特許第6985109号(P6985109)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985109巻取りステーションを運転するための方法と巻取り装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985109
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】巻取りステーションを運転するための方法と巻取り装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/70 20060101AFI20211213BHJP
   B65H 59/00 20060101ALI20211213BHJP
   B65H 59/38 20060101ALI20211213BHJP
   B65H 63/00 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   B65H54/70 B
   B65H59/00 W
   B65H59/38 W
   B65H63/00 Z
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-217330(P2017-217330)
(22)【出願日】2017年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-76182(P2018-76182A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2020年7月31日
(31)【優先権主張番号】10 2016 121 667.4
(32)【優先日】2016年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク キュッペンベンダー
【審査官】 飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/70
B65H 59/00−59/40
B65H 61/00−63/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コップ(9)の糸(30)が、巻取りリール、特に、チーズ(11)に巻き取られ、
糸張力が、糸引張手段(14)によって設定され、そして、
巻き出し加速手段(45)が、巻き出しの進展に伴ってコップ(9)上において降下されるようになっている、
巻取りステーション(2)を運転するための方法であって、
基準巻取りステーション(2’)における糸張力が、糸張力センサ(20)により制御され場合に、糸引張手段(14)が、糸張力センサ(20)の測定値に関連して設定され、
該基準巻取りステーション(2’)における該糸引張手段(14)の設定が、巻き出し加速手段(45)の位置に関連して検出され、記憶され、且つ、
前記巻取りステーション(2)においては、糸引張手段(14)の設定が、巻き出し加速手段(45)の位置に関連して記憶された値によって実施される
ことを特徴とする巻取りステーションを運転するための方法。
【請求項2】
コップ(9)から糸を巻取りリール、特に、チーズ(11)に巻き取るように巻取りステーション(2)が、構成されており、
該巻取りステーション(2)が、糸張力を設定するために糸引張手段(14)を有しており、
該巻取りステーション(2)が、巻き出しの進展に伴って降下されることのできる巻き出し加速手段(45)を有している、
多数の同様な巻取りステーション(2)を装備した巻取り装置(1)であって、
1つの巻取りステーションが、糸張力センサ(20)を装備した基準巻取りステーション(2’)として構成されており、
該基準巻取りステーション(2’)における糸張力を、糸張力センサ(20)を用いて制御し、且つ、糸張力センサ(20)の測定値に応じて、糸引張手段を設定できるように構成されている制御手段(40,50)が設けられており、
該制御手段(40,50)は、更に、基準巻取りステーション(2’)における巻き出し加速手段(45)の位置に関連した糸引張手段(14)の設定を検出し、記憶し、他の巻取りステーション(2)においては、糸引張手段(14)の設定を巻き出し加速手段(45)の位置に関連して記憶されている値を用いて実施するように構成されている
