(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0021】
本発明の実施形態では、先ず、電気・電子分野で使用される微小部品について説明する。一般に、高性能電子部品1は、
図1Aに示すように、セラミックス製の微小部品10を介してセラミックス積層基板11に実装される。基板11の内部には、配線層が内蔵されており、基板11の外表面には、内部の配線層と電気的に接続された表面配線層12が形成されている。
【0022】
微小部品10(パッド)は、例えば、円筒形であり、
図1Bに示すように、軸方向の上方から下方までの2つ以上の異なる外径を有する。微小部品10の詳細な構成に特に限定は無いが、微小部品10は、具体的には、基端部分10aの外径が先端部分10bの外径よりも大きい段差を有している。そして、最小の外径を有する先端部分10bの上面には、めっき層用の凹部10cが微小面として設けられており、微小部品10の中心には、先端部分10bから基端部分10aまで開口10dが設けられ、その開口10dは金属種で充填あるいは内面が金属層で被覆されている。そのため、微小部品10の下面が基板11の表面配線層12と電気的に接続され、微小部品10の凹部10cにめっき層10eが設けられ、そのめっき層10eと電子部品1とがはんだ接合されることで、電子部品1は、微小部品10を介して基板11の表面配線層12と電気的に接続される。また、先端部分10bの上面の凹部10cの形状は、めっき層10eへはんだの塗着が可能な限りの任意に選択でき、例えば、開口10dを備える平坦面であってもよい。微小部品10の寸法に特に限定は無いが、例えば、微小部品10の軸方向の高さは、1.0mm〜15.0mmの範囲内であり、例えば、微小部品10の最大の外径は、1.0mm〜15.0mmの範囲内である。
【0023】
本発明に係る微小部品表面処理システム2は、このような微小部品10の微小面に粗化し、この微小面にめっき層を表面処理として形成するためのシステムであって、
図2に示すように、振込みプロセス装置20と、表面粗化プロセス装置21と、表面処理プロセス装置22とを備える。
【0024】
振込みプロセス装置20は、複数の微小部品10を振込みパレットに供給し、振込みパレットに振動と搖動を与えて振込みを行う。又、振込みプロセス装置20は、移載パレットを介して複数の微小部品10をセットパレット(最終パレット)に移し替え(移載し)、セットパレットをマスキング板と蓋体とで挟み込んで表面粗化用治具を構成する。表面粗化用治具では、マスキング板の露出孔から微小部品10の微小面のみを露出させる。振込みプロセス装置20は、その表面粗化用治具を表面粗化プロセス装置21に渡す。
【0025】
表面粗化プロセス装置21は、渡された表面粗化用治具のマスキング板に対して処理材を投射して、微小部品10の微小面のみを粗化する。その後、表面粗化プロセス装置21は、表面粗化用治具を分解して、粗化後の微小部品10を表面処理プロセス装置22に渡す。
【0026】
表面処理プロセス装置22は、渡された微小部品10に表面処理のめっき処理を行い、微小部品10の微小面にめっき層を形成させる。微小部品10の微小面は、粗化されることで、めっき層に対するアンカー効果が生じ、めっき層と下地の微小面との密着強度を高める。上述では、表面処理としてめっき処理を挙げたが、これに限定する必要は無く、例えば、コーティング、塗装等の表面処理であっても、微小部品10の微小面の粗化により、表面処理層の密着強度を高めることが出来る。
【0027】
さて、振込みプロセス装置20と、表面粗化プロセス装置21と、表面処理プロセス装置22とには、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。後述する各部についても、CPUがプログラムを実行することで各部の機能を制御する。
【0028】
次に、
図2、
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、作業者は、微小部品表面処理システム2の振込みプロセス装置20に、複数の微小部品10を投入する。
【0029】
ここで、微小部品10は、
図4に示すように、主に、段差を有する円筒形であり、下方部分(基端部分)10aの外径が先端部分10bの外径よりも大きい。先端部分10bの上面には、断面形状が長方形をなす凹部10cが設けられ、先端部分10bの凹部10cの中央から基端部分10aの底面の中央まで開口10dが設けられている。
[振込みプロセス]
【0030】
振込みプロセス装置20の供給制御部201は、複数の微小部品10が投入されると、複数の微小部品10を、当該微小部品が一方向のみ入ることが可能な複数の整列穴が設けられた振込みパレットに供給する(
図3:S101)。
【0031】
具体的には、供給制御部201は、振込み専用のテーブルに振込みパレットを載置し、その振込みパレットの上面へ複数の微小部品10を供給する。ここで、整列穴の形状は、微小部品10の形状に応じて適宜設計される。
【0032】
例えば、微小部品10が、
図4に示すように、円筒形であり、軸方向の上方から下方までの2つの異なる外径を有する場合、振込みパレット4の整列穴40の上方は、
図5に示すように、微小部品10の最大の外径Rと同等の第一の直径40aを有し、整列穴40の直径は、第一の直径40aから下方に向かって縮径して、微小部品10の最小の外径rと同等の第二の直径40bとなる形状であり、微小部品10の軸方向の高さhと同等の高さ40bを有する。これにより、微小部品10の基端部分10aが整列穴40の第一の直径40bの空間に配置され、微小部品10の先端部分10bが整列穴40の第二の直径40bの空間に入り、微小部品10が整列穴40に一方向のみ入ることになる。
【0033】
