特許第6984926号(P6984926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6984926金属基複合材料の製造方法及びプリフォームの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6984926
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】金属基複合材料の製造方法及びプリフォームの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/10 20060101AFI20211213BHJP
   B22D 19/00 20060101ALI20211213BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20211213BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   C22C1/10 G
   B22D19/00 E
   B22F3/11 Z
   C04B35/577
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-70609(P2021-70609)
(22)【出願日】2021年4月19日
【審査請求日】2021年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515243372
【氏名又は名称】アドバンスコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】裴 智璞
(72)【発明者】
【氏名】パイリン シリパッタナキックン
【審査官】 松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−241130(JP,A)
【文献】 特開平11−264032(JP,A)
【文献】 特開2002−194456(JP,A)
【文献】 特開2010−258458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/08
B22D 19/00
B22F 3/11
C04B 35/577
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で硬化する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物に、更に、有機溶媒、或いは、有機溶媒100質量部に対して水が100質量部以下の混合溶媒を加えた混合物を用いて成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製し、得られたプリフォームに、金属アルミニュウムまたはアルミニュウム合金を窒素雰囲気で非加圧浸透させて、アルミニュウムとセラミックスとを含有してなる金属基複合材料を製造することを特徴とする複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記マグネシウム含有粉末が、金属マグネシウム、マグネシウム合金及びマグネシウムケイ化物からなる群から選ばれる少なくともいずれかの、平均粒子径が0.5μm以上、150μm以下の粉末である請求項1に記載の複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記混合物に、前記マグネシウム含有粉末を、前記セラミックス粉末100質量部に対して、マグネシウム換算で、質量基準で、0.3%以上、10%以下となる範囲内で含有させる請求項1または2に記載の複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記無機バインダーが水ガラスであり、前記有機無機バインダーが、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれるいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項5】
非加圧浸透法を利用してのアルミニュウム系の金属基複合材料の製造に適用できるセラミックス製のプリフォームを作製するためのプリフォームの作製方法であって、
マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で硬化する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物に、更に、有機溶媒、或いは、有機溶媒100質量部に対して水が100質量部以下の混合溶媒を加えた混合物を用いて成型して混合体を得、得られた混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粉末と、金属アルミニュウム(Al)またはAl合金からなる金属基複合材料を得るための複合材料の製造方法、及び、該製造方法に用いることができるプリフォームの作製方法に関し、詳しくは、アルミニュウム系の金属マトリックスに、セラミックス粉末を強化材として複合化させてなる金属−セラミックス複合材料を、生産性及び品質を飛躍的に向上させることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Al合金等にセラミックスを複合化させたアルミニュウム系の金属基複合材料は、軽量、高強度、高剛性であることから、機械部品として、半導体液晶製造装置やロボットアーム等として広く使用されている。また、高熱伝導、低熱膨張材料として、ヒートシンク、放熱スプレッダー等に広く使用されるようになってきている。
【0003】
セラミックス粉末とAl合金等からなる複合材料は、いわゆるMMC(Metal Matrix Composites=金属基複合材料)の一種であり、通常、高圧含浸法、鋳造法、非加圧浸透法などの方法で製造されている。
【0004】
高圧含浸法は、セラミックス粉末またはセラミックス粉末の成型体(プリフォーム)に、Al合金等の溶湯を高圧プレスで強制的に浸透させて、セラミックス粉末とAl合金等とを複合化させる方法である。高圧含浸法は、溶融したAl合金等を高圧で含浸させるので、プレス機等の高価な装置が必要である。更に、通常の方法では製品形状で含浸できないため、Al合金等が取り囲んだプレス含浸品から製品を加工で取り外す必要があり、製品形状にするための加工コストがかかるといった問題がある。
【0005】
鋳造法では、炭化けい素またはアルミナ等のセラミックス粉末をAl合金等の溶湯で高速撹拌を行ってセラミックス粉末含有Al合金溶湯を作製し、砂型金、金型、ロストワックス型等慣用の型に鋳造して、セラミックスとAl合金等との複合体を製造する。この方法では、金属マトリックス中のセラミックス粉末の含有量が高くなると溶湯の流れ性が悪くなるので、一般的に複合体中のセラミックス粉末の含有量は30v%が上限とされており、複合体中のセラミックスの含有率が低いという問題がある。
【0006】
