(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984887
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】火炎検出装置を持ったボイラ
(51)【国際特許分類】
F23N 5/24 20060101AFI20211213BHJP
F23N 5/08 20060101ALI20211213BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
F23N5/24 113A
F23N5/08 C
F22B35/00 K
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-29382(P2018-29382)
(22)【出願日】2018年2月22日
(65)【公開番号】特開2019-143904(P2019-143904A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2021年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 享一
(72)【発明者】
【氏名】城迫 駿
【審査官】
長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−146177(JP,A)
【文献】
特開2016−114311(JP,A)
【文献】
特開2009−30907(JP,A)
【文献】
特開2016−11808(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1497213(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F23N 5/08
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置により火炎を燃焼させることによって缶体内のボイラ水を加熱して蒸気を発生する蒸気ボイラであって、前記燃焼装置による火炎を検出して火炎有無の判定を行う火炎検出装置を持ったボイラにおいて、
ボイラから排出される燃焼排ガスの温度を検出する排ガス温度検出装置と、ボイラから発生する蒸気の温度を監視する蒸気温度検出装置を設け、燃焼排ガス温度と蒸気温度を比較するようにしておき、
燃焼排ガス温度が蒸気温度を上回ったことを検出した後に、燃焼排ガス温度が蒸気温度を下回ったことを検出した場合、燃焼装置による燃焼を停止し、前記火炎検出装置での火炎検出が火炎有りから火炎無しへの変更が行われたか否かで火炎検出装置の適正性確認を行うことを特徴とする火炎検出装置を持ったボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎の有無を検出する火炎検出装置を持ったボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどの燃焼装置では、火炎検出装置を設置しておいて火炎の有無を確認しながら燃焼するようにしている。燃焼運転中に予期しない火炎の消失が発生したことを火炎検出装置で検出した場合、ボイラの運転制御装置は燃料供給を停止して燃焼を停止することが行われている。火炎の有無を検出する火炎検出装置は、火炎が発生する光の強さなどを抵抗値や電流値、パルス信号などの電気的な信号に変換し、信号値に応じて火炎の有無を判断するものが広く普及している。火炎検出装置では、火炎の有無を判定する判定値を設定しておき、検出した信号値が火炎有りの領域にあると火炎有りの判定、信号値が火炎無しの領域にあると火炎無しの判定を行うようにしている。
【0003】
火炎の有無を判断する判定値は、火炎が全くない状態と安定的に燃焼を継続している状態の途中に設定しておき、通常の燃焼を行っている場合の信号値は火炎有りの領域、火炎が消えている状態では火炎なしの領域となるようにしている。火炎無し時の信号値は小さく、火炎有り時の信号値は大きくなる場合、信号値は着火までは低い値となり、着火直後の火炎が小さい場合には信号値は高まるが通常燃焼時に比べると低い値から増大し、ある程度の時間が経過して火炎が安定して燃焼するようになると信号値も大きな値となる事になる。燃焼開始直後であって信号値が増大していく過程では、信号値は火炎無しの領域にあったものが、火炎の有りと無しを判定する判定値を通過し、火炎有りの領域へ入っていく。この判定値を通過するまでは火炎無しの判定を行い、判定値を通過した以降は火炎有りの判定を行う。
