特許第6984849号(P6984849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984849
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】塗布ガン
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/04 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   B05C5/04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-141462(P2018-141462)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2020-15023(P2020-15023A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2021年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 猛史
(72)【発明者】
【氏名】洞戸 翔太
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−200092(JP,A)
【文献】 特開2012−011298(JP,A)
【文献】 特開2010−279931(JP,A)
【文献】 特開2011−131121(JP,A)
【文献】 特開平07−039802(JP,A)
【文献】 実開昭50−084557(JP,U)
【文献】 特開平02−241561(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第110552485(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00 − 1/16
B05C 5/00 − 5/04
B05C 17/00 − 17/015
B05B 5/00 − 5/16
B05B 7/00 − 7/32
B05D 1/00 − 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布剤を吐出するノズルが設けられたガン本体と、
前記ガン本体の外面から突出した形態であり、固定部材に引っ掛けることが可能なフックと、
前記ガン本体内の機器から導出され、前記機器との間で通電を行うケーブルが接続されるレセプタクルとを備え、
前記レセプタクルが前記フックに設けられていることを特徴とする塗布ガン。
【請求項2】
前記ガン本体に設けられ、前記塗布剤を前記ガン本体に供給するためのホースが接続される接続部と、
前記接続部に接続した前記ホースと前記フックとを連結する連結部材とを備えていることを特徴とする請求項1記載の塗布ガン。
【請求項3】
前記ガン本体に設けられ、前記塗布剤を前記ガン本体に供給するためのホースが接続される接続部と、
前記接続部と概ね並列するように前記フックに設けられ、前記レセプタクルを収容可能な収容部とを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗布ガン。
【請求項4】
前記フックのうち前記固定部材との接触可能領域が、前記固定部材よりも軟質の材料で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の塗布ガン。
【請求項5】
前記ガン本体のグリップの底面に開口し、前記レセプタクルを取付け可能な取付部を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の塗布ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホットメルトをガン本体のノズルから吐出する手持ち式の塗布ガン(ホットメルトガン)が開示されている。ガン本体内には、供給されたホットメルトの溶融状態を保つため又は粘度を調整するためのヒーターが設けられており、ホットメルトは溶融状態でノズルから吐出される。
【0003】
この塗布ガンでは、ヒーターに電力を供給するためのケーブルをガン本体に接続する必要がある。水平に置いた被塗物の上面にホットメルトを塗布する場合、ホットメルトをノズルから下向きに吐出させるので、塗布作業を効率的に行うために、ケーブルを塗布ガンの上方に吊り掛けて設置する。そのためには、ヒーターから導出させたレセプタクルを、ガン本体の上面に設け、このレセプタクルにケーブルを接続することが好ましい。
【0004】