非加圧浸透法は、セラミックス粉末の充填体や成型体(プリフォーム)に、Mgと窒素の雰囲気中、非加圧でAl合金等の溶湯を浸透させて、プリフォーム等に含浸させて複合体を得る方法である。例えば、SiC、アルミナ等のセラミックス粉末などの粉末充填体、または、セラミックス粉末にシリカ等の無機バインダーを添加・成型・焼成して得たプリフォームに、窒素とMg蒸発雰囲気で、Al合金等が溶解する約700℃以上の温度にして、非加圧で、セラミックス粉末の隙間にAl合金等の溶湯を浸透させて、セラミックス粉末とAl合金等の複合体を製造する方法である。この非加圧浸透法の原理は、Mgと窒素の雰囲気とすることで、セラミックスとAl合金等の濡れ性を向上させ、いわゆる毛管現象を促進させて、粉末充填体やプリフォームの隙間(空隙)内に、Al合金等の溶湯を非加圧で浸透させるものである。
【0007】
非加圧浸透法では、セラミックス充填率を高くして空隙を少なくすることにより、複合体中のセラミックスの充填率を高くすることができ、ヤング率、熱伝導率、熱膨張係数等の物性値が高いセラミックスとAl合金の複合体(MMC)の製造ができる。また、プリフォームを使用して製造した場合は、プリフォームの形状のままAl合金を浸透させることができるので、大きな加工を必要としない製品形状に近いニアネットでMMC複合体を製造する方法として、注目されている。
【0008】
非加圧浸透法については、従来より種々の検討がされている。例えば、特許文献1では、セラミックスフィラー材料による透過性材料に、溶融Al合金を自然浸透により浸透させることで金属マトリックス複合材料を製造する場合に、Al合金を、少なくとも3重量部%のマグネシウムを含むものにすることを提案している。また、マグネシウムを含むAl合金は、セラミックスを湿潤させるので、金属とセラミックスとの間に良好な接合が期待されるとしている。
【0009】
また、特許文献2では、実質的に非反応性充填材に隣接して、マトリックス金属の源を配置し、マトリックス金属を該充填材に自発的に浸透させる際に、浸透増進剤前駆体を存在させることを提案しており、浸透用雰囲気が窒素を含む場合に、浸透増進剤前駆体として、カルシウム、マグネシウム及びストロンチウムから選ばれる物質を使用するとしている。そして、このような浸透増進剤が自発系に提供されることで、自発浸透を行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2641901号公報
【特許文献2】特許第2930991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来技術において、本発明者らは、高圧含浸法で使用するプレス機等のような高価な装置を必要とせずに、複合体中のセラミックス粉末の含有率を高めることが可能で、製品形状に近いニアネットで金属基複合材料(MMC複合体)を製造することが可能な非加圧浸透法に注目し、該製造方法をより優れたものできれば、「セラミックス粉末とAl合金等からなる金属基複合材料」のさらなる利用を促進できるとの認識をもった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、特にセラミックス粉末を成型・硬化して得たプリフォームに、金属AlまたはAl合金(Al合金等)の溶湯を非加圧で浸透させる方法を飛躍的に改良し、より簡便に、且つ、安定して全体に均一な状態の「セラミックス粉末とAl合金等からなる金属基複合材料」を提供できる非加圧浸透法の改良技術を開発することにある。本発明の目的は、中でも、セラミックス粉末を含有する混合物を成型し、得られた成型物を焼成して硬化(固化)させる簡便な方法で、非加圧浸透法に好適に利用でき、これにより従来方法よりも効率的に金属基複合材料を製造することが可能になるプリフォームの作製技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、以下の複合材料の製造方法によって達成される。すなわち、本発明は、Al合金等とセラミックスとを含有してなる金属基複合材料を製造する下記の複合材料の製造方法を提供する。
[1]マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物を用いて成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製し、得られたプリフォームに、金属アルミニュウムまたはアルミニュウム合金を非加圧で浸透させて、アルミニュウムとセラミックスとを含有してなる金属基複合材料を製造することを特徴とする複合材料の製造方法。
【0014】
上記した本発明の複合材料の製造方法の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[2]前記マグネシウム含有粉末が、金属マグネシウム、マグネシウム合金及びマグネシウムケイ化物からなる群から選ばれる少なくともいずれかの、平均粒子径が0.5μm以上、150μm以下の粉末である上記[1]に記載の複合材料の製造方法。
[3]前記混合物に、前記マグネシウム含有粉末を、前記セラミックス粉末100質量部に対して、マグネシウム換算で、質量基準で、0.3%以上、10%以下となる範囲内で含有させる上記[1]または[2]に記載の複合材料の製造方法。
[4]前記無機バインダーが水ガラスであり、前記有機無機バインダーが、シリコーン樹脂、Siアルコキシド及びAlアルコキシドからなる群から選ばれるいずれかである上記[1]〜[3]のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
[5]前記混合体を、前記混合物に、更に、有機溶媒、或いは、有機溶媒100重量部に対して水が100重量部以下の混合溶媒を加えた混合物を用いて成型して得る上記[1]〜[4]のいずれかに記載の複合材料の製造方法。
【0015】
また、本発明は、別の実施形態として、下記のプリフォームの作製方法を提供する。
[6]非加圧浸透法を利用してのアルミニュウム系の金属基複合材料の製造に適用できるセラミックス製のプリフォームを作製するためのプリフォームの作製方法であって、マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物を用いて成型して混合体を得、得られた混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを得ることを特徴とするプリフォームの作製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特に、セラミックス粉末を成型・硬化して得たプリフォームに、Al合金等の溶湯を非加圧で浸透させる複合材料の製造方法を飛躍的に改良されて、より簡便に、且つ、安定して、全体に均一な「セラミックス粉末とAl合金等からなる金属基複合材料」を提供する技術の提供が可能になる。本発明によれば、中でも、セラミックス粉末を含有する混合物を成型し、得られた成型物を焼成して硬化(固化)させる簡便な方法で、非加圧浸透法に好適に利用でき、利用することで、効率的に安定して良好な状態の金属基複合材料を製造することが可能になる新規なプリフォームの作製技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の複合材料の製造方法で使用する非加圧浸透法に用いる容器内の配置状態を説明するための模式図である。
図2】本発明の複合材料の製造方法で行う非加圧浸透法によってプリフォームへ溶湯金属が浸透し、含浸する様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0019】
