(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属粉末は、鉄鋼材料を含む第1金属粉末、Ni合金を含む第2金属粉末、又はその他の合金を含む第3金属粉末の何れか一つのみを含むことを特徴とする請求項1に記載の金属部材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、MIMによる金属部材の製造においては、成形体を形成した後、脱脂工程におけるバインダの除去及びその後の焼結工程により成形体が収縮して最終的に金属部材が得られる。しかし、肉厚の厚い部分においては射出後の金型内での冷却過程での熱収縮量が大きいため、グリーン体成形時に内部に割れが発生する。また、肉厚の厚い部分は上記脱脂工程の加熱によってもバインダが十分に除去されず、残留したバインダの周辺を起点として金属部材に割れが生じ得る。この点、上記特許文献1,2のいずれにも、残留バインダによる割れへの対策を考慮した構成が何ら開示されていない。
【0006】
上記問題に鑑み、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、金属粉末射出成形法を用いた金属部材の製造方法において、グリーン体成形における熱収縮による割れとバインダの残留を低減して射出後の収縮による金属部材の割れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属部材の製造方法は、
金属粉末射出成形法を用いた金属部材の製造方法であって、
金属粉末に有機バインダを添加して加熱して射出成形材料を得る混錬ステップと、
前記射出成形材料を射出成形して脱脂及び仮焼結することにより前記金属部材の外表面の少なくとも一部を占めるインサートを得るインサート形成ステップと、
前記インサートが設置された型の内部に前記射出成形材料を射出して前記金属部材のグリーン体を得る射出成形ステップと、
第1温度域の脱脂雰囲気下で前記グリーン体を脱脂してブラウン体を得る脱脂ステップと、
脱脂された前記ブラウン体を前記第1温度域よりも高温下で焼結する焼結ステップと、を備える。
【0008】
金属粉末射出成形法を用いた金属部材の製造においては、射出成形ステップにおける射出後の冷却過程において金型内でグリーン体の熱収縮が発生する。一方で、脱脂後のブラウン体では有機バインダ成分が除去されているため、加熱された場合の冷却過程における熱収縮はグリーン体よりも小さい。
この点、上記(1)の製造方法によれば、脱脂及び仮焼結済みのインサートを予め形成し、該インサート上に射出成形材料を射出してグリーン体を形成することにより、脱脂ステップ前のグリーン体において、収縮率の大きい有機バインダ含有部の厚さを薄くすることができる。即ち、射出成形後の冷却過程に供されるグリーン体に占める収縮部の厚さを低減することができるため、射出成形ステップでグリーン体に割れが発生することを防止することができる。また、インサートが本焼結ではなく仮焼結済みの状態であることにより、脱脂ステップにおいて加熱されて蒸発するバインダが通る通気回路としての隙間がインサート内に確保される。これにより、未焼結部を挟んでグリーン体の表面側とインサート側との両方の通気性を確保することができ、グリーン体からバインダを円滑に除去して脱脂不良を効果的に防止することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の製造方法において、
前記焼結ステップは、
脱脂された前記ブラウン体を前記第1温度域よりも高温の第2温度域で仮焼結して仮焼結体を得る第1焼結ステップと、
前記仮焼結体を前記第2温度域よりも高温の第3温度域で本焼結する第2焼結ステップと、を含んでもよい。
【0010】
上記(2)の製造方法によれば、焼結性が低い材料においては、焼結ステップを第2温度域で仮焼結を行う第1焼結ステップと、第3温度域で本焼結を行う第2焼結ステップとの2段階に構成したことにより、グリーン体においてインサートとそれ以外の部分とを適切に結合させることができる。なお、焼結性が高い材料では、仮焼結工程を省略してもよい。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の製造方法において、
