31(t,2H,J=7.4Hz,CH at C2’),4.43(brd,1H,CH at CHOCO),4.67(brd,1H,CH at CHOCO),5.47(t,1H,J=8.3Hz,CH at C2),5.83(d,J=16.4Hz,1H, CH at C5),6.00(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),6.02(m,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.1(C18’),24.1(CH at C4),22.7−35.6(C4,C10,C11,C2’,C3’,C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C11’,C12’,C13’,C14’,C15’,C16’,C17’, and C18’),37.4(C4),42.3(C3),60.8([C]HOCO),127.3(C6),131.2(C2),134.6(C1),138.4(C8),149.2(C9),159.9(C5),173.8(C1’),203.9(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3356NaO):523.4127,実測値:523.4133.
【0036】
【化7】
【0037】
<求核剤にアクリル酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を46.5mg(0.156mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、アクリル酸ナトリウム1.5eq(17.7mg,0.188mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=8/1)で分離精製し、無色オイル(化合物7)(Rf=0.35)を収率4.9%で2.2mg得た。
【0038】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリエチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチルアクリレート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl acrylate):化合物7,
Yield(4.9%:colorless oil),
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ1.09(s,3H,CH at C4),1.24(s,3H,CH at C4),1.78(s,3H,CH at C8),1.96−2.71(brm,6H,CH at C3,C10, and C11),4.56(brd,1H,CH at CHOCO),4.75(brd,1H,CH at CHOCO),5.49(t,1H,J=8.7Hz,CH at C2),5.87(d,1H,J=16.5Hz,CH at C5),5.87(dd,1H,J=1.3 and 10.4Hz,CH at C3’),6.01(d,1H,J=16.5Hz,CH at C6),6.03(t,1H,J=5.7Hz,CH at C9),6.13(dd,1H,J=10.4 and 17.3Hz,CH at C3’),6.43(dd,1H,J=1.3 and 17.3Hz,CH at C2’);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C1824NaO):311.1623,実測値:311.1629.
【0039】
【化8】
【0040】
<求核剤にクロトン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を37.4mg(0.126mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、クロトン酸ナトリウム1.5eq(20.4mg,0.189mmol)を加え、室温で19時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=10/1)で分離精製し、無色オイル(化合物8)(Rf=0.33)を収率57.6%で21.9mg得た。
【0041】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリエチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)methyl (E)−ブト−2−エノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl (E)−but−2−enoate):化合物8,
Yield(57.6%:colorless oil),
IR(NaCl film):2962,2866,1720,1654cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR (CDCl):δ1.09(s,3H,CH at C4),1.24(s,3H,CH at C4),1.78(s,3H,CH at C8),1.90(dd,3H,J=1.7 and 6.9Hz,CH at C4’),2.01−2.63(brm,6H,CH at C3,C10, and C11),4.53(brd,1H,CH at CHOCO),4.70(brd,1H,CH at CHOCO),5.47(t,1H,J=8.3Hz,CH at C2),5.84(dq,1H,J=1.7 and 15.5Hz,CH at C2’),5.88(d,1H,J=16.3Hz,CH at C5),6.00(d,2H,J=16.3Hz,CH at C6),6.03(t,1H,J=6.0Hz,CH at C9),7.00(dq,1H,J=6.9 and 15.5Hz,CH at C3’);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),18.1(CH at C4),24.1(C4’),24.8(C10),29.3(CH at C4),35.7(C11),37.3(C4),42.3(C3),60.9([C]HOCO),122.3(C2’),127.2(C6),131.3(C2),134.5(C1),138.4(C8),145.5(C3’),149.3(C9),160.0(C5),166.4(C1’),203.9(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C1926NaO):325.1780,実測値:325.1779.
