(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダートアミン系酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤及びリン含有酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1に記載のポリイソシアネート硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0014】
<ポリイソシアネート硬化物>
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなるイソシアヌレート基を単位構造として有する。イソシアヌレート基は、下記式(1)で表される基である。
【0016】
なお、本明細書において、「ポリイソシアネート硬化物」とは、後述に示すポリイソシアネート組成物を硬化して得られる反応物を意味する。
【0017】
また、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、アロファネート基(下記式(2)で表される基)を実質的に含まない。ここでいう、「アロファネート基を実質的に含まない」とは、ポリイソシアネート硬化物中のアロファネート基及びイソシアヌレート基において、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が1/99未満であることを示す。アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、0/100以上1/99未満であることが好ましく、0/100であることがより好ましい。
【0019】
アロファネート基及びイソシアヌレート基のモル数は、ポリイソシアネート硬化物を凍結粉砕し、
13C−NMRを用いて測定することができる。測定方法の詳細としては、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
また、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、ウレタン基(下記式(3)で表される基)及びウレア基(下記式(4)で表される基)を実質的に含まない。ここでいう、「ウレタン基及びウレア基を実質的に含まない」とは、ポリイソシアネート硬化物中のイソシアヌレート基、ウレタン基及びウレア基において、(ウレタン基+ウレア基)/イソシアヌレート基のモル比が0/100以上5/95以下であることを示す。(ウレタン基+ウレア基)/イソシアヌレート基のモル比は、0/100以上3/97以下であることが好ましく、0/100以上1/99以下であることがより好ましく、0/100であることがさらに好ましい。
【0023】
本実施形態において、ウレタン基、ウレア基及びイソシアヌレート基のモル数は、FT−IRのATR法により測定することができる。測定方法の詳細としては、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物としては、上記に加えて、ゲル分率を測定し、重量残分率が45%以上であることが好ましい。
【0025】
ゲル分率は、例えば、以下に示す方法を用いて測定することができる。まず、ポリイソシアネート硬化物の試料約0.1gをアセトンに20℃で24時間浸漬する。次いで、試料を取り出し、105℃ 1時間乾燥した物の重量を測定する。次いで、浸漬前後の重量残分率からゲル分率を求める。なお、溶剤はアセトン以外にも、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、ベンゼン、水等が使用できる。目的や用途により、温度や時間も変えて測定することが可能である。また、ゲル分率の測定方法としては、JIS C3005「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法」内の架橋度の求め方を参考にすることもできる。
【0026】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、耐熱性、低黄色度及び表面性が良好であり、さらに、耐候性にも優れている。そのため、長期間屋外に曝されたり、高温が定期的にかかったりする場所の塗膜用途に適している。
【0027】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、熱重量減少が1%を示すTd1(1%重量減少温度)が290℃以上であることが好ましく、295℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。Td1の上限は、特に限定されないが、例えば、600℃以下である。なお、本実施形態において、Td1は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物中の触媒由来の陽イオンの濃度の上限値が、100ppmであることが好ましく、80ppmであることがより好ましく、60ppmであることがさらに好ましく、40ppmであることが特に好ましい。本実施形態のポリイソシアネート硬化物中の触媒由来の陽イオンの濃度が上記上限値以下であれば、黄色度がより良好になる。
【0029】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物中の触媒由来の陽イオンの濃度の下限値は、特に限定されないが、例えば0.1ppmである。
【0030】
すなわち、本実施形態のポリイソシアネート硬化物中の触媒由来の陽イオンの濃度は、0.1ppm以上100ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上80ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以上60ppm以下であることがさらに好ましく、0.1ppm以上40ppm以下であることが特に好ましい。
【0031】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物の黄色度(Yellow Index;YI)(以下、「YI」と略記する場合がある)は、例えば、以下に示す測定方法により測定できる。まず、厚さ1mmのポリイソシアネート硬化物の試料について、380nm以上780nm以下の透過率を分光光度計により測定する。次いで、該分光光度計の測定結果から、JIS Z8701より、X、Y及びZを求める。求めたX、Y及びZから、JIS K7373及びJIS Z8720より、YIを算出する。
【0032】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、厚さが1mmの時、YIの上限値が10であることが好ましく、9であることがより好ましく、8であることがさらに好ましい。本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、厚さが1mmの時、YIの下限値は、特に限定されないが、例えば0.1である。
【0033】
