(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトNav1.7活性を阻害する単離されたプロトキシン−II変異体であって、配列番号443、445、449、455、470、488、496、506、511、517、519、520、521、540、561、563、585、589、592、596、599、602、612、613、614、615、624、644、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、681、682、683又は684のアミノ酸配列を含む、前記単離されたプロトキシン−II変異体。
N末端伸長及び/又はC末端伸長を有し、前記N末端伸長が、配列番号372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384若しくは385のアミノ酸配列を含み、及び/又は前記C末端伸長が、配列番号374、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396若しくは397のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のプロトキシン−II変異体。
痛みが、慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、癌による痛み、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、術後の痛み、熱痛、幻肢痛、又は炎症状態に付随する痛み、肢端紅痛症(PE)、発作性高度疼痛症(PEPD)、変形性関節症、リウマチ性関節炎、腰部椎間板切除術、膵炎、線維筋痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷又は多発性硬化症である、請求項17に記載の医薬組成物。
痛みが、慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、癌による痛み、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、術後の痛み、熱痛、幻肢痛、又は炎症状態に付随する痛み、肢端紅痛症(PE)、発作性高度疼痛症(PEPD)、変形性関節症、リウマチ性関節炎、腰部椎間板切除術、膵炎、線維筋痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷又は多発性硬化症である、請求項21に記載のプロトキシン−II変異体又はポリペプチド。
前記プロトキシン−II変異体又はポリペプチドが、関節、脊髄、手術創、傷害若しくは外傷部位、末梢神経線維、泌尿生殖器臓器、又は炎症組織に局所的に投与されるものである、請求項21に記載のプロトキシン−II変異体又はポリペプチド。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に引用される特許及び特許出願を含む(但しそれらに限定されない)すべての刊行物は、参照によりそれらの全体が記載されているのと同様に、本明細書に援用される。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において使用するところの単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈よりそうでない旨が明確に示されない限り、複数の対象物を含む。
【0024】
別途記載のない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。例示的な組成物及び方法を本明細書に記載するが、本明細書に記載されているものと同様又は同等のあらゆる組成及び方法を、本発明を実施又は試験するために使用することが可能である。
【0025】
用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって結合されてポリペプチドを形成する少なくとも2個のアミノ酸残基を含む分子を意味する。50個のアミノ酸未満の小分子ポリペプチドを「ペプチド」と言う場合がある。ポリペプチドは、「タンパク質」と呼ばれる場合もある。
【0026】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖−リン酸骨格を介した共有結合、又は他の同等の共有結合を介して連結されたヌクレオチド鎖を含む分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0027】
用語「相補配列」は、第1の単離されたポリヌクレオチド配列と逆平行であり、第1のポリヌクレオチド配列のヌクレオチドに対して相補的なヌクレオチドを含む第2の単離されたポリヌクレオチド配列を意味する。
【0028】
用語「ベクター」は、生物系内で複製することが可能である、又はそのようなシステム間を移動できる、天然に存在しないポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは、典型的には、目的タンパク質をコードするcDNAと、生物システム内でこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を容易にするように機能する、複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどの更なる要素を含む。そのような生物システムの例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターの複製を可能にする生物学的要素を利用して再構成された生物システムが挙げられる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0029】
用語「発現ベクター」は、生物系又は再構成された生物系において利用されて、発現ベクター内に存在するポリヌクレオチド配列がコードするポリペプチドの翻訳を指令できるベクターを意味する。
【0030】
用語「変異体」は、本明細書で用いられる場合、ポリペプチド又はポリヌクレオチドであって、配列番号1の野生型プロトキシン−IIポリペプチドとは異なるか、又はヌクレオチド又はアミノ酸の1つ又は複数の修飾(例えば、置換、挿入又は欠失)によって、配列番号107の配列を有する野生型プロトキシン−IIをコードするポリヌクレオチドとは異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0031】
明細書の全体に渡って、プロトキシン−II変異体内で置換された残基は、配列番号1の野生型プロトキシン−IIにおけるその位置に対応して番号付けされている。例えば、明細書における「Y1A」は、配列番号1の野生型プロトキシン−IIにおける位置1に対応する残基位置におけるチロシンとアラニンとの置換を指す。
【0032】
「相補的DNA」又は「cDNA」は、天然の成熟mRNA種において見出される配列要素の配置を、隣接するエクソンと共有する公知の合成ポリヌクレオチドを指し、ゲノムDNA内に存在する介在するイントロンは取り除かれている。開始剤メチオニンをコードするコドンは、cDNA内に存在してもしなくてもよい。cDNAは、例えば逆転写又は合成遺伝子アセンブリによって合成されてもよい。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「合成」又は「非天然の」は、天然に存在しないポリヌクレオチド又はポリペプチド分子を指す。
【0034】
「Nav1.7」(hNE又はPN1とも言う)又は「hNav1.7」は、本明細書で用いられる場合、GenBank受け入れ番号NP_002968.1及び配列番号79に示す配列を有する公知のヒトナトリウムチャネルタンパク質タイプ9サブユニットαを指す。
【0035】
用語「野生型プロトキシン−II」又は「野生型ProTx−II」は、本明細書で用いられる場合、タランチュラThrixopelma pruriens(ムクナ)毒素ペプチドであり、Middletonら、Biochemistry 41(50):14734〜47,2002)に記載されるアミノ酸配列ycqkwmwtcdserkccegmvcrlwckkklw−COOH(配列番号1)を有するもののことを指す。
【0036】
用語「組み換え型プロトキシン−II」又は「組み換え型ProTx−II」は、本明細書で用いられる場合、配列番号2に示すようなGPYCQKWMWTCDSERKCCEGMVCRLWCKKKLW−OHの配列を有するプロトキシン−II融合タンパク質の発現及び以後の切断から得られる組み換え型プロトキシン−IIを指す。組み換え型プロトキシン−IIは、野生型プロトキシン−IIと比較して、2つのアミノ酸N末端伸長(残基G及びP)を取り入れている。
【0037】
