(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6984989
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】波動歯車装置の波動発生器
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20211213BHJP
F16C 35/073 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16C35/073
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-539973(P2020-539973)
(86)(22)【出願日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2018032258
(87)【国際公開番号】WO2020044524
(87)【国際公開日】20200305
【審査請求日】2020年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 修平
(72)【発明者】
【氏名】折井 大介
(72)【発明者】
【氏名】城越 教夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 宏
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/006442(WO,A1)
【文献】
特開2010−65761(JP,A)
【文献】
実開平4−95129(JP,U)
【文献】
実開平1−106629(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/00
F16C 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項5】
剛性のウエーブプラグ、および、ウエーブベアリングを備え、
前記ウエーブプラグの非円形輪郭のプラグ外周面に、前記ウエーブベアリングの内輪内周面が圧入および接着剤により固定されており、
前記プラグ外周面および前記内輪内周面のうちの一方は、前記接着剤を保持可能な接着剤保持溝が形成された第1溝形成面を備え、他方は、前記接着剤を保持可能な前記接着剤保持溝が形成された第2溝形成面を備えており、
前記接着剤保持溝はマイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅および深さの微細溝であり、
前記第1、第2溝形成面のそれぞれには、複数の前記微細溝によって配列パターンが形成されており、
前記配列パターンは、
前記微細溝が所定のピッチで第1の方向に、直線状あるいは曲線状に延びている第1方向配列パターン、
前記微細溝が所定のピッチで、前記第1の方向とは異なる第2の方向に、直線状あるいは曲線状に延びている第2方向配列パターン、または、
前記第1方向配列パターンと前記第2方向配列パターンとが交差する状態が形成されている交差配列パターンである
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1溝形成面には、前記第1方向配列パターンが形成されており、
前記第2溝形成面には、前記第2方向配列パターンが形成されており、
前記第1の方向および前記第2の方向は、それぞれ、前記第1、第2溝形成面の円周方向、前記円周方向に直交する軸線方向、または、前記円周方向および前記軸線方向に対して傾斜する斜め方向である
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項7】
請求項5において、
前記プラグ外周面は楕円形状をしており、
前記第1、第2溝形成面において、前記楕円形状の長軸が位置する部位に形成される前記微細溝の深さは、前記楕円形状の短軸が位置する部位に形成される前記微細溝の深さより浅い
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項8】
剛性の内歯歯車と、
可撓性の外歯歯車と、
請求項5に記載の波動発生器と
を有している波動歯車装置。
【請求項9】
剛性のウエーブプラグ、および、ウエーブベアリングを備え、
前記ウエーブプラグの非円形輪郭のプラグ外周面に、前記ウエーブベアリングの内輪内周面が圧入および接着剤により固定されており、
前記プラグ外周面および前記内輪内周面のうちの一方、または、双方は、前記接着剤を保持可能な接着剤保持溝が形成された溝形成面であり、