前記インサート形成ステップは、
前記射出成形材料を射出成形して予備成形体を得る予備射出成形ステップと、
前記脱脂雰囲気下で前記予備成形体を脱脂する予備脱脂ステップと、
脱脂された前記予備成形体を前記第2温度域で仮焼結する予備焼結ステップと、を含んでもよい。
【0012】
上記(3)の製造方法によれば、インサートの仮焼結温度を金属部材のグリーン体の仮焼結温度と同じ第2温度域としたことにより、仮焼結後のグリーン体のうちインサートが占める部分とそれ以外の部分とを同程度の焼結度合いとすることができる。これにより、本焼結後の金属部材における残留応力を低減することができるため、割れの発生を効果的に防止することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の製造方法において、
前記金属粉末は、鉄鋼材料を含む第1金属粉末、Ni合金を含む第2金属粉末又はその他の合金を含む第3金属粉末であってもよい。
【0014】
上記(4)の製造方法によれば、金属部材と、その外表面の少なくとも一部を占めるインサートとを、第1金属粉末、第2金属粉末又はこれら以外の第3金属粉末の何れか一つを主成分として同一材料で形成することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の製造方法において、
前記金属部材は、
円錐台状のハブ部と、前記ハブ部の外周面において周方向に間隔を開けて設けられる複数の翼と、を含むタービンホイールからなり、
前記インサートは、前記ハブ部の背面の少なくとも一部を占めるように構成されてもよい。
【0016】
上記(5)の製造方法によれば、円錐台状のハブ部を含むタービンホイールのうち、肉厚が厚いハブ部の背面側において、その背面の少なくとも一部を占めるようにインサートを配置してタービンホイールを形成することができる。即ち、肉厚な部分を有する複雑形状の金属部材であるタービンホイールを、金属粉末射出成形法を用いて割れや脱脂不良を生ずることなく好適に形成することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の製造方法において、
前記インサートは、前記ハブ部の背面から先端面側に向かって先細りの形状に形成されるテーパ部を含んでもよい。
【0018】
上記(6)の製造方法によれば、肉厚である円錐台状のハブ部を含むタービンホイールにおいて、その一部として組み込まれるインサートをハブ部の背面から先端面側に向かって先細りのテーパ部を有する形状に形成することにより、グリーン体の状態においてハブ部の表面から背面側のインサートまでの距離を狭めて肉厚を抑えることができる。これにより、肉厚なハブ部を含むタービンホイールを、金属粉末射出成形法を用いて割れや脱脂不良を生ずることなく好適に形成することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)に記載の製造方法において、
前記インサートは、前記タービンホイールの軸線周りに対称な形状に形成されてもよい。
【0020】
上記(7)の製造方法によれば、回転体であるタービンホイールにおいて、その一部として組み込まれるインサートを、該タービンホイールの軸線周りに対称な形状に形成することができるため、タービンホイールの重量配分が軸周りにアンバランスになることを防止することができる。つまり、製造過程においてタービンホイールの軸線周りの重心の偏りを抑制することができるため、完成後のタービンホイール(金属部材)の回転時におけるブレや振動の発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の製造方法において、
前記インサートは、その外表面が前記金属部材における厚肉部の表面から所定の距離未満となる形状に形成されてもよい。
【0022】
上記(8)の製造方法によれば、金属部材のグリーン体におけるインサートを除いた部分の肉厚を、所定の距離未満(例えば、10mm以下)となるように薄く形成することができる。これにより、金属粉末射出成形法を用いた金属部材の製造において、厚肉部を有する金属部材であっても脱脂不良や割れを防止して品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の幾つかの実施形態によれば、金属粉末射出成形法を用いた金属部材の製造方法において、グリーン体成形における熱収縮による割れとバインダの残留を低減して射出後の収縮による金属部材の割れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0026】
