(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶着技術においては、上記先行技術のように、一般に、溶着されるべき部分に、容器や管体に対し外側に突出するようにフランジを設けておき、フランジを利用して溶着が行われる。これは、溶着を確実に行うために、フランジに設けられた溶着される部分を治具等により相手方部材に向かってしっかり加圧するためである。加圧が不十分であると、溶着強度が不足したり、必要とされる気密性が得られなかったりして、得られる容器や管体の品質上好ましくない。
【0007】
しかしながら、容器や管体に対し外側に突出するようにフランジを設けると、空間の利用効率が低下する。すなわち、自動車のエンジンルーム等に配置される部品等においては、レイアウト上、その部品が使用可能な空間が制限されているが、上記先行技術のように突出するフランジを設けると、フランジが突出した分、容器や管体の壁面が後退した位置とならざるを得ない。すると、容器の容量が十分に確保できなかったり、十分な管路断面積が確保できなかったりしがちである。近年、車両のエンジンルーム等に配置される部品には、より、空間効率の高い部品が求められるに至っている。
【0008】
本発明の目的は、半割れ体を溶着して得られる容器や管体において、溶着の確実性を損なわずに、限られたレイアウト空間の中での、容器の容量や管体の断面積といった空間効率を高めることにある。また、本発明の他の目的は、半割れ体の溶着の確実性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、半割れ体において、容器や管体の中空部の壁の一部をフランジの外側縁部にほぼ一致する位置に設けると共に、当該フランジの内側縁部に前記壁部を接続するような構造にする等すれば、溶着の確実性を維持しながら空間効率を高めうることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、対をなす熱可塑性樹脂製半割れ体の端面を互いに溶着し、容器もしくは管体を形成する工程に用いる熱可塑性樹脂製半割れ体であって、熱可塑性樹脂製半割れ体は、溶着面に沿って延在するフランジを有しており、フランジの周方向の少なくとも一部の区間において、容器もしくは管体の壁面となる部分が第1壁部と第2壁部を有しており、第1壁部は、フランジの幅方向でフランジの外側縁部とほぼ一致する位置で、溶着時の加圧方向に沿って延在しており、第2壁部は、フランジの内側縁部と前記第1壁部を接続しており、フランジと第2壁部とで囲われた空間が、容器もしくは管体の外部空間に面する、熱可塑性樹脂製半割れ体である(第1発明)。
【0011】
第1発明においては、前記区間において、溶着時の加圧方向に沿って延在するリブが設けられており、前記リブは、フランジと第1壁部の間を接続するように、第2壁部を貫いて設けられていることが好ましい(第2発明)。
また、第2発明においては、前記リブは、溶着時の加圧方向に第1壁部の全長にわたって設けられていることが好ましい(第3発明)。
【0012】
また、第1発明ないし第3発明においては、第2壁部が、フランジの内側縁部から外側縁部に向かうにつれてフランジから遠ざかるように、溶着時の加圧方向および溶着面に対し傾斜して設けられた部分を有することが好ましい(第4発明)。
【0013】
さらに、本発明は、対をなす熱可塑性樹脂製半割れ体の端面を互いに溶着し、容器もしくは管体を形成する工程に用いる熱可塑性樹脂製半割れ体であって、容器もしくは管体の壁面となる壁部と壁部の端縁に沿って延在するフランジとを備え、フランジは、溶着時の加圧方向から見た際に、壁部で遮られて視認できない非視認領域を有する熱可塑性樹脂製半割れ体である(第5発明)。
【0014】
第5発明においては、壁部とフランジとを接続するように溶着時の加圧方向に沿って延在するリブが設けられており、リブとフランジが接続する部分は、溶着時の加圧方向から見た際に、壁部で遮られて視認できない非視認領域を有することが好ましい(第6発明)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂製半割れ体(第1発明)によれば、溶着の確実さを維持しながら、得られる容器や管体の空間効率が高められる。
【0018】
さらに、第2発明のようにすれば、容器や管体の耐圧性が高められる。また、さらに第3発明のようにすれば、溶着の際に使用する受け治具(溶着治具)の設計自由度が高められ、溶着の確実性向上にも貢献する。また、第4発明のようにすれば、得られる容器や管体の空間効率がより高められる。