前記接着剤保持溝はマイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅および深さの微細溝であり、
前記溝形成面には、複数の前記微細溝によって配列パターンが形成されており、
前記配列パターンは、
前記微細溝が所定のピッチで第1の方向に、直線状あるいは曲線状に延びている第1方向配列パターン、
前記微細溝が所定のピッチで、前記第1の方向とは異なる第2の方向に、直線状あるいは曲線状に延びている第2方向配列パターン、または、
前記第1方向配列パターンと第2方向配列パターンとが交差する状態が形成されている交差配列パターンであり、
前記プラグ外周面は楕円形状をしており、
前記溝形成面において、前記楕円形状の長軸が位置する部位に形成される前記微細溝の深さは、前記楕円形状の短軸が位置する部位に形成される前記微細溝の深さより浅い
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項10】
請求項9において、
前記溝形成面には、前記第1方向配列パターンが形成されており、
前記第1の方向は、前記溝形成面の円周方向、前記円周方向に直交する軸線方向、または、前記円周方向および前記軸線方向に対して傾斜する斜め方向である
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項11】
請求項9において、
前記溝形成面には、前記交差配列パターンが形成されており、
前記第1の方向および前記第2の方向は、それぞれ、前記溝形成面の円周方向、前記円周方向に直交する軸線方向、または、前記円周方向および前記軸線方向に対して傾斜する斜め方向である
波動歯車装置の波動発生器。
【請求項12】
剛性の内歯歯車と、
可撓性の外歯歯車と、
請求項9に記載の波動発生器と
を有している波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーブプラグおよびウエーブベアリングを備えた波動発生器を有する波動歯車装置に関する。更に詳しくは、圧入および接着剤によって、ウエーブベアリングに固定されているウエーブプラグの引き抜き力を高めた波動発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置の波動発生器として、剛性のウエーブプラグと、このウエーブプラグの楕円状外周面に装着されたウエーブベアリングとを備えたものが知られている。ウエーブプラグとウエーブベアリングとの間は、圧入および接着剤によって固定される。特許文献1に記載の撓みかみ合い式歯車装置(波動歯車装置)では、内輪部材(ウエーブベアリングの内輪)が、起振体(ウエーブプラグ)に、接着または圧入により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−96456号公報、段落0017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエーブベアリングとウエーブプラグの結合力を高めるために、圧入および接着により、双方の部材を固定する。この場合、ウエーブベアリングにウエーブプラグを圧入する場合の作業性向上のために、真円状態のウエーブベアリングの内輪内周面にのみ接着剤を塗布した状態で、ウエーブプラグの楕円状外周面を内輪内周面に圧入する。ウエーブプラグの圧入によって、ウエーブベアリングが強制的に楕円状に撓められる。圧入時には、ウエーブプラグの楕円状輪郭のプラグ外周面が、ウエーブベアリングの内輪内周面を押し広げながら軸線方向に摺動する。内輪内周面に塗布されている接着剤が、プラグ外周面によって軸線方向に掻き出される。圧入時に、内輪内周面とプラグ外周面との間から掻き出される接着剤の量が多い。このため、ウエーブベアリングとウエーブプラグの間の接着効果が低下し、また、接着効果にバラツキが生じる。
【0005】
本発明の目的は、この点に鑑みて、ウエーブベアリングにウエーブプラグを圧入する際に、これらの間から掻き出される接着剤の量を低減して、これらの間の接着効果を高め、また、接着効果のバラツキを防止できる波動歯車装置の波動発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車装置の波動発生器は、剛性のウエーブプラグとウエーブベアリングとを備え、ウエーブプラグの非円形輪郭のプラグ外周面に、ウエーブベアリングの内輪内周面が圧入および接着剤により固定されており、プラグ外周面および内輪内周面のうちの一方、または、双方は、接着剤を保持可能な接着剤保持溝が形成された溝形成面であることを特徴としている。
