(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984976
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】加工装置及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20211213BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20211213BHJP
B23K 15/08 20060101ALI20211213BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20211213BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/10
B23K15/08
B23K26/70
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-244709(P2017-244709)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-111536(P2019-111536A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−046983(JP,U)
【文献】
特表2009−536879(JP,A)
【文献】
特開2001−212682(JP,A)
【文献】
実開昭50−82792(JP,U)
【文献】
特開2009−28777(JP,A)
【文献】
特表2006−513863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23K 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギビームによって貫通切削を行うべき被加工部と、前記被加工部を貫通した前記エネルギビームが照射される位置に設けられた対向部とを含む加工対象物の前記被加工部に、前記エネルギビームが照射されるように前記加工対象物を支持する支持装置と、
前記支持装置に支持された前記加工対象物の、前記被加工部と前記対向部との間の空間に転動体を投入する投入機構と
を有し、
前記支持装置は、前記加工対象物を傾斜させて前記転動体を転がすことにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間から前記転動体を排出させる機能を持つ加工装置。
【請求項2】
前記加工対象物は管状の形状を有しており、前記投入機構は、管状の前記加工対象物の開口部から内部の空間に前記転動体を投入する請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記支持装置は、前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させる機能を有する請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記加工対象物は、前記被加工部が前記対向部よりも上方に位置する姿勢のとき、前記対向部が下方に向かって湾曲した形状を有し、
前記支持装置は、前記対向部の上に前記転動体が重力の作用を受けて静止するように、前記加工対象物の姿勢を調整することにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させる機能を持つ請求項3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記転動体は磁性材料を含み、前記支持装置は、前記転動体を磁力によって前記被加工部と前記対向部との間の空間に保持する機能を持つ請求項3に記載の加工装置。
【請求項6】
前記投入機構を制御して、前記支持装置に支持された前記加工対象物の前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を投入させ、
前記支持装置を制御して、前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させ、
前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体が保持された状態で、エネルギビーム源を制御して前記エネルギビームを前記加工対象物の前記被加工部に照射させる制御装置をさらに有する請求項3乃至5のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項7】
被加工部と、前記被加工部に対して空間を隔てた位置に設けられた対向部とを有する加工対象物の、前記被加工部と前記対向部との間の空間に転動体を保持させ、
前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させた状態で、前記被加工部にエネルギビームを照射して前記被加工部を貫通させ、貫通後に、前記被加工部を通過し前記対向部に向かう前記エネルギビームを前記転動体で遮蔽し、
前記被加工部を貫通させた後、前記加工対象物を傾斜させて前記転動体を転がすことにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間から前記転動体を排出させる加工方法。
【請求項8】