ことを特徴とする巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻取りステーションを運転するための、特に糸張力を設定するための方法に関する。本発明は、更に、巻取り装置にも関する。
【0002】
既知の、例えば、EP 2 468 670 B1に記述されている巻取り装置では、糸引張力、或いは、糸テンション、即ち、糸断面積に対する糸張力が、制御、乃至、帰還制御されている。糸張力の設定は、糸引張手段によって実施される。糸張力の制御を実施する際、センサは必要なく、糸引張手段には、例えば、一定の調整シグナルを予め定めておくことができる。糸張力の帰還制御には、糸張力を示す値を測定するセンサが必要である。所謂糸張力センサが一般的である。糸張力が帰還制御されるのか、或いは、制御されるのかの設定は、オペレーターが、決定する。この様な設定は、ロット毎に設定されることが理に適っている。その際、一つのロットは、同じ特性を有する同じ糸をチーズに巻き取る複数のワークステーションから構成されている。但し原則的に、糸張力センサが存在していても、オペレーターが、制御を設定できる。このような場合は、糸張力センサは、オフにされる、或いは、少なくともその測定値は、制御ユニットによって、使用されない。
【0003】
更なる可及的方法では、糸張力センサを付けた巻取りステーションにおいて、糸張力が、帰還制御され、糸引張手段の設定パターンが捕捉され、記録される。このパターンは、後に、同じロットの他のコップの繰り出しに糸張力を測定することなく用いることができる。糸引張手段の設定は、例えば、コップから送り出される糸の長さに依存して捕捉し、保存されることができる。送り出された糸の長さは、紡糸コップ上の残りの糸の量を示す値である。該パターンは、EP 2 468 670 B1に記載されている如く、糸張力センサに不具合がある場合に用いることができる、或いは、包括的に糸張力センサを装備していない巻取りステーションの運転も可能にする。後者のケースでは、糸張力センサを備えた基準巻取りステーションが必要である。
紡糸コップから引き出していく場合、適切な対策を取らないと糸張力は、増加する。それにもかかわらず、糸張力を一定に保つためには、糸張力を上述の如く、糸引張手段によって回帰制御しなければならない。引張手段の圧力は、巻き出しに起因する糸張力の増加に対応して減少される。該糸引張手段の他、糸張力には、巻取り速度によっても影響を与えることができる。この理由から、例えば、DE 37 33 597 A1からは、紡糸コップ上の残りの糸の量に合わせて巻取り速度を制御することが既知である。この様な巻取り速度の制御は、糸張力の帰還制御に対する代案として、或いは、それに付帯的に実施されることができる。糸張力の帰還制御では、巻取り速度を、予め定められている糸張力の維持が、糸引張手段だけではできなくなった時になって初めて変更することもできる。紡糸コップ上の残りの糸の量が減って来ると、適切な対策を施さなければ、糸張力は、増加してしまう。よって、コップ・キャンペーンの開始時点において、糸引張手段は、強い圧力をかけ、コップ・キャンペーンの経過とともに圧力を緩めていく。糸引張手段が、ある一点に達してしまうと、それ以上、圧力を減らすことが不可能になってしまい得る。即ち、糸張力が、増加してしまう。これを回避するために、巻取り速度が下げられる。好ましくは、該速度は、段階的に下げられる。第一ステップでは、速度は、予め定められている割合分減速され、糸張力が下がるため、糸張力を一手に保つために、糸引張手段は、再びその圧力を上げなければならない。よって、糸張力は、再び、糸張力センサと糸引張手段とによって帰還制御できる。糸引張手段の圧力が、再び、最低値にまで下がってしまった時、第二ステップにおいて、巻取り速度がさらに下げられる。
【0004】
糸張力は、巻かれるチーズの品質に多大な影響を与える。よって、巻取りステーションは、品質要求が高い場合、糸張力センサを備えており、糸張力が帰還制御される。品質要求が低い場合、コスト面から、糸張力センサは使用せず、糸引張手段には一定の設定がなされる。上述したパターンは、糸引張手段の設定の妥協案である。この対策により、フルなコップならば、糸張力センサ無しに、高品質なチーズに巻き取ることができる。しかし、残ったコップや不具合のあるコップは、適切に巻き出しができない。
