特許第6984871号(P6984871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984871
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】リバスチグミン経皮吸収型貼付製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20211213BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20211213BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20211213BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A61K31/27
   A61K9/70
   A61K47/32
   A61P43/00 111
   A61P25/28
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-164218(P2017-164218)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-38794(P2019-38794A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000929
【氏名又は名称】祐徳薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 愛子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰洋
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0336253(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/128562(WO,A1)
【文献】 特開2004−083523(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0265158(US,A1)
【文献】 特開2006−248996(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034939(WO,A1)
【文献】 特開2016−069287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 43/00
A61P 25/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、粘着層および剥離ライナーを含む経皮吸収型貼付製剤であって、当該粘着層が、DURO−TAK(登録商標)87−2516中に、リバスチグミンと、オイドラギット(登録商標)EPOとを配合したものであって、粘着層中のDURO−TAK(登録商標)87−2516の含有量が35〜86質量%、リバスチグミンの含有量が12〜30質量%、オイドラギット(登録商標)EPOの含有量が1〜40質量%であることを特徴とするリバスチグミン含有経皮吸収型貼付製剤(但し、粘着剤基剤中に有機酸を含有するものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバスチグミン経皮吸収型貼付製剤に関し、更に詳細には、有効成分の揮発と、コールドフローを抑制することのできるリバスチグミン経皮吸収型貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リバスチグミン(Rivastigmine)は、可逆的かつ強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であり、アルツハイマー型認知症などに対して優れた治療効果(症状の進行抑制や軽減等を含む)を有する薬物である。これまでに、リバスチグミンを有効成分として含有する製剤が開発されてきており、例えば、日本ではリバスチグミンを含有する経皮吸収型貼付製剤として「イクセロン(登録商標)パッチ」や「リバスタッチ(登録商標)パッチ」(以下、先発品)が製造販売されている。
【0003】
これら先発品の膏体は粘性的性質を有していることから、コールドフローと呼ばれる現象が問題となっている。コールドフローする製剤は皮膚に貼付した際に糊残り(ダークリング)が生じやすくなる。先発品においても、患者に貼付した後、剥離の際に糊残りが形成されることがわかっており、規定している以上の薬物が投与されることも考えられ、好ましくない副作用を発現する等の問題が生じる可能性がある
【0004】
一方で、リバスチグミンは常温で液体であることから、製造中あるいは保存中にリバスチグミンの揮発が起きる可能性がある。そしてリバスチグミンの揮発が起きることを想定すると、製剤中のリバスチグミン含量の減少が想定され、治療に十分な有効性を得られない可能性があるため、製造時に予想減量分を増量して仕込むことが必要となり、コストの増加が避けられず、また場合によっては規定以上のリバスチグミンが投与されることもある。
【0005】
