(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985125
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】ホース
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
E03C1/042 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-239182(P2017-239182)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-105107(P2019-105107A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】西岡 利明
(72)【発明者】
【氏名】船戸 博文
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−138538(JP,A)
【文献】
特開2002−138539(JP,A)
【文献】
特開2003−064739(JP,A)
【文献】
特開2006−258213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端には水栓本体、下流端には吐水部がそれぞれ接続され、吐水部の位置を変更可能とするホースであって、屈曲可能な通水ホースと、通水ホースを外装する屈曲可能な外装ホースと、通水ホースと外装ホースとの間に挿入されるホース位置復帰用の弾性管体とよりなり、外力付加時にはその外力に対応してホースが変位し、外力付加を止めたときには前記弾性管体によりホースが外力付加前に近い位置まで復帰するよう構成してあり、さらに、通水ホースの少なくとも一端部に固定用金具を設ける一方、前記一端部に外装ホース端部隠し部材を設けるとともに、外装ホースおよび前記外装ホース端部隠し部材の通水ホースからの抜け止めを行う抜け止め部材を設け、この抜け止め部材を前記固定用金具で固定するように構成してあるホース。
【請求項2】
上流端には水栓本体、下流端には吐水部がそれぞれ接続され、吐水部の位置を変更可能とするホースであって、屈曲可能な通水ホースと、通水ホースを外装する屈曲可能な外装ホースと、通水ホースと外装ホースとの間に挿入される管体とよりなり、外装ホースおよび/または前記管体に対し、ホースに位置復帰のための力を付与し、外力付加時にはホースが変位し、外力付加を止めたときには前記外装ホースおよび/または前記管体によりホースが外力付加前に近い位置まで復帰するよう構成してあり、さらに、通水ホースの少なくとも一端部に固定用金具を設ける一方、前記一端部に外装ホース端部隠し部材を設けるとともに、外装ホースおよび前記外装ホース端部隠し部材の通水ホースからの抜け止めを行う抜け止め部材を設け、この抜け止め部材を前記固定用金具で固定するように構成してあるホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースに関するものであり、更に詳しくは、上流端には水栓本体、下流端には吐水部がそれぞれ接続され、吐水部の位置を変更可能とするホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばキッチン用スプレー混合栓のホースとして、曲げ部分(例えば正面視で上に凸のU字部分;以下単にU字部分という)を有する外装ホースが設けられているスプレーヘッドホースがある。これは、水栓本体からの通水流路を、通水先端部材としてのスプレーヘッドに連通させるものである。
【0003】
スプレーヘッドホースは外力を加えた際にある程度変形することが必要で、荷重をやめるとある程度元の形状に戻る必要がある。外装ホースが正面視で上に凸のU字形状(以下。単にU字形状という)の場合、形状保持のため外装ホース内部にU字形状のばね部品を挿入したり、また、U字形状にホース自体を金型等を使って成型したりするもの、また、曲げたときにその位置を保持する部品を外装ホース内部に挿入したものが主流である。
【0004】
