特許第6984920号(P6984920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984920
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】複合材料製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/48 20060101AFI20211213BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
   B29C70/48
   B29L9:00
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-501918(P2020-501918)
(86)(22)【出願日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2018006403
(87)【国際公開番号】WO2019163046
(87)【国際公開日】20190829
【審査請求日】2020年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】520216770
【氏名又は名称】フューチャーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】林 浩司
【審査官】 馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−091252(JP,A)
【文献】 特表2015−509457(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125596(WO,A1)
【文献】 特開2002−154190(JP,A)
【文献】 特開平11−168321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/48、39/42
B32B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の少なくとも1つである特定繊維製の糸によってできている布である特定繊維クロスを含む複合材料製品の製造方法であって、
前記特定繊維クロスの裏面側に、シートである裏打ちシートを重ね合わせる第1過程、
前記特定繊維クロスの表面側に所望の図柄が作られるように、且つ前記特定繊維クロスと前記裏打ちシートとの双方を貫くようにして、前記特定繊維製の糸である刺繍糸によって刺繍を行う第2過程、
前記第2過程の後に、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする第3過程、
を含んでおり、
前記第3過程を加熱を伴うものとするとともに、
前記裏打ちシートとして、前記第3過程における加熱によってもその形状を維持する材料でできているものを用いる、
複合材料製品の製造方法。
【請求項2】
炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の少なくとも1つである特定繊維製の糸によってできている布である特定繊維クロスを含む複合材料製品の製造方法であって、
前記特定繊維クロスの裏面側に、シートである裏打ちシートを重ね合わせる第1過程、
前記特定繊維クロスの表面側に所望の図柄が作られるように、且つ前記特定繊維クロスと前記裏打ちシートとの双方を貫くようにして、前記特定繊維製の糸である刺繍糸によって刺繍を行う第2過程、
前記第2過程の後に、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする第3過程、
を含んでおり、
前記第2過程で作られる図柄を前記刺繍糸により実質的に隙間なく塗り潰された塗りつぶし図形とする、
複合材料製品の製造方法。
【請求項3】
炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の少なくとも1つである特定繊維製の糸によってできている布である特定繊維クロスを含む複合材料製品の製造方法であって、
前記特定繊維クロスの裏面側に、シートである裏打ちシートを重ね合わせる第1過程、
前記特定繊維クロスの表面側に所望の図柄が作られるように、且つ前記特定繊維クロスと前記裏打ちシートとの双方を貫くようにして、前記特定繊維製の糸である刺繍糸によって刺繍を行う第2過程、
前記第2過程の後に、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする第3過程、
を含んでおり、
前記第3過程では、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートの裏面側に他の特定繊維クロスを重ねた状態で、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする、
複合材料製品の製造方法。
【請求項4】
前記第3過程を加熱を伴うものとするとともに、
前記裏打ちシートとして、前記第3過程における加熱により溶融し、前記第3過程で用いられる樹脂と一体となる樹脂でできているものを用いる、
