(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受水器で受水した雨水を受ける濾水器と、前記濾水器から滴下する雨水を所定量交互に溜める一対のますが揺動中心を中心に対称に設けられた転倒ますと、前記転倒ますの揺動中心を揺動自在に支持する支持部と、前記転倒ますの揺動を付勢するおもりとを備える転倒ます形雨量計において、
前記支持部は、基台に固定されて両端が前記転倒ますの側面を囲むコの字状をした支持台から構成され、前記転倒ますの側面を貫通して両端が前記支持台に固定された軸によって前記転倒ますをその揺動中心の周りに揺動自在に支持し、
前記転倒ますの揺動中心は前記転倒ますの底面より上方に設けられ、
前記おもりは、前記転倒ますの揺動中心よりも上方の前記濾水器側で、前記転倒ますの揺動中心よりも上方における前記転倒ますの側方に配置されて、前記軸の軸心方向の幅が前記転倒ますの揺動時に一部が前記支持台の両端間に侵入する大きさで、前記一対のます間にわたる方向に前記転倒ますの長手方向の長さからはみ出ない長さで延びる直方体状に設けられ、
前記転倒ますは、非転倒時において、前記底面に立設されて前記一対のます間を仕切ると共に前記転倒ますの揺動中心が壁の中に設けられる隔壁の上端が前記濾水器の雨水滴下部の直下であって前記おもりの側方に位置するように設けられ、最大転倒時における、前記濾水器の雨水滴下部の中心から前記隔壁の上端までの距離、および、前記おもりの重心から前記転倒ますの揺動中心までの距離が、前記転倒ますの揺動時に前記隔壁の上端が移動する距離を抑制する所定の距離に設定される
ことを特徴とする転倒ます形雨量計。
【背景技術】
【0002】
従来この種の転倒ます形雨量計としては、例えば、特許文献1に開示された雨雪量計がある。この種の転倒ます形雨量計は非特許文献1に規格が定められている。
【0003】
転倒ます形雨量計は、一般的に、雨水を受けると共に計量部を保護する受水器と、受水器から滴下した雨水量を測定する計量部とから構成される。計量部は、
図1に示すように、濾水器1、転倒ます2、つり合いおもり3、排水ます4などを主要構成部品としている。濾水器1は図示しない受水器で受水した雨水を受け、下方の雨水滴下部1aから転倒ます2の一方のます2a,2bへ、受けた雨水を滴下させる。転倒ます2は、一方のます2a,2bに受ける雨水の量が所定量に達すると、転倒ます2の下方に設けられた軸受5を中心に揺動する。この際、軸受5の下方に設けられたつり合いおもり3の重みにより、転倒ます2の揺動が付勢され、転倒ます2は速やかに揺動して他方のます2b,2aを濾水器1の下方に移動させる。また、この揺動によって傾いた一方のます2a,2bは、溜めた所定量の雨水を排水筒4に流す。転倒ます形雨量計は、転倒ます2の揺動する回数を図示しないリードスイッチによってカウントすることで、排水ます4に流した、つまり、受水器で受けた雨水の量を計量する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、局所的大雨や集中豪雨等による災害や被害が深刻になっており、豪雨等による災害に対して注意を促すことや、気候変動のデータを正しく捉えることの重要性が高まっている。しかしながら、上記従来の転倒ます形雨量計では、1時間に80mmを超える降雨があった場合、所定量の雨水を溜めて定量となった一方のます2a,2bから空の他方のます2b,2aへ雨水の貯水先を切り替えるとき、滴下する雨水が空のます2b,2aに入らず、定量になったます2a,2bに入り続けてしまう。このため、上記従来の転倒ます形雨量計では、雨量を正確に測定することが出来なかった。最近の気象庁のデータでは、ゲリラ豪雨の増加により、1時間に150mmに達する降雨の発生する地域が増加している。したがって、上記従来の転倒ます形雨量計によっては、豪雨等による災害に対する注意の喚起を正確に行い、気候変動のデータを正しく捉えることは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
受水器で受水した雨水を受ける濾水器と、濾水器から滴下する雨水を所定量交互に溜める一対のますが揺動中心を中心に対称に設けられた転倒ますと、転倒ますの揺動中心を揺動自在に支持する支持部と、転倒ますの揺動を付勢するおもりとを備える転倒ます形雨量計において、
支持部が、基台に固定されて両端が転倒ますの側面を囲むコの字状をした支持台から構成され、転倒ますの側面を貫通して両端が支持台に固定された軸によって転倒ますをその揺動中心の周りに揺動自在に支持し、
転倒ますの揺動中心が転倒ますの底面より上
方に設けられ、
おもりが
、転倒ますの揺動中心よりも上方の濾水器側で、転倒ますの揺動中心よりも上方における転倒ますの側方に
