(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984945
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】防水パンの排水構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/20 20060101AFI20211213BHJP
E03C 1/28 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
E03C1/20 E
E03C1/28 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-22698(P2018-22698)
(22)【出願日】2018年2月13日
(65)【公開番号】特開2019-138058(P2019-138058A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭平
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−9505(JP,A)
【文献】
特開2012−246687(JP,A)
【文献】
特開2009−91749(JP,A)
【文献】
特開2012−197608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E03C 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水パンに形成された排水用開口と、上記防水パンの下方に配置された排水トラップと、上記排水トラップを上記排水用開口の周縁部に固定するための締付部材と、を備え、
上記排水トラップが、第1筒部と、上記第1筒部の外周から径方向外側に突出して上記排水用開口の周縁部の下面に沿う環状の受部とを有し、
上記締付部材が、上記排水トラップの上記第1筒部の内側に配置される第2筒部と、上記第2筒部の上端縁から径方向外側に突出して上記排水用開口の周縁部の上面に沿うフランジ部とを有し、
上記第1筒部の内周には、周方向に沿って延びるガイド突起が形成され、上記第2筒部の外周には係合突起が形成され、
上記締付部材が締め付け方向に回動すると、上記ガイド突起が上記係合突起を案内することにより、上記排水トラップに近づくようになっており、上記締付部材のフランジ部と上記排水トラップの受部とで上記排水用開口の周縁部を挟持することにより、上記排水トラップが上記排水用開口の周縁部に固定されており、
さらに、上記締付部材が上記排水トラップに対して設定された回動角度に達したときに、上記締付部材の上記締め付け方向への回動を禁じる回動制止手段を備えたことを特徴する防水パンの排水構造。
【請求項2】
上記回動制止手段が、上記ガイド突起における上記締め付け方向の終端から下方に突出する係止凸部を有し、上記係止凸部に上記締付部材の係合突起が当たることにより、上記締付部材の上記締め付け方向への回動が禁じられることを特徴とする請求項1に記載の防水パンの排水構造。
【請求項3】
上記締付部材の上記第2筒部の内周には、浴槽の排水口に装着される排水部品を位置決めするための位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防水パンの排水構造。
【請求項4】
上記締付部材の上記フランジ部と上記防水パンの上記排水用開口の周縁部との間には、環状のパッキンが介在されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防水パンの排水構造。
【請求項5】
上記防水パンが発泡体層と表皮層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防水パンの排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水パンの排水構造に関し、特に排水トラップの固定に関する。
【背景技術】
【0002】
防水パンには排水用開口が形成されており、この排水用開口からの水が、防水パンの下方に配置された排水トラップを経て、排水管へと送られるようになっている。
上記排水トラップを防水パンに固定するために、特許文献1に開示された排水構造では、締付部材を用いている。
【0003】