前記加工対象物は管状の形状を有しており、前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させるときに、管状の前記加工対象物の開口部から前記転動体を転がして、前記被加工部と前記対向部との間の空間まで到達させる請求項7に記載の加工方法。
【請求項9】
前記加工対象物は、前記被加工部が前記対向部よりも上方に位置する姿勢のとき、前記対向部が下方に向かって湾曲した形状を有しており、重力によって、前記対向部の上に前記転動体を静止させることにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させる請求項7または8に記載の加工方法。
【請求項10】
前記転動体は磁性材料を含み、前記被加工部と前記対向部との間の空間に、磁力によって前記転動体を保持させる請求項7または8に記載の加工方法。
【請求項11】
前記転動体の直径が5mm以上である請求項7乃至10のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項12】
前記転動体の直径が20mm以下である請求項7乃至11のいずれか1項に記載の加工方法。
【請求項13】
前記転動体の直径が、前記被加工部の内壁から前記対向部までの間隔の1/20以上1/3以下である請求項7乃至12のいずれか1項に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギビームを用いた加工装置及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステント等の金属チューブの円筒面をレーザ光で貫通切削するレーザ加工技術が公知である(特許文献1)。金属チューブにレーザ光を照射して貫通切削を行うと、金属チューブの集光点に対向する内壁面にレーザ光が照射されて内壁面が損傷する場合がある。特許文献1に開示された方法では、金属チューブ内に棒状の保護マンドレルを挿入して加工を行うことにより、集光点に対向する内壁面を保護している。
【0003】
保護マンドレルがレーザ光を遮蔽するため、集光点に対向する内壁面にレーザ光が届かない。このため、集光点に対向する内壁面の損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−332230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被加工物の形状が直線状ではなく湾曲しているような場合、被加工物内に棒状の保護マンドレルを挿入することが困難である。本発明の目的は、種々の形状を有する被加工物に適用可能な加工装置及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
エネルギビームによって貫通切削を行うべき被加工部と、前記被加工部を貫通した前記エネルギビームが照射される位置に設けられた対向部とを含む加工対象物の前記被加工部に、前記エネルギビームが照射されるように前記加工対象物を支持する支持装置と、
前記支持装置に支持された前記加工対象物の、前記被加工部と前記対向部との間の空間に転動体を投入する投入機構と
を有
し、
前記支持装置は、前記加工対象物を傾斜させて前記転動体を転がすことにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間から前記転動体を排出させる機能を持つ加工装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
被加工部と、前記被加工部に対して空間を隔てた位置に設けられた対向部とを有する加工対象物の、前記被加工部と前記対向部との間の空間に転動体を保持させ、
前記被加工部と前記対向部との間の空間に前記転動体を保持させた状態で、前記被加工部にエネルギビームを照射して前記被加工部を貫通させ、貫通後に、前記被加工部を通過し前記対向部に向かう前記エネルギビームを前記転動体で遮蔽
し、
前記被加工部を貫通させた後、前記加工対象物を傾斜させて前記転動体を転がすことにより、前記被加工部と前記対向部との間の空間から前記転動体を排出させる加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
被加工部が貫通した後、対向部に向かうエネルギビームを転動体が遮蔽する。このため、対向部の損傷を抑制することができる。転動体を転がして、被加工部と対向部との間の空間に到達させることができる。このため、湾曲した形状の加工対象物の穴明け加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、実施例によるレーザ加工装置の概略斜視図であり、
図1Bは、加工対象物の軸方向に直交する断面図である。
【
図2】
図2は、加工前のレーザ加工装置の概略図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、それぞれ加工時における加工対象物の軸方向に平行な断面図及び軸方向に垂直な断面図である。
【
図4】
図4は、加工対象物に貫通孔が形成された直後の断面図である。
【
図5】
図5は、加工が終了した後のレーザ加工装置の概略図である。
【
図6】
図6は、他の実施例によるレーザ加工装置でレーザ加工を行うときの加工対象物の断面図である。
【
図7】
図7A〜
図7Cは、
図6に示した実施例の変形例によるレーザ加工装置により転動体を磁力で保持する工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1A及び
図1Bを参照して、実施例によるレーザ加工装置について説明する。
