(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の金属防食剤が含む含硫黄ポリマーは、以下の式(II)
H
2C=CHR (II)
(式中、Rは、置換又は非置換の直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基を表す。)で表される骨格を有するアルケニル化合物とS
8を反応させて製造される。
【0012】
上記Rの「置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基」の「直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基」の具体例は、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基、2,3−ジメチルブタン−2−イル基、3−ヘキシル基、2−エチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等である。
【0013】
上記Rの「置換若しくは非置換の直鎖又は分岐の炭素数2〜20のアルキル基」の置換基は、カルボキシル基、水酸基、フッ素原子、下記に示す芳香族基、ジアルキルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、含窒素ヘテロ環基等である。上記ジアルキルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基及びアルコキシ基におけるアルキルは、直鎖又は分岐の炭素数1〜4のアルキルであり、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチルである。上記含窒素ヘテロ環基は、具体的には、ピロリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等である。
【0014】
上記芳香族基は、一価の芳香族環である。芳香族環は、単環又は多環の炭素数6〜10のアリール基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を1〜4個有する5〜7員の単環又は多環のヘテロアリール基、及び、ベンゼン環とヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を1〜4個有する5〜7員の複素環が縮合した縮合環からなるヘテロアリール基を包含する。
【0015】
芳香族環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンズイソチアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンズチアジアゾール、ピロロピリジン、ピロロピラジン、プリン、キノリン、イソキノリン、シノリン、キナゾリン、キノキサリン等が挙げられる。
【0016】
本発明の金属防食剤が含む含硫黄ポリマーの製造方法は特定の方法に限定されない。当該製造方法の具体例は以下のとおりである。
S
8は、有機溶媒に不溶又は溶解しづらいため、本発明の金属防食剤が含む含硫黄ポリマー合成の第一段階は、硫黄の反応容器中での加熱による融解である。硫黄は多くの同素体(S
8、S
6、S
12、S
18、S
20等)を持ち、それぞれが融点を有する。硫黄の最安定な同素体は環状構造をしたS
8であり、S
8は3つの結晶形(α硫黄、β硫黄及びγ硫黄)をもち、それらの融点はそれぞれ112.8℃、119.6℃、106.8℃である。そのため、120℃以上の温度での加熱がS
8の融解のために必要である。また、S
8は安定構造のα硫黄から温度の上昇とともにβ硫黄、λ硫黄、μ硫黄へと転移していき、159.4℃以上で環状硫黄のラジカル開裂が進み、2価のラジカルができる。このようにして、S
8は159.4℃以上の温度でラジカルを発生するため、融解温度は上記温度より低く設定する必要がある。S
8の融解温度は、好ましくは120℃〜155℃、より好ましくは135℃〜155℃、更に好ましくは145℃〜155℃、最も好ましくは150℃〜155℃である。
【0017】
次いで、上記式(II)で表されるアルケニル化合物が溶融されたS
8に加えられ、上記式(I)で表される本発明の金属防食剤が含む含硫黄ポリマーが1段階で合成される。その際、上記式(II)で表されるアルケニル化合物が溶融されたS
8に均一に分散されるよう、反応中、攪拌が行われてよい。
【0018】
上記反応の温度は、S
8がラジカルを発生させる温度範囲であり、好ましくは160℃〜175℃である。
【0019】
本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーは、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒に可溶である。上記方法で合成された本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーは通常精製される必要はないが、高純度の含硫黄ポリマーが必要とされる場合、反応生成物が上記有機溶媒に溶解され、ろ過されて、有機溶媒に不溶の硫黄が除かれる。また、ろ過後の溶液が、ゲルろ過クロマトグラフィー等の分子ふるいに供され、ポリマーとモノマーが分離される。