すなわち、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、厚さが1mmの時、YIが0.1以上10以下であることが好ましく、0.1以上9以下であることがより好ましく、0.1以上8以下であることがさらに好ましい。
【0034】
<ポリイソシアネート硬化物の製造方法>
次に、本実施形態のポリイソシアネート硬化物の製造方法について説明する。なお、以下に説明する方法は一例であり、この方法に限定されるものではない。
【0035】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、(a)脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートをイソシアヌレート化したポリイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物と、(b)イソシアヌレート化触媒とを、イソシアヌレート化反応させることにより得ることができる。得られたポリイソシアネート硬化物は、優れた耐熱性、低黄色度及び表面性を有する。
【0036】
[(a)ポリイソシアネート組成物]
(a)ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートから得られるポリイソシアネートを含む。該ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基を含む。イソシアヌレート基とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなり、下記式(1)で表される基である。
【0038】
本明細書において、「脂肪族ジイソシアネート」とは、分子中に飽和の鎖状脂肪族炭化水素基を有するジイソシアネートである。一方、「脂環式ジイソシアネート」とは、分子中に環状の脂肪族炭化水素基を有するジイソシアネートである。以下、脂肪族ジイソシアネートと脂環式ジイソシアネートとを総称して「ジイソシアネート」という。
【0039】
脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるポリイソシアネート硬化物に柔軟性が付与でき、より好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして、特に限定されないが、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と略記する場合がある)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0040】
脂環式ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。
【0041】
中でも、ジイソシアネートとしては、工業的に入手し易いため、HDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート又は水添ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。また、中でも、ジイソシアネートとしては、耐候性と得られる塗膜の柔軟性とのバランスが非常に優れていることから、HDIがより好ましい。
【0042】
ジイソシアネートモノマーから、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを誘導する方法としては、イソシアヌレート化触媒を用いて行う方法が好ましい。具体的なイソシアヌレート化触媒としては、一般に塩基性を有する触媒が好ましく、例えば以下の1)〜7)に示すもの等が挙げられる。
【0043】
1)4級有機アンモニウムのハイドロオキサイド又は有機弱酸塩。
前記4級有機アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
前記有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。
【0044】
2)ヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド又は有機弱酸塩。
前記ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等が挙げられる。
前記有機弱酸としては、例えば、酢酸、カプリン酸等が挙げられる。
【0045】
3)アルキルカルボン酸の金属塩。
前記アルキルカルボン酸としては、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
前記金属としては、錫、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0046】
4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
6)マンニッヒ塩基類。
7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用。
【0047】
中でも、イソシアヌレート化触媒としては、上記1)、2)、3)、又は、4)であることが好ましい。アミノシリル基含有化合物はその使用条件により、ウレトジオン生成等の副反応が起きる。そのため、イソシアヌレート化触媒としては、上記1)、又は、4)あることがより好ましく、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、又は、ナトリウムアルコキシドであることがさらに好ましく、テトラメチルアンモニウムのカプリン酸塩、ナトリウムメトキシド、又は、ナトリウムエトキシドであることが特に好ましい。
【0048】
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、実質的にアロファネート基を含まない。ここでいう、「アロファネート基を実質的に含まない」とは、ポリイソシアネート中において、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が6/94未満であることを示す。アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は5/95以下であることが好ましく、1/99以下であることがより好ましい。アロファネート基/(アロファネート基+イソシアヌレート基)のモル比が上記上限値未満であることにより、得られるポリイソシアネート硬化物の耐熱性を維持することができる。ポリイソシアネート中のイソシアヌレート基のモル数、及び、アロファネート基のモル数は、
1H−NMRにより求めることができる。
【0049】
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートは、ウレトジオン基を実質的に含まない。ここでいう、「ウレトジオン基を実質的に含まない」とは、ポリイソシアネート中において、ウレトジオン基を含むポリイソシアネートの含有量が5質量%以下であることを示す。ウレトジオン基を含むポリイソシアネートの含有量は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート中のウレトジオン基の含有量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する場合がある)の分子量336程度のピークの面積の割合を示差屈折計で測定することで求めることができる。分子量336程度のピーク付近に測定の障害となるようなピークがある場合は、フーリエ変換赤外分光光度計(以下、「FT−IR」と略記する場合がある)を用いて、1770cm
