(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984830
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】カスタマイズされた整形外科的インソール、及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20211213BHJP
B29D 35/08 20100101ALI20211213BHJP
【FI】
A43B17/00 E
B29D35/08
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-83761(P2020-83761)
(22)【出願日】2020年5月12日
(65)【公開番号】特開2020-199245(P2020-199245A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2020年5月21日
(31)【優先権主張番号】62/857,334
(32)【優先日】2019年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519450097
【氏名又は名称】株式会社ジャパン・ポダイアトリー・アソシエーション
(73)【特許権者】
【識別番号】520164390
【氏名又は名称】ティム・テ・グエン
【氏名又は名称原語表記】Tim The Nguyen
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ティム・テ・グエン
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−528207(JP,A)
【文献】
米国特許第07017218(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00−17/18
B29D 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々なサイズ、幅、及びアーチ高さを有する、靴に使用する整形外科用インソールの選択物から1つのインソールを選択するステップと、
ここで、前記インソールは、
頂部表面、底部表面、及びこの頂部表面から底部表面に延在する複数の透孔を有する成形底層と、ここで、前記透孔は、成形する底層の中央における直径1-3 mmの複数の小さな孔、または10-15 mmの直径を有する比較的大きな透孔の列、または、両方の組合せであり、
反応促進剤との接触直後に恒久的に硬化する材料で構成される成形可能な中間層と、ここで、前記成形可能な中間層は、充分な量のポリウレタン注型材料及びヒドロキシプロピルメチル−セルロースを備え、
頂部表面と底部表面とを有する最上層と、ここで、前記頂部のクッションの周囲は、前記成形可能な中間層が前記最上層と前記成形底層の間にシールされるように前記成形底層に接続され、前記最上層は前記頂部表面から前記底部表面に延在する複数の透孔を有するものであり、
を備え、
充分な量の水分が反応促進剤として作用して前記成形可能な中間層を恒久的に硬化するように、前記透孔を水分環境に晒すステップと、
前記インソール及び着用者の足をその着用者の靴内のインソールの上に挿入し、前記インソールに下方に向う力を加えるステップと、
前記中間層が実質的に硬化するまで、前記インソールに下方に向う力を維持するステップと、
を含む、靴に使用するカスタマイズされた整形外科用インソールを製作する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、靴用の整形外科的インソール、及び特定のユーザー用に迅速かつ効率的にそのインソールをカスタマイズする(customize)方法に関する。
【0002】
人の足は、その人が、その人の足の骨格及び関節の内部における固定及び固定解除のメカニズムに応じて歩くときに、非常に柔軟であるか、または非常に硬くなり得るという特異な構造である。
【0003】
このメカニズムは、人の足と足首の骨格及び関節が、異常なアラインメント(alignment)である場合には、適切に機能しない。そのような異常なアラインメントが存在する場合には、より末端における筋肉は、骨格と関節とのアラインメントを制御するためにより強力に作動するように要求される。結果として、これらの筋肉は、より速く疲労する。一旦、筋肉が疲労すると、これらの筋肉は、もはや足と足首の異常なアラインメントを補償することができないので、その人は、痛みや不快を経験することになる。
【0004】
足と足首との異常なアラインメントに取り組む先行技術には、多くの進展があった。侵襲性の外科的処置に加えて、シューインソールが開発されてきている。これらのインソールは、人の足の底面または足底の様相(aspect)と靴との間に配置される。カスタムシューインソール(custom sole shoe-insert)は、人がより強く安定して、かつ、より快適に歩くことができるように、骨格及び関節を支持して、正常なアラインメントを維持し、かつ、足の足底の様相に対する人の体重によって作用する圧力を再分配する。
【0005】
先行技術における典型的な方法は、人または患者の足の石膏型(plaster cast)を作り、次に、担当の足病医(podiatrist)によって決定されるような患者の固有の必要性により要求された任意の矯正を伴う石膏型に基づいて、カスタマイズされたインソールを製造することである。この種の手順は、高価であり、最初の石膏型と最終生成物の間に相当の時間、ときには週の単位の時間が必要である。
【0006】
