(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超弾性を有する2本の細線が軸方向に沿って所定らせんピッチで所定ステント内径を有し、且つ、互いに接触状態を含み細線の線径の5倍以下の微小隙間で配置されている2本のらせん細線を1対として、
右巻らせん状に巻回しているN対の右巻らせん細線対と、
左巻らせん状に巻回しているN対の左巻らせん細線対と、
を含み、
右巻らせん細線対と左巻らせん細線対とが、所定編目隙間が生じるように、平織状に交差し、
右巻らせん細線は、斜面交差について左巻らせん細線の乗り越えと左巻らせん細線の潜り抜けを交互に繰り返し、
左巻らせん細線は、斜面交差について右巻らせん細線の乗り越えと右巻らせん細線の潜り抜けを交互に繰り返し、
ホース状体に編み上げられる、ステント。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下において、「超弾性金属」とは、ニチノールと呼ばれるニッケル−チタン合金、それに必要により銅、コバルト、クロム、鉄等を添加した合金、さらにはニッケル−アルミニウム合金、その他種々の金属であって、熱処理により、通常の金属に比べ5〜10倍の弾性範囲を有し、大きな変形を加えても元の形状に戻ることができる超弾性特性を付与されたものである。
【0022】
また、以下において、「ホース状体」の編み方は、各種の組み紐編みが用いられるが、得られたホース状体を長手方向に引張力を与えると、各金属細線が伸長して細く集束し、引張りを解除すると、元のホース状体に弾性復元できる編み方であればよい。
【0023】
以下に述べる材料、形状は例示であって、ステント、ステント前駆体製造装置、ステント製造方法の仕様に応じて適宜変更が可能である。また、編目隙間、細線の線径、ステント内径等の寸法、細線の本数やキャリアの個数等は、例示であって、ステントの仕様、特に、ステントがアシストする「コイルをガイドするマイクロカテーテル」の仕様に応じて、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
図1は、ステント10の側面図である。ステント10は、超弾性金属である形状記憶合金で構成される細線20,30を、右巻と左巻の2種類のらせん細線対22,32として、右巻と左巻とを互いに斜面交差させながら平織状とする組み紐編みでホース状体に編み上げたものである。2種類のらせん細線対22,32を区別する場合は、右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32と呼ぶ。
【0025】
細線20,30は、素材としての超弾性金属線材であり、超弾性金属としては、ニチノールを用い、細線20,30は、ニチノール細線である。細線20,30の線径d0は、約30μmである。これは例示であって、ニチノール細線以外の超弾性金属細線を用いることができ、その線径d0は、約30μm以外でもよく、例えば、約50μmであってもよい。細線20,30は同じものであるが、細線20は、右巻らせん細線対22を構成するニチノール細線で、細線30は左巻らせん細線対32を構成するニチノール細線として区別する。
【0026】
ステント10は、右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32が密接して編み上げられたものでなく、所定編目隙間40を形成しながら編み上げたものである。したがって、ホース状体の表側の外周面から見ると、所定編目隙間40を通して裏側の外周面における右巻らせん細線対32及び左巻らせん細線対32が見えるが、
図1では、ホース状体の表側の外周面における右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32のみを図示した。裏側の外周面の右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32の図示を省略した。
【0027】
図1にステント10の軸方向と径方向と周方向とを示す。軸方向は、ホース状体の中心軸A−Aの延伸する方向で、複数の右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32が互いに斜面交差しながら平織状に編み上げられる方向である。
図1では、紙面の右側が編み始め方向で、左側が編み進み方向である。径方向は、ホース状体の径方向である。周方向は、ホース状体の中心軸A−A周りの方向である。
【0028】
右巻らせん細線対22は、編み始め方向からホース状体を見て、ホース状体の中心軸A−A周りに、右回り(時計回り)に巻かれる。左巻らせん細線対32は、中心軸A−A周りに、左回り(反時計回り)に巻かれる。軸方向に垂直な断面上で数えると、ステント10の周方向の一周には、N対の右巻らせん細線対22と、N対の左巻らせん細線対32が巻かれる。以下では、ステント10の場合、N=6である。したがって6対の右巻らせん細線対22と6対の左巻らせん細線対32を繰り返し単位として、中心軸A−Aに沿って、編み始め方向から編み進み方向に向かって繰り返されて、所定ステント長さまで編まれる。右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32の繰り返し単位であるN=6を各要素の繰り返し単位として用いるので、以下では、特に断らない限り、N=6を、繰り返し単位Nと呼ぶ。
【0029】
6対の右巻らせん細線対22を区別して、編み進み方向から編み始め方向へ向かって順に、右巻らせん細線対22−1,22−2,22−3,22−4,22−5,22−6と呼ぶ。6対の左巻らせん細線対32を区別して、編み進み方向から編み始め方向へ向かって順に、左巻らせん細線対32−1,32−2,32−3,32−4,32−5,32−6と呼ぶ。これが軸方向に沿って所定ステント長さまで連続的に続く。
図1は、所定ステント長さまで編み上げたステント10の編み始め位置付近における右巻らせん細線対22−1,22−2と、左巻らせん細線対32−1,32−2の位置関係を示す。
【0030】
1対の右巻らせん細線対22は、互いに微小隙間S0で配置された2本の右巻らせん細線24で構成される。互いに微小隙間S0で配置された2本の右巻らせん細線24を区別する場合には、軸方向に沿って編み上げ側を右巻らせん細線24mと呼び、編み始め側を右巻らせん細線24sと呼ぶ。m,sは、mainとsubの意味である。