特許文献1の排水構造を簡単に説明すると、排水トラップは、排水用開口に挿入される第1筒部と、第1筒部の外周から径方向外側に突出して排水用開口の周縁部の下面に沿う環状の受部とを有している。締付部材は、排水トラップの第1筒部の内側に配置される第2筒部と、第2筒部の上端縁から径方向外側に突出して排水用開口の周縁部の上面に沿うフランジ部とを有している。
【0004】
上記第1筒部と上記第2筒部は螺合されており、締付部材を締め付け方向に回し、排水トラップの受部と締付部材のフランジ部とで排水用開口の周縁部を挟持することにより、排水トラップを防水パンに固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−129699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、締め込み完了時の締付部材の角度位置が不安定である。また、作業者が未熟であると締付部材を過剰に締め込んだり締め込みが不足したりすることがある。その結果として生じる不都合を以下に例示する。
・締め込みが不足すると、排水トラップの防水パンへの固定が弱くなる。
・締め込みが過剰であると、排水用開口の周縁部、排水トラップの受部、締付部材のフランジ部のいずれかの変形を招く。特に防水パンが発泡体層と表示層を有する場合には、排水用開口の周縁部の変形の問題が生じる。
・締付部材のフランジ部と排水用開口の周縁部との間のパッキンは、締付部材の過剰締め込みにより捩じれると止水性能を発揮できない。また、締め込み不足によっても止水性能を発揮できない。
・防水パンに浴槽を設置する場合、締付部材は、浴槽のレリースワイヤガイド部材(排水部品)を所望の角度位置に位置決めする役割を担うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、防水パンの排水構造において、防水パンに形成された排水用開口と、上記防水パンの下方に配置された排水トラップと、上記排水トラップを上記排水用開口の周縁部に固定するための締付部材と、を備え、
上記排水トラップが、第1筒部と、上記第1筒部の外周から径方向外側に突出して上記排水用開口の周縁部の下面に沿う環状の受部とを有し、上記締付部材が、上記排水トラップの上記第1筒部の内側に配置される第2筒部と、上記第2筒部の上端縁から径方向外側に突出して上記排水用開口の周縁部の上面に沿うフランジ部とを有し、上記第1筒部の内周には、周方向に沿って延びるガイド突起が形成され、上記第2筒部の外周には係合突起が形成され、上記締付部材が締め付け方向に回動すると、上記ガイド突起が上記係合突起を案内することにより、上記排水トラップに近づくようになっており、上記締付部材のフランジ部と上記排水トラップの受部とで上記排水用開口の周縁部を挟持することにより、上記排水トラップが上記排水用開口の周縁部に固定されており、さらに、上記締付部材が上記排水トラップに対して設定された回動角度に達したときに、上記締付部材の上記締め付け方向への回動を禁じる回動制止手段を備えたことを特徴する。
【0008】
上記構成によれば、締付部材が設定回動角度に達したときに、締付部材の締め付け方向への回動を禁じるため、締付部材の過剰締め込みや締め込み不足を防止でき、排水トラップの最適な固定状態を得ることができる。また、締め込み完了時の締付部材の角度位置を一定にすることができる。
【0009】
好ましくは、上記回動制止手段が、上記ガイド突起における上記締め付け方向の終端から下方に突出する係止凸部を有し、上記係止凸部に上記締付部材の係合突起が当たることにより、上記締付部材の上記締め付け方向への回動が禁じられる。
上記構成によれば、簡単な構成で、締付部材の設定回動位置からの回動を禁じることができる。
【0010】
好ましくは、上記締付部材の上記第2筒部の内周には、浴槽の排水口に装着される排水部品を位置決めするための位置決め部が形成されている。
上記構成によれば、浴槽の排水部品を位置決めする必要がある場合に、締付部材の位置決め部により正確かつ簡単に位置決めすることができる。
【0011】
好ましくは、上記締付部材の上記フランジ部と上記防水パンの上記排水用開口の周縁部との間には、環状のパッキンが介在されている。
上記構成によれば、締付部材の過剰締め込みによるパッキンの捩じを防止できるとともに、締め込み不足によるパッキンの圧縮不足を防止でき、良好な止水性能を確保することができる。
【0012】
好ましくは、上記防水パンが発泡体層と表皮層を有する。
