特許第6984838号(P6984838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984838カルボキシル基含有水性樹脂組成物、成形体、及びポリカルボジイミド化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984838
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】カルボキシル基含有水性樹脂組成物、成形体、及びポリカルボジイミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20211213BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20211213BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20211213BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08K5/16
   C08G18/09 050
   C08G18/79 070
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-253891(P2016-253891)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-104605(P2018-104605A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100204043
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 美和
(72)【発明者】
【氏名】坂野 紀美代
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 健一
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−011151(JP,A)
【文献】 特開2001−011152(JP,A)
【文献】 特開平10−060272(JP,A)
【文献】 特開2011−094102(JP,A)
【文献】 特表2007−521360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
C08G 18/00− 18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有水性樹脂と、下記一般式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物(X)とを含有する、カルボキシル基含有水性樹脂組成物であって、
前記カルボキシル基含有水性樹脂が、水性ポリウレタン樹脂である、
カルボキシル基含有水性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはイソシアネートと反応し得る官能基を有する下記一般式(2)で表される化合物からイソシアネートと反応し得る官能基を除いた残基を表し、Rはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた2価の残基を表し、Rはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から水酸基を除いた2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)で表される化合物と該ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート化合物との反応により形成される基を表す。n1は1.5〜3.3の数を表し、n2は1.5〜3.3の数を表し、mは1〜5の数を表す。複数のR、及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
O−(CH−CHR−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基である。pは4〜30の整数である。)
【請求項2】
さらに、水及び親水性溶剤から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有水性樹脂のカルボキシル基に対する前記ポリカルボジイミド化合物(X)のカルボジイミド基の当量比が0.1〜1.2である、請求項1又は2に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
【請求項4】
ディッピング成形用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物の成形体。
【請求項6】
下記工程(A)と工程(B)とを有する、下記一般式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法。
工程(A):ジイソシアネート化合物を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド(Y)を得る工程
工程(B):前記ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物と、前記ポリカルボジイミド(Y)と、グリコール化合物とを反応させる工程
【化1】

(式中、Rはイソシアネートと反応し得る官能基を有する下記一般式(2)で表される化合物からイソシアネートと反応し得る官能基を除いた残基を表し、Rはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた2価の残基を表し、Rはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物から水酸基を除いた2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)で表される化合物と該ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート化合物との反応により形成される基を表す。n1は1.5〜3.3の数を表し、n2は1.5〜3.3の数を表し、mは1〜5の数を表す。複数のR、及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
O−(CH−CHR−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基である。pは4〜30の整数である。)
【請求項7】