【0019】
本発明の他の熱可塑性樹脂製半割れ体(
第5発明)によっても、溶着の確実さを維持しながら、得られる容器や管体の空間効率が高められる。さらに、
第6発明のようにリブを設けることで、容器や管体の耐圧性が高められる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面を参照しながら、気体用の配管に用いられる拡張タンク(中間タンク)を例として、発明の実施形態について説明する。拡張タンクは、対をなす半割れ体が溶着されて、中空箱状の容器とされた部材である。拡張タンクには、タンクの内外を連通する接続ニップル18,28が設けられている。この拡張タンクは、接続ニップル18,28にゴムチューブ等が接続されて、例えば、蒸留プロセス等の気体と液体が混在して流れうる配管経路中に設けられて、配管内を流れる気体と液体を分離する用途に用いられうる。あるいは、拡張タンクは、配管内を伝達する脈動を低減する拡張チャンバー(すなわちサージタンク)として働く用途にも使用可能である。なお、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0022】
図1は、第1実施形態の半割れ体1により容器が構成される例を示す斜視図である。
図2は、
図1のX−X断面における、第1実施形態の半割れ体により容器が構成される際の断面図である。なお、以下の説明で、
図2の上下方向を、溶着時の加圧方向と呼ぶ。また、
図2の左右方向を、フランジの幅方向と呼ぶ。断面X−Xは、溶着時の加圧方向及びフランジの幅方向を含む平面の断面である。
【0023】
対をなす半割れ体1と半割れ体2とが溶着されて、中空容器である拡張タンクが形成される。半割れ体1と半割れ体2は、熱可塑性樹脂製であり、それぞれの半割れ体の開放端面が互いに溶着されることで、中空箱状の容器(拡張タンク)となる。半割れ体には、本実施形態のように、接続ニップル18,28などが一体成形されていることが好ましい。また、半割れ体には、適宜、取付ステーなどが一体成形されていてもよい。
【0024】
発明に係る半割れ体1について詳述する。半割れ体1は、溶着面WSに沿って延在するフランジ12を有している。本実施形態においては、フランジ12は、半割れ体1の開放端縁の全周にわたって設けられている。フランジ12は、必ずしも開放端縁の全周にわたっている必要はなく、一部にフランジが設けられていない部分があってもよい。溶着面WSの形態は、平面状や曲面状(例えば筒面状、球面状、円錐面状)等、特に限定されず、採用される溶着工程の種類とその要請に応じ適宜選ばれる。本実施形態においては、溶着面WSは平面状である。
【0025】
なお、半割れ体におけるフランジは、対となる半割れ体同士を溶着する際に、互いのフランジを介して溶着面WSに略均等に圧力がかけうるような形状であればよい。このようなフランジの形状は、特に限定されるものではないが、溶着工程において、容器外部からフランジへの加圧を容易にするため、半割れ体の外周面側に張り出した鍔部を有することが好ましい。
【0026】
フランジ12には、半割れ体1が相手側半割れ体2と溶着する部分が設けられている。本実施形態では、当該部分はフランジ12から突出した突条13として設けられている。溶着する部分は、必ずしも突条の形態である必要はなく、凹条(凹溝)であってもよく、平坦な部分であってもよく、その具体的形態は特に限定されない。溶着する部分は、フランジと一体に形成されていることが好ましいが、フランジに追加して設けてもよい。また、フランジ12は、フランジの縁部に、溶着時の加圧方向に沿って突出形成されたリム(図示せず)を有していてもよい。
【0027】
以下、
図2の半割れ体1の右側の部分に着目し、フランジ12(内側縁部121及び外側縁部122を含む)と第1壁部11a(端縁部11a1を含む)と第2壁部11bとの関係性について説明する。半割れ体1においては、容器の中空部の壁面となる部分に第1壁部11aと第2壁部11bが設けられている。第1壁部11aは、フランジの幅方向でフランジ12の外側縁部122とほぼ一致する位置で、溶着時の加圧方向に沿って延在している。第1壁部の延在方向は抜きテーパ角程度に傾いていてもよい。第1壁部11aのフランジ側の端縁部11a1(
図2における下端部)は、第2壁部11bによって、フランジの内側縁部121に接続されている。かかる構成により、第1壁部11aに接続されるフランジの区間においては、フランジ12と第2壁部11bとの間に、容器の壁面が容器の内側に凹入したような空間が形成され、かかる空間が容器の外部空間に面している。すなわち、かかる空間は、容器の外部空間に対し開放されており、つながっている。
