特許第6985093号(P6985093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985093
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】灯具制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/175 20200101AFI20211213BHJP
【FI】
   H05B47/175
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-197523(P2017-197523)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-71247(P2019-71247A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2020年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和夫
【審査官】 大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−126877(JP,A)
【文献】 特開平06−267660(JP,A)
【文献】 特開2014−086154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の灯具を制御するパルス信号を送信するマスタ制御部と、
前記複数の灯具の各々に対応して設けられ、前記マスタ制御部から受信した前記パルス信号に応じて、対応する前記灯具を制御する複数のスレーブ制御部と、
を備えた灯具制御装置において、
前記マスタ制御部は、前記複数の灯具に対応した複数の周波数のパルス信号を時系列に並べて送信し、
前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数及びデューティが複数回連続で同じであることを算出したことを基準に前記受信したパルス信号の周波数が自身の制御する前記灯具に対応するものか否かを判定するステップに進む演算部を備え、
前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数が、自身が制御する前記灯具に対応するものであるとき、当該パルス信号に基づいて前記灯具を制御することを特徴とする灯具制御装置。
【請求項2】
前記マスタ制御部は、制御情報に応じたデューティのパルス信号を送信し、
前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数が自身に対応するものであるとき、当該パルス信号のデューティに対応した制御情報に基づいて前記灯具を制御することを特徴とする請求項1に記載の灯具制御装置。
【請求項3】
前記制御情報が、前記灯具の調光率情報であることを特徴とする請求項2に記載の灯具制御装置。
【請求項4】
前記制御情報が、前記灯具の調色情報であることを特徴とする請求項2に記載の灯具制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した灯具制御装置としては、例えば、PWM制御装置から出力されるPWM信号を照明装置に送信し、照明装置が受信したPWM信号のデューティに基づいて灯具の調光を制御する調光システムが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
上述した調光システムを用いて複数の照明装置を制御する場合について考えてみる。複数の照明装置に対して1つのPWM制御装置を設けた場合、複数の照明装置の灯具を同じ明るさに調光することはできるが、複数の照明装置の灯具の明るさを個別に調光することはできなかった。一方、複数の照明装置にそれぞれ対応する複数のPWM制御装置を設けた場合、複数の照明装置の灯具を個別調光することはできるが、PWM制御部の数が増える分、コスト的に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−122202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、安価に複数の灯具を個別に制御することができる灯具制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するためになされた本発明の態様の灯具制御装置は、複数の灯具を制御するパルス信号を送信するマスタ制御部と、前記複数の灯具の各々に対応して設けられ、前記マスタ制御部から受信した前記パルス信号に応じて、対応する前記灯具を制御する複数のスレーブ制御部と、を備えた灯具制御装置において、前記マスタ制御部は、前記複数の灯具に対応した複数の周波数のパルス信号を時系列に並べて送信し、前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数及びデューティが複数回連続で同じであることを算出したことを基準に前記受信したパルス信号の周波数が自身の制御する前記灯具に対応するものか否かを判定するステップに進む演算部を備え、前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数が、自身が制御する前記灯具に対応するものであるとき、当該パルス信号に基づいて前記灯具を制御することを特徴とする。
【0007】
また、前記マスタ制御部は、制御情報に応じたデューティのパルス信号を送信し、前記複数のスレーブ制御部は、前記受信したパルス信号の周波数が自身のアドレスに対応するものであるとき、当該パルス信号のデューティに対応した制御情報に基づいて前記灯具を制御してもよい。
【0008】
また、前記制御情報、前記灯具の調光率情報であってもよいし、前記灯具の調色情報であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
上述した態様によれば、パルス信号の周波数により灯具を特定することにより、複数の灯具に対して1つのマスタ制御部を設けた場合でも、複数の灯具を個別に制御することができる。このため、安価に複数の灯具を個別に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の灯具制御装置の一実施形態を示す回路図である。