前記工程(B)が、前記ポリカルボジイミド(Y)と、該ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物とを反応させて、末端に親水性基を有するポリカルボジイミド(Z)を得る工程(B1)と、前記工程(B1)で得られたポリカルボジイミド(Z)と、グリコール化合物とを反応させて、該ポリカルボジイミド(Z)を鎖延長し、ポリカルボジイミド化合物(X)を得る工程(B2)である、請求項6に記載のポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有水性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、及び該樹脂組成物に用いられるポリカルボジイミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性または水分散性である水性樹脂は、塗料、インキ、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤など、多くの分野で使用されている。水性樹脂には、樹脂自体に水溶性または水分散性を付与するために、一般にカルボキシル基が導入されている。このような水性樹脂の塗膜の強度、耐水性、耐久性などの諸物性を向上させる手段として、該水性樹脂が有するカルボキシル基と反応して架橋構造を形成し得るカルボジイミド化合物等の架橋剤を併用する方法が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、重合性不飽和結合を有するポリウレタン樹脂(A)、重合性不飽和結合を有する化合物(A’)、及びカルボジイミド化合物(B)を水系媒体中に分散させてなる水性樹脂分散体組成物が開示されている。また、特許文献2には、アニオン性水系ポリウレタン樹脂と、アニオン性基と反応し得る特定の構造を有するカルボジイミド系化合物を必須成分とする水系ポリウレタン樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−047225号公報
【特許文献2】特開2002−363250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水溶液タイプのカルボジイミド化合物を配合した水性樹脂組成物では、一液での保存安定性が悪く、液粘度が上昇してしまうという問題があった。また、特許文献2に記載のエマルションタイプのカルボジイミド化合物を配合した水性樹脂組成物では、保存後の液粘度の変化は少ないが、保存後の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜強度は、保存前(初期)の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜強度よりも大きく低下し、強度保持性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、カルボキシル基含有水性樹脂組成物を保存した際、保存による粘度上昇、及び保存後の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の引張強度は、保存前(初期)の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の引張強度よりも引張強度低下が少なく、保存安定性に優れたカルボキシル基含有水性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、並びに該樹脂組成物に用いられるポリカルボジイミド化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリカルボジイミド化合物(X)を含有するカルボキシル基含有水性樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[12]を提供する。
[1]カルボキシル基含有水性樹脂と、下記一般式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物(X)とを含有する、カルボキシル基含有水性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物からイソシアネートと反応し得る官能基を除いた残基を表し、Rはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた2価の残基を表し、Rはグリコール化合物から水酸基を除いた2価の残基を表す。Xは該親水性化合物と該ジイソシアネート化合物との反応により形成される基を表す。n1は1〜10の数を表し、n2は1〜10の数を表し、mは1〜5の数を表す。複数のR、及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
[2]前記カルボキシル基含有水性樹脂が、水性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、又はゴム系ラテックス樹脂である、上記[1]に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[3]前記カルボキシル基含有水性樹脂が、水性ポリウレタン樹脂である上記[1]又は[2]に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[4]前記グリコール化合物が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[5]前記ジイソシアネート化合物が、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[6]前記親水性化合物が、下記一般式(2)、(3)、(4)、及び(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
O−(CH−CHR−O)−H (2)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基である。pは4〜30の整数である。)
(R−N−R−OH (3)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基である。)
(R−N−R−NH (4)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基である。)
HO−R10−SOM (5)
(式中、R10は炭素数1〜10のアルキレン基、MはNa、K等のアルカリ金属である。)
[7]さらに、水及び親水性溶剤から選択される少なくとも1種を含有する、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[8]前記カルボキシル基含有水性樹脂のカルボキシル基に対する前記ポリカルボジイミド化合物(X)のカルボジイミド基の当量比が0.1〜1.2である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[9]ディッピング成形用である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物。
[10]上記[9]に記載のカルボキシル基含有水性樹脂組成物の成形体。
[11]下記工程(A)と工程(B)とを有する、前記一般式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法。
工程(A):ジイソシアネート化合物を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド(Y)を得る工程
工程(B):前記ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物と、前記ポリカルボジイミド(Y)と、グリコール化合物とを反応させる工程
[12]前記工程(B)が、前記ポリカルボジイミド(Y)と、該ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物とを反応させて、末端に親水性基を有するポリカルボジイミド(Z)を得る工程(B1)と、前記工程(B1)で得られたポリカルボジイミド(Z)と、グリコール化合物とを反応させて、該ポリカルボジイミド(Z)を鎖延長し、ポリカルボジイミド化合物(X)を得る工程(B2)である、上記[11]に記載のポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カルボキシル基含有水性樹脂組成物を保存した際、保存による粘度上昇、及び保存後の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の引張強度は、保存前(初期)の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜の引張強度よりも引張強度低下が少なく、保存安定性に優れたカルボキシル基含有水性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、並びに該樹脂組成物に用いられるポリカルボジイミド化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[カルボキシル基含有水性樹脂組成物]