「ヒトNav1.7活性を遮断する」又は「ヒトNav1.7活性を阻害する」は、本明細書で用いられる場合、本発明のプロトキシン−II変異体が、ベラトリジン(3−ベラトロイルベラセビン)によって誘発される膜脱分極を、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いるFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイにおいて約1×10
−7M以下のIC
50値で低減する能力を指し、ここで、ベラトリジン誘発脱分極は、FRETシグナルの減少として測定され、その測定は、ヒトNav1.7を安定発現する細胞株において、DISBAC2(3)([ビス−(1,3−ジエチルチオバルビツール酸)トリメチンオキソノール])をアクセプターとして、またPTS18(トリナトリウム8−オクタデシルオキシピレン−1,3,6−トリスルホネート)をドナーとして用い、ドナーを390〜420nmで励起しFRETを515〜575nmで測定することにより行われる。ヒトNav1.7活性を遮断する本発明のプロトキシン−II変異体の能力はまた、QPatch電気生理学アッセイを用い、実施例3に記載のプロトコルに従い、単一又はいくつかのプロトキシン−II変異体濃度において測定してもよい。本発明のプロトキシン−II変異体は、実施例3に記載の分析プロトコルを用いてQPatchを用いて測定される、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のNav1.7電流を阻害するとき、ヒトNav1.7活性を遮断する。
【0038】
「FLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイ」は、本明細書で用いる場合、実施例3に記載するアッセイを指す。
【0039】
「QPatchアッセイ」又は「QPatch電気生理学アッセイ」の用語は、本明細書で用いる場合、実施例3に記載アッセイを指す。
【0040】
用語「実質的に同一である」は、本明細書で用いる場合、比較する2つのプロトキシン−II変異体アミノ酸配列が同一であるか又は「ごくわずかな相違」を有することを意味する。ごくわずかな相違とは、プロトキシン−II変異体アミノ酸配列において、ペプチド特性に悪影響を与えない1、2、3、4、5、6、又は7のアミノ酸の置換である。本明細書に開示されるプロトキシン−II変異体と実質的に同一であるアミノ酸配列は、本出願の範囲内である。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上とすることができる。同一性(%)は、例えばペアワイズアライメントによって、Vector NTI.9.0.0(Invitrogen,Carslbad、CA)のAlignXモジュールのデフォルト設定を用いて決定することができる。本発明のタンパク質配列を参照配列として用い、例えば、公共の又は特許情報のデータベースの検索を行い、関連配列を同定してもよい。このような検索を実行するために用いる例示的なプログラムは、XBLAST又はBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest,Westborough,MA)スイートであって、デフォルト設定を用いるものである。
【0041】
本明細書で用いられる天然アミノ酸の略号を表1aに示す。
【0043】
本発明によって、ヒトNav1.7活性を阻害する単離されたプロトキシン−II(ProTx−II)変異体ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドを使用する方法が提供される。本発明のポリペプチドは、Nav1.7活性化に起因する脱分極/電流を阻害するため、疼痛を伴う様々な症状、及び感覚ニューロン又は交感神経ニューロンの機能不全に伴う症状の治療に有用であり得る。
【0044】
本発明の変異体はNav1.7の強力な阻害剤である。本発明は、少なくとも部分的には、プロトキシン−II中のある残基置換が選択性、合成収率及び/又は同質性を高めることを、生成されたプロトキシン−II変異体の効能に悪影響を与えずに行うことを見出したことに基づいており、具体的にはW7及びM19、更に残基Y1及びS11、更に加えて残基E12、R22及び(残基の番号付けは配列番号1に従う)である。例えば、位置W7及びW30の置換によりプロトキシン−II変異体のフォールディングが促進され、収率が改善される。
【0045】
位置S11、E12、K14、E17、G18、L29及びW30の置換により、得られるプロトキシン−II変異体のNav1.7への選択性が改善される。
【0046】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の一実施形態は、単離されたプロトキシン−II変異体であり、このプロトキシン−II変異体は、約1×10
−7M以下、約1×10
−8M以下、約1×10
−9M以下、約1×10
−10M以下、約1×10
−11M以下、又は約1×10
−12M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、IC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定される。
【0047】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、単離されたプロトキシン−II変異体であり、このプロトキシン−II変異体は、約1×10
−7M以下、約1×10
−8M以下、約1×10
−9M以下、約1×10
−10M以下、約1×10
−11M以下、又は約1×10
−12M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、IC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定され、プロトキシン−II変異体は、W7Q及びW30Lからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、残基の番号付けは、配列番号1に従う。
【0048】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、ヒトNav1.7活性を阻害する単離されたプロトキシン−II変異体であり、このプロトキシン−II変異体は、W7Q及びW30Lからなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、残基の番号付けは、配列番号1に従う。
【0049】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、W7Q置換を有する。
【0050】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、W30L置換を有する。
【0051】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、W7Q及びW30L置換を有する。
【0052】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、実施例3に記載のプロトコルに従いQPatch分析を用いてNav1.7活性を測定したときに、Nav1.7活性を少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する。
【0053】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、残基の番号付けが配列番号1に従うときに、Y1、W7、S11、E12、K14、E17、G18、R22、L29及びW30の1つ又は2つ以上の残基位置で置換を有する。
【0054】
位置Y1における置換により、ヒトNav1.7に対する効能が改善される。
【0055】
位置W7における置換により、プロトキシン−II変異体のフォールディング及びタンパク質の収率が改善される。
【0056】
位置S11における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0057】
位置E12における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0058】
位置K14における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0059】
位置E17における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0060】
位置G18における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0061】
位置L29における置換により、ヒトNav1.7に対する選択性が改善される。
【0062】
位置W30における置換により、プロトキシン−II変異体のフォールディング及びタンパク質の収率及びNav1.7に対する選択性が改善される。
【0063】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列YCQKWMQTCDSERKCCEGMVCRLWCKKKLW−COOH(配列番号