【0031】
N対の右巻らせん細線対22は、合計で2N本の右巻らせん細線24で構成される。2N本の右巻らせん細線24において、隣接する右巻らせん細線24の軸方向に沿った隙間は同じではない。
【0032】
図1の例では、2対の右巻らせん細線対22−1,22−2は、4本の右巻らせん細線24m−1,24s−1,24m−2,24s−2で構成される。右巻らせん細線対22−1は、右巻らせん細線24m−1,24s−1で構成され、右巻らせん細線対22−2は、右巻らせん細線24m−2,24s−2で構成される。
【0033】
1対の右巻らせん細線対22−1を構成して隣接する右巻らせん細線24m−1と右巻らせん細線24s−1の軸方向に沿った隙間は、微小隙間S0である。もう1対の右巻らせん細線対22−2を構成して隣接する右巻らせん細線24m−2と右巻らせん細線24s−2の軸方向に沿った隙間も、微小隙間S0である。右巻らせん細線24m−1と右巻らせん細線24m−2の隙間、または、右巻らせん細線24s−1と右巻らせん細線24s−2の隙間は、互いに隣接する右巻らせん細線対22−1,22−2の隙間で、所定隣接対隙間S1で離間する。
【0034】
所定隣接対隙間S1は、複数の右巻らせん細線24mの軸方向に沿った所定らせんピッチ、及び、複数の右巻らせん細線24sの軸方向に沿った所定らせんピッチに相当し、ステント前駆体製造装置50の作動条件で設定される。これに対し、微小隙間S0は、ステント10における所定編目隙間40をできるだけ大きくするために、同じ1対の右巻らせん細線対22を構成する2本の右巻らせん細線24m,24sの隙間を、たとえば、作業者の手修正整形によってできるだけ小さく設定する。微小隙間S0は、互いに接触状態を含んでもよく、接触しない場合でも細線の線径の5倍以下が望ましい。上の例では、細線の線径d0=約30μmであるので、例えば、右巻らせん細線24mと右巻らせん細線24sの軸方向に沿った微小隙間S0は、約150μm以下である。所定隣接対隙間S1は、所定らせんピッチであるので、微小隙間S0よりもかなり大きい。
【0035】
微小隙間S0と所定隣接対隙間S1を用いて、2対の右巻らせん細線対22−1,22−2を構成する4本の右巻らせん細線24m−1,24s−1,24m−2,24s−2において、互いに隣接する右巻らせん細線24の隙間を並べると、以下のようになる。
右巻らせん細線24m−1と右巻らせん細線24s−1の隙間=S0
右巻らせん細線24s−1と右巻らせん細線24m−2の隙間=(S1−S0)
右巻らせん細線24m−2と右巻らせん細線24s−2の隙間=S0
【0036】
同様に、2対の左巻らせん細線対32−1,32−2は、4本の左巻らせん細線34m−1、左巻らせん細線34s−1、左巻らせん細線34m−2、左巻らせん細線34s−2で構成される。左巻らせん細線対32−1は、左巻らせん細線34m−1,34s−1で構成され、左巻らせん細線対32−2は、左巻らせん細線34m−2,34s−2で構成される。1対の左巻らせん細線対32−1を構成する左巻らせん細線34m−1と左巻らせん細線34s−1の軸方向に沿った隙間は、右巻らせん細線対22の場合と同じ微小隙間S0である。左巻らせん細線34m−1と左巻らせん細線34m−2が互いに隣接する隙間、または、左巻らせん細線34s−1と左巻らせん細線34s−2が互いに隣接する隙間は、右巻らせん細線対22の場合と同じ所定隣接対隙間S1である。
【0037】
ステント10は、平織状に斜面交差して編み上げることで右巻らせん細線対22と左巻らせん細線対32によって形成される所定編目隙間40が、コイル塞栓術に用いられるマイクロカテーテル8の外径よりも大きく設定される。これにより、ステント10の所定ステント内径D0にコイルを誘導するマイクロカテーテル8を配置し、コイル塞栓術を施す血管瘤の近傍において、所定編目隙間40を介して、マイクロカテーテル8を血管瘤の内部に向けて挿入することが可能になる。この方法は、トランスセル法と呼ばれ、ステント10は、トランスセル法を可能にするコイルアシスト型のステント10である。
【0038】
微小隙間S0と所定隣接対隙間S1で説明すると、(S1−S0)がマイクロカテーテル8を通す大きさに設定される。ホース状体の編み上げ条件を適切に設定することで、所定編目隙間40の形状をほぼ正方形とできるので、所定編目隙間40の各辺の長さをaとすると、所定編目隙間40の対角線長は約1.4aとなり、これが(S1−S0)に相当する。所定編目隙間40にマイクロカテーテル8を通すには、マイクロカテーテル8の外径をbとして、{(S1−S0)/1.4}=a>bでなければならない。これは、(S1−S0)>(1.4×b)と書き換えられる。
【0039】
ステント、カテーテル関係でよく用いられる単位のフレンチ(Fr)は、1mm=3Frである。血管瘤のコイル塞栓術に用いられるコイルを案内するマイクロカテーテル8の外径としては、1.7Fr=0.56mm、2.1Fr=0.69mm、2.7Fr=0.89mmが用いられる。脳動脈瘤のコイル塞栓術に用いられるマイクロカテーテル8は、細い外径が適しているので、1.7Fr=0.56mmが用いられる。b=1.7Fr=0.56mmとすると、(1.4×b)=0.78mmとなり、(S1−S0)>0.78mmが条件となる。上記からS0は最大で約150μm=約0.15mmであるので、S1>0.63mmとなり、所定隣接対隙間S1は、微小隙間S0よりもかなり大きい。
【0040】
換言すれば、微小隙間S0をできるだけ狭くすることで、ステント10の所定編目隙間40の大きさを、所定隣接対隙間S1で離間している2本の右巻らせん細線24m及び2本の左巻らせん細線34mを斜面交差して構成される編目隙間にかなり近づけることができる。即ち、4本の右巻らせん細線24及び4本の左巻らせん細線34を斜面交差して構成されるステント10の所定編目隙間40の大きさは、2本の右巻らせん細線24m及び2本の左巻らせん細線34mを斜面交差して構成される編目隙間に近づく。
【0041】
これを、同じ大きさの編目隙間42を2本の右巻らせん細線24及び2本の左巻らせん細線34の合計4本のらせん細線24,34で囲んで構成するステント12(