本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、カルボキシル基含有水性樹脂と、下記一般式(1)で表されるポリカルボジイミド化合物(X)とを含有することを特徴とする。
【0011】
【化2】

(式中、Rはイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物からイソシアネートと反応し得る官能基を除いた残基を表し、Rはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた2価の残基を表し、Rはグリコール化合物から水酸基を除いた2価の残基を表す。Xは該親水性化合物と該ジイソシアネート化合物との反応により形成される基を表す。n1は1〜10の数を表し、n2は1〜10の数を表し、mは1〜5の数を表す。複数のR、及びRは、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
〔カルボキシル基含有水性樹脂〕
本発明で用いるカルボキシル基含有水性樹脂は、カルボキシル基を有すれば特に限定されず、例えば、水性ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系ラテックス樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を好ましく用いることができる。中でも、本発明の効果を発揮する観点から、水性ポリウレタン樹脂が好ましい。
これらの樹脂は、単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
水系ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオール類、カルボキシル基含有ポリオール類、及びポリイソシアネート化合物から得られるカルボキシル基含有のウレタン系プレポリマーを、有機溶媒又は水の存在下、中和剤及び鎖延長剤と反応させ、次いで減圧下、脱溶媒することで得られる樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記水系ウレタン樹脂の原料であるポリオール類としては、低分子量ポリオールの重合体又は共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記水系ウレタン樹脂の原料であるカルボキシル基含有ポリオール類は、1分子中に2つ以上の水酸基と、1つ以上のカルボキシル基を含有する化合物であり、1分子中に2つの水酸基と1つのカルボキシ基を有する化合物を含有するものが好ましい。
上記カルボキシル基含有ポリオール類としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、N,N−ビスヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビスヒドロキシエチルアラニン、3,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸、3,6−ジヒドロキシ−2−トルエンスルホン酸等が挙げられる。中でも、入手の容易さの観点から、ジメチロールアルカン酸が好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸がより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
また、上記水系ウレタン樹脂の原料として、前記ポリオール類、及びカルボキシル基含有ポリオール類以外に、必要に応じて、その他のポリオール類を用いることができる。その他のポリオール類としては、前記ポリオール類、及びカルボキシル基含有ポリオール類で例示したポリオール類以外であれば特に制限なく用いることができる。
【0017】
上記水系ウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネート化合物としては、特に制限されないが、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−ジクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−ノルボルナンジイソシアネート、2,6−ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記ポリイソシアネート化合物の1分子当たりのイソシアネート基は通常2個であるが、本発明におけるポリウレタン樹脂がゲル化をしない範囲で、トリフェニルメタントリイソシアネートのようなイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートも使用することができる。
上記ポリイソシアネート化合物の中でも、反応性の制御と強度付与等の観点から、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)が好ましい。
【0019】
前記中和剤としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン類;アンモニア等が挙げられる。上記の中でも好ましくは有機アミン類であり、より好ましくは3級アミンであり、トリエチルアミンや2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノールが特に好ましい。
【0020】
前記鎖延長剤としては、例えば、イソシアネート基と反応性を有する化合物が挙げられ、具体的には、エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−ヘキサメチレンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、キシリレンジアミン、ピペラジン、アジポイルヒドラジド、ヒドラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール化合物、ポリエチレングリコールに代表されるポリアルキレングリコール類、水などが挙げられる。中でもアミン化合物が好ましく、エチレンジアミンがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記アクリル樹脂としては、例えば、重合性不飽和カルボン酸又はその無水物、(メタ)アクリル酸エステル類や(メタ)アクリル酸以外のアクリル系モノマー、及び必要に応じてα−メチルスチレン、酢酸ビニル等を、乳化重合、溶液重合、塊状重合等の重合法により共重合させて得られるアクリル樹脂等が挙げられる。
具体的な重合性不飽和カルボン酸及びそれらの無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸及びそれらの無水物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸以外のアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0022】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、末端に水酸基を有するポリエステルグリコールと、テトラカルボン酸二無水物とを、エステル化反応によって鎖延長して得られるポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0023】