【0005】
EP 2 671 983 A2は、所謂巻き出し加速手段を備えた巻取り装置の巻取りステーションを開示している。該巻き出し加速手段は、パイプ状の部品であり、コップの巻き出しの進展に伴い、軸方向にコップ上において降下される。これにより、糸バルーンに影響を与えることができる。糸張力が、下がった場合、巻取り速度を早くすることができる。巻き出し加速手段は、コップ円錐を捕捉するセンサ手段を有している、乃至、言い換えれば、該センサ手段が、コップのボビンの引き出される側の末端を捕捉している。これにより巻き出し加速手段を、必要に応じて、下げることができる。巻き出し加速手段は、例えば、ステッピングモータによって、降下させることができる。ステッピングモータのステップ数から、巻き出し加速手段の位置、並びにそれに伴う、コップ円錐の位置も割り出すことができる。EP 2 671 983 A2では、該巻き出し加速手段は、更に、不規則性が発生した場合に、その不規則性のコップ内における位置を割り出すことにも利用できる。位置を割り出すことにより、例えば、同じロットのコップにおいて、この位置で、巻取り速度を下げることができる。
【0006】
よって、本発明の課題は、巻取り装置の巻取りステーションにおいて、糸張力を簡単な方法で、必要に応じて調整することである。
【0007】
この課題は、以下に説明する巻取りステーションを運転するための方法によって解決される。糸は、コップから巻取りリール、特に、チーズに巻き取られる。糸張力は、糸引張手段によって設定される。巻き出し加速手段は、巻き出しの進展に伴ってコップ上において降下される。糸張力は、基準巻取りステーションにおいて糸張力センサによって帰還制御され、糸引張手段が、糸張力センサの測定値に応じて設定される。該糸引張手段の設定は、基準巻取りステーションにおいて、巻き出し加速手段の位置に応じて捕捉され、保存される。巻取りステーションでは、糸引張手段の設定は、巻き出し加速手段の位置に応じて保存された値によって実施される。
【0008】
該課題は更に、以下の特徴を有する複数の同様な巻取りステーションを備えた巻取り装置によって解決される。該巻取りステーションは、コップの糸が、巻取りリール、特に好ましくは、チーズに巻き取られる様に構成されている。該巻取りステーションは、糸張力の設定のための糸引張手段と、巻き出しの進展に伴い降下される巻き出し加速手段を有している。一つの巻取りステーションは、基準巻取りステーションとして構成されており、糸張力センサを有している。ここでは、該基準巻取りステーションの糸テンションを、糸張力センサを用いて帰還制御し、糸引張手段を糸張力センサの測定値に応じて設定する制御手段が設けられている。該制御手段は、更に、基準巻取りステーションにおける糸引張手段の設定を巻き出し加速手段の位置に応じて捕捉、保存し、更に、ある巻取りステーションにおいて、糸引張手段の設定を、値巻き出し加速手段の位置に応じて保存された値を基に実施するようにも構成されている。
【0009】
その際、巻取り装置の任意の巻取りステーションを基準巻取りステーションとして構成することが可能である。基準巻取りステーションにおいて割り出された相関関係は、他の巻取りステーションにおいても用いられることができる。
【0010】
本発明に係る方法と本発明に係る巻取り装置は、該巻取り装置ほとんどの巻取りステーションを糸張力センサなしに運転するにもかかわらず、予め定められている糸張力をコップ・キャンペーンの最初から最後まで維持し続けることを可能にする。しかも、残ったコップや不具合のあるコップも、信頼性高く予め定められている糸張力において、巻き出しできる。コップ円錐は、巻き出し加速手段により認識され、糸引張手段が、巻きだされるコップのコップ円錐ポジションに応じて設定される。巻き出しの進展の結果によるコップ円錐の位置の変化は、巻き出し加速手段の降下移動によって認識され、糸引張手段の設定は、コップ円錐の位置と糸引張手段の設定の間における保存されている相関関係に基づいて実施される。
【0011】
糸張力センサを用いない巻取りステーションの運転の他にも、本発明は、糸張力センサの故障を凌ぐことも可能にする。要するに、糸張力センサが作動していない間、糸引張手段の設定は、コップ円錐の位置と糸引張手段の設定の保存されている相関関係に基づいて実施されることができる。
