(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985133
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20211213BHJP
H02S 10/40 20140101ALI20211213BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20211213BHJP
B60R 11/02 20060101ALN20211213BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H02S10/40
B60R16/04 U
!B60R11/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-244450(P2017-244450)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-114579(P2019-114579A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】坂部 元哉
(72)【発明者】
【氏名】緒方 和義
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
【審査官】
吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0125417(US,A1)
【文献】
特開2012−033573(JP,A)
【文献】
特開2012−232679(JP,A)
【文献】
中国実用新案第207909887(CN,U)
【文献】
米国特許第6538192(US,B1)
【文献】
米国特許第8020646(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にルーフとして取り付けられる太陽電池モジュールであって、
発電素子が封止された封止層と、
前記封止層における前記発電素子の受光面側と反対側に接合された背面層と、
前記封止層における前記発電素子の受光面側に接合されて太陽電池の一部を構成する太陽電池設置領域と、前記太陽電池設置領域の車両前方側又は車両後方側に延在するアンテナ設置領域を有し、樹脂から形成された表面層と、
を備え、太陽電池設置領域において平面視で封止層や背面層よりも外側に表面層のみの周縁部が形成されており、少なくとも車両前方側、車両後方側の周縁部が車体の車幅方向に延在する部材に接合される太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記アンテナ設置領域には、アンテナロッドを挿通させる挿通孔が形成されている請求項1記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池セルを封止した封止層を受光面側に位置する表面層と背面側に位置する背面層で挟持する太陽電池モジュールが提案されている。このような太陽電池モジュールを自動車のルーフとして採用する場合には、軽量化のために樹脂製の太陽電池モジュールが用いられる。このような自動車のルーフにアンテナを配設する場合には、太陽電池モジュールによるアンテナの電波障害を防止するため、アンテナと太陽電池モジュールとを所定距離離間させる必要がある。
【0003】
したがって、自動車のルーフのうち、太陽電池モジュールが配設される領域は樹脂パネル(太陽電池モジュール)から構成され、アンテナが設置される(太陽電池モジュールが配設されない)領域は金属パネルから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−232679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、自動車のルーフの一部を太陽電池モジュール(樹脂)で構成し、他の部分を金属パネルで構成するため、ルーフを構成する部品点数が増加する。したがって、ルーフを構成する部品点数について改善の余地がある。
【0006】
また、ルーフのアンテナ設置領域を樹脂で構成すれば、車体重量の低減にもつながる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、アンテナが設置される自動車のルーフに用いられ、ルーフを軽量化すると共に部品点数を削減させる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の太陽電池モジュールは、
車体にルーフとして取り付けられる太陽電池モジュールであって、発電素子が封止された封止層と、前記封止層における前記発電素子の受光面側と反対側に接合された背面層と、前記封止層における前記発電素子の受光面側に接合されて太陽電池の一部を構成する太陽電池設置領域と、前記太陽電池設置領域の車両前方側又は車両後方側に延在するアンテナ設置領域を有し、樹脂から形成された表面層と、を備え
、太陽電池設置領域において平面視で封止層や背面層よりも外側に表面層のみの周縁部が形成されており、少なくとも車両前方側、車両後方側の周縁部が車体の車幅方向に延在する部材に接合される。
【0009】