請求項2又は3記載の複合材料製品の製造方法。
【請求項5】
前記裏打ちシートとして、紙でできているものを用いる、
請求項記載の複合材料製品の製造方法。
【請求項6】
前記第2過程の後に、前記図柄の輪郭に沿うようにして、前記図柄の外側に位置する部分の前記裏打ちシートを除去する過程を含んでおり、
前記第3過程では、前記特定繊維クロス及び前記図柄の外側に位置する部分が除去された前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする、
請求項1〜3のいずれかに記載の複合材料製品の製造方法。
【請求項7】
前記第3過程では、RFI法又はRTM法により前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とする、
請求項1〜3のいずれかに記載の複合材料製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願では、「特定繊維」という文言は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維の総称を意味するものとする。また、本願で、「特定繊維製の糸」といった場合には、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の少なくとも1つによりできている糸を意味するものとする。もちろん、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維のうちの2つ以上でできている糸も特定繊維製の糸に該当する。
上述の特定繊維、或いは特定繊維製の糸は、概ね産業用に用いられている。中でもよく知られているものに、特定繊維製の糸によって作られた布と樹脂とを用いた複合材料製品がある。複合材料製品は、例えば、炭素繊維製の糸を用いて作られた布と樹脂を組合せたものであれば炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維製の糸を用いて作られた布と樹脂を組合せたものであればガラス繊維強化プラスチック、アラミド繊維製の糸を用いて作られた布と樹脂を組合せたものであればアラミド繊維強化プラスチック等と称され、それらは強化繊維プラスチック等と総称されている。
【0003】
特定繊維製の糸によって作られた布と、樹脂とを用いた複合材料製品は、軽く、またその軽さに比して強度が強いという優れた物理的な特性を持つ。そのため、かかる複合材料製品の用途は、既に述べたように、産業用が主であるというよりも、略100%産業用に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、複合材料製品は、その優れた物理的な特性に着目されて用いられることが多い。もちろん、複合材料製品が持つ優れた物理的な特性は素晴らしいものであるが、美観という点からは殆ど何らの工夫もされていないというのが現状といえる。本願発明者の考えによれば、これは如何にも残念なことである。
もっとも、複合材料製品の表面には、特に複合材料製品を構成する樹脂が透明である場合には、複合材料製品を構成する布、特には織布の折柄は外部から目視可能に現れる。例えば、織布として、それを織る際に、炭素繊維製の黒い糸と、着色した例えば赤いアラミド繊維製の糸とを用いて、黒と赤の糸の折柄を持つ織布を作ることが可能である。これを利用して、折柄に由来する模様を持つ複合材料製品も、存在すると言えば存在する。
しかし、折柄に由来する模様はその自由度が高くなく、美観の点から十分とはいい難い。複合材料製品にもっと自由な図柄を与えることができれば、複合材料製品の新たな需要を喚起できる可能性もある。
【0005】
本願発明は、特定繊維製の糸による布と、樹脂とにより構成された複合材料製品に、従来よりも自由度の高い図柄を付すための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述する課題を解決するために、本願発明者は研究を重ねた。その結果、一般的な布に対して刺繍を行うように、複合材料製品に用いられる特定繊維製の糸で作られた布である特定繊維クロスに対して、特定繊維製の糸で更に刺繍を行うことで特定繊維クロスに自由度高く図柄を設けることができるのではないか、との着想を得た。
しかしながら、それを実際に行ってみたところ、特定繊維クロスに対して特定繊維製の糸で刺繍をすると、特定繊維クロスを構成する特定繊維製の糸の間に隙間が生じ、さらに隙間が伝播してある種の亀裂となり、目ぞろえの乱れや、部分的な皺の発生、型崩れが生じ、表面平滑性が乱れ、意匠性の著しい劣化から美観としての価値を大きく損なう不具合が生じた。その結果、最終的に得られた複合材料製品に、強度的に不十分な箇所が部分的に見られるようになった。
【0007】
そして、更なる試行錯誤を行った結果、そのような不具合も含めて上述の課題を解決する技術を本願発明者は確立した。
本願発明者が提案する発明は以下のようなものである。
