(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係る
炭素繊維用サイジング剤(以下、サイジング剤ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。サイジング剤は、ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)を含有する。
【0019】
(ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X))
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)は、下記のポリアミン(A)及び下記の多価カルボン酸(B)から縮合形成されている。
【0020】
ポリアミン(A)は、1分子中に炭化水素基及び3個以上の窒素原子を有し、且つ1分子中の全炭素数が4以上63以下であるポリアミンである。
ポリアミン(A)の具体例としては、特に限定されないが、例えばテトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、オクタエチレンノナミン、ノナエチレンデカミン、ペンタプロピレンヘキサミン、ヘキサプロピレンヘプタミン、ヘプタプロピレンオクタミン、オクタプロピレンノナミン、ノナプロピレンデカミン、ペンタブチレンヘキサミン、ヘキサブチレンヘプタミン、ヘプタブチレンオクタミン、オクタブチレンノナミン、ノナブチレンデカミン、ペンタペンチレンヘキサミン、ヘキサペンチレンヘプタミン、ヘプタペンチレンオクタミン、オクタペンチレンノナミン、ノナペンチレンデカミン、ペンタヘキシレンヘキサミン、ヘキサヘキシレンヘプタミン、ヘプタヘキシレンオクタミン、オクタヘキシレンノナミン、ノナヘキシレンデカミン、ペンタヘプチレンヘキサミン、ヘキサヘプチレンヘプタミン、ヘプタヘプチレンオクタミン、オクタヘプチレンノナミン、ノナヘプチレンデカミン等が挙げられる。これらのポリアミン(A)は、1種のポリアミンを単独で使用してもよく、2種以上のポリアミンを組み合わせて使用してもよい。
【0021】
多価カルボン酸(B)は、炭素数2以上24以下の2価以上4価以下の多価カルボン酸である。多価カルボン酸(B)の具体例としては、特に限定されないが、例えば(1)シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、エイコサン二酸等のジカルボン酸、(2)アコニット酸等のトリカルボン酸、(3)安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、(4)トリメリット酸等の芳香族トリカルボン酸、(5)ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸等が挙げられる。これらの多価カルボン酸(B)は、1種の多価カルボン酸を単独で使用してもよく、2種以上の多価カルボン酸を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)は、下記の式(1)を満たすものであることが好ましい。かかる数値範囲に規定されることにより、母材に対する
炭素繊維の接着性をより向上できる。
【0023】
【数2】
(式(1)において、
a1:前記ポリアミン(A)から検出されるアミン価。
【0024】
a2:前記ポリアミン(A)及び前記多価カルボン酸(B)の構成割合の合計を100質量%としたときの前記ポリアミン(A)の構成割合(質量%)。
b1:前記多価カルボン酸(B)から検出される酸価。
【0025】
b2:前記ポリアミン(A)及び前記多価カルボン酸(B)の構成割合の合計を100質量%としたときの前記多価カルボン酸(B)の構成割合(質量%)。)
アミン価は、例えばイソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、水等の溶剤に溶解した試料を、0.1N塩酸の例えばエチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合溶液で電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定する。そして、終点の滴定量(mL)を測定して、試料1g中に含まれる有機アミンのアミノ基を中和するのに要する塩酸と等量の水酸化カリウムのmg数を下記の数3で算出した値である。
【0026】
【数3】
(数3において、
A2:滴定量(mL)
f2:0.1N水酸化カリウム溶液の力価
W2:試料の量(g))
酸価は、例えばイソプロピルアルコール、キシレン/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合液、水等の溶剤に溶解した試料を、0.1N水酸化カリウムの例えばエチレングリコール/イソプロピルアルコール(容量比1/1)の混合溶液で電位差自動滴定装置を用いて電位差滴定する。そして、終点の滴定量(mL)を測定して、試料1g中に含まれるリン酸エステルの酸性基を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を下記の数4で算出した値である。
【0027】
【数4】
(数4において、
A1:滴定量(mL)
f1:0.1N水酸化カリウム溶液の力価
W1:試料の量(g))
上述したポリアミン(A)及び多価カルボン酸(B)の縮合反応は、アミド結合を形成可能な反応であれば、特に限定されず、公知の方法を用いて実施できる。例えば、原料としてのポリアミン(A)と多価カルボン酸(B)を混合した後、加熱することにより実施できる。縮合反応は、窒素等の不活ガス雰囲気下で実施してもよい。
【0028】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)は、サイジング剤の不揮発分に対して、好ましくは50質量%以上含有する。かかる範囲に規定されることにより、サイジング剤が付与された
炭素繊維が不織布として構成される場合、樹脂の含浸性を向上できる。
【0029】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)は、サイジング剤の不揮発分に対して、より好ましくは80質量%以上含有する。かかる範囲に規定されることにより、母材に対する
