(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
摩耗性物質と液体の混合したスラリー又は前記摩耗性物質の輸送に用いる輸送管であって、前記輸送管の内管の内部、又は前記内管の外周及び内部に、管軸周りの角度範囲に応じて複数の摩耗検知線を配置した構造を備え、複数の前記摩耗検知線を、担当する前記角度範囲では相対的に前記内管の内面に近い位置を通り、担当外の前記角度範囲では相対的に前記内管の前記内面から遠い位置又は前記内管の前記外周を通るように配置したことを特徴とする摩耗検知機能をもつ輸送管。
複数の前記摩耗検知線が配置された管軸周りの前記角度範囲に応じて、前記保護層又は前記補強層を複数の色に色分けして形成したことを特徴とする請求項5に記載の摩耗検知機能をもつ輸送管。
前記内管と前記摩耗検知線を多層に配置し、深さ方向への摩耗の進行を検出可能としたことを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の摩耗検知機能をもつ輸送管。
管軸周りに前記輸送管を回転させたときの回転角度を、前記輸送管を管軸周りに回転可能とする回転管継手に設けた回転角度把握手段により把握することを特徴とする請求項26に記載の輸送管の運用方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から3に記載の発明は、いずれも、ホース等のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を検知することはできない。従って、ホース等の内管の局所的摩耗による破損を避けた運用を行うことは困難である。
【0006】
そこで本発明は、摩耗性物質輸送用の輸送管に関し、輸送管の摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を検知する摩耗検知機能をもつ輸送管、輸送管の製造方法、摩耗検知方法、及び輸送管の運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載に対応した摩耗検知機能をもつ輸送管においては、摩耗性物質と液体の混合したスラリー又は摩耗性物質の輸送に用いる輸送管であって、輸送管の内管の内部、又は内管の外周及び内部に、管軸周りの角度範囲に応じて複数の摩耗検知線を配置した構造を備え
、複数の摩耗検知線を、担当する角度範囲では相対的に内管の内面に近い位置を通り、担当外の角度範囲では相対的に内管の内面から遠い位置又は内管の外周を通るように配置したことを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、輸送管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を摩耗検知線を用いて検知することができる。
また、摩耗検知線ごとに摩耗検知を担当する角度範囲の部分を明確に区分けすることができる。
【0008】
請求項2記載に対応した摩耗検知機能をもつ輸送管においては、摩耗性物質と液体の混合したスラリー又は摩耗性物質の輸送に用いる輸送管であって、輸送管の内管の内部、又は内管の外周及び内部に、管軸周りの角度範囲に応じて複数の摩耗検知線を配置した構造を備え、摩耗検知線が、導電塗膜で形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、輸送管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を、導電塗膜で形成された摩耗検知線を用いて検知することができる。
【0009】
請求項
3記載の本発明は、摩耗検知線を、螺旋状に巻回して配置したことを特徴とする。
請求項
3に記載の本発明によれば、曲率が大きい場所でも摩耗検知線が断線し難くなり、特に大きな曲がり部を有する可撓管に適用した場合に信頼性を高めることができる
。
【0010】
請求項4記載の本発明は、複数の摩耗検知線が結線される共通線を有したことを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、輸送管の一方の端部だけで導通検査を行うことができるため、作業効率が向上する。また、端部だけで導通検査を行う場合に、例えば複数の摩耗検知線のそれぞれに戻り線を設ける必要が無くなり、戻り線を共通線で共用化できる。
【0011】
請求項5記載の本発明は、内管の外側に保護層又は補強層を設けたことを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、摩耗検知線が内管の内面側からの摩耗以外で断線することをさらに防止できる。
【0012】
請求項6記載の本発明は、複数の摩耗検知線が配置された管軸周りの角度範囲に応じて、保護層又は補強層を複数の色に色分けして形成したことを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、色分けすることにより、摩耗検知線の破断(非導通)で検知された内管の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲を、輸送管の外側からでも対応色を視認することにより容易に特定可能となる。
【0013】
請求項7記載の本発明は、複数の摩耗検知線が、複数の色の色分けに対応した色の被覆を有したことを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、摩耗検知線の破断(非導通)で検知された内管の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲との対応づけが容易となる。
【0014】
請求項8記載の本発明は、内管と摩耗検知線を多層に配置し、深さ方向への摩耗の進行を検出可能としたことを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度(摩耗度)を検知することができる
。
【0015】
請求項
9記載の本発明は、導電塗膜の塗膜面が、内管の内面と略直交する方向に形成されていることを特徴とする。
請求項
9に記載の本発明によれば、内管の内面と略直交する方向への塗膜面の減少度合いに基づいて、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度を検知することができる。また、例えば塗膜面の幅を広く取ることにより、摩耗検知層を単層とした場合でも摩耗の深さ方向への進行度を検知することが可能となる。
【0016】
請求項
10記載に対応した輸送管の製造方法においては、棒状又は板状の内管材料に複数の摩耗検知線を配置し、内管材料と複数の摩耗検知線を巻回し、内管材料の隣接側面を順次接着していくことにより輸送管を完成することを特徴とする。
請求項
10に記載の本発明によれば、螺旋状に巻回された摩耗検知線を有する輸送管を効率良く成形することができる。
【0017】
請求項
11記載
に対応した輸送管の製造方法においては、
棒状又は板状の内管材料に複数の摩耗検知線を配置し、内管材料と複数の摩耗検知線を巻回し、内管材料の隣接側面を順次接着していくことにより輸送管を完成し、内管材料の側面に導電塗料を、管軸周りの角度範囲に応じて塗布して導電塗膜を形成したことを特徴とする。
請求項
11に記載の本発明によれば、摩耗検知線が導電塗料により形成された輸送管を効率よく成形することができる。また、内管材料の側面に導電塗料を各種の塗装方法や印刷等により予め塗布しておくことができるため、製造が容易となる。
【0018】
請求項
12記載に対応した摩耗検知方法においては、複数の摩耗検知線に電圧を印加し摩耗検知線の摩耗又は断線を電気的変化として検知することにより、摩耗のあった内管の管軸周りの角度範囲を特定することを特徴とする。
請求項
12に記載の本発明によれば、内管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を電気的変化により検知することができる。
【0019】
請求項
13記載
に対応した摩耗検知方法においては、
複数の摩耗検知線に電圧を印加し摩耗検知線の摩耗又は断線を電気的変化として検知することにより、摩耗のあった内管の管軸周りの角度範囲を特定するにあたり、導電塗膜の導通面積の減少による抵抗値の変化を検出して摩耗を検知することを特徴とする。
請求項
13に記載の本発明によれば、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度を検知することができる。また、摩耗の深さ方向への進行度と抵抗値変化の関係が比例的になり、検出が容易となる。
【0020】
請求項
14記載
に対応した摩耗検知方法においては、
複数の摩耗検知線に電圧を印加し摩耗検知線の摩耗又は断線を電気的変化として検知することにより、摩耗のあった内管の管軸周りの角度範囲を特定するにあたり、複数の摩耗検知線のうち角度範囲が隣り合う2本の摩耗検知線の同時、又は相次ぐ電気的変化を検知することにより、2つの角度範囲の境界領域が摩耗したことを検知することを特徴とする。
請求項
14に記載の本発明によれば、複数の摩耗検知線のうち破断した2本が担当する管軸周りの角度範囲の境界近傍が局所的に摩耗したことを検知することができる。
【0021】
請求項
15記載に対応した摩耗検知方法においては、輸送系統の摩耗の想定される箇所にのみ輸送管を用いたことを特徴とする。
請求項
15に記載の本発明によれば、内管の摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定すると共に、管軸方向の位置範囲を特定することができる。また、摩耗検知に用いる輸送管の総長も節約できる。
【0022】
請求項