また、ガン本体の上面にフックを設け、ホットメルトの塗布を中断又は終了したときに、フックをブラケット等に引っ掛けるようにすれば、塗布ガンを吊り下げることによって被塗物から離して保管しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−38656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガン本体の操作性を向上させるためには、ガン本体を小型化して軽量化を図ることが好ましい。ところが、ガン本体を小型化した上で、上述のようにガン本体の上面にフックとレセプタクルを配置しようとすると、フックを小さくせざるを得ない。フックを小さくすると、ブラケットに引っ掛ける作業を行い難くなるため、対策が望まれる。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ガン本体の小型化を図りつつフックを大型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布ガンは、
塗布剤を吐出するノズルが設けられたガン本体と、
前記ガン本体の外面から突出した形態であり、固定部材に引っ掛けることが可能なフックと、
前記ガン本体内の機器から導出され、前記機器との間で通電を行うケーブルが接続されるレセプタクルとを備え、
前記レセプタクルが前記フックに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
ガン本体の外面におけるフックとレセプタクルの設置許容面積に制約があっても、フックを大型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の塗布ガンの斜視図
図2】塗布ガンの一部切欠側面図
図3】塗布ガンを構成するボディの前端部の平断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記ガン本体に設けられ、前記塗布剤を前記ガン本体に供給するためのホースが接続される接続部と、前記接続部に接続した前記ホースと前記フックとを連結する連結部材とを備えていてもよい。この構成によれば、ホースの軸線周りの捻れや、ホースの軸線を湾曲させるような変形等を防止することができる。
【0012】
本発明は、前記ガン本体に設けられ、前記塗布剤を前記ガン本体に供給するためのホースが接続される接続部と、前記接続部と概ね並列するように前記フックに設けられ、前記レセプタクルを収容可能な収容部とを備えていてもよい。この構成によれば、ケーブルをホースの外周に沿うように配索することができるので、ケーブルに対して他部材が干渉することを防止できる。
【0013】
本発明は、前記フックのうち前記固定部材との接触可能領域が、前記固定部材よりも軟質の材料で構成されていてもよい。この構成によれば、フックが固定部材に当たったときに、固定部材を破損させたり変形させたりすることを防止できる。
【0014】
本発明は、前記ガン本体のグリップの底面に開口し、前記レセプタクルを取付け可能な取付部を備えていてもよい。この構成によれば、レセプタクルを、フックとグリップのうち一方に対し選択的に取付けることができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。本実施例1の塗布ガン10は、ホットメルト35(請求項に記載の塗布剤)を被塗物(図示省略)の表面に塗布するためのハンドガンである。塗布ガン10は、ガン本体11と、ホットメルト35を吐出するノズル16と、トリガ18と、フック20と、ヒーター27(請求項に記載の機器)と、レセプタクル30とを備えて構成されている。尚、以下の説明における前後及び上下の方向については、塗布ガン10が、ホットメルト35を水平に吐出する向きとなっている状態を基準とする。
【0016】
ガン本体11は、前後方向のボディ12と、ボディ12の後端部から下方へ延出したグリップ14とを備えている。ボディ12は、ノズル16が取り付けられる前側部材13Fと、グリップ14と一体をなす後側部材13Rとの2つの部品を組み付けて構成されている。
【0017】
前側部材13Fは、後側部材13Rに対し、図2に実線で示す上出し形態と、図2に想像線で示す下出し形態とに組み付けることができる。下出し形態は、上出し形態に対して前側部材13Fを上下反転させた形態である。前側部材13Fが上出し形態であるときの前側部材13Fの上面には、ボディ12の内部空間と外部とを連通させた形態であり、筒状をなす接続部15が形成されている。
【0018】
接続部15には、ホットメルト35の材料をガン本体11に供給するためのホース36が、接続可能となっている。接続部15の軸線方向は、前側部材13Fの上面から斜め上後方へ延びる方向である。したがって、接続部15に取り付けたホース36は、ボディ12の上面から斜め上後方へ延出する。