まず、本発明で検討したセラミックス粉末とAl合金等からなる金属基複合材料(以下、単に複合材料或いは複合体とも呼ぶ)を製造するための、従来より行われている、プリフォームを用いた非加圧浸透法の一般的な手順の概略について説明する。まず、セラミックス粉末に、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の有機バインダー及び必要に応じて、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の無機バインダーを添加した混合原料を用意する。次に、上記した混合原料を、プレス成型、鋳込み成形、押し出し成型、振動法などの方法で成型し、混合体を得る。そして、得られた混合体を約800℃〜1200℃程度の温度で焼成してプリフォームを作製する。
【0020】
上記のようにして得たプリフォームを用い、下記のようにして非加圧浸透法で金属基複合材料を調製する。図1に示したように、カーボン製等の器の中に、プリフォームと、Al合金等を配置し、この器を、金属Mg粉末が挿入されているボックス炉(不図示)内に入れる。このボックス炉内に窒素を流しながら、加熱して約700℃以上の温度にして、ボックス炉内に配置させたMgを蒸発させると同時にボックス炉内を窒素雰囲気の状態にして保持する。すると、図2に示したように、加熱によってAl合金等が溶解し、溶湯がプリフォームの隙間に浸透して、プリフォームにAl合金が含浸してなるMMC複合体が得られる。
【0021】
以下に、このMMC複合体を製造に利用されている非加圧浸透法の原理を説明する。上記プリフォームに溶融したAl合金等の浸透を行う雰囲気では、Mg粉末が蒸発して窒素と反応してMg32を生成し、生成したMg32は、ボックス炉内の器に配置させたプリフォームのセラミックス粉末表面に沈着する。セラミックス粉末とAl合金等の溶湯の濡れ性は一般的にはよくない。しかし、Mg32がセラミックス粉末表面に存在すると、Al合金等との濡れ性が飛躍的に向上する。この結果、Al合金等の溶湯が、プリフォームを構成しているセラミックス粉末に濡れて、プリフォームを構成しているセラミックス粉末の隙間(空隙)内に毛管現象で非加圧浸透する。また、生成したMg32とアルミニュウム金属は、Mg32+Al→Mg+AlNの反応を起こし、セラミックス表面には極薄いAlN相が生成して、このAlN相もAl合金の溶湯の濡れ性を向上させる。この反応で生じたMg蒸気は、プリフォームの内部に浸透して同じような反応を繰り返しながら、溶融したAl合金等が順次プリフォーム内に浸透する。このようにして、Al合金等の溶湯が、非加圧でプリフォーム全体に浸透し、セラミックス粉末内に含浸していくことになる。
【0022】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記の方法には下記のような課題がある。まず、上記した反応は、浸透開始時からプリフォーム全体に生じるものではない。すなわち、浸透開始時においては、MgとN2の両方が存在するプリフォーム表面で最初に反応して、順次、プリフォーム内部に進行していく。このため、プリフォームの表面及び内部の全体にAl合金等の溶湯を含浸させるには長時間を必要とし、製造効率に劣るといった課題がある。また、プリフォーム内にMg32が生成しない部分が生じて、プリフォーム全体にAl合金等が浸透しないことが原因して不均一なAl合金等の含浸体となり、良好な複合材料が製造できない場合があった。
【0023】
本発明者らは、これらの課題を解決して、セラミックス粉末を成型硬化して得たプリフォームに、Al合金等の溶湯を非加圧で浸透させる方法を飛躍的改良し、プリフォームへの溶湯の迅速な浸透を可能にして、安定して均一な品質を向上させた「セラミックス粉末とAl合金等からなる複合材料」を提供する技術を開発すべく、鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
【0024】
本発明の複合材料の製造方法は、金属Mg粉末等のマグネシウム含有粉末と、セラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物を原料に用い、該混合物を成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製し、得られたプリフォームに、Al合金等の溶湯を非加圧で浸透させて、アルミニュウム合金とセラミックスと有してなる複合体を製造することを特徴とする。特に、本発明の特徴は、上記構成によって、従来にない有用な構成のプリフォームが得られる新たな作製方法を見出したことにあり、かかるプリフォームを使用することで、Al合金等の溶湯をプリフォーム内に、非加圧で迅速に浸透させることが可能になり、プリフォーム内に均一にAl合金等が含侵してなる複合体の製造を実現したものである。以下、本発明の複合材料の製造方法の各工程について、具体的に説明する。
【0025】
<マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含む混合物の調製>
本発明の製造方法で使用する混合物は、金属Mg粉末等のマグネシウム含有粉末と、セラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む。以下、これらの原料について説明する。
【0026】
(セラミックス粉末)
本発明で用いるセラミックス粉末は、特に限定されないが、下記に挙げるようなものをいずれも使用することができる。例えば、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC)及びTiC(炭化チタン)等の炭化物、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)及びホウ酸アルミニュウム等の酸化物、窒化アルミニュウム(AlN)及び窒化ケイ素(Si34)等の窒化物など、一般的なセラミックス粉末を使用することができる。
【0027】
上記に挙げたようなセラミックス粉末の粒子径は、特に限定されないが、例えば、平均粒子径が1μm以上、200μm以下程度のものが適当である。平均粒子径が1μm未満のセラッミクス粉末では、例えば、プレス成型等して得た混合体や、該混合体を焼成して得たプリフォーム中に形成される隙間(孔径)が小さすぎて、溶融させたAl合金等が浸透しない場合があるので適当ではない。すなわち、非加圧浸透法では、溶融したAl合金等が、非加圧で、自然に毛管現象で隙間に浸透させることが必要であるが、セラミックス粉末の粒子間の隙間(孔径)が小さ過ぎると、浸透が不十分となる。一方、平均粒子径が200μm超では、粒子径が大きすぎるので、混合物を用いて混合体とする際に、プレス成型や、振動成型で粒子充填を行うことが困難となり、その後に行う混合体の成型が難しくなる。また、平均粒子径が200μm超のセラミックス粉末を用いた場合は、粒子間の隙間が数十μm以上と、隙間間隔が大きすぎるので、非加圧浸透法において重要な毛管現象でのアルミニュウム含浸が起こりにくくなる。
【0028】
本発明の製造方法では、大きな粒子と、小さな粒子のセラッミクス粉末を、用途に応じて適宜に配合して混合物を調製し、得られた混合物によって、混合体を得る際のセラミックス粉末の充填状態を適宜にコントロールして、必要な物性値を具備するプリフォームを得るようにすることも、好ましい形態である。
【0029】
(マグネシウム含有粉末)