16記載に対応した輸送管の運用方法は、管軸周りの特定した角度範囲を、角度範囲とは異なる角度範囲に移動させることを特徴とする。
請求項
16に記載の本発明によれば、内管が摩耗性物質の衝突により局所的な摩耗を受けるとしても、摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。よって、摩耗限界に達するまでの時間が大幅に長くなり、輸送管全体としての寿命を大きく延伸することができる。
【0023】
請求項
17記載の本発明は、異なる角度範囲に移動させるように、管軸周りに輸送管を回転させることを特徴とする。
請求項
17に記載の本発明によれば、管軸周りに輸送管を回転させて摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。
【0024】
請求項
18記載の本発明は、異なる角度範囲に移動させるように、輸送管を可撓性を持たせて構成し、輸送管に外力を加えて変形させることを特徴とする。
請求項
18に記載の本発明によれば、輸送管に外力を加えて変形させ摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。
【0025】
請求項
19記載の本発明は、外力は、浮力発生手段による浮力であることを特徴とする。
請求項
19に記載の本発明によれば、特に水中において、浮力により輸送管に外力を加えることが容易となる。
【0026】
請求項
20記載の本発明は、外力は、懸吊機、架台を含む機構手段による機構的外力であることを特徴とする。
請求項
20に記載の本発明によれば、機構的外力により輸送管に外力を加えることが容易となる。
【0027】
請求項
21記載の本発明は、異なる角度範囲の選定に当って、輸送管の移動履歴を考慮して選定することを特徴とする。
請求項
21に記載の本発明によれば、移動履歴を考慮することで移動先の角度範囲をさらに適切に設定して、輸送管全体としての寿命を大きく延伸することができる。
【0028】
請求項
22記載の本発明は、移動履歴を考慮して、輸送管の寿命を延伸する上で最も効果的な角度範囲に異なる角度範囲を設定することを特徴とする。
請求項
22に記載の本発明によれば、輸送管全体としての寿命をさらに大きく延伸することができる。
【0029】
請求項
23記載の本発明は、移動履歴を考慮しても異なる角度範囲の選定ができない場合は、元の角度範囲に留めることを特徴とする。
請求項
23に記載の本発明によれば、輸送管の不要な移動を防止することができる。
【0030】
請求項
24記載の本発明は、
輸送管の摩耗を分散させ摩耗検知線の摩耗又は断線が検知されるまでの時間を延伸させるために、所定の稼働時間が経過したら、所定の範囲だけ輸送管を移動させることを特徴とする。
請求項
24に記載の本発明によれば、摩耗を受けやすい角度範囲に位置する内管の部分を所定の稼働時間ごとに変えて、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に均一に分散させやすくなる。
【0031】
請求項
25記載の本発明は、
輸送管の摩耗を分散させ摩耗検知線の摩耗又は断線が検知されるまでの時間を延伸させるために、輸送管を常時、低速で移動させることを特徴とする。
請求項
25に記載の本発明によれば、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に均一に分散させやすくなる。
【0032】
請求項
26記載の本発明は、管軸周りに輸送管を回転させるに当り、電動機を含む駆動手段を用いて回転させることを特徴とする。
請求項
26に記載の本発明によれば、効率よく輸送管の回転作業を行うことができるとともに、自動化への展開が容易となる。
【0033】
請求項
27記載の本発明は、管軸周りに輸送管を回転させたときの回転角度を、管軸周りに輸送管を回転可能とする回転管継手に設けた回転角度把握手段により把握することを特徴とする。
請求項
27に記載の本発明によれば、輸送管の回転角度を把握しやすくなる。
【0034】
請求項
28記載の本発明は、輸送管の摩耗限界を判断し、輸送管の稼働を停止することを特徴とする。
請求項
28に記載の本発明によれば、大きなトラブルに至る前に稼働を停止し、検査や輸送管の交換等を行うことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の摩耗検知機能をもつ輸送管によれば、輸送管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を摩耗検知線を用いて検知することができる。
また、摩耗検知線ごとに摩耗検知を担当する角度範囲の部分を明確に区分けすることができる。
【0036】
また、本発明の摩耗検知機能をもつ輸送管によれば、摩耗検知線が、導電塗膜で形成されていることで、輸送管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を、導電塗膜で形成された摩耗検知線を用いて検知することができる。
【0037】
また、摩耗検知線を、螺旋状に巻回して配置した場合には、曲率が大きい場所でも摩耗検知線がさらに断線し難くなり、特に大きな曲がり部を有する可撓管に適用した場合に信頼性を高めることができる
。
【0038】
また、複数の摩耗検知線が結線される共通線を有した場合には、輸送管の一方の端部だけで導通検査を行うことができるため、作業効率が向上する。また、端部だけで導通検査を行う場合に、例えば複数の摩耗検知線のそれぞれに戻り線を設ける必要が無くなり、戻り線を共通線で共用化できる。
【0039】
また、内管の外側に保護層又は補強層を設けた場合には、摩耗検知線が内管の内面側からの摩耗以外で断線することをさらに防止できる。
【0040】
また、複数の摩耗検知線が配置された管軸周りの角度範囲に応じて、保護層又は補強層を複数の色に色分けして形成した場合には、色分けすることにより、摩耗検知線の破断(非導通)で検知された内管の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲を、輸送管の外側からでも対応色を視認することにより容易に特定可能となる。
【0041】
また、複数の摩耗検知線が、複数の色の色分けに対応した色の被覆を有した場合には、摩耗検知線の破断(非導通)で検知された内管の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲との対応づけが容易となる。
【0042】
また、内管と摩耗検知線を多層に配置し、深さ方向への摩耗の進行を検出可能とした場合には、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度(摩耗度)を検知することができる
。
【0043】
また、導電塗膜の塗膜面が、内管の内面と略直交する方向に形成されている場合には、内管の内面と略直交する方向への塗膜面の減少度合いに基づいて、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度を検知することができる。また、例えば塗膜面の幅を広く取ることにより、摩耗検知層を単層とした場合でも摩耗の深さ方向への進行度を検知することが可能となる。
【0044】
本発明の輸送管の製造方法によれば、螺旋状に巻回された摩耗検知線を有する輸送管を効率良く成形することができる。
【0045】
また、
本発明の輸送管の製造方法によれば、内管材料の側面に導電塗料を、管軸周りの角度範囲に応じて塗布して導電塗膜を形成した
ことで、摩耗検知線が導電塗料により形成された輸送管を効率よく成形することができる。また、内管材料の側面に導電塗料を各種の塗装方法や印刷等により予め塗布しておくことができるため、製造が容易となる。
【0046】
本発明の摩耗検知方法によれば、内管のうち摩耗が進行した部分の管軸周りの角度範囲を電気的変化により検知することができる。
【0047】
また、
本発明の摩耗検知方法によれば、導電塗膜の導通面積の減少による抵抗値の変化を検出して摩耗を検知する
ことで、内管に発生した摩耗の深さ方向への進行度を検知することができる。また、摩耗の深さ方向への進行度と抵抗値変化の関係が比例的になり、検出が容易となる。
【0048】
また、
本発明の摩耗検知方法によれば、複数の摩耗検知線のうち角度範囲が隣り合う2本の摩耗検知線の同時、又は相次ぐ電気的変化を検知することにより、2つの角度範囲の境界領域が摩耗したことを検知する
ことで、複数の摩耗検知線のうち破断した2本が担当する管軸周りの角度範囲の境界近傍が局所的に摩耗したことを検知することができる。
【0049】
また、
本発明の摩耗検知方法によれば、輸送系統の摩耗の想定される箇所にのみ輸送管を用いた
ことで、内管の摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定すると共に、管軸方向の位置範囲を特定することができる。また、摩耗検知に用いる輸送管の総長も節約できる。
【0050】
本発明の輸送管の運用方法によれば、内管が摩耗性物質の衝突により局所的な摩耗を受けるとしても、摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。よって、摩耗限界に達するまでの時間が大幅に長くなり、輸送管全体としての寿命を大きく延伸することができる。
【0051】
また、異なる角度範囲に移動させるように、管軸周りに輸送管を回転させる場合には、管軸周りに輸送管を回転させて摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。
【0052】
また、異なる角度範囲に移動させるように、輸送管を可撓性を持たせて構成し、輸送管に外力を加えて変形させる場合には、輸送管に外力を加えて変形させ摩耗が生じた部分を異なる角度範囲に移動させることで、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に分散させることができる。