【0042】
【化9】
【0043】
<求核剤にオレイン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を45.7mg(0.154mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、オレイン酸ナトリウム1.5eq(70.0mg,0.231mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=15/1)で分離精製し、無色オイル(化合物9)(Rf=0.58)を収率48.8%で37.6mg得た。
【0044】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチルオルエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl oleate):化合物9,
Yield(48.8%:colorless oil),
IR(KBr):2924,1736,1663cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.88(t,3H,J=6.8Hz,CH at C18’),1.08(s,3H,CH at C4),1.19−1.38(m,23H,CH at C4,CH at C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C13’,C14’,C15’,C16’, and C17’),1.79(s,3H,CH at C8),1.92−2.12(brm,4H,CH at C8’ and C11’),2.31(t,2H,J=7.6Hz,CH at C2’),2.12−2.69(brm,6H,CH2 at C3,C10, and C11),4.43(brd,1H,CH at CHOCO),4.67(brd,1H,CH at CHOCO),5.29−5.40(brm,2H,CH at C9’ and C10’),5.50(t,1H,J=8.3Hz,CH at C2),5.83(d,1H,J=16.4Hz,CH at C5),6.00(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),6.01(brt,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.1(C18’),22.7(C16’),24.1(CH at C4),24.7(C10),25.0(C3’),27.2(C11’),27.2(C8’),29.1−29.8(C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C13’,C14’, and C15’ and CH at C4),31.9(C17’),34.4(C2’),35.6(C11),37.3(C4),42.3(C3),60.8([C]HOCO),127.3(C6),129.7(C10’),130.0(C9’),131.2(C2),134.6(C1),138.4(C8),149.2(C9),159.9(C5),173.8(C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3354NaO):521.3971,実測値:521.3984.
【0045】
【化10】
【0046】
<求核剤にリノール酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を47.9mg(0.161mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、リノール酸ナトリウム1.5eq(72.9mg,0.242mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=15/1)で分離精製し、無色オイル(化合物10)(Rf=0.48)を収率57.5%で46.0mg得た。
【0047】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチル(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl (9Z,12Z)−octadeca−9,12−dienoate ):化合物10,
Yield(57.5%:colorless oil),
IR(KBr):2932,1736,1655cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.89(t,3H,J=6.9Hz,CH at C18’),1.08(s,3H,CH at C4),1.23(m,31H,CH at C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C11’,C12’,C13’,C14’,C15’,C16’, and C17’ and CH at C4),7.22(t,3H,J=7.3Hz,CH at C3’),1.79(s,3H,CH at C8),2.00−2.59(m,10H,CH at C3,C10,C11,C8’, and C14’),2.31(t,2H,J=7.3Hz,CH at C2’),2.77(t,2H,J=6.5Hz,CH at C11’),4.43(brd,1H,J=11.0Hz,CH at CHOCO),4.67(brd,1H,J=11.0Hz,CH at CHOCO),5.29−5.42(m,4H,CH at C9’,C10’,C12’, and C13’),5.46(t,1H,J=8.3Hz,CH at C2),5.83(d,1H,J=16.4Hz,CH at C5),6.00(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),6.03−6.00(m,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.1(C18’),22.6−42.3(C4,C10,C11,C3’,C4’,C5’,C6’,C7’,C8’,C9’,C10’,C12’,C13’,C14’,C15’,C16’,C17’, and C18’ and CH at C4),24.1(CH at C4),25.6(C11’),34.4(C2’),37.3(C4),42.3(C3),60.8([C]HOCO),127.3−130.2(C6,C9’,C10’,C12’, and C13’),131.2(C2),134.6(C1),138.4(C8),149.1(C9),159.8(C5),173.7(C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3352NaO):519.3814,実測値:519.3804.
【0048】
【化11】
【0049】
<求核剤にα−リノレン酸ナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を47.1mg(0.158mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、α−リノレン酸ナトリウム1.5eq(71.4mg,0.238mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=5/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=15/1)で分離精製し、無色オイル(化合物11)(Rf=0.53)を収率43.5%で34.2mg得た。
【0050】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチル(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl (9Z,12Z,15Z)−octadeca−9,12,15−trienoate):化合物11,
Yield(43.5%:colorless oil),
IR(KBr):2932,1736,1651cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.98(t,3H,J=7.5Hz,CH at C18’),1.08(s,3H,CH at C4),1.17−1.41(m,13H,CH at C3’,C4’,C5’,C6’, and C7’ and CH at C4)1.56−1.68(m,2H,CH at C17’),1.79(s,3H,CH at C8),1.97−2.67(brm,8H,CH at C3,C10,C11, and C11’),2.31(t,2H,J=7.6Hz,CH at C2’),2.73−2.87(m,4H,CH at C11’ and C14’),4.42(brd,1H,CH at CHOCO),4.67(brd,1H,CH at CHOCO),5.27−5.44(m,6H,CH at C9’,C10’,C12’,C13’,C15’, and C16’),5.47(t,1H,J=8.3Hz,CH at C2),5.83(d,1H,J=16.4Hz,CH at C5),6.00(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),6.02(brt,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.3(C18’),20.6(C8’),24.1(CH at C4),24.7(C10),25.0(C17’),25.5(C14’),25.6(C11’),27.2−29.2(C3’,C4’,C5’,C6’, and C7’),29.4(CH at C4),34.4(C2’),35.6(C11),37.3(C4),42.3(C3),60.8([C]HOCO),127.1(C16’),127.3(C6),127.8(C15’),128.2(C13’),128.3(C12’),130.2(C10’),131.2(C2),132.0(C9’),134.5(C1),138.4(C8),149.2(C9),159.9(C5),173.7(C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3350NaO):517.3658,実測値:517.3671.
