(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基材の搬送方向の位置ずれ量等を知るためには、例えば、基材の幅方向の端部(エッジ)に見受けられる微細な形状を、搬送方向の複数箇所に設置した検出部で検出し、当該検出結果を比較する、という方法が考えられる。しかしながら、基材がフィルム等の、幅方向の端部に特徴的な形状を見出せないようなものである場合には、上記の方法を適用することができない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、基材の搬送速度、基材の搬送方向における位置ずれ量、および基材の搬送方向における張力のうちの少なくともいずれかの情報を得るために、様々な基材において幅広く利用することができる、基材処理装置および基材処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本願の第1の観点では、搬送機構と、印検出部と、算出部と、を備える基材処理装置が提供される。前記搬送機構は、長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送する。前記印検出部は、前記搬送経路上の検出位置において、予め前記基材の幅方向の端部に付与した印を連続的または断続的に検出することにより、検出結果を取得する。前記算出部は、前記検出結果、および前記基材に予め付与した前記印に関する情報に基づいて、前記基材の搬送速度、前記基材の搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。
また、前記印は、連続的なパターンである。
【0011】
本願の第2の観点では、第1の観点に係る基材処理装置において、前記検出位置よりも前記搬送経路上の上流側の付与位置において、前記基材の前記幅方向の端部に前記印を付与する印付与部をさらに備える。
【0012】
本願の第3の観点では、第2の観点に係る基材処理装置において、以下の構成とされる。即ち、この基材処理装置は、前記検出位置よりも前記搬送経路上の下流側の第2検出位置において、前記印を連続的または断続的に検出することにより、第2検出結果を取得する第2印検出部をさらに備える。前
記算出部は、前記検出結果と、前記第2検出結果とを比較することにより、前記基材の搬送速度、前記基材の前記搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。
【0013】
本願の第4の観点では、第2の観点または第3の観点に係る基材処理装置において、前記印は、周期的なパターンである。
【0015】
本願の第
5の観点では、第2の観点から第
4の観点までのいずれか1つに係る基材処理装置において、前記印付与部は、前記基材の表面に処理を施す処理部である。
【0016】
本願の第
6の観点では、第
5の観点に係る基材処理装置において、前記処理部は、前記基材の表面にインクを吐出して画像を記録する画像記録部である。
【0017】
本願の第
7の観点では、第
6の観点に係る基材処理装置において、前記算出部の算出結果に基づいて、前記画像記録部からのインクの吐出タイミングを補正する画像記録時期補正部をさらに備える。
【0018】
本願の第
8の観点では、第
6の観点または第
7の観点に係る基材処理装置において、前記算出部の算出結果に基づいて、前記搬送機構の動作を補正する搬送動作補正部をさらに備える。
【0019】
本願の第
9の観点では、第1の観点から第
8の観点までのいずれか1つに係る基材処理装置において、前記基材は、透明なフィルムである。
【0020】
本願の第
10の観点では、第
9の観点に係る基材処理装置において、前記印検出部は、前記基材の表面に向けて光を投光する投光部と、前記基材の裏面側で前記投光部からの光を受光する受光部と、を備える。
【0021】
本願の第
11の観点では、第2の観点から第
4の観点までのいずれか1つに係る基材処理装置において、以下の構成とされる。即ち、前記印付与部は、前記搬送経路に沿って間隔をあけて複数設けられるとともに、前記基材の表面にそれぞれ異なるインクを吐出して画像を記録する画像記録部である。前記複数の画像記録部は、それぞれ前記幅方向において異なる位置に、前記印としての画像を記録する。前記算出部は、前記幅方向の異なる位置に付与された前記印のそれぞれに基づいて、前記基材の搬送速度、前記基材の搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。
【0022】
本願の第
12の観点では、
搬送機構と、印検出部と、算出部と、を備える基材処理装置が提供される。前記搬送機構は、長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送する。前記印検出部は、前記搬送経路上の検出位置において、予め前記基材の幅方向の端部に付与した印を連続的または断続的に検出することにより、検出結果を取得する。前記算出部は、前記検出結果、および前記基材に予め付与した前記印に関する情報に基づいて、前記基材の搬送速度、前記基材の搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。また、前記基材処理装置は、前記検出位置よりも前記搬送経路上の上流側の付与位置において、前記基材の前記幅方向の端部に前記印を付与する印付与部をさらに備える。また、前記印付与部は、前記搬送経路に沿って間隔をあけて複数設けられるとともに、前記基材の表面にそれぞれ異なるインクを吐出して画像を記録する画像記録部である。また、前記基材処理装置は、画像記録時期補正部をさらに備える。この画像記録時期補正部は、前記算出部の算出結果に基づいて、前記画像記録部のそれぞれからのインクの吐出タイミングを補正する。
【0023】
本願の第
13の観点では、
搬送機構と、印検出部と、算出部と、を備える基材処理装置が提供される。前記搬送機構は、長尺帯状の基材を所定の搬送経路に沿って長手方向に搬送する。前記印検出部は、前記搬送経路上の検出位置において、予め前記基材の幅方向の端部に付与した印を連続的または断続的に検出することにより、検出結果を取得する。前記算出部は、前記検出結果、および前記基材に予め付与した前記印に関する情報に基づいて、前記基材の搬送速度、前記基材の搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。また、前記印検出部は、前記基材のエッジの前記幅方向の位置を連続的または断続的に信号として検出するエッジセンサである。この基材処理装置は、前記エッジセンサで検出した前記信号から、前記印に由来する信号よりも低周波の領域の信号を除去するフィルタリング処理部をさらに備える。
【0024】
本願の第
14の観点では、次のa)からc)までの工程が行われる基材処理方法が提供される。前記a)では、長尺帯状の基材を搬送機構によって長手方向に搬送する搬送経路上の付与位置において、前記基材の幅方向の端部に印を付与する。前記b)では、前記搬送経路上の前記付与位置よりも下流側の検出位置において、前記印を連続的または断続的に検出することにより、検出結果を取得する。前記c)では、前記検出結果、および前記印に関する情報に基づいて、前記基材の搬送速度、前記基材の搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかを算出する。