ここで、整列穴40の第一の直径40aが微小部分10の最大の外径Rと同等であるとは、整列穴40の第一の直径40aが微小部品10の最大の外径Rと厳密に同一である必要は無く、微小部品10の最大の外径Rに対して所定のクリアランスを許容しても良い。所定のクリアランスは、例えば、微小部品10の最大の外径Rに対して1%〜10%の範囲内である。これにより、微小部品10が整列穴40に入る際にブロッキングを発生し難くすることが出来る。
【0034】
同様に、整列穴40の第二の直径40bが微小部分10の最小の外径rと同等であるとは、整列穴40の第二の直径40bが微小部品10の最小の外径rと厳密に同一である必要は無く、微小部品10の最小の外径rに対して所定のクリアランスを許容しても良い。所定のクリアランスは、例えば、微小部品10の最小の外径rに対して1%〜10%の範囲内である。
【0035】
同様に、整列穴40の高さ40cが微小部品10の軸方向の高さhと同等であるとは、整列穴40の高さ40cが微小部分10の軸方向の高さhと厳密に同一である必要は無く、微小部分10の軸方向の高さhに対して所定のクリアランスを許容しても良い。所定のクリアランスは、例えば、
図5に示す整列穴40の高さ40cに対して10%以上に設定されても良いし、
図5に示す整列穴40の高さ40cをテーパー面の深さとして微小部分10の軸方向の高さhと同等にしても良いし、微小部分10の軸方向の高さhに対して1%〜10%の範囲内に設定しても良い。この整列穴40は、非貫通のくぼみであっても、貫通孔であっても構わない。
【0036】
又、整列穴40の第一の直径40aから第二の直径40bまでの内壁は、断面視で傾斜面を有しており、微小部品10の先端部分10bと基端部分10aとの段差をガイドする役目を有するため、広げ過ぎない方が好ましい。この内壁の形状は、傾斜面の他に、例えば、段差面でも構わない。さらに、微小部品10の落ち込みを容易にするために、整列穴40の縁部に面取りがなされても良い。
【0037】
ここで、振込みパレット4の上面には、複数の整列穴40が等間隔に設けられているが、整列穴40の数や配置は、微小部品10の種類や数に応じて適宜設計される。
【0038】
さて、供給制御部101が複数の微小部品10を振込みパレット4に供給すると、振込みプロセス装置20の搖動振動制御部202は、複数の微小部品10が供給された振込みパレット4に搖動と振動を与えて、当該振込みパレット4の整列穴40に微小部品10を入れて、複数の整列穴40に対応して複数の微小部品10を整列配向させる(
図3:S102)。
【0039】
具体的には、搖動振動制御部202は、搖動駆動部と水平駆動部とを用いて、振込みパレット4が載置されたテーブルを水平方向に搖動・振動させる。ここで、
図5に示すように、微小部品10の基端部分10aが上方に、先端部分10bが下方に向いた状態で、微小部品10が整列穴40に一方向に入り込む。微小部品10の供給量が適量であれば、搖動振動制御部202は、振込みパレット4を2往復〜3往復だけ搖動・振動させることで、振込みパレット4の全ての整列穴40に微小部品10を入れ込み、振込みプロセスは完了する。尚、振込みパレット4の端部の周囲に外枠を設けて、搖動・振動中に振込みパレット4から微小部品10が落ちないように構成しても良い。
【0040】
さて、複数の微小部品10が振込みパレット4の整列穴40に入り込むと、微小部品10の形状が、軸方向の上方から下方まで縮径していることから、微小部品10が整列穴40へ入った状態は、
図6Aに示すように、微小部品10の最大の外径を有する基端部分10aが上方となり、微小部品10の先端部分10bが下方となる。
【0041】
搖動振動制御部202が振込みパレット4の搖動・振動を完了すると、振込みプロセス装置20の移し替え制御部203は、振込みパレット4の整列穴40と同等に整列した整列穴を有する最終パレットを用いて、振込みパレット4の整列穴40に整列配向した複数の微小部品10を前記最終パレットの整列穴に移し替えるとともに、移し替わった微小部品10のうち、表面処理の対象となる微小面を、前記最終パレットの整列穴から露出させる(
図3:S103)。
【0042】
ここで、移し替え制御部203が、整列配向後の複数の微小部品10を移し替える方法に特に限定は無く、微小部品10のうち、粗化対象の微小面がどこにあるかによって、適宜設計される。本発明の実施形態では、粗化対象の微小面が、微小部品10の先端部分10bの凹部10cであり、整列配向後の微小部品10の微小面10cが、振込みパレット4の整列穴40において下向きになる場合、下方に入り込んだ微小部品10の先端部分10bの微小面10cを上方に反転させる必要がある。
【0043】
そこで、移し替え制御部203は、先ず、
図6Bに示すように、振込みパレット4の整列穴40に対して移載パレット5の整列穴50を合わせて、振込みパレット4に移載パレット5を固定する。ここで、移載パレット5の整列穴50は、微小部品10の微小面10cが下方から上方に反転されるように設計され、例えば、振込みパレット4の整列穴40の第一の直径40aと同等の直径を有する円筒形であり、移載パレット5の整列穴50の数と位置は、振込みパレット4の整列穴40の数と位置と同等である。又、振込みパレット4の整列穴40の微小部品10が円滑に移載パレット5の整列穴50に移し替えされるように、移載パレット5の整列穴50の縁部に面取りがなされても良い。
【0044】
又、振込みパレット4には、位置決め用のガイドピン41が設けられ、移載パレット5には、振込みパレット4のガイドピン41に対応して、位置決め穴51が予め設けられており、移し替え制御部203は、振込みパレット4のガイドピン41に移載パレット5の位置決め穴51を入れて位置合わせして、振込みパレット4を移載パレット5の下方に配置する。
【0045】
次に、移し替え制御部203は、
図7Aに示すように、移載パレット5を固定した振込みパレット4を上下反転させ、振込みパレット4を上方に移載パレット5を下方に配置させる。そして、移し替え制御部203は、振込みパレット4の側面を軽くたたいて振動を与える(