【0053】
また、外力は、浮力発生手段による浮力である場合には、特に水中において、浮力により輸送管に外力を加えることが容易となる。
【0054】
また、外力は、懸吊機、架台を含む機構手段による機構的外力である場合には、機構的外力により輸送管に外力を加えることが容易となる。
【0055】
また、異なる角度範囲の選定に当って、輸送管の移動履歴を考慮して選定する場合には、移動履歴を考慮することで移動先の角度範囲をさらに適切に設定して、輸送管全体としての寿命を大きく延伸することができる。
【0056】
また、移動履歴を考慮して、輸送管の寿命を延伸する上で最も効果的な角度範囲に異なる角度範囲を設定する場合には、輸送管全体としての寿命をさらに大きく延伸することができる。
【0057】
また、移動履歴を考慮しても異なる角度範囲の選定ができない場合は、元の角度範囲に留める場合には、輸送管の不要な移動を防止することができる。
【0058】
また、
輸送管の摩耗を分散させ摩耗検知線の摩耗又は断線が検知されるまでの時間を延伸させるために、所定の稼働時間が経過したら、所定の範囲だけ輸送管を移動させる場合には、摩耗を受けやすい角度範囲に位置する内管の部分を所定の稼働時間ごとに変えて、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に均一に分散させやすくなる。
【0059】
また、
輸送管の摩耗を分散させ摩耗検知線の摩耗又は断線が検知されるまでの時間を延伸させるために、輸送管を常時、低速で移動させる場合には、内管に生ずる摩耗を管軸周りの各角度範囲に均一に分散させやすくなる。
【0060】
また、管軸周りに輸送管を回転させるに当り、電動機を含む駆動手段を用いて回転させる場合には、効率よく輸送管の回転作業を行うことができるとともに、自動化への展開が容易となる。
【0061】
また、管軸周りに輸送管を回転させたときの回転角度を、管軸周りに輸送管を回転可能とする回転管継手に設けた回転角度把握手段により把握する場合には、輸送管の回転角度を把握しやすくなる。
【0062】
また、輸送管の摩耗限界を判断し、輸送管の稼働を停止する場合には、大きなトラブルに至る前に稼働を停止し、検査や輸送管の交換等を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に、本発明の実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管、輸送管の製造方法、摩耗検知方法、及び輸送管の運用方法について説明する。
【0065】
まず、本実施形態による輸送管の運用方法について説明する。
図1は本実施形態による輸送管の第一実施例による運用方法のフローチャート、
図2は同輸送管の第二実施例による運用方法のフローチャート、
図3は同輸送管の第三実施例による運用方法のフローチャートである。また、
図24は輸送管の従来の運用方法のフローチャートである。
【0066】
図24は、輸送管の従来の運用方法のフローチャートである。
輸送管10の両端をそれぞれ継手20を介して配管1に接続し、稼働を開始する(ステップ100)。稼働開始すると、輸送管10の内管11にはスラリー又は摩耗性物質2が流れる。
ステップ100の後、輸送管10の稼働を継続する(ステップ200)。
ステップ200における稼働が一定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ300)。摩耗限界は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより判断する。
ステップ300において、内管11の摩耗が限界に達していないと判断した場合は、ステップ200に戻って稼働を継続する。
ステップ300において、内管11の摩耗が限界に達したと判断した場合は、輸送管10の稼働を停止し、輸送管10を交換する(ステップ400)。
【0067】
このように従来の運用方法では、輸送管10は、ステップ100において稼働が開始された後は、その状態のまま稼働が継続される。そのため、内管11の摩耗進行領域Xに位置する部分は常に同じであり、その部分の摩耗損傷が著しく進んで摩耗限界に達するため、輸送管10の寿命が短くなってしまう。
【0068】
これに対して
図1は、本実施形態による輸送管の運用方法の第一実施例を示すフローチャートである。
輸送管10の両端をそれぞれ継手20を介して配管1に接続し、稼働を開始する(ステップ1)。稼働開始すると、輸送管10の内管11にはスラリー又は摩耗性物質2が流れる。
ステップ1の後、輸送管10の稼働を継続する(ステップ2)。
ステップ2における稼働が所定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ3)。摩耗限界は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより判断する。
ステップ3において、内管11の摩耗が限界に達したと判断した場合は、輸送管10の稼働を停止し、輸送管10を交換する(ステップ4)。これにより、大きなトラブルに至ることを防止できる。
ステップ3において、内管11の摩耗が限界に達していないと判断した場合は、輸送管10が所定の稼働時間に達したか否かを判断する(ステップ5)。所定の稼働時間は、経験や予測等に基づいて予め設定する。
ステップ5において、輸送管10が所定の稼働時間に達していないと判断した場合は、ステップ2に戻って稼働を継続する。
ステップ5において、輸送管10が所定の稼働時間に達したと判断した場合は、輸送管10を管軸周りに所定の角度だけ回転させる(ステップ6)。所定の角度は、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分が、管軸周りの回転によって摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動するように、経験や予測等に基づいて予め設定する。ステップ6の後、ステップ2に戻って稼働を継続する。
【0069】
第一実施例による運用方法によれば、内管11のうち、摩耗進行領域Xに位置していた部分は、所定の稼働時間が経過した時点で管軸周りに輸送管10が回転することによって摩耗進行領域Xから外れ、それまで摩耗進行領域X以外に位置していた部分が新たに摩耗進行領域Xに位置して局所的摩耗を引き受けることになる。
このように、内管11が摩耗性物質2の衝突により局所的な摩耗を受けるとしても、内管11のうち摩耗進行領域Xに位置する部分をローテーションさせることで摩耗箇所が分散し、摩耗限界に達するまでの時間が大幅に長くなり、輸送管10全体としての寿命(稼働可能な時間)を大きく延伸することができる。
なお、第一実施例では、所定の稼働時間ごとに輸送管10を離散的に回転する方式としているが、電動機等の駆動手段(図示せず)を有する輸送管回転機構を設け、輸送管回転機構による回転速度を所定の稼働時間ごとに所定の角度分輸送管10が管軸周りに回転するように設定し、稼働中は輸送管10を常時、低速で回転させてもよい。稼働中は輸送管10を常に低速で回転させることにより、内管11に生ずる摩耗を管軸周りに均一に分散させやすくなる。また、駆動手段を有する輸送管回転機構を設けることで、効率よく輸送管10の回転作業を行うことができるとともに、自動化への展開が容易となる。
【0070】
なお、第一実施例による運用方法において、耐摩耗ホースのように輸送管10を可撓性を持たせて構成した場合には、ステップ6において、輸送管10を回転させることに代えて、輸送管10に外力を加えて輸送管10を変形させることにより、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分を摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動させることもできる。
【0071】
図2は、本実施形態による輸送管の運用方法の第二実施例を示すフローチャートである。
輸送管10の両端をそれぞれ継手20を介して配管1に接続し、稼働を開始する(ステップ11)。稼働開始すると、輸送管10の内管11にはスラリー又は摩耗性物質2が流れる。
ステップ11の後、輸送管10の稼働を継続する(ステップ12)。
ステップ12における稼働が所定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ13)。摩耗限界は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより判断する。
ステップ13において、内管11の摩耗が限界に達したと判断した場合は、輸送管10の稼働を停止し、輸送管10を交換する(ステップ14)。これにより、大きなトラブルに至ることを防止できる。
ステップ13において、内管11の摩耗が限界に達していないと判断した場合は、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かを判断する(ステップ15)。内管11の摩耗量は、測定器等によって測定する。所定の閾値は、経験や予測等に基づいて予め設定する。
ステップ15において、内管11の摩耗量が所定の閾値に達していないと判断した場合は、ステップ12に戻って稼働を継続する。
ステップ15において、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したと判断した場合は、摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定する(ステップ16)。角度範囲は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより特定する。