したがって、インソールが、看護している足病医を満足させるまで、患者は、不適切なアラインメントの痛みに耐えなければならない。さらに、費用のために、患者は、一般的に、追加のインソールを買う余裕がなく、他の靴を着用しているときに、典型的には同じインソールを使用する。
【0007】
より最近の先行技術は、カスタムインソールを製作するための費用と時間とに関連した問題に取り組むことを試みてきた。Nguyenに対して発行された米国特許第7,017,218号は、織られた(woven)ポリウレタン注型(casting)材料の反応に、注射器を通して注入された水を使用して、カスタムインソールを製作する方法を説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,017,218号明細書
【発明の概要】
【0009】
明細書において用いられるように、患者、ユーザー、着用者、及び人、のような用語は、交換可能であり、同じ意味を有する。
【0010】
この発明の目的は、以下のとおりである。
1.一旦カスタマイズされた形状が得られたら、恒久的に硬化することができる中間の材料の層を使用して迅速に靴用のカスタマイズされたインソールを製作するための方法を提供すること、
2.患者の固有のニーズ及び要求のインソールを提供すること、
3.製造することが高価でなく、結果として、ユーザーが、ユーザーが履く他の靴用の他のインソールを購入する余裕ができるインソールを提供すること、及び、
4.足病医の管理監督が必要でなく、そして、インソールはユーザーの選択する時間と場所でユーザーによってカスタマイズされることができること。
【0011】
この発明は、最上層(top layer)、成形可能な(moldable)中間層(middle layer)、及び成形する(molding)底層(bottom layer)を有するカスタマズされたインソールを製作する方法である。
【0012】
最上層及び底層を構成する材料は、水分(moisture)との接触によって硬化するように、材料の層と接触するための水分用の必要な通路を提供するように穿孔されることが要求される。選択される材料は、穿孔され布材料で覆われる柔軟なプラスチックであり得る。
【0013】
最上層は、足のクッション用である。それは、様々な厚さ、及び履物(footwear)産業において使用される革、または任意の合成材料のような種類の材料で製作することができる。最上層の穿孔は望ましい。しかしながら、底層が充分に穿孔されるならば、穿孔されない材料も許容できる。
【0014】
成形可能な中間層は、ユーザーの足の隣接する足裏の様相領域をかたどる(contoured)ことができるように、充分な厚さを有する。水のような反応促進剤(accelerant)との接触の直後に、この中間層は恒久的に硬化する。中間層は、様々なタイプの化学物質、または埋込用樹脂(potting compound)、エポキシ樹脂、ガラス繊維などのような材料である硬化する混合物(compound)から製作することができる。それが強固であり、壊れにくく、水、または周囲の水分によって容易に活性化されるので、ガラス繊維は好ましい材料である。ガラス繊維層は、インソールが足に対して押圧されて、その足の足裏の様相を押し当てられる。硬化する(ガラス繊維樹脂のような)混合物は、(着用者の足や靴内の周囲条件によって生成される水分のような)反応促進剤と接触後に硬化された(cured)後、この形状は恒久的になる。この理由で、カスタムインソール(custom insert)は、気密の、水分なしのパッケージ内で未加工状態を保たなければならない。
【0015】
穿孔された成形する底層は、プラスチック、革、またはフォームなどのような様々なタイプの材料から製作することができる。その透孔は、成形する底層の中央における直径1-3 mmの複数の小さな孔、または10-15 mmの直径を有する比較的大きな透孔の列、または、両方の組合せとすることができる。プラスチック材料の代りは、微細透孔を有する任意の吸湿材料である。底層は、人の足の最も高いアーチにさえ適合する非常に高いアーチ形状に製作することができる。着用者が歩くにつれて、着用者の足の足裏の様相は、装具学(orthotics)的に記憶される。一旦中間層が硬化すると、それは着用者の足の形を恒久的に維持する。インソールの形状は、足におけるある領域への追加の詰込み(padding)によって足変形のある形に適合するように個別化され、その後、成形プロセス中に、または充分な期間、単純に歩くことによってある方向にその足を再調整することができる。
【0016】
成形可能な中間層が、成形する底層と足との間の圧力の下で挟まれるので、成形する底層は、上方への圧力を提供する。成形する底層は、フォーム、弾性包帯(elastic bandages)、真空吸着(vacuum suction)、プラスチックなどのような様々なタイプの材料で製作することができる。プラスチックは、それが柔軟で、靴の中で非常により少ない容積をとるので、好ましい材料である。この底層は、水分が成形可能な中間層内に吸収されることを可能にするために、充分に穿孔される。成形する底層は、かかとから、好ましくは足の母指球下の領域に対して足の下をカバーする。この層の内部は、成形可能な中間層に適合するように構築されたキャビティ(cavity)である。キャビティのまわりには、頂部(top)カバーの周囲に対する取り付けのための狭い縁がある。
【0017】