−1程度のウレトジオン基のピークの高さと、1690cm
−1程度のイソシアヌレート基のカルボニル基のピークの高さとの比を、内部標準を用いて定量する方法によっても求めることができる。
【0051】
以下、GPCによる測定条件について詳細を述べる。
【0052】
(測定条件)
使用機器:HLC−8120(東ソー株式会社製)。
使用カラム:TSK GEL SuperH1000、TSK GEL SuperH2000、TSK GEL SuperH3000(何れも東ソー株式会社製)。
試料濃度:5wt/vol%(例えば、試料50mgを1mLのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)に溶解する)。
キャリア:THF。
検出器:示差屈折計
流出量:0.6mL/分。
カラム温度:30℃。
【0053】
また、GPCの検量線は、以下の1)〜3)を標準物質として作製する。
1)分子量2050以上50000以下のポリスチレン(ジーエルサイエンス株式会社製、PSS−06(Mw50000)、BK13007(Mp=20000、Mw/Mn=1.03)、PSS−08(Mw=9000)、PSS−09(Mw=4000)、及び、5040−35125(Mp=2050、Mw/Mn=1.05))。
2)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネート(商品名:デュラネートTPA−100、旭化成株式会社製)のイソシアヌレート3量体〜7量体(イソシアヌレート3量体分子量=504、イソシアヌレート5量体分子量=840、及び、イソシアヌレート7量体分子量=1176)。
3)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(分子量=168)。
【0054】
(a)ポリイソシアネート組成物を製造する際に、イソシアヌレート化触媒の使用量は、反応液総質量を基準にして、0.001質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化触媒の使用量が上記下限値以上であれば、触媒の効果がより十分に発揮できる。イソシアヌレート化触媒の使用量が上記上限値以下であれば、反応の制御がより容易である。
【0055】
(a)ポリイソシアネート組成物を製造する際に、イソシアヌレート化触媒の添加方法は限定されない。該添加の方法として、所要量のイソシアヌレート化触媒を一括して添加する方法でもよく、何回かに分割して添加する方法でもよい。又は、一定の添加速度で連続的に添加する方法も採用できる。
【0056】
(a)ポリイソシアネート組成物を製造する際に、イソシアヌレート化反応は、無溶媒中で進行させることが好ましいが、必要に応じて有機溶剤を用いてもよい。
【0057】
有機溶剤としては、例えば、以下の1)〜4)に示すもの等が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
1)酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤。
2)メチルエチルケトン等のケトン系溶剤。
3)トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン等の芳香族系溶剤。
4)ジアルキルポリアルキレングリコールエーテル等のイソシアネート基との反応性を有していない有機溶剤。
【0058】
(a)ポリイソシアネート組成物を製造する際に、イソシアヌレート化反応の過程は、反応液のNCO基含有率を測定するか、屈折率を測定することにより追跡できる。
【0059】
イソシアヌレート化反応は、室温に冷却する、又は、反応停止剤を添加することにより停止できる。中でも、触媒を用いる場合、副反応を抑制することができるため、反応停止剤を添加することが好ましい。反応停止剤の添加量は、触媒のモル量に対して、0.25倍以上20倍以下のモル量であることが好ましく、0.5倍以上16倍以下のモル量であることがより好ましく、1.0倍以上12倍以下のモル量であることがさらに好ましい。反応停止剤の添加量が触媒のモル量に対して上記下限値以上のモル量であれば、触媒をより完全に失活させることが可能となる。反応停止剤の添加量が触媒のモル量に対して上記上限値以下のモル量であれば、得られる(a)ポリイソシアネート組成物の保存安定性がより良好となる。
【0060】
反応停止剤としては、触媒を失活させるものであれば何を使ってもよい。反応停止剤として具体的には、例えば、リン酸酸性を示す化合物及びそのモノアルキルエステル又はジアルキルエステル、ハロゲン化酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル、硫酸、硫酸エステル、イオン交換樹脂、キレート剤等が挙げられ、これらに限定されない。リン酸酸性を示す化合物としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。ハロゲン化酢酸としては、例えば、モノクロロ酢酸等が挙げられる。
【0061】
中でも、反応停止剤としては、工業的な観点から、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸又はポリリン酸が好ましい。また、ステンレスを腐食し難いため、リン酸モノアルキルエステル又はリン酸ジアルキルエステルが好ましい。
【0062】
リン酸モノアルキルエステルとしては、例えば、リン酸モノエチルエステルリン酸モノブチルエステル、リン酸モノ(2−エチルヘキシル)エステル、リン酸モノデシルエステル、リン酸モノラウリルエステル、リン酸モノトリデシルエステル、リン酸モノオレイルエステル等が挙げられ、これらに限定されない。
【0063】
リン酸ジアルキルエステルとしては、例えば、リン酸ジエチルエステル、リン酸ジブチルエステル、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)エステル、リン酸ジデシルエステル、リン酸ジラウリルエステル、リン酸ジトリデシルエステル、リン酸ジオレイルエステル等が挙げられ、これらに限定されない。
【0064】
これらのリン酸モノアルキルエステル又はリン酸ジアルキルエステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、吸着剤を用いて反応を停止することや、吸着剤と上記の反応停止剤とを組み合わせて停止する方法も好ましい。
【0066】
吸着剤として具体的には、例えば、シリカゲル、活性炭等が挙げられ、これらに限定されない。
【0067】