上記した製造過程でのリバスチグミンの揮発による損失は、特許文献1に記載されているように、リバスチグミンを有効成分とした貼付製剤の膏体層に揮発抑制剤を配合することで抑制することができる。しかしながら、リバスチグミンの揮発を抑制できる十分量の揮発抑制剤を配合した場合、これを配合する膏体層から治療に十分な接着性が損なわれてしまい、剥がれ捲れが発生することや、コールドフローのリスクが高まることから、患者の治療満足度を低下させる。以上のことから、リバスチグミンの揮発を抑制し、かつコールドフロー抑制にも優れたリバスチグミン経皮吸収型貼付製剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/087768A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、有効成分としてリバスチグミンを含有する経皮吸収型貼付製剤であって、リバスチグミンの揮発を抑制し、かつコールドフローを抑制した経皮吸収型貼付製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべくリバスチグミンを含む貼付剤組成に関し鋭意研究を行っていたところ、特定の粘着剤基剤中にアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを配合することで、リバスチグミンの揮発を抑制できると共に粘着層のコールドフローも抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、支持体、粘着層および剥離ライナーを含む経皮吸収型貼付製剤であって、当該粘着層が、カルボキシル基を官能基として有するアクリル系ポリマーを実質的に含まない粘着剤基剤中に、リバスチグミンと、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとを配合したものであることを特徴とするリバスチグミン含有経皮吸収型貼付製剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、リバスチグミンの揮発を抑制し、コールドフローを抑制することが出来るものであり、糊残りの低減や、薬剤の過剰配合が必要ないため、治療効果の安定性を高めることのできるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリバスチグミン含有経皮吸収型貼付製剤は、支持体、リバスチグミンを含有する粘着層および剥離ライナーをこの順で含む経皮吸収型貼付製剤であり、そのリバスチグミンを含有する粘着層は、官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系ポリマーを実質的に含まない粘着剤基剤中に、リバスチグミンと、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEとを配合し構成されたものである。なお、本発明において、経皮吸収型貼付製剤とは主に医療用の粘着貼付製剤として使用されるもので、皮膚上に貼付され、有効成分であるリバスチグミンの治療有効量を、皮膚を通して血流中に移行させるものを意味する。
【0012】
本発明のリバスチグミン含有経皮吸収型貼付製剤(以下、「本発明貼付製剤」という)の有効成分であるリバスチグミンは、その一般名が(3−[(1S)−1−(ジメチルアミノ)エチル]フェニル N−エチル−N−メチルカルバメート)である。このものは、前記のように強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害薬であり、アルツハイマー型認知症などに対して優れた治療効果を有するものであり、本発明におけるリバスチグミンとしては、そのフリー体(遊離塩基形)であっても、その製薬上許容できる塩(酸付加塩形)であっても使用することができ、中でもリバスチグミンのフリー体が好ましく用いられる。
【0013】
本発明貼付製剤での粘着層中のリバスチグミンの含有量は、治療有効量であれば良いが、例えばアルツハイマー型認知症の治療に用いる場合は、有効量のリバスチグミンを患者へ長時間持続的に経皮投与させるため、所定の量のリバスチグミンを粘着層中に含有させることが好ましい。
【0014】
このリバスチグミンの含有量としては、粘着層構成成分中、1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは12〜30質量%である。リバスチグミンの含有量が、1質量%より少ないと十分治療効果が発揮できない場合があり、また50質量%より多いと、粘着剤層構成成分中の粘着成分の含有量が相対的に少なくなり、十分な皮膚粘着性が得られず、さらに経済的にも不利となる場合がある。
【0015】
また、粘着層に配合されるアミノアルキルメタクリレートコポリマーEは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体であり、オイドラギッドEPO、オイドラギッドE100などとして市販され、保護コーティング、マスキング、防湿等の用途に使用されているものである。
【0016】
本発明貼付製剤の粘着層中でのアミノアルキルメタクリレートコポリマーEの含有量は、粘着物性やリバスチグミン揮発防止の観点から、粘着層構成成分中、1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0017】
一方、本発明で使用する粘着剤基剤は、官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系ポリマーを実質的に含まないものである。
【0018】