【0051】
【化12】
【0052】
<求核剤にEPAナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を30.4mg(0.102mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、EPAナトリウム1.5eq(50.5mg,0.156mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=2/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=10/1)で分離精製し、無色オイル(化合物12)(Rf=0.73)を収率52.8%で28.0mg得た。
【0053】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチル−(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)−イコサ−5,8,11,14,17−ペンタンエノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl−(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)−icosa−5,8,11,14,17−pentaenoate):化合物12,
Yield(52.8%:colorless oil),
IR(NaCl film):2951,1736,1651cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.97(t,3H,J=7.6Hz,CH at C20’),1.08(s,3H,CH at C4),1.23(s,3H,CH at C4),1.72(quin,2H,CH at C16’),1.79(s,3H,CH at C8),2.00−2.62(brm,6H,CH at C3,C10, and C11),2.03−2.16(m,2H,CH at C3’),2.33(t,2H,J=7.6Hz,CH at C2’),2.77−2.88(m,6H,CH at C7’,C10’, and C13’),4.43(brd,1H,CH at CHOCO),4.67(brd,1H,CH at CHOCO),5.27−5.44(m,10H,CH at C5’,C6’,C8’,C9’,C11’,C12’,C14’,C15’,C17’, and C18’),5.47(t,1H,J=8.4Hz,CH at C2),5.81(d,1H,J=16.5Hz,CH at C5),6.00(d,1H,J=16.5Hz,CH at C6),6.01(m,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.3(C20’),20.6(C3’),22.7(C19’),24.1(CH at C4),24.7(C16’),24.8(C13’),25.5(C10’),25.6(C7’),26.5(C4’),29.3(CH at C4),32.6(C10),33.7(C2’),35.5(C11),37.3(C4),42.3(C3),60.8([C]HOCO),127.0(C18’),127.3(C6),127.9(C17’),128.1(C15’),128.1(C14’),128.2(C12’),128.3(C11’),128.6(C9’),128.8(C8’),129.0(C6’),131.2(C2),132.1(C5’),134.5(C1),138.4(C8),149.1(C9),159.8(C5),173.5(C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3550NaO):541.3658,実測値:541.3671.
【0054】
【化13】
【0055】
<求核剤にDHAナトリウムを用いた反応>
遮光ビンに化合物2を20.9mg(0.070mmol)入れ、DMF1mLを加えて攪拌し、DHAナトリウム1.5eq(36.0mg,0.106mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。TLC(Hexane/AcOEt=2/1)で反応終了を確認し、反応を止めた。反応液を酢酸エチルで3回抽出し、飽和食塩水で3回洗浄した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、真空乾燥した。得られた生成物をオープン中圧用シリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane/AcOEt=12/1)で分離精製し、無色オイル(化合物13)(Rf=0.48)を収率59.5%で22.8mg得た。
【0056】
((1Z,5E,8E)−4,4,8−トリメチル−7−オキソシクロウンデカ−1,5,8−トリエン−1−イル)メチル (5Z,8Z,11Z,14Z,17Z,20Z)−トリコーサ−5,8,11,14,17,20−ヘキサノエート (((1Z,5E,8E)−4,4,8−Trimethyl−7−oxocycloundeca−1,5,8−trien−1−yl)methyl (5Z,8Z,11Z,14Z,17Z,20Z)−tricosa−5,8,11,14,17,20−hexaenoate):化合物13,
Yield(59.5%:colorless oil),
IR(KBr):3012.81,2959,2353,1736,1655cm−1
The assignment number was based on zerumbone.