本願発明は、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維の少なくとも1つである特定繊維製の糸によってできている布である特定繊維クロスを含む複合材料製品の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある。)である。
かかる製造方法は、前記特定繊維クロスの裏面側に、シートである裏打ちシートを重ね合わせる第1過程、前記特定繊維クロスの表面側に所望の図柄が作られるように、且つ前記特定繊維クロスと前記裏打ちシートとの双方を貫くようにして、前記特定繊維製の糸である刺繍糸によって刺繍を行う第2過程、前記第2過程の後に、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化(硬化による固体化も含む、以下も同様である。)させて複合材料製品とする第3過程、を含んでいる。
この製造方法は、第2過程で、特定繊維クロスに対して、所望の図柄が得られるように、特定繊維製の糸である刺繍糸で刺繍を行う。これは、上述した本願発明者の着想によるものである。しかし、それだけでは、上述したような不具合が生じる。それを本願発明では、裏打ちシートを用いることにより解消している。裏打ちシートは、第1過程で特定繊維クロスの裏面側に重ね合わせられる。この状態で、第2過程における刺繍糸で刺繍を行う。刺繍糸は、特定繊維クロスと裏打ちシートの双方を貫くようにする。そうすると、刺繍後の特定繊維クロスにおいて、意匠性の著しい劣化の原因となる刺繍部分の表面平滑性の乱れが抑制される。このような改善が生じるのは、刺繍により特定繊維クロスを構成する糸の配列に縫い針による最小限の隙間は生じるものの、裏打ちシートを用いることで、引き裂き応力の一部を裏打ちシートに担わせることが可能となり、裏打ちシートと特性繊維クロスとの相互補強効果によって、クロス面に生じたわずかな隙間(亀裂の)の伝播を抑制することが可能になるためと考えられる。
そして、第2過程の後に、刺繍が行われた特定繊維クロス及び裏打ちシートを、透明な樹脂により硬化させる第3過程を実行する。その結果得られる複合材料製品は、特定繊維クロスの表面側に作られた図柄が美しいこともあり、複合材料製品の表面側から特定繊維クロスの表面側に刺繍によって作られた図柄を目視できるようになるとともに、その図柄が美しいものとなる。
なお、本願において、特定繊維クロスの「表側」と「裏側」は、特定繊維クロスのうち刺繍により所望の図柄が作られるのが表側、それとは逆側が裏側とそれぞれ定義される。特定繊維クロス、裏打ちシートの表側と裏側は特定繊維クロスの表側と裏側の定義に倣う。
また、本願における「特定繊維クロス」は、特定繊維による糸を用いて作られた布状のもの一般を含み、例えば、上記糸を織って作られた織布、上記糸を編んで作られた編布に加えて、上記糸を一方向に並べたいわゆるUD(Uni-Directional)テープ、ランダムな配向で繊維を堆積させることによりシート状或いはマット状とした不織布を、少なくとも含む。
【0008】
上述のように、第3過程では樹脂により特定繊維クロス及び裏打ちシートを固体化させる。かかる特定繊維クロス及び裏打ちシートの固体化のための第3過程は、従来の複合材料製品を得るために用いられていた特定繊維クロスを樹脂で硬化させるための過程を踏襲したものとすることができる。
例えば、前記第3過程では、前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートの裏面側に他の特定繊維クロスを重ねた状態で、透明な樹脂により硬化させて複合材料製品とすることもできる。これにより、複合材料製品の厚さを増す方向で調節可能となる。
また、前記第3過程では、RFI法(樹脂フィルム注入法:Resin Film Infusion)又はRTM法(樹脂トランスファー成形法:(Resin Transfer Molding)により前記特定繊維クロス及び前記裏打ちシートを、透明な樹脂により硬化させて複合材料製品とするものであっても良い。
RFI法は、大雑把に言うと、特定繊維クロスの少なくとも一方側の面に固体の樹脂(樹脂製のシート)を重ねた状態でそれを型に入れ、型の内部を真空とし、加熱しながら加圧することにより特定繊維クロスを樹脂で硬化させるという公知の手法である。この場合、固体の樹脂は熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。熱可塑性樹脂を用いる場合では、加熱により一旦液体になった熱可塑性樹脂が特定繊維クロスに含浸し、その後冷却され固体に戻ることにより特定繊維クロスを固体化させる。熱硬化性樹脂を用いる場合では、特定繊維性クロスに含浸した液体の熱可塑性樹脂液体を加熱に伴う硬化反応により固体化させる。RFI法では一般には加工時間の短さから熱可塑性樹脂が選ばれることが多い。
RTM法は、大雑把に言うと、特定繊維クロスを型に入れた状態で液体の樹脂を型内に注入し、加熱しながら加圧することにより特定繊維クロスを樹脂で硬化させるというこれも公知の手法である。この場合、固体の樹脂は熱硬化性樹脂がよく用いられ、液体の状態で特定繊維クロスに含浸され、加熱による硬化反応で特定繊維クロスの固体化が進む。