【0019】
ボディ12(前側部材13F)の前端面にはノズル16が取り付けられている。図3に示すように、ボディ12内の前端部には、ホットメルト35の流路17がノズル16と連通して形成されている。流路17には、トリガ18の手動操作によって開閉するニードル弁19が設けられている。
【0020】
ガン本体11のうちボディ12を構成する後側部材13Rの上面には、フック20が一体に形成されている。フック20は、左右方向に貫通する引っ掛け孔21を有している。フック20及び引っ掛け孔21の側面視形状は、ボディ12の上面を底辺とする略三角形である。フック20は、引っ掛け孔21の孔縁部を全周に亘って繋げた形態である。
【0021】
塗布ガン10による塗布作業を中断又は終了したときには、塗布ブースに設けたブラケット等の固定部材38に引っ掛け孔21を引っ掛けると、塗布ガン10を被塗物に接触させることなく吊り下げ状態で保管することができる。
【0022】
尚、フック20は、ガン本体11(ボディ12)と一体に形成されているので、比較的硬質である。そのため、固定部材38がフック20によって傷付けられたりすることが懸念される。その対策としては、例えば、図2に示すように、引っ掛け孔21の上端部に、固定部材38より軟質の材料からなるパッド22を取り付けることができる。
【0023】
フック20は、ボディ12の上面の前後方向における略中央部から斜め上後方へ突出した前側筒状部23Fと、ボディ12の上面における後端部から斜め上前方へ突出した後側筒状部23Rとを有している。前側筒状部23Fの上端部と後が筒状部23Rの上端部とは、互いに連通している。前側筒状部23Fの内部空間は、ボディ12の内部空間と連通する収容部24となっている。収容部24の上端部はフック20の外部へ斜め上後方へ開放されている。前側筒状部23F(収容部24)の軸線は、上記接続部15の軸線とほぼ平行である。
【0024】
前側筒状部23Fには、リング状締付部26を有する連結部材25が固定されている。リング状締付部26は、ホース36のうち接続部15に取り付けられた接続端部36Eに外嵌され、縮径するようにホース36を締め付けている。ホース36の接続端部36Eは、連結部材25により、フック20に対して位置決めされた状態で固定されている。これにより、ホース36の接続端部36Eは、前側筒状部23Fと略平行をなす状態に保持され、前後方向や左右方向へ変位することを規制されるので、接続部15と接続端部36Eとの取付け部位への負荷が軽減されている。ホース36の接続端部36Eは、連結部材25により、軸線回りに回転することを規制されているので、ホース36が捻られる虞がない。
【0025】
ヒーター27は、流路17内に供給されたホットメルト35の溶融状態を保つため、又はホットメルト35の粘度を調節するための電気機器であり、前側部材13Fの内部に収容されている。ヒーター27からは、ヒーター27に給電するための給電回路を含む内部ケーブル28が導出され、内部ケーブル28はボディ12(後側部材13R)内に配索されている。内部ケーブル28は、給電回路の他に、ホットメルト35の温度を検出する温度センサ(図示省略)の検知信号伝達回路、アース回路、過熱時にヒーター27への給電を遮断する遮断回路を含んでいる。内部ケーブル28の導出端には、後述する外部ケーブル37(請求項に記載のケーブル)との接続手段であるレセプタクル30が取り付けられている。
【0026】
内部ケーブル28は、ボディ12の内部空間に屈曲させた状態で配索されている。内部ケーブル28の延出端に取り付けたレセプタクル30は、フック20の収容部24に取り付けられている。レセプタクル30には、ガン本体11の外部に配索された外部ケーブル37(請求項に記載のケーブル)が接続されている。外部ケーブル37は、レセプタクル30を介して内部ケーブル28に接続されており、内部ケーブル28と同様、ヒーター27への給電回路、温度センサの検知信号伝達回路、アース回路、及び遮断回路を含んでいる。
【0027】
グリップ14の内部は、内部ケーブル28を配索することが可能な配索空間となっている。グリップ14には、グリップ14の下端面に開口する取付部31が形成されている。取付部31には、レセプタクル30を取り付けることが可能である。また、レセプタクル30をグリップ14の取付部31に設けた場合、外部ケーブル37がグリップ14の下端部から下方へ導出されるので、ボディ12の前側部材13Fを下出し形態にして、接続部15を下向きにしておく。このようにすれば、ホース36を、ボディ12の前端部から下方へ導出されるように配索することができる。
【0028】