この構成によれば防水パンの軽量化を図ることができ、締付部材の過剰締め込みによる排水用開口の周縁部の変形を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、締付部材の過剰締め込みや締め込み不足を防止することができ、排水トラップの最適な固定状態を得ることができる。また、締め込み完了時の締付部材の角度位置を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水構造が設けられた浴槽側防水パンの斜視図である。
【
図4】上記排水構造において、締付部材を用いて排水トラップを浴槽側防水パンに固定する直前の状態を示す
図3相当図である。
【
図5】上記締付部材と、浴槽の排水栓およびレリーフワイヤガイド部材を示す側面図である。
【
図6】上記締付部材と排水栓とレリーフワイヤガイド部材を示す斜視図である。
【
図7】(A)、(B)は、上記締付部材の締め込む際の上記排水トラップのガイド突起と上記締付部材の係合突起の係合状態を、順を追って示す概略展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図3に示すように、浴室には洗い場側防水パン5(防水パン)と浴槽側防水パン10(防水パン)とが隣接して設置されている。浴槽側防水パン10には浴槽(図示しない)が設置されている。
浴槽側防水パン10は、樹脂の発泡体層10aとこの発泡体層10aの上面に積層された樹脂の表皮層10bにより構成されている。
【0016】
図1に示すように、浴槽側防水パン10は平面長方形をなす底部11と、底部11の周縁部に形成された立ち上がり部12とを有している。底部11には洗い場側防水パン5寄りに排水構造Sが設けられている。以下、この排水構造Sについて詳述する。
【0017】
図3、
図4に示すように、排水構造Sは、浴槽側防水パン10に形成された排水用開口15を有している。排水用開口15の周縁部は他の部位より薄肉をなしている。表皮層10bは排水用開口15の周縁部の上面を覆うとともに内周をも覆っている。
【0018】
排水構造Sはさらに、それぞれ樹脂の射出成形品からなる浴槽側排水トラップ20(以下、単に排水トラップと言う)と共通排水トラップ30と締付部材40とを備えている。
排水トラップ20は、浴槽側防水パン10の下方に配置されており、排水用開口15に入り込む筒部21(第1筒部)と、筒部21の下端に連なる底部22と、筒部21の中間高さの外周に形成された環状の受部23と、この受部23から洗い場側に延びた延出部24とを有している。受部23は排水用開口15の周縁部の下面に沿って配置されている。
【0019】
排水トラップ20の底部22には、中央に主排水口22aが形成され、その横にスリット形状の複数の副排水口22bが形成されている。底部22には主排水口22aの周縁から下方に突出する連結筒部25が形成されている。連結筒部25の内周には環状の段差25aが形成されている。
【0020】
上記排水トラップ20と、洗い場側防水パン5の排水構造の排水トラップ6(一部のみ示す)の下側に、上記共通排水トラップ30が取り付けられている。
浴槽の湯水は、後述のレリーフワイヤガイド部材60(排水部品)および主排水口22aを経て共通排水トラップ30で受け止められ、浴槽側防水パン1の底部11の湯水は副排水口22bを経て共通排水トラップ30で受け止められる。また、洗い場側防水パン5の湯水は排水トラップ6を経て共通排水トラップ30で受け止められる。共通排水トラップ30で受け止められた湯水は出口部(図示しない)から排水管へと排出される。
【0021】
図4に示すように、排水トラップ20の筒部21の内周には、複数(本実施形態では2つ)のガイド突起28が周方向に間隔をおいて形成されている。ガイド突起28は、周方向に延び、締付部材40の締め付け方向に向かって順に連続して配置された第1平行部28aと傾斜部28bと第2平行部28cとを有している。
【0022】
第1平行部28aと第2平行部28cは、筒部21の軸線と直交する2つの平面上にそれぞれ配置されており、第1平行部28aが底部22から遠く、第2平行部28cが底部22に近い。第1平行部28aと第2平行部28cとを繋ぐ傾斜部28bは、締め付け方向に向かって下方に進むように筒部21の軸線に対して傾斜しており、螺旋を描いている。
【0023】