配置されて、前記軸の軸心方向の幅が転倒ますの揺動時に一部が支持台の両端間に侵入する大きさで、一対のます間にわたる方向に転倒ますの長手方向の長さからはみ出ない長さで延びる直方体状に設けられ、
転倒ますが、非転倒時において、
前記底面に立設されて一対のます間を仕切る
と共に転倒ますの揺動中心が壁の中に設けられる隔壁の上端が濾水器の雨水滴下部の直下
であっておもりの側方に位置するように設けられ、最大転倒時における、濾水器の雨水滴下部の中心から隔壁の上端までの距離、および、おもりの重心から転倒ますの揺動中心までの距離が、転倒ますの揺動時に隔壁の上端が移動する距離を抑制する所定の距離に設定される
ことを特徴とする。
【0008】
従来の転倒ます形雨量計においては、おもりが揺動中心の下方に位置するため、おもりに加わる重力の揺動中心に関する力のモーメントは、転倒ますの傾きを減じて転倒ますを水平状態にする向きに働く。このため、雨水をますに受ける際における転倒ますの傾きを大きくし、ますの重みによる重力の揺動中心に関する腕の長さを長くすることで、ますの重みによる重力の揺動中心に関する力のモーメントを大きくし、転倒ますの傾きを保っていた。しかし、本構成によれば、おもりが転倒ますの揺動中心よりも上方に設けられることで、おもりに加わる重力の揺動中心に関する力のモーメントは、転倒ますの傾きを増加させる向きに働く。このため、雨水をますに受ける際における転倒ますの傾きを最小限に設定することが出来る。
【0009】
また、転倒ますの揺動中心が、従来の転倒ますの下方から転倒ますの底面より上
方に設けられことで、揺動中心から、一対のます間を仕切る隔壁の上端までの距離、つまり揺動半径は、従来よりも短くなる。このため、濾水器から滴下する雨水の貯水先を、定量になった一方のますから空の他方のますへ切り替える際に、揺動中心を中心に隔壁の上端が描く円弧の長さは、転倒ますの傾きを上記のように小さく出来ることと相まって、従来よりも短くなる。すなわち、ますの切替の際に隔壁の上端が移動する距離は従来よりも短くなり、ますの切替は従来よりも短時間に行える。
【0010】
この結果、転倒ますは、濾水器から滴下する雨水の貯水先となるますの切り替えを、従来よりも迅速に行えるようになる。よって、1時間に80mmを超えるような降雨があっても、従来のように、濾水器からの雨水を定量になったますに溜め続けることなく、確実に空のますへ溜めることが出来るようになり、雨水の計量を正確に行える。したがって、豪雨等による災害に対する注意の正確な喚起や、気候変動のデータを正しく捉えることが出来るようになる。
【0012】
本構成によれば、濾水器から滴下する雨水がますに到達するまでの距離が短くなり、濾水器から滴下する雨水は何れか一方のますにより短時間に溜められる。このため、濾水器から滴下する雨水の貯水先となるますの切り替えは、より早くかつ確実に行えるようになる。
【0014】
本構成によれば、おもりを転倒ますの側方に取り付けることが出来て、おもりの設置箇所を確保することが出来る。また、おもりの設置高さが抑制され、転倒ますと濾水器との間の距離を短く設定できる。また、従来のように転倒ますの下方におもりの設置空間を確保する必要も無い。このため、計量部の高さを抑えることが出来、転倒ます形雨量計の高さを低くして転倒ます形雨量計を小型化することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、雨水の計量を正確に行えると共に、豪雨等による災害に対する注意の喚起を正確に行え、気候変動のデータを正しく捉えられる転倒ます形雨量計を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明による転倒ます形雨量計を実施するための形態について説明する。
【0018】
図2(a)は、本発明の一実施の形態による転倒ます形雨量計の計量部11の平面図、
図2(b)は正面図、
図3(a)は側面図である。また、
図3(b)は
図3(a)におけるIIIb−IIIb線破断矢視図である。
【0019】
図示する計量部11は、その性能を把握するために構成した実験用の動作モデルである。計量部11は、濾水器12、転倒ます13、および、おもり14を主要構成部品としている。
【0020】
濾水器12は漏斗状をしており、取付具15によって基板16に取り付けられている。基板16は長方形の板状をしており、円盤状をした基台17に立設されている。基台17の底面には3個の脚21a,21b,21cが設けられている。濾水器12は、図示しない受水器で受水した雨水を受け、受けた雨水を下端に形成された雨水滴下部12aから滴下する。転倒ます13は、一対のます13a,13bが揺動中心Oを中心に対称に設けられて構成されている。一対のます13a,13bには、濾水器12から滴下する雨水が所定量交互に溜められる。本実施形態では15.7ccを所定量としており、いずれか一方のます13a,13bに15.7ccの雨水が溜まって定量になると、転倒ます13は揺動中心Oを中心に揺動する。すなわち、本実施形態の転倒ます形雨量計は、受水器の受水口の口径が200mmに設定されており、0.5mmの降雨があると、いずれか一方のます13a,13bに15.7ccの雨水が溜まる。