図7Aの矢印71)ことで、振込みパレット4の整列穴40に入った微小部品10を移載パレット5の整列穴50に落とす。
【0046】
更に、移し替え制御部203は、
図7Bに示すように、振込みパレット4を取り除くとともに、移載パレット5の整列穴50に対してセットパレット6(最終パレットとなる)の貫通孔60(整列穴)を合わせて、移載パレット5の上面にセットパレット6の下面を固定する。ここで、セットパレット6の貫通孔60の形状は、微小部品10が固定されるように設計され、例えば、微小部品10の先端部分10bと基端部分10aが入り込む段差のある円筒形と同等であり、セットパレット6の貫通孔60の数と位置は、移載パレット5の整列穴50の数と位置と同等である。ただし、貫通孔60の深さは、微小部品をセットパレット6の面から外部に露出しやくするために微小部品の高さと同等であることが好ましい。セットパレット6は貫通孔60が穿孔された金属板であるため、セットパレット6の上面には、底面体7が載置され、貫通孔60の底面を形成する。
【0047】
又、セットパレット6には、移載パレット5の位置決め穴51に対応して、位置決め用のガイドピン61を予め設けて、移し替え制御部203は、セットパレット6のガイドピン61に移載パレット5の位置決め穴51を入れて位置合わせしても良い。
【0048】
そして、移し替え制御部203は、
図8Aに示すように、セットパレット6を固定した移載パレット5を上下反転させ、移載パレット5を上方に、セットパレット6を下方に、配置させる。そして、移し替え制御部203は、移載パレット5の側面を軽くたたいて振動を与える(
図8Aの矢印81)ことで、移載パレット5の整列穴50に入った微小部品10をセットパレット6の貫通孔60に落とす。
【0049】
移し替え制御部203は、
図8Bに示すように、セットパレット6の上面に蓋体8を固定し、再度、セットパレット6を上下反転させる(
図8Aの矢印82)。蓋体8には、セットパレット6のガイドピン61に対応して、位置決め用の位置決め穴83を予め設けて、移し替え制御部203は、セットパレット6のガイドピン61に蓋体8の位置決め穴83を入れて位置合わせしても良い。
【0050】
そして、移し替え制御部203は、
図9Aに示すように、底面板7を取り除く。これにより、セットパレット6の貫通孔60に移し替わった微小部品10の微小面10cは、セットパレット6の貫通孔60から露出される。
【0051】
尚、上述では、整列配向後の微小部品10の微小面10cが、振込みパレット4の整列穴40において下向きになっているため、移し替え制御部203は、振込みパレット4の整列穴40の微小部品10を、移載パレット5を経由して、セットパレット6の貫通孔60に移し替えた。例えば、整列配向後の微小部品10の微小面10cが、振込みパレット4の整列穴40において上向きになっている場合、移し替え制御部203は、移載パレット5を経由せずに、振込みパレット4の整列穴40の微小部品10をセットパレット6の貫通孔60に直接移し替えても構わない。つまり、移し替えの方法は、微小部品10の微小面10cの位置や整列配向後の微小部品10の状態に応じて適宜設計変更される。更に、移し替えの方法は、上述のように、振動を与えたり、上下反転させたりしたが、その他に、吸着装置を用いたり、シャッター板を用いたりしても構わない。
【0052】
さて、移し替え制御部203が微小部品10の移し替えを完了すると、振込みプロセス装置20のマスキング制御部204は、セットパレット6の貫通孔60と同等に整列した露出孔を有するマスキング板を用いて、微小部品10の微小面10cに対してマスキング板の露出孔を合わせて、セットパレット6にマスキング板を固定し、表面粗化用治具を構成する(
図3:S104)。
【0053】
ここで、マスキング制御部204がマスキング板を固定する方法に特に限定は無い。例えば、マスキング制御部204が、セットパレット6の貫通孔60に入った微小部品10の微小面10c(凹部10cの底面)に対してマスキング板9の露出孔90を合わせて、セットパレット8にマスキング板9を固定して、表面粗化用治具を構成する。尚、マスキング板9には、セットパレット6の位置決め穴に対応して、ガイドピンを予め設けて、マスキング制御部203は、セットパレット6の位置決め穴にマスキング板9のガイドピンを入れて位置合わせしても良い。これにより、微小部品10の微小面10cだけマスキング板9の露出孔90を介して外部に露出させることが出来る。
【0054】
尚、振込みパレット4と、移載パレット5と、セットパレット6と、底面体7と、蓋体8の材質に特に限定は無いが、例えば、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが出来る。特に、剛直性、穿孔の容易さ、コスト等から、これらの素材は、フェノール樹脂が好ましく、具体的には、ベークライトが更に好ましい。又、これらのパレットの厚み(例えば、振込みパレット4の高さ40cに相当する)は、微小部品10の軸方向の高さhに応じて適宜規定され、具体的には、これらのパレットの厚みは、1mm〜20.0mmの範囲内が好ましく、3mm〜15mmの範囲内が更に好ましい。
【0055】
又、マスキング板9の材質に特に限定は無いが、例えば、研掃材への耐摩耗性、曲がり難さ、硬さ、コスト等から金属や合金、特にステンレス鋼が好ましく、具体的には、SUS304が更に好ましい。SUS304とは、オーステナイト系のクロム・ニッケルの合金のステンレス鋼である。又、マスキング板の厚みは、微小部品10の軸方向の高さ、処理材の投射角等に応じて適宜規定され、具体的には、マスキング板の厚みは、0.1mm〜5.0mmの範囲内が好ましく、0.3mm〜3.0mmの範囲内が更に好ましい。
[表面粗化プロセス]
【0056】