吸着剤の添加量は、触媒の質量に対して、1.4倍以上3000倍以下の質量であることが好ましく、7.0倍以上1500倍以下の質量であることがより好ましく、10.0倍以上700倍以下の質量であることがさらに好ましい。吸着剤の添加量が触媒の質量に対して上記下限値以上の質量であれば、(a)ポリイソシアネート組成物中に残存する触媒、熱失活した触媒、反応停止剤と触媒との反応物、未反応の反応停止剤等を吸着する能力がより充分である。一方、吸着剤の添加量が触媒の質量に対して上記上限値以下の質量であれば、吸着剤を(a)ポリイソシアネート組成物中から除去することがより容易である。
【0068】
反応終了後、得られる(a)ポリイソシアネート組成物は、未反応のジイソシアネートや溶媒を含んだままでもよく、又は、得られる(a)ポリイソシアネート組成物から、未反応のジイソシアネートや溶媒を分離してもよい。安全性を考えると、得られる(a)ポリイソシアネート組成物から未反応のジイソシアネートを分離することが好ましい。未反応のジイソシアネートや溶媒を分離する方法としては、例えば、薄膜蒸留法、溶剤抽出法等が挙げられ、これらに限定されない。
【0069】
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基含有量の下限値は、溶媒やジイソシアネートを含んでいない状態で、5.0質量%であることが好ましく、7.0質量%であることがより好ましく、10.0質量%であることがさらに好ましい。
【0070】
また、(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基含有量の上限値は、溶媒やジイソシアネートを含んでいない状態で、25.0質量%であることが好ましく、24.0質量%であることがより好ましく、23.5質量%であることがさらに好ましい。
【0071】
すなわち、(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基含有量は、溶媒やジイソシアネートを含んでいない状態で、5.0質量%以上25.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上24.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以上23.5質量%以下であることがさらに好ましい。
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基含有量が上記範囲であれば、(a)ポリイソシアネート組成物がより低粘度で、各種添加剤への相溶性がより良好であり、且つ、より十分な耐熱性を有するポリイソシアネート硬化物を得ることができる。
【0072】
なお、ここでいう「溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態」とは、溶剤及びジイソシアネートの含有量が1質量%未満の状態を意味する。
【0073】
(a)ポリイソシアネート組成物の25℃での粘度の下限値は、溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、100mPa・sであることが好ましく、150mPa・sであることがより好ましい。該粘度が上記下限値以上であれば、より十分な架橋性を有するポリイソシアネート硬化物を得ることができる。
【0074】
(a)ポリイソシアネート組成物の25℃での粘度の上限値は、溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、20000mPa・sであることが好ましく、10000mPa・sであることがより好ましい。該粘度が上記上限値以下であれば、(a)ポリイソシアネート組成物の各種添加剤への相溶性をより良好なものとすることができる。
【0075】
すなわち、(a)ポリイソシアネート組成物の25℃での粘度は、溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で、100mPa・s以上20000mmPa・s以下であることが好ましく、150mPa・s以上10000mPa・s以上であることがより好ましい。
【0076】
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基の数平均官能基数の下限値は、2.1が好ましく、2.2がより好ましく、2.4がさらに好ましい。(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基の数平均官能基数が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネート硬化物は、架橋密度がより高くなり、より強靭になる。
【0077】
(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基の数平均官能基数の上限値は、特に限定されないが、例えば8.0である。
【0078】
すなわち、(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基の数平均官能基数は、2.1以上8.0以下が好ましく、2.2以上8.0以下がより好ましく、2.4以上8.0以下がさらに好ましい。
【0079】
[(b)イソシアヌレート化触媒]
(b)イソシアヌレート化触媒としては、上記(a)ポリイソシアネート組成物で例示されたイソシアヌレート化触媒を使用することができる。中でも、上記1)、2)、3)、又は、4)であることが好ましい。アミノシリル基含有化合物はその使用条件により、ウレトジオン生成等の副反応が起きる。そのため、イソシアヌレート化触媒としては、上記1)、又は、4)あることがより好ましく、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、又は、ナトリウムアルコキシドであることがさらに好ましく、テトラメチルアンモニウムのカプリン酸塩、ナトリウムメトキシド、又は、ナトリウムエトキシドであることが特に好ましい。
【0080】
(b)イソシアヌレート化触媒の添加量の下限値は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、50ppmであることが好ましく、100ppmであることがより好ましい。(b)イソシアヌレート化触媒の添加量が上記下限値以上であれば、反応性がより十分である。
【0081】
(b)イソシアヌレート化触媒の添加量の上限値は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、10000ppmであることが好ましく、5000ppmであることがより好ましく、3000ppmであることがさらに好ましい。(b)イソシアヌレート化触媒の添加量が上記上限値以上であれば、ポリイソシアネート硬化物の物性への影響をより少なくすることができる。
【0082】
すなわち、(b)イソシアヌレート化触媒の添加量は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、50ppm以上10000ppm以下であることが好ましく、100ppm以上5000ppm以下であることがより好ましく、100ppm以上3000ppm以下であることがさらに好ましい。