この構成によれば、表面層において、太陽電池の一部を構成する太陽電池設置領域の車両前方側又は車両後方側にアンテナ設置領域を設けたため、自動車のルーフを太陽電池モジュールだけで構成することができる。すなわち、アンテナが設置される自動車のルーフを太陽電池モジュールだけで構成することができ、ルーフを構成する部品点数を削減することができる。
【0010】
また、アンテナ設置領域は、表面層の車両下方側に封止層と背面層が積層されて太陽電池を構成する表面層の太陽電池設置領域の車両前方側又は車両後方側に形成されているため、アンテナ設置領域に配置されるアンテナと太陽電池設置領域に配設される太陽電池とが所定距離離間され、太陽電池によってアンテナに電波障害が生ずることが防止又は抑制される。
【0011】
なお、表面層の太陽電池設置領域は、表面層の車両下側に封止層又は背面層が積層された太陽電池構成部分だけでなく、平面視で太陽電池構成部分を囲むように表面層だけで構成された周縁部を含む。この周縁部は、太陽電池構成部分を自動車骨格部材に接合されるために設けられた部分である。したがって、表面層において、太陽電池設置領域の周縁部よりも車両前方側又は車両後方側に位置する領域がアンテナ設置領域となる。
【0012】
請求項2記載の太陽電池モジュールは、請求項1記載の太陽電池モジュールにおいて、前記アンテナ設置領域には、アンテナロッドを挿通させる挿通孔が形成されている。
【0013】
この構成によれば、太陽電池モジュールのアンテナ設置領域に形成された挿通孔を介して車室側からルーフ上方にアンテナロッドを突出配置することができる。表面層において、太陽電池設置領域から車両前方側又は車両後方側にアンテナ設置領域が設定されているため、アンテナ(ロッド)を太陽電池から十分に離間させることができ、電波障害を防止又は抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明に係る太陽電池モジュールは、上記構成としたので、自動車のルーフの部品点数を削減すると共に、自動車のルーフの軽量化を達成できる。
【0015】
請求項2記載の発明に係る太陽電池モジュールは、上記構成としたので、太陽電池によるアンテナの電波障害を防止又は抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る太陽電池モジュールの車体取付状態を説明する分解斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る太陽電池モジュールが車体のルーフに取り付けられた状態を説明する平面図である。
【
図3】一実施形態に係る太陽電池モジュールの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールについて
図1〜
図4を参照して説明する。なお、本実施形態に係る太陽電池モジュールは、車体のルーフとして自動車骨格部材に取り付けられるものである。また、各図は模式的なものであり、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。さらに、
図1において矢印FRは車両前方、矢印Wは車幅方向、矢印UPは車両上方を示す。
【0018】
(構成)
図1に示すように、本実施形態に係る自動車の太陽電池モジュール10は、車体12にルーフとして取り付けられるものである。車体12には、太陽電池モジュール10を支持する部材として、車幅方向両端部に設けられ車両前後方向に延在する一対のルーフサイドレール14A、14Bを備えている。ルーフサイドレール14A、14Bは、フロントピラー16A、16B等と一体的に形成されているものである。
【0019】
また、ルーフサイドレール14A、14B間には、車幅方向に延在するフロントヘッダ18、ルーフセンターリイオフォースメント(以下、「センターR/F」という)20、リヤヘッダ22が、車両前方側から順に配設されている。また、フロントヘッダ18とセンターR/F20、センターR/F20とリヤヘッダ22との間にそれぞれ1つと2つのルーフデントリインフォースメント(以下、「ルーフデントR/F」という)24A〜24Cが配設されている。
【0020】
なお、本実施形態に係る太陽電池モジュール10は、自動車骨格部材であるルーフサイドレール14A、14Bと、フロントヘッダ18と、リヤヘッダ22とに後述する表面層30で接合(固定)されるものである。
【0021】
図3に示すように、太陽電池モジュール10の最も車両上方側には、表面層30が形成されている。表面層30は、
図2に示すように、ルーフサイドレール14A、14B、フロントヘッダ18、リヤヘッダ22に囲まれた形状に対応した略矩形状の樹脂板から形成されている。樹脂板は、透明で対候性に優れているポリカーボネート(PC)から形成されている。ポリカーボネートからなる樹脂板(PC板)は、耐候性に優れると共に軽量であるため、自動車に搭載される太陽電池モジュール10の表面層30として好適である。なお、本実施形態における「樹脂」とは、光透過性を有するものである。
【0022】
この表面層30は、
図2及び
図3に示すように、フロントヘッダ18からルーフデントR/F24Cまでが太陽電池設置領域SAとされ、ルーフデントR/F24Cからリヤヘッダ22までがアンテナ設置領域AAとされている。
【0023】
この表面層30の太陽電池設置領域SAの車両下方には、
図3及び