前記ゴム系ラテックス樹脂としては、カルボキシル基を有する天然ゴム系ラテックス樹脂、カルボキシル基を有する合成ゴム系ラテックス樹脂が挙げられる。
【0024】
カルボキシル基含有水性樹脂は、その種類や分子量によって異なるが、一般的にカルボキシル基に基づく樹脂固形分酸価が5〜40mgKOH/gであり、好ましくは10〜30mgKOH/gである。
【0025】
〔ポリカルボジイミド化合物(X)〕
本発明で用いるポリカルボジイミド化合物(X)は、上記一般式(1)で表され、上記カルボキシル基含有水性樹脂と架橋構造を形成し、該水性樹脂の塗膜の強度、耐水性、耐久性などを向上させる。
【0026】
上記一般式(1)中、Rはジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた2価の残基を表す。ジイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物、及び複素環ジイソシアネート化合物、芳香脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び2,5(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリカルボジイミド化合物の合成の容易さ、及び合成したポリカルボジイミド化合物の保存安定性の観点から、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが好ましく、入手容易の観点からジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートがより好ましい。
【0027】
上記一般式(1)中、Rはイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物からイソシアネートと反応し得る官能基を除いた残基を表す。上記親水性化合物としては、下記一般式(2)、(3)、(4)、及び(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ポリカルボジイミド化合物(X)の水又は親水性溶剤への溶解性又は分散性を向上させる観点から、下記一般式(2)及び(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、下記一般式(2)であることが更に好ましい。
【0028】
O−(CH−CHR−O)−H (2)
式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基である。pは4〜30の整数である。
上記炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、及びt−ブチル基が挙げられる。
としてはメチル基が好ましく、Rとしては水素原子が好ましい。
pは4〜30の整数であり、ポリカルボジイミド化合物(X)とカルボキシル基含有水性樹脂との親和性を向上させる観点から、7〜25の整数が好ましく、8〜20の整数がより好ましい。
【0029】
(R−N−R−OH (3)
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基である。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、及びt−ブチル基が好ましい。
の炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、及びデカメチレン基等が挙げられる。アルキレン基の水素原子はメチル基等の一価炭化水素基により置換されていてもよい。
としては、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が好ましい。
【0030】
(R−N−R−NH (4)
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、又はポリオキシアルキレン基である。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、上記Rと同じものが挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、及びt−ブチル基が好ましい。
の炭素数1〜10のアルキレン基としては、上記Rと同じものが挙げられる。
としては、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が好ましい。
【0031】
HO−R10−SOM (5)
式中、R10は炭素数1〜10のアルキレン基、MはNa、K等のアルカリ金属である。
10の炭素数1〜10のアルキレン基としては、上記Rと同じものが挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基が好ましい。
【0032】
前記一般式(1)中、Rはグリコール化合物から水酸基を除いた2価の残基を表す。グリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
なお、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、水又は親水性溶剤への溶解又は分散を容易にさせる観点から、好ましくは2,000以下である。
【0033】
前記一般式(1)中、Xは上記親水性化合物と上記ジイソシアネート化合物との反応により形成される基を表す。例えば、上記親水性化合物が、前記一般式(2)、(3)、又は(5)の場合、Xは下記一般式(6)で表される基であり、上記親水性化合物が、前記一般式(4)の場合、Xは下記一般式(7)で表される基である。
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
また、前記一般式(1)中、n1は1〜10の数、好ましくは1〜5の数を表し、n2は1〜10の数、好ましくは1〜5の数を表す。mは1〜5の数、好ましくは1〜2の数を表す。
【0037】
上記ポリカルボジイミド化合物(X)は、水及び親水性溶剤から選択される少なくとも1種に溶解、又は分散して用いることが好ましい。
【0038】
前記カルボキシル基含有水性樹脂のカルボキシル基に対する前記ポリカルボジイミド化合物(X)のカルボジイミド基の当量比は、好ましくは0.1〜1.2である。0.1以上とすることで、カルボジイミド化合物(X)の添加効果が得られ、1.2以下とすることで、カルボジイミド化合物(X)が過剰に残存せず、該カルボジイミド化合物(X)が過剰に残存することによる性能悪化を抑制することができる。
【0039】
本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、さらに、水及び親水性溶剤から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
親水性溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のポリアルキレングリコールジアセテート類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノフェニルエーテル類;プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等のモノアルコール類などが挙げられる。
