(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984846
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】真方位角計測方法
(51)【国際特許分類】
G01C 19/38 20060101AFI20211213BHJP
G01C 19/00 20130101ALI20211213BHJP
【FI】
G01C19/38 C
G01C19/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-237034(P2017-237034)
(22)【出願日】2017年12月11日
(65)【公開番号】特開2019-105479(P2019-105479A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】片山 諒一
【審査官】
眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−127907(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/156288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00−19/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の真方位角計測方法であって、
地球の自転角速度である第1自転角速度と、
前記第1自転角速度に直交する方向の地球の自転角速度である第2自転角速度と
を計測することにより前記計測対象物の真方位角を計測し、
前記第1自転角速度又は前記第2自転角速度が予め定めた閾値未満である場合には、次回の前記真方位角を計測するときに、前記真方位角に予め定めたオフセット値を加算した状態で前記第1自転角速度及び前記第2自転角速度を計測することにより前記オフセット値が加算された前記真方位角を計測し、
前記オフセット値が加算された前記真方位角から前記オフセット値を減算することで前記真方位角を計測する、真方位角計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真方位角計測方法に関し、特に、バイアスキャンセルを用いる真方位角計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真方位角計測方法としては、例えば以下の特許文献1に記載された真方位角計測方法が知られている。すなわち、
図3に示す従来の真方位角計測方法は、真方位角計測装置1の回転部材2に搭載された角速度センサ3により地球の自転角速度を計測し、その前記自転角速度を基に真方位角を計測する。前記角速度センサ3により1回目の自転角速度計測が終了した後に、前記角速度センサ3のバイアスに起因するバイアスを除去するために、制御テーブルにあらかじめ設定された回転量だけ前記回転部材2を回転させて2回目の自転角速度計測を行う。そして1回目の計測と2回目の計測とで得られた前記自転角速度から、1回目の計測と2回目の計測とにおける前記角速度センサ3のバイアスの変化率を取得し、その変化率により前記自転角速度の計測結果からバイアスを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/156288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の真方位角計測方法において、前記角速度センサ3の計測した前記自転角速度と、真方位角に直交する方向の自転角速度とを計測して、その前記各自転角速度の計測結果から、真方位角を計測する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、従来の真方位角計測方法において、前記自転角速度と前記方位角に直交する方向の前記自転角速度の計測結果とから真方位角を計測しようとすると、前記自転角速度又は前記方位角に直交する方向の前記自転方位角速度のいずれかが0に近い場合には、計測した前記各自転角速度の計測結果の誤差が真方位角の計測結果の誤差として大きく影響し、真方位角の測定精度が悪化するという問題点があった。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、真方位角計測の精度を向上させる真方位角計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明に係る真方位角計測方法は、計測対象物の真方位角計測方法であって、地球の自転角速度である第1自転角速度と、第1自転角速度に直交する方向の地球の自転角速度である第2自転角速度とを計測することにより計測対象物の真方位角を計測し、第1自転角速度又は第2自転角速度が予め定めた閾値未満である場合には、次回の真方位角を計測するときに、真方位角に予め定めたオフセット値を加算した状態で第1自転角速度及び第2自転角速度を計測することによりオフセット値が加算された真方位角を計測し、オフセット値が加算された真方位角からオフセット値を減算することで真方位角を計測する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る真方位角計測方法によれば、地球の自転角速度である第1自転角速度と、第1自転角速度に直交する方向の地球の自転角速度である第2自転角速度とを計測することにより計測対象物の真方位角を計測し、第1自転角速度又は第2自転角速度が予め定めた閾値未満である場合には、次回の真方位角を計測するときに、真方位角に予め定めたオフセット値を加算した状態で第1自転角速度及び第2自転角速度を計測することによりオフセット値が加算された真方位角を計測し、オフセット値が加算された真方位角からオフセット値を減算することで真方位角を計測するので、真方位角計測の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る真方位角計測装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る真方位角計測方法の計測軸にオフセットを加える場合の自転角速度の関係を示す図である。