【0021】
揺動中心Oには、軸18が転倒ます13の側面を貫通して設けられている。軸18は、基台17に固定されたコの字状をした支持台19に両端が支持されている。本実施形態では、転倒ます13の揺動中心Oは、転倒ます13の底面より上方の側面に設けられている。軸18および支持台19は、転倒ます13の揺動中心Oを揺動自在に支持する支持部を構成する。転倒ます13の揺動はおもり14によって付勢される。本実施形態では、おもり14は、直方体状をしており、転倒ます13の揺動中心Oよりも上方の濾水器12側における転倒ます13の側方に、設けられている。転倒ます13の揺動する回数は、図示しないリードスイッチの発するパルス数によってカウントされる。
【0022】
各ます13a,13bの下方における基台17には、ボルトおよびナットによって構成される一対のストッパ20a,20bが設けられている。転倒ます13の揺動は、この一対のストッパ20a,20bで各ます13a,13bの下面が受けられて、停止する。また、転倒ます13の中央には、一対のます13a,13b間を仕切る隔壁13cが、
図3(b)に示すように形成されている。転倒ます13は、非転倒時の水平状態において、隔壁13cの上端が、濾水器12の雨水滴下部12aの直下に位置するように設けられる。
【0023】
上記のように構成される計量部11は、受水器を構成する漏斗が上方に設けられて、円筒状をした胴体に収納される。基台17はこの胴体の底面を構成する。転倒ます13の両端部下方における基台17には、一対の切り欠き17a,17bが形成されている。本実施形態の動作モデルでは、一対のます13a,13bに溜まった雨水は、この一対の切り欠き17a,17bを介して胴体の外部へ排水される。製品モデルでは、この一対の切り欠き17a,17bの形成部に排水筒4(
図1参照)が設けられることになる
【0024】
このような構成において、濾水器12は受水器で受水した雨水を受け、雨水滴下部12aから転倒ます13の一方のます13a,13bへ、受けた雨水を滴下させる。転倒ます13は、一方のます13a,13bに受ける雨水の量が所定量に達すると、重力W1によって軸18を中心に揺動する。この際、おもり14の重みにより、転倒ます13の揺動が付勢され、転倒ます13は速やかに揺動して他方のます13b,13aを雨水滴下部12aの下方に移動させる。また、この揺動によって傾いた一方のます13a,13bは、溜めた所定量の雨水を切り欠き17a,17bに流す。転倒ます形雨量計は、以後、同様な動作を繰り返し、転倒ます13の揺動する回数をリードスイッチによってカウントすることで、受水器で受けた雨水の量を計量する。
【0025】
このような本実施形態の転倒ます形雨量計によれば、おもり14が転倒ます13の揺動中心Oよりも上方に設けられることで、おもり14に加わる重力U1の揺動中心Oに関する力のモーメントm1は、
図3(b)に示すように、重力U1の揺動中心Oに関する腕の長さをr1とすると、腕の長さr1と重力U1との積r1・U1で表されるが、転倒ます13の傾きを増加させる向きに働く。ます13a,13bの重みによる重力W1の揺動中心Oに関する力のモーメントM1は、重力W1の揺動中心Oに関する腕の長さをR1とすると、腕の長さR1と重力W1との積R1・W1で表される。したがって、転倒ます13は、おもり14に加わる重力w1のモーメントm1と、ます13a,13bの重みによる重力W1のモーメントM1との和のモーメント(=m1+M1)が作用して傾き、ストッパ20a,20bがこれを支える。
【0026】
一方、従来のおもり3に加わる重力U2の揺動中心Oに関する力のモーメントm2は、
図1に示すように、重力U2の揺動中心Oに関する腕の長さをr2とすると、腕の長さr2と重力U2との積r2・U2で表されるが、おもり3が揺動中心Oの下方に位置するため、転倒ます2の傾きを減じて転倒ます2を水平状態にする向きに働く。また、ます2bの重みによる重力W2の揺動中心Oに関する力のモーメントM2は、重力W2の揺動中心Oに関する腕の長さをR2とすると、腕の長さR2と重力W2との積R2・W2で表される。したがって、転倒ます2は、おもり3に加わる重力U2のモーメントm2と、ます2a,2bの重みによる重力W2のモーメントM2との和のモーメント(=m2+M2)が作用して、水平状態になろうとする。このため、従来の転倒ます形雨量計においては、雨水をます2a,2bに受ける際における転倒ます2の傾きを大きくし、傾いたます2aの重みによる重力W2の揺動中心Oに関する腕の長さR3を長くすることで、傾いたます2aの重みによる重力W2の揺動中心Oに関する力のモーメントM3(=R3・W2)を大きくし、転倒ます2の傾きを保っていた。