【0040】
また、本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、充填剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0041】
カルボキシル基含有水性樹脂組成物の固形分中に含まれる前記カルボキシル基含有水性樹脂及び前記ポリカルボジイミド化合物(X)の合計含有量は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0042】
本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、粘度上昇、及び保存前後の該樹脂組成物の硬化物の引張強度低下が少ないことから、ディッピング成形用に用いることができる。
【0043】
本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物はその種類や分子量によって異なるが、一般的に粘度として、好ましくは20〜500mPa・s、より好ましくは30〜300mPa・sである。また、50℃で1週間保管前後の粘度変化割合は、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下である。粘度変化割合が大きいと、厚みが厚くなったり、厚みムラが発生しやすくなるため、都度ディッピング成形条件を変えなければならず使用しづらいため好ましくない。
なお、上記粘度及び粘度変化割合は、実施例に記載の方法により測定し、求めることができる。
【0044】
本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物を硬化してなる硬化物の引張強度は、その種類や分子量によって異なるが、好ましくは25MPa以上、より好ましくは35MPa以上とすることができる。また、50℃で1週間保管前後の上記樹脂組成物を硬化してなる硬化物の引張強度変化量は、好ましくは−5MPa以上、より好ましくは−3MPa以上とすることができる。
なお、上記引張強度及び引張強度変化量は、それぞれ実施例に記載の方法により測定し、求めることができる。
【0045】
[ポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法]
本発明のポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法は、下記工程(A)と工程(B)とを有することを特徴とする。
工程(A):ジイソシアネート化合物を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド(Y)を得る工程
工程(B):前記ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物と、前記ポリカルボジイミド(Y)と、グリコール化合物とを反応させる工程
本発明において、上記グリコール化合物は、上記ポリカルボジイミド(Y)の鎖延長剤として働くものである。
【0046】
〔工程(A)〕
工程(A)では、ジイソシアネート化合物を触媒の存在下でカルボジイミド化反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド(Y)を得る。
ジイソシアネート化合物としては、[カルボキシル基含有水性樹脂組成物]の項で挙げた化合物を用いることができる。
カルボジイミド化反応で用いられる触媒としては、例えば、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド及びこれらの3−ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等を挙げることができ、これらの中でも、反応性の観点から、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが好ましい。
ポリカルボジイミド化合物(X)の製造方法における上記触媒の使用量は、カルボジイミド化に用いられるジイソシアネート化合物100質量部に対して、通常0.01〜2.0質量部である。
【0047】
上記カルボジイミド化反応は、無溶媒でも行うことができ、溶媒中で行うこともできる。使用できる溶媒としては、テトラヒドロキシフラン、1,3−ジオキサン、及びジオキソラン等の脂環式エーテル:ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素:クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パークレン、トリクロロエタン、及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、及びシクロヘキサノン等が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒中で反応を行う場合、ジイソシアネート化合物の濃度は、5〜55質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0048】
上記カルボジイミド化反応の条件は、特に限定はされないが、好ましくは40〜250℃、より好ましくは80〜195℃で、好ましくは1〜30時間、より好ましくは5〜25時間である。また、溶媒中で反応を行う場合は、40℃〜溶媒の沸点までであることが好ましい。
【0049】
ポリカルボジイミド化合物(X)の重合度n1及びn2に特に制限はないが、ポリカルボジイミド化合物(X)の水又は親水性溶剤への溶解又は分散を容易にさせる観点から、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0050】
〔工程(B)〕
工程(B)では、上記ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物と、上記ポリカルボジイミド(Y)と、グリコール化合物とを反応させる。
工程(A)で得られたポリカルボジイミド(Y)、上記親水性化合物、及び上記グリコール化合物を反応させる方法は特に限定されず、例えば、(i)上記ポリカルボジイミド(Y)と、特定量の上記親水性化合物とを反応させ、得られた末端に親水性基を有するポリカルボジイミド(Z)と、上記グリコール化合物とを反応させる方法、(ii)上記ポリカルボジイミド(Y)と、上記グリコール化合物とを反応させて得られた化合物に、上記親水性化合物を反応させる方法、(iii)上記ポリカルボジイミド(Y)、上記親水性化合物、及び上記グリコール化合物を同時に反応させる方法等が挙げられる。中でも、局所的に反応が進み高分子量化することを制御する観点から、(i)による方法が好ましい。
【0051】
(i)による方法は、具体的には、工程(A)で得られたポリカルボジイミド(Y)と、該ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物とを反応させて、末端に親水性基を有するポリカルボジイミド(Z)を得る工程(B1)と、該工程(B1)で得られたポリカルボジイミド(Z)と、グリコール化合物とを反応させて、該ポリカルボジイミド(Z)を鎖延長し、ポリカルボジイミド化合物(X)を得る工程(B2)からなる。
【0052】
工程(B1)では、工程(A)で得られたポリカルボジイミド(Y)と、該ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量に対して0.5当量以下のイソシアネートと反応し得る官能基を有する親水性化合物とを反応させて、該ポリカルボジイミド(Y)の末端に親水性基を導入する。