【0012】
基準巻取りステーションにおいて、上記の通り、糸張力センサの測定値、及び/或いは、糸引張手段の設定に応じて、巻取り速度も調整されれば、糸引張手段の設定の他、有意義なことに、巻取り速度も、巻き出し加速手段のポジションに応じて保存されることができる。これにより、糸張力センサを用いない巻取りの際、糸引張手段の設定の他、巻取り速度も調整されることができる。
【0013】
以下、本発明を、図面に示されている実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】多数の巻取りステーションを備えた本発明に係る巻取り装置である。
図2】本発明に係る巻取り装置の基準巻取りステーションである。
【0015】
図1は、多数の巻取りステーション2と、巻取り装置1のエンドステーション55,56の間に配置された基準巻取りステーション2’を備えた巻取り装置1を示している。該巻取り装置は、バス・システム60を介して各々の巻取りステーション制御装置40と接続されている中央制御ユニット50を有している。該中央制御ユニットは、操作と表示のために、キーボード52とディスプレイ51を有している。
【0016】
図2には、巻取りプロセス中の基準巻取りステーション2’が、側面図として模式的に示されている。各巻取りステーション2は、同構造に構成されている。該基準巻取りステーション2’は、糸張力センサ20を付加的に有しているに過ぎない。巻取りステーション2では、既知の、よって詳細には説明しないフィード・リール、通常、リング精紡機で製造された、少量の糸しか有さない紡糸コップ9が、容積がより大きなチーズ11に巻き替えられる。完成したチーズ11は、その後、自動運転されているサービスユニット57、例えば、チーズ・チェンジャによって、装置全体の長さを有するチーズ運搬手段21に渡され、装置末端に配置されているリール引き渡しステーションやそれに類似する装置へと送られる。
【0017】
このような巻取り装置1は、更に、そこに紡糸コップ9をストックできるロータリ・マガジンを装備している、或いは、チーズ自動製造機が、リールとスリーブ運搬システム3として、物流手段を有している。このようなリールとスリーブ運搬システム3内を、紡糸コップ9、或いは、空スリーブ34が、運搬プレート8上において垂直方向にセットされ回送されている。このスリーブ運搬システム3のうち、ヘッド搬入区間4、逆方向にも駆動可能な一時保存区間5、巻取りステーション2につながる横方向運搬区間6、並びに、スリーブ返送区間7のみが図示されている。示唆した如く、供給された紡糸コップ9は、先ず、巻取りステーション2の横方向運搬区間6の領域にある巻き出し位置10にセットされ、その後に、巻き替えられる。
【0018】
各々の巻取りステーション2は、上記目的を達成するために、既知であるため示唆するにとどめるが、紡糸コップ9が、容積がより大きなチーズ11に巻き替えられることのみならず、糸30が、巻き替え工程中、糸のエラーに関して監視され、発見された糸エラーが浄化されることを確保している様々な糸監視・糸処理手段も備えている。各々の巻取りステーション2は、巻取りステーション制御装置40を有しているが、これは、示唆されているのみの制御配線を介して、糸監視・糸処理手段と接続されており、バス・システム60を介して、中央制御ユニット50とサービスユニット57の制御手段58とも接続されている。
【0019】
巻取りステーション2には、例えば、それぞれ巻取り手段24が備えられており、これは、回転軸19の周りに可動に支持され、巻取り駆動手段26、並びに、糸チェンジャ(綾振り)手段28を装備した巻取りフレーム18を有している。
【0020】
ここに示されている例では、チーズ11は、巻取りプロセス中、その表面が駆動軸26に乗っており、摩擦力により連動されている。駆動軸26は、その際、回転数制御可能な、反転自在な(図示されていない)駆動装置を介して駆動される。
チーズ11に送られる際の糸30の綾振りは、本実施例では、フィンガー式糸ガイド29を有する糸チェンジャ手段28によって実施される。
【0021】
