(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985100
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】牽引装置
(51)【国際特許分類】
B66D 1/36 20060101AFI20211213BHJP
A61G 3/06 20060101ALI20211213BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
B66D1/36 B
A61G3/06
B60P3/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-209022(P2017-209022)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-81619(P2019-81619A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390038092
【氏名又は名称】株式会社マツダE&T
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高安 宏明
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−065838(JP,A)
【文献】
特開2011−046514(JP,A)
【文献】
特開2003−235899(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02564824(EP,A2)
【文献】
特開2012−179098(JP,A)
【文献】
実開平01−111860(JP,U)
【文献】
実開昭59−188347(JP,U)
【文献】
特開2005−213012(JP,A)
【文献】
特開2013−060267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00 − 5/34
A61G 3/06
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室内に被牽引物を牽引するベルトと、該ベルトを巻き取るドラムとを備えたウインチユニットが、該車室内の左右両側にそれぞれ配設された牽引装置であって、
前記ウインチユニットは、車幅方向に延びて前記ベルトが巻き掛けられる軸部と、該軸部の少なくとも車幅方向の内側の端部に設けられて径方向外方に張り出したフランジ部とを有するガイドローラを備え、
前記ガイドローラの軸部は、車幅方向の外側の端部から内側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されていることを特徴とする牽引装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フランジ部には、前記軸部のベルト巻き掛け面に連続して、該ベルトの内側の端縁部の乗り上げを許容するベルト乗り上げ面が形成されていることを特徴とする牽引装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記ウインチユニットは、前記ドラムから引き出された前記ベルトを挿通するスリット部が形成された案内部材を備え、
前記スリット部は、車両後方に向かって凸となる湾曲形状に形成されていることを特徴とする牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車椅子をスロープに沿って車両後部の車椅子搭載スペースに牽引する際に、車椅子の牽引を補助する電動ウインチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、車椅子搭載スペースの車両前側に左右一対の電動ウインチが設けられ、左右の電動ウインチのドラムから引き出されたベルトのフックを車椅子のフレームに引っ掛け、左右の電動ウインチを同期動作させてベルトを引き込むことにより、車椅子を車椅子搭載スペースに牽引するようにした構成が記載されている。
【0004】
ここで、左右の電動ウインチで車椅子を牽引する場合には、車椅子が車幅方向の中央部に位置しているため、左側のベルトは車両後方に向かって右側に傾斜し、右側のベルトは車両後方に向かって左側に傾斜しながら引っ張られることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−60267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電動ウインチをフロア面に埋設する等、ドラムから引き出されたベルトを途中で上方に方向変換させる必要がある場合に、ベルトを巻き掛けて方向変換させるガイドローラを配設することがある。
【0007】
しかしながら、例えば、
図8に示すように、左側の電動ウインチに設けたガイドローラ145では、牽引作業時にベルト122が右側に引っ張られ、ベルト122の右端縁部がガイドローラ145の隅部に引っ掛かり、ベルト122が折り曲げられて皺が生じてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガイドローラの形状を工夫することで、ベルトに皺が生じるのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の車室内に被牽引物を牽引するベルトと、該ベルトを巻き取るドラムとを備えたウインチユニットが、該車室内の左右両側にそれぞれ配設された牽引装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記ウインチユニットは、車幅方向に延びて前記ベルトが巻き掛けられる軸部と、該軸部の少なくとも車幅方向の内側の端部に設けられて径方向外方に張り出したフランジ部とを有するガイドローラを備え、
前記ガイドローラの軸部は、車幅方向の外側の端部から内側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、ガイドローラの軸部が、車幅方向の外側の端部から内側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されている。これにより、ガイドローラの軸部とフランジ部との隅部にベルトが引っ掛かって皺が生じるのを抑えることができる。
