特許第6985104号(P6985104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985104
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】天板昇降式什器
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/08 20060101AFI20211213BHJP
   A47B 9/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   A47B13/08 A
   A47B9/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-211152(P2017-211152)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-80850(P2019-80850A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】須賀 政晴
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第107125926(CN,A)
【文献】 特開2017−194792(JP,A)
【文献】 特開2002−036481(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0078167(US,A1)
【文献】 特開2014−222388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/08
A47B 9/00
G06F 3/0354
G06F 3/0341
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、
前記天板を昇降可能に支持する支持体と、
前記支持体の伸縮を制御する制御部と、を備え、
前記天板は、表層と、
シート本体を有し、前記シート本体の少なくとも一部に操作を検出するための電極が形成されたセンサシートと、
少なくとも一部が剛性を有し、前記表層を支持する基層と、を有し、
前記センサシートは、紙により形成され、前記表層と前記基層との間に配置され、
前記表層は、表面を形成する化粧シートと、複数のコアシートと、を積層状態で一体化して形成され、
前記化粧シートは、メラミン化粧板からなり、
前記コアシートは、紙材からなり、
前記制御部は、前記電極から伝達される操作の検出結果に基づいて、前記天板を昇降する天板昇降式什器。
【請求項2】
請求項に記載の天板昇降式什器であって、
前記センサシートが、前記表層と積層状態で一体化されている天板昇降式什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板昇降式什器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板と、天板を支持する支持体と、を備えたデスク装置(天板昇降式什器)が知られている。
天板を昇降させる技術として、たとえば、ガススプリングを用いる方法やギアを用いる方法(特許文献1,2)などが知られている。
特許文献1,2に開示された技術は、構造が簡易であるのでコストを安く抑えることができる。しかしながら、特許文献1,2に開示された技術では、力の弱い使用者にとっては操作しにくい場合があったり、天板の高さによっては天板を昇降させるために無理な姿勢を強いたりすることがある。
また、天板付什器が備えるワイヤーを操作部により操作して、ガススプリングのストッパ等をロック又は解除し、天板を昇降動作させる技術が知られている(特許文献3,4,5)。
また、天板を昇降させる際の操作性を向上させるために、電動式の駆動ユニットを用いて天板を昇降させる技術が知られている(特許文献6)。特許文献3,4,5,6に開示された技術では、天板近傍に配される操作部やスイッチ(以下、操作部等という)を用いて使用者が天板の昇降操作をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3371959号公報
【特許文献2】特許第3391285号公報
【特許文献3】実用新案登録第3164739号公報
【特許文献4】特開2014−113505号公報
【特許文献5】特許第5718503号公報
【特許文献6】特開2016−86909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3,4,5,6に開示された技術は、操作部等を操作して天板を昇降させるようになっている。このため、例えば大型の天板に操作部等が配置されている場合には、天板を昇降させる使用者が操作部等に届く位置まで移動して操作する必要があるので、操作に手間がかかる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、天板を使用する使用者が、天板に対して大きく移動することなく容易に天板を昇降させることができる天板昇降式什器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、天板と、前記天板を昇降可能に支持する支持体と、前記支持体の伸縮を制御する制御部と、を備え、前記天板は、表層と、シート本体を有し、前記シート本体の少なくとも一部に操作を検出するための電極が形成されたセンサシートと、少なくとも一部が剛性を有し、前記表層を支持する基層と、を有し、前記センサシートは、紙により形成され、前記表層と前記基層との間に配置され、前記表層は、表面を形成する化粧シートと、複数のコアシートと、を積層状態で一体化して形成され、前記化粧シートは、メラミン化粧板からなり、前記コアシートは、紙材からなり、前記制御部は、前記電極から伝達される操作の検出結果に基づいて、前記天板を昇降する天板昇降式什器。
【0007】