なお、第3過程においては、樹脂は、少なくとも特定繊維クロス及び裏打ちシートに対してそれらの裏側面側から含浸させる必要があるが、それらの表面側からは含浸させる必要はない。つまり、最終的に得られる複合材料製品の裏側は樹脂で被覆されている必要があるが、表側は樹脂で被覆されていなくても良い。
【0009】
例えば、RFI法、RTM法を用いる場合には、第3過程は、加熱を伴うものとなる。
RFI法、RTM法を用いる場合に限らないが、第3過程を加熱を伴うものとする場合には、前記裏打ちシートとして、前記第3過程における加熱により溶融し、前記第3過程で用いられる樹脂と一体となる樹脂でできているものを用いることができる。この場合、裏打ちシートを構成する樹脂は、熱可塑性樹脂となる。
裏打ちシートをそのようなものとすると最終的に得られる複合材料製品では、裏打ちシートは、特定繊維クロス及び裏打ちシートを硬化させるための樹脂と一体化してその境界が曖昧になる。それにより、複合材料製品を見る者に裏打ちシートの存在感を感じさせなくなるから、複合材料製品の美観がより向上する可能性がある。例えば、裏打ちシートを構成する樹脂と、特定繊維クロス及び裏打ちシートを固体化させるための樹脂とを、同素材にするか、少なくともそれらの双方を熱可塑性樹脂とすれば両者は問題なく一体となるが、両樹脂は必ずしも同素材である必要はない。また、最終的に得られる複合材料製品の存在感をより感じさせないようにするのであれば、裏打ちシートを構成する樹脂も、それが溶融後に再び固体化したときに透明になるものを選択すれば良い。
【0010】
本願の製造方法では、前記第3過程を加熱を伴うものとするとともに、前記裏打ちシートとして、前記第3過程における加熱によってもその形状を維持する材料でできているものを用いることも可能である。
この場合には、最終的に得られる複合材料製品において、裏打ちシートが残ることになる。もっとも、裏打ちシートが残っても、それは特定繊維クロスの裏側に隠れているので、それが複合材料製品の美観を損ねる可能性は大きくない。
前記第3過程における加熱によってもその形状を維持する材料でできた前記裏打ちシートとして、紙や金属メッシュあるいは皮革でできている薄いシートなどを用いることが可能である。紙でできた裏打ちシートであれば、複合材料製品の製造コストの徒な上昇を抑制することができるし、また、紙であれば、例えば厚さについての様々なバリエーションを持つ既製品が存在するので、複合材料製品の設計の如何によってもその製造コストの上昇を抑制することができる。
【0011】
上述するように第2過程では、特定繊維クロスの表面側に刺繍により図柄を作る。かかる図柄には特に制限がない。例えば、色彩の異なる複数種類の刺繍糸を用いることにより、多色の色彩を持つ図柄を作成することも可能である。
前記第2過程で作られる図柄を前記刺繍糸により実質的に隙間なく塗り潰された塗りつぶし図形とすることが可能である。そのようにすることで、特定線維性クロスに隙間が発生することに基づく不都合を気にかけず刺繍密度を高めることができ、より美粧性に富んだ図柄を形成することができるようになる。
【0012】
裏打ちシートは、特定繊維クロスの裏面に添わせて配されるが、少なくとも、特定繊維クロスに設けられる図柄に対応する位置を、特定繊維クロスの裏面側から特定繊維クロスを覆うようにされる必要がある。また、特定繊維クロスは、第2過程が終了したらそのままの状態で、第3過程において特定繊維クロスとともに樹脂で固体化させられても良い。
他方、本願の製造方法は、前記第2過程の後に、前記図柄の輪郭に沿うようにして、前記図柄の外側に位置する部分の前記裏打ちシートを除去する過程を含んでおり、前記第3過程では、前記特定繊維クロス及び前記図柄の外側に位置する部分が除去された前記裏打ちシートを、透明な樹脂により固体化させて複合材料製品とするものであっても良い。
これによる効果は、例えば、裏打ちシートとして、第3過程における加熱により溶融し、第3過程で用いられる樹脂と一体となる樹脂でできているものを用いる場合であれば、樹脂間の密着性が最大となり、複合材料製品の強度が向上する。
また、裏打ちシートとして、第3過程における加熱によってもその形状を維持する紙等の材料を用いる場合には、裏打ちシートの厚さにもよるが、最終的に得られる複合材料製品において図柄部分をレリーフ状に浮き出させることが可能となるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の第1実施形態における第1過程が実行された後の状態を示す断面図。
図2】本願発明の第1実施形態における第2過程が実行された後の状態を示す断面図。
図3】(A)は、本願発明の第1実施形態における第2過程が実行された後の状態を示す平面図であり、(B)は、第2過程後に成形過程が実行された後の状態を示す平面図。
図4】本願発明の第1実施形態における第3過程が実行される過程であって加熱が行われる前の状態を示す断面図。
図5】本願発明の第1実施形態における第3過程が実行された後の状態を示す断面図。
図6】本願発明の変形例2における第3過程が実行される過程であって加熱が行われる前の状態を示す断面図。