ステップ16で摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定した後、輸送管10を管軸周りに回転した場合に稼働を継続することが可能か否かを判断する(ステップ17)。この判断は、それまでの輸送管10の回転履歴(移動履歴)を考慮して行う。例えば、まだ一回も管軸周りに輸送管10を回転させていない場合は、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置していた部分は殆ど摩耗していないため、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することが可能と判断し、何回か管軸周りに輸送管10を回転させていて、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置している部分全ての摩耗量が所定の閾値に達したことを検知している場合は、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することは不可能と判断する。
ステップ17において、管軸周りに輸送管10を回転した場合に稼働を継続することが可能と判断した場合は、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの回転角度を選定する(ステップ18)。最も効果的な管軸周りの回転角度は、それまでの輸送管10の回転履歴を考慮して選定する。例えば、内管11のうち摩耗量が最も少ないか、摩耗進行領域Xに位置した回数が最も少ない場所が、回転後に摩耗進行領域Xに位置するように選定する。
ステップ18で輸送管10の最も効果的な管軸周りの回転角度を選定した後、輸送管10を選定した回転角度、回転させる(ステップ19)。これにより、ステップ16で特定した摩耗箇所の管軸周りの角度範囲が、その角度範囲とは異なる角度範囲に移動する。ステップ19の後、ステップ12に戻って稼働を継続する。
ステップ17において、管軸周りに輸送管10を回転した場合に稼働を継続することが不可能と判断した場合は、輸送管10を回転することなくステップ12に戻って稼働を継続する。このように回転履歴を考慮しても移動先となる異なる角度範囲の選定ができない場合は、内管11のうち摩耗進行領域Xに位置していた部分を元の角度範囲に留めることで、輸送管10の不要な回転を防止することができる。
なお、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断するステップ13と、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かを判断するステップ15は、まとめて行ってもよい。
【0072】
第二実施例による運用方法によれば、内管11のうち、摩耗性物質2の衝突により局所的に摩耗を受けて摩耗量が所定の閾値に達した部分の管軸周りの角度範囲が特定され、管軸周りに輸送管10を回転して稼働を継続することが可能な場合は、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの輸送管10の回転角度を選定して、所定の閾値に達した部分の管軸周りの角度範囲を異なる角度範囲に移動させる。
よって、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに位置していた部分以外の相対的に最も健全な部分が新たに摩耗進行領域Xに位置して局所的摩耗を引き受けることになるため、内管11の摩耗が局所的摩耗により限界に達するまでの時間が大幅に長くなり、輸送管10全体としての寿命を大きく延伸することができる。
【0073】
なお、第二実施例による運用方法において、耐摩耗ホースのように輸送管10を可撓性を持たせて構成した場合には、ステップ19において、輸送管10を回転させることに代えて、輸送管10に外力を加えて輸送管10を変形させることにより、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分を摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動させることもできる。
輸送管10に外力を加えて変形させる場合は、ステップ17において、輸送管10を管軸周りに回転した場合に稼働を継続することが可能か否かの判断に代えて、輸送管10に外力を加えて変形させた場合に稼働を継続することが可能か否かを判断する。この判断は、それまでの輸送管10に外力を加えた履歴(移動履歴)を考慮して行う。例えば、まだ一回も輸送管10に外力を加えて変形させていない場合は、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置していた部分は殆ど摩耗していないため、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することが可能と判断し、何回か輸送管10に外力を加えて変形させていて、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置している部分全ての摩耗量が所定の閾値に達したことを検知している場合は、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することは不可能と判断する。
また、輸送管10に外力を加えて変形させる場合は、ステップ18において、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの回転角度を選定することに代えて、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な変形後の状態を選定する。最も効果的な変形後の状態は、それまでの輸送管10に外力を加えた履歴を考慮して選定する。例えば、内管11のうち摩耗量が最も少ないか、摩耗進行領域Xに位置した回数が最も少ない場所が、外力による変形後に摩耗進行領域Xに位置するように選定する。
【0074】
図3は、本実施形態による輸送管の運用方法の第三実施例を示すフローチャートである。
輸送管10の両端をそれぞれ継手20を介して配管1に接続し、稼働を開始する(ステップ21)。稼働開始すると、輸送管10の内管11にはスラリー又は摩耗性物質2が流れる。
ステップ21の後、輸送管10の稼働を継続する(ステップ22)。
ステップ22における稼働が一定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ23)。摩耗限界は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより判断する。
ステップ23において、内管11の摩耗が限界に達したと判断した場合は、輸送管10の稼働を停止し、輸送管10を交換する(ステップ24)。これにより、大きなトラブルに至ることを防止できる。
ステップ23において、内管11の摩耗が限界に達していないと判断した場合は、輸送管10が所定の稼働時間に達したか否かを判断する(ステップ25)。所定の稼働時間は、経験や予測等に基づいて予め設定する。
ステップ25において、所定の稼働時間に達していないと判断した場合は、ステップ22に戻って稼働を継続する。
ステップ25において、所定の稼働時間に達したと判断した場合は、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かを判断する(ステップ26)。内管11の摩耗量は、測定器等によって測定する。所定の閾値は、経験や予測等に基づいて予め設定する。
ステップ26において、内管11の摩耗量が所定の閾値に達していないと判断した場合は、輸送管10を管軸周りに所定の角度だけ回転させる(ステップ27)。所定の角度は、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分が、管軸周りの回転によって摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動するように、経験や予測等に基づいて予め設定する。ステップ27の後、ステップ22に戻って稼働を継続する。
ステップ26において、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したと判断した場合は、摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定する(ステップ28)。角度範囲は、内管11について目視検査や導通試験等を実施することにより特定する。
ステップ28で摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定した後、輸送管10を管軸周りに回転した場合に稼働を継続することが可能か否かを判断する(ステップ29)。この判断は、それまでの輸送管10の回転履歴(移動履歴)を考慮して行う。例えば、まだ一回も管軸周りに輸送管10を回転させていない場合は、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置していた部分は殆ど摩耗していないため、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することが可能と判断し、何回か管軸周りに輸送管10を回転させていて、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置している部分全ての摩耗量が所定の閾値に達したことを検知している場合は、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することは不可能と判断する。