このように構成された天板昇降式什器では、制御部が、表層と基層との間に配置されたセンサシートの電極から伝達される操作の検出結果に基づいて、天板を昇降させることができる。
このため、天板を使用する使用者が、天板に対して大きく移動することなく容易に天板を昇降させることができる。
また、このように構成された天板昇降式什器では、表層が、化粧シートと複数のコアシートとにより一体に積層されているので、表層の強度を容易に確保することができる。
【0009】
また、本発明に係る天板昇降式什器では、前記センサシートが、前記表層と積層状態で一体化されてもよい。
【0010】
このように構成された天板昇降式什器では、センサシートが表層と積層状態で一体化されているので、センサシートを、表層と基層との間に配置するための作業を省くことができ、天板の製造性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る天板昇降式什器によれば、天板を使用する使用者が、天板に対して大きく移動することなく容易に天板を昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る天板昇降式什器の斜視図である。
図2図1に示す天板の分解斜視図である。
図3図2に示す天板のA−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るデスク装置1(天板昇降式什器)の斜視図である。図2は、図1に示す天板2の分解斜視図である。図3は、図2に示す天板2のA−A線矢視断面図である。本実施形態では、天板昇降式什器の一例として、デスク装置を説明している。なお、天板昇降式什器としてはデスク装置に限られず、例えば天板付の棚等であってもよい。
以下の説明において、デスク装置1の使用者から見た前後方向をデスク装置1の前後方向X、使用者から見た左右方向をデスク装置1の左右方向Yという。また、使用者から見た上下方向をデスク装置1の上下方向Zという。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るデスク装置1は、天板2と、天板2を昇降可能に支持する支持体5と、支持体5の伸縮を制御する制御部15と、を備えている。天板2は上面視で矩形状をなし、上面3と下面4とを有する。
支持体5は、梁部6と、軸部7と、脚部8と、昇降駆動部10と、制御部15と、を有している。梁部6は、天板2の前後方向Xに延びている。梁部6は、天板2の左右端に1つずつ配されている。
【0015】
軸部7は、梁部6を介して天板2に接続されている。軸部7は、天板2の下面4から垂直に下方へ延びている。
脚部8は、床面に接触してデスク装置1を支持するとともに、昇降駆動部10を介して軸部7に連結されている。本実施形態では、脚部8は、床面と平行に延びる水平部8aと、軸部7と同軸をなして垂直に延びる第一筒部8b及び第二筒部8cとを有している。
【0016】
昇降駆動部10は、軸部7、第一筒部8b、および第二筒部8cが延びる上下方向Zに沿って、これらを相対移動させるためのモータとギア(不図示)を有している。昇降駆動部10は、制御部15に電気的に接続されている。制御部15は、後述する電極21から伝達される操作の検出結果に基づいて、昇降駆動部10を動作させ、支持体5が上下方向Zに伸縮することで天板2が昇降する。
【0017】
そして本実施形態では、図2に示すように、天板2は、表面が天板2の上面を構成する表層20と、操作を検出するための電極21を有するセンサシート23と、少なくとも一部が剛性を有し、表層20を支持する基層22と、を有している。表層20、センサシート23、および基層22は上面視で矩形状をなし、互いに同等の形状、大きさを成している。
【0018】
表層20は、表面を形成する化粧シート20Aと、複数のコアシート20Bと、を積層状態で一体化することにより形成されている。図示の例では、表層20は、化粧シート20Aの下方に3枚のコアシート20Bが上下方向Zに積層された状態で、一体化されている。化粧シート20Aの上面視における形状および大きさは、コアシート20Bと同等となっている。なお、コアシート20Bの枚数は任意に変更することができる。
【0019】
化粧シート20Aの上方を向く表面には、木目等の意匠性を備えた模様が施されている。化粧シート20Aには、例えばメラミン化粧板を採用することができる。コアシート20Bとしては、例えばクラフト紙を採用することができる。
【0020】
センサシート23は、表層20と基層22との間に配置されている。表層20とセンサシート23との間、およびセンサシート23と基層22との間にはそれぞれ、接着剤(図示せず)が介在している。接着剤により、表層20、センサシート23および基層22が固着されている。
なお、このような態様に限られず、例えばセンサシート23が、表層20と積層状態で一体化されていてもよい。センサシート23を表層20と積層状態で一体に形成することで、部品点数を削減し、天板2の組立工数を削減することができる。
【0021】
センサシート23は、例えば紙材料等により形成されている。センサシート23におけるシート本体23Aの少なくとも一部に電極21が形成されている。本実施形態では、電極21は、例えばナノ銀インク等の導電性材料がセンサシート23にプリントされることで形成されている。なお、電極21は板状やフィルム状に形成され、センサシート23に接着等により貼付されてもよい。
【0022】
基層22は、剛性を有する基材22Aと、基材22Aの下方に位置する裏面材22Bと、を備えている。基材22Aは、例えば非金属材料等により形成されている。裏面材22Bは上面視で基材22Aと同等の形状、大きさをなしている。なお、裏面材22Bは設けられなくてもよい。
【0023】
基層22には、この基層22を上下方向Zに貫く貫通孔22Cが形成されている。貫通孔22Cは、基材22Aとともに裏面材22Bを貫いている。図示の例では、左右方向Yにおける一方側の端部に、前後方向Xに列をなすように、複数の電極21と対応して、複数の貫通孔22Cが配置されている。貫通孔22Cは上面視で円形状を呈する。なお、貫通孔22Cの位置、数量、および形状は任意に変更することができる。