図7】本願発明の第2実施形態によって得られた複合材料製品の図5よりも広い範囲を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1、第2実施形態、及びそれらの変形例について説明する。各実施形態及び変形例において、共通する対象には共通する符号を付すこととし、重複する説明は場合により省略することとする。
また、各実施形態及び変形例においてした記載による内容は、それらに記載された内容の組合せを行うことができない場合を除いて、任意に組合せることが可能である。
【0015】
≪第1実施形態≫
第1実施形態における複合材料製品の製造方法について説明する。
第1実施形態による製造方法では、第1過程として、まず、図1に示したようにして、特定繊維クロス100と、裏打ちシート200とを重ねる。図1において上側が特定繊維クロス100の表面側である。
裏打ちシート200は特定繊維クロス100の裏側に沿わせられる。この実施形態では、特定繊維クロス100と、裏打ちシート200とは同じ形状、大きさであり、これには限られないが例えば、一辺が2m程度の正方形である。特定繊維クロス100の形状、大きさは、最終的に得ようとする複合材料製品の形状、大きさと同じかそれを上回る形状、大きさとされている。この実施形態ではこれには限られないが、後述するように自動車のボンネットを最終的に得る複合材料製品とすることにしている。したがって、特定繊維クロス100の大きさは、ボンネットとしての複合材料製品よりも一回り大きい形状、大きさとされている。
これには限られないが、この実施形態では、特定繊維クロス100と、裏打ちシート200とは、ぴったりと重なり合うようにして重ね合わせられる。もっとも、裏打ちシート200は、特定繊維クロス100に重ね合わせられたときに、特定繊維クロス100のうちの後述する図柄が設けられる範囲に対応する範囲のすべてを特定繊維クロス100の裏面側から覆っていれば足りる。つまり、裏打ちシート200は、特定繊維クロス100と同じ形状、大きさである必要も無いし、特定繊維クロス100とぴったりと重なり合うようにして重ね合わせられる必要もない。
【0016】
特定繊維クロス100は、特定繊維製の糸で作られた布であり、この実施形態ではこれには限られないが、特定繊維製の糸で織られた織布である。既に述べたように、特定繊維クロス100は特定繊維製の糸で作られた編布でも良いし、同様の糸で作られたUDテープや不織布であっても良い。
特定繊維は、これも既に述べたように、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維の総称である。特定繊維製の糸は、これら3種類の特定繊維のうちの1種類だけでできていても良いが、これら3種類の特定繊維のうちの複数種類を混合して束ねたものであっても良い。アラミド繊維の代表的なものには、米国のE. I. du Pont de Nemours and Companyがケブラー(Kevlar)という商標を付して販売している合成繊維がある。特定繊維製の糸は、非常に細い特定繊維を、所望の太さになるまで多数束ねて作られている。例えば、特定繊維が炭素繊維の場合、特定繊維製の糸は1k〜12k(炭素繊維を1000本〜12000本束ねたもの)とすることができる。
特定繊維クロス100は市販のものでよい。
【0017】
裏打ちシート200は、シート状であり、この実施形態では樹脂でできている。樹脂は、熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂である場合の樹脂の例は、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノールをはじめ、ビニルエステル、ユリア、メラミン、ポリウレタンなど、あるいはそれらの変性樹脂例えば、変性ウレタン樹脂(エポキシ・ウレタン樹脂)、変性ノボラック樹脂(エポキシ・ノボラック樹脂)、エポキシビニルエステル樹脂であり、熱可塑性樹脂である場合の樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET(ポリエステル樹脂)、ナイロン、スーパーエンプラである、PEEK、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PEI(ポリエーテルイミド)である。
この実施形態では、これには限られないが、裏打ちシート200は熱可塑性樹脂であり、より具体的にはPETであるものとして説明を続ける。
【0018】
次に、第2過程として、重ね合わせられた特定繊維クロス100及び裏打ちシート200に対して刺繍糸300によって刺繍を行う(図2図3(A))。
刺繍は、刺繍糸300によって特定繊維クロス100の表面に、所望の図柄301が作られるようにして行う。刺繍は、刺繍糸300が、特定繊維クロス100と、裏打ちシート200との双方を貫くようにして行う。刺繍を行う場合に用いるステッチは、通常の布に対して通常の糸を用いて行う通常の刺繍で用いられている、公知乃至周知のステッチを用いれば良い。例えば、ロング アンド ショート ステッチ、サテンステッチ、ロックステッチ等を用いることができる。
刺繍で作られる図柄301はどのようなものであっても構わないが、この実施形態ではこれには限られないが、特定繊維クロス100の表面に作られる図柄を、刺繍糸300により実質的に隙間なく塗り潰された塗りつぶし図形とすることとしている。これには限られないがこの実施形態では、図3に示したように、星型の塗りつぶし図形が図柄301である。