図4に示すように、表面層30の背面側に配置され発電素子(太陽電池セル)32が封止された封止層34と、封止層34を背面側から支持する背面層36とが積層されて太陽電池37が形成されている。換言すれば、封止層34の発電素子32の受光面側に表面層30、発電素子32の受光面と反対側に背面層36が積層されて太陽電池37が形成されている。なお、本実施形態では、表面層30、封止層34、背面層36が積層されているものを「太陽電池37」いう。
【0024】
封止層34は、
図2及び
図4に示すように、複数の発電素子32と、発電素子32を封止する封止材38とから構成されている。複数の発電素子32は、封止層34内に規則的に配置され、封止材38によって封止されている。発電素子32は、シリコン系セル等の周知の発電素子である。封止材38は、透明で弾性や接着性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)にシランカップリング剤を混合させてフィルム状に形成されている。
【0025】
背面層36は、背面板により構成されている。背面板は、表面層30にPCを採用したことによる太陽電池モジュール10のバックリングを防止するために、表面層30と同じPCから形成されている。
図4に示すように、背面層36は、その板厚が略一定であるが、車両外側端部において車両上方(表面層30側)に突出形成された凸部40が外周に沿って形成されている。
【0026】
図4に示すように、表面層30の延在方向において、背面層36の端部は封止層34の端部よりも車両外側に位置している。この結果、背面層36の車両外側端部に形成された凸部40は、封止層34の車両外側で車両上方に突出しており、表面層30の下面に当接されていると共に、内面が封止層34の外側端部に当接されている。
【0027】
すなわち、背面層36の上面と内面は、封止層34に接合されていると共に、凸部40の上端が表面層30の下面に接合されている。
【0028】
なお、表面層30の太陽電池設置領域SAにおいて、背面層36の凸部40よりも車両外側(車両前方側、車両後方側、車幅方向外側)に位置する周縁部41(
図2、ハッチング部分参照)は、自動車骨格部材であるフロントヘッダ18、ルーフサイドレール14A、14Bに接合されている。一方、車両後方側の周縁部41Aは、
図4に示すように、ルーフデントR/F24Cにゴム製の緩衝材42を介して支持されている。
【0029】
一方、表面層30において、
図2〜
図4に示すように、太陽電池設置領域SAの車両後方側には、アンテナ設置領域AAが形成されている。アンテナ設置領域AAは、車両前後方向で表面層30のルーフデントR/F24Cからリヤヘッダ22までの範囲をさす。このアンテナ設置領域AAでは、表面層30の車両下方に封止層34や背面層36が配設されていない(表面層30のみで構成されている)。アンテナ設置領域AAには、平面視で車幅方向中央で車両後方側に挿通孔44が形成されている。挿通孔44にはブッシュ46が取り付けられたアンテナ47のアンテナロッド48が嵌合されている。これにより、アンテナロッド48が表面層30から車両上方(車外)に突出して配設される。
【0030】
(作用)
このように構成された太陽電池モジュール10の作用について説明する。
【0031】
太陽電池モジュール10は、表面層30に、封止層34、背面層36が積層されて太陽電池37を構成する太陽電池設置領域SAと、太陽電池設置領域SAの車両後方側に延在するアンテナ設置領域AAが形成されているため、ルーフ全体を樹脂製の太陽電池モジュール10で構成することができる。したがって、アンテナ設置領域AAを金属パネルで構成した場合と比較して自動車のルーフの軽量化が達成できると共に、自動車のルーフを構成する部品点数を削減できる。
【0032】
特に、アンテナの設置位置は、太陽電池37による電波障害を回避するために太陽電池37から所定距離離間させる必要がある。太陽電池モジュール10では、太陽電池設置領域SAにおいて表面層30の車両下方に封止層34、背面層36が積層されて太陽電池37が構成されると共に、太陽電池設置領域SAの車両後方側に表面層30のみ延在させたアンテナ設置領域AAにアンテナロッド48を配置することにより、ルーフ(表面層30)上で太陽電池37とアンテナ47が所定距離離間されることになる。この結果、太陽電池37によるアンテナ47の電波障害を防止又は抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、太陽電池モジュール10の表面層30において、太陽電池設置領域SAの車両後方側にアンテナ設置領域AAを形成したが、太陽電池設置領域SAの車両前方側にアンテナ設置領域AAを形成しても良い。
【0034】
また、電波障害を一層抑制するために、アンテナの近傍を金属類で囲む構成、例えば、表面層30のアンテナ設置領域AAの挿通孔44の内周面を金属類で囲む構成をとっても良い。
【0035】
さらに、本実施形態では、太陽電池モジュール10の表面層30、封止層34、背面層36の全てが樹脂から形成されていたが、少なくもと表面層30が樹脂から形成されていれば良い。
【0036】
また、本実施形態では、アンテナ設置領域AAの車幅方向中央で車両後方側に挿通孔44が形成されていたが、アンテナ47の電波障害が防止又は抑制される位置であれば、アンテナ設置領域AA内の任意の位置に挿通孔44を設置することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 太陽電池モジュール
30 表面層
32 発電素子
34 封止層
36 背面層
44 挿通孔
48 アンテナロッド
AA アンテナ設置領域