【0028】
本実施形態においては、第2壁部11bは、フランジ12の内側縁部121から、溶着時の加圧方向に沿って立ち上がった後に、フランジ12と略平行に容器外側に向かって延出して、第1壁部11aに接続している。このような第2壁部11bにより、フランジ12と第2壁部11bの間には、フランジ12と第2壁部11bによって囲われた直方体状の空間が形成される。なお、第2壁部の具体的形態は、後述するように、本実施形態以外の形態であってもよい。
【0029】
上述したように、第1壁部11aと第2壁部11bを有するように半割れ体1が構成されると、半割れ体1は特にフランジと壁部との位置関係に関して、特徴的な外形を備えたものとなる。例えば、半割れ体1の外形を容器の上面側、すなわち、
図2の上から下に向かって溶着時に半割れ体1を加圧する方向に沿って観察した際、第1壁部11aに遮られてフランジ12の一部が視認することができない。換言すると、フランジ12と第1壁部11aは、半割れ体1において、加圧方向から観察した際、フランジ12が壁部に遮られて視認できない非視認領域を有するような位置関係で配置されている。なお、本実施形態の半割れ体1においては、加圧方向から観察した際、第2壁部11bと接続されているフランジ12の大半が非視認領域とされているが、フランジの全領域、すなわち、視認領域及び非視認領域を合わせた領域における非視認領域の範囲は特に限定されない。例えば、フランジの幅方向を基準として、フランジの視認領域に対するフランジの非視認領域の比率が1/3以上としてよく、フランジの全てが非視認領域としてもよい。半割れ体のフランジが少なくともこのような非視認領域を有するものであれば、得られる容器において、フランジが壁面よりも外側に突出する程度が抑えられる。
【0030】
同様に、例えば、半割れ体1の外形を容器の側面側、すなわち、溶着時に半割れ体1を加圧する方向と略直交する方向から観察した際、フランジ12と第2壁部11bが接続する部分は、第1壁部11aが延在する面に対し、容器の内側へ凹入した窪みとなっている。換言すると、半割れ体1には、壁部の一部及びフランジ12の一部によって、溶着時の加圧方向と略直交する方向に凹入する窪みが形成されている。この窪みは、前述したフランジ12と第2壁部11bによって囲われた空間に対応している。
半割れ体にこのような窪みが形成されていれば、得られる容器において、フランジが壁面よりも外側に突出する程度が抑えられる。
【0031】
上述した第1壁部11aと第2壁部11bを有するよう、容器の壁面が構成されるフランジの区間は、フランジ12の周方向の一部の区間であればよく、半割れ体のフランジ全体にわたって、このようにされている必要はない。本実施形態の半割れ体1においては、直方体状の半割れ体1の1つの側面に対応するフランジの区間において、容器の壁面が第1壁部11aと第2壁部11bを有するよう構成されている。半割れ体1の他の部分のフランジの部分では、例えば
図2の半割れ体1の左側の部分のように、容器の壁部11cは、従来技術のように、フランジの内側縁部121から、加圧方向にほぼ沿ってまっすぐに設けられている。
【0032】
必須ではないが、フランジ12に対し、第1壁部11aと第2壁部11bが設けられた区間において、溶着時の加圧方向に沿って延在するリブ14,14が設けられていることが好ましい。リブ14,14は、フランジ12の上面(第2壁部に対向する面)と第1壁部11aの内周面との間を接続するように、第2壁部11bを貫いて設けられている。
リブ14、14は、フランジの周方向に所定の間隔だけ離間して、複数設けられることが好ましく、リブの間隔は、フランジ12の幅の1倍〜3倍程度であることが特に好ましい。
【0033】
必須ではないが、本実施形態のように、リブ14,14は、第1壁部11aに対し溶着時の加圧方向で第1壁部11aの全長にわたって設けられていることが好ましい。本実施形態においては、更に、リブ14が容器の肩部16(天面)に接続するように設けられている。また、リブ14,14は第1壁部11aを貫くように、第1壁部11aの内周面と外周面に設けられていてもよい。
【0034】
上記実施形態の半割れ体1を外形上で観察した際、リブ14は各壁部とフランジとを接続するように配置されていると共に、以下のような特徴が認められる。半割れ体1の外形を容器の上面側、すなわち、