本発明の製造方法では、マグネシウム含有粉末として、例えば、金属マグネシウム、マグネシウム合金及びマグネシウムケイ化物からなる群から選ばれる少なくともいずれかの粉末を使用することができる。具体的には、例えば、先に説明した金属マグネシウム粉末以外に、Al−Mg系合金、Al−Mg−Si系合金等のマグネシウム合金や、マグネシウムの含有量が高いMgSi等の化合物などの粉末を使用することができる。
【0030】
また、平均粒子径が、0.5μm以上、150μm以下のマグネシウム含有粉末を使用することが好ましい。150μm超の粉末では粗すぎて、先に述べたセラミックス粉末と均一に混合できない場合があるので、好ましくない。更に、粒子径が粗いとMg含有粉末の表面積が小さくなり、プリフォーム内に含有させたMgが雰囲気内の窒素と反応して窒化された後のMg32の生成量が少なくなる。ここでMg32の生成量が少ないと、プリフォームへのアルミニュウム含浸速度が遅くなるので好ましくない。一方、Mg含有粉末は、細かい程表面積が大きくなり、空気中の酸素で酸化され易くなってMgOとなり、Mg量が少なくなるので好ましくない。このため、平均粒子径が0.5μm以上のMg含有粉末を用いることが望ましい。また、平均粒子径が150μm超では、全体の表面積が小さくなり、先に述べたように、Mg32の生成量が少なくなるので好ましくない。
【0031】
Mg含有粉末の混合量としては、質量基準で、セラミックス粉末100質量部に対し、Mg換算で、0.3%以上、10%以下となる範囲内で使用することが好ましい。より好ましくは0.5%以上、7%以下、更には0.5%以上、5%以下、となる範囲内でMg含有粉末を使用することが望ましい。Mg含有粉末の混合量が0.3%未満と少ないと、Mgの生成量が少なくなり、Al合金等の溶湯の浸透速度が十分に促進されないので好ましくない。一方、Mg含有粉末の混合量が10%超であると、これらの原料で作製したプリフォーム中におけるMg含有粉末の分布状態が局部的に多くなり、このことに起因して浸透したAl合金の量が不均一になる恐れがあるので、好ましくない。先に挙げたようなMg合金やMg含有化合物を用いる場合は、これらに含まれるMgに換算して、混合量を決定すればよい。
【0032】
(バインダー)
本発明は、プリフォームの作製に使用する混合物として、上記したMg含有粉末及びセラミックス粉末に、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含むものを使用したことを特徴とする。上記した特性を有する有機無機バインダーとしては、例えば、シリコーン樹脂やアルコキシド等が挙げられる。また、無機バインダーとしては、水ガラス、アルミナセメント等が挙げられる。
【0033】
本発明の製造方法では、その後の工程で、これらのバインダーを含む混合物を成型して得られた混合体を、500℃以下の温度で焼成してプリフォームを調製することを要するため、500℃以下の焼成温度でプリフォームが強度を発現するように、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有するバインダーを用いる。本発明では、上記バインダーを含む混合物を成型し易いように、更に、混合物に、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール及びセルロース等のような有機バインダーを加えてもよい。これらの有機バインダーは、その後に行う500℃以下の温度で行う焼成工程で燃焼されてしまい、プリフォームの強度の発現には寄与しない。このため、本発明の製造方法では、混合物の調製に、上記した特性を有する、無機有機バインダーや無機バインダーを使用することが不可避である。
【0034】
上記の特性を有する本発明で好適に利用できるバインダーについて、例を挙げて説明する。シリコーン樹脂は、「Si−O−R」(Rは有機物)の化学式で表される、Si(シリコン)、酸素、有機化合物で構成されたポリシロキサン構造を有し、低温では有機バインダーとして機能し、高温で焼成した後は、無機バインダーとして機能するものである。また、Si(OC254で代表されるSi−アルコキシドは、低温でモノマーからポリマー(シリコーン樹脂)になるので、混合物を成型して混合体とした場合に、該混合体は成型強度を保つことができ、該混合体を焼成した後には、最終的にSiO2となり、無機バインダーとして機能する。固体状のシリコーン樹脂を用いる場合は、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコールや、キシレンやトルエン等の有機溶媒に溶解して使用する。Si−アルコキシドのポリマーは液体であり、そのままか、希釈して使用することができる。本発明の製造方法において、シリコーン樹脂を予め有機溶媒に溶解したものや、シリコーン樹脂そのものが液体状のものは、いずれもそのまま使用できる。上記したバインダーは、必要に応じて有機溶媒や水を添加し希釈して使用してもよい。この点については後述する。
【0035】
本発明では、無機バインダーとして、水ガラス(珪酸ナトリュウム)を好適に使用することができる。その場合は、他の材料と混合し易いように、溶液状のもの、いわゆる1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラスを使用することが好ましい。また、無機バインダーとして、アルミナセメントを使用する場合は、アルミナセメントを少量の水に溶かして、セラミックス粉末等の他の原料に混合することが好ましい。
【0036】
本発明で使用する上記したバインダーの量は、混合体を作製するための成型方法にもよるが、特に限定されない。無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれを使用した場合も、混合体を焼成してプリフォームにした際に、SiO2等の無機酸化物になってプリフォーム中に残留し、複合体中に含まれることになることから、複合化原料に用いるセラミックスとの兼ね合いでバインダーの種類を適宜に選択することが好ましい。例えば、SiCやSi等の非酸化物系セラミックスを使用する場合や、AlやTiO等の酸化物セラミックスを使用する場合は、シリコーン樹脂や水ガラス等のシリカ系バインダーを用いれば、この点についての問題はない。バインダーの使用量は、混合物を成型する際の加工性や、焼成後のプリフォームの硬さなどを考慮して適宜に決定すればよい。例えば、セラミックス粉末100質量部に対して、0.3質量部以上、110質量部以下程度の量で添加して使用することが好ましい。
【0037】
(溶媒)
本発明を構成する上記した原料からなる混合物は、該混合物を用いて成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製するものであるため、混合体の成型性を高めるなどの目的で、上記した材料に加えて、更に、有機溶媒や、水と有機溶媒との混合溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類や、ノルマルヘキサン等の直鎖状アルカン類などが使用できる。また、本発明では、水とこれらの有機溶媒との混合溶媒を用いることもできる。
【0038】