さて、マスキング制御部204が表面粗化用の治具の構成を完了すると、表面粗化用の治具は、表面粗化プロセス装置21へ移動し、表面粗化プロセス装置21の表面粗化制御部205は、表面粗化用治具のマスキング板9に向かって処理材を投射して、マスキング板9の露出孔90を介して微小部品10の微小面10cのみを粗化する(
図3:S105)。
【0057】
これにより、微小部品10の微小面10cのみを粗化することが出来るため、この微小面10cのみにアンカー効果を生じさせ、後に続く表面処理において表面処理層の接着強度を高めることが出来る。
【0058】
表面粗化制御部205が粗化する方法に特に限定は無いが、例えば、ケミカルエッチング、反応性イオンエッチング、レーザビーム照射、ブラスト処理、スパッタリング、機械加工法等を挙げることが出来る。
【0059】
本発明の実施形態では、微小部品10がセラミックス製であることから、表面粗化制御部205は、
図9Bに示すように、表面粗化用治具のマスキング板8に向かってショットブラスト処理を行う。表面粗化用治具では、複数の微小部品10の微小面10cがマスキング板9の露出孔90に向かって整列配向しているため、ショットブラスト処理の処理材(研掃材、研削材)がマスキング板9の露出孔90を介して微小部品10の微小面10cに当たり(
図9Bの矢印91)、微小部品10の微小面10cの表面粗さRzを大きくする。このように、微小部品10がセラミックス製である場合、ショットブラスト処理という比較的簡単な方法を採用することで、微小部品10の微小面10cに対してサブミクロン〜ミクロンオーダーの微細な凹凸粗面を簡単に付与することが可能となり、微小部品10の接着強度の向上やその寿命改善を達成することが出来る。
【0060】
又、微小部品10がセラミックス製である場合、微小部品10をセラミックス製として焼成する際に、炉内で拾ってくる各種の汚染部を清浄化し、同時に、ショットブラスト処理の乾式方法により微細な凹凸粗面を選択的に集中して均質に調整することが出来る。
【0061】
ショットブラスト処理により形成される微小部品10の微小面10cの表面粗さRzは、具体的には、表面処理層との接着強度の点から、JIS B0601−2001に規定される最大粗さであって、0.1μm〜300μmの範囲内が好ましく、1.0μm〜150μmの範囲内が更に好ましい。
【0062】
又、ショットブラスト処理は、処理材の粗化物性状、表面処理層との接着強度等の点から、噴射距離、ノズル先端の形状、噴射量等のブラスト条件を適宜選択して調整することが出来る。
【0063】
ショットブラスト処理では、微小部品10を構成するセラミックスのガラス質を適度に除去することを目的としている。処理材の投射方法には、機械式、空気式、湿式等の種類が存在するが、処理材を所望のブラスト条件で噴射することが出来れば、その投射方法に特に限定は無く、例えば、回転する羽根車の遠心力で処理材を投射する方法であっても、打出しロータにより処理材を叩くことで処理材を投射する方式であっても良い。
【0064】
ショットブラスト処理で吹き付ける処理材には特に限定は無く、金属、アルミナ、炭化ケイ素、ガラス、樹脂等が用いられるが、例えば、処理対象のパッドの材質と同等以上の硬度を有する処理材が好ましく、具体的には、アルミナ粒子やアルミナ微粉末が好ましい。
【0065】
処理材の粒子径(番手)に特に限定は無く、微小部品10の微小面10cに形成する表面粗さRz(凹凸)の程度に応じて適宜調整することが出来る。表面粗さRzは、その後に形成される表面処理層の材質、厚み、形成方法等に応じて、アンカー効果を生じさせるように調整される。処理材の粒子径は、具体的には、表面処理層に対するパッドの適当な表面粗さRzを得るために、0.5μm(番手#20000)〜200.0μm(番手#30)の範囲内であると好ましく、16.0μm(番手#1000)〜140.0μm(番手#90)の範囲内であると更に好ましい。
【0066】
処理材の形状は、微小部品10の材質やブラスト条件等によって適宜設計変更可能であり、例えば、通常の球形の他に、各種形状を広く使用することが出来る。
【0067】
処理材の投射条件のうち、投射圧力は、例えば、0.01MPa〜1.0MPaの範囲内であると好ましい。ここで、投射圧力が0.01MPa未満の場合、ノズルより投射される処理材の投射速度が遅くなり、微小部品10の微小面10cを処理するための衝撃が小さくなり、工業用利用に適さない。一方、投射圧力が01.0MPaを超える場合、投射された処理材が微小部品10の微小面10cに衝突した際に、投射速度が速いため、処理材に大きな力が印加され、処理材が微小部品10の微小面10cにめり込む可能性があり、好ましくない。投射圧力は、例えば、0.02MPa〜0.40MPaの範囲内であると好ましい。又、投射条件の空気量は、例えば、250L/min〜300L/minの範囲内であると好ましい。
【0068】
処理材の投射速度は、投射圧力や処理材の粒度等によって適宜調整される。処理材の噴射距離は、標準的には、5cm〜50cmの範囲内に設定され、好ましくは、10cm〜30cmの範囲内に設定される。ここで、噴射距離が5cm未満の場合、投射速度が速くなり過ぎて、微小部品10の微小面10cに過度に損傷を与えるため、好ましくない。噴射距離が50cmを超える場合、処理材の投射面が広がり、微小部品10の微小面10cに対する正確な加工処理が達成出来ず、更に、ブラスト処理に要する時間が長くなる可能性があり、好ましくない。
【0069】
投射条件の入射角は、処理材の投射目的に応じて適宜選択されるが、通常は、マスキング板9に対して70°〜110°の範囲内であり、好ましくは、80°〜100°の範囲内に設定される。入射角は、ノズル先端の形状、ブラスト面の広さ、マスキング板9の露出孔90の間隔、露出孔90の幾何学配置、マスキング板9の厚み、所望の処理形状等に応じて適宜調整される。
【0070】
上述のように、微小部品10の微小面10cに対する粗化の程度は、投射する処理材の粒子径や投射条件の調整により、容易かつ正確に調整することが出来るため、電気的・機械的に安定な微小部品10の加工が可能である。