様々な材料で中間層を製作することができるので、利用された硬化剤または反応促進剤は、中間層を構成する材料に依存する。使用する好ましい材料は、Yoonに対して発行された米国特許4,433,680号に開示され、さらにGrim等に対して発行された米国特許6,007,505号で改善されたようなポリウレタン注型材料である。Grim等のもとでの改善は、水と接触した時に、ウレタンが粘質になるのを防ぐヒドロキシプロピルメチル−セルロース(HPMC)の追加である。Grim等によって製造された材料は、パッケージの中に密閉され、もしパッケージ内に維持される、あるいは取り出された直後ならば柔軟である。材料は、水の追加なしの周囲条件で、よりゆっくり硬化するが、水との接触は、硬化するプロセスを促進する。
【0018】
中間層として使用することができる他の材料は、岡本等に対して発行された米国特許5,334,442号に開示されるように、水硬化可能な材料を含浸したガラス繊維織物から製作された材料である。本発明によって製作された中間層は、ここに開示された材料に限定されるべきではない。それらがユーザーの足の足裏の様相に形成され、かつ短期間内にその形状に硬化されるのに適することができる限り、他の適切な材料を使用することができる。活性化薬剤と最初に接触することなしに、周囲条件で硬化しない材料で構成された中間層を選択することは可能である。
【0019】
中間の材料層の必要な厚さは、変化し、靴のサイズ、幅、アーチ、及び材料事情に依存する。ポリウレタン注型材料の好ましい材料が使用される場合には、中間層の厚さは、典型的には1〜15 mmの範囲、そして最も好ましくは3〜4 mmの間である。
【0020】
インソールは、足のアーチに隣接し、その周りの通常の領域に限定されるか、または、足の長さにわたることができるように製作することができる。好ましくは、中間の成形可能な層は、かかとの下から中足骨、またはつま先領域の下に拡張することができる。さらに、インソールは、かかとのまわりをカバーすることができるかかとシートを有することができる。かかとシートの最上表面は、ユーザーが立っていて、下方への圧力を加えているときに、ユーザーに、より安定性を与えるために、中央領域で湾曲するか、または平坦にされる。装具(orthotic)の周囲の縁は、中間で側方のフランジに沿う成形からのしわを避けるために柔らかく、柔軟にされる。他の選択は、フランジに沿ったしわを吸収するために少数の切り目を形成することである。
【0021】
<組み立て>
底及び最上層は、好ましくは粘着性の接着剤で、それらの周囲が貼付けられる。中間層は、最上層と底層の間に挟まれる。 一般に、接着剤は、3つの層すべてを単一のインソールとして維持するように選択される。ある状況では、縫製または他の物理的な取付手段が、それらの層がその位置に留まることを保証するのに必要である。インソールは、その後、気密の防湿包装に格納される。
【0022】
<使用説明>
2つの異なる方法、すなわち、促進されたプロセス、または標準プロセスが、成形可能な中間層を硬化するための充分な量の水分を供給することに利用できる。
【0023】
I)促進プロセス − 硬化時間は、10〜15分
濡れたスポンジ、ペーパータオル、または他の水分源が、成形可能な中間層の中へ必要な量の水を供給するために必要とされる。
穿孔された底層が上方に面するようにインソール(または装具)を反転させ、透孔を通して、成形可能な中間層に水を移動するように、底層の底面に対して濡れたスポンジ、またはペーパータオルを静かに数回押す。その後、靴内にインソールを配置し、少なくとも5分間、または成形可能な中間層が硬化するまで歩く。
【0024】
II)標準プロセス − 硬化時間は、少なくとも4時間
靴内にインソールを配置し、少なくとも30分歩く。靴から足を外し、次の4時間、硬化するために靴内にインソールを放置する。あるいは、インソールは、完全に硬化されるまで数時間着用される。
【0025】
人が、意図した靴のサイズ、及び幅内に適合する適切なインソールを選択することができるように、様々なサイズ、幅、及びアーチ高さに本インソールの具体例が製造されることが理解されるに相違ない。ここに記述されたインソールの使用にはいくつかのオプションがある。それらは、運動競技用、カジュアル、正装の靴、または靴の組み込み部品のための取り外し可能な装具として製作することができる。
【0026】
Nguyenに対して発行された米国特許第7,017,218号により提供された開示を超える利点は、水注射装置を排除し、インソールを成形する底層を貫く複数の透孔で置き換えることが、製造及び特に着用者の足に装具を個別化するプロセスにおいて、著しい利点を有するということである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 様々なサイズ、幅、及びアーチ高さを有するインソールの選択物から1つのインソールを選択するステップと、
ここで、前記インソールは、
頂部表面、底部表面、及びこの頂部表面から底部表面に延在する複数の透孔を有する成形底層と、
反応促進剤との接触直後に恒久的に硬化する材料で構成される成形可能な中間層と、 頂部表面と底部表面とを有する最上層と、ここで、前記頂部のクッションの周囲は、前記成形可能な中間層が前記最上層と前記成形底層の間にシールされるように前記成形底層に接続され、前記最上層は前記頂部表面から前記底部表面に延在する複数の透孔を有するものであり、
を備え、
充分な量の水分が反応促進剤として作用して前記成形可能な中間層を恒久的に硬化するように、前記透孔を水分環境に晒すステップと、
前記インソール及び着用者の足をその着用者の靴内のインソールの上に挿入し、前記インソールに下方に向う力を加えるステップと、
前記中間層が実質的に硬化するまで、前記インソールに下方に向う力を維持するステップと、
を含む、カスタマイズされたインソールを製作する方法。
[2] 前記成形可能な中間層は、充分な量のポリウレタン注型材料及びヒドロキシプロピルメチル−セルロースを備える、[1]記載の方法。