図2の上から下に向かって溶着時に半割れ体1を加圧する方向から観察した際、リブ14とフランジ12と第1壁部11aは、リブ14とフランジ12とが接続する部分が第1壁部11aに遮られて視認できない非視認領域を有するような位置関係で配置されている。なお、半割れ体1においては、加圧方向から観察した際、リブ14とフランジ12が接続する部分の大半が非視認領域とされているが、リブの非視認領域の範囲は特に限定されない。半割れ体のリブが少なくともこのような非視認領域を有するものであれば、得られる容器において、容器の配置場所の壁面等に干渉しにくくなるため、好ましい。
【0035】
また、半割れ体におけるリブは、半割れ体1におけるリブ14のように、半割れ体の壁部の一部を貫いて、壁部の外周面及び内周面の両方とフランジとを接続するように配置されることが好ましい。このような配置であれば、容器の配置場所の壁面等へのリブの干渉を抑えつつ、得られる容器の強度を高めることができる。
【0036】
一方、半割れ体2は、従来技術における半割れ体と同様の構成を有している。半割れ体2は溶着面WSに沿ってフランジ22を有し、フランジ22には、溶着部となる突条23が設けられている。半割れ体2の壁部21は、フランジ22の内側縁部から、加圧方向にほぼ沿ってまっすぐに設けられている。なお、本明細書中において、単に「溶着部」という時は、特に断らない限り、溶着されるべき部分もしくは溶着された部分を指す。
【0037】
本実施形態においては、半割れ体1と半割れ体2を溶着して、容器としての拡張タンクが得られるが、もちろん、半割れ体1と同様の構成を有する半割れ体同士を溶着して容器を得ることもできる。
【0038】
半割れ体1、2を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ブロー成形や射出成形が可能で、溶着が可能な熱可塑性樹脂材料が選択して用いられる。例えば、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂や、ポリアミド樹脂などが、好ましく使用できる。互いに溶着可能である限り、対をなす半割れ体同士が異なる樹脂で構成されていてもよいが、同種の樹脂、特に同じ樹脂であることが、溶着強度を高めるうえで好ましい。熱可塑性樹脂には、各種補強材料、例えば、タルクやガラス繊維などを配合してもよい。本実施形態においては、半割れ体1と半割れ体2をポリアミド樹脂により形成している。
【0039】
上記実施形態の半割れ体1や容器(拡張タンク)の製造方法について説明する。
溶着工程に先立ち、まず、熱可塑性樹脂を成形して、半割れ体1や半割れ体2を製造する。半割れ体は、好ましくは射出成形により製造されるが、ブロー成形法や、他の成形法によって製造してもよい。半割れ体がリブを有する場合には、半割れ体を射出成形法により製造することが特に好ましい。射出成形やブロー成形に使用する金型の構造や成形の手順については、公知の金型や手順が利用可能であり、特に限定されない。
【0040】
上記実施形態の半割れ体1を射出成形により製造する場合には、溶着時の加圧方向(
図2の上下方向)に金型が型閉じ、型開きするように、射出成形金型が準備される。第1壁部11aに対応する部分の半割れ体内側の部分や、第2壁部11bに対応する部分の半割れ体外側の部分では、金型と半割れ体が脱型時にアンダーカットとなる関係にあるので、これらの部分には、適宜スライド型等を用いて、アンダーカットを解消して、半割れ体1を製造すればよい。一方、半割れ体2は通常の射出成形により製造できる。
【0041】
半割れ体1、及び半割れ体2が製造できたら、両者を溶着して、容器としての拡張タンクを完成させる。
図3に半割れ体を溶着する工程の一部の模式図を示す。溶着は、熱盤溶着であってもよいし、振動溶着であってもよく、回転溶着、超音波溶着、誘導加熱溶着、レーザー加熱溶着等であってもよい。公知の溶着法を適宜採用できる。これら溶着法においては、溶着される部分が加熱され溶融(半溶融)状態とされた状態で、両半割れ体1,2のフランジ12,22が互いに押し付けられるように加圧されて、両者が溶着し接合される。
【0042】
両半割れ体1,2のフランジ同士12、22の加圧は、以下のように行えばよい。例えば、
図3(a)に示すように、半割れ体2のフランジ22を受け治具J1により支持する。受け治具J1と半割れ体2とは、加圧方向(
図3の上下方向)に着脱可能に構成されていて、受け治具J1により、フランジ22を相手方半割れ体1に向かって加圧することができる。
【0043】
一方、半割れ体1は、受け治具J2及びスライド受け治具J3により支持する。受け治具J2は半割れ体1と加圧方向(