ステップ29において、管軸周りに輸送管10を回転した場合に稼働を継続することが可能と判断した場合は、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの回転角度を選定する(ステップ30)。最も効果的な管軸周りの回転角度は、それまでの輸送管10の回転履歴を考慮して選定する。例えば、内管11のうち摩耗量が最も少ないか、摩耗進行領域Xに位置した回数が最も少ない場所が、回転後に摩耗進行領域Xに位置するように選定する。
ステップ30で輸送管10の最も効果的な管軸周りの回転角度を選定した後、輸送管10を選定した回転角度、回転させる(ステップ31)。これにより、ステップ28で特定した摩耗箇所の管軸周りの角度範囲が、その角度範囲とは異なる角度範囲に移動する。ステップ31の後、ステップ22に戻って稼働を継続する。
ステップ29において、管軸周りに輸送管10を回転した場合に稼働を継続することが不可能と判断した場合は、輸送管10を回転することなくステップ22に戻って稼働を継続する。このように回転履歴を考慮しても移動先となる異なる角度範囲の選定ができない場合は、内管11のうち摩耗進行領域Xに位置していた部分を元の角度範囲に留めることで、輸送管10の不要な回転を防止することができる。
なお、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断するステップ23と、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かを判断するステップ26は、まとめて行ってもよい。
【0075】
第三実施例による運用方法によれば、内管11のうち、摩耗進行領域Xに位置していた部分は、所定の稼働時間が経過した時点で管軸周りに輸送管10が回転することによって摩耗進行領域Xから外れ、それまで摩耗進行領域X以外に位置していた部分が新たに摩耗進行領域Xに位置して局所的摩耗を引き受けることになる。また、内管11のうち、摩耗性物質2の衝突により局所的に摩耗を受けて摩耗量が所定の閾値に達した部分の管軸周りの角度範囲が特定され、管軸周りに輸送管10を回転して稼働を継続することが可能な場合は、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの輸送管10の回転角度を選定して、所定の閾値に達した部分の管軸周りの角度範囲を異なる角度範囲に移動させることにより、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに位置していた部分以外の相対的に最も健全な部分が新たに摩耗進行領域Xに位置して局所的摩耗を引き受けることになる。
したがって、内管11の摩耗が局所的摩耗により限界に達するまでの時間が大幅に長くなり、輸送管10全体としての寿命を大きく延伸することができる。
なお、第三実施例では、内管11の摩耗量が所定の閾値に達していない場合は所定の稼働時間ごとに輸送管10を離散的に回転する方式としているが、電動機等の駆動手段を有する輸送管回転機構を設け、輸送管回転機構による回転速度を所定の稼働時間ごとに所定の角度分輸送管10が管軸周りに回転するように設定し、稼働中は輸送管10を常時、低速で回転させてもよい。稼働中は輸送管10を常に低速で回転させることにより、内管11に生ずる摩耗を管軸周りに均一に分散させやすくなる。また、駆動手段を有する輸送管回転機構を設けることで、効率よく輸送管10の回転作業を行うことができるとともに、自動化への展開が容易となる。
【0076】
なお、第三実施例による運用方法において、耐摩耗ホースのように輸送管10を可撓性を持たせて構成した場合には、ステップ27及びステップ31において、輸送管10を回転させることに代えて、輸送管10に外力を加えて輸送管10を変形させることにより、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分を摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動させることもできる。
輸送管10に外力を加えて変形させる場合は、ステップ29において、輸送管10を管軸周りに回転した場合に稼働を継続することが可能か否かの判断に代えて、輸送管10に外力を加えて変形させた場合に稼働を継続することが可能か否かを判断する。この判断は、それまでの輸送管10に外力を加えた履歴(移動履歴)を考慮して行う。例えば、まだ一回も輸送管10に外力を加えて変形させていない場合は、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置していた部分は殆ど摩耗していないため、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することが可能と判断し、何回か輸送管10に外力を加えて変形させていて、内管11のうち摩耗進行領域X以外に位置している部分全ての摩耗量が所定の閾値に達したことを検知している場合は、それらの部分を摩耗進行領域Xに新たに位置させて稼働を継続することは不可能と判断する。
また、輸送管10に外力を加えて変形させる場合は、ステップ30において、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの回転角度を選定することに代えて、輸送管10の寿命を延伸する上で最も効果的な変形後の状態を選定する。最も効果的な変形後の状態は、それまでの輸送管10に外力を加えた履歴を考慮して選定する。例えば、内管11のうち摩耗量が最も少ないか、摩耗進行領域Xに位置した回数が最も少ない場所が、外力による変形後に摩耗進行領域Xに位置するように選定する。
なお、輸送管10を可撓性を持たせて構成し、回転させることと外力を加えることを組み合わせて異なる角度範囲に移動させることも可能である。
【0077】
図4は、上述した第一から第三実施例による輸送管の運用方法に用いることができる輸送管回転機構の一例を示す図であり、
図4(a)は曲がり部を有する輸送管を管軸周りに回転させる状態を示し、
図4(b)は曲がり部を有さない輸送管を管軸周りに回転させる状態を示している。輸送管回転機構は、輸送管10と、それを接続する配管1との間にボルト・ナット締結式のフランジ継手20を設け、接合するフランジのボルト穴を相対的に輸送管10の管軸周りに適宜ずらしてボルト・ナット締結することにより、輸送管10を管軸周りに(ボルト穴の角度間隔の整数倍分だけ)段階的に回転できるようにしたものであり、後述するスラリー循環式摩耗試験の第三実施による運用方法で用いた回転方法である。
本例の輸送管回転機構は、機構が簡素で安価である。殆どの場合、現行の配管設定のままで輸送管10の回転が実現できる。
なお、フランジ継手20は締結したままにしておき、フランジ付き金具と輸送管10との間の相対的角度位置を適宜ずらす方式にしてもよい。
【0078】
図5は、上述した第一から第三実施例による輸送管の運用方法に用いることができる輸送管回転機構の他の例を示している。輸送管回転機構は、輸送管10と、それを接続する配管1との間に回転管継手20を設け、輸送管10を管軸周りに自由に回転できるようにしたものである。
回転管継手20には、回転角度把握手段として、輸送管10の管軸周りの一定角度ごと(例えば30度ごと)にノッチを設けたり、回転角度を示す目盛を設けたりしておくと、回転作業時に輸送管10の回転角度を把握しやすくなる。
回転管継手20の輸送管10側フランジには、回転作業用の取っ手やハンドル30などを適宜設けておくと、テコの原理により輸送管10の回転が容易になる。輸送管10がホースのような可撓管で長い場合には、輸送管10の捩れを防止するため、
図5に示すように輸送管10の両端10a、10bを同時かつ同方向に回すことが望ましいが、輸送管10が鋼管のような高剛性管である場合や可撓管であっても短い場合には、輸送管10の一方の端部10a(又は他方の端部10b)のみを回すことにより輸送管10全体を回転させてもよい。
本例の輸送管回転機構によれば、配管系を稼働したまま輸送管10を回転することができるので、輸送管10の回転に要する手間を減らし作業時間を大幅に短縮できる。
【0079】
図6は、上述した第一から第三実施例による輸送管の運用方法に用いることができる輸送管回転機構のさらに他の例を示している。輸送管回転機構は、輸送管10と、それを接続する配管1との間に回転管継手20を設け、輸送管10を管軸周りに自由に回転できるようにした上、回転管継手20の輸送管側フランジを電動回転機構40によって任意の角度だけ回転できるようにしたものである。
摩耗検知情報の処理及び輸送管回転角度の決定や電動回転機構40の操作などは人間が手動で行ってもよいが、
図6に示すように専用の計測・制御装置50を設け、専用プログラムによるコンピューター制御とすることも可能である。コンピューター制御の場合、輸送管10からの摩耗検知情報と電動回転機構40からの輸送管回転角度情報が計測・制御装置50への入力となり、電動回転機構40への輸送管回転制御信号が計測・制御装置50からの出力となる。なお、本例では輸送管側フランジの回転に電動回転機構40を用いたが、油圧、水圧、空気圧、又は電磁気力等、任意の駆動力による回転機構を用いることもできる。
本例の輸送管回転機構によれば配管系を稼働したまま輸送管10を回転することができるので、輸送管10の回転に要する手間を減らし作業時間を大幅に短縮できる。また、輸送管10からの摩耗検知情報に基づいて的確な輸送管回転角度を割り出し、電動回転機構40により正確な輸送管回転制御を行うことができる。また、コンピューター制御による自動化が可能となる。
【0080】
図7は、上述した第一から第三実施例による輸送管の運用方法において、耐摩耗ホースのように輸送管を可撓性を持たせて構成した場合に用いることができる輸送管変形機構の一例を示している。