第1平行部28aの上記締め付け方向の始端部(傾斜部28bから離れた端部)の下面は傾斜している。第2平行部28cの終端部(傾斜部28bから離れた端部)には、下方に突出する係止凸部29(回動規制手段)が形成されている。
【0024】
図3、
図4に示すように、締付部材40は、上記排水トラップ20の筒部21の内側に入り込む筒部41(第2筒部)と、この筒部41の上端から径方向外側に突出する環状のフランジ部42とを有している。筒部41の外周にはフランジ部42の近傍にOリング51が装着されている。また、フランジ部42の下側には環状のパッキン52が支持されている。
【0025】
締付部材40の筒部41の下部外周には、2つの係合突起48が周方向に間隔をおいて形成されている。各係合突起48は、締め付け方向に沿って間隔をおいて順に形成された第1係合部48aと第2係合部48cを有している。これら第1係合部48aと第2係合部48cは、周方向に延び、筒部41の軸線と直交する2つの平面上にそれぞれ配置されている。第1係合部48aは筒部41の下端から遠く、第2係合部48cは筒部41の下端に近い。第1係合部48aと第2係合部48cの先端部の上面は傾斜している。
【0026】
図2、
図6に示すように、締付部材40の筒部41の内周には、軸方向に延びる複数例えば4つの位置決め溝45(位置決め部)が、周方向に等角度間隔で形成されている。これら位置決め溝45のうちの選択された1つは、浴槽に装着される後述のレリーフワイヤガイド部材60(排水部品)を位置決めするために用いられる。
【0027】
図4に示すように締付部材40を下降させ、その筒部41を排水トラップ20の筒部21に挿入して、締め付け方向に回すことにより、係合突起48はガイド突起28に案内され、これにより締付部材40が排水トラップ20に向かって下方に移動する。その結果、排水トラップ20の受部23と締付部材40のフランジ部42により、浴槽側防水パン10の排水用開口15の周縁部が狭圧され、排水トラップ20が浴槽側防水パン10に固定される。この狭圧状態で、パッキン52が圧縮されて止水機能を発揮する。
【0028】
上記ガイド突起28による係合突起48の案内作用について、
図7を参照しながら詳述する。締付部材40を排水トラップ20に近づけると、係合突起48がガイド突起28に当たる。この状態で締付部材40を締め付け方向(
図7(A)において矢印で示す方向)に回すと、各係合突起48の第1係合部48aと第2係合部48cが、一方のガイド突起28の第1平行部28aと第2係合部48cにそれぞれ乗る。この状態で、係合突起48の第2係合部48cの先端が、他方のガイド突起48の始端部(第1平行部48aにおいて傾斜部48bから離れた端部)に近づく(
図7(A)参照)。
【0029】
さらに締付部材40を締め付け方向に回すと、第2係合部48cの先端部が第1平行部28aの下面に沿って傾斜部28bに向かい、この傾斜部28bの案内作用により、第2平行部28bの下面に移る。この際、第1係合部48aも第1平行部48aの下側に入り込む。この過程で、締付部材40が下方に移動し、パッキン52を圧縮状態にする。
【0030】
さらに締付部材40を締め付け方向に回すと、第1係合部48aと第2係合部48cは、パッキン52の弾性力を受けて第1平行部28aと第2平行部28cの下面にそれぞれ接しながら移動し、やがて
図7(B)に示すように、第2係合部48cの先端が係止凸部29に当たり、締付部材40の締め付け方向への回動が禁じられる。
【0031】
上記のように、締付部材40は、第2係合部48cが係止凸部29に当たるまでの締め付け方向に回動するので、締め込み不足になるのを回避でき、排水トラップ20を浴槽側防水パン10の排水用開口15の周縁部に強固に固定することができる。また、パッキン52を最適の圧縮状態にすることができ、良好な止水機能を発揮することができる。
【0032】
上記のように係止凸部29により締付部材40の締め付け方向の回動を規制するので、締付部材40の締め込み完了時の角度位置は、浴槽側防水パン10および排水トラップ20に対して常に一定にすることができ、作業者によって異ならない。そのため、締付部材40の4つの位置決め溝45は、常に浴槽側防水パン10と排水トラップ20に対して予め設定された角度位置に配置することができる。その結果、締付部材40はレリーフワイヤガイド部材60(排水部品)を位置決めする役割を担うことができる。以下、詳述する。
【0033】
本実施形態では、
図5,