図3の上下方向)に着脱可能に構成されている。受け治具J3は受け治具J2に対しフランジの幅方向(
図3の左右方向)に相対移動可能に構成されていて、半割れ体1のフランジ12と第2壁部11bとの間に設けられた空間にはまり込むことができるようになっている(
図3(a))。すなわち、スライド受け治具J3が閉じた位置に来た際に、受け治具J2,J3により半割れ体1のフランジ12を相手方半割れ体2に向かって加圧することができるとともに、受け治具J3が開いた位置に来た際には、半割れ体1を受け治具J2,スライド受け治具J3に対し着脱ができるように、受け治具J2,スライド受け治具J3は構成されている。
【0044】
上述したような受け治具により、両半割れ体のフランジ部を加圧可能に支持し、溶着、例えば、熱盤溶着や振動溶着することができる。フランジ12,22に設けられた溶着部を加熱し、溶融状態もしくは半溶融状態として、フランジ12,22を加圧すると、溶着部が一体化し、容器が完成する(
図3(b))。
図3に示した実施形態のように、フランジ12,22の裏側に、受け治具J1,J2,J3が存在し支持するようにされていると、フランジに対し、加圧が、直接的かつ十分に行われ、溶着がより確実なものとなる。
【0045】
必須ではないが、溶着の確実性を高める観点からは、フランジの周方向の全体にわたって、フランジの裏側に、受け治具が存在し支持するようにされていることが好ましい。フランジの周方向の一部の区間において、受け治具がフランジを直接支持していなくてもよいが、そのような区間はより少ないことが好ましい。
【0046】
上記実施形態の半割れ体にかかる作用効果について説明する。
半割れ体1は、他の半割れ体と溶着可能であり、容器や管体の一部となることができる。そして、半割れ体1は、フランジ12と第2壁部11bとで囲われた、容器の外部空間に面する空間(窪み)を有しているので、この空間(窪み)を使えば、溶着時にフランジ12をスライド受け治具J3などにより支持し、加圧することができて、確実な溶着を行うことが可能となる。
【0047】
更に、半割れ体1は、フランジの幅方向でフランジ12の外側縁部122とほぼ一致する位置で、溶着時の加圧方向に沿って延在する第1壁部11aと、フランジ12の内側縁部121と前記第1壁部11aを接続する第2壁部11bとを有している。そのため、従来技術における半割れ体(例えば、
図2の下側の半割れ体2)と比べ、第1壁部11aがフランジ12の幅だけ外側に位置しており、容器としての容量が大きくなり、空間効率が高められる。すなわち、溶着の確実性を維持しながら、空間効率を高めることができる。このような効果を、容器の外形上の特徴から説明すれば、容器のフランジ部分が壁面よりも外側に突出する程度が抑えられることにより、容器の配置場所の空間効率が高められる。
【0048】
さらに、上記実施形態の半割れ体1のように、第1壁部11aや第2壁部11bが設けられた区間において、溶着時の加圧方向に沿って延在するリブ14,14が設けられており、リブ14,14は、フランジ12と第1壁部11aの間を接続するように、第2壁部11bを貫いて設けられていると、リブ14,14により、フランジ12と第2壁部11bの間の距離が変化することが抑制されて、半割れ体により構成される容器や管体を耐圧性に優れたものとすることができる。つまり、リブ14,14を備えることにより、加圧流体が用いられる用途の容器や管体にも上記発明を適用できる可能性が高められうる。
【0049】
また、さらに、上記実施形態の半割れ体1のように、第2壁部11bを貫通するリブ14,14が、第1壁部に対し溶着時の加圧方向の全長にわたって設けられていると、溶着の際に使用する受け治具の設計自由度が高められうる。すなわち、リブ14,14が第1壁部11aの全長にわたって設けられていれば、半割れ体1の肩部16を押さえることで、フランジ12を間接的に加圧することが可能となって、必ずしも
図3のようなスライド受け治具を使用しなくてもよくなる。
【0050】
例えば、
図4に半割れ体1を受け治具により支持する他の溶着形態例を示すように、この形態では、半割れ体1は、受け治具J4により支持されて、溶着される。受け治具J4と半割れ体1とは、加圧方向(