図1は、一実施形態における焼結ステップの流れを示すフローチャートである。
図2は、一実施形態に係る金属部材の製造方法を示す概略図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の少なくとも一実施形態に係る金属部材の製造方法は、金属粉末射出成形法(metal injection molding:MIM法)を用いた金属部材1の製造方法であって、混錬ステップS1と、インサート形成ステップS2と、射出成形ステップS3と、脱脂ステップS4と、焼結ステップS5と、を備えている。
【0027】
まず、MIM法は、プラスチック射出成形と金属粉末冶金とを組み合わせた製造技術であり、原料として金属塊を溶融するのではなく金属微粉末を用い、これを溶融せずにつなぎ材として樹脂を加えて射出成形し、その成形体を脱脂及び焼結することで高精度な金属部材を得る技術である。このMIM法によれば、複雑な3次元形状の金属部材であっても、焼結後には最終製品として扱い得る焼結体を得ることができる。以下、各工程について詳説する。
【0028】
混錬ステップS1では、例えば
図1及び
図2(A)に示すように、金属粉末12に有機バインダ(結合剤:以下、単にバインダとも称する)16を添加して加熱して射出成形材料(ペレット)18を得る。その際、混錬機17に金属粉末12と、つなぎ材としての有機バインダ16とを投入して均質に混ぜ合わせる。
金属粉末12は、MIM法による最終製品である金属部材1の材質として適した耐熱性及び耐食性等を備えた上限粒径100μm程度、より好ましくは上限粒径45μm程度の金属粉体を用いることが好ましい。なお、金属粉末12の粒径は篩で分類され、目の小さな篩で分類するほど上限粒径が小さくなり射出成形における流動性や焼結性などの成形性が向上する。
有機バインダ16は、例えば、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、アクリル樹脂等の有機(樹脂)材料からなる粉末状のバインダであってもよい。有機バインダ16の材質は、後述する射出成形ステップS3において金型50の内部に射出成形材料18を完全に充填できる流動性(粘度)を付与するとともに、焼結後に炭化物となって残留しにくいものが選定される。なお、金属粉末12及び有機バインダ16の材質や粒径等の選定方法は従来技術として公知のものを適用してよいため、以下の説明では殊更詳しく説明しないものとする。
混錬後には、得られた混合体を加熱して樹脂成分を溶融し、例えば、ペレタイザーを用いてペレット状の上記射出成形材料18を得る(造粒)。他の実施形態では、上記混合体を加熱してインゴットを形成した後、これを粉砕して粒状の射出成形材料18を得てもよい。なお、本明細書では、限定的ではないが、上記の混錬及び造粒の両方を含めて混錬ステップS1としている。
【0029】
インサート形成ステップS2では、例えば
図1及び
図2(B)に示すように、射出成形材料18を射出成形して脱脂及び仮焼結することにより金属部材1の外表面4(
図6(A)参照)の少なくとも一部を占めるインサート20を得る。仮焼結の状態のインサート20は、金属粒子同士が緩やかに結合(ネッキング)された状態であり、内部に隙間を有する構造であって通気性を有する。幾つかの実施形態において、インサート20は、最終製品において金属部材1と一体化されてその一部に組み込まれ得る。
【0030】
射出成形ステップS3では、例えば
図1及び
図2(C)に示すように、インサート20が設置された金型(型)50の内部空間(キャビティ)内に射出成形材料18を射出して金属部材1の成形体すなわちグリーン体30を得る。その際、一方の金型50Aにインサート20を設置し(
図7(A)参照)、設置後の金型50Aに他方の金型50Bを合致させ、これにより形成される内部空間を減圧して真空引きを行い、その後に射出成形機52を用いて上記の内部空間に射出成形材料18を射出する(