また、前記印は、連続的なパターンである。
【0025】
本願の第
15の観点では、第
14の観点に係る基材処理方法において、前記c)の工程の後に、次のd)の工程が行われる。即ち、このd)では、前記基材の搬送速度、前記基材の前記搬送方向における位置ずれ量、および前記基材の前記搬送方向における張力の少なくともいずれかの算出結果を踏まえて、前記基材の表面に処理を施すタイミング、または前記搬送機構の動作の少なくともいずれかを、補正する。
【発明の効果】
【0026】
本願の第1の観点〜第
15の観点によれば、基材の搬送速度、基材の搬送方向における位置ずれ量、および基材の搬送方向における張力のうちの少なくとも何れかの情報を得るために、様々な基材において幅広く利用することができる、基材処理装置および基材処理方法が提供される。
【0027】
特に、本願の第1の観点によれば、幅方向の端部に特徴的な形状を有しない基材においても、当該基材の幅方向の端部に予め意図的に付与した印を利用して、搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力等の情報を取得することが可能となる。
また、印を安定して継続的に検出できる。また、印の連続的な形状を印検出部で監視することにより、基材の搬送方向の伸縮等の情報をより容易に把握できる。
【0028】
特に、本願の第2の観点によれば、印付与部で付与した印の情報と、印検出部で検出した検出結果と、を比較することにより、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力を具体的に求めることができる。
【0029】
特に、本願の第3の観点によれば、付与した印が意図したとおりとならなかった場合においても、搬送方向に複数箇所の検出位置で同じ印を検出した結果を比較することにより、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力を精度よく求めることができる。
【0030】
特に、本願の第4の観点によれば、例えば、所定角度だけ曲がった刃を持つ切断装置を用いて基材の幅方向の端部を連続的に切断する等の方法により、低コストで簡単に印を付与することができる。
【0032】
特に、本願の第
5の観点によれば、基材の表面に処理を施すのと併せて、基材の幅方向の端部に印を付与することができる。よって、基材処理装置の動作を無駄のないものとすることができる。
【0033】
特に、本願の第
6の観点によれば、基材の幅方向の端部に画像として印を記録することができる。よって、基材の破片等を生じさせることなく、印を付与することができる。また、印を複雑なパターンとすることも容易となる。
【0034】
特に、本願の第
7の観点によれば、基材における搬送方向の位置ずれ量や搬送速度等の算出結果を踏まえて、インクの吐出タイミングを調整することができる。よって、基材へのインクの付着位置がより適切となる。
【0035】
特に、本願の第
8の観点によれば、基材における搬送方向の位置ずれ量や搬送速度や張力等の算出結果を踏まえて、基材の搬送速度や張力等を調整することができる。よって、より適切に基材に画像記録等の処理を施すことが可能となる。
【0036】
ここで、一般的に、透明なフィルム等の基材は、そのままでは幅方向の端部に特徴的な形状を見出し難い。本願の第
9の観点によれば、このような場合においても、基材の幅方向の端部に意図的に印を付与することにより、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力等の情報を取得することが可能となる。
【0037】
本願の第
10の観点によれば、印が付与された部分の裏面側で受光される光の量と、基材の印が付与されていない部分の裏面側で受光される光の量と、に大きな差が生じる。よって、印を容易に検出することができる。
【0038】
本願の第
11の観点によれば、各画像記録部で付与された印について、それぞれ算出結果を取得して、それらを比較することで、搬送方向に隣り合う画像記録部の間で生じた位置ずれ量、搬送速度の変化量、張力の変化量等を求めることができる。
【0039】
特に、本願の第
12の観点によれば、
幅方向の端部に特徴的な形状を有しない基材においても、当該基材の幅方向の端部に予め意図的に付与した印を利用して、搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力等の情報を取得することが可能となる。また、印付与部で付与した印の情報と、印検出部で検出した検出結果と、を比較することにより、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力を具体的に求めることができる。また、各画像記録部で付与された印について、それぞれ算出結果を取得して、それらを比較することで、搬送方向に隣り合う画像記録部の間で生じた位置ずれ量、搬送速度の変化量、張力の変化量等を求めることができる。また、各インクの色が異なる場合等に、搬送方向に隣り合う画像記録部の間で生じた位置ずれ量等を踏まえて、インクの吐出タイミング等を調整することができる。よって、色合わせを精度よく行うことができ、見当ずれが生じることを抑制できる。
【0040】
また、本願の第
13の観点によれば、
幅方向の端部に特徴的な形状を有しない基材においても、当該基材の幅方向の端部に予め意図的に付与した印を利用して、搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力等の情報を取得することが可能となる。また、基材の蛇行や反りに由来する低周波の領域の信号を除去して、印に由来する信号を精度よく検出することができる。
【0041】
また、本願の第
14の観点によれば、幅方向の端部に特徴的な形状を有しない基材においても、基材の幅方向の端部に意図的に付与した印の情報と、下流側で印を検出した検出結果と、を比較することにより、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、搬送方向における張力等の情報を取得することが可能となる。
また、印を安定して継続的に検出できる。また、印の連続的な形状を印検出部で監視することにより、基材の搬送方向の伸縮等の情報をより容易に把握できる。
【0042】
特に、本願の第
15の観点によれば、基材の搬送方向における位置ずれ量等を踏まえて、基材の表面に画像記録等の処理を施すタイミングや、搬送機構の動作を適宜に補正することができる。よって、搬送中の基材に対して適切に処理を施すことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、基材が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する場合がある。
【0045】