【0083】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物を製造する際の反応温度は、特に限定されないが、硬化性と色調との点から60℃以上200℃以下が好ましく、80℃以上180℃以下がより好ましく、100℃以上170℃以下がさらに好ましく、120℃以上160℃以下が特に好ましい。該反応温度が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネート硬化物の硬化性がより優れ、該反応温度が上記上限値以下であれば、ポリイソシアネート硬化物の色調、特に黄色度がより小さくなる。
【0084】
(b)イソシアヌレート化触媒は、必要に応じて希釈剤と共に使用できる。希釈剤としては、(a)ポリイソシアネート組成物に含まれるポリイソシアネートにおけるNCO基と反応して系内に取り込まれるものが使用できる。希釈剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール溶剤等の活性水素基を持った化合物等が挙げられる。なお、これらの希釈剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、希釈剤としては、粘度が低くなり触媒の分散性が良くなるため、アルコール溶剤が好ましい。
【0085】
本実施形態のポリイソシアネート硬化物の製造方法において、上記イソシアヌレート化反応を行う工程は、実質的に溶媒を含有しない条件下で行われることが好ましい。ここでいう、「実質的に溶媒を含有しない条件」とは、(a)ポリイソシアネート組成物の質量に対して、溶媒が5質量%以下である条件をいう。また、(a)ポリイソシアネート組成物の質量に対して、溶媒が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。(a)ポリイソシアネート組成物の質量に対して、溶媒が上記上限値以下であれば、ポリイソシアネート硬化物の重量減少への影響をより少なくすることができる。
【0086】
[(c)ジフェニルアミン]
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、上記(a)ポリイソシアネート組成物、及び、上記(b)イソシアヌレート化触媒に加えて、更に、(c)ジフェニルアミンを含有していてもよい。ジフェニルアミンを含有することで、驚くべきことに表面性が格段に向上する。
【0087】
(c)ジフェニルアミンの添加量の下限値は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、100ppmであることが好ましく、200ppmであることがより好ましく、500ppmであることがさらに好ましい。(c)ジフェニルアミンの添加量が上記下限値以上であれば、表面性がより良好になる。
【0088】
(c)ジフェニルアミンの添加量の上限値は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、20000ppmであることが好ましく、10000ppmであることがより好ましく、5000ppmであることがさらに好ましい。(c)ジフェニルアミンの添加量が上記上限値以下であれば、硬化物においてブリード等の発生をより抑制できる。
【0089】
すなわち、(c)ジフェニルアミンの添加量は、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対して、質量比で、100ppm以上20000ppm以下であることが好ましく、200ppm以上10000ppm以下であることがより好ましく、500ppm以上5000ppm以下であることがさらに好ましい。
【0090】
[(d)酸化防止剤]
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、上記(a)ポリイソシアネート組成物、上記(b)イソシアヌレート化触媒、及び、(c)ジフェニルアミンに加えて、更に、(d)酸化防止剤を含有していてもよい。なお、(d)酸化防止剤は、ポリイソシアネート硬化物を製造する段階で添加してもよく、予め(a)ポリイソシアネート組成物に添加しておいてもよい。また、(d)酸化防止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
(d)酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、耐光安定剤、耐熱安定剤等として用いられている酸化防止作用を有する物質が挙げられる。
【0092】
耐光安定剤として用いられている酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ベンゾフェノン系酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系酸化防止剤、トリアジン系酸化防止剤、シアノアクリレート系酸化防止剤等が挙げられる。
【0093】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アデカスタブLA−52(商品名)、アデカスタブLA−68(商品名)、アデカスタブLA−77Y(商品名)(それぞれ株式会社アデカ製)、チヌビン(Tinuvin)622(商品名)、チヌビン765(商品名)、チヌビン770(商品名)、チヌビン791(商品名)(それぞれBASF社製)等が挙げられる。
【0094】
ベンゾフェノン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、Chimassorb81(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0095】
ベンゾトリアゾール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、チヌビンP(商品名)、チヌビン234(商品名)(それぞれBASF社製)等が挙げられる。
【0096】
トリアジン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、チヌビン1577ED(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0097】
シアノアクリレート系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、Uvinul3035(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0098】
耐熱安定剤として用いられている酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン含有系酸化防止剤、硫黄含有系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、ヒドロキシアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0099】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と略記する場合がある)、イルガノックス1010(商品名)、イルガノックス1135(商品名)、イルガノックス1330(商品名)、イルガノックス3114(商品名)、イルガノックス565(商品名)、イルガノックス1520L(商品名)(それぞれBASF社製)、アデカスタブAO−20(商品名)、アデカスタブAO−30(商品名)、アデカスタブAO−50(商品名)、アデカスタブAO−60(商品名)、アデカスタブAO−80(商品名)(それぞれ株式会社アデカ製)等が挙げられる。