【0020】
本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーに対する硫黄含有量は、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは55〜95質量%であり、更に好ましくは60〜95質量%である。
本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000〜20000、更に好ましくは2000〜15000、最も好ましくは5000〜10000である。また、本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーの数平均分子量(Mn)は、GPCによって測定され得る。
【0021】
本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーにおける、S
8と上記式(II)で表される化合物とのモル比は、好ましくは1:0.01〜1:100であり、より好ましくは、1:0.25〜1:10であり、更に好ましくは1:0.25〜1:5である。
【0022】
更に、本発明の金属防食剤が含有する含硫黄ポリマーは上記有機溶媒に溶解され、必要に応じて、老化防止剤、密着性付与剤、腐食防止剤、チキソ性付与剤、レべリング剤等の液性調製剤、顔料、染料、無機フィラー等の他の成分が添加された液状の含硫黄ポリマー組成物が金属表面に塗布され、その後、有機溶媒が蒸発されて、金属の表面が含硫黄ポリマーの被膜で被覆される。当該被膜は金属の腐食に対する高い腐食防止能力を有している。
【0023】
本発明の金属防食剤で被覆される金属は特定の金属に限定されない。当該金属の具体例は、銅、アルミニウム、鉄、チタン、これらの合金、これらの金属に各種めっきが施された材料等である。
【0024】
以下に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されない。合成された含硫黄ポリマーの分析方法は以下のとおりである。
【0025】
(1)
1H NMR分析
約5mgの試料が800μL重水素化クロロホルムに溶解され、フーリエ変換核磁気共鳴測定装置(日本電子(株)製JNM-ECA)により、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いて、
1H NMRスペクトルが測定された。
【0026】
(2)FT−IR測定
ダイヤモンドATRアクセサリーDurasamp 1 IR II[(株)エス・ティ・ジャパン]を付属品として使用し、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所(株)IR Prestige-21)を使用して、全反射吸収分光法(FT-IR-ATR)による測定を行った。
【0027】
含硫黄ポリマー製造例1
S
8(石津製薬(株)製)0.9958質量部と1−ウンデセン(東京化成工業(株)製)0.6013g(S
8と1−ウンデセンのモル比はほぼ1:1)が175℃で3時間攪拌された。その後、反応生成物が室温になるまで放置され、テトラヒドロフラン(THF)(ナカライテスク(株)製)が冷却された反応生成物に加えられ、THF可溶部が濾過により分離された。THFがTHF可溶部から除去され、固化された含硫黄ポリマーSUD(1.0)が回収された。1−ウンデセン及びSUD(1.0)が試料とされ、
1H NMR分析及びFT−IR分析が行われた。
1H NMRスペクトル、FT−IRスペクトルが、それぞれ、
図1、
図2に示されている。
【0028】
含硫黄ポリマー製造例2
S
80.9958質量部に代えて0.4992質量部を使用する(S
8と1−ウンデセンのモル比はほぼ1:2)以外、上記製造例1と同様にして固化された含硫黄ポリマーSUD(0.5)が回収された。1−ウンデセン及びSUD(0.5)が試料とされ、
1H NMR分析及びFT−IR分析が行われた。FT−IRスペクトル、
1H NMRスペクトルが、それぞれ、
図2、
図3に示されている。
【0029】
図1及び
図2より、1−ウンデセンの二重結合に帰属するピーク(
図1及び
図2の矢印aで示される範囲)が、SUD(1.0)のスペクトルから消失し、C−S結合に由来するピーク(
図1及び
図2の矢印bで示される範囲)が現れていることが分かる。したがって、SUD(1.0)が、上記式(I)のRがn−ノニル基である含硫黄ポリマーであることが分かる。
【0030】
図2及び3より、1−ウンデセンの二重結合に帰属するピーク(
図2及び
図3の矢印aで示される範囲)が、SUD(0.5)のスペクトルから消失し、C−S結合に由来するピーク(
図2及び
図3の矢印bで示される範囲)が現れていることが分かる。したがって、SUD(0.5)が、上記式(I)のRがn−ノニル基である含硫黄ポリマーであることが分かる。