【0027】
しかし、本実施形態の転倒ます形雨量計では、上記のように、おもり14に加わる重力U1の揺動中心Oに関する力のモーメントm1は、転倒ます13の傾きを増加させる向きに働くため、雨水をます13a,13bに受ける際における転倒ます13の傾きを最小限に設定することが出来る。
【0028】
また、転倒ます13の揺動中心Oが、従来の転倒ます2の下方から転倒ます13の底面より上方の側面に設けられることで、揺動中心Oから、隔壁13cの上端までの距離、つまり揺動半径は、従来よりも短くなる。このため、濾水器12から滴下する雨水の貯水先を、定量になった一方のます13a,13bから空の他方のます13b,13aへ切り替える際に、揺動中心Oを中心に隔壁13cの上端が描く円弧の長さは、転倒ます13の傾きを上記のように小さく出来ることと相まって、従来よりも極めて短くなる。なお、従来の計量部における濾水器1の雨水滴下部1aの中心から転倒ます2の頂上までの水平距離L1(
図1参照)は24mmであったが、本実施形態の計量部11における濾水器12の雨水滴下部12aの中心から転倒ます13の頂上までの水平距離L2(
図2(b)参照)は3mmとなり、1/8になった。また、従来の計量部におけるおもり3の重心から転倒ます2の
揺動中心Oまでの距離L3(
図1参照)は約20mmであったが、本実施形態の計量部11におけるおもり14の重心から転倒ます13の
揺動中心Oまでの距離L4(
図2(b)参照)は14mmとなり、7/10になった。すなわち、ます13a,13bの切替の際に隔壁13cの上端が移動する距離は従来よりも極めて短くなり、ます13a,13bの切替は従来よりも短時間に行える。
【0029】
この結果、転倒ます13は、濾水器12から滴下する雨水の貯水先となるます13a,13bの切り替えを、従来よりも迅速に行えるようになる。よって、1時間に80mmを超えるような降雨があっても、従来のように、濾水器1からの雨水を定量になったます2a,2bに溜め続けることなく、確実に空のます13a,13bへ溜めることが出来るようになり、雨水の計量を正確に行える。したがって、豪雨等による災害に対する注意の正確な喚起や、気候変動のデータを正しく捉えることが出来るようになる。
【0030】
また、本実施形態の転倒ます形雨量計では、転倒ます13が、非転倒時の水平状態において、隔壁13cの上端が、濾水器12の雨水滴下部12aの直下に位置するように設けられる。したがって、濾水器12から滴下する雨水がます13a,13bに到達するまでの距離が短くなり、濾水器12から滴下する雨水は何れか一方のます13a,13bにより短時間に溜められる。このため、濾水器12から滴下する雨水の貯水先となるます13a,13bの切り替えは、より早くかつ確実に行えるようになる。
【0031】
また、本実施形態の転倒ます形雨量計では、おもり14が、転倒ます13の揺動中心Oよりも上方の濾水器12側における転倒ます13の側方に、設けられている。したがって、おもり14を転倒ます13の側方に取り付けることが出来て、おもり14の設置箇所を確保することが出来る。また、おもり14の設置高さが抑制され、転倒ます13と濾水器12との間の距離を短く設定できる。また、従来のように転倒ます13の下方におもり14の設置空間を確保する必要も無い。このため、計量部11の高さを抑えることが出来、転倒ます形雨量計の高さを低くして、転倒ます形雨量計を小型化することが出来る。
【0032】
なお、上記の実施形態では、転倒ます13における各ます13a,13bの底面は、
図3(b)に示すように、中央の隔壁13c側において低く形成されて、斜めになっていた。しかし、
図4および
図5に示すように、各ます23a,23bの底面を直線状に平らに形成した転倒ます23を用いるようにしてもよい。
図4(a)は、一実施の形態の変形例による転倒ます形雨量計における計量部31の平面図、
図4(b)は正面図、
図5(a)は側面図である。また、
図5(b)は
図5(a)におけるVb−Vb線破断矢視図である。なお、
図4および
図5において
図2および
図3と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0033】
このような転倒ます23を用いて構成される計量部31は、ます23a,23bに溜まった雨水を排水するとき、各ます23a,23bの底面の傾きを転倒ます13より大きくできる。このため、ます23a,23bに溜まった雨水の排水を迅速に行え、ます23a,23bの切り替えを転倒ます13より効率的に行える。