輸送管変形機構は、輸送管10の一方の端部10aと他方の端部10bとの中間部分に設けられた浮力発生手段60であり、外力としての浮力を輸送管10に加える。浮力発生手段60を用いることにより、特に水中にある輸送管10に外力を加えることが容易となる。なお、大気中にある輸送管10に浮力発生手段60を用いることもできる。
浮力発生手段60は、空気やガス等の気体の出し入れによって膨張及び収縮する膨縮部61を有する。なお、気体の出し入れは外部からのオン/オフ操作等により行う。
図7(a)に示すように、膨縮部61が内部に気体が充満しておらず収縮しているときには、輸送管10は、自重及び浮力発生手段60の重さによって垂れ下がった状態である。また、
図7(b)に示すように、気体を入れて膨縮部61を膨張させると、浮力発生手段60に浮力が発生し、浮力発生手段60の浮力が輸送管10に加わり、輸送管10の中間部分が持ち上げられた状態に変形する。
このように浮力発生手段60に作用する浮力を制御し、輸送管10に浮力を加えて変形させることで、輸送管10の中間部分の位置を上下反転させることができる。このとき輸送管10は、管軸周りに回転せず、
図7(a)に示す状態から
図7(b)に示す状態へ、又は
図7(b)に示す状態から
図7(a)に示す状態へと変形することにより、一方の端部10aと他方の端部10bとの間に形成された4カ所の曲がり部のうち、摩耗性物質2の衝突により局所的に著しい摩耗損傷を受けやすい曲がり外側部分が上下で入れ替わる。これにより、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分が摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動することになり、輸送管10を管軸周りに180度回転させた場合と同様の効果を得ることができる。
【0081】
なお、輸送管10の両端10a、10bの高さと中間部分の高さが同じとなるように、又は任意の高さとなるように浮力発生手段60の浮力を制御し、輸送管10に浮力を加えることで、曲がり部の曲率を緩やかにして内管11の摩耗を軽減させたり、内管11のうち、それまで摩耗進行領域Xに配置されていた部分を摩耗進行領域Xとは異なる角度範囲に移動させたりすることもできる。
また、輸送管変形機構は、浮力発生手段60に代えて、輸送管10の中間部分をワイヤー等の吊具を用いて牽引する懸吊機や、輸送管10の中間部分を載せて上下に動く架台等の機構手段を用いて構成することもできる。さらに、例えば輸送管10の中間部分を載せて動く架台を上下のみならず左右にも動くように構成し、架台を下→左→上→右の順に移動させれば、架台の動きに伴って輸送管10が変形し、中間部分の位置も下→左→上→右の順に変わるため、内管11のうち、摩耗進行領域Xに配置されている部分が順次移動し、輸送管10を管軸周りに90度ずつ回転した場合と同様の効果を得ることができる。
なお、輸送管10を可撓性を持たせて構成し、回転させることと外力を加えることを組み合わせて異なる角度範囲に移動させる場合には、例えば輸送管回転機構と輸送管変形機構を組み合わせて用いることができる。また、輸送管回転機構により可撓性を有した輸送管10を回転させることによる回転と、回転に伴う輸送管10の変形を利用して実現することもできる。
【0082】
次に、本実施形態による輸送管の運用方法を用いた実証試験について説明する。
本実施形態による輸送管の運用方法による寿命延伸効果を検証するため、輸送管の一種である耐摩耗ホースと模擬鉱石スラリーを用いたスラリー循環式摩耗試験を実施し、上記した従来の運用方法(比較例)と第三実施例による運用方法の比較検証を行った。
【0083】
摩耗試験に供した耐摩耗ホース10は、市販の工業用耐摩耗ホースであり、内径76mm、外径100mmである。耐摩耗ホース10の内管11は耐摩耗性ゴムであり、その外側には順次、補強繊維層、軟質PVC補強層及び螺旋状の硬質PVC補強材が設けられている。ここで、輸送管10の運用方法の比較検証を行うには、内管11の局所的摩耗が所定の閾値に達したかどうかを適宜検知する必要があるが、耐摩耗性ゴム製の内管11の局所的摩耗度を目視等、通常の方法により定量的に検知することは困難であるため、予め内管11の内側に鋼製の螺旋状ライナーを形成しておき、この螺旋状ライナーがスラリー中の模擬鉱石(摩耗性物質2)の衝突によって摩滅し破断した時点をもって「輸送管10の内管11の局所的摩耗が限界に達した時点」と判断し、同様にして螺旋状ライナーが破断した箇所をもって「輸送管10の内管11の局所的摩耗が限界に達した箇所」と判断した。
螺旋状ライナーの形成方法としては、まずSUS304鋼製のテープ(断面寸法:厚さ2mm×幅10mm)を外径70mmの鋼製パイプに適当な張力をかけた状態で螺旋状に巻き付け、そのまま張力を保ってテープがパイプに密着した状態で工業用耐摩耗ホース10の内管11に挿入した後、テープ端の張力を解放して螺旋を径方向に膨らませ、内管11に密着させて螺旋状ライナーを形成した。ここで、最終的な螺旋状ライナーのホース管軸方向の隙間は約2mmであった。ホース端からホース管軸方向に撮影した螺旋状ライナー付き耐摩耗ホース10の内部の概観写真を
図8に、工業用内視鏡を用いて撮影した螺旋状ライナーの近接写真を
図9にそれぞれ示す。
【0084】
図10は実証試験に用いたスラリー循環式摩耗試験装置の概観写真であり、
図10(a)は全体図、
図10(b)はホース摩耗試験部を拡大した図である。本装置は、水を満たしたタンク3の上部から模擬鉱石を一定量投入してスラリーとし、これをスラリー循環用ポンプ4で配管1内を循環させることにより、途中に接続した耐摩耗ホース10の摩耗試験を行うものである。なお、
図10の白塗矢印は、スラリー循環方向を示している。
図10に示すように、上流側の耐摩耗ホース(ライナーなし)1にフランジ付き金具(継手)20を介して螺旋状ライナー付き耐摩耗ホース10を連結してホース摩耗試験部αとした。実際の使用状況を考慮してホース摩耗試験部αには曲率を持たせており、ホース摩耗試験部αにおける耐摩耗ホース10の最小曲率半径は2.2mとした。なお、螺旋状ライナー付き耐摩耗ホース10を連結する際には、螺旋状ライナー端部を内管11と接続用のフランジ付き金具20の間に挟み、耐摩耗ホース10の外側から締め付け用器具で締め付けることにより螺旋状ライナー端部を固定した。また、摩耗試験部αの下流側には流量計5を設けている。
【0085】
図11は同実証試験に用いた模擬鉱石の概観写真である。
スラリー中の模擬鉱石には、ある程度粒径の揃った市販の砕石(生産品名:単粒度砕石S−20(5号)(茨城県笠間産)、岩質:硬質砂岩(堆積岩)、絶乾密度:2.65g/cm
3、平均粒径:約19mm)を用いた。
試験時の模擬鉱石投入量(1回分)は25kgとし、移送水は淡水を使用した。試験中、スラリーの模擬鉱石濃度は約5%(体積濃度)であった。
【0086】
なお、実証試験では、模擬鉱石の経時摩耗劣化を考慮して1回の連続試験時間を1時間とした。すなわち、新しい模擬鉱石を25kg投入して1時間連続試験を行った後は使用した模擬鉱石をすべて回収し、改めて新しい模擬鉱石を25kg投入してから次の連続試験を1時間行うこととし、このサイクルを所定の摩耗試験時間に達するまで繰り返した。
【0087】
まず、従来の運用方法(比較例)の試験結果について説明する。
螺旋状ライナー付き耐摩耗ホース10をホース摩耗試験部αに装着し、
図24に示すフローチャートに従って、耐摩耗ホース10の管軸周り角度を固定したままスラリー循環式摩耗試験を実施した。
図24に示すフローチャートでは、稼働が所定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ300)が、摩耗試験では、試験時間(稼働時間)が、10時間、16時間、18時間を経過したそれぞれの時点で、耐摩耗ホース10を取り外して内部観察を行い、螺旋状ライナーの状態を調べた。最終的に内管11の摩耗が限界に達したと判断された時点(本試験の場合は螺旋状ライナーの破断が確認された時点)で摩耗試験は終了とし、それまでの試験時間をもって耐摩耗ホース10の寿命と定義した。
図24に示すフローチャートに基づいた摩耗試験では、試験時間が18時間経過した時点で上流側のホース端から78.8cm下流側に離れた位置の鉛直下側(下面側)の螺旋状ライナーが破断した。工業用内視鏡による螺旋状ライナーの破断箇所の観察写真を
図11に示す。
【0088】
次に、第三実施例による運用方法の試験結果について説明する。
螺旋状ライナー付き耐摩耗ホース10をホース摩耗試験部αに装着し、
図3に示すフローチャートに従って、管軸周りに耐摩耗ホース10を適宜回転させながらスラリー循環式摩耗試験を実施した。
図3に示すフローチャートでは、稼働が所定の時間を経過した後、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断する(ステップ23)が、摩耗試験では、試験時間(稼働時間)が4時間を経過するごとに、耐摩耗ホース10を取り外して内部観察を行い、螺旋状ライナーの状態を調べた。また、それと同時に、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かの判断を行った(ステップ26)。すなわち本試験では、内管11の摩耗が限界に達したか否かを判断するステップ23と、内管11の摩耗量が所定の閾値に達したか否かを判断するステップ26を、まとめて実施した。
【0089】
第三実施例による運用方法の試験において、
図3に示すフローチャートのステップ27における、耐摩耗ホース10を管軸周りに「所定の角度」だけ回転させる方法としては、以下の方法を用いた。
1.