【0100】
リン含有系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、アデカスタブPEP−8(商品名)、アデカスタブHP−10(商品名)、アデカスタブ1178(商品名)、アデカスタブC(商品名)(それぞれ株式会社アデカ製)、イルガフォス168、イルガフォス38(商品名)(BASF社製)、スミライザーGP(商品名)(住友化学株式会社製)等が挙げられる。
【0101】
硫黄含有系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イルガノックスPS800FL(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0102】
ビタミンE系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イルガノックスE201(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0103】
ヒドロキシアミン系酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、イルガスタブFS042(商品名)(BASF社製)等が挙げられる。
【0104】
中でも、(d)酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダートアミン系酸化防止剤、硫黄含有酸化防止剤、及び、リン含有酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、(d)酸化防止剤としては、チヌビン765(商品名)、BHT、イルガノックス565(商品名)、アデカスタブC(商品名)、及び、スミライザーGP(商品名)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、(d)酸化防止剤としては、少量添加で効果があるため、BHT、及び、スミライザーGP(商品名)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0105】
[(e)その他の添加剤]
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、上記(a)ポリイソシアネート組成物、上記(b)イソシアヌレート化触媒、(c)ジフェニルアミン、及び、(d)酸化防止剤に加えて、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、助触媒としての硬化促進剤、付着性向上のためのシランカップリング剤、塗膜表面親水化剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、着色顔料、染料等の各種添加剤が挙げられる。
なお、これらの添加剤は、ポリイソシアネート硬化物を製造する段階で添加してもよく、予め(a)ポリイソシアネート組成物に添加しておいてもよい。また、これらの添加剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0106】
助触媒としての硬化促進剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、ジアルキルスズジカルボキシレート、スズオキサイド化合物、金属カルボン酸塩、3級アミン類等が挙げられる。
【0107】
ジアルキルスズジカルボキシレートとしては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等が挙げられる。
【0108】
スズオキサイド化合物としては、例えば、ジブチルスズオキサイド等が挙げられる。
【0109】
金属カルボン酸塩としては、例えば、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等が挙げられる。
【0110】
3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン等が挙げられる。
【0111】
付着性向上のためのシランカップリング剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、3アミノプロピルトリエトキシシラン、3アミノプロピルトリメトキシシラン、N2(アミノエチル)3アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0112】
塗膜表面親水化剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、シリケート化合物等が挙げられる。
【0113】
レベリング剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0114】
可塑剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、ポリエステル系化合物等が挙げられる。
【0115】
界面活性剤として具体的には、特に限定されないが、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0116】
着色顔料及び染料としては、特に限定されず、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。無機顔料としては、例えば、耐候性の良好なカーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等が挙げられる。
【0117】
≪ポリイソシアネート硬化物の用途≫
本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、耐熱性、低黄色度及び表面性が良好である。そのため、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、塗膜、封止材、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、塗膜及び封止材に特に適している。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1は参考例である。
【0119】
本実施例における各測定方法は以下のとおりとした。
【0120】
<物性1:NCO基含有率(NCO%)>
ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基(NCO基)含有率(NCO%)は、ポリイソシアネート中のイソシアネート基を過剰の2Nアミン(ジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液)と反応させた後、得られた反応液を1N塩酸で逆滴定することによって求めた。
【0121】
<物性2:粘度>