図16参照)に比べると、血管内に配置されたステント10の血管壁拡張力は、ステント12の血管壁拡張力の約2倍になる。つまり、形状記憶合金であるステント10,12が血管内に留置された場合に、形状記憶しているステント外径に戻ろうとして血管壁を拡張する力である血管壁拡張力は、ステント10,12の外周面の単位面積当たりのらせん細線24,34が多いほど大きい。ステント10は、外周面の単位面積当たりの細線24,34の数がステント12に比べ2倍であるので、ステント10の血管壁拡張力はステント12の血管壁拡張力の約2倍になる。
【0042】
ステント10の細線20,30の剛性よりも大きな剛性を有する高剛性細線を用いて、同じ大きさの所定編目隙間40の四辺を4本の高剛性らせん細線で囲む構成が考えられるが、高剛性細線は、剛性が高すぎると、ホース状体に編み上げることが困難になる。また、細線20,30の線径d0を約30μmのままとして、外周面の単位面積当たりのらせん細線24,34の数を2倍にしてホース状体に編み上げたステント14は、編目隙間44がステント10の所定編目隙間40の約(1/4)の大きさとなる(
図17参照)。したがって、血管壁拡張力はステント10と同様にステント12の約2倍になるが、マイクロカテーテル8を編目隙間44に通すことができない。
【0043】
ステント10は、血管壁拡張力を2倍にしながら、マイクロカテーテル8を通すことができる所定編目隙間40の大きさを確保できる。これによって、ステント10は、血管内に留置しても血管壁拡張力が大きいので、血流に流されることなく、血管の血管瘤のある部位に留置できる。そして、コイル塞栓術に用いられるコイルを案内するマイクロカテーテル8を所定ステント内径D0内に配置し、マイクロカテーテル8を所定編目隙間40から血管瘤に向けて挿入できる。
【0044】
次に、かかるステント10の製造方法について述べる。
図2は、ステント製造方法の各手順を示すフローチャートである。S10からS24までは、室温雰囲気でホース状体を編み上げる手順で、その後、S26における所定の温度の形状記憶処理を行って、ステント10となる。その意味で、形状記憶処理を行う前のS26までの工程は、形状記憶処理を行ったステント10の前駆体であるステント前駆体10Zを得るための工程である。
【0045】
最初に、所定の仕様を有するステント前駆体製造装置50を準備する(S10)。ステント前駆体製造装置50は、繰り返し単位N=6の仕様を有し、2N=12本の右巻らせん細線24及び2N=12本の左巻らせん細線34を互いに斜面交差させて平織状に編み上げる組み紐編み機の構造を有する。一般的な組み紐編機と相違する仕様としては、隣接する2本の右巻らせん細線24の隙間、及び隣接する2本の左巻らせん細線34の隙間のそれぞれについて、所定近接隙間S2と、S2よりも広い所定隣接対隙間S1と、異なる隙間を設定できることを含む。
【0046】
図3に、ステント前駆体製造装置50の構成を示す。ステント前駆体製造装置50は、装置全体の基台ともなる外形が円筒状の本体筐体部52と、本体筐体部52の上方に配置され、巻付軸54を軸方向に移動駆動する巻付軸移動機構56を含んで構成される。
【0047】
図3に、ステント前駆体製造装置50における上下方向、径方向、周方向を示す。上下方向は、本体筐体部52の円筒状の中心Cを通る中心軸C−Cに平行な方向で、巻付軸54が配置される方向が上方側で、その反対側が下方側である。径方向は、中心軸C−Cから放射状の方向で、中心軸C−Cに向かう方向が内径側、中心軸C−Cから離れる方向が外径側である。周方向は、中心軸C−C周りの方向で、中心軸C−Cの上方側から下方側を見て、右ねじ周りの方向が右回り(時計回り)で、左ねじ周りの方向が左回り(反時計回り)である。
【0048】
巻付軸54は、本体筐体部52の中心軸C−C上に配置される。巻付軸54は、所定ステント内径D0に対応する所定外径を有する円筒状の棒材である。この場合、所定外径=D0に設定される。巻付軸54は、ステント前駆体10Zに超弾性を付与する熱処理の際の形状拘束ジグに相当する。
【0049】
巻付軸移動機構56は、巻付軸54を着脱自在に保持し、中心軸C−Cの軸方向に沿って、軸方向移動速度で移動させる移動機構である。
【0050】
本体筐体部52の上面に設けられる2つの走行経路60,61は、N=6個の円環状溝62とN=6個の円環状溝63を交互に配置しながら連続的に接続し、全体として円周状に一周するように配置した溝経路である。走行経路60,61の区別、及び、走行経路60,61と円環状溝62,63との関係は後述する。
【0051】
編糸ボビン80は、形状記憶材料で構成される細線20,30があらかじめ巻き付けられている円筒状の細線ボビンである。細線20か細線30かは、巻付軸54に巻き付けられて右巻らせん細線24になるか左巻らせん細線34になるかで符号で区別されるだけで、材質、線径等が同じ素材で、編糸ボビン80に巻かれている状態では区別がない。
【0052】
ボビンキャリア70,71は、編糸ボビン80と一体的に設けられるもので、編糸ボビン80を走行経路60,61に沿って搬送するためのものである。以下では、特に断らない限り、ボビンキャリア70をキャリア70と呼び、ボビンキャリア71をキャリア71と呼ぶ。
【0053】
走行経路60は、本体筐体部52の周方向に沿って右回りにキャリア70を走行させる溝経路であり、走行経路61は、本体筐体部52の周方向に沿って左回りにキャリア71を走行させる溝経路である。キャリア70,71は、基本構造は同じであるが、走行経路60上に配置されて本体筐体部52の周方向に沿って右回りに走行する方をキャリア70と呼び、走行経路61上に配置されて本体筐体部52の周方向に沿って左回りに走行する方をキャリア71と呼ぶ。換言すれば、キャリア70は、編糸ボビン80を走行経路60に沿って搬送するためのもので、キャリア71は、編糸ボビン80を走行経路61に沿って搬送するためのものである。
【0054】
編糸ボビン80を搭載したキャリア70を、編糸ボビン80を搭載しないキャリア70と区別して、ボビン付キャリア74と呼び、編糸ボビン80を搭載したキャリア71を、編糸ボビン80を搭載しないキャリア71と区別して、ボビン付キャリア75と呼ぶ。ボビン付キャリア74は、走行経路60に2N=12個配置され、ボビン付キャリア75は、走行経路61に2N=12個配置される。