424)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、残基Y1、S11、E12、K14、E17、G18、L29及び/又はW30は、表1で示される他の任意のアミノ酸又は非天然アミノ酸で置換され、N末端伸張又はC末端伸張を任意に有する。
【0064】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列YCQKWMQTCDSERKCCEGMVCRLWCKKKLL−COOH(配列番号
425)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、残基Y1、S11、E12、K14、E17、G18、M19、L29及び/又はW30は、表1で示される他の任意のアミノ酸又は非天然のアミノ酸で置換され、N末端伸張又はC末端伸張を任意に有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される本発明のプロトキシン−II変異体は、以下で列挙される番号付けされた実施形態を含み、非天然のアミノ酸を少なくとも1つ含む。
【0066】
非天然アミノ酸としては、アミノβ−アラニン(β−Ala)、及び3−アミノプロピオン酸(Dap)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4−アミノ酪酸などの他のω−アミノ酸;α−アミノイソ酪酸(Aib);ε−アミノヘキサン酸(Aha);δ−アミノ吉草酸(Ava);N−メチルグリシン又はサルコシン(MeGly);オルニチン(Om);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(t−BuA);t−ブチルグリシン(t−BuG);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);2−ナフチルアラニン(2−NaI);4−クロロフェニルアラニン(Phe(4−Cl));2−フルオロフェニルアラニン(Phe(2−F));3−フルオロフェニルアラニン(Phe(3−F));4−フルオロフェニルアラニン(Phe(4−F));ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);α−2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(MSO);N(ω)−メチル−L−アルギニン;N(ω),N(ω)−ジメチル−L−アルギニン(非対称);4−グアニジノ−L−フェニルアラニン;L−Lys(N−ε−(N−α−パルミトイル−L−γ−グルタミル);L−アスパラギル−4−アミノブタン;L−グルタミル−4−アミノブタン;ホモアルギニン(hArg);N−アセチルリジン(AcLys);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);2,4−ジアミノ酪酸(Dbu);p−アミノフェニルアラニン(Phe(pNH
2));N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys)及びホモセリン(hSer);4−ブロモフェニルアラニン(Phe(4−Br);5−ブロモトリプトファン(bromotryphophan)(Trp(5−Br));3−クロロチロシン(Tyr(3−Cl))又はβ−クロロアラニンが挙げられる。
【0067】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列
X
1X
2X
3CX
4X
5WX
6QX
7CX
8X
9X
10X
11X
12CCX
13X
14X
15X
16CX
17LWCX
18KKLX
19(配列番号432)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、G、P、A又は欠失であり;
X
2は、P、A、又は欠失であり;
X
3は、S、Q、A、R又はYであり;
X
4は、Q、R、K、A、S又はYであり;
X
5は、K、S、Q又はRであり;
X
6は、M又はFであり;
X
7は、T、S、R、K又はQであり;
X
8は、D、T又はアスパラギル−4−アミノブタンであり;
X
9は、S、A、R、I又はVであり;
X
10は、E、R、N、K、T、Q、Y又はグルタミル−4−アミノブタンであり;
X
11は、R又はKであり;
X
12は、K、Q、S、A又はFであり;
X
13は、E、Q、D、L、N又はグルタミル−4−アミノブタンであり;
X
14は、G、Q又はPであり;
X
15は、M又はFであり;
X
16は、V又はSであり;
X
17は、R、T又はN−ωメチル−L−アルギニンであり;並びに、
X
18は、K又はRであり;並びに、
X
19は、W又はLであり、
N末端伸張又はC末端伸張を任意に有する。
【0068】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列X
1X
2X
3CQKWMQTCDX
4X
5RX
6CCX
7X
8X
9VCRLWCKKKX
10X
11(配列番号737)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、G、P、A、又は欠失であり;
X
2は、P、A、又は欠失であり;
X
3は、S、Q、A、R又はYであり;
X
4は、S、A、R、I又はVであり;
X
5は、E、R、N、K、T、Q、Y又はグルタミル−4−アミノブタンであり;
X
6は、K、Q、S、A又はFであり;
X
7は、E、Q、D、L、N又はグルタミル−4−アミノブタンであり;
X
8は、G、Q又はPであり;
X
9は、M又はFであり;
X
10は、L又はVであり;並びに、
X
11は、W又はLである。
【0069】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、プロトキシン−II変異体は、約1×10
−7M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、IC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定される。
【0070】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、実施例3に記載のプロトコルに従いQPatch分析を用いてNav1.7活性を測定したときに、Nav1.7活性を少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する。
【0071】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、N末端伸長は、配列番号372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384又は385のアミノ酸配列を含む。
【0072】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、C末端伸長は、配列番号374、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396又は397のアミノ酸配列を含む。
【0073】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、N末端及び/又はC末端伸長は、プロトキシン−II変異体にリンカーを介して結合される。
【0074】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号383、392、398、399、400、401又は402のアミノ酸配列を含む。
【0075】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、N末端伸長は、配列番号372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384又は385のアミノ酸配列からなる。
【0076】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、C末端伸長は、配列番号374、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396又は397のアミノ酸配列からなる。
【0077】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号383、392、398、399、400、401又は402のアミノ酸配列からなる。
【0078】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列
X
1X
2X
3CX
4X
5WX
6QX
7CX
8X
9X
10X
11X
12CCX
13X
14FX
15CX
16LWCX
17KKLW(配列番号403)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、G、P、A又は欠失であり;