しかし、本発明者らの検討によれば、水を使用すると、使用量にもよるが、混合物中のMg含有粉末中のMgが水と反応して水酸化物となってしまい、プリフォーム内で必要になる、浸透(含浸)促進剤としての機能が損なわれることがあることがわかった。すなわち、例えば、金属Mg粉末を用いた場合、混合物中のMg粉末は水分が多いと、Mg+2H2O→2Mg(OH)2+H2の反応で加水分解が起こり、その結果、非加圧浸透において有用なMg32を生成しなくなり、溶融したAl合金の含浸が促進される効果が損なわれる場合がある。このため、混合物を構成するMg含有粉末が加水分解されないように、混合物に用いる溶媒には、水分を含まない有機溶剤を用いるか、水分量を低減した混合溶媒を用いることが好ましい。具体的には、水と有機溶媒との混合溶媒を使用する場合は、有機溶媒100質量部に対して、水の使用量を100質量部以下に低減することが肝要である。本発明者らの検討によれば、上記に挙げたような有機溶媒の場合は勿論、水分量を低減した混合溶媒を用いた場合も、混合物中のMg含有粉末は水とほとんど反応せず、該混合物を成型して得た混合体中には、Mg含有粉末の状態のまま存在するので、該混合体を焼成することで非加圧浸透に好適に用いることができるプリフォームの製造が可能になる。
【0039】
<混合体及びプリフォームの作製>
本発明では、上記のような構成の混合物を用いて成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製する。以下述べるように、本発明では、先に述べた構成の混合物を用いて混合体を得、更に、得られた混合体を本発明で規定する温度で焼成してプリフォームを得たことで、次の非加圧浸透工程で使用した場合に、浸透(含浸)促進剤としての機能を安定して十分に発現できる状態の、Mg含有粉末を含んでなる従来技術になかった有用なプリフォームの提供を実現した。
【0040】
非加圧浸透法を利用して、Al合金等とセラミックスとを含有してなる金属基複合材料のMMC製品を得る場合、単純形状の製品の作製では、例えば、セラミックス粉末とMg粉末とを含む混合物をカーボン箱等に入れて、該箱内の混合物に、溶融したAl合金等を浸透させて製造することも可能であると考えられる。一方、複雑な形状のMMC製品を製造する場合は、セラミックス粉末を含む混合物を成型して、硬化させ、製品に近い形状のプリフォームを作製して、或いは、必要に応じて、上記のようにして得られたプリフォームに機械加工を施して、より製品形状に近いプリフォームに加工して、これらのプリフォームに、Al合金等の溶湯を含浸させる製法が求められる。すなわち、このように製品形状に近いプリフォームにAl合金等を含浸させて製品を製造できれば、製品の加工代を低減でき、ひいては製品コストを低減することができ、製品を安価に提供することが可能になる。
【0041】
しかしながら、従来技術では、非加圧浸透法を利用して、製品形状に近いプリフォームを用いてMMC製品を製造する場合、金属Mg粉末等を含んだプリフォームを利用することは行われていなかった。先に述べたように、従来技術では、セラミックス粉末を含む混合物を成型して得た製品に近い形状のプリフォームを用い、非加圧浸透を行う雰囲気内に浸透(含浸)促進剤であるMgを存在させて、窒素の雰囲気中、非加圧で溶融したAl合金を上記プリフォームに浸透することでMMC製品を得ていた。本発明者らの検討によれば、従来技術で、金属Mg粉末等を含んだプリフォームを利用することが行われていなかった理由は、非加圧浸透法を実施した場合に、浸透(含浸)促進剤としての機能が安定して十分に発現する金属Mg粉末等を含むプリフォームの開発が実現できていなかったことにある。本発明は、かかる技術課題に対しなされたものであり、本発明によれば、簡便な手段で、非加圧浸透法において好適に利用することができる十分な強度を有し、しかも、浸透(含浸)促進剤としての機能を安定して発現できる状態のMg含有粉末を含んでなるプリフォームの提供が可能になる。
【0042】
(混合体の調製工程)
本発明の製法において、先述した原料を含む構成の混合物を用い、所望の形状の混合体を得る方法は、特に限定されない。例えば、プレス成型、CIP成型(冷間等方圧加圧)、鋳込み成形、振動成型などの慣用な方法を用いることができる。本発明を構成する混合物は、先に述べたように、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかの特有のバインダーを含む。このため、得られる混合体、更に、その後に混合体を焼成して得られるプリフォームは、ハンドリング性に優れ、扱い易い性状のものになる。更に、特に、混合体を焼成して得られるプリフォームは、非加圧浸透法を利用して、高温で、溶融したAl合金を浸透(含浸)させた場合において、プリフォームが崩れることがない、強固に固化された優れた性状のものになる。
【0043】
本発明の製法において、混合体を調製する際の一例としては、下記のような方法が挙げられる。まず、先述したような、セラミックス粉末及び金属Mg粉末に、シリコーン樹脂などの有機無機バインダーを加え、更に、アルコール等の有機溶媒、或いは、必要に応じて少量の水を含む混合溶媒を添加し、均一に混合してスラリーを作製する。そして、上記のようにして得たスラリーを、石膏型、金型、ゴム型、樹脂型等に鋳込み成型して、混合体を得るか、或いは、振動沈降成型した後、溶媒を乾燥除去して成型して混合体を得る方法が挙げられる。また、上記スラリーを石膏型に流し込む製法によれば、混合物中の溶媒を石膏型に吸収させて混合体を成型することができる。いずれの場合も、後述するように、型から混合体を外した後、混合体を特有の温度条件で焼成することで、本発明の製法に好適に用いることができるプリフォームの作製が可能になる。また、これらの方法に限らず、上記のようにして得たスラリーを乾燥して、粉砕等して混合粉末を調製し、混合粉末を金型に充填して、プレス成型またはCIP成型を行って混合体を得る方法も有効に利用できる。
【0044】
上記した混合体の作製方法について、より具体的に説明する。
「プレス、CIP成型法」
先に説明した混合物からなるスラリーを、150℃以下の温度で乾燥し、乾燥後、成型し易いようにほぐすか、軽く粉砕してプレス成型用の粉体原料を調製する。得られたプレス成型用の粉体原料をプレス型に入れ、荷重をかけて、プレス成型またはCIP成型を行う。この場合に、無機バインダーだけでは混合体を成型しにくい場合には、上記したスラリーに適宜に有機バインダー併用してもよい。
【0045】
「水ガラス硬化法」
水ガラス(珪酸ナトリュウム)を無機バインダーとして使用した場合、下記のようにして混合体を得ることができる。セラミックス粉末と、水ガラスと、Mg粉末との混合物を型に入れて押し固めた後、炭酸ガスを吹き込み硬化させることで、強固に固化された混合体とすることができる。この方法は、シリカ等の砂を重力鋳造用型にするために使用されている方法である。本発明の製造方法では、この方法を利用して混合体を得、その後に型から外した混合体を焼成してプリフォームを得ることができる。
【0046】
「振動沈降法」
先に説明した混合物からなるスラリーを、ゴム型等に入れて振動成型し、上部の溶媒を除去した後、乾燥して混合体を作製する。得られた混合体は、焼成してプリフォームとすることで、本発明の製造方法において良好に利用できるものになる。
【0047】
(プリフォームの調製工程)