炭素繊維の接着性をより向上できる。
【0030】
なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
(ブレンステッド酸)
本実施形態のサイジング剤は、さらにブレンステッド酸を含有してもよい。ブレンステッド酸を含有することにより、サイジング剤が付与された
炭素繊維が不織布として構成される場合、樹脂の含浸性をより向上できる。
【0031】
ここで、ブレンステッド酸は、プロトンを有し、かつ、水を含有する液体組成物中で当該プロトンを放出又は解離できる酸を意味するものとする。ルイス酸のようなプロトンを有さない酸とは異なるものとする。
【0032】
ブレンステッド酸の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(n=4.5)ラウリルエーテル酢酸等のアルキルエーテル酢酸、オレオイルサルコシネート、ラウロイルサルコシネート等のアルキルアミノ酸、トリデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物のリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル等のリン酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、ラウリン酸、オレイン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらのブレンステッド酸は、1種のブレンステッド酸を単独で使用してもよく、2種以上のブレンステッド酸を組み合わせて使用してもよい。これらの中で1価のブレンステッド酸が好ましい。
【0033】
サイジング剤中のブレンステッド酸の含有量は、サイジング剤の不揮発分に対して、好ましくは0.05質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。かかる数値範囲に規定されることにより、サイジング剤が付与された
炭素繊維が不織布として構成される場合、樹脂の含浸性をより向上できる。
【0034】
(界面活性剤)
サイジング剤は、さらに界面活性剤を配合してもよい。界面活性剤を配合することにより、製剤安定性を向上できる。界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種の界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
非イオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2−ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2−エチル−1−ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンとジメチルフタラートとラウリルアルコールの共重合物等のエーテル・エステル化合物等が挙げられる。
【0036】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ニ級アルキルスルホン酸(C13〜15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0037】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2−ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0038】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
本実施形態のサイジング剤の作用及び効果について説明する。
【0039】
(1−1)本実施形態のサイジング剤では、特定のポリアミン(A)と多価カルボン酸(B)がアミド結合により縮合したポリアミン−多価カルボン酸縮合物を含むように構成した。したがって、母材に対する
炭素繊維の接着性を向上できる。
【0040】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物は、アミノ基、アミド基比率が高いため、
炭素繊維上の水酸基、カルボキシ基等との相互作用により、サイジング剤が強く吸着するものと思われる。また、
炭素繊維上にポリアミン−多価カルボン酸縮合物が強く吸着することでアンカー効果を発揮し、マトリックス樹脂が強く接着する。また、ポリアミン−多価カルボン酸縮合物に自己乳化性があるため、乳化剤を多く使用する必要がなく、サイジング剤中の使用比率を上げることができる。
【0041】
(1−2)また、サイジング剤が付与された
炭素繊維が不織布として構成される場合、樹脂の含浸性を向上できる。特に、サイジング剤中にブレンステッド酸が含有される場合、樹脂の含浸性をより向上できる。
【0042】
<第2実施形態>
次に本発明に係る
炭素繊維の製造方法を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0043】
本実施形態の
炭素繊維の製造方法は、第1実施形態のサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。付着量(溶媒を含まない)については特に制限はないが、
炭素繊維にサイジング剤として0.01質量%以上10質量%以下となるように付着させたものが好ましい。かかる数値範囲に規定することにより、
炭素繊維の集束性等の効果をより向上できる。
【0044】
(
炭素繊維)
本実施形態において適用される
無機繊維の種類としては、炭素繊維が適用され、下記に列挙されるその他の繊維は、参考例とする。
その他の無機繊維の種類としては、特に限定されず、例えばガラス繊維
、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からガラス繊維、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維が挙げられる。
【0045】
第1実施形態のサイジング剤を