【0007】
本発明では、プラグ外周面および内輪内周面のうちの少なくとも一方に、接着剤保持溝が形成されている。プラグ外周面と内輪内周面の間の接着剤は、ウエーブプラグの圧入時に、接着剤保持溝に保持される。接着剤保持溝を適切に形成しておくことで、圧入後に、必要量の接着剤をプラグ外周面と内輪内周面との間に保持できる。ウエーブプラグとウエーブベアリングの間の結合力を高め、そのバラツキも抑制できる。よって、ウエーブベアリングからのウエーブプラグの引き抜き力を向上させつつ、引き抜き力のバラツキも低減できる。
【0008】
本発明において、接着剤保持溝として、マイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅および深さの微細溝を用いることができる。また、溝形成面には、微細溝が所定のピッチで同一の方向(第1の方向)に、直線状あるいは曲線状に延びる第1方向配列パターンが形成される。あるいは、微細溝が所定のピッチで第1の方向に直線状あるいは曲線状に延びる第1方向配列パターンと、所定のピッチで第2の方向に直線状あるいは曲線状に延びる第2方向配列パターンとが交差している交差配列パターンが形成される。
【0009】
溝形成面に形成される微細溝の配列パターンは濡れ性に富み、圧入時に掻き出される接着剤の量を低減できる。この結果、圧入後において、ウエーブベアリングとウエーブプラグの間に残る接着剤の量を多くでき、ウエーブプラグの引き抜き力の向上および安定化が図れる。マイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅、深さの微細溝の配列パターンは、例えば、フェムト秒レーザを用いたレーザ加工によりプラグ外周面、内輪内周面に形成できる。
【0010】
波動発生器として、楕円状輪郭のプラグ外周面が形成されているウエーブプラグを備えている場合には、可撓性の外歯歯車が楕円形状に撓められる。外歯歯車は、楕円形状の長軸が位置する部分において剛性の内歯歯車にかみ合う。両歯車のかみ合い部分において大きな応力が生じる。外歯歯車を楕円状の撓み状態に保持している波動発生器においては、楕円形状の長軸が位置する部分に大きな面圧が作用し、短軸が位置する部分では実質的に面圧が作用しない。
【0011】
したがって、溝形成面において、大きな面圧が作用する楕円形状の長軸が位置する部分に形成される微細溝の深さを浅くし、殆ど面圧が作用しない楕円形状の短軸が位置する部分に形成される微細溝は、より多くの接着剤を保持できるように深くしておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略縦断面図および概略端面図である。
【
図2】波動発生器のウエーブプラグおよびウエーブベアリングを示す説明図および概略端面図である。
【
図3】溝形成面における微細溝の配列パターンを示す説明図である。
【
図4】第1、第2溝形成面における微細溝の配列パターンを示す説明図である。
【
図5】溝形成面における楕円形状の長軸が位置する部分および短軸が位置する部分に形成される微細溝の深さを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した波動歯車装置の波動発生器の実施の形態を説明する。以下の説明は、本発明をシルクハット型波動歯車装置の波動発生器に適用した例である。本発明は、カップ型波動歯車装置、フラット型波動歯車装置の波動発生器に対しても同様に適用可能である。
【0014】
図1(a)はシルクハット型波動歯車装置(以下、単に、「波動歯車装置」と呼ぶ。)の全体構成を示す概略縦断面図であり、
図1(b)はその概略端面図である。波動歯車装置1は、環状の剛性の内歯歯車2と、この内側に同軸に配置されたシルクハット形状の可撓性の外歯歯車3と、この内側にはめ込まれた楕円状輪郭の波動発生器4から構成されている。
【0015】
外歯歯車3は、胴部31、ダイヤフラム32およびボス33を備え、全体としてシルクハット形状をしている。胴部31は円筒形状をしており、半径方向に撓み可能である。胴部31の一方の端は開口端34となっており、開口端34の側における胴部外周面部分に、外歯35が形成されている。胴部31の他方の端に連続して、ダイヤフラム32が半径方向の外方に広がっている。ダイヤフラム32の外周縁に連続して、矩形断面の円環状のボス33が形成されている。ボス33は、外歯歯車3を他の部材(図示せず)に取り付けるための剛体部分である。内歯歯車2は、外歯歯車3の外歯35を取り囲む状態に配置されている。内歯歯車2の内周面に形成されている内歯21に、外歯35はかみ合い可能である。