図7(B)参照)。
この射出成形ステップS3では、金型50の内部に前述の射出成形材料18を射出し、金属部材1となるグリーン体30を成形する(
図7(C)参照)。射出成形材料18は、射出成形機52のシリンダー内で予め120〜240℃程度の熱で十分に加熱、混練され、滑らかな流動性を持たせた状態で所定の圧力により金型50の内部に射出される。金型50の内部形状、即ちグリーン体30の形状は、焼結ステップS5における収縮量を見込んで、焼結後の金属部材1よりも9〜12%程度大きなものとしてもよい。
【0031】
脱脂ステップS4では、例えば
図1及び
図2(D)に示すように、第1温度域T1(例えば400〜500℃:
図8参照)の脱脂雰囲気下でグリーン体30を加熱して脱脂する。その際、インサート20が仮焼結済みの状態で通気性を有することから、加熱によってグリーン体30中の樹脂成分が溶融及びガス化し、外表面4側に加えてインサート20側からも蒸発する。脱脂後のグリーン体をブラウン体という。グリーン体30から樹脂成分が全てなくなるまで脱脂を行い、有機バインダ16の含有率を低下させてもよい。
なお、この脱脂ステップS4では、グリーン体30を焼結治具62の上に載置して加熱する。焼結治具62は、所定の厚みを有する平板状に形成されており、その材質としては、後述する焼結ステップS5における焼結温度下において溶解や変形(軟化)を起こすことがなく、且つ焼結材料であるTiAl合金等との反応を防止するため、アルミナ、イットリアおよびジルコニア等のセラミックス材としてもよい。
【0032】
焼結ステップS5では、例えば
図1及び
図2(E)に示すように、脱脂されたグリーン体30を第1温度域T1よりも高温下で焼結し、焼結体(シルバー体)としての金属部材1を得る。
【0033】
ここで、
図1に非限定的に例示した上記の製造方法によれば、脱脂及び仮焼結済みのインサート20を予め形成し、該インサート20上に射出成形材料18を射出してグリーン体30を形成することにより、焼結ステップS5前のグリーン体30において、熱収縮で割れが発生しやすい部分の厚さを薄くすることができる。即ち、射出成形ステップの冷却に供されるグリーン体30に占める収縮部の厚さを低減することができるため、焼結後の金属部材1に割れが発生することを防止することができる。また、インサート20が本焼結ではなく仮焼結済みの状態であることにより、脱脂ステップS4において加熱されて蒸発する有機バインダ16が通る通気回路としての隙間がインサート20内に確保される。これにより、未焼結部を挟んでグリーン体30の外表面4側とインサート20側との両方の通気性を確保することができ、グリーン体30から有機バインダ16を円滑に除去して脱脂不良を効果的に防止することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば
図3に示すように、上記製造方法において、焼結ステップS5は、第1焼結ステップS51と、第2焼結ステップS52と、を含んでもよい。
【0035】
第1焼結ステップS51では、ブラウン体30を第1温度域T1よりも高温の第2温度域T2(例えば800〜1200℃:
図8参照)で仮焼結して仮焼結体40を得る。より詳細には、第1焼結ステップS51では、射出成形されたグリーン体30を金型50ごと所定の温度で仮焼結させる。仮焼結では、金属粒子同士が緩やかに結合(ネッキング)された状態であり、グリーン体30の大きさに対しては殆ど縮小しない。
第2焼結ステップS52では、仮焼結体40を第2温度域T2よりも高温の第3温度域T3(例えば1200〜1500℃:
図8参照)で本焼結して金属部材1(シルバー体)を得る。以上の各焼結ステップの温度は、金属粉末12の材種により適正に選択される。
【0036】
この製造方法によれば、焼結ステップS5を、第2温度域T2で仮焼結を行う第1焼結ステップS51と、第3温度域T3で本焼結を行う第2焼結ステップS52との2段階に構成したことにより、第3温度域T3で本焼結のみ行う場合に比べてグリーン体30の収縮を緩やかなものとすることができる。従って、グリーン体30においてインサート20とそれ以外の部分とを適切に結合させることができる。
【0037】