図1Aは、実施例によるレーザ加工装置の概略斜視図である。レーザ光源10が加工用のレーザビームを出力する。レーザ光源10として、例えばNd:YAGレーザ発振器を用いることができる。
【0011】
レーザ光源10から出力されたレーザビームがレーザ伝達ファイバ11を経由してレーザ照射部12まで導光される。レーザ照射部12は、加工対象物50の表面にレーザビームを集光させる。さらに、レーザ照射部12は、加工対象物50の被加工点に向けてアシストガスを供給するノズルを含む。走査機構15が、加工対象物50に対してレーザ照射部12を移動させる。走査機構15は、例えば2つの直動機構を直交させて連結することにより構成される。レーザ照射部12を移動させることにより、加工対象物50の目標とする位置にレーザビームを入射させることができる。
【0012】
加工対象物50は支持装置20に支持されている。支持装置20は、把持部21、モータ22、23を含む。把持部21は加工対象物50を把持して固定する。水平面をxy面とし、鉛直上方を向く方向をz軸の正方向とするxyz直交座標系を定義する。一方のモータ22を駆動することにより、把持部21に支持された加工対象物50を水平面に対してx軸方向に傾斜させることができる。他方のモータ23を駆動することにより、把持部21に支持された加工対象物50を水平面に対してy軸方向に傾斜させることができる。このように、支持装置20は、加工対象物50を水平面に対して2方向に傾斜させることができる。加工対象物50は、例えば、両端が開口し、湾曲した管状の部材であり、鉄、ステンレス鋼、樹脂等で形成されている。
【0013】
投入機構30が、管状の加工対象物50内に、複数の転動体60を投入する。転動体60は、重力によって斜面を転がる形状、例えば球形の物体である。投入機構30は、転動体貯蔵容器31、漏斗32、及び転動体移送機構33を含む。転動体移送機構33は、転動体貯蔵容器31に貯蔵された複数の転動体60を漏斗32まで移送する。漏斗32に移送された転動体60は、漏斗32の出口から加工対象物50の開口端に転がり込む。加工対象物50内に投入された転動体60は、加工後に回収容器37に回収される。
【0014】
制御装置40が、レーザ光源10、走査機構15、支持装置20、及び投入機構30を制御する。例えば、制御装置40は、レーザ光源10にレーザビームの出力指令を送信する。さらに、制御装置40は、走査機構15を動作させてレーザ照射部12を目標とする位置まで移動させる。制御装置40は、支持装置20のモータ22、23を駆動して、加工対象物50の姿勢を変化させる。また、制御装置40は、漏斗32から転動体60が加工対象物50の開口部に転がり込むように、漏斗32の位置を調整し、転動体移送機構33を動作させて、転動体貯蔵容器31内の転動体を漏斗32まで移送する。
【0015】
図1Bは、加工対象物50の軸方向に直交する断面図である。加工対象物50の被加工部51にレーザビーム18を入射させて貫通切削加工を行うことにより、被加工部51を貫通する孔を形成することができる。あらかじめ決められたパターンに基づいてレーザ照射部12(
図1A)を移動させることにより、加工対象物50を所望の形状に貫通切削することができる。
【0016】
加工対象物50の被加工部51を貫通する孔が形成されると、レーザビーム18が加工対象物50内の空間を通って被加工部51とは反対側の壁に入射する。被加工部51とは反対側の壁を対向部52ということとする。
【0017】
次に、
図2〜
図5を参照して、
図1に示したレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法について説明する。
【0018】
図2は、加工前のレーザ加工装置の概略図である。支持装置20が、基台20A、x方向傾斜部20B、及びy方向傾斜部20Cを含む。モータ22を動作させると、x方向傾斜部20Bが基台20Aに対してx方向に傾斜する。x方向傾斜部20Bの傾斜に伴って、y方向傾斜部20Cもx方向に傾斜する。モータ23を動作させると、y方向傾斜部20Cがx方向傾斜部20Bに対してy方向に傾斜する。y方向傾斜部20Cに把持部21が固定されている。x方向傾斜部20Bをx方向に傾斜させ、y方向傾斜部20Cをy方向に傾斜させることにより、把持部21に把持されている加工対象物50をx方向及びy方向の二方向に傾斜させることができる。
【0019】
加工対象物50の被加工部51が対向部52よりも上方に位置する姿勢のとき、加工対象物50は被加工部51及び対向部52の近傍において下方に向かって湾曲した形状を有している。このような形状を有する加工対象物50を、対向部52が最も低い位置に配置される姿勢で、支持装置20の把持部21で把持して固定する。
【0020】
漏斗32の出口が加工対象物50の一方の開口部に挿入されるように、制御装置40が漏斗32を移動させる。転動体60は磁性材料で構成されており、転動体移送機構33は制御装置40からの制御によって移動可能な電磁石を有する。制御装置40は、転動体貯蔵容器31内の転動体60を転動体移送機構33の電磁石で吸着させて、漏斗32まで移動させる。漏斗32の上方で電磁石をオフにすると、転動体移送機構33に吸着されていた転動体60が漏斗32内に落下する。漏斗32内に落下した転動体60は、重力によって加工対象物50内に転がり込む。加工対象物50内に転がり込んだ転動体60は、最下端の対向部52の上に滞留する。
【0021】
図3A及び