一方、スプレーヘッドホースをはじめ、通水ホースを外装する外装ホースを有するホースにおいて、外装ホースの固定方法を簡易化するために外部に外装ホース固定用のねじを露出させたり、ねじ露出で意匠性が損なわれるのを回避するために外装ホース固定用部品の点数が多いものが主流である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外部に露出させた状態で設けられている外装ホースを使用するにあたり、上述した外装ホース内部にばね部品を挿入するとホース自体の重量が重くなりやすく、また高価である。
【0006】
また、ホース自体を金型等を使って成型する方法は、ホースの肉厚が薄いと曲げ部分のホース断面形状が楕円になったり、ホースを直立させた場合に綺麗な直立形状にならなかったりする(断面形状等形状保持ができない)ため、形状保持にはホースの肉厚をある程度厚くする必要があり、外径の太さや内部空間に制約が生まれやすい。
【0007】
また、曲げた際にその曲げた位置を保持する部品を入れる構造のものは、ホースを動かした際にその都度、形状を元に戻すことになり、手間がかかるおそれがある。
【0008】
一方、意匠性を損なわずに通水ホースを外装する外装ホースを固定するには外装ホース固定用の部品点数が多く高価になるとともに、固定構造が複雑になるおそれがある。
【0009】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、外径および内径形状の制約を少なくしつつ、安価で重量の軽いホースを提供すること、さらには、最低限の部品点数で意匠性を損なうことなく、通水ホースを外装する外装ホースを有するホースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、上流端には水栓本体、下流端には吐水部がそれぞれ接続され、吐水部の位置を変更可能とするホースであって、屈曲可能な通水ホースと、通水ホースを外装する屈曲可能な外装ホースと、通水ホースと外装ホースとの間に挿入されるホース位置復帰用の弾性管体とよりなり、外力付加時にはその外力に対応してホースが変位し、外力付加を止めたときには前記弾性管体によりホースが外力付加前に近い位置まで復帰するよう構成してあ
り、さらに通水ホースの少なくとも一端部に固定用金具を設ける一方、前記一端部に外装ホース端部隠し部材を設けるとともに、外装ホースおよび前記外装ホース端部隠し部材の通水ホースからの抜け止めを行う抜け止め部材を設け、この抜け止め部材を前記固定用金具で固定するように構成してあるホースを提供する(請求項1)。
【0011】
また、本発明は別の観点から、上流端には水栓本体、下流端には吐水部がそれぞれ接続され、吐水部の位置を変更可能とするホースであって、屈曲可能な通水ホースと、通水ホースを外装する屈曲可能な外装ホースと、通水ホースと外装ホースとの間に挿入される管体とよりなり、外装ホースおよび/または前記管体に対し、ホースに位置復帰のための力を付与し、外力付加時にはホースが変位し、外力付加を止めたときには前記外装ホースおよび/または前記管体によりホースが外力付加前に近い位置まで復帰するよう構成してあ
り、さらに通水ホースの少なくとも一端部に固定用金具を設ける一方、前記一端部に外装ホース端部隠し部材を設けるとともに、外装ホースおよび前記外装ホース端部隠し部材の通水ホースからの抜け止めを行う抜け止め部材を設け、この抜け止め部材を前記固定用金具で固定するように構成してあるホースを提供する(請求項2)。
【0012】
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ホース位置復帰用の弾性管体の形状によりホースに任意の形状を作ることができる。
【0014】
請求項1に係る発明では、前記弾性管体を予め任意の形状に成型しておき、続いて、通水ホースを前記弾性管体内に挿通させるとともに、前記弾性管体を被覆するよう外装ホースを前記弾性管体に外装することにより、無荷重の際のホースの形状保持が確保されうる。
【0015】
請求項1に係る発明では、例えば、前記弾性管体を、正面視上に凸のU字部分(以下、単にU字部分という)とこのU字部分の両端から延設された正面視ストレート部分とよりなるU字型管体形状に成型して、このU字型管体形状に応じた形のホースを得ることができる。
【0016】
さらに、請求項1に係る発明では、ばねを用いたり、ホース自体を金型等を使って成型したり、曲げた位置を保持する部品を用いたりする替わりに、ホース位置復帰用の弾性管体を屈曲可能な通水ホースと屈曲可能な外装ホースとの間に挿入することにより、前記弾性管体が荷重により変形した後、荷重を取り去ると前記弾性管体の弾性によるホース位置復帰力により、ホースが元の位置に近い位置まで戻るようにできる。すなわち、請求項1に係る発明では、荷重した際のホースの可動性を確保しつつ、荷重を止めた際に元の位置に近い位置までホースが戻るようにできる。