幾つかの実施形態において、インサート形成ステップS2は、例えば、
図4に示すように、予備射出成形ステップS21と、予備脱脂ステップS22と、予備焼結ステップS23と、を含んでもよい。
【0038】
予備射出成形ステップS21では、射出成形材料18を射出成形して予備成形体24を得る(
図5(A)参照)。すなわち、予備成形体24は、金属部材1のうちインサート20が占める分に相当するグリーン体である。予備脱脂ステップS22では、第1温度域T1の脱脂雰囲気下で予備成形体24を加熱して脱脂する。予備焼結ステップS23では、脱脂された予備成形体24を第2温度域T2で仮焼結してインサート20を得る(
図5(B)参照)。
【0039】
この製造方法によれば、インサート20の仮焼結温度を金属部材1のグリーン体30の仮焼結温度と同じ第2温度域T2としたことにより、仮焼結後のグリーン体30のうちインサート20が占める部分とそれ以外の部分とを同程度の焼結度合いとすることができる。これにより、製品自体の焼結では、インサート20とその周囲の製品母材は同質の材料となる。
【0040】
幾つかの実施形態において、金属粉末12は、金属射出成形法に用いることができる粉末であればよく、例えば、鉄鋼材料を含む第1金属粉末12A、Ni合金を含む第2金属粉末12B、又はその他の金属を含む第3金属粉末12Cの何れか一つのみを含んでいてもよい。このようにすれば、金属部材1と、その外表面の少なくとも一部を占めるインサート20とを同一材料で形成することができる。
【0041】
図6は、一実施形態における金属部材の構成例を示す概略図であり、(A)は側断面図、(B)は平面図を示す。
図6(A)及び
図6(B)に例示するように、幾つかの実施形態において、金属部材1は、例えば、過給機のタービンホイール1Aであってもよい。
タービンホイール1Aは、円錐台状のハブ部2と、該ハブ部2の外周面において周方向に間隔を開けて設けられる複数の翼(動翼)6と、を含んで構成されてもよい。
ハブ部2は、タービンホイール1Aの回転の軸線Oを中心として軸対称に形成されており、背面5側が広く、正面の先端側が細くなるように形成されている。このハブ部2は、タービンホイール1Aにおいて肉厚が厚い厚肉部となっている。
動翼6は、作動流体(例えば、内燃機関の排気)のエネルギーを受けてタービンホイール1Aの回転力に変換するものであり、ハブ部2の周方向に一定の間隔で複数設けられている。一般に、これらの動翼6は、ハブ部2を基端として外周側ほど厚さが薄くなるように形成される。なお、
図6(B)では動翼6を一部のみ示し他を省略している。
そして、インサート20は、ハブ部2の背面5の少なくとも一部を占めるように構成されてもよい。例えば、インサート20は、タービンホイール1Aの背面5のうち、該タービンホイール1Aの回転の軸線Oを含む範囲に形成されてもよい。
【0042】
このようにすれば、円錐台状のハブ部2を含むタービンホイール1Aのうち、肉厚が厚いハブ部2の背面5の少なくとも一部を占めるようにインサート20を配置してタービンホイール1Aを形成することができる。即ち、肉厚な部分を有する複雑形状の金属部材1を、金属粉末射出成形法を用いつつ、割れや脱脂不良を生ずることなく好適に形成することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、インサート20は、タービンホイール1Aの軸線O周りに対称な形状に形成されてもよい。この場合、軸線O周りに軸対称であれば特に形状は限定されず、例えば、円柱、円錐、円錐台、多角柱、多角錐等であってもよい。
【0044】
このようにすれば、回転体であるタービンホイール1Aにおいて、仮にインサートとタービン母材に密度差があったとしても、タービンホイールの重量配分が軸周りにアンバランスになることを防止することができる。したがって、製造過程においてタービンホイール1Aの軸線O周りの重心の偏りを抑制することができるため、完成後のタービンホイール1A(金属部材)の回転時におけるブレや振動の発生を効果的に抑制することができる。
【0045】
幾つかの実施形態において、インサート20は、ハブ部2の背面5から正面の先端側に向かって先細りの形状に形成されるテーパ部20Aを含むように構成されていてもよい。