図3Bは、それぞれ加工時における加工対象物50の軸方向に平行な断面図及び軸方向に垂直な断面図である。加工対象物50内に投入された複数の転動体60は、対向部52の上、及びその近傍に静止して保持される。この状態で、制御装置40(
図1)がレーザ光源10(
図1)からレーザビームを出力させる。レーザ光源10から出力されたレーザビームがレーザ照射部12まで導光され、被加工部51に集光される。レーザビーム18のエネルギによって被加工部51が溶融し、貫通孔が形成される。
【0022】
図4は、加工対象物50に貫通孔が形成された直後の断面図である。レーザビーム18が、被加工部51に形成された貫通孔内を通過して加工対象物50の内部の空間に導入され、対向部52に向かう。対向部52の上に保持されている転動体60が、対向部52に向かうレーザビーム18を遮蔽する。
【0023】
制御装置40(
図1)が走査機構15(
図1)を制御してレーザ照射部12を移動させることにより、加工対象物50の貫通切削を行う。
【0024】
図5は、加工が終了した後のレーザ加工装置の概略図である。加工が終了すると、制御装置40が支持装置20を制御することにより、加工対象物50を傾斜させる。これにより、加工対象物50内の対向部52の上に保持されていた転動体60が加工対象物50内を転がり、一方の開口端から排出される。加工対象物50から排出された転動体60は、回収容器37に回収される。回収された転動体60は、再利用することができる。
【0025】
次に、上記実施例によるレーザ加工装置を用いてレーザ加工を行うことにより得られる優れた効果について説明する。
【0026】
上記実施例では、
図4に示したように、加工対象物50の被加工部51に貫通孔が形成された後、対向部52に向かうレーザビーム18が転動体60によって遮蔽される。レーザビーム18が対向部52まで到達しなくなるため、対向部52の損傷を抑制することができる。また、転動体60は、加工対象物50内を転がって、被加工部51と対向部52との間の空間に達するため、加工対象物50が直線状ではなく、複雑に湾曲している場合でも、転動体60を被加工部51と対向部52との間の空間に保持させることができる。
【0027】
対向部52の上に粉体を配置し、対向部52に向かうレーザビーム18を粉体で遮蔽することも可能である。ところが、粉体は、加工対象物50の内壁に付着する傾向が強いため、加工対象物50内に残留させることなく加工対象物50の外に排出することが困難である。上記実施例では、レーザビーム18を遮蔽する部材として転動体60を用いるため、加工後に、加工対象物50を傾斜させることによって、転動体60を転がして加工対象物50内から容易に排出させることができる。
【0028】
レーザ加工によって飛散した飛散物が転動体60に付着することにより、加工対象物50の内壁への飛散物の付着を抑制することができる。転動体60の形状及び大きさは、レーザ加工によって飛散した飛散物が転動体60に付着しても、転動体60が容易に加工対象物50内を転がって外部に排出される程度とすることが好ましい。例えば、転動体60の各々を、直径5mm以上の球体とすることが好ましい。
【0029】
加工対象物50に貫通孔が形成されると、貫通孔を通って加工対象物50内の空間にアシストガスが流入する。転動体60が軽い場合には、このアシストガスの勢いで、被加工部51と対向部52との間の領域から周囲に飛散または移動してしまう場合がある。アシストガスが流入しても転動体60が飛散または移動しないように、転動体60の質量を大きくすることが好ましい。転動体60の飛散や移動を防止するために、アシストガスの流速、被加工部51から転動体60までの距離、対向部52の形状等に基づいて、転動体60の質量を決定するとよい。転動体60の材料が決まっている場合には、その質量は体積(直径)に依存するため、好ましい質量の条件から、転動体60の好ましい体積(直径)を求めることができる。
【0030】
次に、
図1〜
図5に示した実施例の変形例について説明する。上記実施例では、転動体60として球体を用いたが、斜面を転がる形状を持つものであれば、球体以外のものを用いてもよい。例えば、転動体60として、楕円の長軸を回転中心とした回転楕円体、円柱体等のものを用いてもよい。
【0031】
また、上記実施例では、転動体60に磁性材料を用い、電磁石を含む転動体移送機構33(
図2)により転動体60を漏斗32(
図2)に移送した。その他の機構により、転動体60を漏斗32に移送してもよい。例えば、ロボットアームを用いて転動体貯蔵容器31を漏斗32の上方まで移送して、転動体60を転動体貯蔵容器31から漏斗32に移し替えてもよい。
【0032】
転動体60の材料として、加工対象物50よりもレーザビームによって加工され難いものを用いるとよい。なお、加工対象物50の被加工部51(
図3A、
図3B)にレーザビームを集光させた場合、転動体60の表面においては、レーザビームが広がり、パワー密度が低下する。このため、転動体60として、パワー密度が低下したレーザビームによって溶融またはアブレーションされない材料を用いてもよい。
【0033】
被加工部51と対向部52との間の空間に保持する転動体60の個数が少なすぎると、レーザビームが転動体60の隙間を通って対向部52まで到達する場合がある。対向部52の損傷を抑制するために、被加工部51から対向部52に、レーザビームが伝搬する隙間が生じないように転動体60を配置することが好ましい。転動体60が大きすぎると、この隙間が生じやすくなる。隙間を生じさせないために、転動体60を直径20mm以下の球体とすることが好ましい。
【0034】