X
2は、P、A又は欠失であり;
X
3は、S、Q、A、R又はYであり;
X
4は、Q、R、K、A又はSであり;
X
5は、K、S、Q又はRであり;
X
6は、M又はFであり;
X
7は、T、S、R、K又はQであり;
X
8は、D又はTであり、
X
9は、S、A又はRであり、
X
10は、E、R、N、K、T又はQであり、
X
11は、R又はKであり;
X
12は、K、Q、S又はAであり;
X
13は、E、Q又はDであり;
X
14は、G又はQであり;
X
15は、V又はSであり;
X
16は、K又はRであり;並びに、
X
17は、K又はRであり;
N末端伸長又はC末端伸長を任意に有し、
ポリペプチドは、約1×10
−7M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、このIC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定される。
【0079】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、強力なNav1.7阻害剤である。組み換え型プロトキシン−II(配列番号2)は、ベラトリジン誘発脱分極阻害アッセイにおいて、ヒトNav1.7に対する約4×10
−9MのIC
50値を有し、当該アッセイは、実施例3に記載の実験手順を用いたFLIPR(登録商標)Tetra装置(Molecular Devices社)を用いて、Nav1.7を安定発現する細胞中にFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)の減少を測定する。上述のアッセイ及び実験3におけるIC
50値が約30×10
−9M以下のとき、すなわち組み換え型プロトキシン−IIの10倍以内のときに、プロトキシン−II変異体は「強力な」Nav1.7阻害剤であるといえる。明確にするために、IC
50が30×10
−9Mということは、IC
50が3.0×10
−8Mということと同じである。
【0080】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体ポリペプチドは、自動化されたペプチドシンセサイザーでの化学合成(例えば固相ペプチド合成)により、作製されしてもよい。あるいは、無細胞発現系、例えば網状赤血球溶解物ベースの発現系を用い、又は組み換え発現系を用いて、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから本発明のポリペプチドを得てもよい。当業者であれば、本発明のポリペプチドを得るための他の技術を理解するであろう。例示的な方法では、本発明のプロトキシン−II変異体は、プロテアーゼ切断可能リンカー、例えばHRV3Cプロテアーゼに対する認識配列(ヒトライノウイルスからの組み換え型143Cプロテアーゼ)LEVLFQGP(配列番号82)(HRV3Cリンカー)に、グリシン−リッチリンカー、例えば(GGGGS)
4(配列番号80)又は(GGGGS)
6(配列番号81)を結合させたヒト血清アルブミン(HSA)融合タンパク質としてそれを発現させ、発現された融合タンパク質をHRV3Cプロテアーゼを用いて切断して組み換え型プロトキシン−II変異体ペプチドを放出させることによって生成する。ヘキサヒスチジン(配列番号108)又は他のタグを用いて、公知の方法を用いた精製を容易にしてもよい。
【0081】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、本明細書に記載の方法を用いて精製してもよい。例示的な方法では、HSA融合タンパク質として発現され、HRV3Cプロテアーゼによって切断された本発明のプロトキシン−II変異体を、本明細書に記載する固相抽出(SPE)を用いて精製してもよい。
【0082】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるプロトキシン−II変異体の生成は、N末端及び/又はC末端伸長を任意に有し、プロトキシン−II変異体融合タンパク質は、典型的には核酸レベルにおいて実現される。ポリヌクレオチドの合成は、縮重したオリゴヌクレオチドを用いて所望の変異体を生成する米国特許第6,521,427号及び同第6,670,127号に記載された方法による化学的遺伝子合成を用いてもよいし、又は標準的なPCRクローニング及び変異誘発によってもよい。標準的なクローニング技術によって変異体のライブラリーを生成し、プロトキシン−II変異体をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターにクローニングしてもよい。
【0083】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、配列番号1の野生型プロトキシン−IIと比較したときに、更なるN−及び/又はC末端アミノ酸を取り入れてもよく、例えばクローニング及び/又は発現スキームによって得られる。例えば、HSA−リンカー−HRV3C切断可能なペプチド−プロトキシン−II変異体融合タンパク質として変異体の発現後にHSAから切断すると、更なる2つの残基(例えばG及びP)が各プロトキシン−II変異体のN末端に取り入れられる場合がある。
【0084】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、本明細書に記載の方法を用いてそのヒトNav1.7阻害能を試験する。例示的なアッセイの1つに、Nav1.7を安定的に発現する細胞中にFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)の低下を測定するベラトリジン誘導脱分極阻害アッセイがある。別の例示的なアッセイでは、公知のパッチクランプ技術を用い、また本明細書に記載したように、電気生理学的な記録法を用いてNav1.7を介した電流の変化を測定する。
【0085】
本発明の別の実施形態は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225,226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、35、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368 369、370、371、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735又は736のアミノ酸配列を含み以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される単離されたプロトキシン−II変異体である。
【0086】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、約1×10
−7M以下、約1×10
−8M、約1×10
−9以下、約1×10
−10M以下、約1×10
−11M以下、又は約1×10
−12M以下のIC
50値でヒトNav1.7を阻害し得る。IC
50値の範囲を示す例示的な変異体は、配列番号30、40、44、52、56、56、59、65、78、109、110、111、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、177、178、179、180、182、183、184、185、186、189、190、193、195、197、199、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、224、226、227、231、232、243、244、245、247、249、252、255、258、261、263、264、265、266、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、332、334、335、336、337、339、340、341、342、346、351、358、359、364、366、367、368、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430又は431に示されるアミノ酸配列を有する変異体である。