【0024】
電極21は、センサシート23の裏面に配置され、表層20を介して天板2上での操作を検出可能となっている。複数の電極21は、表層20と基材22Aとの間における左右方向Yの一方側の端部に、前後方向Xに列をなしている。
電極21は、少なくとも一部が貫通孔22Cに臨むように配置されている。電極21は上面視で一対の2辺が前後方向Xに延びるとともに、残り一対の2辺が左右方向Yに延びる矩形状を呈する。電極21の左右方向Yの大きさは、前後方向Xの大きさよりも大きくなっている。なお、電極21の位置、数量、および形状は任意に変更することができる。
【0025】
電極21は、センサシート23に複数設けられ、互いに同等の形状、および大きさをなしている。複数の電極21は、前後方向Xに間隔をあけて配置されている。複数の電極21それぞれにおける左右方向Yの端部と、貫通孔22Cと、の上面視における位置が互いに同等となっている。
【0026】
また本実施形態では、図3に示すように、デスク装置1は、貫通孔22C内に配置され、電極21に電気的に接続された電極接続部30を有している。電極接続部30は、基層22に固定されたセンサ基部31と、センサ基部31に取り付けられたセンサ基板32と、電極21に接触し、センサ基板32と電極21とを電気的に接続する接点部33と、を備えている。
【0027】
センサ基部31は、円柱状をなしている。センサ基部31の下端部には、径方向の外側に向けて突出するフランジ部31Aが形成されている。センサ基部31は貫通孔22C内に下方から挿入されている。センサ基部31のフランジ部31Aが、裏面材22Bにおける下方を向く下面に固定されている。
【0028】
センサ基板32には、電極21に対して行った操作による静電容量の変化に基づいて、操作内容を認識するセンサが採用されている。接点部33は、センサ基板32の上面と、電極21の下面と、の間に配置されている。
接点部33には、上下方向Zに付勢されたバネ部材が採用されている。図示の例では、バネ部材は板バネである。このため、センサ基板32と電極21との間の寸法がばらつく場合であっても、確実にセンサ基板32と電極21とを電気的に接続することができる。また、センサ基板32は、制御部15と電気的に接続されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るデスク装置1の操作方法について説明する。
使用者がデスク装置1の天板2を昇降させる際には、天板2の上面のうち、電極21の上方に位置する部分で所定の操作を行う。所定の操作としては、例えば天板2の上面に接触させた指を左右方向Yの一方側にスライドさせると天板2を昇降させ、他方側にスライドさせると天板2を下降させるというように、任意に設定しておくことができる。
【0030】
電極21が検出した操作内容を、接点部33を介してセンサ基板32が認識すると、センサ基板32は、制御部15に操作内容を伝達する。そして、制御部15は昇降駆動部10に入力する指令値を生成した後に、昇降駆動部10に指令値を入力する。昇降駆動部10が、入力された指令値に基づいて駆動することで、支持体5が伸縮し、デスク装置1の天板2が昇降、又は下降する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るデスク装置1によれば、制御部15が、表層20と基層22との間に配置されたセンサシート23の電極21から伝達される操作の検出結果に基づいて、天板2を昇降させることができる。
このため、天板2を使用する使用者が、天板2に対して大きく移動することなく容易に天板2を昇降させることができる。
【0032】
また、表層20が化粧シート20Aと複数のコアシート20Bとにより一体に積層されているので、表層20の強度を容易に確保することができる。
また、センサシート23が表層20と積層状態で一体化されている場合には、センサシート23を、表層20と基層22との間に配置するための作業を省くことができ、天板2の製造性を向上することができる。
【0033】
また、電極21が、表層20と基層22との間に配置されているので、電極21と、天板2上で操作を行う使用者の指と、の距離を短くすることが可能になり、使用者の指が接触した際に、電極21において静電容量の変化を正確に検出しやすくすることができる。
また、電極21が、センサシート23に印刷されているので、電極21の形状を自由に変更することができるとともに、金型を用いて製造するような構成と比較して、小量ロット毎に生産することが可能になり、製造に際しての初期費用を抑えることができる。
【0034】
また、基層22に貫通孔22Cが形成され、電極21の少なくとも一部が貫通孔22Cに臨むように配置されている。このため、電極接続部30が内部に配置される貫通孔22Cの上面視における大きさを小さくしながら、電極21の上面視における大きさを大きくすることができる。これにより、貫通孔22Cを小さくして天板2の強度を確保しながら、電極21を大きくして、天板2上のうち、使用者が操作を行える範囲を広くすることができる。
【0035】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態においては、センサシート23が上面視で基層22と同等の形状、および大きさをなしている構成を示したが、このような態様に限られない。例えばセンサシート23は、上面視で基層22に形成された貫通孔22Cの周囲のみを覆うような形状、および大きさであってもよい。
【0037】
また、デスク装置1が、例えばデスク装置1が昇降機構に加えて照明器具を備え、使用者が照明器具の点灯又は消灯を、天板2上で操作するような態様であってもよい。
【0038】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 デスク装置
2 天板
5 支持体
20 表層
20A 化粧シート
20B コアシート
21 電極
22 基層
23 センサシート
図1
図2
図3