加工対象物50の内部空間に対して転動体60が大きすぎると、空間内に十分な個数の転動体60を保持することが困難である。空間内に十分な個数の転動体60を保持するために、転動体60の直径を、被加工部51の内壁から対向部52の内壁までの間隔の1/20以上1/3以下とすることが好ましい。
【0035】
転動体60の最上面と被加工部51との間隔が狭すぎると、転動体60がレーザビーム18(
図4)によって損傷を受ける危険性が増す。転動体60が損傷を受けて変形すると、転動体60を転がして加工対象物50から排出することが困難になる。転動体60が損傷を受けることを防止するために、被加工部51(
図3A)の内壁から転動体60の最上面までの間隔を、被加工部51の内壁から対向部52の内壁までの間隔の1/2以上にすることが好ましい。
【0036】
上記実施例では、円筒管状の加工対象物50を取り扱ったが、その他の形状を有する加工対象物を加工することも可能である。例えば、被加工部から空間を隔てて対向部が設けられている構造を有する加工対象物を加工する場合に、上記レーザ加工装置を用いることの優れた効果が得られる。
【0037】
上記実施例では、レーザビームを用いて加工対象物50の貫通切削加工を行ったが、他のエネルギビームを用いて加工を行ってもよい。レーザビーム以外に加工に利用可能なエネルギビームとして、例えば電子ビーム、イオンビーム、プラズマジェット、液体ジェット、噴射砥粒等が挙げられる。レーザビーム以外のエネルギビームを用いて加工を行う場合には、レーザ光源10及びレーザ伝達ファイバ11(
図1)に代えて、これらのエネルギビームを出力するエネルギビーム源を用いるとよい。
【0038】
次に、
図6を参照して、他の実施例によるレーザ加工装置について説明する。以下、
図1〜
図5に示した実施例によるレーザ加工装置と共通の構成については説明を省略する。
【0039】
図6は、本実施例によるレーザ加工装置でレーザ加工を行うときの加工対象物50の軸方向に沿う断面図である。
図1〜
図5に示した実施例では、被加工部51が対向部52の上方に位置する姿勢で加工対象物50を支持したとき、加工対象物50が下方に向かって湾曲していた。本実施例では、被加工部51が対向部52の上方に位置する姿勢で加工対象物50を支持したとき、加工対象物50が上方に向かって湾曲している。このため、被加工部51と対向部52との間の空間に転動体60を重力によって保持することができない。
【0040】
本実施例では、支持装置20(
図1)が、対向部52の外側の壁面に対向するように、または接触するように配置される電磁石25を含む。制御装置40が電磁石25を励磁することにより、転動体60を磁力によって被加工部51と対向部52との間の空間に保持する。本実施例では、磁性材料からなる転動体60を磁力で保持するため、加工対象物50が上方に向かって湾曲している部分にも転動体60を保持することができる。これにより、加工対象物50を上方に向かって湾曲した姿勢で保持し、上方を向く壁面を貫通切削加工する際に、対向部52の損傷を抑制することができる。
【0041】
次に、
図7A〜
図7Cを参照して、
図6に示した実施例の変形例によるレーザ加工装置について説明する。
図7A〜
図7Cは、転動体60を磁力で保持するときの手順を示すための加工対象物50及び電磁石25の断面図である。
図6に示した実施例では、1つの電磁石25を配置して転動体60を磁力で保持したが、本変形例では、電磁石25が、加工対象物50の軸方向に関して複数の励磁単位25A〜25Dに分割されており、励磁単位25A〜25Dごとに励磁することができる。
図7A〜
図7Cにおいて、励磁されている励磁単位に、励磁されていない励磁単位よりも高密度のハッチングを付している。
【0042】
図7Aに示すように、加工対象物50に転動体60を投入する開口部から最も遠い位置の励磁単位25Aを励磁し、他の励磁単位25B〜25Dは励磁しない。この状態で転動体60を加工対象物50内に投入すると、励磁単位25Aで発生した磁力により、励磁単位25Aに対応する領域に、転動体60が保持される。
【0043】
その後、
図7Bに示すように、励磁単位25Aに加えて、転動体60を投入する開口部から2番目に遠い位置の励磁単位25Bを励磁する。これにより、励磁単位25Bで発生した磁力により、励磁単位25Bに対応する領域にも、転動体60が保持される。
【0044】
図7Cに示すように、転動体60を投入する開口部から3番目に遠い位置の励磁単位25Cを励磁し、その後、開口部に最も近い位置の励磁単位25Dを励磁する。これにより、励磁単位25C、25Dに対応する領域に転動体60が保持される。
【0045】
このように、転動体60を投入する開口部から遠い方の励磁単位25Aから、転動体60を投入する開口部に近い方の励磁単位25Dに向かって順番に励磁を開始することにより、加工対象物50の軸方向に関して、電磁石25が配置された全域に再現性よく転動体60を保持することが可能になる。
【0046】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0047】
10 レーザ光源
11 レーザ伝達ファイバ
12 レーザ照射部
15 走査機構
18 レーザビーム
20 支持装置
20A 基台
20B x方向傾斜部
20C y方向傾斜部
21 把持部
22、23 モータ
25 電磁石
25A、25B、25C、25D 励磁単位
30 投入機構
31 転動体貯蔵容器
32 漏斗
33 転動体移送機構
37 回収容器
40 制御装置
50 加工対象物
51 被加工部
52 対向部
60 転動体