<1.第1実施形態>
以下では、本発明の第1実施形態に係る画像記録装置(基材処理装置)1について、
図1から
図6までを参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係る基材処理装置である画像記録装置1の概略的な構成を示している。画像記録装置1は、長尺帯状の基材である無色透明のフィルム9をその長手方向に沿って搬送しながら、当該フィルム9の表面に処理としての画像記録を行う装置である。より具体的には、画像記録装置1は、フィルム9を所定の搬送経路に沿って搬送しつつ、複数の記録ヘッド21〜24からフィルム9へ向けてインクを吐出することにより、フィルム9に画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置である。画像記録装置1は、搬送機構10、画像記録部20、印検出部30、および制御部40を主として備える。
【0046】
搬送機構10は、フィルム9をその長手方向に沿う搬送方向に搬送する機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出しローラ11、複数の搬送ローラ12、および巻き取りローラ13を含む複数のローラを有する。フィルム9は、巻き出しローラ11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により構成される搬送経路に沿って搬送される。各搬送ローラ12は、水平軸を中心として回転することによって、フィルム9を搬送経路の下流側へ案内する。また、搬送後のフィルム9は、巻き取りローラ13へ回収される。これらの複数のローラ11,12,13は、後述する制御部40によって適宜に回転駆動される。
【0047】
図1に示すように、フィルム9は、複数の記録ヘッド21〜24の下方において、複数の記録ヘッド21〜24の配列方向と略平行に移動する。このとき、フィルム9の記録面は、上方(記録ヘッド21〜24側)に向けられている。また、フィルム9は、張力が掛かった状態で、複数の搬送ローラ12に掛け渡される。これにより、搬送中におけるフィルム9の弛みや皺が抑制される。
【0048】
画像記録部20は、搬送機構10により搬送されるフィルム9に対して、インクの液滴(以下、「インク滴」と称する)を吐出する処理部である。本実施形態の画像記録部20は、第1記録ヘッド(印付与部)21、第2記録ヘッド22、第3記録ヘッド23、および第4記録ヘッド24を有する。第1記録ヘッド21、第2記録ヘッド22、第3記録ヘッド23、および第4記録ヘッド24は、フィルム9の搬送経路に沿って配置されている。
【0049】
図2は、画像記録部20付近における画像記録装置1の部分上面図である。4つの記録ヘッド21〜24は、それぞれ、フィルム9の幅方向の全体を覆っている。また、
図2中に破線で示したように、各記録ヘッド21〜24の下面には、フィルム9の幅方向と平行に配列された複数のノズル201が設けられている。各記録ヘッド21〜24は、複数のノズル201からフィルム9の上面に向けて、多色画像の色成分となるK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色のインク滴を、それぞれ吐出する。
【0050】
すなわち、第1記録ヘッド21は、搬送経路上での第1処理位置P1において、フィルム9の上面に、K色(ブラック)のインク滴を吐出する。第2記録ヘッド22は、第1処理位置P1よりも下流側の第2処理位置P2において、フィルム9の上面に、C色(シアン)のインクを吐出する。第3記録ヘッド23は、第2処理位置P2よりも下流側の第3処理位置P3において、フィルム9の上面に、M色(マゼンタ)のインク滴を吐出する。第4記録ヘッド24は、第3処理位置P3よりも下流側の第4処理位置P4において、フィルム9の上面に、Y色(イエロー)のインク滴を吐出する。本実施形態では、第1処理位置P1、第2処理位置P2、第3処理位置P3、および第4処理位置P4は、フィルム9の搬送方向に沿って、等間隔に配列されている。
【0051】
4つの記録ヘッド21〜24は、インク滴を吐出することによって、フィルム9の上面に、それぞれ単色画像を記録する。そして、4つの単色画像の重ね合わせにより、フィルム9の上面に、多色画像が形成される。したがって、仮に、4つの記録ヘッド21〜24から吐出されるインク滴のフィルム9上における搬送方向の位置が相互にずれていると、印刷物の画像品質が低下する。このような、フィルム9上における単色画像の相互の位置ずれ(いわゆる「見当ずれ」)を許容範囲内に抑えることが、画像記録装置1の印刷品質を向上させるための重要な要素となる。そこで、本実施形態の画像記録装置1は、フィルム9に吐出されるインク滴の搬送方向の位置ずれを抑制するための、特徴的な構成を備えている。
【0052】
具体的には、第1記録ヘッド21は、本実施形態に係る印付与部としても機能する。第1記録ヘッド21は、フィルム9の画像記録領域と被らないように、当該画像領域の外側に、印29としての画像を記録する。別の言い方をすれば、記録ヘッド21は、フィルム9の幅方向の端部に、印29を印刷によって付与する。
図3に、本実施形態における印29の態様を示している。
図3のように、本実施形態の印29は、連続的かつ周期的な波状のパターンを有する。
【0053】
次に、印検出部30について、主として
図2および
図4を参照して説明する。本実施形態では、第1記録ヘッド21で付与された印29を検出する4つの印検出部30が、搬送経路に沿って設けられる。
【0054】
4つの印検出部30のうち、第1印検出部31は、搬送方向において第1記録ヘッド21と第2記録ヘッド22との間の位置である第1印検出位置Paに設けられる。第2印検出部32は、搬送方向において第2記録ヘッド22と第3記録ヘッド23との間の位置である第2印検出位置Pbに設けられる。第3印検出部33は、搬送方向において第3記録ヘッド23と第4記録ヘッド24との間の位置である第3印検出位置に設けられる。第4印検出部34は、第4記録ヘッド24よりも搬送方向の下流側の位置である第4印検出位置Pdに設けられる。
【0055】
図4は、印検出部30の構造を模式的に示した図である。
図4に示すように、印検出部30は、フィルム9の幅方向の端部の上方に位置する投光器(投光部)301と、フィルム9の幅方向の端部の下方に位置するラインセンサ(受光部)302とを有する。投光器301は、フィルム9の表面に向けて、即ち下方に向けて、平行光を照射する。ラインセンサ302は、フィルム9の裏面側で、投光器301からの光を受光する。ラインセンサ302は、幅方向に配列された複数の受光素子321を有する。
【0056】
図4のように、フィルム9に印29が付与された箇所においては、投光器301から照射された光が当該印29によって遮られるため、受光素子321は光を検出しない。また、フィルム9の幅方向のエッジ91においては、投光器301から照射された光が当該エッジ91によって乱反射されて、受光素子321で相対的に少ない量の光が検出される。一方、フィルム9に印29が付与された箇所およびエッジ91以外の領域においては、投光器301から照射された光がそのまま、言い換えればほとんど全量、受光素子321で検出される。印検出部30は、このような複数の受光素子321における光の検出量に基づいて、フィルム9に付与された印29の幅方向の位置、および、フィルム9のエッジ91の幅方向の位置を検出する。