【0031】
銅板の前処理
銅板を1cm×1cmに切断し、研磨紙(#2000)で研磨した後、研磨された銅板をイオン交換水で3回洗浄した。さらに、研磨された銅板を脱脂のためメタノール(和光純薬工業(株)製)で3回洗浄し、イオン交換水で洗浄後、自然乾燥させて使用した。
【0032】
含硫黄ポリマーで被覆されない銅板の作製
前処理した銅板を10mlのTHFに、室温下、24時間浸漬し、THFで3回洗浄した後、室温で自然乾燥させ、未修飾銅板を作製した。
【0033】
SUD(0.5)で被覆された銅板の作製1
1mgのSUD(0.5)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、30分浸漬する処理を行った後、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させ、銅板(SUD(0.5)−1−30min)を作製した。
【0034】
SUD(0.5)で被覆された銅板の作製2
5mgのSUD(0.5)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、0.5時間浸漬する処理を行った後、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させ、銅板(SUD(0.5)−5−0.5H)を作製した。
【0035】
X線光電子分光法(XPS)による銅板表面の分析
X線光電子分光システム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製k-Alpha)を用い、各銅板の表面を調べた。測定条件を表1に示す。Narrow ScanのStart energyとEnd energyを表2に示す。
【0038】
測定結果を
図4A及び
図4Bに示す。硫黄は、未修飾銅板の表面に存在しないが、SUD(0.5)−1−30min及びSUD(0.5)−5−0.5Hの表面に存在することが確認された。
【0039】
銅電極の前処理
直径3mmの銅電極(ビーエーエス(株)製)を粒子径1μmのダイヤモンド研磨液で研磨した後、更に0.5μmのアルミナ粉末を用いて研磨し、その後、研磨された銅電極をイオン交換水で3回洗浄した。さらに、研磨された銅電極を脱脂のためメタノール(和光純薬工業(株)製)で3回洗浄し、イオン交換水で洗浄後、自然乾燥させて使用した。
【0040】
含硫黄ポリマーで被覆されない銅電極の作製
前処理した銅電極を10mlのTHFに、室温下、24時間浸漬し、THFで3回洗浄した後、室温で自然乾燥させ、未修飾銅電極を作製した。
【0041】
SUD(0.5)で被覆された銅電極の作製1
1mgのSUD(0.5)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、0.5時間、1時間、24時間浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUD(0.5)−1−0.5H、SUD(0.5)−1−1H、SUD(0.5)−1−24Hと表記する。
【0042】
SUD(0.5)で被覆された銅電極の作製2
5mgのSUD(0.5)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、10分、30分、60分浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUD(0.5)−5−10min、SUD(0.5)−5−30min、SUD(0.5)−5−60minと表記する。
【0043】
SUD(1.0)で被覆された銅電極の作製
5mgのSUD(1.0)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、10分、20分、30分浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUD(1.0)−5−10min、SUD(1.0)−5−20min、SUD(1.0)−5−30minと表記する。
【0044】
銅電極の定電位分極測定
デジタルマルチメーターを接続したポテンショスタット(北斗電工(株)製HA−103)を用い、白金線(直径0.5mm、長さ5.7cm)を対極、Ag/AgCl(3M−NaCl)電極を参照極にそれぞれ用いて、各銅電極の定電位分極を測定した。測定に用いた電解液は、室温で30分間、酸素を通気した0.5M硫酸ナトリウム水溶液を用いた。未修飾銅電極、SUD(0.5)で被覆された銅電極又はSUD(1.0)で被覆された銅電極を作用極とした。