【0016】
波動発生器4は、中空ハブ41と、その外周に嵌めた楕円形の剛性のウエーブプラグ42と、ウエーブプラグ42の楕円形のプラグ外周面43に嵌めたウエーブベアリング44から構成されている。波動発生器4によって、外歯歯車3の胴部31における外歯35が形成されている部分は、初期形状の真円から楕円形に撓められている。外歯35は、楕円形の長軸Lmaxの両端の位置で、内歯歯車2の内歯21にかみ合っている。
【0017】
波動発生器4が中心軸線1aを中心として回転すると、両歯車2、3のかみ合い位置が円周方向に回転する。この回転によって、外歯35と内歯21の歯数差に応じて、外歯歯車3と内歯歯車2の間には相対回転が発生する。例えば、内歯歯車2を固定し、波動発生器4を高速回転入力要素とすれば、外歯歯車3は減速回転出力要素となり、両歯車2、3の歯数差に応じて減速された回転出力が取り出される。
【0018】
図2(a)は波動発生器4のウエーブプラグ42およびウエーブベアリング44を示す説明図であり、
図2(b)はその概略端面図である。ウエーブプラグ42の楕円状輪郭のプラグ外周面43は、ウエーブベアリング44の内輪内周面45に、圧入および接着剤により固定されている。プラグ外周面43および内輪内周面45のうちの一方、または、双方は、接着剤を保持可能な接着剤保持溝が形成された溝形成面となっている。
【0019】
例えば、ウエーブプラグ42のプラグ外周面43が溝形成面であり、ここには、接着剤保持溝として、マイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅および深さの微細溝46が形成されている。微細溝46は。例えば、フェムト秒レーザを用いたレーザ加工により形成できる。本例の微細溝46は、プラグ外周面43に、微細溝46の配列パターン47が、プラグ円周方向およびプラグ幅方向(中心軸線1aの方向)に一定の間隔で形成されている。各配列パターン47においては、プラグ幅方向(中心軸線1aの方向)に直線状に延びる微細溝46が、プラグ円周方向に一定のピッチで配列されている。
【0020】
本例の波動歯車装置1の波動発生器4においては、ウエーブプラグ42の楕円状のプラグ外周面43を、接着剤保持溝として機能する微細溝46が形成された溝形成面としてある。ウエーブプラグ42をウエーブベアリング44に圧入した後の状態において、これらの間に保持される接着剤の量を多くできる。また、圧入時には、接着剤の一部が微細溝46に沿って流れ、外部に掻き出される量が少なくなる。よって、ウエーブプラグ42の引き抜き力のバラツキを低減でき、また、その下限値を上げることができる。
【0021】
(溝形成面の各種形態)
図3は溝形成面に形成される微細溝の配列パターンの各例を示す説明図である。ウエーブプラグ42のプラグ外周面43あるいはウエーブベアリング44の内輪内周面45、または、双方の面43、45を、微細溝46が形成された溝形成面とすることができる。
【0022】
溝形成面には、微細溝46が、所定のピッチで所定の方向に、直線状あるいは曲線状に延びる配列パターンで形成される。例えば、
図3(a)に示すように、溝形成面には、微細溝46が、一定のピッチで、溝形成面の円周方向(プラグ外周面43あるいは内輪内周面45の円周方向)に、直線状に延びる配列パターンを形成できる。また、
図3(b)に示すように、溝形成面において、微細溝46が、一定のピッチで、円周方向に波状に延びる配列パターンを形成できる。
【0023】
図3(c)に示すように、溝形成面において、微細溝46が、一定のピッチで、溝形成面の円周方向に直交する軸線方向(プラグ外周面43あるいは内輪内周面45の幅方向)に直線状に延びる配列パターンを形成できる。
図3(d)に示すように、溝形成面において、微細溝46が、一定のピッチで、溝形成面の円周方向に直交する軸線方向に波状に延びる配列パターンを形成できる。また、
図3(e)に示すように、溝形成面において、微細溝46が、一定のピッチで、溝形成面の円周方向および軸線方向に対して傾斜する斜め方向に直線状に延びる傾斜配列パターンを形成することができる。
【0024】
また、
図3(f)、(g)に示すように、同一の溝形成面において、微細溝46が、一定のピッチで第1の方向に延びる第1方向配列パターンと、一定のピッチで第1方向とは異なる第2の方向に延びる第2方向配列パターン溝とが交差している交差配列パターンを形成できる。
図3(f)に示す交差配列パターンでは、第1方向配列パターンは、円周方向に直線状に延びる微細溝46からなり、第2方向配列パターンは、軸線方向に直線状に延びる微細溝46からなる。