【0057】
図2に示す第1印検出部31は、第1印検出位置Paにおいて、フィルム9に付与された印29およびエッジ91の幅方向の位置を、微小時間ごとに断続的に検出する。これにより、第1印検出位置Paにおける、印29のエッジ91に対する幅方向の位置の経時変化を示す検出信号を取得する。そして、得られた検出信号を、制御部40へ出力する。
【0058】
第2印検出部32は、第2印検出位置Pbにおいて、フィルム9に付与された印29およびエッジ91の幅方向の位置を微小時間ごとに断続的に検出する。これにより、第2印検出位置Pbにおける、印29のエッジ91に対する幅方向の位置の経時変化を示す検出信号を取得する。そして、得られた検出信号を、制御部40へ出力する。
【0059】
第3印検出部33は、第3印検出位置Pcにおいて、フィルム9に付与された印29およびエッジ91の幅方向の位置を微小時間ごとに断続的に検出する。これにより、第3印検出位置Pcにおける、印29のエッジ91に対する幅方向の位置の経時変化を示す検出信号を取得する。そして、得られた検出信号を、制御部40へ出力する。
【0060】
第4印検出部34は、第4印検出位置Pdにおいて、フィルム9に付与された印29およびエッジ91の幅方向の位置を微小時間ごとに断続的に検出する。これにより、第4印検出位置Pdにおける、印29のエッジ91に対する幅方向の位置の経時変化を示す検出信号を取得する。そして、得られた信号を、制御部40へ出力する。
【0061】
次に、画像記録装置1の制御系の構成について、主として
図1および
図5を参照して説明する。
【0062】
制御部40は、画像記録装置1内の各部を動作制御するための手段である。
図1に概念的に示したように、制御部40は、CPU等のプロセッサ401、RAM等のメモリ402、およびハードディスクドライブ等の記憶部403を有するコンピュータにより構成されている。記憶部403内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムCPが、記憶されている。また、
図1中に破線で示したように、制御部40は、上述した搬送機構10、4つの記録ヘッド21〜24、および3つの印検出部31〜34と、それぞれ電気的に接続されている。制御部40は、コンピュータプログラムCPに従って、これらの各部を動作制御する。これにより、上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、画像記録装置1における印刷処理が進行する。
【0063】
本実施形態の制御部40は、フィルム9の搬送方向の位置ずれを考慮して、印刷処理を適宜に調整する制御を行う。より具体的には、制御部40は、印刷処理の実行時に、印付与部としての第1記録ヘッド21で付与された印29に関する情報と、印検出部31〜34で取得された検出信号(検出結果)と、を取得する。また、これらの情報に基づいて、フィルム9の搬送速度、当該フィルム9の搬送方向における位置ずれ量、および当該フィルム9の搬送方向における張力を算出(検出)する。そして、この算出結果に基づいて、4つの記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出タイミングを補正する。これにより、上述した搬送方向における見当ずれを抑制する。
【0064】
図5は、このような検出・補正処理を実現するための制御部40内の機能を、概念的に示したブロック図である。
図5に示すように、制御部40は、搬送速度算出部(算出部)41、ずれ量算出部(算出部)42、張力算出部(算出部)43、画像記録時期補正部44、および印刷指示部45を有する。制御部40のこれらの各機能は、コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ401が動作することにより実現される。
【0065】
搬送速度算出部41は、第1印検出部31から得られる第1検出結果R1と、第2印検出部32から得られる第2検出結果R2とに基づいて、第1印検出部31と第2印検出部32との間におけるフィルム9の搬送速度を検出する。
図6は、第1検出結果R1および第2検出結果R2の例を示したグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸は時刻を示し、縦軸は印29の幅方向におけるエッジ91からの距離を示す。第1検出結果R1は、第1印検出位置Paを通過するフィルム9上の印29の形状を反映したデータとなる。第2検出結果R2は、第2印検出位置Pbを通過するフィルム9上の印29の形状を反映したデータとなる。
【0066】
ここで、搬送機構10によって搬送中のフィルム9に印刷等の処理が順次施されるのに伴って、あるいは搬送機構10を構成するローラ等各部の動作に起因して、フィルム9の搬送速度が部分的に変化する場合がある。その場合、各印検出部31〜34で印29が検出されるタイミングが、微小時間だけずれる。搬送速度算出部41では、印29が検出されるタイミングの、この微小なずれを取得することにより、隣り合う印検出部の間におけるフィルム9の搬送速度を算出する。
【0067】
より具体的には、搬送速度算出部41は、第1検出結果R1の中のあるデータ区間(一定の時間範囲)を参照する。そして、搬送速度算出部41は、第2検出結果R2のうち、フィルム9が理想的な搬送速度で搬送されたとしたら、前記データ区間と同じデータが取得されるであろう、対応するデータ区間を参照する。以下では、第1検出結果R1に含まれる前述のあるデータ区間を、比較元データ区間D1と称する。また、第2検出結果R2に含まれる、対応するデータ区間を、比較先データ区間D2と称する。
【0068】
搬送速度算出部41は、相互相関や残差平方和等の公知のマッチング手法を用いて、比較元データ区間D1の形状と、比較先データ区間D2の形状とを比較する。そして、搬送速度算出部41は、フィルム9が理想的な搬送速度で搬送されていたとしたら比較元データ区間D1と同じ形状の印29が取得されるであろう時間と、比較先データ区間D2で実際にその同じ形状の印29が取得された時間と、の時間差Δtを求める。そして、搬送速度算出部41は、この時間差Δtに基づいて、第1印検出位置Paから第2印検出位置Pbまでのフィルム9の実際の搬送時間を算出する。また、算出された搬送時間に基づいて、第1印検出位置Paから第2印検出位置Pbまでの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度v1を算出する。
【0069】
上記と同様の方法で、搬送速度算出部41は、第2印検出位置Pbから第3印検出位置Pcまでの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度v2を算出する。また、第3印検出位置Pcから第4印検出位置Pdまでの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度v3を算出する。