[表面処理プロセス]
【0071】
さて、表面粗化制御部205が粗化を完了すると、表面粗化用治具が分解され、微小面10cが粗化された複数の微小部品10が出され、表面処理プロセス装置22へ移動し、表面処理プロセス装置22の表面処理制御部206は、微小部品10のうち、粗化された微小面10cに、めっき処理を含む表面処理を施す(
図3:S106)。
【0072】
表面処理制御部206が表面処理を施す方法に特に限定は無い。本発明の実施形態において、表面処理がめっき処理である場合、上述のように、微小部品10の微小面10cのみが粗化されており、他の面は粗化されていないため、めっき処理において、微小部品10の全体面にめっき層が析出することが無く、微小面10cのみにめっき層が析出するため、必要な部分に必要なめっき層を形成させることが可能となるとともに、めっき処理の素材となる金属種の所要量を削減することが可能となる。後述するめっき処理のニッケルや金の所要量が数分の一以下に低減することも出来る。
【0073】
ここで、表面処理制御部206がめっき処理を施す方法に特に限定は無い。本発明の実施形態では、表面処理制御部206は、粗化された微小部品10に無電解ニッケルめっき処理を施して、微小部品10の微小面10cに導電性のニッケルめっき層を付与した後、電解ニッケルめっき処理を施し、ニッケルめっき層の上に金めっき層を形成させる。金めっき層は、電子部品1とのはんだ接合の対象となる。ニッケルめっき層の厚さは、1μm〜9μmの範囲内に設定され、金めっき層の厚さは、0.05μm〜1.50μmの範囲内に設定される。これにより、ICチップ等の電子部品1の金属配線部分を微小部品10の微小面10cのめっき層にはんだ接合することで、電子部品1を微小部品10の微小面10cのめっき層および開口10dを介して表面配線層12に電気的に接続することが出来る。
【0074】
ここで、めっき処理プロセスにおいて、必要に応じて、微小部品10の微小面10cに追加的な表面調整を行ったり、微小部品10の微小面10cに金属触媒の核を付着させる触媒化を行ったりしても構わない。
【0075】
表面調整は、微小部品10の微小面10cに対する物理的処理及び/又は化学的処理に対応し、表面調整を行うことで、微小部品10の微小面10cに微細な凹凸を残し、めっき層の足場となり、アンカー効果を得ることが出来る。表面調整は、具体的には、バフ研磨、ホーニング等の物理的処理、フッ酸、硝酸を含む群から選ばれた少なくとも1種類の酸に浸漬する化学的処理(ソフトエッチング)を選択することが出来る。
【0076】
又、感受性化、触媒化には、例えば、パラジウム、スズ等の微細な金属種が用いられ、これらの金属種は、無電解ニッケルめっき処理においてニッケルイオンの足場となり、ニッケルイオンが微小部品10の微小面10cに固着する際に、ニッケルイオンが還元されて表面に堆積することを促進する。
【0077】
さて、本発明の実施形態のS106のめっき処理プロセスについて、一例を具体的に説明する。先ず、表面処理制御部206は、微小面10cが粗化された微小部品10を脱脂洗浄して、微小部品10の微小面10cに付着した油分を分離する。例えば、表面処理制御部206は、微小部品10に対して、塩素系有機溶剤を用いる予備脱脂及び/又はアルカリ塩類と界面活性剤とを用いるアルカリ浸漬の脱脂洗浄を行う(
図3:S201)。
【0078】
次に、表面処理制御部206は、脱脂洗浄後の微小部品10を水洗し、酸化性の酸を用いて水洗後の微小部品10に酸洗を行う(
図3:S202)。この酸洗は、ソフトエッチングも兼ねている。
【0079】
そして、表面処理制御部206は、酸洗後の微小部品10を水洗し、アルカリ性脱脂及び/又はコンディショナーを用いて水洗後の微小部品10に表面調整(平滑化)を行う(
図3:S203)。
【0080】
表面処理制御部206は、表面調整後の微小部品10を水洗し、感受性化のためにプレディッピング剤を用いて水洗後の微小部品10の触媒の吸着性を高める(プレディップ)(
図3:S204)。
【0081】
その後、表面処理制御部206は、プレディップ後の微小部品10を水洗し、水洗後の微小部品10の微小面10cに対してパラジウム−スズのコロイド粒子を有する触媒を付着させる(触媒化)(
図3:S205)。
【0082】
更に、表面処理制御部206は、微小面10cに触媒を付着させた微小部品10を水洗し、水洗後の微小部品10に硫酸系の促進化剤(アクセレーター)を付与し、パラジウム触媒を露出させ、活性化し、ニッケルの析出性や密着性を高める(促進化)(
図3:S206)。
【0083】
そして、表面処理制御部206は、促進化後の微小部品10を水洗し、水洗後の微小部品10に無電解ニッケルめっき処理を施す(
図3:S207)。
【0084】
ここで、表面処理制御部206が無電解ニッケルめっき処理を施す方法に特に限定は無いが、例えば、表面処理制御部206は、化学還元型・自己触媒型のNi―P(次亜リン酸塩)、中リン(7重量%〜9重量%の濃度)の条件で無電解ニッケルめっき処理を実施する。
【0085】
無電解ニッケルめっき処理の浴組成は、Niを90重量%〜92重量%、Pを8重量%〜10重量%、ニッケルイオン源としての硫酸ニッケルを15g/L〜25g/L、還元剤としての次亜リン酸ナトリウムを20g/L〜25g/L、錯化剤としてのリンゴ酸を10g/L〜20g/L、コハク酸を10g/L〜20g/L、90%乳酸を5g/L〜15g/L、又はクエン酸、酒石酸、グリコール酸、酢酸等を適量としている。更に、安定剤としてのチオ尿素を0.2g/L〜0.4g/L、補助成分としての微量の重金属イオン、促進剤として酢酸、ぎ酸、及び界面活性剤を共存させている。
【0086】
ここで、めっき処理の進行と共に、めっき浴液のpHが低下するので、調整剤として水酸化ナトリウム又はアンモニアを補給して、めっき浴液のpHを4.5〜5.2の範囲内に保ち、めっき浴温を80℃〜90℃の範囲内とし、めっき析出速度を15μm/h〜20μm/hの範囲内に設定する。