図3には、12個ずつのボビン付キャリア74,75の内の2個に符号を付して、キャリア70に編糸ボビン80が搭載されたボビン付キャリア74と、キャリア71に編糸ボビン80が搭載されたボビン付キャリア75とを示す。
【0055】
ボビンキャリア駆動部90は、中心軸C−Cを公転軸として、2N=12個のボビン付キャリア74を走行経路60に沿わせて、且つ、2N=12個のボビン付キャリア75を走行経路61に沿わせて、合計で4N=24個の編糸ボビン80を公転軸周りに所定の公転速度で走行駆動させる駆動装置である。
【0056】
制御部100は、巻付軸移動機構56及びボビンキャリア駆動部90と適当な信号線で接続される制御装置で、巻付軸移動機構56の軸方向移動速度、及び、ボビンキャリア駆動部90の公転速度を制御する。
【0057】
図3では、ステント前駆体製造装置50において、すでに編糸ボビン80がキャリア70に配置され、編糸ボビン80から細線20,30が引き出されて、巻付軸54に巻き付けられている状態が示されている。初期状態のステント前駆体製造装置50の状態は、2N=12個のキャリア70が走行経路60上に、2N=12個のキャリア71が走行経路61上に配置されただけの状態である。その状態から、2N=12個のキャリア70と2N=12個のキャリア71のそれぞれに、編糸ボビン80が一つずつ、合計で4N=24個配置される(S12)。
【0058】
図4は、
図3のステント前駆体製造装置50の本体筐体部52の上面における走行経路60,61が現れるように、2N=12個のボビン付キャリア74の内の1つ、2N=12個のボビン付キャリア75の内の1つをそれぞれ残した状態を示す図である。
図4を用いて、本体筐体部52の周方向に沿って右回りにキャリア70を走行させる走行経路60と、本体筐体部52の周方向に沿って左回りにキャリア71を走行させる走行経路61の形成について説明する。以下の図において、走行経路60を実線で示し、走行経路61を破線で示す。
【0059】
2つの走行経路60,61は、N=6個の円環状溝62とN=6個の円環状溝63とを交互に配置しながら本体筐体部52の中心軸C−C周りに連続的に接続し、全体として円周状に一周するように配置した溝経路である。円環状溝62,63の下方側の本体筐体部52内には、キャリア70,71の駆動端部と噛み合ってキャリア70,71を走行経路60,61に沿って走行駆動させる駆動機構(図示せず)が配置される。駆動機構は、制御部100の制御の下でボビンキャリア駆動部90によって駆動される。円環状溝62,63に駆動端部が挿入されたキャリア70,71は、円環状溝62,63に沿って走行する。
【0060】
円環状溝62と円環状溝63との相違は、円環状溝62,63の中心Eを通る中心軸E−E周りについて、キャリア70,71が走行する方向である。ボビンキャリア駆動部90が作動すると、駆動機構によって、円環状溝62は、中心軸E−E周りに右回りにキャリア70,71を走行させ、円環状溝63は、中心軸E−E周りに左回りにキャリア70,71を走行させる。そこで、円環状溝62を右回り円環状溝62と呼び、円環状溝63を左回り円環状溝63と呼び、右回り円環状溝62と左回り円環状溝63とが接続する位置では、それぞれの溝が互いに交差するので、この位置を交差位置66と呼ぶ。
【0061】
1つの右回り円環状溝62においては、両側に左回り円環状溝63が配置されるので、両側にそれぞれ交差位置66がある。右回り円環状溝62を両側の交差位置66の間で、本体筐体部52の径方向に沿って内径側にある内径側溝部分と、外径側にある外径側溝部分とに分けて説明する。本体筐体部52の周方向に沿って右回りに走行するキャリア70は、右回り円環状溝62の外径側溝部分を走行する。これに対し、本体筐体部52の周方向に沿って左回りに走行するキャリア71は、右回り円環状溝62の内径側溝部分を走行する。
【0062】
1つの左回り円環状溝63においては、両側に右回り円環状溝62が配置されるので、両側にそれぞれ交差位置66がある。左回り円環状溝63を両側の交差位置66の間で、本体筐体部52の径方向に沿って内径側にある内径側溝部分と、外径側にある外径側溝部分とに分けて説明する。本体筐体部52の周方向に沿って左回りに走行するキャリア71は、左回り円環状溝63の外径側溝部分を走行する。これに対し、本体筐体部52の周方向に沿って右方向に走行するキャリア70は、左回り円環状溝63の内径側溝部分を走行する。
【0063】
図4で、一つの右回り円環状溝62をJと示し、Jに対し、本体筐体部52の周方向に沿った右回り端の交差位置66において接続する左回り円環状溝63をKと示す。
【0064】
Jと示す右回り円環状溝62の実線で示す外径側溝部分を走行してきたキャリア70は、交差位置66において、走行経路をKと示す左回り円環状溝63の実線で示す内径側溝部分に切り替える。これによって、キャリア70は、今まで走行してきたJと示す右回り円環状溝62の外径側溝部分から、Kと示す左回り円環状溝63の内径側溝部分に移り、本体筐体部52の周方向に沿った右回り走行を継続する。
【0065】
一方、Kと示す左回り円環状溝63の破線で示す外径側溝部分を走行してきたキャリア71は、交差位置66において、走行経路をJと示す右回り円環状溝62の内径側溝部分に切り替える。これによって、キャリア71は、今まで走行してきたKと示す左回り円環状溝63の外径側溝部分から、Jと示す右回り円環状溝62の内径側溝部分に移り、本体筐体部52の周方向に沿った左回り走行を継続する。
【0066】
すなわち、交差位置66においては、キャリア70,71が外径側溝分を走行してきたか、内径側溝部分を走行してきたか、に応じて、走行方向の振り分けを行う。キャリア70の走行方向の振り分けは、交差位置66に設けたキャリア振分機構(図示せず)によって自動的に行われる。キャリア振分機構の作用によって、キャリア70は右回り走行を継続でき、キャリア71は左回り走行を継続できる。
【0067】
上記のように、走行経路60は、交差位置66において、Jと示す右回り円環状溝62の外形溝部分と、Kと示す左回り円環状溝63の内径溝部分とを接続して形成される。また、走行経路61は、交差位置66において、Kと示す左回り円環状溝63の外形溝部分と、Jと示す右回り円環状溝62の内径溝部分とを接続して形成される。交差位置66で互いに接続される右回り円環状溝62と左回り円環状溝63を一対として、円環状溝対64と呼ぶと、1対の円環状溝対64の交差位置66においては、走行経路60と走行経路61は互いに略8の字で交差する。