【0070】
また、搬送速度算出部41は、印29の形状(位相等)の情報や、印29が付与された時刻の情報等を、第1記録ヘッド21から取得する。そして、この印29に関する情報と、第1検出結果R1とを比較することにより、第1印検出位置Paよりも上流側におけるフィルム9の実際の搬送速度v0を推定する。
【0071】
図5に戻る。ずれ量算出部42は、搬送速度算出部41で算出された搬送速度v1に基づいて、フィルム9の各部が、第2処理位置P2に到達する時刻を算出する。これにより、理想的な搬送速度で搬送される場合に対する、フィルム9の第2処理位置P2で生じる搬送方向の位置ずれ量が算出される。なお、当該位置ずれ量は、第2処理位置P2における、フィルム9が理想的な搬送速度で搬送される場合に到達すると想定される時刻と、実際に到達する時刻との差分に、実際の搬送速度v1を掛けることにより、算出される。
【0072】
上記と同様の方法で、ずれ量算出部42は、フィルム9の第3処理位置P3で生じる搬送方向の位置ずれ量を算出する。また、フィルム9の第4処理位置P4で生じる搬送方向の位置ずれ量を算出する。さらに、ずれ量算出部42は、第1記録ヘッド21から取得した印29に関する情報と、搬送速度v0とに基づいて、フィルム9の第1処理位置P1で生じる搬送方向の位置ずれ量を算出する。なお、この第1処理位置P1での位置ずれ量はゼロとみなすこととしてもよい。
【0073】
張力算出部43は、フィルム9のヤング率を一定と仮定するとともに、フィルム9の搬送方向への伸び量を考慮することにより、各処理位置P1〜P4におけるフィルム9の搬送方向の張力を算出する。より具体的には、ずれ量算出部42で算出した各処理位置P1〜P4におけるずれ量から、搬送方向の下流側へのずれをプラスと表した伸び量を求め、この伸び量に、フィルム9のヤング率を掛けたものを、張力として算出する。
【0074】
画像記録時期補正部44は、搬送速度算出部41で算出された搬送速度、ずれ量算出部42で算出された位置ずれ量、および張力算出部43で算出された張力に基づいて、各記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出タイミングを補正する。例えば、フィルム9の画像を記録すべき部分が各処理位置P1〜P4に到達する時刻が、理想的な時刻よりも遅れる場合には、画像記録時期補正部44は、各記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出タイミングを遅らせる。また、フィルム9の画像を記録すべき部分が、各処理位置P1〜P4に到達する時刻が、理想的な時刻よりも早くなる場合には、画像記録時期補正部44は、各記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出のタイミングを早める。
【0075】
印刷指示部45は、入力された画像データIに基づいて、各記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出動作を制御する。このとき、印刷指示部45は、画像記録時期補正部44から出力される吐出タイミングの補正値を参照する。そして、当該補正値に従って、画像データIに基づく本来の吐出タイミングをずらす。これにより、各処理位置P1〜P4において、フィルム9上の搬送方向の適切な箇所に、各色のインク滴が吐出される。したがって、各色のインクにより形成される単色画像の、搬送方向の位置ずれが抑制される。その結果、色合わせが適切に行われ、見当ずれの少ない高品質な印刷物を得ることができる。
【0076】
以上に示したように、本実施形態の画像記録装置1は、搬送経路上の印検出位置Pa〜Pdにおいて、予め上流側においてフィルム9の幅方向の端部に付与した印29を連続的に検出することにより、検出結果を取得する印検出部30を備える。また、印検出部30の検出結果、およびフィルム9に予め付与した印29に関する情報に基づいて、当該フィルム9の搬送速度等を算出する算出部41,42,43を備える。これにより、幅方向の端部に特徴的な形状を有しないフィルム9等の基材においても、当該基材の幅方向の端部に予め意図的に付与した印29を利用して、搬送速度等の情報を取得することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の画像記録装置1は、印検出位置Pa〜Pdよりも搬送経路の上流側の印付与位置(第1処理位置)P1において、フィルム9の幅方向の端部に印29を付与する印付与部としての第1記録ヘッド21を備える。これにより、第1記録ヘッド21で付与した印29の情報と、印検出部30で検出した検出結果と、を比較することにより、フィルム9の搬送速度等の情報を具体的に求めることができる。
【0078】
また、本実施形態の画像記録装置1においては、複数の印検出部31〜34を備え、その中のある印検出部31と、それよりも搬送方向の下流側の印検出部32と、の検出結果を比較することにより、フィルム9の搬送速度等を算出する。このため、第1記録ヘッド21により付与された印29が意図したとおりとならなかった場合においても、搬送方向の複数箇所の印検出位置Pa〜Pdで同じ印29を検出した結果を比較することにより、フィルム9の搬送速度等を精度よく求めることができる。
【0079】
また、本実施形態において、印29は連続的なパターンである。これにより、印29を安定して継続的に検出できる。すなわち、例えば印を断続的なスポット状に構成して当該スポット(マーカー)が印検出部を通過した数を数えることにより搬送速度等を算出する構成を採用した場合と比べて、より正確にかつ確実に搬送速度等を算出できる。また、印29の連続的な形状を印検出部30で監視することにより、フィルム9の搬送方向の伸縮等の情報をより容易に把握できる。
【0080】
また、本実施形態の画像記録装置1においては、印付与部は、フィルム9の表面に処理(画像の記録)を施す処理部である。これより、フィルム9の表面に処理を施すのと併せて、印29を付与することができるため、画像記録装置1の動作を無駄のないものとすることができる。
【0081】
また、本実施形態の画像記録装置1においては、前記の処理部は、フィルム9の表面に印刷する第1記録ヘッド(画像記録部)21である。したがって、印刷により印29を記録することができる。よって、フィルム9の破片等を生じさせることなく、印29を付与することができる。また、印29を複雑なパターンとすることも容易となる。
【0082】
また、本実施形態の画像記録装置1においては、フィルム9の搬送方向における位置ずれ等の算出結果に基づいて、画像記録部20からのインクの吐出タイミングを補正する(
図5を参照)。これにより、フィルム9における搬送方向の位置ずれ量等を踏まえて、インクの吐出タイミングを調整できる。その結果、吐出されたインクのフィルム9に対する位置がより適切となる。
【0083】