巻取りステーション2は、更に、糸処置手段、好ましくは、切断手段43を有するニューマチック方式のより継ぎ手段13、下糸センサ22、糸引張手段14、糸切断手段17を有する糸浄化手段15、並びに、パラフィン塗布手段16も装備している。図2に示されている基準巻取りステーション2’は、付加的に、糸張力センサ20も有している。
【0022】
更に巻取りステーション2には、吸引ノズル12と吸込み管25も備え付けられており、これらには、一定の負圧をかけることができる。該吸引ノズル12と吸込み管25は、この際、装置全体の長さを有する負圧ダクト32に接続されており、それ自体は、負圧源33につながれている。
【0023】
示されている実施例では、更に、パラフィン塗布手段16の領域の糸通路よりも多少後ろ側にずらして配置されている糸キャッチノズル23が、巻取りプロセス中にその合流地点42を糸30が通過するようにポジショニングされている。該糸キャッチノズル23も、エア分岐手段27を介して、負圧ダクト32に接続されている。該エア分岐手段27は、糸キャッチノズル23用の連結部35と比較的大容量な、その合流点が通常の巻取り作動時は、スタンバイ位置Pに置かれた吸引ノズル12によって密閉されているディスチャージ・サポート36も有している。即ち、吸引ノズル12が上に回転され時に該ディスチャージ・サポート36が解放されることにより、糸キャッチノズル23にかかっている負圧が中断されるようになっている。
コップ9の巻き出し位置10の上方には、巻き出し加速手段45が配置されている。巻き出し加速手段45のヘッド側末端には、測定手段46が、設けられている。該測定手段46は、巻き出し位置10にあるコップ9のコップ円錐47を検出する。この様にすることで、巻き出し加速手段45は、巻き出しの進展に応じてコップ9上において降下されることができる。巻き出し加速手段45は、測定手段46によって、コップ円錐47に対して一定の間隔に維持される。巻き出し加速手段45の軸方向動きは、例えば、図示されていないステッピングモータによって実施されることができる。ステッピングモータのステップを捕捉することにより、巻き出し加速手段45の位置を容易に割り出すことができる。
【0024】
一定の糸引張力を維持するため。コップ・キャンペーンの開始時は、先ず、高めのテンショナ圧が必要であるが、紡糸コップ9上の糸の残量が少なくなればなるほど、即ち、巻き出し加速手段45の位置が、下方に移動すればするほど、テンショナ圧は、一定の糸引張力を維持するために低めに設定されなければならない。仮にテンショナ圧が一定だとすると、糸引張力は、巻き出しの進展とともに増加する。
【0025】
巻取り速度は、コップ・キャンペーンの最初から最後まで一定である必要はない。糸引張手段14が、それ以上圧力を下げられなくなった場合は、巻取り速度を、糸引張手段14が、糸30に再び作用できるように、段階的に下げることができる。
【0026】
示されている実施例では、巻取り装置1は、一つの基準巻取りステーション2’を有している。複数の基準巻取りステーション2’を一つの巻取り装置に備えることも有意義であり得る。巻取り装置1が、並列に異なるロットを扱っている場合、特に有意義である。基準巻取りステーション2’は、糸張力によって閉ループ制御される。要するに、糸張力が、糸張力センサ20によって測定され、糸引張手段14が、糸張力が設定値と一致するように設定される。該糸引張手段14の設定は、巻き出し加速手段45の位置に応じて捕捉され、保存される。付加的に、対応する巻取り速度も保存されることができる。これらの値は、停電しても大丈夫なように、ワークステーション制御装置40のメモリに、或いは、中央制御ユニット50のメモリに保存されることができる。尚、該保存は、例えば、表形式で実施できる。この表により、巻き出し加速手段45の位置毎に、糸引張手段14の設定値と巻取り速度を関連づける。
【0027】
この様にして割り出されたデータは、糸張力センサ20を装備していない巻取りステーション2のワークステーション・コンピュータ40に転送される。糸引張手段14と、必要に応じて巻取り速度の設定は、保存されている表によって、巻き出し加速手段45の位置に関連して実施される。糸張力センサ20を装備していない巻取りステーションの運転を改善するため、表から、基準巻取りステーションにおいて把握された一つのロットの複数のコップの平均値を糸引張手段の設定のために割り出すことも可能である。そしてこの平均値が、各巻取りステーション2において用いられる。
図1
図2