【0017】
請求項2に係る発明では、屈曲可能な外装ホース、および/または、屈曲可能な通水ホースと屈曲可能な外装ホースとの間に挿入される管体を、ホースに位置復帰のための力を付与しうるようにしている。
【0018】
(1)例えば弾性を有し屈曲可能な外装ホースを予め前記U字部分を含む形状に成型しておき、これをホースに使用する場合、外装ホース自体を肉厚の薄い状態に成型でき、肉厚を薄くすることによる課題(断面形状等形状保持ができない)を外装ホース内部に位置させうる前記管体でカバーすることができる。すなわち、外装ホース自体を肉厚の薄い状態で求める形状(例えば前記U字部分を含む形状)に成型し、外装ホース内部に前記管体を挿入することで外装ホースの形状保持ができる。
【0019】
(2)また、前記管体を、予め例えば前記U字部分を含む形状に成型しておき、これをホースに使用する場合、荷重した際のホースの可動性を確保しつつ、荷重を止めた際に元の形状にホースが戻るようにするためにばねを用いたり、ホース自体を金型等を使って成型したり、曲げた位置を保持する部品を用いたりする替わりに、前記管体を形状保持部品として挿入することができる。すなわち、荷重による変形後、荷重を止めたときには前記管体の弾性によるホース位置復帰力により、ホースが元の位置に近い位置まで戻ることができる。
【0020】
さらに、請求項1、2に係る発明では、例えば通水ホースの両端に固定用金具を設ける一方、通水ホースの一端部と水栓本体間、通水ホースの他端部と吐水部間に、外装ホース端部隠し部材を設けるとともに、外装ホースおよび前記外装ホース端部隠し部材の通水ホースからの抜け止めを行う抜け止め部材を設け、この抜け止め部材を前記固定用金具で固定するように構成してある場合、通水部に固定(抜け止め)した両端の抜け止め部材で外装ホースの抜け止めを防止でき、両端の前記外装ホース端部隠し部材で外装ホースの両端部を隠すことで、最低限の部品点数で簡単に意匠性を損なうことなく、外装ホースを有したホースを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態における使用状態を示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、それによって本発明は限定されるものではない。
【0023】
図1、
図2は、ホース位置復帰用の弾性管体を、U字部分とこのU字部分の両端から延設されたストレート部分とよりなるU字型管体形状に成型して、このU字型管体形状に応じたU字形状を有する三層構造よりなるホースをうるようにした本発明の一実施形態を示す。
【0024】
図1は、ホース1の下流端に接続されている吐水部には例えば泡沫・スプレー切替機能を有するスプレーヘッドが使用され、かつ、ホース1が所定の原位置に復帰している状態のキッチン用スプレー混合栓3を正面側から見た図を示している。この状態では、ホース1の下流端に吊るされた前記スプレーヘッド(吐水部)2がバー部材4先端の係止部4aに係止されている。前記バー部材4は、ホース1の上流端に接続されているシングルレバー式水栓本体Sに取付けられ、水平で長尺に構成されている。
【0025】
図1、
図2において、ホース1は、上流端には前記水栓本体S、下流端には前記スプレーヘッド(吐水部)2がそれぞれ接続され、スプレーヘッド2の位置を変更可能とするものである。
【0026】
ホース1は、架橋ポリエチレン樹脂またはポレブデン樹脂製の屈曲可能な通水ホース5と、通水ホース5を外装する熱可塑性エラストマー製の屈曲可能な外装ホース6と、通水ホース5と外装ホース6との間に挿入されるホース位置復帰用の弾性管体7とよりなる。
【0027】
そして、この実施形態では、弾性管体7を予めU字部分7aとこのU字部分7aの両端から同一寸法だけ下方に延設されたストレート部分7bよりなるU字形状(7a,7b)としてホース1を原位置に近い位置まで復帰させる弾性力を有し、外力付加時にはその外力に対応してホース1が変位し、外力付加を止めたときには弾性管体7によりホース1が所定の原位置に近い位置まで復帰するよう構成してある。U字部分7aは螺旋状、蛇腹状に成型されている。
【0028】