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃で測定した。
【0122】
該測定において、標準ローター(1°34’×R24)を用い、該標準ローターの回転数は、以下のとおりとした。
100rpm (粘度が128mPa・s未満の場合)
50rpm (粘度が128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20rpm (粘度が256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10rpm (粘度が640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5rpm (粘度が1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
【0123】
<物性3:数平均官能基数>
ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基(NCO基)の数平均官能基数は、以下の式(A)で求めた。
【0124】
数平均官能基数
={(NCO基含有率)×(GPCからの数平均分子量)}/42 ・・・(A)
【0125】
<物性4:ポリイソシアネート組成物中におけるアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比>
ポリイソシアネート組成物中におけるアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、以下のとおり求めた。まず、ポリイソシアネートを重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解した(ポリイソシアネートに対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。次いで、得られた溶液について
1H−NMR(ブルカー・バイオスピン株式会社製、BioSpin Avance500)の測定を行った。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。
1H−NMR測定で得られたスペクトルから、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルとの面積を測定した。
【0126】
該測定値に基づき、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比を、以下の式(B)で求めた。
【0127】
アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比
=(8.5ppm付近のシグナル面積)/{(3.85ppm付近のシグナル面積)/6} ・・・(B)
【0128】
<物性5:ポリイソシアネート硬化物における(ウレタン基+ウレア基)/イソシアヌレート基のモル比>
FT−IR(日本分光株式会社製 FT/IR−4200)のATR法により、ポリイソシアネート硬化物のIRスペクトルを測定した。イソシアヌレート基のカルボニル基のピーク(1690cm
−1付近)と、ウレタン基及びウレア基のN−Hピーク(3400cm
−1付近)から、(ウレタン基+ウレア基)/イソシアヌレート基のモル比を求めた。
【0129】
<物性6:ポリイソシアネート硬化物におけるアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比>
ポリイソシアネート硬化物におけるアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、以下のとおり求めた。まず、ポリイソシアネート硬化物を凍結粉砕し、得られた粉砕物について
13C−NMR DD/MAS(Dipolar Decoupling/Magic Angle Spinning)(ブルカー・バイオスピン株式会社製、BioSpin Avance500)の測定を行った。該測定で得られたスペクトルから、イソシアヌレート基のカルボニル基シグナル面積(149ppm付近)とアロファネート基のカルボニル基シグナル面積(152〜160ppm領域)とを求めた。該結果に基づき、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比を、以下の式(C)で求めた。
【0130】
アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比
=(152ppm以上160ppm以下の領域のシグナル面積/2)/{(149ppm付近のシグナル面積)/3} ・・・(C)
【0131】
<評価1:耐熱性>
耐熱性試験は、以下のとおり行った。まず、得られた1mm厚のポリイソシアネート硬化物を1mm程度の切片に切った。次いで、TG−DTA(セイコーインスツル株式会社製 TG/DTA6200)を用いて、該切片について、窒素流量100mL/分、昇温速度10℃/分の条件で試験を行った。なお、Td1は、測定サンプルの1%重量減少温度を示す。Td1が300℃以上であれば○、300℃未満であれば×と評価した。
【0132】
<評価2:黄色度>
黄色度は、以下のとおり評価した。まず、得られた1mm厚のポリイソシアネート硬化物を1mm程度の切片に切った。次いで、分光光度計(日本分光株式会社製 V−650)により、該切片について、380nm以上780nm以下の透過率を測定した。当該分光光度計の測定結果から、JIS Z8701より、X、Y及びZを求めた。求めたX、Y及びZから、JIS K7373及びJIS Z8720より、YI(黄色度;Yellow Index)を算出した。得られたYIについて、10未満であれば○、10以上20未満であれば△、20以上であれば×と評価した。
【0133】
<評価3:表面性(硬化物)>
表面性(硬化物)は、以下のとおり評価した。まず、分光光度計(日本分光株式会社製 V−650)により、厚さ1mmのポリイソシアネート硬化物のサンプルの450nmの透過率を測定した。得られた透過率が80%以上であれば〇、60%以上80%未満であれば△、60%未満であれば×と評価した。
【0134】
<評価4:表面性(リフレクター)>
表面性(リフレクター)は、以下のとおり評価した。まず、LED用リフレクター(TTOP社製、505010−8R)に、ポリイソシアネート硬化物の原料をポッティングし、150℃5時間で硬化させた。これにより、ポリイソシアネート硬化物で封止されたLED用リフレクターサンプルを作製した。表面を目視で観察し、平滑であれば〇、ムラがあれば△、ムラ及び白濁があれば×と評価した。
【0135】
[合成例1]ポリイソシアネート組成物N−1の合成
撹拌器、温度計及び冷却管を取り付けた四ツ口フラスコ(反応器)の内部を窒素置換し、該反応器に、HDI 500gを仕込んだ。次いで、撹拌下、反応器内温度が70℃に到達した時点で、該反応器に、イソシアヌレート化触媒としてN,N,N−トリメチル−N−ベンジルアンモニウムヒドロキシドを0.05g加えた。次いで、反応液の屈折率の変化が0.011になった時点で、リン酸85%水溶液を0.04g加え、反応を停止させた。その後、該反応液を90℃で1時間保持して触媒を完全に失活させた。次いで、該反応液を濾過した。次いで、流下式薄膜蒸留装置を用いて、濾液から未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物N−1を得た。