図3(g)に示す交差配列パターンでは、第1方向配列パターンは、円周方向および軸線方向に対して45度傾斜した方向に延びる直線状の微細溝46から形成される傾斜配列パターンであり、第2方向配列パターンは、円周方向および軸線方向に対して逆方向に45度傾斜した方向に延びる直線状の微細溝46から形成される傾斜配列パターンである。さらに、溝形成面に、
図3(a)に示す配列パターンと、
図3(b)に示す配列パターンとが重なった状態の交差配列パターンを形成することも可能である。
【0025】
図4は、ウエーブプラグ42のプラグ外周面43を第1溝形成面とし、内輪内周面45を第2溝形成面とした場合の例を示す説明図である。この場合においても、第1、第2溝形成面に形成される接着剤保持溝は、マイクロメートルオーダーあるいはそれ以下の幅および深さの微細溝とすることができる。第1溝形成面および第2溝形成面には、それぞれ、微細溝を、
図3に示した場合と同様のパターンで形成できる。
【0026】
例えば、
図4(a)に示す例では、第1溝形成面43Aには、微細溝48が一定のピッチで円周方向に直線状に延びている配列パターンが形成される。第2溝形成面45Aには、微細溝49が一定のピッチで、軸線方向に直線状に延びている配列パターンが形成される。第1溝形成面43Aが第2溝形成面45Aに圧入されて重なった状態では、微細溝48、49によって交差配列パターンが形成される。
【0027】
図4(b)に示す例では、第1溝形成面43Aには、微細溝48が一定のピッチで、円周方向および軸線方向に対して45度傾斜する斜め方向に直線状に延びている傾斜配列パターンが形成される。第2溝形成面45Aには、微細溝49が一定のピッチで、円周方向および軸線方向に対して逆向きに45度傾斜する斜め方向に直線状に延びている傾斜配列パターンが形成される。第1、第2溝形成面43A、45Aが重なった状態では、微細溝48、49によって交差配列パターンが形成される。
【0028】
同様に、
図4(c)に示す例では、第1溝形成面43Aには、微細溝48が一定のピッチで円周方向に直線状に延びている配列パターンが形成される。第2溝形成面45Aには、微細溝49が一定のピッチで円周方向に波状に延びている配列パターンが形成される。第1溝形成面43Aと第2溝形成面45Aが重なった状態では、微細溝48、49によって微細溝48、49の交差配列パターンが形成される。
【0029】
(楕円形状の長軸位置と短軸位置の溝深さ)
先に述べたように、波動歯車装置1においては、波動発生器4として、楕円状輪郭のプラグ外周面43が形成されたウエーブプラグ42を備え、可撓性の外歯歯車3を楕円形状に撓めている。外歯歯車3は、楕円形状の長軸Lmaxが位置する部分において、剛性の内歯歯車2にかみ合っている。楕円形状の長軸Lmaxが位置する部分に形成される両歯車2、3のかみ合い部分において、双方の歯車2、3の間で力が伝達される。したがって、外歯歯車3を楕円状の撓み状態に保持している波動発生器4においては、楕円形状の長軸Lmaxが位置する部分に大きな面圧が作用し、短軸Lminが位置する部分では、殆ど面圧が作用しない。
【0030】
よって、溝形成面において、大きな面圧が作用する楕円形状の長軸Lmaxが位置する部分に形成される微細溝の深さを浅くし、殆ど面圧が作用しない楕円形状の短軸Lminが位置する部分に形成される微細溝は、より多くの接着剤を保持できるように深くすることができる。例えば、プラグ外周面43を溝形成面とし、円周方向に直線状に延びる微細溝46を形成した場合(
図3(a)に示す場合)においては、例えば、
図5の説明図に示すように、微細溝46の溝深さを定める。この図においては微細溝46の深さを誇張して示してある。この図に示すように、ウエーブプラグ42のプラグ外周面43において、その円周方向に沿って、微細溝46の深さは、楕円形状の短軸Lminが位置する部分において最大深さh1とされ、長軸Lmaxが位置する部分において最小深さh2とされる。また、円周方向に沿って、最大深さh1から最小深さh2に向けて、溝深さが漸減している。
【0031】
(その他の実施の形態)
上記の例では、接着剤保持溝として、レーザ加工によって微細溝を形成している。機械加工、エッチング、サンドブラストなどの加工法によって接着剤保持溝を形成できる。また、場合によっては、ミリメートルオーダーの接着剤保持溝を用いることも可能である。さらに、接着剤保持溝の断面形状については特に言及しなかったが、矩形断面の溝、半円形断面の溝、V溝など、各種の断面形状の溝を用いることができる。