本実施例の塗布ガン10は、ホットメルト35を吐出するノズル16が設けられたガン本体11と、ガン本体11の外面(上面)から突出した形態であり、固定部材38に引っ掛けることが可能なフック20と、ガン本体11内のヒーター27から内部ケーブル28を介して接続され、ヒーター27との間で通電を行う外部ケーブル37が接続されるレセプタクル30とを備えている。
【0029】
ガン本体11を手動で操作する際の操作性を向上させるためには、ガン本体11を小型化して軽量化を図ることが好ましい。しかし、ガン本体11を小型化した上で、ガン本体11の上面にフック20とレセプタクル30を並べて配置しようとすると、フック20の設置スペースに制約が生じ、フック20を小さくせざるを得ない。フック20を小さくすると、固定部材38にフック20を引っ掛ける際の作業性が悪くなるのである。
【0030】
本実施例の塗布ガン10は、ガン本体11の小型化を図りながら、フック20を引っ掛ける際の作業性が損なわれないようにするための手段として、レセプタクル30をフック20に設けている。具体的には、フック20の内部に収容部24を形成し、この収容部24内にレセプタクル30を収容している。この構成によれば、ガン本体11の外面におけるフック20とレセプタクル30の設置許容面積に制約があっても、フック20を大型化することができる。
【0031】
また、ガン本体11には、ホットメルト35をガン本体11に供給するためのホース36が接続される接続部15に加え、接続部15に接続したホース36とフック20とを連結する連結部材25が設けられている。この構成によれば、ホース36の軸線周りの捻れや、ホース36の軸線を湾曲させるような変形等を防止することができる。また、レセプタクル30を収容する収容部24は、ホース36が接続される接続部15と概ね並列するように設けられている。この構成によれば、ケーブルをホース36の外周に沿うように配索することができるので、ケーブルに対して他部材が干渉することを防止できる。
【0032】
また、フック20のうち固定部材38との接触可能領域(引っ掛け孔21の上端部)が、固定部材38よりも軟質の材料で構成されているので、フック20が固定部材38に当たったときに、固定部材38を破損させたり変形させたりすることを防止できる。また、ガン本体11のグリップ14の底面には、レセプタクル30を取付け可能な取付部31が開口している。この構成によれば、レセプタクル30を、フック20(収容部24)とグリップ14(取付部31)のうち一方に対し選択的に取付けることが可能である。
【0033】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、フックが、ガン本体と一体に形成されているが、フックは、ガン本体と別体の部品であってもよい。
(2)上記実施例では、フックがガン本体と同一材料のみから構成されているが、フックは、ガン本体と同一材料からなるベース部と、ベース部の表面の少なくとも一部に取り付けられる別体部材とを備えた形態であってもよい。
(3)上記実施例では、フックの側面視形状が概ね三角形であるが、フックの側面視形状は、台形、方形、円弧形等であってもよい。
(4)上記実施例では、フックが引っ掛け孔の孔縁部を全周に亘って繋げた形態であるが、フックは、引っ掛け孔の一部を外周側へ開放させた略C字形、略J字形、V字形等であってもよい。
(5)上記実施例では、フックをガン本体の上面に配したが、フックは、ガン本体の側面や背面(後面)に配置してもよい。
(6)上記実施例では、接続部の軸線が、ガン本体の上面に対して斜め方向となっているが、接続部の軸線は、ガン本体の上面と直角であってもよく、ガン本体の上面と平行であってもよい。
(7)上記実施例では、収容部の軸線が、ガン本体の上面に対して斜め方向となっているが、収容部の軸線は、ガン本体の上面と直角であってもよく、ガン本体の上面と平行であってもよい。
(8)上記実施例では、接続部の軸線と収容部の軸線が平行であるが、接続部の軸線は収容部の軸線に対して斜め方向であってもよい。
(9)上記実施例では、塗布ガンがホットメルトを塗布するためのものであるが、本発明は、ホットメルト用の塗布ガンに限らず、塗料用の塗装ガン、シール材を吐出するシーラーにも適用できる。
(10)上記実施例では、塗布ガンが手動のトリガ操作によって塗布を行うハンドガンであるが、本発明は、制御プログラムやセンサの情報等に基づいて自動的に塗布を行う自動ガン(ロボット)にも適用できる。
【符号の説明】
【0034】
10…塗布ガン
11…ガン本体
14…グリップ
15…接続部
16…ノズル
20…フック
24…収容部
25…連結部材
27…ヒーター(機器)
30…レセプタクル
31…取付部
35…ホットメルト(塗布剤)
36…ホース
37…外部ケーブル(ケーブル)
38…固定部材
図1
図2
図3