図13は耐摩耗ホースの管軸周りの角度位置を示す図である。配管1と耐摩耗ホース10との接続に使用しているフランジ付き金具(継手)20を上流側から眺め、
図13に示すように、耐摩耗ホース10の管軸周りのボルト穴の角度位置に応じて位置番号(1)〜(8)を振る。これらの位置番号は、耐摩耗ホース10の回転に伴って耐摩耗ホース10と一緒に回転するものとする。
2.スラリー循環式摩耗試験では、試験の開始時に耐摩耗ホース10は角度位置(1)が鉛直上側、角度位置(2)が鉛直下側となるように装着しておき、試験時間が4時間経過するごとに、角度位置が(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(1)、(2)、・・・の順で鉛直上側となるように耐摩耗ホース10を管軸周りに回転していく。
【0090】
なお、第三実施例による運用方法の試験においては、鉛直上側にくる角度位置が上記順序となる回転方法としたが、実際の運用では、摩耗箇所の管軸周りの角度範囲の大小や、摩耗箇所に関する経験的な知見等に基づいて、鉛直上側にくる角度位置の順序を、(1)→(2)→(3)→(4)の繰り返しとしたり、(1)→(2)→(1)→(2)、(1)→(3)→(2)→(4)、又は(1)→(5)→(3)→(7)→(2)→(6)→(4)→(8)というように一定の角度分ずつ回転させていったりと、耐摩耗ホース10の稼働状況や摩耗形態に応じて最適な回転方法を選択することが好ましい。
【0091】
第三実施例による運用方法の試験においては、
図3に示すフローチャートのステップ26及びステップ28として、試験時間が4時間経過するごとに耐摩耗ホース10を取り外して内部を観察し、局所的に螺旋状ライナーの摩耗や変形、浮きなどの異常が認められた場合には、耐摩耗ホース10を管軸周りに所定の角度だけ回転させるステップ27には移行せず、異常箇所を含む耐摩耗ホース10の管軸周りの角度範囲がなるべく鉛直下側の位置(模擬鉱石による摩耗が最も激しいと予測される摩耗進行領域X)から外れるように耐摩耗ホース10の管軸周りの回転が可能かどうかを判断し(ステップ29)、可能と判断した場合には、耐摩耗ホース10の寿命を延伸する上で最も効果的な管軸周りの回転角度を選定(ステップ30)した後、輸送管10を選定した回転角度分だけ回転させ(ステップ31)、ステップ22に戻って稼働を継続した。
他方、ステップ29において、管軸周りに耐摩耗ホース10を回転させた場合に試験の継続が不可能と判断した場合には、それ以上の耐摩耗ホース10の回転は行わず、そのままステップ22に戻って摩耗試験を継続することとした。最終的に、ステップ23において内管11の摩耗が限界に達したと判断された時点(本試験の場合は螺旋状ライナーの破断が確認された時点)で摩耗試験は終了とし、それまでの摩耗試験経過時間をもって耐摩耗ホース10の寿命と定義した。
【0092】
第三実施例による運用方法を用いた摩耗試験では、角度位置(7)を耐摩耗ホース10の鉛直上側とした試験が終了し、積算の試験時間が28時間となった時点における耐摩耗ホース10の内部観察で、角度位置(5)及び(6)を含む角度範囲の螺旋状ライナーの変形、浮きが認められたが、耐摩耗ホース10を管軸周りに回転させて稼働を継続することはまだ可能と判断し(ステップ29)、角度位置(8)を鉛直上側にするのが耐摩耗ホース10の寿命を延伸する上で最も効果的と判断し(ステップ30)、管軸周りに耐摩耗ホース10を回転してから試験を継続した(ステップ31)。その後、角度位置(8)を鉛直上側にした試験が終了し、積算の試験時間が32時間となった時点における耐摩耗ホース10の内部観察で、角度位置(5)及び(6)を含む角度範囲に加え、その他の角度範囲でも螺旋状ライナーの変形、浮きが認められたが、耐摩耗ホース10を管軸周りに回転させて稼働を継続することはまだ可能と判断し(ステップ29)、角度位置(1)を鉛直上側にするのが耐摩耗ホース10の寿命を延伸する上で最も効果的と判断し(ステップ30)、管軸周りに耐摩耗ホース10を回転してから試験を継続した(ステップ31)。その後、積算の試験時間が36時間となった時点で、上流側のホース端から76.2cm下流側に離れた位置の鉛直下側(角度位置(2)付近)で螺旋状ライナーが破断した。工業用内視鏡による螺旋状ライナーの破断箇所の観察写真を
図14に示す。
【0093】
上記した従来の運用方法(比較例)と第三実施例による運用方法の比較検証を行った。
表1に、スラリー循環式摩耗試験結果の比較を示す。耐摩耗ホース10を固定したまま回転させない輸送管の運用方法(
図24に示すフローチャート)に従って試験した比較例と、管軸周りに耐摩耗ホース10を適宜回転させる輸送管の運用方法(
図3に示すフローチャート)に従って試験した第三実施例とでは、螺旋状ライナーが破断するまでの摩耗試験時間は、比較例が18時間、第三実施例が36時間となり、第三実施例による輸送管の運用方法では、耐摩耗ホース10の寿命が比較例の2倍に延伸されることが判明した。
【表1】
【0094】
次に、本実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管、輸送管の製造方法、及び摩耗検知方法について説明する。本実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管、及び摩耗検知方法は、上記した本実施形態による輸送管の運用方法に用いることができる。
【0095】
図15は本実施形態による輸送管の内管に設けた摩耗検知線及び共通線の形状を示す図であり、
図15(a)は摩耗検知線及び共通線を管軸方向に見た図、
図15(b)は摩耗検知線及び共通線を斜め上方向から見た図、
図15(c)は摩耗検知線及び共通線を管軸直交方向に見た図、
図15(d)は摩耗検知線及び共通線を斜め横方向から見た図である。
図16は
図15を見やすくした参考図であり、
図16(a)は
図15(c)を管軸方向に伸ばした図、
図16(b)は
図15(d)を管軸方向に伸ばした図、
図16(c)は
図15(e)を管軸方向に伸ばした図である。
図17は同輸送管の内管に設けた摩耗検知線及び共通線の形状と内管を示す図であり、
図17(a)は摩耗検知線及び共通線の形状と内管を斜め横方向から見た図、
図17(b)は(a)の内管を透明化した図である。
図18は
図17を見やすくした参考図であり、
図18(a)は
図17(a)を管軸方向に伸ばした図、
図18(b)は
図17(b)を管軸方向に伸ばした図である。
図19は同輸送管の内管の成形方法を示す図である。
【0096】
本実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管10は、内管11の外周及び内部に、摩耗検知線A、B、C、D及び共通線(Common)Eが5条の螺旋状に巻回されている。摩耗検知線A〜D及び共通線Eは、金属等の電導体である。なお、摩耗検知線A〜D及び共通線Eは、導電塗膜で形成することもできる。
図15〜18では、摩耗検知線Aを「Line_A」、摩耗検知線Bを「Line_B」、摩耗検知線Cを「Line_C」、摩耗検知線Dを「Line_D」、共通線Eを「Common」と表示し、
図17〜18では、内管11を「Inner_pipe」と表示している。
摩耗検知線A〜D及び共通線Eを内管11に螺旋状に巻回して配置することで、輸送管10の曲率が大きい場所でも摩耗検知線A〜D及び共通線Eが断線し難くなり、特に大きな曲がり部を有する輸送管10に適用した場合に信頼性を高めることができる。
なお、螺旋状に巻回するのではなく、所定の角度範囲内で円周方向に往復を繰り返しながら管軸方向に延びる配置としてもよい。
【0097】
図15に示すように、摩耗検知線A〜Dは、管軸周りの角度範囲に応じて配置されている。各摩耗検知線A〜Dが内管11の内部を通る位置はそれぞれ異なり、管軸周りの角度範囲90度ごとに各摩耗検知線A〜Dが割り振られている。すなわち、摩耗検知線A〜Dは、担当する角度範囲では相対的に内管11の内面に近い位置(内部)を通り、担当外の角度範囲では内管11の外周を通るように配置されている。
このように摩耗検知線A〜Dを配置することで、摩耗検知線A〜Dごとに摩耗検知を担当する角度範囲の部分を明確に区分けすることができ、内管11に摩耗損傷が生じた場合に、摩耗損傷個所の管軸周りの角度範囲を特定することができる。なお、共通線Eは、内管11の外周のみに巻回されている。摩耗損傷個所の管軸周りの角度範囲の特定に当たっては、複数の摩耗検知線A〜Dと共通線Eに電圧を印加し摩耗検知線A〜Dの摩耗又は断線を電気的変化として検知する。この際、摩耗検知線A〜Dのいずれかが破断して導通が無くなったことの検知も、また摩耗検知線A〜Dのいずれかが摩耗して抵抗が変化したことの検知も、どちらとも可能である。
【0098】