【0068】
ステント前駆体製造装置50の本体筐体部52の上面における走行経路60,61は、円環状溝対64を繰り返し単位N=6で、本体筐体部52の中心軸C−C周りに連続的に接続し、全体として円周状に一周するように配置した溝経路である。
図4に示すように、走行経路60,61は、2N=12の交差位置66で互いに交差しながら、本体筐体部52の中心軸C−C周りに蛇行する一対の蛇行経路である。以下では、この一対の蛇行経路を区別して、走行経路60を一方側走行経路60と呼び、走行経路61を他方側走行経路61と呼ぶ。
【0069】
図4において、2つ図示したボビン付キャリア74,75の内1つは、一方側走行経路60上に配置され、キャリア70に編糸ボビン80が搭載されたボビン付キャリア74s−3である。もう1つは、他方側走行経路61上に配置され、キャリア71に編糸ボビン80が搭載されたボビン付キャリア75s−3である。74s−3,75s−3の符号は、それぞれ2N=12あるボビン付キャリア74、ボビン付キャリア75を、他のボビン付キャリア74,75と区別する際に用いる符号で、その詳細は後述する。
【0070】
ボビン付キャリア74,75は、一方側走行経路60か他方側走行経路61に配置されるか、に関する相違があるが、構造的には全く同一であるので、以下では、ボビン付キャリア74について述べる。
図5は、キャリア70に編糸ボビン80が搭載されたボビン付キャリア74の斜視図である。キャリア70の下方側には、駆動機構と噛み合う駆動端部が設けられるが、
図5では、ステント前駆体製造装置50の本体筐体部52の上面より上方側のキャリア70の部分のみを示し、駆動端部等の図示を省略した。
【0071】
ボビン付キャリア74において、編糸ボビン80は、形状記憶材料で構成される細線20があらかじめ巻き付けられている円筒状の細線ボビンである。キャリア70は、ボビン基台部82の上に、ボビン軸84と、糸通し部86とを立設した部材である。ボビン軸84は、編糸ボビン80を回転可能に支持する軸体である。糸通し部86は、編糸ボビン80から引き出された細線20について細線引出し穴92を通してから上方側に延伸させ、上端部における所定高さ位置の細線供給穴94に案内する細線案内部材である。張力おもり96は、細線引出し穴92を通ってきた細線20に適当な張力を与えるためのおもり部材である。
【0072】
再び
図2に戻り、S12において編糸ボビン80がキャリア70に配置されると、編糸ボビン80に巻き付けられていた細線がほどかれて、細線引出し穴92、張力おもり96を経由して、糸通し部86の上端部に設けられた細線供給穴94から引き出される(S14)。細線供給穴94から引き出された細線20の先端部は巻付軸54に巻き付けられる。同様に、ボビン付キャリア75においても、細線供給穴94から引き出された細線30の先端部が巻付軸54に巻き付けられる(S16)。12個のボビン付キャリア74から引き出された12本の細線20と、12個のボビン付キャリア75から引き出された12本の細線30とが巻付軸54に巻き付けられた状態が
図3の状態である。
【0073】
S16の次は、制御部100の制御の下で、ボビンキャリア駆動部90と巻付軸移動機構56を作動させる(S18)。ボビンキャリア駆動部90の作動によって、本体筐体部52の中心軸C−Cを公転軸として、ボビン付キャリア74は一方側走行経路60上を公転軸周りに右回りに走行し、ボビン付キャリア75は他方側走行経路61上を公転軸周りに左回りに走行する。
【0074】
一方側走行経路60上には、2N=12個のボビン付キャリア74が配置され、他方側走行経路61上には、2N=12個のボビン付キャリア75が配置される。12個のボビン付キャリア74は、一方側走行経路60上で等間隔には配置されず、2個を1対のボビンキャリア対72とし、ボビンキャリア対72を単位として、N=6のボビンキャリア対72が所定隣接対間隔で等間隔に配置される。1対のボビンキャリア対72における2個のボビン付キャリア74の間隔は、所定隣接対間隔よりも狭い所定近接間隔で配置される。同様に、12個のボビン付キャリア75は、他方側走行経路61上で等間隔には配置されず、2個を1対のボビンキャリア対73とし、ボビンキャリア対73を単位として、所定隣接対間隔で等間隔に配置される。1対のボビンキャリア対73における2個のボビン付キャリア75の間隔は、所定隣接対間隔よりも狭い所定近接間隔で配置される。以下では、特に断らない限り、ボビンキャリア対72をキャリア対72と呼び、ボビンキャリア対73をキャリア対73と呼ぶ。
【0075】
図6は、
図3を上方側から見た上面図で、N=6のキャリア対72とN=6のキャリア対73の配置を示す図である。
図6では、巻付軸54の図示を省略し、本体筐体部52の円筒状の中心Cを示す。キャリア対72は6対あるので、これを区別して、公転軸に対し右回りの先頭側が若い番号となるように、左回りの順で、キャリア対72−1,72−2,72−3,72−4,72−5,72−6と呼ぶ。同様に、キャリア対73は6対あるので、これを区別して、公転軸に対し左回りの先頭側が若い番号になるように、右回りの順で、キャリア対73−1,73−2,73−3,73−4,73−5,73−6と呼ぶ。先頭のキャリア対72−1と、先頭のキャリア対73−1は、任意に設定してかまわないが、
図6以下では、走行経路60,61上で、先頭のキャリア対72−1と、先頭のキャリア対73−1とが隣接する配置とした。
【0076】
図7は、6対のキャリア対72のみに斜線を付し、
図6から抜き出して示す図である。キャリア対72を構成する2つのボビン付キャリア74を区別して、他方側走行経路61上で右回りの先頭側のボビン付キャリア74にmの符号を付し、そのあとに所定近接間隔で続くボビン付キャリア74にsの符号を付す。
【0077】
図7の例では、キャリア対72−1において、一方側走行経路60の右回りの先頭側のボビン付キャリア74−1をボビン付キャリア74m−1と呼び、ボビン付キャリア74m−1から所定近接間隔で続くボビン付キャリア74をボビン付キャリア74s−1と呼ぶ。同様に、キャリア対72−2を構成する2つのボビン付キャリア74についても、ボビン付キャリア74m−2とボビン付キャリア74s−2と呼ぶ。また、キャリア対72−3を構成する2つのボビン付キャリア74についても、ボビン付キャリア74m−3とボビン付キャリア74s−3と呼ぶ。以下、キャリア対72−4,72−5,72−6についても同様である。これらのキャリア対72は、所定近接間隔と、所定隣接対間隔を維持しながら、