テーパ部20Aは、その先端が例えば鋭角となるように先鋭に形成されていてもよい。また、テーパ部20Aの先端は、軸線Oと垂直な平面(図示略)を含むように平らに形成されていてもよいし、任意の曲面(図示略)で形成されていてもよい。
幾つかの実施形態において、インサート20は、例えば、
図6(A)に非限定的に例示するように、テーパ部20Aに連続して円柱状の円柱部20Bを含む形状に形成されていてもよい。
【0046】
このようにすれば、グリーン体30の状態でハブ部2の外表面4から背面5側のインサート20までの距離を狭めて肉厚を抑えることができる。これにより、肉厚なハブ部2を含むタービンホイール1Aを、金属粉末射出成形法を用いつつ、割れや脱脂不良を生ずることなく好適に形成することができる。
【0047】
幾つかの実施形態において、インサート20は、その外表面22が金属部材1における厚肉部であるハブ部2の外表面4から所定の距離未満となる形状に形成されてもよい。この場合、所定の距離は、上記ハブ部(厚肉部)2の脱脂を好適に行える範囲であればよく、特に限定しないが、例えば、15mm以下、好ましくは10mm以下であってもよい。
【0048】
このようにすれば、金属部材1のグリーン体30におけるインサート20を除いた部分の肉厚を、所定の距離未満(例えば、10mm以下)となるように薄く形成することができる。これにより、金属粉末射出成形法を用いた金属部材1の製造において、厚肉部を有する金属部材1であっても脱脂不良や割れを防止して品質の向上を図ることができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、金属部材1は、上述したタービンホイール1A以外の部材であってもよく、例えば、圧縮機のコンプレッサホイール(図示略)であってもよいし、航空機エンジン用のタービンブレードであってもよい。
【0050】
図9に、本発明を適用した金属部材の製造方法の幾つかの実施形態において、金属部材1の一例として適用され得る航空機用のタービンブレード1Bを示す。
タービンブレード1Bは、略円盤形状をなすタービンディスク(図示略)の外周部に、周方向に所定間隔で複数取付けられ、タービンディスクとともに回転する動翼として機能する。このタービンブレード1Bは、タービンディスクの半径方向に沿って延在するブレード本体102と、ブレード本体102の基端部側に設けられたプラットホーム106と、ブレード本体102の先端部側に設けられたチップシュラウド108と、を備えている。なお、各チップシュラウド108は、全てのタービンブレード1Bに装着されることで、リング形状をなすシュラウドを形成する。そして、プラットホーム106とチップシュラウド108とに囲まれた円環状(ドーナッツ形状)の通路により燃焼ガス通路Aが構成される。
タービンブレード1Bは、その翼根側がタービンディスクの外周に取り付けられる複雑形状の厚肉部となっている。幾つかの実施形態では、この厚肉部を含むタービンブレード1Bが、金属粉末射出成形(MIM)法を用いて一体に形成され得る。より詳細には、タービンブレード1Bの製造に際して、翼根側外表面104の少なくとも一部を占めるインサート120が準備される。
インサート120は、例えばタービンディスクの軸方向視における断面形状が台形状となるように形成してもよい。
そして、上述した各ステップS1〜S5(或いは、追加的にS21〜S23及び/又はS51〜S52)と同様の工程を経ることで、タービンブレード1Bが製造され得る。
【0051】
このようにすれば、タービンブレード1Bのうち、肉厚が厚い翼根側の少なくとも一部を占めるようにインサート120を配置してタービンブレード1Bを形成することができる。従って、肉厚な部分を有する複雑形状の金属部材1を、金属粉末射出成形法を用いつつ、割れや脱脂不良を生ずることなく好適に形成することができる。
【0052】
以上述べた構成によれば、金属粉末射出成形法を用いた金属部材1の製造方法において、脱脂及び焼結後におけるバインダ16の残留、即ち、脱脂不良を低減して射出後の収縮による金属部材1の割れを効果的に防止することができる。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変更を加えた形態や、これらの形態を組み合わせた形態も含む。