【0087】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、このプロトキシン−II変異体は、実施例3に記載のプロトコルに従いQPatch分析を用いてNav1.7活性を測定したときに、Nav1.7活性を少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%阻害する。QPatchアッセイでNav1.7活性を少なくとも25%阻害する例示的な変異体は、配列番号109、133、408、409、410、412、419、420、421、422、423、423、424、425、426、427、427、428、429、430、431、431、434、436、437、438、439、440、441、442、444、446、447、448、450、452、453、455、456、459、460、461、462、463、464、465、466、468、469、470、471、473、474、476、477、478、479、480、482、483、485、486、487、490、491、492、494、495、496、497、498、499、500、502、504、505、507、508、510、511、512、514、516、517、518、519、521、522、523、524、526、529、531、532、533、537、546、554、557、559、560、561、562、563、566、571、579、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、621、622、632、633、634、635、636、637、638、639、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684及び685に示されるアミノ酸配列を有する変異体である。
【0088】
表2、表3、表14、表18及び表2は、選択されたプロトキシン−II変異体の配列を示す。
【0102】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単離されたプロトキシン−II変異体は、約3×10
−8M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害する。
【0103】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単離されたプロトキシン−II変異体は、約3×10
−8M〜1×10
−9のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害する。
【0104】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、アミノ酸配列GPQCX
1X
2WX
3QX
4CX
5X
6X
7X
8X
9CCX
10X
11X
12X
13CX
14LWCX
15KKLL(配列番号433)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、Q、R、K、A又はSであり;
X
2は、K、S、Q又はRであり;
X
3は、M又はFであり;
X
4は、T、S、R、K又はQであり;
X
5は、D又はTであり、
X
6は、S、A又はRであり、
X
7は、E、R、N、K、T又はQであり、
X
8は、R又はKであり;
X
9は、K、Q、S又はAであり;
X
10は、E、Q又はDであり;
X
11は、G又はQであり;
X
12は、F又はMであり、
X
13は、V又はSであり;
X
14はR又はTであり;並びに
X
15はK又はRである。
【0105】
約30×10
−9M以下のIC50値でヒトNav1.7活性を阻害する例示的なプロトキシン−II変異体は、配列番号56、78、111、114、117、118、119、122、123、129、130、131、132、133、134、135、136、138、139、140、141、142、145、146、147、149、150、151、152、153、154、156、158、159、165、172、173、175、177、178、183、184、185、186、189、190、193、197、199、207、210、211、216、217、224、266、273、282、335、408、409、410、422、424、425、426、427及び428アミノ酸配列を含む変異体である。
【0106】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単離されたプロトキシン−II変異体は、ヒトNav1.7を選択的に阻害する。本発明のプロトキシン−II変異体は、組み換え型プロトキシン−II(配列番号2)と比較したときに、Nav1.7に対してより選択性である場合がある。QPatch電気生理学アッセイにおいて、組み換え型プロトキシン−IIは、Nav1.7に対するIC
50は約2.2×10
−9Mであり、Nav1.6に対するIC
50は約62×10
−9Mであり、したがってNav1.6に対するIC
50対Nav1.7に対するIC
50の比は、約28倍である。本明細書で用いられるとき、「選択性」又は「選択的な」又は「より選択的な」又は「選択的に遮断する」又は「選択的に阻害する」は、プロトキシン−II変異体について、Nav1.6に対するIC
50対Nav1.7に対するIC
50の比(IC
50(Nav1.6)/IC
50(Nav1.7))が約30以上であるということを指す。Nav1.6に対するIC
50のアッセイは、QPatch電気生理学アッセイにおいて、Nav1.6を安定発現する細胞株を用いて、Nav1.7に関して記載したのと同様の方法を用いて行ってもよい。
【0107】
選択性を向上させるために変異誘発され得るプロトキシン−II内の残基位置(配列番号1に従う残基の付け)としては、残基7、11、12、14、17、18及び19、並びに任意に残基1、20、22及び26が挙げられる。選択性を向上させるための例示的な置換は、Y1Q、W7Q、S11R、S11A、E12T、M19F、V20S、R22T、及びK26Rである。選択性が向上した例示的なプロトキシン−II変異体は、配列番号56、59、65、78、111、114、117、118、119、121、122、123、129、130、133、150、190、217、281、324、325又は326の変異体である。
【0108】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列GPX
1CQKWMQX
2CDX
3X
4RKCCX
5GFX
6CX
7LWCX
8KKLW(配列番号405)を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、Y、Q、A、S又はRであり、
X
2は、T又はSであり、
X
3は、S、R又はAであり、
X
4は、E、T又はNであり、
X
5は、E又はQであり、
X
6は、V又はSであり;
X
7は、R又はTであり;並びに
X
8は、K又はRであり;
プロトキシン−II変異体は、約3×10
−8M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、ヒトNav1.7を選択的に阻害する。
【0109】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単離されたプロトキシン−II変異体は、配列GPQCQKWMQX
1CDX
2X
3RKCCX
4GFX
5CX
6LWCX
8KKLW(配列番号406)を含み、
X
1は、T又はSであり、
X
2は、S、R又はAであり、
X
3は、E、T又はNであり、
X
4は、E又はQであり、
X
5は、V又はSであり;
X
6は、R又はTであり;並びに
X
7は、K又はRである。
【0110】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列番号422(GPQCQKWMQTCDRERKCCEGFVCTLWCRKKLW−COOH)のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一性のアミノ酸配列を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
アミノ酸配列は、残基の番号付けが配列番号1に従うときに、位置7におけるQ、及び位置30におけるLを有し、
ポリペプチドはヒトNav1.7の活性を阻害する。
【0111】
置換W7Q及びW30Lを有するプロトキシン−II変異体は、野生型プロトキシン−IIと比較したとき、フォールディング、収率及び選択性を向上させた。
【0112】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列番号78のアミノ酸配列(GPQCQKWMQTCDRERKCCEGFVCTLWCRKKLW−COOH)と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一性のアミノ酸配列を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
アミノ酸配列は、残基の番号付けが配列番号1に従うときに、位置1におけるQ、位置7におけるQ、及び位置19におけるFを有し、
ポリペプチドは、約30×10
−9M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、このIC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定される。
ポリペプチドはNav1.7を選択的に阻害する。