【0012】
具体的に、ガイドローラの軸部が直棒状に形成されている従来のローラ形状では、軸部とフランジ部との隅部の角度が直角となる。一方、ガイドローラの軸部がテーパー状に形成されている本発明のローラ形状では、軸部とフランジ部との隅部の角度が鈍角となる。
【0013】
そのため、本発明のガイドローラの方が、従来のローラ形状に比べて、軸部とフランジ部との隅部におけるベルトの曲がり具合が緩やかになり、皺が生じ難くなる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記フランジ部には、前記軸部のベルト巻き掛け面に連続して、該ベルトの内側の端縁部の乗り上げを許容するベルト乗り上げ面が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、ガイドローラの軸部のベルト巻き掛け面と、フランジ部のベルト乗り上げ面とが連続している。これにより、被牽引物の牽引作業時に、ベルトが車幅方向の内側に向かって引っ張られたとしても、ベルトの内側の端縁部がベルト乗り上げ面に乗り上げられることで、軸部とフランジ部との隅部にベルトが引っ掛かって皺が生じるのを抑えることができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記ウインチユニットは、前記ドラムから引き出された前記ベルトを挿通するスリット部が形成された案内部材を備え、
前記スリット部は、車両後方に向かって凸となる湾曲形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、車両後方に向かって凸となる湾曲形状のスリット部にベルトが挿通されている。これにより、被牽引物の車幅方向の位置に応じて、ベルトがスリット部の内部をスムーズに移動することが可能となり、ベルトに皺が生じるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガイドローラの形状を工夫することで、ベルトに皺が生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る牽引装置を備えた車両の構成を示す側面図である。
【
図2】左右のウインチユニットで車椅子を牽引している状態を示す平面図である。
【
図3】左側のウインチユニットの構成を示す平面図である。
【
図4】ウインチユニットの内部構成を示す平面図である。
【
図5】ウインチユニットの内部構成を示す側面断面図である。
【
図7】牽引作業時のベルトの曲がり具合を説明するための背面図である。
【
図8】従来のガイドローラの構成を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。各図には、上下や前後左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、車両10のルーフR後端には、バックドア11が上下に開閉可能に取り付けられている。車両10の車室S内のフロアF後端には、スライド式のスロープ12が上下に回動可能に取り付けられている。車室S内には、被牽引物としての車椅子15をスロープ12に沿って牽引するための牽引装置20が設けられている。牽引装置20は、車幅方向に間隔をあけて配設された左右一対のウインチユニット21を備えている。
【0022】
ウインチユニット21は、先端部にフック23が取り付けられたベルト22を備えている。そして、左右のウインチユニット21からベルト22をそれぞれ引き出して、フック23を車椅子15のフレームにそれぞれ引っ掛け、ウインチユニット21を同期動作させてベルト22を巻き取ることにより、車室S内に車椅子15を牽引できるようになっている。
【0023】
ここで、バックドア11を上方に開き、スロープ12を下方に回動させ、さらに、スロープ12を引き出して車室Sの車両後端と地面Gとの間に架け渡すことにより、被介護者Hを乗せた車椅子15を地面Gからスロープ12を通って車室S内まで移動させて収容できるようになっている。
【0024】
また、車室Sの後方側のフロアFには、固定フック13を備えた左右一対の固定ベルト14が設置されており、固定ベルト14の固定フック13は、車室S内に搭載された車椅子15のフレームにそれぞれ引っ掛けられるようになっている。
【0025】
これにより、車室S内に搭載された車椅子15は、ウインチユニット21のベルト22のフック23及び固定ベルト14のフック23の合計4箇所で固定され、車室S内で車椅子15が移動したりがたついたりするのを抑えるようにしている。
【0026】
左右のウインチユニット21は、車両10の車幅方向の中央位置に対して左右対称となる位置に配置されている。これにより、牽引装置20から引き出された2本のベルト22によって、車椅子15をバランス良く牽引することができる。
【0027】
なお、左右のウインチユニット21の構成は略同等であるため、以下では、左側のウインチユニット21についてのみ説明する。
【0028】
図3〜
図5に示すように、ウインチユニット21は、先端にフック23が取り付けられたベルト22と、ベルト22を巻き取るためのドラム30と、ドラム30を回転駆動させるモータ25とを備えている。これらは、ケーシング40内部に収容されて車両10のフロアFよりも下方に埋設されている。
【0029】
ドラム30には、ベルト22が巻き掛けられている。ドラム30の回転中心には、ドラム軸31が一体的に取り付けられている。ドラム軸31には、モータ25の回転が伝達されるようになっており、モータ25を正逆方向に回転させることで、ベルト22を巻き取ったり、ケーシング40外に送り出すことができる。
【0030】
また、ケーシング40内には、ドラム30のベルト巻き取り方向への回転を許容する一方、ベルト引き出し方向への回転を規制するワンウェイクラッチ35が設けられている。ワンウェイクラッチ35は、ドラム軸31の左端に取り付けられたクラッチ板36と、クラッチ板36に係合する係合爪37とを有する。
【0031】