【0034】
図6(a)は、上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計と、
図1に示される構造をした市販されている転倒ます形雨量計とについての、雨量に応じた計測値の測定結果を示すグラフAである。同グラフAの横軸は1時間当たりの雨量を基準値[mm]として表し、縦軸は測定値[mm]である。
【0035】
市販されている転倒ます形雨量計には、株式会社大田計器製作所製の型式OW−34−BPの雨量計を用いた。この雨量計は、上記の実施形態による転倒ます形雨量計と同じ仕様で、受水器の口径が200mm、降水量0.5mmの水の重さで転倒ます2が倒れる仕様をしている。測定における降雨は、各転倒ます形雨量計の濾水器1,12にポンプで直接注水することで擬似的に行い、グラフAの横軸に示される基準値[mm]の、1時間当たり50〜200mm相当の雨量を再現した。このポンプには、株式会社イワキ製の型式EHN−B21VC1Rの電磁定量ポンプを使用した。雨量の測定は、濾水器1,12への注水によって転倒ます2,13が左右で合計6回転倒するまでの時間を測定することで行い、測定時間から1時間当たりの雨量に換算することで、計測値[mm]を算出した。
【0036】
同グラフAにおける計測値が白抜きの三角形のプロットで示される特性線41aは上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計の計測結果を、計測値が黒塗りの円のプロットで示される特性線42aは市販の転倒ます形雨量計の計測結果を表す。
【0037】
図6(b)は、同図(a)に示す各計測値の基準値に対する誤差を百分率%で示すグラフBである。同グラフBの横軸はグラフAと同じ基準値[mm]、縦軸は誤差[%]である。誤差の算出式は、{(計測値−基準値)/基準値}×100で示される。同グラフBにおいても、白抜きの三角形のプロットで示される特性線41bは上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計の誤差特性を、黒塗りの円のプロットで示される特性線42bは市販の転倒ます形雨量計の誤差特性を表す。
【0038】
同図(b)に示すグラフBから理解されるように、市販の転倒ます形雨量計の誤差は、1時間当たりの雨量が大きくなるのに連れて、上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計に比べて大きくなる。
【0039】
図7(a)に示すグラフCは、市販の転倒ます形雨量計の計測値を理論値(=基準値)と比較して示すものである。同グラフCの横軸および縦軸は
図6(a)に示すグラフAと同じである。また、同グラフCにおける計測値が黒塗りの円のプロットで示される特性線42cは市販の転倒ます形雨量計の計測結果を表し、理論値は黒塗りの四角形のプロットで特性線43として表される。また、
図7(b)に示すグラフDは、これら計測値と理論値との誤差率を示す。同グラフDの横軸はグラフAと同じ基準値[mm]、縦軸は誤差率[%]である。誤差率の算出式は、{(理論値−計測値)/理論値}×100で示される。また、同グラフDにおける黒塗りの円のプロットは誤差率を示し、特性線44はこれら誤差率の平均値を示す。
【0040】
このグラフDの特性線44は指数関数的な曲線になり、市販の転倒ます形雨量計は1時間当たりの雨量が大きくなるのにつれて誤差率が指数関数的に増加することが特性線44から理解される。これは、市販の転倒ます形雨量計では、所定量の雨水を溜めて定量となった一方のます2a,2bから空の他方のます2b,2aへ雨水の貯水先を切り替えるとき、濾水器1から滴下する雨水が空のます2b,2aに入らず、定量になったます2a,2bに入り続けてしまうためと、考えられる。
【0041】
これに対して、上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計は、
図6(b)の特性線41bに示されるように、1時間当たりの雨量が大きくなっても、誤差の増加が抑制されることが理解される。これは、上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計では、上述のように、濾水器12から滴下する雨水の貯水先となるます13a,13bの切り替えが、より早くかつ確実に行えるからであると、考えられる。この測定により、上記の実施形態による新型転倒ます形雨量計は、1時間に150mmに達するようなゲリラ豪雨が発生しても、市販の転倒ます形雨量計に比べて雨水の計量を正確に行えることが確認された。