図4の上下方向)に着脱可能に構成されていて、図の左側の箇所では、受け治具J4により、フランジ12を相手方半割れ体2に向かって直接加圧することができる。また、図の右側の箇所では、受け治具J4により、半割れ体1の肩部16が、相手方半割れ体に向かって押されることになる。フランジ12から第1壁部11aの全長にわたって、リブ14,14が設けられているので、リブ14,14により、肩部16に加えられた押圧力がフランジ12に伝達され、フランジを加圧することができる。本実施形態では、フランジ12と第2壁部11bの間の空間には、受け治具が入り込まない構成となっているが、リブ14が設けられていれば、スライド受け治具を省略しても、フランジに十分な加圧を与えることができ、溶着の確実性が向上する。また、受け治具の設計自由度も高められる。
【0051】
なお、ここでは半割れ体1におけるリブ14を例にリブを設ける作用効果を説明したが、他の態様の容器や管体を形成するために用いる半割れ体であっても、同様な形態のリブを設けることで、上記と同様な作用効果が得られる。他の態様の容器や管体を形成するために用いる半割れ体に対しては、例えば、半割れ体の壁部の一部を貫いて、壁部の外周面と内周面の両方に接続するようにリブを設ければよい。
【0052】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0053】
図5には、半割れ体の他の形態例を断面図で示す。
図5に示した第2実施形態の半割れ体1’では、第1壁部11aやフランジ12等の形状は第1実施形態と同じであるが、第2壁部11b’の形態が異なっている。また、本実施形態においては、図の左右両側共に、第1壁部11aと第2壁部11b’が設けられるようになっている。
【0054】
本実施形態においては、第2壁部11b’が、フランジ12の内側縁部121から外側縁部122に向かうにつれてフランジ12から遠ざかるように、溶着時の加圧方向(図の上下方向)および溶着面WSに対し傾斜して設けられた部分を有している。典型的には、第2壁部11b’は、フランジの内側縁部121と第1壁部11aとを斜めに接続している。
【0055】
第2壁部11b’がかかる形態とされていると、半割れ体を溶着して得られる容器や管体の容量が大きくなり、限られたレイアウト空間内において、より大容量の容器やより断面積の大きな管体を配置することが可能となって、空間効率がより高められる。
【0056】
空間効率を高める観点からは、本実施形態のように、第1壁部11aと第2壁部11b’が設けられる部分が、互いに対向するように、容器の両側面に設けられることが好ましい。容器が箱状である場合には、対向する2辺のフランジに対応する容器の壁面が、それぞれ、第1壁部11aと第2壁部11b’を有するようにされることが好ましい。
【0057】
また、空間効率を高める観点からは、第1壁部11aと第2壁部11bを有する半割れ体同士で、対をなすよう半割れ体を組み合わせ、容器や管体を構成することが好ましい。また、上述した各実施形態の説明においては、フランジが容器の壁面の開放端部から容器の外側に向かって延出するように設けられた形態例について説明したが、フランジの全周にわたってそのようにされている必要はなく、フランジの一部の部分において、容器の壁面から容器内側に向かってフランジが延出するように設けられていてもよく、半割れ体の開放端部の周方向の一部の区間でフランジが設けられていなくてもよい。
【0058】
上述した各実施形態の説明において、フランジに設けられる溶着される部分の詳細構造については、ごく簡単な突条(13,23)を設ける例について説明したが、溶着される部分の構造としては、種々の公知の構造が利用可能である。また、対をなす半割れ体において、それぞれの半割れ体に設けられた溶着される部分は異なった構造とされてもよい。必要に応じ、フランジに、溶着バリ隠しなどを形成しておくこともできる。
【0059】
上記実施形態の説明では、半割れ体を溶着することで、中空の容器が得られる形態について説明したが、半割れ体を溶着することで、管体(集合管を含む)を製造することもできる。容器や管体の具体的用途は特に限定されないが、例えば、容器であれば、空気配管等の拡張タンクや、拡張チャンバー、サージタンク、レゾネータチャンバー、冷却水タンク、リザーバタンク、ウォッシャー液タンク等に利用でき、管体であれば、過給系の配管や、インテークマニホールド、一体型エアクリーナの管路等に利用できる。
【0060】
容器の形状は、箱状であってもよく、円柱状や球状であってもよい。また、管体は、1本の管体でもよく、複数本の管体でもよく、分岐管や集合管であってもよい。また、管体の管路は直管状であってもよく、曲管状であってもよい。
各種用途や、形状の複雑さに応じて、溶着面WSが適宜決定される。
容器や管体に満たされる流体は、空気などの気体であってもよいし、水等の液体であってもよい。また、流体は加圧された流体であってもよい。