図6に示すように、締付部材40にレリーフワイヤガイド部材60が連結される。このガイド部材60は、内周に雌ネジを有する螺合筒61と、螺合筒61の上端に形成された鍔部62と、螺合筒61の外周から斜め上方に突出するガイド筒部63と、螺合筒61の下端に連なる取付部64とを有している。ガイド筒部63には、下方に突出する係合リブ65(係合部)が形成されている。
【0034】
上記レリーフワイヤガイド部材60の係合リブ65を、締付部材40の選択された位置決め溝45に嵌め、取付部64を締付部材40の連結筒部25に押し込み、取付部64の爪64aを連結筒部25の段差25aに引っ掛けることにより、レリーフワイヤガイド部材60が締付部材40に連結される。係合リブ65が位置決め溝45に係合されることにより、レリーフワイヤガイド部材60のガイド筒部63は、確実に設定された方向を向くように配置される。
【0035】
浴槽側防水パン10に浴槽が設置される際、浴槽の排水口が締付部材40の円柱状空間の上方に位置するとともに上記ガイド部材60の上方に位置するように、浴槽が位置決めされる。この状態で、ポップアップ排水栓70が浴槽の排水口に取り付けられる。この排水栓70は、外周に雄ネジが形成された螺合筒71と、螺合筒71の上端に形成された鍔部72と、螺合筒71の内部に収容されレリーフワイヤにより開閉される弁体(図示しない)を有している。排水栓70の螺合筒71をレリーフワイヤガイド部材60の螺合筒61にねじ込むことにより、排水栓70の鍔部72とレリーフワイヤガイド部材60の鍔部62が浴槽の排水口周縁部を挟持し、これによりガイド部材60と排水栓70が浴槽に固定される。この螺合作業時に、レリーフワイヤガイド部材60は締付部材40の位置決め溝45により回動を禁じられており、排水栓70と供回りすることはない。
【0036】
排水栓70の弁体に接続されたレリーフワイヤは、ガイド筒部63を通り、ガイド筒部63に接続されたガイドチューブを通り、操作部(いずれも図示せず)に接続されている。ガイド筒部63が設定された角度位置を向いているので、このガイド筒部63やガイドチューブが浴槽と干渉することはない。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態を採用することが可能である。
排水トラップの筒部の内周にガイド突起を螺旋状に形成して雌ネジとし、締付部材の筒部の外周に係合突起を螺旋状に形成して雄ネジとしてもよい。この場合、ガイド突起は全長にわたって軸線に対して傾斜している。このような螺合関係では、一般的に締付部材の締め込み不足の他に過剰締め込みの問題も生じる。しかし、本発明では回動規制手段により締め込み不足は勿論のこと過剰締め込みも防止できるので、過剰締め込みによりパッキン52が捩れて止水機能が低下したり、防水パンの排水用開口の周縁部や、排水トラップの受部や締付部材のフランジ部が変形したりするのを防止できる。特に本実施形態のように防水パンが発泡体層と表皮層を有する場合であっても、その変形を防止できる。
【0038】
防水パンは発泡体層と表皮層を有さず、FRP等の硬質材料であってもよい。
回動規制手段は、排水トラップの第1筒部においてガイド突起から離れた係止凸部であってもよい。この場合、締付部材の第2筒部の突起(係合突起とは別の突起)が係止凸部に当たることにより、締付部材の締め付け方向の回動が禁じられる。
【0039】
容易に推測できるので図示しないが、締付部材の筒部内周に位置決め部としての位置決めリブを形成し、排水部品にこの位置決めリブに嵌る係合溝を形成してもよい。
排水トラップの第1筒部は、防水パンの排水用開口に挿入されずに、その下側に配置されていてもよい。
上記実施形態では本発明を浴槽側防水パンに適用したが、洗い場側防水パンに本発明を適用してもよいし、シャワーのみが可能な浴室(シャワー室)の防水パンに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、防水パンの排水構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
S 排水構造
10 浴槽側防水パン(防水パン)
15 排水用開口
20 浴槽側排水トラップ(排水トラップ)
21 筒部(第1筒部)
23 受部
28 ガイド突起
29 係止凸部(回動規制手段)
40 締付部材
41 筒部(第2筒部)
42 フランジ部
45 位置決め溝(位置決め部)
48 係合突起
52 パッキン
60 レリーフワイヤ用ガイド部材(排水部品)