このような粘着剤基剤としては、例えば、アクリル系の粘着成分(官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系ポリマーを除く)、ゴム系の粘着成分、シリコーン系の粘着成分等を含むものが挙げられ、これらの中でも、アクリル系の粘着成分を含むものが好ましい。ここで、アクリル系粘着成分とは、(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも一種含有する重合体または共重合体であって、モノマー構成単位中の側鎖に官能基を有さないものや官能基を有するものが含まれる。
【0019】
このうち、官能基を有さないアクリル系粘着成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸 2−エチルヘキシル・メタクリル酸 2−エチルヘキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体等が挙げられる。
【0020】
また、それらを配合した粘着剤の市販品としては、市販のDURO−TAK(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケルジャパン製)、GELVA(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(モンサント社製)、SKダインマトリダーム(綜研化学社製)、MASシリーズ(コスメディ製薬製)等が挙げられ、このうち、DURO−TAK(登録商標)87−9301、87−608A、87−4098、MAS683及びMAS811が好適に使用される。
【0021】
また、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマー以外の、官能基を有するアクリル系ポリマー(以下、「カルボキシ不含アクリルポリマー」ということがある)としては、官能基としてヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基等を有するアクリル系ポリマーが挙げられるが、この中でも、熱安定性やリバスチグミンの皮膚への吸収性の点でヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーを主に含有するアクリル系粘着剤が好ましい。
【0022】
ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーは、モノマー構成単位中の側鎖に遊離ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一種を構成モノマーとする重合体または共重合体であり、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含む重合体や、その共重合体等が例示される。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸 2−ヒドロキシエチル、アクリル酸 2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸 3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸 4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸 2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸 3−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸 4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。また、上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含む共重合体としては、具体的にはアクリル酸−2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・ビニルピロリドン・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・アクリル酸ヒドロキシルエチル・アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル・アクリル酸−2−ヒドロキシエチル・メタクリル酸グリシジル共重合体等が例示される。
【0024】
前記した、ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーを含有する粘着剤(ヒドロキシアクリル系粘着剤)の市販品としては、例えば、DURO−TAK(登録商標)アクリル粘着剤シリーズ(ヘンケルジャパン製)のヒドロキシル基含有タイプ(DURO−TAK(登録商標)87−2516、87−2525、87−2979、87−4287、87−2510、87−202A、87−502A、87−503A等)が挙げられ、本発明においてこれらを使用することができる。
【0025】
リバスチグミン含有粘着層でのヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーの含有量は、粘着物性の観点から、粘着層構成成分中25〜99質量%であることが好ましく、35〜86質量%であることがより好ましい。
【0026】
ところで、アクリル系の粘着成分としては、カルボキシル基を官能基として有するアクリル系ポリマーが良く知られているが、本発明においては、粘着層構成成分中にこのようなポリマーを配合することは不適切であり、仮に配合されたとしても、実質的に配合されていないと評価される量、例えば、粘着剤層構成成分中、1質量%以下とする必要がある。この理由は、製剤の安定性と吸収性の問題からである。すなわち、カルボキシル基を有するポリマー(例えばDURO−TAK(登録商標)87−2052(アクリル酸・酢酸ビニル共重合体)、DURO−TAK(登録商標) 87−235A(アクリル酸))を使用した製剤では、分解物が増加し、また皮膚からの吸収性が悪いためである。