【0136】
得られたポリイソシアネート組成物N−1は、透明の液体であり、収量130g、粘度1600mPa・s、NCO基含有率23.4質量%、数平均官能基数3.4であった。収率は26%であった。得られたポリイソシアネート組成物N−1について、NMRを測定したところ、アロファネート基/イソシアヌレート基は0/100であった。
【0137】
[合成例2]ポリイソシアネート組成物N−2の合成
合成例1と同様の反応器を用いて、HDI 500gを仕込み、撹拌下、反応器内温度を90℃にした。次いで、該反応器にイソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.05g加えて、イソシアヌレート化反応を行った。次いで、反応液の屈折率の変化が0.026になった時点で、リン酸85%水溶液を0.04g加え、反応を停止させた。その後、該反応液を100℃で1時間保持して触媒を完全に失活させた。次いで、該反応液を濾過した。次いで、流下式薄膜蒸留装置を用いて、未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物N−2を得た。
【0138】
得られたポリイソシアネート組成物N−2は、透明の液体であり、収量260g、粘度3000mPa・s、NCO基含有率21.0質量%、数平均官能基数3.3であった。得られたポリイソシアネート組成物N−2について、NMRを測定したところ、アロファネート基/イソシアヌレート基は0/100であった。
【0139】
[合成例3]ポリイソシアネート組成物N−3の合成
合成例1と同様の反応器を用いて、HDI 500gと2−エチル−1−ヘキサノール 0.2gとを仕込み、撹拌下、反応器内温度を80℃で10分間保持した。次いで、該反応器に、テトラメチルアンモニウムカプリエートを0.03g加えて、ウレタン化、アロファネート化及びイソシアヌレート化反応を行った。次いで、反応液の屈折率の変化が0.012になった時点で、リン酸85%水溶液を0.02g加え、反応を停止させた。その後、該反応液を80℃で1時間保持して触媒を完全に失活させた。次いで、該反応液を濾過した。次いで、流下式薄膜蒸留装置を用いて、濾液から未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物N−3を得た。
【0140】
得られたポリイソシアネート組成物N−3は、透明の液体であり、収量120g、粘度1100mPa・s、NCO基含有率22.2質量%、数平均官能基数3.2であった。得られたポリイソシアネート組成物N−3について、NMRを測定したところ、アロファネート基/イソシアヌレート基は5/95であった。
【0141】
[合成例4]ポリイソシアネート組成物N−4の合成
合成例1と同様の反応器を用いて、HDI 500gと2−エチル−1−ヘキサノール 5gとを仕込み、撹拌下、反応器内温度を80℃で10分間保持した。次いで、該反応器に、テトラメチルアンモニウムカプリエートを0.01g加えて、ウレタン化、アロファネート化及びイソシアヌレート化反応を行った。次いで、反応液の屈折率の変化が0.010になった時点で、リン酸85%水溶液を0.01g加え、反応を停止させた。その後、該反応液を80℃で1時間保持して触媒を完全に失活させた。次いで、該反応液を濾過した。次いで、流下式薄膜蒸留装置を用いて、濾液から未反応のHDIを除去して、ポリイソシアネート組成物N−4を得た。
【0142】
得られたポリイソシアネート組成物N−4は、透明の液体であり、収量135g、粘度900mPa・s、NCO基含有率22.4質量%、数平均官能基数3.2であった。得られたポリイソシアネート組成物N−4について、NMRを測定したところ、アロファネート基/イソシアヌレート基は10/90であった。
【0143】
[実施例1]
(a)ポリイソシアネート組成物としてN−1を10g、(d)酸化防止剤としてBHTを3000ppm、スミライザーGP(商品名)(住友化学株式会社製)を2000ppm、(b)イソシアヌレート化触媒としてN,N,N−トリメチル−N−ベンジルアンモニウムヒドロキシドを2000ppm配合した。なお、(d)酸化防止剤及び(b)イソシアヌレート化触媒の配合量はそれぞれ、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対する質量比である。次いで、真空攪拌及び脱泡ミキサー(株式会社EME製、V−mini300)を用いて、1分間真空状態で放置し、その後真空を保ったまま1500rpmで3分間攪拌を行うことで反応液を得た。得られた反応液をシャーレに流し込み、150℃で1時間置くことで、厚さ1mmのポリイソシアネート硬化物K−1を得た。K−1は、アロファネート基/イソシアヌレート基+アロファネート基のモル比が0/100であり、(ウレタン基+ウレア基)/イソシアヌレート基のモル比は、0/100であった。K−1に対する各種測定結果を表1に示す。
【0144】
[実施例2〜5及び比較例1〜2]
原料及び反応条件を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート硬化物K−2〜K−5及びL−1〜L−2を得た。なお、(d)酸化防止剤、(c)ジフェニルアミン及び(b)イソシアヌレート化触媒の配合量はそれぞれ、(a)ポリイソシアネート組成物の固形分に対する質量比である。得られたポリイソシアネート硬化物K−2〜K−5及びL−1〜L−2に対する各種測定結果を表1に示す。
【0145】
なお、表1中、「2EHOH」は2−エチルヘキサノールを意味する。「IPA」は2−プロパノールを意味する。また、「酸化防止剤A」はジブチルヒドロキシトルエン (dibutylhydroxytoluene;BHT)を意味する。「酸化防止剤B」はスミライザーGP(商品名)(住友化学株式会社製)を意味する。「酸化防止剤C」はTinuvin765(商品名)(BASFジャパン株式会社製)を意味する。「触媒A」はN,N,N−トリメチル−N−ベンジルアンモニウムヒドロキシドを意味する。「触媒B」はテトラメチルアンモニウムカプリエートを意味する。「触媒C」はナトリウムメトキシドを意味する。「触媒D」はN,N’−ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジンを意味する。
【0146】
【表1】
【0147】
イソシアヌレート基を含有し、実質的にアロファネート基、ウレタン基及びウレア基を含まないポリイソシアネート硬化物である実施例1〜5は、アロファネート基、又は、ウレタン基及びウレア基を含むポリイソシアネート硬化物である比較例1〜2とは異なり、表面性を保ちながら、耐熱性及び黄色度が共に優れていた。また、ジフェニルアミンを含むポリイソシアネート硬化物である実施例2〜5において、表面性がより良好になったことは非常に驚くべきことであった。
【0148】
以上のことから、本実施形態のポリイソシアネート硬化物は、耐熱性、低黄色度及び表面性が良好であることが確かめられた。