上記親水性化合物としては、[カルボキシル基含有水性樹脂組成物]の項で挙げた親水性化合物を用いることができる。
上記親水性化合物の使用量は、上記ポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量の官能基当量に対して、好ましくは0.16〜0.5当量、より好ましくは0.33〜0.5当量である。0.5当量以下とすることで、副反応を制御し、後述する工程(B2)において所望のポリカルボジイミド化合物(X)を得ることができる。
【0053】
上記反応の条件は、特に限定されないが、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜180℃で加熱保持した後、前記親水化合物を添加し、更に80〜200℃程度で、0.5〜5時間程度反応を行うことが好ましい。
【0054】
工程(B2)では、工程(B1)で得られたポリカルボジイミド(Z)と、グリコール化合物とを反応させて、該ポリカルボジイミド(Z)を鎖延長する。
上記グリコール化合物としては、[カルボキシル基含有水性樹脂組成物]の項で挙げたグリコール化合物を用いることができる。
上記グリコール化合物の使用量は、工程(A)で得られたポリカルボジイミド(Y)が両末端に有するイソシアネート基全量の官能基当量に対して、好ましくは0.5〜0.84当量、より好ましくは0.5〜0.67当量である。これらの範囲とすることで、工程(B1)で得られたポリカルボジイミド(Y)の未反応物、及びグリコール化合物の未反応物を抑制し、所望のポリカルボジイミド化合物(X)を得ることができる。
【0055】
上記反応の条件は、特に限定されないが、反応温度としては80〜200℃程度が好ましく、反応時間としては0.5〜5時間程度が好ましい。
【0056】
また、ポリカルボジイミド化合物(X)の鎖延長単位mに特に制限はないが、ポリカルボジイミド化合物(X)の水又は親水性溶剤への溶解又は分散を容易にさせる観点から、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜2である。
【0057】
このようにして得られるポリカルボジイミド化合物(X)を含有するカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、保存安定性に優れ、保存による粘度上昇、及び保存前後の該樹脂組成物の硬化物の引張強度低下が少ない。
【0058】
[成形体]
本発明の成形体は、上述のカルボキシル基含有水性樹脂組成物からなる。成形体としては、医療用プローブカバー、指サック、手袋、及びコンドームなどが挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0060】
(合成例X)カルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂の製造
ポリテトラメチレンエーテルグリコール:PTMG−2000 780質量部と、ジメチロールプロピオン酸:DMPA 33.5質量部とを還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下135℃で約1時間撹拌した後、70℃まで冷却し、イソホロンジイソシアネート:IPDA 185質量部を加え、5時間反応させ、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
得られたイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーのNCO%は、NCO%測定(自動滴定装置COM−1700S 平沼産業株式会社製)の結果、2.1%であった。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーにトリエチルアミン26質量部を撹拌しながら加えて70℃で1時間中和した。その後、水を投入しイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー水分散体を得た。得られたイソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー水分散体に、鎖延長剤としてエチレンジアミン:EDA 7.7質量部、アジピン酸ジヒドラジド:ADH 16.0質量部を加え、1時間撹拌した後、カルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂を得た。得られたカルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂は、固形分30%、DMPAの添加量から酸価は14mgKOH/gであった。
【0061】
(合成例1)脂環族ポリカルボジイミドの製造
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート100質量部と、カルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)0.5質量部とを、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下180℃で7時間撹拌し、イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=2.7)を得た。
得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドは、赤外分光光度計(FT/IR−6100 日本分光株式会社製)を使用して、赤外吸収(IR)スペクトル測定により、波長2150cm−1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを100℃まで放冷し、これに末端封止剤として親水性化合物であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量550)57質量部(イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが両末端に有するイソシアネート基全量の官能基当量に対し0.5当量)を加え、150℃まで加熱して撹拌しながらおよそ1時間反応させた。その後さらに、鎖延長剤としてグリコール化合物である1、4−ブタンジオール5質量部(イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが両末端に有するイソシアネート基全量の官能基当量に対し0.5当量)を加え、撹拌しながらおよそ1時間反応させた。
赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認してポリカルボジイミド化合物(X)を得た。これを約80℃まで冷却し、水を投入して固形分40質量%の淡黄色透明なポリカルボジイミド溶液(架橋剤1)を得た。
【0062】
(合成例2〜7)脂環族ポリカルボジイミドの製造
ジイソシアネート化合物、親水性化合物(末端封止剤)、グリコール化合物(鎖延長剤)を表1に記載の種類及び配合量に変更し、水及び親水性溶剤から選択される少なくとも1種を表2に記載の配合量に変更した以外は合成例1と同様にして、ポリカルボジイミド溶液(架橋剤2〜7)を得た。なお、表1及び表2中、空欄は配合なしを表す。
【0063】
(合成例8)
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート100質量部と、カルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)1質量部とを、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下185℃で22時間撹拌し、イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=6)を得た。