【0027】
なお、粘着剤組成物中にどのような官能基があるかは、例えば、次の方法で調べることができる。すなわち、官能基としてカルボキシル基及びヒドロキシル基を有する粘着剤組成物は、JIS−K0070(1992)に規定する電位差滴定法により測定することによってそれぞれ確認することができる(参考;特許第5922818号等)。
【0028】
更に本発明貼付製剤の粘着層には、適宜必要に応じて、本発明の効果を損なわない限り、経皮吸収促進剤、可塑剤、架橋剤などの追加の成分を配合することができる。このうち、経皮吸収促進剤としては、従来経皮投与での吸収促進作用が認められている化合物のいずれでも使用できるが、その例として、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアンカノールアミン、ラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、グリセリンオレイン酸モノエステル、イソステアリン酸ヘキシルデシルなどの脂肪酸およびそのエステル類、オレイルアルコール、プロピレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなどのアルコールおよびそのエステル類もしくはエーテル類、セスキオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル類またはエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのフェノールエーテル類、ヒマシ油または硬化ヒマシ油、オレオイルサルコシン、ラウリンジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリル硫酸ナトリウムなどのイオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジメチルラウリルアミンオキサイドなどの非イオン性界面活性剤、ジメチルスルホキサイド、デシルメチルスルホキサイドなどのアルキルメチルスルホキサイド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、1−ゲラニルアザシクロヘプタン−2−オンなどのアザシクロアルカン類、メントール、カンフル、リモネンなどのテルペン類、クロタミトン等が挙げられる。
【0029】
上記経皮吸収促進剤を粘着層に配合する場合の配合量は、粘着層構成成分中、0.1〜45質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは1〜15質量%の範囲である。経皮吸収促進剤の配合量が、0.1質量%未満では、皮膚透過促進効果が認められない場合があり、45質量%を超えると、経皮吸収促進剤に由来する皮膚刺激が発症し易くなると共に、製剤の物性が低下し、べたつき感が発生する場合がある。
【0030】
また配合可能な可塑剤としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族プロセスオイルなどの石油系オイル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、リノール酸イソプロピルなどの液状脂肪酸エステル類、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油などの植物系オイル、液状ポリイソブチレン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム、グリセリン、クロロブタノール、酢酸ビニル樹脂、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、D−ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピロリドン類、フィトステロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80(登録商標)、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
【0031】
更に、架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属または金属化合物などの無機系架橋剤等が挙げられる。
【0032】
以上のようにして得られる、本発明貼付製剤の粘着層の貯蔵弾性率は、2700Pa以上が好ましく、より好ましくは2700〜1.0×1010Paの範囲である。2500Pa未満では膏体がコールドフローする可能性が高く、1.0×1010Paを超えると、皮膚にぬれず、剥がれ捲れが増大する可能性が高くなる。
【0033】
本発明の貼付製剤で使用され、粘着剤層を保持する支持体としては、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性のものを使用するのが好ましい。支持体を構成する材質や形態としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂から形成されるフィルム、シート、これらの積層体、多孔質体、発泡体、織布、不織布や、植物繊維から形成される紙材等が挙げられる。また、支持体の厚みとしては12〜60μmが好ましく、12〜40μmがより好ましい。