【0113】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、単離されたプロトキシン−II変異体は、C末端にカルボン酸、アミド、メチルアミド又はブチルアミド基を有する。C末端の修飾は、ルーチン的な合成法により実施できる。
【0114】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、配列番号3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225,226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、35、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368 369、370、371、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539、540、541、542、543、544、545、546、547、548、549、550、551、552、553、554、555、556、557、558、559、560、561、562、563、564、565、566、567、568、569、570、571、572、573、574、575、576、577、578、579、580、581、582、583、584、585、586、587、588、589、590、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、622、623、624、625、626、627、628、629、630、631、632、633、634、635、636、637、638、639、640、641、642、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、653、654、655、656、657、658、659、660、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、679、680、681、682、683、684、685、686、687、688、689、690、691、692、693、694、695、696、697、698、699、700、701、702、703、704、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、729、730、731、732、733、734、735又は736のプロトキシン−II変異体を含む単離された融合タンパク質である。このような第2のポリペプチドは、公知のリーダー若しくは分泌シグナル配列、又は合成配列であってもよく、例えば、クローニングステップ、又はタグ、例えばヘキサヒスチジンタグ(配列番号108)由来のものでもよい。このような第2のポリペプチドは、半減期延長部分であってもよい。一実施形態では、単離された融合タンパク質には、半減期延長部分に結合された本発明のプロトキシン−II変異体が含まれる。
【0115】
使用できる例示的な半減期延長部分としては、公知のヒト血清アルブミン、トランスチレチン(TTR)、サイロキシン結合グロブリン(TGB)、アルブミン結合ドメイン、又はFc若しくはそのフラグメントが挙げられる。生物学的に好適なポリマー又はコポリマーを用いてもよく、例えばエチレングリコール又はポリエチレングリコール(PEG)分子、例えばPEG5000又はPEG20000、デキストラン、ポリリシン、異なる鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル(例えばラウレート、ミリステート、ステアレート、アラキデート、ベヘネート、オレエート、アラキドネート、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサンニ酸、など)、オクタン又は炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ−又はポリサッカリド)である。体内分布を改善できる例示的な部分としては、ポリアミノ化(プトレシン、スペルミン又はスペルミジン等)、ハロゲン化(塩素、臭素、フッ素、ヨウ素)及びグリコシル化が挙げられる。これらの部分は、プロトキシン−II変異体ポリペプチドとの直接の融合であってもよく、また標準的なクローニング及び発現技術によって生成してもよい。あるいは、公知の化学的結合法を用いて、当該部分を本発明の組み換えにより生成されたプロトキシン−II変異体に結合させてもよい。あるいは、当該部分は、固相ペプチド合成において非コードアミノ酸として組み込まれてもよい。
【0116】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態では、本発明の融合タンパク質の半減期延長部分は、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンの変異体、アルブミン結合ドメイン(ABD)又はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0117】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される別の実施形態では、半減期延長部分はプロトキシン−II変異体にリンカーを介して結合される。好適なリンカーはよく知られており、配列番号80又は81に示される配列を有するリンカーを含む。
【0118】
本発明のプロトキシン−II変異体を取り入れている例示的な融合タンパク質は、配列番号83、85、87、89、91、93、95、97、99、101又は103のポリペプチド配列を有するものである。
【0119】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される、更なる部分を取り入れた本発明のプロトキシン−II変異体は、いくつかの公知のアッセイによって官能性に関して比較してもよい。例えば、PEGに結合されたプロトキシン−II変異体の薬物動態学特性を、公知のインビボモデルで評価してもよい。
【0120】
更なるプロトキシン−II変異体及びプロトキシン−II変異体融合タンパク質は、本発明の範囲内である。本発明のプロトキシン−II変異体に対する更なる置換は、得られる変異体又は融合タンパク質が、親ペプチドと比較したときに同様の特徴を保持する限りにおいて実施できる。例示的な修飾は、例えば保存的置換がであり、それにより親分子と同様の特徴を有するプロトキシン−II変異体が得られる。保存的置換とは、それらの側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で生じる置換である。遺伝子コードされるアミノ酸は、以下の4つのファミリーに分類できる:(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン);(3)非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン);及び(4)非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは、時に、芳香族アミノ酸として共に分類される。あるいは、アミノ酸のレパートリーを、(1)酸性(アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩);(2)塩基性(リシン、アルギニンヒスチジン)、(3)脂肪族(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン)、セリン及びトレオニンは脂肪族ヒドロキシルとして別個に任意にグループ化される);(4)芳香族(フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン);(5)アミド(アスパラギン、グルタミン);並びに(6)イオウ含有(システイン及びメチオニン)(Stryer(ed.),Biochemistry,2nd ed,WH Freeman and Co.,1981)。プロトキシン−II変異体の非保存的置換(異なるクラスのアミノ酸間でのアミノ酸残基の置換を伴う)を行い、プロトキシン−II変異体及びプロトキシン−II変異体融合タンパク質の特性を向上させることができる。ポリペプチド又はその断片のアミノ酸配列の変化が機能相同体をもたらすか否かは、本明細書に記載のアッセイを用いて、修飾ポリペプチド又は断片が、非修飾ポリペプチド又は断片と同様の様式で反応を生じる能力を評価することによって、容易に決定できる。ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質(複数の交換が起こる)を同様に容易に試験できる。
【0121】
本発明の別の実施形態は、配列番号1の位置W7及び/又はW30に対応している位置で少なくとも1つの置換を有する、単離されたファミリー3のクモ毒システインノットペプチドである。ファミリー3のクモ毒には、保存されたC末端領域を有する14の毒素が含まれ、プロトキシン−IIに加えて、κ−TRTX−Gr2b、κ−TRTX−Gr2c、κ−TRTX−Ps1a、κ−TRTX−Ps1b、β−TRTX−Gr1b、κ−TRTX−Cj2a、κ−TRTX−Cj2b、κ−TRTX−Ec2c、β−TRTX−Gr1a、κ−TRTX−Ec2b、κ−TRTX−Ec2a及びβ/κ−TRTX−Cj2a、並びに