H NMR(CDCl):δ0.97(t,3H,J=7.5Hz,CH at C22’),1.08(s,3H,CH at C4),1.23(s,3H,CH at C4),1.79(s,3H,CH at C8),1.94−2.66(m,12H,CH at C3,C10,C11,C2’,C3’, and C21’),2.75−2.91(m,10H,CH at C6’,C9’,C12’,C15’, and C18’),4.42(brd,1H,CH at CHOCO),4.69(brd,1H,CH at CHOCO),5.27−5.51(m,13H,CH at C2,C4’,C5’,C7’,C8’,C10’,C11’,C13’,C14’,C16’,C17’,C19’, and C20’),5.81(d,1H,J=16.4Hz,CH at C5),6.00(d,1H,J=16.4Hz,CH at C6),5.98−6.02(m,1H,CH at C9);
13C NMR(CDCl):δ12.1(CH at C8),14.3(C22’),20.6(C21’),22.8(C3’),24.1(CH at C4),24.7(C18’),24.8(C15’),25.5(C12’),25.6(C9’),26.5(C6’),29.3(CH at C4),33.7(C10),34.2(C2’),35.5(C11),37.4(C4),42.3(C3),60.9([C]HOCO),127.0−132.1(C4’,C5’,C7’,C8’,C10’,C11’,C13’,C14’,C16’,C17’,C19’, and C20’),129.5(C2),134.5(C1),138.4(C8),149.1(C6),159.8(C5),173.0(C1’),203.8(C7);
HRMS(M+Na):m/z 計算値(C3752NaO):567.3814,実測値:567.3840.
【0057】
【化14】
【0058】
<細胞培養>
次に上記の化合物による癌細胞増殖抑制効果について調べた。ヒト白血病T細胞株Jurkat細胞は、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(つくば市、茨城県)より入手した。10%牛胎児血清(Thermo Fisher Scientifics、K.K.、MA、USA)、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLスプレトマイシン(共にLife Technologies、 Carlsbad、CA、USA)を含んだRPMI1640培地(和光純薬工業株式会社、大阪市、大阪府)により37℃、95%空気−5%CO環境下で培養した。
【0059】
<癌細胞増殖抑制効果>
Jurkat細胞を1×10 cells/mLに調整し、24ウェルマルチプレート(Thermo Fisher Scientifics K.K.)に500μL/wellずつ播種した。播種後、上記の化合物3乃至13で処理し、培養した。サンプル処理24、48、72時間後に細胞をトライパンブルー(Life Technologies)で染色し、血球計算盤を用いて生細胞を計数した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に各化合物に対するIC50、1/IC50および求核剤を共に示した。すくなくとも、IC50が10以下の物質は癌細胞増殖抑制効果があると考えられる。なお、化合物9については、実験をしていない。また、化合物1のゼルンボンは求核剤の欄に括弧付でゼルンボン自体を示した。
【0062】
表1を参照して、化合物3、7、8、12、13は、ゼルンボン自体のIC50より癌細胞増殖の抑制効果が高かった。特に化合物7と13は、nMのオーダーになるほど、癌細胞増殖抑制効果が強かった。癌細胞増殖の抑制効果が非常に高いと言われるパクリタキセルのIC50が、数十nM〜数百nMとされている。したがって、化合物7と13は、パクリタキセルと同等程度の癌細胞増殖抑制効果を有すると言える。
【0063】
また、化合物13のDHAのJurkat細胞に対するIC50を調べたところ10μMよりは大きかった。ゼルンボン自身のIC50が5.57μMであったので、化合物13は、ゼルンボンおよびDHA単独のIC50より小さくなった。これより、ゼルンボンは求核剤と結合することで癌細胞増殖抑制効果を獲得したといえ、化合物9を除く上記の化合物1乃至13のいずれについても癌細胞増殖抑制効果を有しているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る化合物は、リード化合物として好適に利用できるほか、抗癌剤としても好適に利用することができる。