【0034】
また、本発明の貼付製剤は、使用時まで粘着層を保護する目的で、その上に剥離ライナーを設けることが好ましい。剥離ライナーは、薬物不透過性の剥離ライナーであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子材料で作られたフィルムや、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙の上にシリコーンオイル等を塗布したものなどが挙げられる。なかでも、有効成分や酸素の透過がなく、加工性や低コストなどの点でポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。さらに、剥離ライナーは、複数の材料を貼り合せたラミネートフィルム等を使用しても良い。
【0035】
次に本発明の貼付製剤の製造は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。好ましい製造方法としては、例えば、リバスチグミン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEおよびカルボキシル基を官能基として有するアクリル系ポリマーを実質的に含まない粘着剤基剤と、必要に応じて経皮吸収促剤等の粘着剤層形成成分とをトルエン、メタノール、ヘキサン、酢酸エチルまたはその混合溶媒の有機溶媒に溶解させ、この溶解物を剥離ライナーまたは支持体上に展延し、溶解物中の溶媒を蒸発させ粘着層を形成した後、支持体または剥離ライナーを貼り合わせることによって貼付製剤を得る方法や、上記粘着剤層形成成分を加熱溶解させ、この溶融物を剥離ライナーまたは支持体上に展延し、薬物含有層を形成した後、支持体または剥離ライナーを貼り合わせることによって貼付製剤を得る方法などが挙げられる。
【0036】
本発明貼付製剤は、支持体、リバスチグミンを含有する粘着層および剥離ライナーからなるマトリックス型の貼付製剤である。このようなマトリックスタイプの貼付製剤は、製剤設計が容易であり、またリバスチグミンを含有する粘着層以外の感圧接着剤層等を有するリザーバー型の貼付製剤のような複雑な構成ではないため、貼付製剤製造時のコストを低減することができる。なお、必要に応じ、有効成分であるリバスチグミンの経皮吸収をコントロールするために、薬物含有層の皮膚貼付側に、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル等を圧着し、これらを放出制御膜等として追加することもできる。
【0037】
かくして得られる本発明貼付製剤は、使用するまで包装材料中に保存される包装体の形態として提供することが好ましい。包装材料は、リバスチグミン由来の分解物の生成を抑制することを考慮して、水蒸気や酸素、紫外線などの侵入を遮断できるものが好ましい。このような材料としては、アクリロニトリルメチルアクリレートコポリマー、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ヒートシールPET、アルミニウム箔等の金属箔;エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、金属(アルミニウム等)積層プラスチックフィルム、金属蒸着プラスチックフィルム、セラミックス(酸化ケイ素等)蒸着プラスチックフィルム等の酸素透過性の低いフィルム;ステンレス等の金属;ガラスが挙げられる。これらの中でも、酸素等の透過度が低いことや製造コスト等を考慮して、金属箔、金属積層プラスチックフィルム、金属蒸着プラスチックフィルム等を使用することが好ましい。
【0038】
また、本発明貼付製剤が包装材料中に保存されるにあたっては、密封状態とされることが好ましい。この密封状態は、リバスチグミン由来の分解物の生成を抑制することを考慮して、低酸素状態とすることが好ましい。具体的には、包装材料内の空気を除去して密封する方法(真空パックのような状態)、包装材料内の空気を不活性ガス、例えば窒素ガスやアルゴンガス等に置換して密封する方法が挙げられる。
【0039】
さらに、上記低酸素状態とする方法として、酸素吸着能力を有する物質を本発明貼付製剤と同封する方法または酸素吸着能力を有する物質を含む包装材料を使用する方法等が挙げられ、該方法を単独で、または上記方法と組み合わせて使用しても良い。
【0040】
上記の酸素吸着能力を有する物質としては、鉄粉、亜鉛粉、ハイドロサルファイト等を主剤とする無機系の脱酸素剤や、アスコルビン酸系、多価アルコール系、活性炭系等の有機系の脱酸素剤が挙げられ、例えば、ファーマキープ(三菱ガス化学(株)製)、エージレス(三菱ガス化学(株)製)、StabilOx(Multisorb社製)、ウェルパック((株)タイセイ製)、エバーフレッシュ((株)鳥繁産業製)、オキシーター(上野製薬(株)製)、キービット(ドレンシー(株)製)、ケプロン((株)ケプロン製)、サンソカット(アイリス・ファインプロダクツ(株)製)、サンソレス((株)博洋製)、セキュール(ニッソー樹脂(株)製)、タモツ(大江化学工業(株)製)、バイタロン((株)常盤産業製)、モデュラン(日本化薬フードテクノ(株)製)、ワンダーキープ(パウダーテック(株)製)、鮮度保持剤C(凸版印刷(株)製)などの市販のものを使用しても良い。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【0042】
実 施 例 1
<リバスチグミン経皮吸収型貼付製剤の製造−1>