内管11の両端のうち、他方の端部10bにおいて摩耗検知線A〜Dをすべて共通線Eに結線してある。よって、一方の端部10aにおいて各摩耗検知線A〜Dと共通線Eとの導通をそれぞれ検査することにより、各摩耗検知線A〜Dの破断の有無を検知することができる。すなわち、輸送管10のある位置において摩耗性物質2の衝突等により内管11が内側から摩耗し、その摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲において内管11の内部を通る摩耗検知線A〜Dのいずれかが破断すると、導通検査により破断した摩耗検知線A〜Dが特定され、内管11のうち摩耗が進行している管軸周りの角度範囲を特定することができる。
また、複数の摩耗検知線A〜Dが結線される共通線Eを有することで、輸送管10の一方の端部10aだけで導通検査を行うことができるため、作業効率が向上する。また、一方の端部10aだけで導通検査を行う場合に、例えば複数の摩耗検知線A〜Dのそれぞれに戻り線を設ける必要が無くなり、戻り線を共通線Eで共用化できる。
【0099】
また、共通線Eを内管11の外周に巻回しているため、共通線Eのみの導通を輸送管10の両端10a、10bで測定することにより、内管11の摩耗限界を検知することができる。すなわち、共通線Eが断線するほど深く内管11が摩耗した時点を、摩耗限界(使用不能)と判断することができる。
【0100】
なお、
図23(a)では局所的摩耗の発生が予想される箇所が複数あるが、管軸方向の局所的摩耗の発生が予想される箇所が一箇所に絞り込める場合には、摩耗検知線A〜Dのうち検知を担当する管軸周りの角度範囲が隣り合う2本(摩耗検知線Aと摩耗検知線B、摩耗検知線Bと摩耗検知線Cなど)が、同時もしくは相次いで破断した時点で、摩耗検知線A〜Dのうち破断した2本が担当する管軸周りの角度範囲の境界近傍が局所的に摩耗したことを検知することができる。
【0101】
また、本実施形態では、4本の摩耗検知線A〜Dが管軸周りの角度範囲90度ごとに摩耗検知を担当するようにしたが、摩耗検知線を内管11に配置する角度範囲及び本数は、輸送管10の用途や使用条件によって適宜選択することが望ましい。例えば、輸送管10の用途や使用条件に応じて、2本の摩耗検知線を用いて管軸周りの角度範囲180度ごとに検知を担当させたり、6本の摩耗検知線を用いて管軸周りの角度範囲60度ごとに検知を担当させたりする。
【0102】
また、本実施形態では共通線Eを設けて、輸送管10の一方の端部10aからだけで導通検査をできるようにしたが、摩耗検知線A〜Dの導通を輸送管10の両端10a、10bで計測する場合には共通線Eを省略してもよい。
【0103】
ここで、本実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管10の製造方法について説明する。
図19に示すように棒状又は板状の内管材料11Aを螺旋形に巻回して内管11を成形する場合は、
図17(a)に示すように1本の棒状又は板状の内管材料11Aに対して金属等の電導体からなる4本の摩耗検知線A〜D及び1本の共通線Eをあてがうように配置し、これらを一体として螺旋形に巻回し、内管材料11Aの隣接側面を順次接着していくことにより輸送管10が完成する。
本実施形態による製造方法によれば、効率良く5条螺旋の摩耗検知線A〜D及び共通線E付き内管11を有する輸送管10を製造することができる。なお、摩耗検知線が2本、共通線Eが1本の場合は、3条螺旋となる。
【0104】
また、摩耗検知線A〜D及び共通線Eを導電塗膜で形成する場合は、
図20に示すように、1本の棒状又は板状の内管材料11Aの側面に、導電塗料を摩耗検知範囲(担当する管軸周りの角度範囲)に応じて塗布位置を変えながら塗布することにより、摩耗検知線A〜D及び共通線Eを導電塗膜として形成し、導電塗膜の塗布された内管材料11Aを螺旋形に巻回し、内管材料11Aの隣接側面を順次接着していくことにより、輸送管10の内管11と摩耗検知線A〜D及び共通線Eを一括して成形することができる。なお、
図20では、図を見やすくするために、摩耗検知線C、D及びそれらを形成する内管材料11Aを省略している。なお、導電塗料の塗布は、内管材料11Aの側面に各種の塗装方法や印刷等により予め塗布しておくことも、内管材料11Aの巻回時に塗布することもできる。
さらに、
図20に示すように、導電塗膜の塗膜面が内管11の内面と略直交する方向に形成されるように、すなわち導電塗膜の塗膜面が内管11の深さ方向に所定の幅をもって形成されるように、導電塗料を塗布している。内管11が厚肉の場合には、摩耗検知範囲の摩耗が深さ方向に進行するにつれて導電塗膜の導通面積が次第に減じていくため、摩耗検知層を単層とした場合であっても、摩耗検知線A〜Dの抵抗値を連続的に測定して導電塗膜の導通面積の減少による抵抗値の変化を検出することにより、内管11に発生した摩耗検知範囲の摩耗の深さ方向への進行度(摩耗度)を定量的に把握することができる。また、摩耗の深さ方向への進行度と抵抗値変化の関係が比例的になり、検出が容易となる。
【0105】
また、内管11の外周に巻回した摩耗検知線A〜Dや共通線Eが破断すると内管11の摩耗を正しく検知できなくなるので、摩耗検知線A〜D及び共通線Eの外側には、適当な保護層または補強層を設けることが好ましい。
この場合、保護層または補強層の外面は、各摩耗検知線A〜Dの摩耗検知範囲(担当する管軸周りの角度範囲)と対応づけて色分けしておくことが好ましい。このように色分けすることにより、摩耗検知線A〜Dの破断(非導通)で検知された内管11の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲を、輸送管10の外側からでも対応色を視認することにより容易に特定可能となる。
さらに、摩耗検知線A〜Dや共通線Eは必ずしも被覆しておく必要は無いが、保護層又は補強層を設け、保護層又は補強層の外面に各摩耗検知線A〜Dの摩耗検知範囲と対応づけて色分けする場合は、摩耗検知線A〜Dの破断(非導通)で検知された内管11の摩耗位置を含む管軸周りの角度範囲との対応づけを容易にするため、保護層又は補強層外面の色分けと同じ色に被覆しておくことが好ましい。
【0106】
なお、本実施形態では、担当外の範囲にある摩耗検知線A〜D及び共通線Eを内管11の外周に巻回したが、担当外の範囲にある摩耗検知線A〜D及び共通線Eを担当内の範囲にある摩耗検知線A〜Dと相対的に内管11の内面から遠い位置、すなわち、内管11の外周ではなく外周から若干内側に入った位置に埋め込むように巻回することで、内管11の最外層を保護層又は補強層としてもよい。
【0107】
また、本実施形態では、
図15及び
図17に示す通り、内管11の外周及び内管11の内部に螺旋状に巻回された4本の摩耗検知線A〜Dと1本の共通線Eが、全体として一定の厚みを持った単層の摩耗検知層を形成しているが、これを2層、3層等、多層の摩耗検知層を形成するようにし、各層についてそれぞれ摩耗検知線A〜Dの導通を検査するようにすれば、内管11に発生した摩耗の深さ方向への進行度(摩耗度)を検知することができる。
なお、
図21では、2層の摩耗検知層を形成した場合を示している。
図21(a)は2層の摩耗検知層を管軸方向に見た図、
図21(b)は2層の摩耗検知層を斜め上方向から見た図である。
【0108】
また、本実施形態では、管軸周りの角度範囲に応じて摩耗検知線A〜Dを輸送管10の断面中心寄りの位置(深さ)に通すことで内管11の摩耗を検知しているが、摩耗検知線及A〜D及び共通線Eを輸送管10の最外層(保護層)の内側の層に設け、管軸周りの角度範囲に応じて摩耗検知線A〜Dを輸送管10の外周面寄りの位置に通すことで、外部の物体等と擦れ合う最外層の摩耗を検知することができる。
【0109】
図22は、本実施形態による摩耗検知機能をもつ輸送管の配置例を示す図である。
摩耗検知機能をもつ輸送管10Aは、必ずしも輸送管10の全長に亘って配置する必要はなく、
図22に斜線で示した部分のように輸送管10のなかでも曲率が大きい部分等、予め局所的な摩耗の進行が予想されるような部分にのみ配置することも可能である。
このように部分的に摩耗検知機能をもつ輸送管10Aを配置することにより、内管11の摩耗箇所の管軸周りの角度範囲を特定するのみならず、管軸方向の位置範囲を特定することができる。また、摩耗検知に用いる輸送管10Aの総長も節約できる。
なお、
図22に斜線で示した部分(摩耗検知機能をもつ輸送管10A)以外の輸送管10Bに、摩耗検知線A〜D等を配置しない通常の輸送管を用いた場合は、摩耗検知機能をもつ輸送管10Aの導通検査は各々の箇所について個別に行う。
また、
図22に斜線で示した部分(摩耗検知機能をもつ輸送管10A)以外の輸送管10Bに、摩耗検知線A〜Dを共通線Eと同じ深さに巻回した接続用輸送管を用いた場合は、接続用輸送管は内管11の摩耗検知機能はもたないが、連結された摩耗検知機能をもつ輸送管10Aの摩耗検知線A〜D及び共通線Eを接続する機能を有する。この場合、摩耗検知機能をもつ輸送管10Aの導通検査は輸送管全体に対して行うことができる。