また、本実施形態の画像記録装置1における基材は、透明なフィルムであるものとした。ここで、一般的に、透明なフィルム等の基材では、そのままでは幅方向の端部に特徴的な形状を見出しにくく、エッジの検出も困難である。この点、本実施形態では、フィルム9の幅方向の端部に意図的に印29を付与することにより、フィルム9の搬送速度等の算出を可能とした。
【0084】
また、本実施形態の画像記録装置1においては、印検出部30は、投光器301とラインセンサ302とを備えるものとした。これにより、印29が付与された部分の裏面側で受光される光の量と、フィルム9の印29が付与されていない部分の裏面側で受光される光の量と、に大きな差が生じる。よって、印29を容易に検出することができる。
【0085】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態に係る画像記録装置2について、
図7から
図10までを参照して説明する。なお、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の部材・機構については、同一の符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0086】
第2実施形態に係る画像記録装置2は、第1記録ヘッド21のみが印付与部としても機能することに代えて、4つの記録ヘッド21〜24がそれぞれ第1〜第4印付与部としても機能する点で、第1実施形態に係る画像記録装置1とは異なっている。また、第1実施形態で示した4つの印検出部31〜34に代えて、1つの印検出部35を備えている点で、画像記録装置1とは異なっている。
【0087】
本実施形態に係る第1記録ヘッド21は、第1印付与部としても機能する。第1記録ヘッド21は、フィルム9の幅方向の端部に、第1印210を印刷によって付与する。
図9に、本実施形態に係る第1印210の態様を示している。
図9のように、第1印210は、断続的かつ周期的なスポット状またはドット状のパターンを有する。
【0088】
本実施形態に係る第2記録ヘッド22は、第2印付与部としても機能する。第2記録ヘッド22は、フィルム9の幅方向の端部の、第1印210とは異なる幅方向の位置に、第2印220を印刷によって付与する。
図9に、本実施形態に係る第2印220の態様を示している。
図9のように、第2印220は、断続的かつ周期的なスポット状またはドット状のパターンを有する。
【0089】
本実施形態に係る第3記録ヘッド23は、第3印付与部としても機能する。第3記録ヘッド23は、フィルム9の幅方向の端部の、第1印210および第2印220のいずれとも異なる幅方向の位置に、第3印230を印刷によって付与する。
図9のように、第3印230は、断続的かつ周期的なスポット状またはドット状のパターンを有する。
【0090】
本実施形態に係る第4記録ヘッド24は、第4印付与部としても機能する。第4記録ヘッド24は、フィルム9の幅方向の端部の、第1印210、第2印220、および第3印230のいずれとも異なる幅方向の位置に、第4印240を印刷によって付与する。
図9のように、第4印240は、断続的かつ周期的なスポット状またはドット状のパターンを有する。
【0091】
次に、印検出部35について、
図7および
図8を参照して説明する。本実施形態の印検出部35は、第1〜第4印付与部としての第1〜第4記録ヘッド21〜24よりも搬送経路上の下流側の検出位置Peにおいて、第1印210と、第2印220と、第3印230と、第4印240とを相互に区別して検出する。印検出部35は、第1実施形態に係る印検出部30と同様に、投光器301とラインセンサ302とを有して構成される。印検出部35は、検出位置Peにおいて、フィルムに付与された第1〜第4印210〜240を、連続的に検出する。この際、第1〜第4印210〜240が付与される幅方向の位置は、互いに異なるので、印検出部35は、各印210〜240を容易に区別して検出することができる。印検出部35は、得られた各印210〜240の検出信号をそれぞれ、制御部40へ出力する。
【0092】
次に、画像記録装置2の制御系の構成について、主として
図7および
図10を参照して説明する。
図10は、本実施形態における制御部50の内の機能を概念的に示している。
【0093】
本実施形態の制御部50も、第1実施形態に係る制御部40と同様に、コンピュータにより構成されている。
図7に示すように、制御部50は、搬送機構10、4つの記録ヘッド21〜24、および印検出部35と、それぞれ電気的に接続されている。制御部50は、コンピュータプログラムCPに従って、これらの各部を動作制御する。
【0094】
図10に示すように、制御部50は、搬送速度算出部51、ずれ量算出部42、張力算出部43、画像記録時期補正部44、および印刷指示部45を有する。制御部50のこれらの各機能は、コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ401が動作することにより実現される。
【0095】
搬送速度算出部51は、第4記録ヘッド24から取得される第4印240に関する情報と、検出部35で得られる第4印240の第4検出結果Q4と、に基づいて、第4処理位置P4と検出位置Peとの間におけるフィルム9の搬送速度C4を検出する。具体的には、フィルム9が理想的な搬送速度で搬送されていたとしたら第4印240の一部が印検出部35で取得されるであろう時間と、当該印検出部35で実際に第4印240の前述の一部が取得された時間と、の時間差ΔTを求める。そして、搬送速度算出部51は、この時間差ΔTに基づいて、第4処理位置P4から検出位置Peまでのフィルム9の実際の搬送時間を算出する。また、算出された搬送時間に基づいて、第4処理位置P4から検出位置Peまでの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度C4を算出する。
【0096】
上記と同様の方法で、搬送速度算出部51は、第3処理位置P3から検出位置Peまでの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度C3を算出する。そして、搬送速度C4と搬送速度C3との差異に基づいて、第3処理位置P3から第4処理位置P4までの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度を推定する。
【0097】
上記と同様の方法で、搬送速度算出部51は、第2処理位置P2から第3処理位置P3までの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度C2を推定する。そして、搬送速度C3と搬送速度C2との差異に基づいて、第2処理位置P2から第3処理位置P3までの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度を推定する。また、第1処理位置P1から第2処理位置P2までの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度C1を推定する。そして、搬送速度C2と搬送速度C1との差異に基づいて、第1処理位置P1から第2処理位置P2までの区間におけるフィルム9の実際の搬送速度を推定する。また、これらに加えて、第1処理位置P1よりも搬送方向の上流側におけるフィルム9の実際の搬送速度を、推定することとしてもよい。