(1)本発明製剤1、3、5、7、比較製剤1、3:
表1の組成に従って、リバスチグミン、アクリル系粘着剤、揮発抑制剤、経皮吸収促進剤、可塑剤を酢酸エチルに加えて攪拌混合し、均一な溶解物を得た。なお、酢酸エチルは、リバスチグミンとアクリル系粘着剤の総量に対して1.5倍量用いた。次に、この溶解物を、ドクターナイフ塗工機を用いて剥離フィルム(シリコーン処理を施したPETフィルム)に展延し、25℃環境下での温風乾燥を40分間実施し溶媒を留去して、厚さが100μmのリバスチグミン含有粘着層を形成した。このリバスチグミン含有粘着層に、支持体を貼り合わせ、5cm2に裁断して本発明製剤1、3、5、7及び比較製剤1、3の経皮吸収型貼付製剤を製造した。
【0043】
(2)本発明製剤2、4、6、8、比較製剤2、4:
実施例1(1)の温風乾燥の温度を60℃に変更する以外は、同様にして本発明製剤2、4、6、8及び比較製剤2、4の製造を行った。
【0044】
【表1】
【0045】
実 施 例 2
<リバスチグミン含量の定量>
本発明製剤1〜8及び比較製剤1〜4の経皮吸収型貼付製剤、各1枚の剥離シートを剥がして、50mLの遠心沈殿管に入れ、これにテトラヒドロフラン8mL及び2mLの内標準溶液を加え、20分間振とうした。この液に水/メタノール(2:1、v/v)10mLを加え、20分間振とうした。
【0046】
この上澄液を移動相と任意の割合で希釈し、高速液体クロマトグラフィーで定量した。高速液体クロマトグラフィーの操作は、カラムがXbridge shiled C18 RP(3.5 μm 、3.0 mm×10 cm;日本ウォ―ターズ株式会社製)、検出波長が215nmであり、移動相は水/りん酸(10000:1、v/v)(移動相A)および液体クロマトグラフィー用アセトニトリル(移動相B)を用い、移動相の送液は移動相Aおよび移動相Bを任意の条件で混合させ濃度勾配制御させて行った。
【0047】
各経皮吸収型貼付製剤のリバスチグミンの含量を測定すると共に、理論含量より5%低下した場合に増量仕込みによるコストの増加や、長期保存による規格からの逸脱の懸念があることから、理論含量より5%未満低下した製剤を○、理論含量より5%以上低下した製剤を×として評価した。この結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
実 施 例 3
< 指タック試験 >
本発明製剤1、3、5、7及び比較製剤1の剥離ライナーを剥離し、粘着剤層を指で触った際の粘着剤層の接着性をパネラーが評価した。指に接着した製剤を○、指に接着しなかった製剤を×とした。各経皮吸収型貼付製剤の指タック試験結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
実 施 例 4
<リバスチグミン経皮吸収型貼付製剤の製造−2>
表4の組成に従って、本発明製剤1と同様の方法により、本発明製剤9、10、11、12及び比較製剤5、6の経皮吸収型貼付製剤を製造した。なお、表4中には、表1で示したものも再掲した。
【0052】
【表4】
【0053】
実 施 例 5
< コールドフロー評価 >
本発明製剤1、3、5、7、9〜12及び比較製剤1、5、6を直径13mmのポンチで打ち抜き、剥離ライナーを剥離した後、スライドガラスに貼り付けた。表面顕微鏡を用いて、撮像をした後、試験製剤の上にライナー、スライドガラス、分銅(1kg)をのせた後5時間静置した。
【0054】
分銅を除いた後,表面顕微鏡を用いて撮像をし、撮影した画像の画像解析を行い、コールドフローの面積を算出し、各経皮吸収型貼付製剤のコールドフロー率を比較した。
【0055】
先発品(イクセロンパッチ)と比べ、コールドフローが同等または低値だったものを○、先発品と比べコールドフローが高値であったものを×とした。各経皮吸収型貼付製剤のコールドフロー評価結果を表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
実 施 例 6
< 粘弾性測定 >
各試験製剤を8cm×4.5cmの大きさに裁断し、試験サンプルを調製した。2片の試験サンプルからそれぞれ片面のライナーを剥離し、膏体面同士を貼り合せてローラーで圧着した。各試験サンプルについてこの操作を繰り返し、それぞれ8cm×4.5cm、厚さ約0.5〜1mmの試料を調製した。
【0058】
試料を直径25mmの円形に皮ポンチで打ち抜き、片面のライナーを剥がし、25mmサイズの治具(パラレルプレート)に治具円盤の中心と試料の中心がずれないように注意して貼付、固定した。固定した試料からもう片面のライナーを剥離し、以下の条件で測定を行った。この結果を表6に示す。
【0059】
(測定条件)
測定モード:周波数依存性測定
測定周波数:0.07〜1.27Hz
測定温度: 32℃
【0060】
【表6】
【0061】
表6の結果から明らかな通り、本発明製剤1、3、5、7、9〜12の経皮吸収型貼付製剤の貯蔵弾性率は比較製剤1、5、6の経皮吸収型貼付製剤に比べて、高値であった。この結果と表5の結果より、コールドフローしない貯蔵弾性率の最小値は、約2700Paまたはそれ以上であることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の経皮吸収型貼付製剤は、揮発抑制剤を配合しながらもコールドフローを抑制することができるため、コストの削減に寄与し、かつ糊残りの低減が出来たものである。よって、本発明の経皮吸収型貼付製剤はリバスチグミンの薬理効果を有効に、かつ持続的に利用することが可能であり、特に、アルツハイマー型認知症などの治療に有用な製剤である。