図7において矢印で示すように、公転軸周りに一方側走行経路60上を右回りに公転速度で走行する。
【0078】
図8は、6対のキャリア対73のみに斜線を付し、
図6から抜き出して示す図である。キャリア対73を構成する2つのボビン付キャリア75を区別して、他方側走行経路61上で左回りの先頭側のボビン付キャリア75にmの符号を付し、そのあとに所定近接間隔で続くボビン付キャリア75にsの符号を付す。
【0079】
図8の例では、キャリア対73−1において、他方側走行経路61の左回りの先頭側のボビン付キャリア75−1をボビン付キャリア75m−1と呼び、ボビン付キャリア75m−1から所定近接間隔で続くボビン付キャリア75をボビン付キャリア75s−1と呼ぶ。同様に、キャリア対73−2を構成する2つのボビン付キャリア75についても、ボビン付キャリア75m−2とボビン付キャリア75s−2と呼ぶ。また、キャリア対73−3を構成する2つのボビン付キャリア75についても、ボビン付キャリア75m−3とボビン付キャリア75s−3と呼ぶ。以下、キャリア対73−4,73−5,73−6についても同様である。これらのキャリア対73は、所定近接間隔と、所定隣接対間隔を維持しながら、
図8において矢印で示すように、公転軸周りに他方側走行経路61上を左回りに公転速度で走行する。
【0080】
図4では、ボビン付キャリア74s−3がキャリア70に編糸ボビン80を配置した状態で示され、ボビン付キャリア75s−3がキャリア71に編糸ボビン80を配置した状態で示される。
【0081】
図9と
図10は、所定近接間隔θ2と所定隣接対間隔θ1を説明する図である。
図9は、
図6から隣接するキャリア対72として、キャリア対72−1とキャリア対72−2とを抜き出し、公転軸C周りの見込み角度で、所定近接間隔θ2と所定隣接対間隔θ1を示す図である。同様に、
図10は、
図6から隣接するキャリア対73として、キャリア対73−1とキャリア対73−2とを抜き出し、公転軸C周りの見込み角度で、所定近接間隔θ2と所定隣接対間隔θ1を示す図である。
【0082】
キャリア対72とキャリア対73において、所定隣接対間隔θ2は同じ大きさの角度間隔である。キャリア対72は公転軸C周りに6対配置され、キャリア対73も公転軸C周りに6対配置されるので、所定隣接対間隔θ1は、60度の角度間隔である。
【0083】
キャリア対72とキャリア対73において、所定近接間隔θ2は同じ大きさの角度間隔である。所定近接間隔θ2はできるだけ小さい角度間隔で設定することが好ましいが、あまり小さい角度間隔に設定すると、隣接する2つのボビン付キャリア74の間の走行干渉、または、隣接する2つのボビン付キャリア75の間の走行干渉が生じやすくなる。そこで、ボビン付キャリア74及びボビン付キャリア75の大きさを考慮して、走行干渉が生じない範囲で所定近接間隔θ2の設定が行われる。
図9、
図10の例では、所定近接間隔θ2は、所定隣接対間隔θ1に比較してかなり小さい約15度の角度間隔に設定される。これは、例示であって、ボビン付キャリア74及びボビン付キャリア75の大きさの仕様によって、15度以外の角度間隔に設定することが出来る。
【0084】
S16で述べたように、12個のボビン付キャリア74からは、それぞれ細線20が引き出され、12個のボビン付キャリア75からは、それぞれ細線30が引き出され、これらの細線20,30の先端部は巻付軸54に巻き付けられる。ここで、ボビンキャリア駆動部90が作動すると、公転軸周りに、ボビン付キャリア74は右回りに走行し、ボビン付キャリア75は左回りに走行するので、それにつれて編糸ボビン80に巻かれている細線20,30がほどかれる。そして、糸通し部86の細線供給穴94から引き出され、巻付軸54の外周面にそって巻かれる。ここで、巻付軸移動機構56が作動して巻付軸54が中心軸C−Cの軸方向に沿って上方側に移動すると、ボビン付キャリア74から供給された細線20は、巻付軸54の外周面に所定らせんピッチで右巻らせん状に巻き付けられる。同様に、ボビン付キャリア75から供給された細線30は、巻付軸54の外周面に所定らせんピッチで左巻らせん状に巻き付けられる。
【0085】
図11は、
図9における隣接する2つのキャリア対72−1,72−2について、これらを構成するボビン付キャリア74m−1,74s−1,74m−2,74s−2からの4本の細線20を示す図である。4本の細線20は、4つのボビン付キャリア74が一方側走行経路60上を右回りに走行するにつれて、巻付軸54の外周面に所定らせんピッチで右巻らせん状に巻き付けられる。
【0086】
図12は、
図10における隣接する2つのキャリア対73−1,73−2について、これらを構成するボビン付キャリア75m−1,75s−1,75m−2,75s−2からの4本の細線30を示す図である。4本の細線30は、4つのボビン付キャリア75が他方側走行経路61上を左回りに走行するにつれて、巻付軸54の外周面に所定らせんピッチで左巻らせん状に巻き付けられる。
【0087】
右巻らせん状に巻き付けられる細線20と、左巻らせん状に巻き付けられる細線30とは、巻付軸54の外周面上で、右巻らせん細線24と左巻らせん細線34となって、互いに斜面交差しながら平織状に編み上げられる(S20)。斜面交差の仕方について、
図11、
図12を参照しながら説明する。
【0088】
図11の状態からキャリア対72が右回りに走行を続け、
図12の状態からキャリア対73が左回りに走行を続けると、ボビン付キャリア74m−2から引き出された細線20と、ボビン付キャリア75m−2から引き出された細線30とが最初に交差する。交差は、
図11、
図12で、Jと示す右回り円環状溝62において、一方側走行経路60である外径側溝部分にボビン付キャリア74m−2が来て、他方側走行経路61である内径側溝部分にボビン付キャリア75m−2が来た時に生じる。
【0089】