この実施形態では、弾性管体7を予め例えばブロー成型によりU字形状(7a,7b)に成型しておき、続いて、通水ホース5をU字形状(7a,7b)の弾性管体7内に挿通させるとともに、U字形状(7a,7b)の弾性管体7を被覆するよう外装ホース6をU字形状(7a,7b)の弾性管体7に外装することにより、弾性管体7の弾性力でもって無荷重の際のU字形状のホース1の形状保持が確保される。
【0029】
弾性管体7は、この実施形態では、樹脂で成型されているが、弾性を有するものであれば素材は問わない。
【0030】
外装ホース6は外部に露出させた状態で設けられている。又、前記係止部4aは二股形状に構成されており、この係止部4aにスプレーヘッド2が係止される。尚、この係止を確実にするために磁石を用いてもよい。
【0031】
また、通水ホース5の両端部には、雄ねじaを有する金具(固定用金具の一例)10,10を設ける一方、通水ホース5の両端部に樹脂製の外装ホース端部隠し部材11,11を設けるとともに、外装ホース6および外装ホース端部隠し部材11,11の通水ホース5からの抜け止めを行う例えば真鍮製の抜け止め部材12,12を設け、金具10,10の雄ねじa,aに抜け止め部材12,12の雌ねじbをねじ込むように構成してある。
【0032】
外装ホース端部隠し部材11は,上筒部分11aと下筒部分11bよりなる筒体に形成されており、内径は下筒部分11bよりも上筒部分11aが小さく設定されており、上筒部分11aと下筒部分11bの境には段差部分Mが形成されている。
【0033】
抜け止め部材12は、通水ホース5の通水流路に連通する貫通孔13を上下方向に有しており、また、上下方向における略中間位置に外向きフランジ14を有する。そして、金具10,10に抜け止め部材12,12がねじ込まれる。
【0034】
さらに、外装ホース端部隠し部材11,11は下筒部分11b,11bの内周に雌ねじfを有しており、吐水部側においては、雌ねじfがスプレーヘッド2の雄ねじd(
図1参照)に螺合する一方、水栓本体側においては、外装ホース端部隠し部材11の雌ねじfが水栓本体4に形成された最下流吐出口20(
図1参照)の雄ねじgに螺合する。
【0035】
なお、水栓本体側において、ホース1の最上流端部は、外装ホース6のみが外装ホース端部隠し部材11の上筒部分11aと抜け止め部材12の上筒部分間に形成されている隙間Nに回動可能に差し込まれており、ホース1が水栓本体4の垂直軸線まわりに360度以上(一周以上)自在に回動するように構成されている。そのため、水栓本体4を境にしてその両側にシンクを設置することができるので、使用勝手がよい。
【0036】
而して、シングルレバー21を回動させてスプレーヘッド2から例えばスプレー吐水される。この際、使用者は、係止部4aからスプレーヘッド2を取り外し、ホース1におけるスプレーヘッド2側のストレート部分1b(
図1参照)を任意の位置に自在に屈曲操作することができる。
【0037】
なお、この実施形態では、ホース位置復帰用の弾性管体7をU字形状に成型したものを示したが、これに限らず、例えばU字部分7aとこのU字部分7aの一端からのみ所定の寸法だけ下方に延設されたストレート部分7bとからなる、弾性管体7をいわゆる洋傘の把手形状に似た形状とし、ホース1における弾性管体7のストレート部分7bの先端側にスプレーヘッド2を取付けるように構成してもよい。使用時には、ホース1におけるストレート部分1bを自在に屈曲操作することができて何ら支障はない。
【0038】
また、U字部分7aだけで弾性管体7を構成してもよい。この場合、弾性管体7の形状はC型形状に近いものとなる。
【0039】
また、外装ホース6および外装ホース端部隠し部材11の抜け止めを行う部品の通水部からの抜け止め機構にCリングやEリングなどねじ以外の機構を使用してもよい。また、通水先端部材として、スプレーヘッド2に代えて、必要に応じてシャワーヘッドを使用してもよい。
【0040】
上記実施例では弾性管体7の弾性によりホース1を原位置に近い位置まで復帰するようにしてあるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、外装ホース6自体に復帰するための弾性を付与してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ホース
2 吐水部
5 通水ホース
6 外装ホース
7 弾性管体
S 水栓本体