図2図2に示す制御部の詳細を示すブロック図である。
図3】PWM制御装置2から送信されるPWM信号のタイムチャートである。
図4図3に示す演算部の処理手順を示すフローチャートである。
図5】周波数(アドレス)とデューティ比(調光率)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図1に基づいて説明する。図1に示す灯具制御装置1は、複数のLED401〜410(灯具)の点灯を制御する。本実施形態では、灯具制御装置1は、例えば10個のLED401〜410をそれぞれ別々の明るさに点灯する例について説明する。
【0012】
同図に示すように、灯具制御装置1は、1つのマスタ制御部としてのPWM制御部2と、スレーブ制御部としての複数のLED制御部301〜310と、を備えている。PWM制御部2は、2本の伝送路にPWM信号(パルス信号)を出力する。PWM制御部2から出力されるPWM信号は、周波数がLED401〜410に対応し、デューティ比がLED401〜410の調光率情報(制御情報)に対応する。
【0013】
PWM制御部2は、CPU、ROM、RAMなどの周知のマイクロコンピュータや不揮発性のメモリなどから構成されている。
【0014】
複数のLED401〜410には、下記の表1に示すように、自身に対応する周波数が予め定められている。また、本実施形態では、LED401〜410には、下記の表1に示すように、自身に対応するデューティ比が予め定められている。
【表1】
【0015】
PWM制御部2の不揮発性メモリには、上記表1に示すようなLED401〜410に対する周波数、デューティ比が予め記憶されている。PWM制御部2は、上記表1に従ったLED401〜410に対応した複数の周波数のPWM信号を時系列に並べて出力する。このとき出力されるPWM信号のデューティ比は、表1に示すように、周波数に対応する。
【0016】
具体的には、PWM制御部2は、周波数100Hz、デューティ比1%のPWM信号を所定時間継続して出力し、所定時間経過後、周波数200Hz、デューティ比10%のPWM信号を所定時間継続して出力し、これを周波数1kHzまで順次行う。
【0017】
PWM制御部2に接続される2本の伝送路はそれぞれ、複数に分岐されて、複数のLED制御部301〜310に接続される。複数のLED制御部301〜310はそれぞれ、フォトカプラ31と、制御部32と、定電流部33と、を備えている。フォトカプラ31は、PWM信号によってオンオフされる。複数のLED制御部301〜310のフォトカプラ31は、互いに並列接続されている。
【0018】
制御部32は、LED制御部301〜310全体の制御を司る。制御部32については後述する。定電流部33は、交流電源5から制御部32の制御に応じた電流値の定電流を生成して、LED401〜410に供給する。本実施形態では、定電流部33は、例えば、スイッチングレギュレータから構成され、スイッチ(図示せず)のオンオフデューティに応じた電流値の定電流を生成する。LED401〜410は、定電流の供給に応じて、その定電流値に応じた調光率で発光する。
【0019】
上記制御部32は、図2に示すように、I/Oポート32Aと、不揮発性メモリ32Bと、演算部32Cと、タイマ32Dと、スイッチング制御部32Eと、を備えている。I/Oポート32Aは、フォトカプラ31を介してPWM信号を入力するためのポートである。
【0020】
不揮発性メモリ32Bには、表1に示すように、LED制御部301〜310に接続されているLED401〜410に対応する周波数がそれぞれ記憶されている。例えば、LED制御部301の不揮発性メモリ32Bには、自身が制御するLED401に対応する周波数100Hzがアドレスとして記憶されている。同様に、LED制御部302〜310の不揮発性メモリ32Dにはそれぞれ、LED402〜410に対応する周波数200Hz〜1kHzが記憶されている。
【0021】
演算部32Bは、CPU、ROM、RAMなどの周知のマイクロコンピュータから構成されている。演算部32Bは、図3に示すように、PWM信号の立上りと立下りを検出し、PWM信号の周期TとON時間Tonとを算出し、PWM信号の周波数とデューティ比Dを求める。このとき、演算部32Bは、周波数については100Hz単位で認識し、100Hz単位以外の周波数は認識しない。また、演算部32Bは、デューティDについては1%単位で認識する。
【0022】
上述した演算部32Bは、フォトカプラ31を介してPWM制御装置からのPWM信号を受信し、PWM信号の周波数が不揮発性メモリ32Bに記憶されている周波数であった場合、受信したPWM信号のデューティ比Dに応じて定電流部33を制御する。
【0023】
スイッチング制御部32Eは、定電流部33のスイッチをオンオフするオンオフ信号を供給する。オンオフ信号は、PWM信号のデューティ比に応じた調光率となるような、デューティ比であり、PWM信号のデューティ比と同じでもよい。
【0024】
タイマ32Dは、上述したPWM信号の周期TとON時間Tonをカウントするためのタイマである。
【0025】
次に、上述した構成の灯具制御装置の動作について図4のフローチャートを参照して以下説明する。まず、電源投入に応じて演算部32Cは、図4に示す処理を開始する。まず、演算部32Cは、自身が制御するLED401〜410のアドレス(周波数)を不揮発性メモリ32Bから取得する(ステップS1)。
【0026】
次に、演算部32Cは、フォトカプラ31を介して受信したPWM信号の立上りを検出すると(ステップS2でY)、タイマ32DをスタートさせてON時間Tonの計測を開始する(ステップS3)。その後、演算部32Cは、PWM信号の立下りを検出すると(ステップS4でY)、タイマ32DをストップさせてON時間Tonの計測を終了する(ステップS5)。このときのタイマ32Dのカウント値をON時間Tonとする。次に、演算部32Cは、タイマ32DをスタートさせてOFF時間Toffの計測を開始する(ステップS6)。
【0027】