得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドは、赤外分光光度計(FT/IR−6100 日本分光株式会社製)を使用して、赤外吸収(IR)スペクトル測定により、波長2150cm−1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを120℃まで放冷し、これに末端封止剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量550)60質量部を加え、さらに同じ温度で撹拌しながら1時間反応させ、再び150℃まで加温し、さらに撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認してポリカルボジイミド(X)を得た。これを約80℃まで冷却し、水を投入して固形分40%の淡黄色透明なポリカルボジイミド溶液(架橋剤8)を得た。
【0064】
(合成例9)
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート100質量部と、カルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)1質量部とを、還流管および撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下180℃で15時間撹拌し、イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド(重合度=4)を得た。
得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドは、赤外分光光度計(FT/IR−6100 日本分光株式会社製)を使用して、赤外吸収(IR)スペクトル測定により、波長2150cm−1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを120℃まで放冷し、これに末端封止剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量500)10質量部、N,N−ジエチルイソプロパノールアミン18質量部を加え、さらに同じ温度で撹拌しながら1時間反応させ、再び150℃まで加温し、さらに撹拌しながら5時間反応させた後、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm−1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認してポリカルボジイミド化合物(X)を得た。これを約80℃まで冷却し、水を投入して固形分40%の乳白色ポリカルボジイミド乳濁液(架橋剤9)を得た。
【0065】
【表1】
【0066】
ポリカルボジイミドの合成に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
〔ジイソシアネート化合物〕
・HMDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート
〔グリコール化合物(鎖延長剤)〕
・1,4−BDO:1,4−ブタンジオール
・EG:エチレングリコール
・PEG(1000):ポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)
・PEG(2000):ポリエチレングリコール(重量平均分子量2000)
〔親水性化合物(末端封止剤)〕
・PEGME(400):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量:400)
・PEGME(500):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量:500)
・PEGME(550):ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量:550)
・DEIPA:ジエチルイソプロパノールアミン
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例1〜11、及び比較例1,2)
合成例1〜9で製造したポリカルボジイミド溶液(架橋剤)と、合成例Xで製造したカルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂とを表3に記載の配合量で混合撹拌し、カルボキシル基含有水性樹脂組成物を調製した。
【0069】
以下に示す測定条件により、実施例1〜11、及び比較例1,2で調製したカルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂組成物の特性の測定、及び評価を行った。なお、評価結果を表3に示した。
【0070】
<評価項目>
(1)粘度
B型粘度計にてカルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂組成物の初期粘度(25℃)を測定、その後50℃の恒温槽にて1週間保管し、再度粘度測定(25℃)を行った。下記の計算式から粘度変化割合を求めた。
粘度変化割合(倍)=(1週間保管後の粘度)/(初期粘度)
【0071】
(2)引張強度
カルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂組成物を型に浸漬し、引き上げた後、80℃5分、150℃1分で乾燥する。その後2回目の浸漬をして80℃5分、150℃10分で乾燥した後剥離し、厚さ0.03mmのフィルムを作製した。この得られたフィルムを、JIS K 6295に基づきダンベル状2号形試験片を切り出して、引張試験機(ストログラフVG1−E 東洋精機株式会社製)を用いて引張強度を測定(23±2℃)した。また、50℃の恒温槽にて1週間保管したカルボキシル基含有水性ポリウレタン樹脂組成物について、同様にサンプルを作製し、該サンプルの引張強度を測定した。下記の計算式から引張強度変化量を求めた。
引張強度変化量(MPa)=1週間保管後のサンプルの引張強度−初期サンプルの引張強度
【0072】
【表3】
【0073】
(結果のまとめ)
表3より、比較例1のような水溶液タイプのカルボジイミド化合物を配合した水性樹脂組成物では保存により液粘度が上昇してしまうにもかかわらず、本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、粘度上昇が少なく、初期、及び50℃で1週間保管前後の粘度が20〜500mPa・sであり、粘度変化割合は、15倍以下であった。また比較例2のようなエマルションタイプのカルボジイミド化合物を配合した水性樹脂組成物では、保存後の液粘度の変化は少ないが、保存後の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜強度は、保存前(初期)の該水性樹脂組成物を用いて形成した塗膜強度よりも大きく低下し、強度保持性が悪くなる。一方、本発明のカルボキシル基含有水性樹脂組成物は、引張強度低下が少なく、初期、及び50℃で1週間保管前後の上記樹脂組成物を硬化してなる硬化物の引張強度が25MPa以上であり、引張強度変化量は、−5MPa以上であった。
以上の結果から、本発明によれば、保存安定性に優れたカルボキシル基含有水性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる成形体、並びに該樹脂組成物に用いられるポリカルボジイミド化合物の製造方法を提供することができる。