本発明の製造方法は、上記のようにして得た所望の形状の、本発明で規定する特有の原料を含んでなる混合体を型から外した後、必要に応じて乾燥して、500℃以下の温度で焼成してプリフォームを得、得られたプリフォームを用い、該プリフォームに非加圧で、Al合金等の溶湯を浸透(含浸)させて、アルミニュウムとセラミックスとを含有してなる金属基複合材料を得ることを特徴とする。本発明では、特有の構成の混合体を、500℃以下の温度で、空気中で焼成硬化させてプリフォームを作製する。本発明者らの検討によれば、焼成温度を500℃超とした場合は、混合体中に含有させたMg含有粉末が空気中で酸化されて、2Mg+O2→2MgOとなってしまい、焼成後のプリフォームを用いて行う、Al合金等の溶湯をプリフォームに浸透・含浸させる後工程で、Al含浸促進効果が発揮されなくなるので、避けなければならない。
【0048】
本発明者らの検討によれば、バインダーとして、シリコーン樹脂やシリコンアルコキシド等の有機無機バインダーを用いた場合は、500℃付近で、その構造中の有機物が燃焼分解して非晶質シリカSiO2となり、この結果、得られるプリフォームは、強度を発揮するものになる。一方、バインダーに、水ガラス、アルミナセメントを使用した場合は、混合体は常温で硬化するが、常温での硬化では十分な強度のものにはならない。これに対して、本発明の製法では、500℃以下の温度で焼成するため、不要な水分や有機物を混合体から除去しながら硬化して、非晶質なシリカ、アルミナとして、焼成後に得られるプリフォームの強度を十分なものにできる。このため、焼成後のプリフォームは、その後に高温で行う非加圧浸透工程で、Al合金等の溶湯が速やかに浸透していき、全体的に溶湯が含浸した場合に十分な強度を示し、しかも全体に均一な状態の複合材料の提供を可能にできる。
【0049】
以下に、本発明を特徴づける、先に述べたセラミックス粉末を含む特有の原料構成の混合物から成型してなる混合体の焼成温度を500℃以下にして、非加圧浸透法に供するプリフォームの作製をしたことで、従来の製造方法によっては得ることができなかった本発明の顕著な効果が実現できた理由について、説明する。
【0050】
一般的に、セラミックス製のプリフォームは、下記のような方法で作製されている。セラミックス粉末に、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の無機バインダー及び必要に応じて有機バインダーを添加、混合して、プレス成型等で成型して成型体を作製し、その後に、プリフォームの強度を発揮させるために900℃以上の高温で成型体を焼成してプリフォームを作成する方法が一般的である。本発明者らの検討によれば、上記した一般的な方法で、Mg含有粉末を含むセラミックス粉末を原料に用いて成型体を作成し、焼成すると、含有させたMg含有粉末が酸化されてMgOとなってしまう。このため、非加圧浸透工程で、プリフォームを構成するセラッミクス粉末に対して、Al合金との濡れ性を飛躍的に向上させることができるMg32が生成しない。このため、上記一般的な方法で得たプリフォームの場合は、Al合金等の溶湯を非加圧で含浸させることはできない。
【0051】
ここで、Mgの酸化を防ぐ方法として、アルゴン等の不活性雰囲気中で上記成型体を焼成することも考えられる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、600℃以上の温度では、成型体中のMgが蒸発してしまい、焼成後のプリフォーム中に所定量残存しなくなり、成型体の原料にMg含有粉末を添加したことによる効果が低下する。また、窒素雰囲気炉中で成型体を焼成することも考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、約550℃でMg32が生成するが、焼成後に炉内から、プリフォームを空気中に取り出した際に、空気中の湿分と反応してMg(OH)2となり、この場合も同じく、プリフォーム中の、浸透(含浸)促進剤として機能し得るMg量が低減する。一方、成型体の調製原料に有機バインダーを添加し、併用した場合は、有機物とMgが反応してMgOとなり、その後に行う非加圧浸透工程で効果的に機能するMg32の生成ができなくなる。上記したように、これまで、非加圧浸透工程で、セラミックス製のプリフォームのAl合金等の溶湯との濡れ性を飛躍的に向上させることができる、浸透(含浸)促進剤として機能し得る状態でMg含有粉末を含んでなるプリフォームを製造する従来技術はなかった。
【0052】
上記従来技術に対し、先に述べたように、本発明の製造方法では、金属Mg粉末等のMg含有粉末を含有したセラミックス粉末を含む混合体(成型体)を、プリフォームを作製する際の焼成温度を500℃以下としたことで、本発明の顕著な効果を実現した。すなわち、焼成温度を500℃以下にしたことで、焼成前の混合体に含有させた金属Mg粉末等の成分は、焼成した場合に酸化及び蒸発することがないので、その後に行う非加圧浸透工程で必要になるMg32の生成が良好に行われる。このことは、本発明の製造方法によって得られる複合体が、セラミックス製のプリフォームへのAl合金の溶湯の浸透が良好に行われたものになることで確認できる。具体的には、本発明の製造方法では、セラミックス製のプリフォームへのAl非加圧浸透の速度が飛躍的に大きくなり、得られる複合体は、プリフォーム全体へ溶融したAl合金等が均一に浸透しており、含浸状態が良好なものであることで確認できる。
【0053】
<非加圧浸透工程>
上記したような方法で作製したプリフォームは、成型方法にもよるが、型から外してそのまま使用するか、必要に応じて機械加工を施して、製品形状により近いプリフォーム形状にして、非加圧浸透工程での使用に供する。本発明の製造方法における非加圧浸透工程は、本発明で規定する材料を含む混合物を成型して得た混合体を500℃以下で焼成したことで得た、非加圧浸透工程に耐え得る十分な強度を有するプリフォームを用い、該プリフォーム中には、浸透(含浸)促進剤として機能するMg含有粉末が含まれていること以外、通常の方法と同様である。
【0054】
図1に示したようにして、本発明を特徴づける特有の構成のプリフォームと、Al合金等をカーボン製などの器に入れて、この器を、雰囲気を制御できる炉内(不図示)に設置する。そして、700〜900℃の窒素雰囲気の炉内に約2〜10時間保持し、プリフォームの隙間に溶融したAl合金等を浸透させて、含浸させる。器内に配置させるAl合金等の量は、プリフォームの粒子間の隙間(空隙)を満たす体積以上であることが必要である。一般的には、空隙の約1.2倍以上が必要である。Al合金等がプリフォームの隙間に含浸した後、冷却して残存Al合金等を外す(除く)処理をして、Al合金等が含浸してなる複合体(MMC)を得る。本発明の製造方法によって得られた複合体には空隙がなく、セラミックスとAl合金からなる複合体になる。
【0055】
本発明の製造方法では、浸透(含浸)促進剤として機能する状態のMg含有粉末を含んだプリフォームを使用するので、Al合金等のプリフォームへの含浸スピードが従来法より著しく速くなる。本発明者らの検討によれば、例えば、厚みが50mmや100mmである形状のプリフォームに対しても、2〜7時間で均一含浸する。これに対し、Mgを含まない従来法のプリフォームを使用した場合は、含浸速度が遅く、本発明で用いる本発明の構成のプリフォームと同一形状のプリフォームに、従来法によってAl合金等の溶湯を含浸させるためには、約3〜10倍の長い含浸時間が必要になる。また、従来法では、プリフォーム内部への含浸速度が遅いため、浸透(含浸)する入口以外のプリフォームの周囲全体にAl合金等が取り囲む状態になるため、含浸後に、得られた複合体から余分なAl合金等をとり除くことが容易ではないという問題も生じる。これに対して、本発明の製造方法によれば、溶融したAl合金等が短時間でプリフォームの入口部のみから含浸するので、含浸に寄与しないAl合金等が得られた複合体の周囲を取り囲むことが格段に低減される。このように、本発明の製造方法によれば、ニアネットで複合体(MMC)を生産できるので、その後に行う加工などの負荷が低減されて、生産性を飛躍的に向上させることが可能になる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて、前述の一実施形態のさらなる具体例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。文中、w%とあるのは質量基準であり、v%とあるのは容積基準である。本明細書中における平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定器で測定した値である。