【0098】
ずれ量算出部42は、搬送速度算出部51での算出結果を用いて、フィルム9の各処理位置P1〜P4で生じる搬送方向の位置ずれ量を算出する。張力算出部43は、フィルム9の各処理位置P1〜P4における搬送方向の張力を算出する。
【0099】
搬送速度算出部51、ずれ量算出部42、および張力算出部43での算出結果は、画像記録時期補正部44に入力される。画像記録時期補正部44は、これらの算出結果に基づいて、4つの記録ヘッド21〜24に与える吐出タイミングの補正値を算出する。印刷指示部45は、上述の吐出タイミングの補正値を参照しながら、入力された画像データIに基づいて、各記録ヘッド21〜24からのインク滴の吐出動作を制御する。これにより、各色のインクにより形成される単色画像の、搬送方向の位置ずれが抑制される。その結果、本実施形態においても、見当ずれの少ない高品質な印刷物を得ることができる。
【0100】
以上で示したように、本実施形態の画像記録装置2においては、各記録ヘッド21〜24で付与された印210〜240に基づいて、それぞれフィルム9の搬送速度C1,C2,C3,C4を算出して、それらを比較することで、搬送方向に隣り合う記録ヘッドの間における搬送速度の変化量、その区間における搬送方向の位置ずれ量、その区間で生じる張力の変化量等を求めることができる。
【0101】
また、本実施形態の画像記録装置2においては、フィルム9の搬送方向の位置ずれ量等の算出結果に基づいて、各記録ヘッド21〜24からのインクの吐出タイミングを補正する画像記録時期補正部44を備える。これにより、搬送方向に隣り合う記録ヘッドの間で生じた位置ずれ量等を踏まえて、インクの吐出タイミングを調整することができる。よって、色合わせを精度よく行うことができ、搬送方向の見当ずれが生じることを抑制できる。
【0102】
<3.第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態に係る画像記録装置3について、
図11から
図16までを参照して説明する。なお、以下では、第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心にして説明し、第1実施形態および第2実施形態と同様の部材・機構については、同一の符号を付すことにより、重複した説明を省略する。
【0103】
第3実施形態に係る画像記録装置3は、搬送される基材が不透明の長尺帯状の印刷用紙90である点で、第1実施形態に係る画像記録装置1とは異なっている。また、第1記録ヘッド21が印付与部として機能することに代えて、第1記録ヘッド21よりも搬送方向の上流側に配置される印付与部26が印28を付与する点で、第1実施形態に係る画像記録装置1とは異なっている。さらに、4つの印検出部31〜34に代えて、4つのエッジ検出部71〜74を、印検出位置Pa〜Pdにそれぞれ有する点で、第1実施形態に係る画像記録装置1とは異なっている。なお、印付与部26は、印検出位置Paよりも搬送方向の上流側の印付与位置Pfに設けられている。
【0104】
本実施形態の印付与部26は、印刷用紙90の幅方向の端部を切断することにより、印28を付与する切断装置である。別の言い方をすれば、印付与部26は、印刷用紙90の幅方向の端部から、特定の形状の切断片を切り取ることにより、当該端部に印28を付ける。
図13に、本実施形態における印28の態様を示している。
図13のように、印28は、断続的かつ周期的な略矩形のスポット状のパターンを有する。
【0105】
4つのエッジ検出部(エッジセンサ)71〜74は、本実施形態に係る印検出部である。
図14に示すように、4つのエッジ検出部70はそれぞれ、第1実施形態に係る印検出部30と同様に、投光器301と、ラインセンサ302とを有して構成される。
図14のように、印刷用紙90のエッジ91よりも幅方向の内側の箇所においては、投光器301から照射された光が印刷用紙90によって遮られるため、受光素子321は光を検出しない。一方、印刷用紙90のエッジ91よりも幅方向の外側の箇所においては、投光器301から照射された光がそのまま、受光素子321で検出される。エッジ検出部71〜74は、このような複数の受光素子321における光の検出量に基づいて、印刷用紙90のエッジ91の幅方向の位置、および印28の位置を検出する。
【0106】
4つのエッジ検出部71〜74は、各印検出位置Pa〜Pdにおいて、印刷用紙90のエッジ91(印28)の幅方向の位置を、微小時間ごとに断続的に検出する。これにより、エッジ91の幅方向の位置の経時変化を示す検出信号を取得する。そして、得られた検出信号を、制御部60へ出力する。
【0107】
次に、画像記録装置3の制御系の構成について、主として
図11および
図15を参照して説明する。
図15は、本実施形態における制御部60内の機能を概念的に示している。
【0108】
本実施形態の制御部60も、第1実施形態に係る制御部40と同様に、コンピュータにより構成されている。
図11に示すように、制御部60は、搬送機構10、4つの記録ヘッド21〜24、印付与部26、および4つのエッジ検出部71〜74と、それぞれ電気的に接続されている。制御部60は、コンピュータプログラムCPに従って、これらの各部を動作制御する。
【0109】
図15に示すように、制御部60は、フィルタリング処理部61、搬送速度算出部65、ずれ量算出部42、張力算出部43、張力補正部62、および駆動部63を有する。張力補正部62と駆動部63とを合わせたものは、本実施形態に係る搬送動作補正部をなしている。制御部60のこれらの各機能は、コンピュータプログラムCPに基づいて、プロセッサ401が動作することにより実現される。
【0110】
フィルタリング処理部61は、第1エッジ検出部71から得られる第1検出結果S1、第2エッジ検出部72から得られる第2検出結果S2、第3エッジ検出部73から得られる第3検出結果S3、および第4エッジ検出部74から得られる第4検出結果S4のそれぞれについて、ノイズ信号を除去するためのフィルタリング処理を行う。すなわち、第1検出結果S1には、印刷用紙90の蛇行に起因するエッジ91の幅方向の位置の変動や、印刷用紙90の反りに起因するエッジ91の幅方向の位置の変動等の情報が含まれている。そこで、これらの不要な信号を除去して、検出対象である印28に起因する信号を取りこぼしなく検出できるようにするために、本実施形態のフィルタリング処理部61は、低周波の信号を除去する。このフィルタリング処理には、公知の様々な方法を用い得るが、例えば、離散フーリエ変換あるいはウォルシュ変換を用いることとしてもよい。
【0111】
図16の上段にはフィルタリング処理前の第1検出結果S1を、
図13の後段にはフィルタリング処理後の第1検出結果S1´を、それぞれ示している。
図13のグラフにおいて、横軸は時刻を示し、縦軸はエッジ91(印28)の幅方向における位置を示す。このように、フィルタリング処理部61にてフィルタリング処理が行われることにより、第1検出結果S1´における印28を示す信号が明瞭となる。