図14に示されるものが挙げられる。位置W7及び/又はW30における置換は、ファミリー3のクモ毒システインノットペプチドのフォールディングを改善することが期待される。
【0122】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、本発明のプロトキシン−II変異体をコードするポリヌクレオチドを含む単離された合成ポリヌクレオチドである。
【0123】
ある例示的な合成ポリヌクレオチドを本明細書に開示したが、遺伝子コードの縮重又は所定の発現系におけるコドンの選択を考慮すると、本発明のプロトキシン−II変異体及びプロトキシン−II変異体融合タンパク質をコードする他の合成ポリヌクレオチドも、本発明の範囲内である。例示的な合成ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号84、86、88、90、92、94、96、98、100、102及び104に示されるポリヌクレオチド配列(本発明のプロトキシン−II変異体融合タンパク質をコードする)である。当業者であれば、プロトキシン−II変異体自体をコードする融合タンパク質におけるポリヌクレオチドセグメントを容易に特定できる。本発明のプロトキシン−II変異体又は融合タンパク質をコード化する合成ポリヌクレオチド配列は、目的とする宿主細胞におけるヌクレオチド配列の発現を可能にする1つ又は複数の調節エレメント(例えばプロモーター及びエンハンサ)に操作可能に連結させてもよい。合成ポリヌクレオチドはcDNAであってもよい。
【0124】
本発明のポリヌクレオチドは、自動化されたポリヌクレオチドシンセサイザーでの化学合成、例えば固相ポリヌクレオチド合成によって作製され得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、PCRに基づく複製、ベクターに基づく複製、又は制限酵素に基づくDNA操作技術などの他の技術によっても作製され得る。既知の配列のポリヌクレオチドを生成又は取得するための技術が公知である。
【0125】
本発明のポリヌクレオチドはまた、少なくとも1つの非コード配列、例えば転写だが非翻訳配列、終結シグナル、リボソーム結合部位、mRNA安定化配列、イントロン及びポリアデニル化シグナルを含み得る。また、ポリヌクレオチド配列は、更なるアミノ酸をコードする更なる配列を含み得る。これらの更なるポリヌクレオチド配列は、例えば、マーカー又は公知のタグ配列、例えばヘキサヒスチジン(配列番号108)又はHAタグ(融合ポリペプチドの精製を容易にする)をコードしてもよい。
【0126】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンベースのベクター、又は任意の手段によって所与の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した任意の他のベクターであってよい。例えば、本発明のプロトキシン−II変異体又はプロトキシン−II変異体融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクター内に挿入して、発現ベクター内の制御配列(例えば、シグナル配列、プロモーター(例えば、天然の状態で結合するか又は異種のプロモーター)、エンハンサ要素、及び転写終結配列)に操作可能に連結させ、効率的な発現を実現してもよく、また本発明のプロトキシン−II変異体又はプロトキシン−II変異体融合タンパク質を発現するように選抜された宿主細胞と適合するように選択する。ベクターが適切な宿主内に組み込まれると、組み込まれたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の高レベル発現に適する条件下に宿主を維持する。
【0127】
好適な発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの不可欠な部分として、宿主生物において複製可能である。通常、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にするため、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、又はネオマイシン耐性などの選択マーカーを含む。
【0128】
好適なプロモーター及びエンハンサ因子は、当該技術分野において既知である。細菌細胞における発現の場合、好適なプロモーターとしては、限定されないが、lacl、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP及びtrcプロモーターが挙げられる。真核細胞における発現の場合、好適なプロモーターとしては、限定されないが、免疫グロブリン軽鎖及び/又は重鎖遺伝子プロモーター及びエンハンサ要素;サイトメガロウイルス最初期プロモーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、レトロウイルス由来の長鎖末端反復配列に存在するプロモーター、マウスメタロチオネイン−Iプロモーター、及び様々な当該技術分野に既知の組織特異的プロモーターが挙げられる。酵母細胞における発現の場合、好適なプロモーターは、構成的プロモーター(例えばADH1 PGK1、ENO又はPYK1プロモーターなど)、又は制御可能プロモーター(例えばGAL1又はGAL10プロモーター)である。適切なベクター及びプロモーターの選択は、当業者の技量の範囲内である。
【0129】
数多くの好適なベクター及びプロモーターが当業者に既知であり、多くが、組み換え構築物を生成するために市販されている。例えば以下のベクターを提供する。細菌系:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene,La Jolla,Calif.,USA);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、及びpRIT5(Pharmacia,Uppsala,Sweden)。真核細胞系:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Pharmacia)。
【0130】
プロトキシン−II変異体又はプロトキシン−II変異体融合タンパク質の発現用の例示的なベクターは、アンピシリン耐性選択マーカー、CMVプロモーター、CMVイントロン、シグナルペプチド、ネオマイシン耐性、複製のf1起点、SV40ポリアデニル化シグナル、及び本発明のプロトキシン−II変異体又はプロトキシン−II変異体融合タンパク質をコードするcDNAを有するベクターである。
【0131】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。用語「宿主細胞」は、ベクターが導入された細胞を指す。当然のことながら、用語宿主細胞は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代をも指すものとする。変異又は環境による影響のいずれかにより、後の世代において特定の修飾が生じる可能性があるため、そのような後代は親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内には依然として含まれる。そのような宿主細胞は、真核細胞、原核細胞、植物細胞、又は古細菌(archeal)細胞であってよい。
【0132】
大腸菌、バチルス・ズブチリスなどの桿菌、並びにサルモネラ菌、セラチア属及び種々のシュードモナス種などの他の腸内細菌が、原核宿主細胞の例である。酵母などの他の微生物も発現に有用である。好適な酵母宿主細胞の例は、サッカロミセス(例えば、S.セレビジアエ)及びピキアである。例示的な真核細胞は、哺乳動物、昆虫、鳥類、又は他の動物由来のものであってもよい。哺乳類真核細胞としては、不死化細胞株(例えばハイブリドーマ)又は骨髄腫細胞株(例えばSP2/0(American Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VA、CRL−1581)、NS0(European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Salisbury,Wiltshire,UK、ECACC No.85110503)、FO(ATCC CRL−1646)及びAg653(ATCCCRL−1580)マウス細胞株)が挙げられる。例示的なヒト骨髄腫細胞株は、U266(ATTC CRL−TIB−196)である。他の有用な細胞系としては、CHO−K1SV(Lonza Biologics(Walkersville,MD))、CHO−K1(ATCC CRL−61)、又はDG44などの、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞に由来するものが挙げられる。