炭素繊維に付着させるには、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等が挙げられる。サイジング剤を付着させた
炭素繊維は、続いて公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。
【0046】
本実施形態の
炭素繊維の製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2−1)本実施形態の
炭素繊維の製造方法では、第1実施形態のサイジング剤を
炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。したがって、簡易な方法にて母材に対する
炭素繊維の接着性を向上できる。
【0047】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る複合材料を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
【0048】
第2実施形態によりサイジング剤を付着させた
炭素繊維を、母材としてのマトリックス樹脂に含浸させることにより複合材料が得られる。複合材料を製造する際、
炭素繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態を採用できる。
【0049】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、複合材料の目的、用途等に応じて公知のものから適宜選択される。マトリックス樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点から熱可塑性樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂がより好ましい。
【0050】
本実施形態の複合材料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3−1)本実施形態の複合材料では、第1実施形態のポリアミン−多価カルボン酸縮合物を含むサイジング剤が
炭素繊維に付着している。したがって、
炭素繊維とマトリックス樹脂との優れた接着性により、特に機械特性等の各種特性に優れる繊維強化樹脂複合材料が得られる。また、サイジング剤が付与された
炭素繊維が不織布として構成される場合、樹脂の含浸性を向上できる。それにより、均質に樹脂が充填され、品質に優れた複合材料が得られる。
【0051】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態のサイジング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、サイジング剤の性能を維持する観点、
炭素繊維に対する付与性向上等の観点から、その他の成分として、水又は有機溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0052】
・上記実施形態のサイジング剤が適用される分野は、特に限定されない。例えばポリイミド樹脂等のマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料(CFRP)等に適用できる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0054】
試験区分1(ポリアミン−多価カルボン酸縮合物の調製)
・ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(A−1)
容量3リットルのガラス製反応容器にポリアミン(A)としてテトラエチレンペンタミン1205g、多価カルボン酸(B)としてシュウ酸795gを仕込み、温度を90℃に保ち溶解させる。内容物に窒素を流入させ、水を抜きながら160〜165℃にて10時間反応させる。その後、室温に冷却し、テトラエチレンペンタミン−シュウ酸縮合物(A−1)を得た。
【0055】
・ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(A−2〜A−7、rA−1〜rA−4)
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(A−2〜A−7、rA−1〜rA−4)は、表1に示される各成分を使用し、ポリアミン−多価カルボン酸縮合物(A−1)と同様の方法にて調製した。
【0056】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物の原料であるポリアミン(A)の種類と構成割合及び多価カルボン酸(B)の種類と構成割合を、表1の「ポリアミン(A)」欄及び「多価カルボン酸(B)」欄にそれぞれ示す。また、上述した式(1)より算出される値を表1の「式(1)の計算結果」欄に示す。
【0057】
なお、表1に示されるテトラエチレンペンタミンは、東ソー社製、商品名:テトラエチレンペンタミン(TEPA)を使用した。ペンタエチレンヘキサミンは、東ソー社製、商品名:ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を使用した。
【0058】
試験区分2(サイジング剤の調製)
・実施例1のサイジング剤
実施例1のサイジング剤は、原料として表1に示されるテトラエチレンペンタミン−シュウ酸縮合物(A−1)99部(%)、ブレンステッド酸としてドデシルベンゼンスルホン酸(C−1)1部(%)を混合することで、表2に示される含有割合からなる実施例1のサイジング剤を得た。
【0059】
・実施例2〜20、比較例1〜5のサイジング剤
実施例2〜20、比較例1〜5のサイジング剤は、原料として表1のポリアミン−多価カルボン酸縮合物、必要により表2のブレンステッド酸及びその他成分を使用した。各成分を表2に示した含有割合にて混合し、各例のサイジング剤を得た。
【0060】