刺繍糸300は、特定繊維製の糸である。特定繊維については、既に説明した通りであり、特定繊維製の糸についても、既に説明した通りである。刺繍糸300として、異なる複数種類の色彩を持つものを用いれば、一般的な刺繍と同様に、多色を含む図柄を得ることができる。炭素繊維は黒色であるのが普通であるが、ガラス繊維や、アラミド繊維は、所望の色彩に着色することが可能である。したがって、所望の色彩の刺繍糸を組合せることにより、複数の色彩を含む図柄を得ることも可能である。また、刺繍の方法によって、図柄に立体的なある程度の盛り上がりを作ることも可能である。
次に、刺繍が終わった後の特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を、必要に応じて、複合材料製品の形状に成形する。この実施形態における複合材料製品は、上述したように自動車のボンネットであるから、例えば、図3(B)に示したような形状に成形を行う。成形の方法はどのようなものでも構わないが、公知或いは周知の方法で特定繊維クロス100と裏打ちシート200とをまとめて切断することにより、この実施形態ではこれを行う。
なお、この実施形態では、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200は同じ形状、大きさに成形される。
【0019】
次に、第3過程として、必要に応じて成形が終わった後の特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を、透明な樹脂により固体化(硬化を含む)させることにより、複合材料製品を完成させる。樹脂が透明というのは、複合材料製品が完成したときに特定繊維クロス100と裏打ちシート200の硬化に用いた樹脂が透明である、という意味である。この場合の透明は、無色透明でも有色透明でも構わない。
特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を固体化させるための方法は、従来の複合材料製品を得るために用いられていた特定繊維クロスを樹脂で固体化させるための方法と同じで良い。
例えば、RFI法やRTM法を用いて、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を固体化または硬化させることが可能である。
【0020】
この実施形態では、これには限られないが、RFI法を用いて特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を固体化させるものとする。
特定繊維クロスを樹脂で硬化させる従来のRFI法は、上述した通り、特定繊維クロスの少なくとも一方側の面に固体の樹脂(樹脂製のシート)を重ねた状態でそれを型に入れ、型の内部を真空とし、加熱しながら加圧することにより特定繊維クロスを樹脂で固体化させるという公知の手法である。固体の樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱により一旦液体になって特定繊維クロスに含浸し、その後冷却され固体に戻ることにより特定繊維クロスを固体化させる。
この実施形態では、従来のRFI法における特定繊維クロスを、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200に置き換える。特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を、例えば、図4に示したように、その両面に配した樹脂製のシートである樹脂シート400によって挟み込む。この場合に樹脂シート400を構成するために用いることができる樹脂は、熱可塑性樹脂としては、例えば、(ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエステル樹脂)、ナイロン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)であり、熱硬化性樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール、ビニルエステル、ユリア、メラミン、ポリウレタンなどが挙げられる。樹脂シート400は、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200に対応した形状、大きさとされる。また、両樹脂シート400の厚さは、後述する表樹脂層、及び裏樹脂層に必要とされる厚さに応じて決定することができ、両者が必ずしも同じである必要はない。