【0087】
無電解ニッケルめっき処理により形成されためっき層の厚みは0.1μm〜1.5μmの範囲、好ましくは0.3μm〜1.0μmの範囲内となり、めっき層は多孔性でなく、めっき層のビッカース硬度は、550Hv〜600Hvの範囲内となる。
【0088】
さて、表面処理制御部206は、無電解ニッケルめっき処理を終了後、無電解ニッケルめっき後の微小部品10に水洗を行い、金属表面を活性化し、フッ化物を適量含有した固形酸で活性化後の微小部品10を処理することで、めっき層の剥離等を完全に防止する。
【0089】
次に、表面処理制御部206は、無電解ニッケルめっき処理後の微小部品10に電解ニッケルめっき処理を施す(
図3:S208)。
【0090】
ここで、表面処理制御部206が電解ニッケルめっき処理を施す方法に特に限定は無いが、例えば、表面処理制御部206は、微小部品10をワット浴に入れて電解ニッケルめっき処理を実施する。
【0091】
電解ニッケルめっき処理の浴組成は、ニッケルイオン源としての硫酸ニッケルを240g/L〜300g/L、塩化ニッケルを40g/L〜50g/L、緩衝剤としてのホウ酸を30g/L〜45g/L又はクエン酸、マロン酸、リンゴ等を適量としている。
【0092】
めっき浴液のpHを4.0〜4.6の範囲内とし、めっき浴温を50度〜60度の範囲内とし、電流密度を1.0A/dm
2〜5.0A/dm
2の範囲内とし、めっき浴液を空気撹拌又は機械撹拌により撹拌しながら、搖動又は振動装置の付いた電解浴で実施される。アノードには、白金被覆チタンや高純度の電解ニッケル等が用いられる。
【0093】
表面処理制御部206は、電解ニッケルめっき処理を終了後、電解ニッケルめっき処理後の微小部品10を水洗し、ドライヤー等で乾燥させる。微小部品10に得られためっき層のビッカース硬度は、200Hv〜300Hvの範囲内となる。
【0094】
最後に、表面処理制御部206は、電解ニッケルめっき処理後の微小部品10に電解金めっき処理を施す(
図3:S209)。
【0095】
ここで、表面処理制御部206が電解金めっき処理を施す方法に特に限定は無いが、例えば、表面処理制御部206は、微小部品10をシアン化浴に入れ、弱酸性(pHが3.5〜5.5の範囲内)のシアン化浴中で微小部品10に電解金めっき処理を施す。
【0096】
電解金めっき処理の浴組成は、金イオン源としてのシアン化第一金カリウムを8g/L〜12g/L、リン酸塩としてのリン酸二水素カリウムを80g/L〜120g/L、補助的成分としての金属塩添加剤、電導塩、緩衝剤、結晶調整剤、合金金属、界面活性剤等を適量としている。
【0097】
めっき浴温を40℃〜70℃の範囲内とし、めっき浴液のpHを4.0〜5.0の範囲内とし、電流密度を0.1A/dm
2〜1.5A/dm
2の範囲内とし、アノードには、例えば白金被覆チタンを用い、搖動又は振動装置の付いた電解浴で実施される。
【0098】
得られた金めっき膜の厚さは0.5μm〜1.5μmの範囲内であり、金の純度は99.7%であり、金めっき層のビッカース硬度は、50Hv〜100Hvの範囲内となる。金めっき層の外観は、金の金属色を呈する。これにより、S206のめっき処理プロセスは完了する。
【0099】
さて、表面処理制御部206がめっき処理を完了すると、微小面10cにめっき層を有する微小部品10が出来上がる。この微小部品10は基板11に配置され、微小部品10のめっき層はICチップ等の電子部品とはんだ接合されるが、めっき層にはアンカー効果が生じるため、十分な接着強度を有することになる。
【0100】
ところで、上述では、表面処理がめっき処理の場合について説明したが、これに限定される必要は無い。即ち、めっき処理以外のコーティングや塗装等の表面処理を行ったとしても、微小部品10の微小面10cの粗化のアンカー効果により、どのような表面処理層であっても、その密着強度を高めることが出来る。
【実施例】
【0101】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[微小部品]
【0102】
微小部品は、アルミナを混練し、成形し、脱脂し、焼結することで製造した。具体的には、混練では、原料粉末は、平均粒径が0.48μmの99.9%アルミナ(住友化学株式会社製、AES11E)を用いた。バインダーは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、パラフィンワックス、ジブチルフタレート及びステアリン酸が30:30:30:5:5の重量比の配合で用いた。バインダーは、原料粉末100重量部に対して18.5重量部となるように配合した。混練において、300cc加圧式ニーダーを150℃に加熱し、バインダーを投入し、60分間混練した後、冷却した。得られた混練物をポットミルで粉砕し、成形材料とした。
【0103】
成形では、金型をCADイメージに従って製作した。射出成形機は、型締力35トン横型の成形機を用い、射出圧力の初期設定値を64MPaとし、成形機のシリンダの温度を160℃とし、金型温度を35℃とし、射出速度を80mm/sとした。
【0104】
脱脂では、大気脱脂炉にて、大気雰囲気下最高温度450℃まで5℃/hの昇温速度で加熱し、2時間保持後に冷却した。この工程は、冷却時間を含めて80〜100時間であった。セッターとして、90%アルミナを用いた。
【0105】
焼結では、大気雰囲下室温から最高温度1620℃まで加熱し、2〜3時間保持して以降炉冷した。セッターは、脱バインダー工程のものをそのまま用いた。
【0106】
製造した微小部品10は、
図4に示すように、段差を有する円筒形であり、微小部品10の軸方向の高さは、5mmであり、微小部品10の基端部分10aの直径に対応する微小部品10の最大の外径Rは、5mmであり、微小部品10の先端部分10bの直径に対応する微小部品10の最小の外径rは、3mmである。