電気化学セルを組み立てた後、ポテンショスタットを用いて、自然電位(レストポテンシャル)を測定した。次に、ポデンショスタットの電位設定ダイヤルを、自然電位より10mV卑な電位にセットした。カソード分極測定を行った後、アノード分極測定を実施した。この電位における保持時間を1分間とし、1分間保持後の電流値を定常値として記録した。次に、ポテンショスタットを最初に設定した電位から、10mV更に卑な電位として、定電位分極を行った。自然電位から約−400 mVまでカソード分極を行った。ここまで分極した後、ポテンショスタットを自然電位測定状態に戻し、自然電位を測定した。次に測定した電位より10mV貴な電位として、上記カソード分極測定と同様にして定常電流値を求めた。約−150mVまでアノード分極を行った。得られた分極曲線から、腐食電流密度(i
cor)を算出し、未修飾銅電極における腐食電流密度(i
0cor)を用いて、防食率P(%)を以下の計算式(1)に従って算出し、各修飾被膜の銅防食能を比較した。
P(%)=100×(1−i
cor/i
0cor) (1)
【0045】
未修飾銅電極、SUD(0.5)−1−0.5Hで被覆された銅電極、SUD(0.5)−5−30minで被覆された銅電極のそれぞれの分極曲線を
図5に示す。未修飾銅電極を使用したときのカソード側電流密度>SUD(0.5)−1−0.5Hで被覆された銅電極を使用したときのカソード側電流密度>SUD(0.5)−5−30minで被覆された銅電極を使用したときのカソード側電流密度となり、銅電極に形成されたSUD(0.5)の被膜がカソード反応を抑制することが分かった。また、未修飾銅電極を使用したときのアノード側電流密度とSUD(0.5)で被覆された銅電極を使用したときのアノード側電流密度に大きな差はなく、銅電極に形成されたSUD(0.5)の被膜がアノード反応を抑制しないことが分かった。
【0046】
SUDで被覆された各銅電極の防食率を表3に示す。SUD(0.5)−5で被覆された銅電極の防食率は、SUD(0.5)−1で被覆された銅電極の防食率より高かった。また、SUD(0.5)−5で被覆された銅電極の防食率は、SUD(1.0)−5で被覆された銅電極の防食率より高かった。SUD(0.5)の硫黄原子の数に対する炭素鎖の比率は、SUD(1.0)の硫黄原子の数に対する炭素鎖の比率より高い。したがって、硫黄原子の数に対する炭素鎖の比率が高いほど、より緻密な被膜が銅表面に形成され、防食率が高くなると推認された。
【0048】
含硫黄ポリマー製造例3
S
8(石津製薬(株)製)0.4913質量部と10−ウンデセン酸(関東化学(株)製)0.3611質量部(S
8と10−ウンデセン酸のモル比はほぼ1:1)が175℃で3時間攪拌された。その後、反応生成物が室温になるまで放置され、THFが冷却された反応生成物に加えられ、THF可溶部が濾過により分離された。THFがTHF可溶部から除去され、固化された含硫黄ポリマーSUDA(1.0)が回収された。10−ウンデセン酸及びSUDA(1.0)が試料とされ、
1H NMR分析及びFT−IR分析が行われた。
1H NMRスペクトル、FT−IRスペクトルが、それぞれ、
図6、
図7に示されている。
【0049】
含硫黄ポリマー製造例4
S
8(石津製薬(株)製)0.2500質量部と10−ウンデセン酸(関東化学(株)製)0.3611質量部(S
8と10−ウンデセン酸のモル比はほぼ1:2)が175℃で3時間攪拌された。その後、反応生成物が室温になるまで放置され、THFが冷却された反応生成物に加えられ、THF可溶部が濾過により分離された。THFがTHF可溶部から除去され、固化された含硫黄ポリマーSUDA(0.5)が回収された。10−ウンデセン酸及びSUDA(0.5)が試料とされ、
1H NMR分析及びFT−IR分析が行われた。
1H NMRスペクトル、FT−IRスペクトルが、それぞれ、
図8、
図9に示されている。
【0050】
SUDA(1.0)で被覆された銅電極の作製1
5mgのSUDA(1.0)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に上記前処理を行った銅電極を、10分、20分、30分浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUDA(1.0)−5−10min、SUDA(1.0)−5−20min、SUDA(1.0)−5−30minと表記する。
【0051】
SUDA(1.0)で被覆された銅電極の作製2
1mgのSUDA(1.0)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に前処理を行った銅電極を、30分、1時間浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUDA(1.0)−1−0.5H、SUDA(1.0)−1−1Hと表記する。
【0052】
SUDA(0.5)で被覆された銅電極の作製
5mgのSUDA(0.5)を10mlのTHFに溶解させた溶液を調製し、この溶液に上記前処理を行った銅電極を、20分、30分浸漬する処理を行い、各電極は、THFで3回洗浄し、室温で自然乾燥させた。以下、それぞれの浸漬時間の電極をSUDA(0.5)−5−20min、SUDA(0.5)−5−30minと表記する。
【0053】
SUDAで被覆された各銅電極を使用して分極曲線を作成し、SUDAで被覆された各銅電極の防食率を上記計算式(1)に従って算出した。結果を表4に示す。