【
図3】従来の真方位角計測方法の真方位角計測装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態の真方位角計測方法を添付図面に基づいて説明する。
まず、
図1に、この発明の実施の形態の真方位角計測方法で用いる真方位角計測装置の構成図を示す。ここで、真方位角とは、真北を基準にして表した方位の角度のことを言う。測定対象物に搭載された真方位角計測装置10は、X軸加速度計40と、Y軸加速度計41と、Z軸加速度計42と、ジャイロ50と、ジャイロ回転台51と、周知のMPU60とを有している。前記ジャイロ50は、その計測の基準となる軸である計測軸を有している。前記ジャイロ50は前記ジャイロ回転台51に前記計測軸を回転可能に設置されている。なお、前記ジャイロ50は例えば光ファイバジャイロ又は機械式ジャイロ等の中精度のジャイロである。また、前記ジャイロ50として、地球の自転角速度を検出できる分解能を有するならば、さらに低精度のジャイロを用いてもよい。
【0011】
前記X軸加速度計40と、前記Y軸加速度計41と、前記Z軸加速度計42と、前記ジャイロ50と前記ジャイロ回転台51とは、前記MPU60に電気的に接続されている。前記MPU60には、前記X軸加速度計40、前記Y軸加速度計41、前記Z軸加速度計42、前記ジャイロ50からの各計測結果が入力される。また、前記MPU60からは、前記ジャイロ回転台51を制御するための制御信号が出力される。
【0012】
前記MPU60は、前記真方位角計測装置10の外部に設置されたパソコンである記録部70に周知のRS−232Cケーブルを介して接続されている。前記記録部70は前記MPU60と計測情報を双方向に通信する。なお、前記記録部70はパソコン以外の適当なコンピュータであってもよいし、前記MPU60と接続される手段は他の種類のケーブルや無線通信であってもよい。
【0013】
前記真方位角計測装置10は、外部に設置された装置電源80から電力を供給されている。
【0014】
次に、この実施の形態の真方位角計測方法の原理を説明する。
前記ジャイロ50の計測軸が、ある真方位角Headで示される真方位を向いているとき、前記ジャイロ50が検出する地球の自転角速度である第1自転角速度ωxは式(1)で表される。
【数1】
ここで、Ωは地球の自転角速度(15°/時)、λは計測地点の緯度である。
また、Headに直交する方向の地球の自転角速度である第2自転角速度ωyは式(2)で表される。
【数2】
そして、式(1)及び式(2)から式(3)が導かれる。
【数3】
【0015】
式(1)〜(3)に示した通り、前記ジャイロ50の計測軸に直交する前記第2自転角速度ωyを計測することにより、真方位角Headを求めることができる。しかし、式(3)から理解できるように、この方法では、前記第1自転角速度ωx又は前記第2自転角速度ωyの値のいずれかが0に近い場合は、前記第1自転角速度ωx及び前記第2自転角速度ωyの誤差が、真方位角Headの計測結果の誤差として大きく影響する。
【0016】
また、この実施の形態で用いる中精度又は低精度の前記ジャイロ50は、地球の前記第1自転角速度ωx及び前記第2自転角速度ωyを大きく上回るバイアスを有する。したがって、計測結果からバイアスを除去するために、前記ジャイロ回転台51により前記ジャイロ50を回転させて計測軸を回転させた後に、再度前記第1自転角速度ωx及び第2自転角速度ωyを計測する、バイアスキャンセルを行う。
【0017】
次に、この実施の形態真方位角計測方法の具体的な方法を説明する。
前記MPU60は、
図2に示すように、前記ジャイロ回転台51を回転させ、前記ジャイロ50の計測軸を任意の方向の角度αに向ける。ここで、前記真方位角計測装置10の制御上のゼロ点を角度α=0°とする。前記ジャイロ50は角速度の計測値b0を計測し、前記MPU60を介して前記記録部70へ計測値b0を送信する。前記記録部70は、計測値b0を記録する。
【0018】
次に、前記MPU60は、バイアスキャンセルをして計測値を得るため、前記ジャイロ回転台51を回転させ、前記ジャイロ50の計測軸をα+90°に向ける。前記ジャイロ50は角速度の計測値b1を計測し、前記MPU60を介して前記記録部70へ計測値b1を送信する。前記記録部70は、計測値b1を記録する。
【0019】
次に、前記MPU60は、バイアスキャンセルをして計測値を得るため、前記ジャイロ回転台51を回転させ、前記ジャイロ50の計測軸をα+180°に向ける。前記ジャイロ50は角速度の計測値b2を計測し、前記MPU60を介して前記記録部70へ計測値b2を送信する。前記記録部70は、計測値b2を記録する。
【0020】
次に、前記MPU60は、バイアスキャンセルをして計測値を得るため、前記ジャイロ回転台51を回転させ、前記ジャイロ50の計測軸をα+270°に向ける。前記ジャイロ50は角速度の計測値b3を計測し、前記MPU60を介して前記記録部70へ計測値b3を送信する。前記記録部70は、計測値b3を記録する。
【0021】
次に、前記MPU60は、前記記録部70から計測値b1〜b4を受信する。そして、
ωx=b0−b2
ωy=b1−b3