[微小部品表面処理システム]
【0107】
図2、
図3に従って、本発明の実施形態に係る微小部品表面処理システム2を構成し、各ステップを実施した。
[振込みプロセス]
【0108】
上述で製造した微小部品10と、
図5に示す振込みパレット4とを用意し、振込みパレット4を振込みプロセス装置20のテーブル上に載置し、
図5に示すように、複数の微小部品10を供給し、テーブルを所定時間(約3分間)、搖動及び振動させた。
【0109】
振込みプロセス装置20が振込みパレット4を搖動・振動させることで、
図6Aに示すように、複数の微小部品10を振込みパレット4の整列穴40に収容した。
【0110】
振込み完了後に、
図6Bに示すように、移載パレット5の整列穴50に振込みパレット4の整列穴40を合わせて、移載パレット5を振込みパレット4に固定し、
図7Aに示すように、これを反転して、振込みパレット4の側面を軽く叩いて振動させ、微小部品10を振込みパレット4の整列穴40から移載パレット5の整列穴50に移し替えた。
【0111】
次に、
図7Bに示すように、振込みパレット4を取り除いた後に、移載パレット5の整列穴50に対してセットパレット6の貫通孔60を合わせて、移載パレット5にセットパレット6を固定する。セットパレット6には底面板7を載置し、
図8Aに示すように、これを反転して、移載パレット5の側面を軽く叩いて振動させ、微小部品10を移載パレット5の整列穴50からセットパレット6の貫通孔60に移し替えた。
【0112】
そして、
図8Bに示すように、移載パレット5を蓋体8に入れ替え、
図9Aに示すように、底面板7をマスキング板9に入れ替えることで、微小部品10の微小面10cをマスキング板9の露出孔90から露出させた。これにより、表面粗化用治具を構成した。尚、マスキング板9が無い場合を比較例とし、マスキング板9がある場合を実施例とした(後述する)。
[ブラスト処理]
【0113】
次に、表面粗化用治具を表面粗化プロセス装置21へセットし、表面粗化プロセス装置21は、
図9Bに示すように、圧縮空気により処理材を表面粗化用治具のマスキング板9に投射させた。表面粗化プロセス装置21は、株式会社不二製作所の微粉用手動ブラスト機SFK−2を用いた。処理材には、粒子径が40μmのアルミナを用い、噴射条件の吐出圧は0.5MPa、空気量は280L/分と設定した。ここで、処理時間(全投射時間)を0分〜30分と設定することで、実施例、比較例を作製した(後述する)。入射角は90度に設定し、マスキング板9に均等にブラストショットが行われるように所定の時間、ノズルを手動で操作した。その際の噴射距離は50cmであり、マスキング板9表面の投射ビームの直径は20cmであった。
【0114】
ブラスト処理後は、
図10Aに示すように、マスキング板9の露出孔90のみに処理材が投射され、露出孔90から露出された微小部品10の微小面10cだけが粗化されていた。マスキング板9を外すと、
図10Bに示すように、セットパレット6の貫通孔60に整列配置された微小部品10の微小面10cのみが粗化されていた。粗化面は、共焦点レーザ顕微鏡により評価した(後述する)。
[表面処理]
【0115】
そして、表面処理プロセス装置22において微小部品10の微小面10cにめっき処理を施した。ここで、めっき処理は、
図3に従って行った。表面処理プロセス装置22は、脱脂洗浄では、奥野製薬株式会社のエースクリーンA220の処理剤50g/Lを用い、50℃、5分の条件で実施した。又、表面処理プロセス装置22は、酸処理・ソフトエッチングでは、硝酸15mL/Lと55%フッ化水素酸5mL/Lからなる酸を用い、40℃の条件で実施し、ガラス質の一部を溶解した。
【0116】
表面処理プロセス装置22は、表面調整では、奥野製薬株式会社OPC‐370のコンディクリーン100mL/Lを用い、40℃、15分の条件で実施した。表面処理プロセス装置22は、プレディップでは、35%塩酸200mL/Lを用い、25℃、1分の条件で実施した。
【0117】
表面処理プロセス装置22は、触媒化では、奥野製薬株式会社OPC‐80のキャタリスト60mL/Lと35%塩酸200mL/Lを用い、30℃、5分の条件で実施した。促進化では、奥野製薬株式会社OPC‐505のアクセレーター500M100mL/Lを用い、30℃、1分の条件で実施した。
【0118】
表面処理プロセス装置22は、無電解ニッケルめっきでは、微小部品10をステンレス製のラックに保持させ、めっき浴に硫酸ニッケル20g/L、次亜塩素ナトリウム24g/L、リンゴ酸16g/L、コハク酸18g/Lを添加し、めっき浴液のpHを4.5〜5.2に調整しながら、温度90℃、10分の条件で実施した。酸活性では、奥野製薬株式会社トップサン50g/Lを用い、25℃、10分の条件で実施した。電解ニッケルめっきでは、微小部品10をステンレス製のラックに保持し、ワット浴に硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸30g/Lを添加し、ワット浴液のpH4.0〜4.4に調整しながら、空気撹拌下で温度50℃、10分、電流密度2A/dm
2の条件で実施した。得られた微小部品10は、ドライヤーを用いて乾燥した、硬度は250Hvであった。尚、各めっきにおいて、処理工程の間では、脱イオン水を用いて微小部品10の水洗を実施した。電解金めっきは、微小部品10をステンレス製のラックに保持させ、電解浴に収容し、電解浴にKAu(CN)
2を8〜12g/L、リン酸二水素カリウムを100g/L添加し、電解浴液のpHを4.2〜4.4、電流密度を0.5A/dm
2、温度を60℃〜70℃の保ち、約10分間実施した。得られた微小部品10の色調は金の金属色であり、硬度は100〜200Hvであった。
[粗化の評価]
[表面粗さRz]
【0119】