そして、ドラム30からベルト22を引き出す際には、図示しないアクチュエータを作動させることで、クラッチ板36に対する係合爪37の係合状態が解除され、ドラム30のベルト引き出し方向への回転が許容される。
【0032】
ドラム30とモータ25との間には、電磁クラッチ26が設けられている。電磁クラッチ26の出力軸の一端(
図4では右端)には、クラッチ側ギヤ27が設けられている。クラッチ側ギヤ27は、ドラム30のドラム軸31の右端に取り付けられたドラム側ギヤ32に噛み合っている。
【0033】
電磁クラッチ26の出力軸の他端(
図4では左端)は、ドラム30とモータ25との間で動力伝達可能な連結状態と、ドラム30とモータ25との間で動力伝達不能な非連結状態とに切り替え可能に構成されている。
【0034】
これにより、モータ25によってドラム30を回転させてベルト22を巻き取る動作と、ドラム30とモータ25とを切り離してドラム30からベルト22を引き出す動作とを行うことが可能となっている。
【0035】
モータ25と電磁クラッチ26との間には、減速機構28が設けられている。減速機構28は、モータ25の回転軸の回転を減速して高トルク化するための図示しない複数のギヤ部を有する。
【0036】
ケーシング40の上面には、案内部材41が設けられている。案内部材41は、ベルト22の巻き重ねの向きをガイドするものであり、ドラム30から引き出されたベルト22が挿通するスリット部42が形成されている。
【0037】
これにより、ベルト22がねじれて裏向きになっている場合でも、案内部材41のスリット部42を通過したベルト22は、裏向きの面がドラム30に巻き取られないように、表向きに修正するようにガイドされている。
【0038】
また、スリット部42は、車両後方に向かって凸となる湾曲形状に形成されている。これにより、車椅子15の車幅方向の位置に応じて、ベルト22がスリット部42の内部をスムーズに移動することが可能となる(
図3の仮想線を参照)。
【0039】
ベルト22の先端部には、折り返し部分を縫い合わせることで、フック23を挿通させるための筒状部が形成される。また、ベルト22の折り返し部分は、縫い目を中心に自由に開くことができる(
図5の仮想線を参照)。そのため、ベルト22がケーシング40内に巻き取られた場合でも、この折り返し部分がスリット部42の周縁部に引っ掛かることで、ベルト22の全てがケーシング40内に意図せずに引き込まれるのを防止している。
【0040】
ドラム30と案内部材41との間には、ガイドローラ45が配設されている。ガイドローラ45は、ドラム30から引き出されたベルト22を案内部材41のスリット部42に挿通させるために、車両後方に引き出されたベルト22を斜め上方に方向変換させるためのものである。ベルト22は、ガイドローラ45の下方から上方に向かうように巻き掛けられている。
【0041】
ガイドローラ45は、ベルト22が巻き掛けられる軸部46と、軸部46の左右両端部で径方向外方に張り出したフランジ部47とを有する。ガイドローラ45は、車幅方向に延びる回転軸48を中心に回転可能に取り付けられている。
【0042】
ところで、ベルト22は、車幅方向の中央部に位置する車椅子15を牽引するために、車両後方に向かって右側に傾斜している。つまり、ベルト22が右側に引っ張られ、ベルト22の右端縁部がガイドローラ45の軸部46とフランジ部47との隅部に引っ掛かり、ベルト22が折り曲げられて皺が生じてしまうおそれがある。
【0043】
そこで、本実施形態では、ガイドローラ45の形状を工夫することで、ベルト22に皺が生じるのを抑えるようにしている。
【0044】
具体的に、
図6にも示すように、ガイドローラ45の軸部46は、車両後方から見て、車幅方向の外側の端部から内側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されている。
図6に示す例では、左側のガイドローラ45について説明しているので、ガイドローラ45の軸部46は、左側の端部から右側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されている。
【0045】
ガイドローラ45のフランジ部47には、ベルト22の乗り上げを許容するベルト乗り上げ面47aが形成されている。具体的に、ガイドローラ45の軸部46には、テーパー状のベルト巻き掛け面46aが形成されている。そして、フランジ部47の軸部46側の面には、径方向外方に向かって傾斜した傾斜面が形成されており、この傾斜面がベルト乗り上げ面47aを構成している。
【0046】
そして、ガイドローラ45の軸部46のベルト巻き掛け面46aと、フランジ部47のベルト乗り上げ面47aとが連続して繋がっている。特に、軸部46とフランジ部47との隅部にR加工を施すことで、滑らかに連続するようにしている。
【0047】
これにより、
図7に示すように、車椅子15の牽引作業時に、ベルト22が車幅方向の内側に向かって引っ張られたとしても、ベルト22の内側の端縁部がベルト乗り上げ面47aに乗り上げられることで、軸部46とフランジ部との隅部にベルトが引っ掛かって皺が生じるのを抑えることができる。
【0048】
なお、図示は省略するが、右側のウインチユニット21では、ガイドローラ45の軸部46は、右側の端部から左側の端部に向かって拡径するテーパー状に形成されているものとする。
【0049】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0050】
本実施形態では、被牽引物として車椅子15について説明したが、例えば、大型の荷物などを牽引する場合にも、本実施形態の牽引装置20を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は、ガイドローラの形状を工夫することで、ベルトに皺が生じるのを抑えることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0052】
10 車両
15 車椅子(被牽引物)
20 牽引装置
21 ウインチユニット
22 ベルト
30 ドラム
41 案内部材
42 スリット部
45 ガイドローラ
46 軸部
46a ベルト巻き掛け面
47 フランジ部
47a ベルト乗り上げ面
S 車室