ポリアミン−多価カルボン酸縮合物の種類と不揮発分としての含有量、ブレンステッド酸の種類と不揮発分としての含有量、その他成分である界面活性剤の種類と不揮発分としての含有量を、表2の「ポリアミン−多価カルボン酸縮合物」欄、「ブレンステッド酸」欄、「その他成分」欄にそれぞれ示す。なお、不揮発分としての含有量は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量として求めた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
表2に記載するブレンステッド酸、その他成分の詳細は以下のとおりである。
【0063】
(ブレンステッド酸)
C−1:ドデシルベンゼンスルホン酸
C−2:酢酸
C−3:オレイン酸
C−4:メタンスルホン酸
C−5:ラウリン酸
(その他成分)
B−1:ドデシルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物
B−2:テトラデシルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物
B−3:イソトリデシルアルコールのエチレンオキサイド平均9モル付加物
B−4:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド平均34モル付加物
B−5:ドデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物
試験区分2(評価)
(含浸性)
試験区分2で調製した各例のサイジング剤をイオン交換水4900部で希釈して固形分が2%の水性液を作成した。この水性液を不織布状の炭素繊維に固形分として2%付与されるようにスプレー法にて給油することで各例のサイジング剤が付与された不織布状炭素繊維を調製した。
【0064】
その不織布状炭素繊維を10cm四方にカットしたものを2枚とポリテトラフルオロエチレンシート(テフロンシート:デュポン社製)を2枚用意した。テフロンシート、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、表2に示される評価に用いた熱可塑性樹脂0.5g、10cm四方にカットした不織布状炭素繊維、テフロンシートの順にサンドイッチ状にした。
【0065】
その後、300℃に温めたホットプレス機(アズワン社製、高温熱プレス機0〜1tH400−01)で1MPaの圧力で30秒プレスした後、テフロンシート側に含浸されてきた熱可塑性樹脂の量を以下の基準で目視評価を行った。結果を表2の「含浸性」に示す。また、使用した熱可塑性樹脂の種類を、表2の「評価に用いた熱可塑性樹脂」欄に示す。
【0066】
・含浸性の評価
◎◎(優れる):熱可塑性樹脂がテフロンシート側に1cm
2以上含浸されているのが確認できる場合
◎(良好):熱可塑性樹脂がテフロンシート側に0.1cm
2以上、1cm
2未満含浸されているのが確認できる場合
○(可):熱可塑性樹脂がテフロンシート側に0cm
2を超え、0.1cm
2未満含浸されているのが確認できる場合
×(不可):熱可塑性樹脂がテフロンシート側に含浸されているのが確認できない場合
(接着性)
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0067】
上述したように調製した各例のサイジング剤を水希釈し、固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をストランド状の炭素繊維に固形分として2%付与されるように浸漬法にて給油することで各例のサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維を調製した。
【0068】
次に、この炭素繊維から1本の炭素繊維を取り出し、この炭素繊維12を板状の四角枠状のホルダー11に緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、表2に示される各例の熱可塑性樹脂を、直径がほぼ80μmの樹脂滴13となるように炭素繊維12に付着させ、300℃の雰囲気下で3分間加熱して固定した。
【0069】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0070】
樹脂滴13が固定されている炭素繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0071】
ホルダー11を15mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が炭素繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0072】
計測した値を用いて、下記の数5により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を求めた。平均値より以下の基準で接着性について評価を行った。結果を表2の「接着性」に示す。
【0073】
【数5】
数5において、
F:炭素繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)、
D:炭素繊維12の直径(m)、
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
【0074】
・接着性の評価
◎◎(優れる):界面せん断強度が80MPa以上
◎(良好):界面せん断強度が70MPa以上且つ80MPa未満
○(可):界面せん断強度が60MPa以上且つ70MPa未満
×(不可):界面せん断強度が60MPa未満
以上表2の結果からも明らかなように、各実施例のサイジング剤は、接着性、含浸性の評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、接着性、含浸性を向上できるという効果が生じる。なお、ガラス繊維についても炭素繊維の評価と同様に含侵性、接着性の向上効果を確認している。
【解決手段】本発明の無機繊維用サイジング剤は、下記のポリアミン(A)及び下記の多価カルボン酸(B)から縮合形成されたポリアミン−多価カルボン酸縮合物(X)を含有することを特徴とする。ポリアミン(A)は、1分子中に炭化水素基、及び3個以上の窒素原子を有し、且つ1分子中の全炭素数が4以上63以下であるポリアミンである。多価カルボン酸(B)は、炭素数2以上24以下の2価以上4価以下の多価カルボン酸である。