の計算を行い、前記第1自転角速度ωx及び前記第2自転角速度ωyを求める。
【0022】
前記第1自転角速度ωx又は前記第2自転角速度ωyが、予め設定した0に近い値の閾値未満である場合には、上記のように前記第1自転角速度ωx及び前記第2自転角速度ωyの誤差が、真方位角Headの計測結果の誤差として大きく影響する。そのため、2回目以降の計測においては、αに一定のオフセット値であるβを加えた状態で上記計測を行うように前記ジャイロ回転台51を回転させる。すなわち、計測軸がα+βの計測値b0’、計測軸がα+β+90°の計測値b1’、計測軸がα+β+180°の計測値b2’、計測軸がα+β+270°の計測値b3’をそれぞれ前記ジャイロ50が計測し、前記記録部70が記録する。
【0023】
前記MPU60は、前記記録部70から計測値b1’〜b4’を受信する。そして、
ωx’=b0’−b2’
ωy’=b1’−b3’
の計算を行い、前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’を求める。
【0024】
2回目以降の計測では、前記オフセット値βを加えた状態で、前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’の値を計測しているので、前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’が閾値未満にならない。そのため、前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’の誤差が、真方位角Headの計測結果の誤差として影響しにくい。
【0025】
次に、前記MPU60は前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’と式(3)とから真方位角Headを算出し、真方位角Headの値から前記オフセット値βを減算する。次に、前記MPU60は、前記ジャイロ回転台51を制御する上での角度αのゼロ点と、前記真方位角計測装置10としてのゼロ点との差を真方位角Headに加算し、真方位角の計測値として出力する。
【0026】
なお、前記オフセット値βの値は10°以下であると計測結果をオフセットさせる効果が小さいため、10°を超えることが望ましい。しかし、前記オフセット値βが45°を超えると、例えば前記第1自転角速度ωxを0に近い閾値未満にしないために前記オフセット値を加えても、逆に前記第2自転角速度ωyが0に近くなるために、前記オフセット値βを加える意味がなくなる。したがって、予め設定する前記オフセット値βの望ましい値は、10°を超え且つ45°以下であり、さらに経験的には30°以上45°以下であることが望ましい。
【0027】
このように、測定対象物の真方位角計測方法であって、地球の自転角速度である前記第1自転角速度ωxと、前記第1自転角速度ωxに直交する方向の地球の自転角速度である前記第2自転角速度ωyとを計測することにより測定対象物の前記真方位角Headを計測し、前記第1自転角速度ωx又は前記第2自転角速度ωyが予め定めた閾値未満である場合には、次回の前記真方位角Headを計測するときに、前記真方位角Headに予め定めたオフセット値βを加算した状態で前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’を計測することにより前記オフセット値βが加算された前記真方位角Headを計測し、前記オフセット値βが加算された前記真方位角Headから前記オフセット値βを減算することで前記真方位角を計測するので、真方位角計測の精度を向上させることができる。
【0028】
なお、この実施の形態ではバイアスキャンセルのために前記ジャイロ50の計測軸をα+90°,α+180°,α+270°にそれぞれ向けた状態で計測を行ったが、αに加える角度は360°未満の範囲内で任意の角度であってもよい。
【0029】
なお、本発明による真方位角計測方法の要旨としては、以下の通りである。すなわち、測定対象物の真方位角計測方法であって、地球の自転角速度である前記第1自転角速度ωxと、前記第1自転角速度ωxに直交する方向の地球の自転角速度である前記第2自転角速度ωyとを計測することにより測定対象物の前記真方位角Headを計測し、前記第1自転角速度ωx又は前記第2自転角速度ωyが予め定めた閾値未満である場合には、次回の前記真方位角Headを計測するときに、前記真方位角Headに予め定めたオフセット値βを加算した状態で前記第1自転角速度ωx’及び前記第2自転角速度ωy’を計測することにより前記オフセット値βが加算された前記真方位角Headを計測し、前記オフセット値βが加算された前記真方位角Headから前記オフセット値βを減算することで前記真方位角を計測する方法である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による真方位角計測方法は、測定対象物の真方位角計測方法であって、地球の自転角速度である第1自転角速度と、第1自転角速度に直交する方向の地球の自転角速度である第2自転角速度とを計測することにより測定対象物の真方位角を計測し、第1自転角速度又は第2自転角速度が予め定めた閾値未満である場合には、次回の真方位角を計測するときに、真方位角に予め定めたオフセット値を加算した状態で第1自転角速度及び第2自転角速度を計測することによりオフセット値が加算された真方位角を計測し、オフセット値が加算された真方位角からオフセット値を減算することで真方位角を計測するので、真方位角計測の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
β オフセット値
ωx 第1自転角速度
ωy 第2自転角速度
Head 真方位角