2枚の樹脂シート400(ここでは樹脂シート400が熱可塑性樹脂である場合を例として説明する。)によって挟み込まれた特定繊維クロス100及び裏打ちシート200は、図示せぬ型に入れられる。その状態で、型内を真空化した状態で加熱することにより、樹脂シート400及び裏打ちシート200をともに溶融させる。加熱の温度はそれが可能な温度にまで上げる。樹脂シート400と裏打ちシート200は溶融して、少なくともそれらの一部が特定繊維クロス100に含浸する。その後冷却されることにより、樹脂シート400及び裏打ちシート200に由来する樹脂は固体化する。それにより、特定繊維クロス100は、その表面側を主に図4の上側の樹脂シート400に由来する樹脂による表樹脂層501に、また、その裏面側を主に裏打ちシート200及び図4の下側の樹脂シート400に由来する樹脂による裏樹脂層502にそれぞれ覆われた状態となる(図5)。
これにより、複合材料製品が完成する。
複合材料製品において、刺繍糸300によって作られた図柄301は、透明な表樹脂層501を通して視認できるような状態となる。また、図柄301がある程度立体的である場合には、複合材料製品の表面側における図柄301がある部分は、図柄301が無い部分から幾らか盛り上がった状態となる。
また、樹脂シート400を構成する樹脂と裏打ちシート200を構成する樹脂とが加熱によりともに溶融し、硬化後に一体となるようなものであれば、樹脂シート400を構成する樹脂と裏打ちシート200とのそれぞれに由来する樹脂は、それらの硬化後にもはや区別がつかなくなり、裏打ちシート200と、図4における下側の樹脂シート400の境界に基づく境界はもはや認識できなくなる。例えば、裏打ちシート200を構成する樹脂と、樹脂シート400を構成する樹脂とがそれぞれ同素材でできていれば、それらはまったく境界を持たない状態で一体化する。とはいえ、樹脂シート400を構成する樹脂と裏打ちシート200とのそれぞれに由来する樹脂は、同じ素材でなくとも、それらの境界を少なくとも目視では区別できないようにするのは可能である。
なお、この実施形態では、第3過程を実行する場合に、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を、それらの表裏両面に配した樹脂シート400により挟み込んだが、それらの少なくとも一方側にのみ樹脂シート400を配するようにしても良い。特に特定繊維クロス100の表面側の樹脂シート400を省略する場合には、複合材料製品の表面側は樹脂に覆われないこともあり得るが、それは本願発明による複合材料製品として許容される。
また、この実施形態で得た複合材料製品の表樹脂層501の表面のうち、図柄外の範囲を適当な塗料で塗装することも可能である。
【0021】
<変形例1>
変形例1による複合材料製品の製造方法は、第1過程及び第2過程は第1実施形態と同じであり、その第3過程のみが第1実施形態の場合と異なる。第1実施形態では、RFI法を用いて特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を固体化させたが、変形例1では、RTM法を用いて、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を固体化させる。
特定繊維クロスを樹脂で硬化させる従来のRTM法は、上述した通り、特定繊維クロスを型に入れた状態で液体の樹脂を型内に注入し、加熱しながら加圧することにより特定繊維クロスを樹脂で固体化させるという公知の手法である。この場合、固体の樹脂は熱硬化性樹脂であり、液体の状態で特定繊維クロスに含浸したものが加熱による硬化反応で特定繊維クロスを硬化させる。
この実施形態では、従来のRTM法における特定繊維クロスを、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200に置き換える。特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を入れた型に注入される樹脂は上述のように熱硬化性樹脂であり、その素材は、例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノールをはじめ、ビニルエステル、ユリア、メラミン、ポリウレタンなど、あるいはそれらの変性樹脂例えば、変性ウレタン樹脂(エポキシ・ウレタン樹脂)、変性ノボラック樹脂(エポキシ・ノボラック樹脂)、エポキシビニルエステル樹脂などである。この場合、裏打ちシート200を構成する樹脂は、熱硬化性樹脂でも構わないが、熱可塑性樹脂の方が良い。素材が熱可塑性樹脂の場合には加熱の過程で裏打ちシート200が溶融するが、素材が熱硬化性樹脂の場合には、それが溶融しないからである。熱硬化性樹脂である、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を硬化させるための樹脂と、熱可塑性樹脂である裏打ちシート200を構成するための樹脂とは、前者が硬化する温度よりも低温で後者が溶融するようなものとされているのが好ましい。
特定繊維クロス100及び裏打ちシート200が入れられた図示せぬ型に特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を硬化させるための樹脂が注入され、その状態で加圧と加熱が行われる。そうすると、仮に熱硬化性樹脂である、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を硬化させるための樹脂が硬化する温度が、熱可塑性樹脂である裏打ちシート200を構成するための樹脂が溶融する温度よりも高かったとすると、両樹脂が一旦ともに液体となって混ざり合い、特定繊維クロス100に含浸する。その後、更に温度を上げて熱硬化性樹脂を硬化させるとともに、温度を下げて熱可塑性樹脂を固体化させることにより、第1実施形態の場合と同様の複合材料製品を得ることができる。より具体的には、複合材料製品は、その表面側を表樹脂層に、また、その裏面側を裏樹脂層にそれぞれ覆われた状態となる。