【0112】
搬送速度算出部65は、第1実施形態と同様の方法により、上述の各区間における印刷用紙90の実際の搬送速度を算出する。簡単に説明すると、第1検出結果S1と第2検出結果S2を比較することにより、第1印検出位置Paから第2印検出位置Pbまでの区間における印刷用紙90の実際の搬送速度V1を算出する(
図12を参照)。また、第2検出結果S2と第3検出結果S3とを比較することにより、第2印検出位置Pbから第3印検出位置Pcまでの区間における印刷用紙90の実際の搬送速度V2を算出する。また、第3検出結果S3と第4検出結果S4とを比較することにより、第3印検出位置Pcから第4印検出位置Pdまでの区間における印刷用紙90の実際の搬送速度V3を算出する。さらに、印付与部26から取得した印28に関する情報と、第1検出結果S1とを比較することにより、第1印検出位置Paよりも上流側における印刷用紙90の実際の搬送速度V0を算出する。
【0113】
図15に戻る。ずれ量算出部42は、搬送速度算出部65での算出結果を用いて、印刷用紙90の各処理位置P1〜P4で生じる搬送方向の位置ずれ量を算出する。張力算出部43は、印刷用紙90の各処理位置P1〜P4における搬送方向の張力を算出する。
【0114】
張力補正部62は、印刷用紙90の各処理位置P1〜P4における搬送方向の張力に関する情報を、張力算出部43から取得する。そして、各処理位置P1〜P4で掛かる張力を、理想的な張力に近づけるために、ローラ11,12,13の少なくともいずれかに与えるべき回転数の補正値を算出する。
【0115】
駆動部63は、入力された画像データIが印刷されるときに、搬送機構10を構成するローラ11,12,13の少なくともいずかの回転動作を制御する。このとき、駆動部63は、張力補正部62から出力される張力の補正値を参照する。そして、補正値に従って、ローラ11,12,13の回転数を調整する。これにより、各処理位置P1〜P4に、適切な大きさの張力が掛かった印刷用紙90が搬送され、ひいては印刷用紙90上の搬送方向の適切な箇所に、各色のインク滴が吐出される。したがって、本実施形態によっても、色合わせが適切に行われ、見当ずれの少ない高品質な印刷物を得ることができる。
【0116】
本実施形態の画像記録装置3においては、印刷用紙90の搬送方向の位置ずれ量等の算出結果に基づいて、搬送機構10のローラ11,12,13の動作を補正する。これにより、印刷用紙90における搬送方向の位置ずれ量等の算出結果を踏まえて、印刷用紙90の搬送速度や張力等を調整することができる。よって、より適切に印刷用紙90に画像の記録等の処理を施すことが可能となる。
【0117】
以上に説明したように、本実施形態の画像記録装置3においては、印検出部は、印刷用紙90のエッジ(縁)の幅方向の位置を断続的に信号として検出するエッジ検出部70である。また、この画像記録装置3は、エッジ検出部70で検出した信号から、印28に由来する信号よりも低周波の領域の信号を除去するフィルタリング処理部61を備える。これにより、印刷用紙90の蛇行や反りに由来する低周波の信号を除去して、印28に由来する信号を精度よく検出することができる。
【0118】
<4.変形例について>
以上、本発明に係る基材処理装置および基材処理方法のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0119】
上記の実施形態では、画像記録装置の制御部は、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、および搬送方向における張力の、全てを算出するものとしたが、これに限るものではなく、このうちの少なくとも1つを算出することとすればよい。
【0120】
上記の実施形態では、基材の搬送速度、搬送方向における位置ずれ量、および搬送方向における張力の算出結果を利用して、インクの吐出タイミングを調整する例と、搬送機構10のローラ11,12,13の回転数を調整する例と、を示した。しかしながら、これに限るものではなく、この算出結果を、他の制御に利用してもよい。
【0121】
上記の実施形態では、印付与部が基材の端部に付与する印は、周期的なパターンであるものとした。このような周期的なパターンは、例えば、所定角度だけ曲がった刃を回転させることにより、基材の幅方向の端部に形成してもよい。これにより、基材の端部に周期的なパターンを低コストで付与できる。しかしながら、必ずしも周期的なパターンでなくてもよく、例えばこれに代えて、ランダムなパターンを印として付与するものとしてもよい。
【0122】
印付与部で基材の幅方向の端部に付与される印は、エッジ91から外側にはみ出るようにしてもよい。また、印付与部で印を付与する方法には、公知の様々な方法を用い得る。具体例を挙げると、パンチングで孔または切り欠きを形成することとしてもよいし、あるいは平滑なスライドカッターで基材の幅方向の端部に傷を付けることとしてもよい。また、基材の端部の既知の場所に印を付与する場合、繰り返し印を付与することに代えて、1回限り印を付与するものとしてもよい。
【0123】
印検出部が搬送経路に沿って並ぶ数は、上記の実施形態に示したものに限られるものではない。例えば、印検出部を、2つまたは3つ、あるいは5つ以上搬送経路に沿って設けてもよい。
【0124】
上記の第1実施形態および第2実施形態では、印検出部は印を連続的に検出するものとし、第3実施形態では、印検出部は印を断続的に検出するものとしたが、これに限るものではない。すなわち、第1実施形態および第2実施形態のような例でも、印を断続的に検出することとしてもよい。また、第3実施形態のような例でも、印を連続的に検出することとしてもよい。
【0125】
上記の第1実施形態の印検出部30は、投光器301から照射された光がエッジ91によって乱反射されて、受光素子321で相対的に少ない量の光が検出されることを利用して、基材のエッジ91の幅方向の位置を検出するものとした。このエッジ91の幅方向の位置の情報を、基材の蛇行量を取得するためにも用いることとしてもよい。これによれば、別途に蛇行量取得センサを設ける必要がなくなる。
【0126】
基材の幅方向の端部の印は、印検出部よりも搬送経路の上流側で付与されるものであればよい。例えば、画像記録部20のすぐ上流側の搬送ローラ12よりもさらに上流側に、印付与部が設けられていてもよい。さらに言えば、基材の製造時の切断工程において、基材の幅方向の端部にカッターやパンチング等で印を付与することとしてもよい。別の言い方をすれば、材料から基材を切り出すときに、基材のエッジの所定の箇所に何等かの印を予め付与することとしてもよい。
【0127】
本発明における基材は、上記の実施形態で示したものに限るものではない。例えば基材を、金属箔としてもよい。
【0128】
搬送経路上における印検出位置Pa〜Pdが、処理位置P1〜P4と一致していてもよい。具体的には、記録ヘッド21〜24の下方に、印検出部31〜34がそれぞれ配置されるものとしてもよい。
【0129】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。