【0057】
[実施例1]
予め、シリコーン樹脂(信越化学社製、商品名:KR−220L)をイソプロピルアルコール(IPA)に溶解して、30w%のバインダー溶液を用意した。セラミックス粉末として、平均粒子径50μmのSiC粉末4000gと、平均粒子径14μmのSiC粉末1200gとを用い、平均粒子径が75μmのMg粉末を、上記セラミックス粉末(SiC粉末)に対して2w%の割合で含まれるよう104g加えて、Mg粉末とセラミックス粉末とを含んでなる混合物とした。該混合物に更に、シリコーン樹脂が、上記セラミックス粉末に対して2w%配合されるように、先に用意した30w%のバインダー溶液346gを加えた。そして、これに更にIPAを1300g加え、ボールミルで均一に混合してスラリーを調製した。得られたスラリーをステンレス製の容器に入れ、自然乾燥してIPAをほぼ除去した後、更に、60℃の乾燥器で8時間乾燥した。乾燥後、乾燥物を、20mmΦのプラスチックボールを入れたボールミルで粉砕(解砕)して、プレス成型用の粉体原料を作製した。
【0058】
上記で得たプレス成型用の粉体原料1000gを、100mm×100mm×深さ100mmのプレス型に入れ、150kg/cm2の圧力でプレス成型して、100mm×100mm×50mmの混合体を得た。上記のようにして得られた混合体を空気雰囲気の電気炉に入れ、50℃/時間の速度で500℃まで昇温して、500℃で4時間保持して焼成し、その後に冷却してプリフォームを作製した。得られたプリフォームは、SiC粉末の充填率が63v%であった。
【0059】
図1に示したように、上記で調製したプリフォーム(以下、プリフォーム本体と呼ぶ)を、200mm×200mm×80mm深さのカーボン製のベッセル内に配置した。その際、プリフォーム本体の下に、該プリフォーム本体と同様の方法で作製した、同様の材料からなるプリフォームから、切断・加工して得た20mm×20mm×高さ20mmのアルミニュウム浸透道を3個設置し、プリフォーム本体を支えて浮かした状態にした。このようにしてベッセル内に配置したプリフォーム本体の横に、切断して重さを調整した1000gのAl合金AC3Aを置き、該ベッセルを、内部が600mm×600mm×高さ500mmの窒素雰囲気炉に設置した。そして、該雰囲気炉に、5L/分で窒素を流しながら、室温から10℃/分で800℃まで昇温後、この温度で5時間保持した。
【0060】
800℃で5時間保持後、室温まで冷却した後、雰囲気炉内から、プリフォームにAl合金が浸透されてなる複合体(MMC)を取り出した。そして、プリフォーム本体を支えるために用いた3個のアルミ浸透道を除去して、プリフォーム本体に、Al合金が浸透した複合体(MMC)を得た。上記したようにして、800℃の温度に5時間保持させた窒素雰囲気炉内に設置させたベッセル内では、ベッセル内に配置したAl合金AC3Aが溶解して、該溶解したAl合金が、浸透道を介して多孔質体であるプリフォーム本体に非加圧で浸透する。
【0061】
上記のようにして得られた本実施例の複合体について、アルキメデス法で嵩比重を測定し、また、内部をダイヤモンドカッターで切断し、切断面を顕微鏡観察した。その結果、切断面は、プリフォーム本体にAl合金が完全に隙間含浸されていることを確認した。また、嵩比重の計算結果から、SiCが63v%、AC3Aが37v%の複合体(MMC)であった。
【0062】
[実施例2]
平均粒子径が15μmのアルミナ粉末を4000gに、平均粒子径が75μmのMg粉末が、上記アルミナ粉末に対して3w%に含まれるよう120g加えて、Mg粉末とセラミックス粉末とを含んでなる混合物とした。該混合物を用い、更に実施例1と同じようにしてスラリーを調製した。具体的には、上記で得た混合物に、バインダー溶液を用いて、本実施例では、シリコーン樹脂が3w%配合されるように、実施例1で用いたと同じシリコーン樹脂の30w%バインダー溶液を400gと、更にIPAを1400g加えて、実施例1と同様の方法で、ボールミルで均一に混合してスラリーを作製した。
【0063】
上記で作製したスラリーの約1/4を、110mm×110mm×深さ60mmの石膏型に入れ、約30分振動をかけながら、スラリー中の溶液を石膏型に吸収させて、スラリーから溶液を除去した。その後、60℃で約8時間乾燥して固化して、Mg粉末とセラミックス粉末とを含んでなる混合体を石膏型から外した。得られた混合体を実施例1と同様の条件で、500℃の温度で焼成を行った。その結果、100mm×100mm×50mmの焼成物を得た。得られた焼成物について、重量と形状測定して、かさ比重を測定した。その結果、アルミナが50v%のプリフォームが得られた。
【0064】
上記で得たプリフォームを、実施例1と同じようにしてカーボン製ベッセル内に、プリフォーム本体を浮かした状態に配置させて、実施例1と同じ方法で、同様のAl合金を浸透させて、複合体を得た。得られた複合体について、内部を切断して切断面を顕微鏡観察し、また、嵩比重を測定した。その結果、切断面は、プリフォーム本体にAl合金が完全に隙間含浸されていることを確認した。また、嵩比重の計算結果から、アルミナが50v%、Al合金が50v%の複合体(MMC)であった。
【0065】
[実施例3]
平均粒子径が50μmのSiC粉末2000gと、平均粒子径が14μmのSiC粉末600gに、平均粒子径が75μmのMg粉末を78g加え、更に液状の水ガラス3号を80g加えて、撹拌機で撹拌した。得られた混合物を100mm×100mm×100mm深さのシリコーン樹脂製の型に入れ、つき棒でタッピングしながら充填し、充填物に炭酸ガスを吹き付け浸透して固化させて、100mm×100mm×52mmの混合体を得た。得られた混合体を60℃で約8時間乾燥した。そして、50℃/時間で450℃まで昇温し、到達後4時間保持して混合体の焼成を行ったこと以外は実施例1と同様にして、プリフォームを作製した。
【0066】
上記で得られたプリフォームに、実施例1と同じようにしてAl合金の溶湯の浸透を行い、複合体を得た。そして、得られた複合体について、内部を切断して切断面を顕微鏡観察し、また、嵩比重を測定した。その結果、嵩比重の計算結果から、SiC充填率が54v%、Al合金が46v%の複合体(MMC)が製造できたことを確認した。また、切断面を観察したところ、バインダーに用いた水ガラスで固化したプリフォームを用いた本実施例でも、プリフォーム本体にAl合金が完全に隙間含浸した複合体(MMC)を製造できることを確認した。
【0067】
[実施例4、5]