第1実施形態の場合と同様に、変形例1の複合材料製品において、刺繍糸300によって作られた図柄は、透明な表樹脂層を通して視認できるような状態となる。また、図柄がある程度立体的である場合には、複合材料製品の表面側における図柄がある部分は、図柄が無い部分から幾らか盛り上がった状態となる。
また、樹脂シート400を構成する樹脂と裏打ちシート200を構成する樹脂とは、それらが上述したような条件を充足するのであれば、硬化後に一体となり、両者の境界は少なくとも曖昧になる。
【0022】
<変形例2>
変形例2による複合材料製品の製造方法は、第1過程、第2過程は、第1実施形態の場合と同一である。
変形例3では、第2過程が終了した後、裏打ちシート200のうち、図柄に対応していない部分、言い換えれば、刺繍糸300で刺繍されていない部分が図柄の輪郭に沿って除去される。裏打ちシート200のうちの刺繍糸300で刺繍されていない部分の除去は、例えば、裏打ちシート200の切断等の公知技術或いは周知技術によって行うことができる。また、裏打ちシート200のうちの刺繍糸300で刺繍されていない部分の除去は、特定繊維クロス100及び裏打ちシート200の成形の前に行われても良いし、後に行われても良い。
その後第3過程を、第1実施形態或いは変形例1の場合と同様にして実行しても良いが、この実施形態では、裏打ちシート200の裏側に、刺繍のされた上述の特定繊維クロス100とは別の特定繊維クロス101を更に追加してから、第3過程を実行する。この新たな特定繊維クロス101は、成形後における刺繍のされた特定繊維クロス100と同じ形状、大きさであり、両特定繊維クロス100、101は互いに食み出ないようにぴったりと重ね合わせられる(図6参照)。
その後、例えば、第1実施形態で説明したのと同じように、図6に示したようにして、特定繊維クロス100、101と裏打ちシート200とを樹脂シート400にて挟み込んでからそれらを型に入れ、真空化した状態で、加圧と加熱を行う。
それにより得られる複合材料製品は、概ね第1実施形態で得られるものと同じであるが、特定繊維クロス100の表面において図柄300が存在する部分は、その周囲よりも、第1実施形態の場合と比較すれば幾らか突出の程度が大きくなる。
【0023】
≪第2実施形態≫
第2実施形態における複合材料製品の製造方法は、第1実施形態の場合と概ね同じである。
第2実施形態における複合材料製品の製造方法において、第1実施形態の場合と異なるのは、第2実施形態における裏打ちシート200が、第3過程においてなされる加熱によってもその形状を維持するような素材でできている、ということである。
第2実施形態における裏打ちシート200は、例えば紙でできており、或いは、それが樹脂製なのであれば、熱硬化性樹脂によってできている。この実施形態では、裏打ちシート200は、紙でできているものとする。紙の厚さは、後述する図柄部分の突出の程度に応じて決定することが可能である。紙に代えて、革や金属メッシュのシートで裏打ちシート200を構成しても良い。裏打ちシート200の厚さは、複合材料製品における例えば、25μm〜200μmとすることができる。
【0024】
第2実施形態では、まず、第1実施形態の場合と同様に、裏打ちシート200の素材のみ変えて、第1実施形態で説明した第1過程及び第2過程を実行する。そして、第2実施形態でも、第1実施形態の場合と同様の成形を行う。
次いで、第2実施形態では、必須ではないが、変形例2で説明したようにして、図柄の外の部分の裏打ちシート200を、図柄の輪郭に沿って除去する。
その状態で、第3過程を実施する。第2実施形態では、裏打ちシート200は、加熱を伴う第3過程が実行された後においてもその形状が維持されるのであるから、第3過程においてRFI法が選択されても、RTM法が実行されても代わりがない。
特定繊維クロス100及び裏打ちシート200を硬化させる第3過程が終了すると、複合材料製品を得られる。
この場合、最終的に得られた複合材料製品の図柄301が存在する位置における特定繊維クロス100の裏面側には、図7に示したように裏打ちシート200が残ることになる。したがって、第2実施形態の製造方法によって得られる特定繊維クロス100では、表樹脂層501の表面側の表面における図柄301が存在する部分は、図柄301が無いその周辺に比べて、第1実施形態の製造方法によって得られる複合材料製品の場合よりも、裏打ちシート200の厚さが効くため大きく盛り上がることになる。
【符号の説明】
【0025】
100 特定繊維クロス
101 特定繊維クロス
200 裏打ちシート
300 刺繍糸
301 図柄
400 樹脂シート
501 表樹脂層
502 裏樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7