その後、演算部32Cは、PWM信号の立上りを検出すると(ステップS7でY)、タイマ32DをストップさせてOFF時間Toffの計測を終了する(ステップS8)。このときのタイマ32Dのカウント値をOFF時間Toffとする。次に、演算部32Cは、下記の式(1)から周期Tを算出する(ステップS9)。
T=Ton+Toff …(1)
【0028】
次に、演算部32Cは、下記の式(2)からONデューティ比Dを算出する(ステップS10)
D=ton/T …(2)
【0029】
次に、演算部32Cは、下記の式(3)からPWM信号の周波数fを算出する(ステップS11)。
f=1/T …(3)
【0030】
次に、演算部32Cは、ステップS2〜S11で算出したデューティDと周波数fとが3回連続同じでなければ(ステップS12でN)、再びステップS2に戻る。一方、3回連続同じであれば(ステップS12でY)、演算部32Cは、受信したPWM信号の周波数fと不揮発性メモリ32Bから取得したアドレス(周波数)とが一致するか否かを判定する(ステップS13)。
【0031】
一致しなければ(ステップS13でN)、演算部32Cは、再びステップS2に戻る。一致すれば(ステップS13でY)、演算部32Cは、自身宛のPWM信号であると判定し、ステップS10で算出したデューティDに対応した調光率となるようにスイッチング制御部32Eを制御して(ステップS14)、再びステップS2に戻る。
【0032】
上述した実施形態によれば、LED制御部301〜310は、受信したPWM信号の周波数が不揮発性メモリ32Bから取得したアドレスと一致していれば、そのPWM信号のデューティに応じた調光率でLED401〜410を制御する。上述した通り、PWM制御装置2からは、表1に示すように、周波数に対応して、1対1で定められたデューティ比のPWM信号が出力される。このため、図5に示すように、本実施形態では、LED401〜410毎に異なる調光率に制御することができる。
【0033】
上述した実施形態によれば、PWM信号の周波数によりLED401〜410を特定することにより、複数のLED401〜410に対して1つのPWM制御装置2を設けた場合でも、複数のLED401〜410の調光率を個別に制御することができる。このため、安価に複数のLED401〜410を個別に調光率を制御することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態によれば、10個のLED401〜410をそれぞれ別々の調光率になるように制御していたが、これに限ったものではない。例えば、複数のLED401〜410を複数のグループ(例えば主照明用のLEDグループ、スポットライト用のLEDグループ)に分類し、それぞれのグループごとに異なる調光率となるように制御することも考えられる。この場合、グループ毎にアドレス(周波数)を定めればよく、LED401〜410毎にアドレス(周波数)を定める必要はない。
【0035】
また、LED制御部301〜310は、LED401〜410に対応するアドレスとグループに対応するアドレスとの双方を不揮発性メモリ32Bに記憶するようにしてもよい。そして、LED制御部301〜310は、受信したPWM信号の周波数が不揮発性メモリ32Bに記憶された複数のアドレス(周波数)の1つでも一致していれば、受信したPWM信号のデューティに応じてLED401〜410を制御する。
【0036】
また、LED制御部301〜310は、LED401〜410に対応するアドレスと全LED401〜410(ブロードキャスト)に対応するアドレスとの双方を不揮発性メモリ32Bに記憶するようにしてもよい。同様に、LED制御部301〜310は、受信したPWM信号の周波数が不揮発性メモリ32Bに記憶された複数のアドレス(周波数)の1つでも一致していれば、受信したPWM信号のデューティに応じてLED401〜410を制御する。
【0037】
また、上述した実施形態によれば、LED401〜410毎、即ち周波数毎にデューティ比が1対1で決められていて、固定されていたが、これに限ったものではない。PWM制御装置2は、任意の条件によって、LED401〜410の調光率を任意に調整するようにしてもよい。例えば、鉄道用車両に上記灯具制御装置1を適用する場合、PWM制御部2は、駅停車時に開くドア側に設置されたLED401〜410のみを明るく調光するようにしてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態によれば、PWM制御部2は、周波数でLED401〜410を特定し、デューティ比で調光率を特定していたが、これに限ったものではない。LED401〜410として、例えば、フルカラーLEDを用い、PWM制御部2は、調色情報に応じたデューティ比のPWM信号を出力するようにしてもよい。例えば、デューティが10%のとき赤、20%のとき黄色など予め色とデューティの関係を定めておく。LED制御部301〜310は、不揮発性メモリ32Bに記憶されたアドレス(周波数)のPWM信号を受信すると、そのPWM信号のデューティに対応した色となるようにLED401〜410を制御する。
【0039】
また、上述した実施形態によれば、周波数でLED401〜410を特定し、デューティ比で調光率や調色を特定していたが、これに限ったものではない。上述した実施形態のようにLED401〜410毎に調光率や調色が固定され、調整する必要がなければ、PWM制御部2は、LED401〜410に対応した周波数のPWM信号を出力するだけで、デューティを固定にしてもよい。LED制御部301〜310は、不揮発性メモリ32Bに記憶されたアドレス(周波数)のPWM信号を受信すると、予め定めた制御をLED401〜410に対して実行する。
【0040】
また、上述した実施形態によれば、PWM制御装置2と複数のLED制御部301〜310との通信は有線により行っていたが、これに限ったものではない。無線で行ってもよい。
【0041】
また、上述した実施形態によれば、PWM制御装置2と複数のLED制御部301〜310との通信は通信線を介して行っていたが、これに限ったものではない。電力線を介して行ってもよい。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 灯具制御装置
2 PWM制御部(マスタ制御部)
301〜310 LED制御部(スレーブ制御部)
401〜410 LED(灯具)
図1
図2
図3
図4
図5