ここで、ボビン付キャリア74m−2の細線供給穴94から引き出される細線20は巻付軸54の外周面に右巻らせん状に巻き付けられるので、巻付軸54に巻き付けられた状態の細線20を、右巻らせん細線24m−2と呼ぶ。同様に、ボビン付キャリア75m−2の細線供給穴94から引き出される細線30は、巻付軸54の外周面に左巻らせん状に巻き付けられるので、巻付軸54に巻き付けられた状態の細線30を、左巻らせん細線34m−2と呼ぶ。交差状態においては、ボビン付キャリア74m−2の細線供給穴94は、ボビン付キャリア75m−2の細線供給穴94よりも外径側にあるので、巻付軸54の外周面において、右巻らせん細線24m−2は、左巻らせん細線34m−2の上方側に配置される状態で斜面交差する。
【0090】
さらに、キャリア対72が右回りに走行を続け、キャリア対73が左回りに走行を続けると、ボビン付キャリア74m−2から引き出された細線20は、次に、ボビン付キャリア75s−2から引き出された細線30と交差する。交差は、
図11、
図12で、Kと示す左回り円環状溝63において、他方側走行経路61である外径側溝部分にボビン付キャリア75s−2が来て、一方側走行経路60である内径側溝部分にボビン付キャリア74m−2が来た時に生じる。
【0091】
ここで、ボビン付キャリア75s−2の細線供給穴94から引き出される細線30は、巻付軸54の外周面に左巻らせん状に巻き付けられるので、巻付軸54に巻き付けられた状態の細線30を、左巻らせん細線34s−2と呼ぶ。交差状態においては、ボビン付キャリア74m−2の細線供給穴94は、ボビン付キャリア75s−2の細線供給穴94よりも内径側にあるので、巻付軸54の外周面において、右巻らせん細線24m−2は、左巻らせん細線34s−2の下方側に配置される状態で斜面交差する。
【0092】
このように、巻付軸54の外周面において、右巻らせん細線24m−2は、左巻らせん細線34m−2よりも上方側に配置されて斜面交差し、次は、左巻らせん細線34s−2よりも下方側に配置されて斜面交差し、この斜面交差を順次繰り返す。したがって、巻付軸54の外周面において、一の右巻らせん細線24についてみると、複数の左巻らせん細線34に対し、左巻らせん細線34よりも上方側に配置される斜面交差と、左巻らせん細線34よりも下方側に配置される斜面交差とを交互に繰り返す平織状で編み上げられる。逆に、巻付軸54の外周面において、一の左巻らせん細線34についてみても、複数の右巻らせん細線24に対し、右巻らせん細線24よりも上方側に配置される斜面交差と、右巻らせん細線24よりも下方側に配置される斜面交差を交互に繰り返す平織状で編み上げられる。
【0093】
図13は、巻付軸54の外周面におけるステント前駆体10Zの例を示す図である。
図13は、
図11で述べた4つのボビン付キャリア74m−1,74s−1,74m−2,74s−2から引き出された細線20が巻付軸54の外周面に巻き付けられた状態の右巻らせん細線24m−1,24s−1,24m−2,24s−2を示す。さらに、
図12で述べた4つのボビン付キャリア75m−1,75s−1,75m−2,75s−2から引き出された細線30が巻付軸54の外周面に巻き付けられた状態の左巻らせん細線34m−1,34s−1,34m−2,34s−2を示す。
【0094】
図13において、斜面交差を強調するために、乗り越え状態と潜り抜け状態を示した。右巻らせん細線24m−2について述べると、左巻らせん細線34s−2を潜り抜け、次に左巻らせん細線34m−2を乗り越え、その次は、左巻らせん細線34s−2を潜り抜け、次に左巻らせん細線34m−1を乗り越える。左巻らせん細線34m−2について述べると、右巻らせん細線24s−2を乗り越え、次に右巻らせん細線24m−2を潜り抜け、その次は、右巻らせん細線24s−1を乗り越え、次に右巻らせん細線24m−1を潜り抜ける。このように、斜面交差について乗り越えと潜り抜けを交互に繰り返して、平織状で編み上げが行われる。
【0095】
図13に示すように、巻付軸54の外周面上において、右巻らせん細線24m−1と右巻らせん細線24m−2の隙間S1は、
図9の所定隣接対間隔θ1に対応し、右巻らせん細線24m−2と右巻らせん細線24s−2の隙間S2は、
図9の所定近接間隔θ2に対応する。右巻らせん細線24m−1と右巻らせん細線24s−1の隙間S2と、右巻らせん細線24m−2と右巻らせん細線24s−2の隙間S2は、
図9の所定近接間隔θ2に対応する。
【0096】
図14は、
図13を簡略化した図で、右巻らせん細線24m−1,24m−2と、左巻らせん細線34m−1,34m−2で形成される編目隙間41を示す。編目隙間41は、隙間S2=0とした場合のステント前駆体10Zにおける編目隙間に相当する。この編目隙間41を用いて、ステント前駆体10Zにおける編目隙間41の大きさと、走行経路60,61上でキャリア70,71が走行する公転速度M(回転/min)と、巻付軸54の軸方向移動速度V0(mm/s)の設定の関係を説明する。編目隙間41は、ステント10における所定編目隙間40よりは大きいが、所定近接隙間S2を微小隙間S0に整形することで、所定編目隙間40を編目隙間41の大きさに近づけることができる。その意味で、右巻らせん細線24m−1,24m−2と、左巻らせん細線34m−1,34m−2で形成される編目隙間41は、ステント10の所定編目隙間40の最大値の目安にできる。
【0097】
編目隙間41の大きさについて、巻付軸54の外周面上で、周方向に沿った寸法をXとし、軸方向に沿った寸法をYとする。編目隙間41を正方形とした場合には、寸法Xと寸法Yは、編目隙間41の対角線長に相当する。
【0100】
ステント10の所定編目隙間40は、円管状のマイクロカテーテル8を通す大きさに設定されるので、所定編目隙間40の隙間形状は正方形が望ましい。したがって、編目隙間41の隙間形状も正方形が望ましく、X=Yと設定することがよい
。
【0102】
再び
図2に戻り、適切な編目隙間41を有するように、巻付軸54に右巻らせん細線24と左巻らせん細線34とが互いに斜面交差しながら平織状に所定のステント長さまで編み上げられると、ステント前駆体製造装置50の作動を停止する。そして、編み上げられたステント前駆体10Zを巻付軸54と共に、ステント前駆体製造装置50から取り外す(S22)。
図13、
図14は、巻付軸54上のステント前駆体10Zの一部を示す図に対応する。
【0103】
取り外されたステント前駆体10Zは、
図13、