実施例1と同様にして作製したSiC粉末の充填率が63v%のプリフォームに、実施例1で用いたAl合金AC3Aの替わりに、実施例4ではAl合金AC4Cを用い、また、実施例5では、マグネシウムを含むAl合金であるAl−3Mgをそれぞれに用いて、実施例1と同様の方法で、浸透道を介してプリフォーム本体に非加圧で浸透させた。その結果、いずれの実施例の場合も、実施例1と同様に、Al合金が50mmの高さまで完全に浸透している複合体(MMC)が得られた。また、嵩比重の計算結果から、いずれの場合も、SiCが60v%、Al合金が40v%の複合体(MMC)が得られたことを確認した。
【0068】
[実施例6]
実施例1で用いたと同じように、セラミックス粉末に、平均粒子径が50μmのSiC粉末を4000gと、平均粒子径が14μmのSiC粉末を1200g用い、平均粒子径が75μmのMg粉末を、セラミックス粉末に対して1w%になる量で含まれるよう52g加えて、Mg粉末とSiC粉末とを含んでなる混合物とした。該混合物に、有機無機バインダーとして、エチルシリケートSi(OC254のオリゴマー(SiO2換算40w%含有)を用い、該有機無機バインダーが、上記セラミックス粉末に対して、SiO2として2w%配合されるように260gを加えた。そして、更に、イソプロピルアルコール(IPA)1200gを加えて、実施例1で行ったと同様の方法で、ボールミルで均一に混合してスラリーを作製した。
【0069】
上記で得たスラリーを用い、実施例1と同じ操作で、乾燥、解砕(粉砕)して、プレス成型用の粉体原料を作製した。そして、得られたプレス成型用の粉体原料を用い、実施例1で行ったと同様にプレス成型して、100mm×100mm×50mmの形状の混合体を作製した。得られた混合体を空気雰囲気の電気炉に入れ、430℃で焼成してプリフォームを作製した。得られたプリフォームを用い、実施例1と同様の操作及び条件で、アルミ合金AC3Aをプリフォームに非加圧で浸透させて複合体を得た。得られた複合体は、嵩比重の計算結果から、SiCが64v%、AC3Aが36%のMMCであることを確認した。
【0070】
[比較例1]
プレス成型用の粉体原料を作製する際に、Mg粉末を添加しないかったこと以外は実施例1で行ったと同じにして、プリフォームを作製した。そして、得られたプリフォームを用いて実施例1で行ったと同じ手順で、Al合金AC3Aを用いて非加圧でAl合金を浸透させることを行った。その結果、プリフォームにAl合金が含浸しなかった。
【0071】
[比較例2]
プレス成型用の粉体原料を作製する際に、Mg粉末を添加しないかったこと以外は実施例1で行ったと同じにして、100mm×100mm×50mmのプリフォームを作製した。そして、下記のようにしてAl合金AC3Aを用いて非加圧で、上記で得たプリフォームにAl合金を浸透させた。具体的には、プリフォームを図1のようにしてベッセルに設置する際に、プリフォームの下部及び周りにMg粉末5gを置いたこと以外は実施例1同じ方法で、プリフォームにAl合金の浸透を行った。上記した方法は、従来より行われており、ランクサイド法と呼ばれている。
【0072】
上記の浸透工程の後に、プリフォームの状態を観察した。その結果、厚み50mmのプリフォームのうち、約8mm(16%)のところまで下部からAl合金が浸透していたが、全体には含浸していなかった。また、プリフォームの周りにAl合金が取り囲んだ状態になっており、ニアネットではなかった。
【0073】
[比較例3]
比較例2と同様にランクサイド法を用いて、プリフォームにAl合金を浸透させた。具体的には、比較例2と同様にして得たMg粉末を添加しないプリフォームを用い、該プリフォームを図1のようにしてベッセルに設置する際に、プリフォームの下にMgを5%混合したSiC粉末を100g敷き、その他は実施例1と同じ方法で、プリフォームにAl合金の浸透を行った。
【0074】
上記の浸透工程の後、プリフォームの状態を顕微鏡観察した。その結果、厚み50mmのプリフォームのうち、約10mm(20%)程のところまで下部からAl合金が浸透していたが、全体には隙間含浸していなかった。また、プリフォームの周りにAl合金が取り囲んだ状態になっており、ニアネットのMMCは得られなかった。
【0075】
[比較例4、5]
本比較例では、実施例1と同じ方法で得たプレス成型用の粉体原料を用い、実施例1で行ったと同様にして、100mm×100mm×50mmの混合体を得、得られた混合体を空気雰囲気の電気炉に入れて、60℃で8時間乾燥した後、焼成してプリフォームを調製した。その際に、実施例1で行ったプリフォームを調製する際の焼成温度を、比較例4では550℃とし、比較例5では600℃として、いずれの例も、本発明で規定するよりも高い温度で焼成した。上記のようにして、焼成温度をそれぞれに変えて得たプリフォームを用い、それ以外は、実施例1で行ったと同じ方法で、それぞれのプリフォームにAl合金AC3Aを浸透させた。
【0076】
上記浸透工程の後に、それぞれに使用したプリフォームの状態を観察した。その結果、いずれの例のプリフォームの場合も、Al合金が全く隙間に浸透していなかった。本発明者らは、この点について、特に、プリフォームの作製の際の焼成を500℃超の温度で行うと、混合体中に含有されていたMgが酸化されてしまい、プリフォーム中にMgが存在することで得られる浸透(含浸)促進の効果が損なわれたことによると考えている。
【0077】
[比較例6]
プレス成型用の粉体原料を作製する際に用いるバインダーとして、シリコーン樹脂に替えてアルコール系コロイダルシリカ(5mμ)を用い、セラミックス粉末に対して5%の濃度となるように添加混合したこと以外は実施例1と同様の方法で、プレフォームを作製することを試みた。具体的には、バインダーにコロイダルシリカを用いたこと以外は実施例1と同様の配合の混合物を用い、該混合物をプレス成型して混合体を得、得られた混合体を500℃で焼成した。しかし、500℃の温度では硬化せず、非加圧浸透法に利用できるプリフォームを作製することができなかった。
【0078】
[比較例7]
比較例6で得た、バインダーにコロイダルシリカを用いた混合体を用い、焼成温度を変えて1000℃で焼成を行ったところ硬化し、プリフォームを作製することができた。しかし、得られたプリフォームを用いて、実施例1で行ったと同様に、Al合金AC3Aを用いて非加圧でAl合金の溶湯を浸透させることを試みたが、Al合金は全く浸透しなかった。これは、1000℃で焼成した際に、混合体中のMgが完全に酸化されてしまい、プリフォーム内にMgが存在しなくなったためと考えられる。
【0079】
【要約】
【課題】セラミックス粉末を成型・硬化して得たプリフォームにAl合金等の溶湯を非加圧で浸透させる方法を飛躍的に改良し、より簡便に、安定して全体に均一な状態の「セラミックス粉末とAl合金等からなる金属基複合材料」を提供できる技術の開発。
【解決手段】マグネシウム含有粉末とセラミックス粉末とを含み、更に、500℃以下の加熱で混合物が強度を発現する特性を有する、無機バインダーまたは有機無機バインダーのいずれかのバインダーを含む混合物を用いて成型して混合体を得、該混合体を500℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製し、得られたプリフォームに、金属アルミニュウムまたはアルミニュウム合金を非加圧で浸透させて、アルミニュウムとセラミックスとを含有してなる金属基複合材料を製造する複合材料の製造方法。
【選択図】 なし
図1
図2