【0004】
火炎の有無を検出する火炎検出装置は、燃焼装置の異常を検出するためになくてはならないものであり、火炎検出装置自体に異常が発生していると燃焼装置の異常を検出することができなくなってしまう。そのため火炎検出装置自体の適正性を確認することが行われている。火炎検出装置での適正性の確認は、燃焼装置が燃焼を行っている時には火炎有りの出力を行い、燃焼装置が燃焼を停止している時には火炎無しの出力が行われていることを確認することによって行う。燃焼装置で動作と火炎検出装置での検出がずれなく行われていると、火炎検出装置は正常であると判定することができる。
【0005】
ただし、燃焼装置での連続燃焼時間が長時間となり、燃焼状態の変化が発生しない場合には、火炎検出装置が適正に作動しているのか、制御回路内で固着が発生しているなどによって火炎検出装置に異常が発生し、火炎無しの検出をすることができなくなった状態で火炎有りの出力を続けている状態であるのが判断できない。そのため、実用新案登録第208285号には、連続燃焼時間が長時間になった場合には燃焼を一時的に停止し、その際に火炎検出装置による検出状態を確認することが記載されている。1日24時間の連続運転を行うボイラでも、火炎検出装置の適正性確認のために定期的に運転を停止するようにしておくと、火炎検出装置の異常を検出することができる。この火炎検出装置の適正性確認のために行う燃焼停止は、短い間隔で行う方が火炎検出装置の異常をより早く検出することができて安全であるが、そのたびにボイラの燃焼を停止するとボイラの稼働率が低下することになり、蒸気供給に支障を来すことになったのでは都合が悪い。そのため、適正性確認のための燃焼停止は必要最小限に抑えながら安全性を向上させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2505285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、火炎検出装置の適正性確認を適切に行うことで、稼働率の低下を抑えながら安全性を向上させることのできる火炎検出装置を持ったボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
燃焼装置により火炎を燃焼させることによって缶体内のボイラ水を加熱して蒸気を発生する蒸気ボイラであって、前記燃焼装置による火炎を検出して火炎有無の判定を行う火炎検出装置を持ったボイラにおいて、ボイラから排出される燃焼排ガスの温度を検出する排ガス温度検出装置と、ボイラから発生する蒸気の温度を監視する蒸気温度検出装置を設け、燃焼排ガス温度と蒸気温度を比較するようにしておき、燃焼排ガス温度が蒸気温度を上回ったことを検出した後に、燃焼排ガス温度が蒸気温度を下回ったことを検出した場合、燃焼装置による燃焼を停止し、前記火炎検出装置での火炎検出が火炎有りから火炎無しへの変更が行われたか否かで火炎検出装置の適正性確認を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明を実施し、適切な時期に火炎検出装置の適正性確認を行うことで、ボイラの稼働率の低下を最小限に抑えつつ、火炎検出装置の異常を検出することができるため、安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の一実施例での燃焼排ガス温度と蒸気温度の変化を示したグラフ
【
図3】本発明の一実施例での火炎検出装置の適正性確認手順を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例でのボイラ全体のフロー図、
図2は本発明の一実施例での燃焼排ガス温度と蒸気温度の変化を示したグラフ
図3は本発明の一実施例での火炎検出装置の適正性確認手順を示したフローチャートである。
【0012】
図1のボイラ1は、中央に燃焼室、燃焼室の上部に燃焼装置2を設置しており、上部の燃焼装置2は中央部の燃焼室に向けて下向きに火炎3を発生させるようにしている。燃焼室は周囲を水管11で囲んだ円筒形の空間であり、燃焼室内で火炎3の燃焼を行うことで熱を発生し、発生した熱は燃焼室周囲の水管で吸収させるようにしている。燃焼装置2による燃焼には、燃料と燃焼用空気が必要であり、燃焼装置2への燃料供給の制御は燃料制御弁9を開閉することによって行い、燃焼装置2への燃焼用空気の供給は送風機10を作動することによって行う。