図14で述べたように、所定近接隙間S2と所定隣接対隙間S1を有している。所定近接隙間S2と所定隣接対隙間S1は、
図9、
図10で述べたボビン付キャリア74,75における所定近接間隔θ2と所定隣接対間隔θ1に対応する。角度で、θ2=60度、θ1=約15度の例をとると、所定近接間隔θ2は、所定隣接対間隔θ1の約(1/4)であるので、これに対応して、ステント前駆体10Zにおける所定近接隙間S2は、所定隣接対隙間S1の約(1/4)となる。
図13の計算例で、編目隙間41の対角線長に対応する寸法X、寸法Yは、所定隣接対隙間S1に対応し、約1.60mmである。所定近接隙間S2は、所定隣接対隙間S1の(1/4)とすると、所定近接隙間S2を差し引いた隙間は(S2−S1)で、約1.20mmとなる。一方、ステント10で必要とされる所定編目隙間40の対角線長は、マイクロカテーテル8の外径を1.7Fr=0.56mmとした場合に(S1−S0)>0.78mmが条件である。したがって、所定近接隙間S2をそのままステント10の微小隙間S0とすると、ステント10の所定編目隙間40にマイクロカテーテル8を通すことはできるが、製造バラツキを考えると、あまり余裕がなく、通す場合にかなりの熟練及び注意が必要となる。
【0104】
そこで、ステント前駆体10Zにおける所定近接隙間S2を、接触状態を含み細線の線径の5倍以下の微小隙間S0とする作業員の手修正整形を行う(S24)。手修正整形は、取り外した巻付軸54上のステント前駆体10Zを、適当な視野拡大手段等を用いて行う。
【0105】
図15は、右巻らせん細線対22−1,22−2と、左巻らせん細線対32−1,32−2について、所定近接隙間S2を微小隙間S0にする手修正整形を行った状態のステント前駆体10Zを示す図である。右巻らせん細線対22−1,22−2以外の右巻らせん細線対22、及び、左巻らせん細線対32−1,32−2以外の左巻らせん細線対32についてはまだ手修正整形を行っていないので、所定近接隙間S2のままである。
【0106】
ステント前駆体10Zにおける全ての右巻らせん細線対22、及び、全ての左巻らせん細線対32について所定近接隙間S2を微小隙間S0にする手修正整形が済むと、ステント前駆体10Zの編目隙間40Zは、
図14で述べた編目隙間41に近づく。
【0109】
微小隙間S0は、(細線20,30の線径d0)の5倍以下とされるので、{(細線20,30の線径d0)と微小隙間S0との合算値}は、最大で、6×(細線20,30の線径d0)で、約180μm=0.18mmである。
図14のX(mm)=Y(mm)=1.60mmを用いると、ステント前駆体10Zの編目隙間40Zにおいて、(軸方向隙間)=(周方向隙間)={1.60mm−0.18mm}=1.42mmが最小値となる。この大きさであれば、(1.7Fr=0.56mm)の外径を有するマイクロカテーテル8を余裕をもって十分に通すことが出来る。
【0110】
ステント前駆体10Zにおける全ての右巻らせん細線対22、及び、全ての左巻らせん細線対32について手修正整形が済むと、編目隙間40Zを有するステント前駆体10Zが巻付軸54に巻き付けられている状態のまま、形状記憶材料で構成される細線の変態点を超える加熱により形状記憶処理が施される(S26)。その後、形状記憶処理が済んだステント前駆体10Zは、巻付軸54から取り外され、ステント10となる。ステント10の所定編目隙間40は、ステント前駆体10Zの編目隙間40Zと同じである。即ち、所定編目隙間40は、1.7Fr=0.56mm)の外径を有するマイクロカテーテル8を通すことが出来る。
【0111】
図16、
図17は、比較例として、隣接する2本の右巻らせん細線の隙間、及び隣接する2本の左巻らせん細線34の隙間を同じ隙間でのみ設定可能な一般的な組み紐編機で、ステント前駆体を形成する場合を示す図である。一般的な組み紐編機は、上記のステント前駆体製造装置50と相違し、隣接する2本の右巻らせん細線24の隙間、及び隣接する2本の左巻らせん細線34の隙間について、微小隙間S0と、S0よりも広い所定隣接対隙間S1のような異なる隙間を設定できない。
【0112】
図16は、ステント10の所定編目隙間40と同じ大きさの編目隙間42を、線径d0=30μmを有する2本の右巻らせん細線24及び2本の左巻らせん細線34の合計4本のらせん細線24,34で囲んで構成するステント12である。編目隙間42はステント10の所定編目隙間40と同じであるので、(1.7Fr=0.56mm)の外径を有するマイクロカテーテル8を通すことが出来る。しかしながら、ステント12の外周面の単位面積当たりのらせん細線24,34の数は、ステント10の外周面の単位面積当たりのらせん細線24,34の数の(1/2)であるので、ステント12の血管壁拡張力は、ステント10の血管壁拡張力の約(1/2)である。血管壁拡張力が不十分であると、ステント12が血流に流され、マイクロカテーテル8を血管の血管瘤のある部位に留置できないことが生じる。
【0113】
図17は、細線20,30の線径d0を約30μmのままとして、外周面の単位面積当たりのらせん細線24,34の数を2倍にしてホース状体に編み上げたステント14の例である。この場合は、編目隙間44がステント10の所定編目隙間40の約(1/4)の大きさとなる。したがって、血管壁拡張力はステント10と同程度とできても、(1.7Fr=0.56mm)の外径を有するマイクロカテーテル8を通すことが出来ない。
【0114】
このほかに、細線20を二重巻きにして、キャリア70の1つの細線供給穴94から2本の細線20を引き出すことが考えられるが、編糸ボビン80が特殊となり、また、巻付軸54に巻き付ける際に、もつれや断線が生じやすい。そのため、
図1で示すステント10のように、微小隙間S0が整然と配置された右巻らせん細線対22や左巻らせん細線対32を形成することが困難である。
【0115】
これに対し、上記のステント10は、ステント12に比較して血管壁拡張力を2倍にしながら、マイクロカテーテル8を通すことができる所定編目隙間40の大きさを確保でき、ステント14に比較して、マイクロカテーテル8を通すことが出来る所定編目隙間40を有する。これによって、例えば、コイル塞栓術に用いられるコイルを案内するマイクロカテーテル8をステント10の所定ステント内径D0内に配置し、マイクロカテーテル8を所定編目隙間40から血管瘤に向けて挿入できる。