共焦点レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、形状測定レーザ顕微鏡VK−X250)を用いて、粗化された微小部品10の微小面10cの共焦点レーザ顕微鏡写真を撮影し、表面粗さRz(μm)を測定した。表面粗さRzの測定方法は、先ず、倍率5000倍で微小部品10の微小面10cを観察し、微小面10cのうち、500μm×500μmの矩形領域の表面プロファイルを深さの分解能0.01μmの条件で取り込み、画像処理して、孤立点除去1回及び画像輝度平均化を1回行った後、JIS B0601−2001に規定する最大粗さRz(μm)をパラメータとして測定した。
[断面形状]
【0120】
又、粗化された微小面10cの断面形状について、微小面10cの両端部の垂直度及び底面全体の傾斜度を確認し、両端部のいずれかにダレがあるか否かを目視で観察し、ダレがある場合を「×」、ダレが一部ある場合を「△」、ダレがない場合を「○」と評価した。
[めっき膜の評価]
[析出性]
【0121】
めっき層の析出性について、微小面10cのめっき膜の剥がれ、フクレ、ピンホール等の有無を光学顕微鏡及び目視で確認し、めっき層全体の未析出を観察し、未析出の場合を「×」、未析出が一部ある場合を「△」、全面析出の場合を「○」と評価した。
[密着性(接着強度)]
【0122】
金めっきされた微小部品10の微小面10c(約1.5mm×約1.3mm)に半導体チップを模した銅板を接着剤(東亞合成株式会社アロンアルフア)で貼り付け、φ0.3mmの金属線を微小部品10の開口10dの下方から上方に通じてめっき層に押圧した。そして、荷重変位測定装置(株式会社イマダ製、荷重変位測定装置SVH−1000N)を用いて、金属線へ上方に向けて荷重を掛けて、その荷重及び変位を測定し、その測定値の変化から破壊圧力を測定した。そして、破壊圧力が20MPa未満の場合を「×」、破壊圧力が20MPa〜40MPaの場合を「△」、破壊圧力が40MPaを超える場合を「○」と評価した。
【0123】
[実施例1]
上述において、マスキング板9を設け、ブラスト処理の処理時間を15.0分に設定した場合を実施例1とした。
【0124】
[実施例2]
上述において、マスキング板9を設け、ブラスト処理の処理時間を7.5分に設定した場合を実施例2とした。
【0125】
[比較例1]
上述において、マスキング板9を無くし、ブラスト処理の処理時間を15.0分に設定した場合を比較例1とした。
【0126】
[比較例2]
上述において、マスキング板9を無くし、ブラスト処理の処理時間を0分に設定した場合を比較例2とした。
【0127】
[比較例3]
上述において、マスキング板9を設け、ブラスト処理の処理時間を30.0分に設定した場合を比較例3とした。
[評価結果]
【0128】
先ず、マスキング板9の有無による断面形状を確認した。
図11Aは、実施例1におけるレーザ顕微鏡写真の直線走査写真であり、
図11Bは、実施例1におけるレーザ顕微鏡写真の平面写真であり、
図11Cは、実施例1におけるレーザ顕微鏡写真の断面表面プロファイル図であり、
図11Cにおける横軸は、
図11Aにおける中心線上の上方から下方に向かって走査した断面表面プロファイルに対応する。
図11A、
図11B、
図11Cに示すように、実施例1では、微小面のみが綺麗に粗化されていることが理解される。
【0129】
図12Aは、比較例1におけるレーザ顕微鏡写真の直線走査写真であり、
図12Bは、比較例1におけるレーザ顕微鏡写真の平面写真であり、
図12Cは、比較例1におけるレーザ顕微鏡写真の断面表面プロファイル図であり、
図12Cにおける横軸は、
図12Aにおける中心線上の上方から下方に向かって走査した断面表面プロファイルに対応する。
図12A、
図12B、
図12Cに示すように、比較例1では、微小面以外の上面全体が粗化されていることが理解される。
【0130】
次に、上述の評価結果を
図13に示す。
図13に示すように、マスキング板9を設けた場合において、実施例1、2の処理時間が7.5分〜15.0分では、表面粗さRzが適当であり、断面形状が良好であり、めっき層の析出性も密着性も良好であった。
【0131】
一方、マスキング板9を無くした場合において、比較例2の処理時間が0分では、表面粗さRzが無く、めっき層の析出性も密着性も不良であった。又、マスキング板9を設けた場合において、比較例3の処理時間が30.0分では、表面粗さRzが大きく、断面形状が不良で、めっき層の析出性も密着性も今一であった。即ち、この場合は、単に、表面粗化の条件が悪かった。
【0132】
従って、マスキング板9の存在により、微小部品の微小面にのみに密着強度の強いめっき処理を行うことが可能であることが分かった。
【0133】
尚、
図11に示すように、実施例1では、微小面のみが綺麗に粗化されていることから、めっき処理以外の表面処理(コーティング、塗装等)であっても、同様の作用効果を有する。例えば、ブラケット矯正のブラケットの微小面に、歯との密着強度を高めるための表面処理を行う場合でも、同様である。
【0134】
又、実施例1では、微小面を凹部10cとしたが、これに限定する必要は無く、凹部10cを設けずに、微小部品10の先端部分10bの表面の一部又は全部でも、本発明の原理・原則から、同様の作用効果を有する。
【0135】
本発明の実施形態では、微小部品表面処理システム2が各部を備えるよう構成したが、当該各部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。各部が実行するステップを本発明の微小部品表面粗化方法として提供することも可能である。
【0136】
又、本発明の実施形態では、微小部品表面処理システム2に振込みプロセス装置20と、表面粗化プロセス装置21と、表面処理プロセス装置22とを備え、微小部品10への振込みから表面処理まで自動的に行うよう構成したが、一部が手動で構成されても、本発明の作用効果を有する。