【0013】
燃焼室の周りを囲む水管は内外2重の環状に設置しており、燃焼ガスは内側水管を加熱した後に内側水管と外側水管の間に形成している燃焼ガス通路に入り、燃焼ガス通路を流れながら燃焼ガス通路に面している水管を加熱する。水管を加熱することで温度の低下した燃焼排ガスは、ボイラ側面に接続している排気通路12を通り、戸外へ排出される。
【0014】
ボイラの下部には給水配管13を接続しており、給水配管途中に設置している給水ポンプ14を作動することでボイラ内に水を供給する。水管は火炎3が発生した熱を吸収して水管内のボイラ水を加熱する。水管内でボイラ水に熱を与えることでボイラ水の温度は上昇し、水管内で沸騰して蒸気が発生する。発生した蒸気は、ボイラ上部に設置している気水分離器15で液体分を分離した後で上部から取り出す。
【0015】
燃焼装置2への燃料供給や燃焼用空気の供給、ボイラへの給水制御などは、運転制御装置6による自動制御で行う。運転制御装置6では、ボイラが供給している蒸気の圧力やボイラ内の水位に基づき、ボイラの運転を制御する。ボイラでは、供給している蒸気圧力が所定の圧力となるように燃焼量の制御を行う。燃焼量の制御は、単純なON−OFF制御や、高燃焼・低燃焼・停止のようにした段階制御、燃焼量を連続的に変更する比例制御等があるが、供給している蒸気圧力が制御範囲の上限値まで上昇すると燃焼を停止し、蒸気圧力が所定圧力より低くなると燃焼を開始する。
【0016】
燃焼装置2を設置しているボイラの上部には、燃焼室で火炎3の燃焼を行った際に発する光を検出する火炎検出装置4を設置している。火炎検出装置4は運転制御装置6内にある火炎検出装置制御回路5に接続しており、火炎検出装置制御回路5によって火炎の有無を判定する。ボイラから取り出した燃焼排ガスを通す排気通路12には、燃焼排ガスの温度を検出する排ガス温度検出装置7、ボイラ内の上部には、蒸気の温度を検出する蒸気温度検出装置8を設けておく。排ガス温度検出装置7で検出した燃焼排ガス温度と、蒸気温度検出装置8で検出した蒸気温度も火炎検出装置制御回路5へ出力するようにしておく。
【0017】
火炎検出装置制御回路5で判定した火炎有無の情報は、ボイラの運転を制御する運転制御装置6で利用する。運転制御装置6ではボイラ1の運転制御を行う際には火炎有無の情報を確認しつつ制御を行う。運転制御装置6では、燃焼途中に火炎が消えた場合には燃焼を停止する。燃焼の停止は燃料制御弁9を閉じ、燃焼装置2への燃料供給を停止することで行える。火炎検出装置4に異常が発生した場合には、火炎の消失を検出することができないため、火炎検出装置4の適正性を確認することも必要である。
【0018】
図2は燃焼排ガス温度と蒸気温度の変化を示しており、実線で表したものが燃焼排ガス温度、破線で表したものが蒸気温度である。図では燃焼を停止している状態から始まっており、燃焼停止中の時刻Aでは蒸気温度は90℃、燃焼外ガス温度は40℃となっている。
燃焼装置2による燃焼を開始すると、燃焼排ガス温度は急激に上昇した後、上昇速度は徐々に緩やかとなる。蒸気温度は燃焼排ガス温度の上昇開始から少し遅れて上昇し、蒸気温度の上昇幅は燃焼排ガスの上昇幅より小さくなっている。そのため燃焼開始前には蒸気温度より低かった燃焼排ガス温度は、燃焼を開始することで逆転して蒸気温度よりも高くなっており、燃焼中である時刻Bでは燃焼排ガス温度は110℃、蒸気温度は100℃となっている。燃焼開始時には火炎が安定するまでは最小の燃焼量とするため、燃焼排ガス温度は比較的低いものとなるが、蒸気温度よりは高くなる。
【0019】
その後、燃焼を継続していると燃焼排ガス温度と蒸気温度は緩やかに上昇し続けることになり、時刻Cの時点では燃焼排ガス温度は210℃、蒸気温度は170℃となる。この状態で火炎を消失させると、燃焼排ガス温度は急激に低下し、蒸気温度は緩やかに低下する。燃焼停止後の時刻Dの時点では、燃焼排ガス温度は140℃、蒸気温度は160℃となり、再び燃焼排ガス温度は蒸気温度より低くなっている。
【0020】
燃焼量を調節することのできる燃焼装置で燃焼を開始する場合、燃焼開始時は抑えた燃焼量で燃焼を開始し、火炎が安定した以降に燃焼量を増加することが行われており、またボイラでは燃焼を継続することで缶体の温度が上昇していくと、燃焼ガスから吸収する熱量が減少する。そのため時刻Bと時刻Cはどちらも燃焼中であるが、燃焼排ガスの温度は大きく異なっている。そして燃焼中である時刻Bと燃焼停止中である時刻Dを比較すると、燃焼を行って熱の発生を行っている時刻Bよりも燃焼を停止している時刻Dの方が燃焼排ガスの温度が高くなる逆転現象が現れている。そのため、燃焼排ガス温度だけでは燃焼中か燃焼停止中かの判断は行えないことになる。
【0021】
図3は火炎検出装置の適正性確認手順を示したフローチャートである。火炎検出装置の適正性確認は、燃焼排ガス温度が蒸気温度を上回った後であって、燃焼排ガスの温度が蒸気温度を下回った時に行う。フローチャートでは、最初のステップS1で燃焼排ガス温度と蒸気温度を比較する。燃焼排ガス温度が蒸気温度より高くない場合とは、燃焼を行っていない場合であり、その場合には火炎検出装置の適正性確認は行わない。燃焼排ガス温度が蒸気温度より高い場合とは、燃焼を行っている場合であり、その場合には次のステップS2に進む。
【0022】
図2に記載しているように、燃焼排ガスの温度を検出してもそれだけでは燃焼を行っているか否かを判断することはできない。しかし燃焼を行っている場合には燃焼排ガス温度が蒸気温度より高くなるため、燃焼排ガス温度と蒸気温度を比較し、燃焼排ガス温度が蒸気温度より高くなっていることを検出することにより、燃焼が行われていることを検出することができる。燃焼排ガス温度が蒸気温度より高くなったことが検出されると、燃焼が行われている状態であると判定できるが、センサの誤差や測定異常などによる誤判定を防止するため、燃焼排ガス温度が蒸気温度を5℃上回った状態で10秒間維持された時に燃焼状態であると判定するなど、余裕を見込んだ値に基づいて判定を行うことで燃焼状態であることの確度を高めることができる。
【0023】
次のステップS2では、再び燃焼排ガス温度と蒸気温度を比較するが、ここでは燃焼排ガス温度が蒸気温度より低くなるまで待機する。燃焼を行っている間は蒸気温度より燃焼排ガス温度の方が高い状態が維持され、火炎が消失すると燃焼排ガス温度は急激に低下して蒸気温度より低くなる。そのため、燃焼排ガス温度が蒸気温度を上回った後であって、燃焼排ガス温度が蒸気温度を下回った時とは、燃焼を行っていて火炎が消失した時と特定することができる。この場合も、燃焼排ガス温度が蒸気温度を5℃下回った状態で10秒間維持された時に火炎が消失した状態であると判定するなど、余裕を見込んだ値に基づいて判定を行うことでセンサの誤差や測定異常などによる誤判定を防止することができる。
【0024】
ステップS2で燃焼排ガス温度が蒸気温度より低くなると、次のステップS3に進む。ステップS3は燃焼停止動作を行うものであり、燃料制御弁9が開いている場合には燃料制御弁9を閉じることで燃焼を停止する。次のステップS4で火炎検出装置による検出結果が火炎無しとなっているか否かの検出を行う。ここで火炎無しの出力が行われている場合はステップS5に進み、火炎検出装置は正常であると判定する。しかし火炎有りから火炎無しへの変更が行われていない場合、ステップS6進む。ステップS6では火炎検出装置に異常が発生していると判定する。
【0025】
火炎検出装置の適正性判断をする際、燃焼排ガス温度が蒸気温度を上回ったことを検出した後であって、燃焼排ガス温度が蒸気温度を下回るタイミングで行うと、燃焼装置で燃焼を行っていたものが、その後に燃焼状態において火炎が消失したタイミングである可能性が高くなる。この時に燃焼装置2への燃料供給を停止する動作を行うことで、火炎検出装置での検出状態が火炎有りから火炎無しに変化した場合、火炎検出装置では正常に作動していると判断することができる。しかしこの時、火炎検出装置での検出が火炎無しに変化しなかった場合、燃焼の供給を停止すると火炎の燃焼は継続することができずに火炎は消失しているはずであるにもかかわらず、火炎検出装置では火炎有りの検出が続いているのであるから、火炎検出装置は異常であると判断することができる。
【0026】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 ボイラ
2 燃焼装置
3 火炎
4 火炎検出装置
5 火炎検出装置制御回路
6 運転制御装置
7 排ガス温度検出装置
8 蒸気温度検出装置
9 燃料制御弁
10 送風機
11 水管
12 排気通路
13 給水配管
14 給水ポンプ
15 気水分離器