【0133】
ポリヌクレオチド(例えばベクター)を宿主細胞に導入することは、当業者に公知の方法によって行うことができる。例示的な方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランを介したトランスフェクション、顕微注入法、カチオン性脂質を介したトランスフェクション及びエレクトロポレーション法である。
【0134】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の別の実施形態は、本発明の宿主細胞を準備する工程と、少なくとも1つの本発明のプロトキシン−II変異体の発現に十分な条件下で宿主細胞を培養する工程とを含む、本発明のプロトキシン−II変異体の製造方法である。
【0135】
宿主細胞は、所定のタイプの宿主細胞を維持又は増殖させるのに適し、かつポリペプチドを発現させるのに十分な任意の条件下で培養することができる。ポリペプチドの発現にとって十分な培養条件、培地、及び関連する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、多くの哺乳動物の細胞型を、適切に緩衝化したDMEM培地を使用して37℃で好気的に培養できる一方、細菌、酵母及び他の細胞型は、LB培地中、適切な雰囲気条件下で37℃で培養することができる。
【0136】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明の方法において、プロトキシン−II変異体の発現は、種々の公知の方法を用いて確認することができる。例えば、ポリペプチドの発現は、検出試薬を用いて(例えばSDS−PAGE又はHPLCを用いて)確認することができる。
【0137】
本発明の別の態様は、生体組織におけるNav1.7の活性を調節する方法であり、この方法は、Nav1.7を発現する生体組織を、Nav1.7調節量の本発明のプロトキシン−II変異体と接触させることを含む。
【0138】
治療方法
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、痛みの症状又は感覚ニューロン機能障害若しくは交感神経ニューロン機能障害の他の疾患の治療、低減、又は緩和が望ましい任意の療法において用いてもよい。
【0139】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体を用いて治療される痛みは、任意のタイプの痛み、例えば慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、炎症状態に付随する痛み、術後の痛み、熱痛、又は疾患及び変性に付随する痛みであってもよい。
【0140】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体により治療される痛みは、Nav1.7を介した痛みであってもよい。
【0141】
本明細書のNav1.7を介した痛みは、Nav1.7チャネル活性の増加に少なくとも一部起因する痛みを指す。
【0142】
本発明の方法を用いて、任意の分類に属する動物被験体を治療することができる。このような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。
【0143】
痛み及び/又はNav1.7を介した痛みは、例えば末梢神経障害、中枢神経障害、神経圧迫又は絞扼性神経障害、例えば手根管症候群、足根管症候群、尺骨神経圧迫、圧迫性神経根症、腰部脊柱管狭窄症、坐骨神経圧迫、脊髄根圧迫、肋間神経痛、圧迫性神経根症及び神経根下背部痛、脊髄根損傷、神経炎、自己免疫疾患、一般的炎症、慢性炎症性疾患、関節炎、リウマチ性疾患、狼瘡、変形性関節症、汎胃腸障害、大腸炎、胃潰瘍形成、十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、下痢に付随する痛み、炎症性眼疾患、炎症性又は不安定膀胱疾患、乾癬、炎症性要素を伴う皮膚疾患、日焼け、心臓炎、皮膚炎、筋炎、神経炎、膠原血管病、炎症性痛覚及び付随する痛覚過敏及び異痛症、神経障害性疼痛及び付随する痛覚過敏及び異痛症、多発性硬化症、脱髄疾患、糖尿病、糖尿病神経障害性疼痛、灼熱痛、切断又は膿瘍に由来する痛み、幻肢痛、骨折痛、骨損傷、直接的外傷、HIV感染、後天性免疫不全症候群(「AIDS」)、天然痘感染、ヘルペス感染、毒素又は他の異質粒子又は分子に対する暴露、浸潤癌、癌、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、火傷、先天性欠損症、歯痛、痛風の痛み、線維筋痛、脳炎、慢性アルコール中毒、甲状腺機能低下症、尿毒症及びビタミン欠乏、三叉神経痛、脳卒中、視床症候群、一般的頭痛、片頭痛、群発頭痛、緊張性頭痛、混合血管症候群及び非血管症候群、交感神経依存性疼痛、求心路遮断症候群、ぜんそく、上皮組織損傷又は機能障害、呼吸時の内臓運動能の障害、泌尿生殖器、胃腸又は血管領域、創傷、火傷、アレルギー性皮膚反応、掻痒症、血管運動神経性又はアレルギー性鼻炎、又は気管支疾患、月経困難症、労働及び送達中の痛み、消化不良、胃食道逆流、膵炎、及び臓器痛などの1つ又は複数の原因に由来し得る。
【0144】
本発明のプロトキシン−II変異体によって緩和されう得る、他の感覚ニューロン機能障害又は交感神経ニューロン機能障害による疾患には、痒み、咳、及びぜんそくが含まれる。マウスでは、SCN9A遺伝子の全体的欠失(global deletion)が生じると、ヒスタミン誘発性そう痒に対する完全無感覚に至る(Gingrasら、American Pain Society Meeting Abstract 2013及び米国特許出願公開第2012/0185956号)。この知見が示唆することは、例えば皮膚若しくは炎症性疾患;又は炎症性疾患(例えば腎臓若しくは肝胆汁性疾患)、免疫学的疾患、薬物反応及び未知/特発の症状(例えば、皮膚炎、乾癬、湿疹、昆虫刺症若しくは刺傷)などの種々の原因によって生じ得る痒みの治療において、ペプチドNav1.7遮断薬が有用となり得ることである。Nav1.7は、気道を刺激する感覚神経でも発現され(Muroiら、J Physiol.2011 Dec 1;589(Pt23):5663〜76;Muroiら、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.2013 Apr 10)このことは、ペプチドNav1.7遮断薬が、咳(例えば急性又は慢性咳、あるいは胃食道逆流疾患からの炎症によって生じる咳)、及び気道の炎症性疾患(例えばぜんそく及びアレルギー関連の免疫応答、気管支けいれん、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、気腫、及びしゃっくり(しゃっくり(hiccoughs)、しゃっくり(singultus)))の治療において有用であることを示唆している。shRNAを用いてモルモットの節状神経節内のNav1.7をインビボでサイレンシングすることによって、機械的プロービングによって誘発される咳反射がほぼ停止した(Muroiら、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.2013年4月10日)。
【0145】
本発明の一態様は、対象における痒み、咳、又はぜんそくを緩和又は治療する方法であって、以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される治療的有効量の本発明のプロトキシン−II変異体を、それを必要とする対象に、痒み、咳、又はぜんそくを緩和するのに十分な時間投与することによる、方法である。
【0146】
本発明の別の態様は、対象におけるNav1.7を介した痒み、Nav1.7を介した咳、又はNav1.7を介したぜんそくを緩和又は治療する方法であって、以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される治療的有効量の本発明のプロトキシン−II変異体を、それを必要とする対象に、痒み、咳、又はぜんそくを緩和するのに十分な時間投与することによる、方法である。
【0147】
本明細書で用いられる場合、Nav1.7を介した痒みとは、Nav1.7チャネル活性の増加に少なくとも部分的に由来する痒みを指す。
【0148】
本明細書で用いられる場合、Nav1.7を介した咳とは、Nav1.7チャネル活性の増加に少なくとも部分的に由来する咳を指す。
【0149】
本明細書で用いられる場合、Nav1.7を介したぜんそくとは、Nav1.7チャネル活性の増加に少なくとも部分的に由来するぜんそくを指す。
【0150】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、本明細書で説明した動物モデル、及び神経障害性疼痛のラット脊髄神経結紮(SNL)モデル、カラギーナン誘発異痛症モデル、Freundの完全アジュバント(CFA)誘発異痛症モデル、熱傷モデル、ホルマリンモデル及びBennettモデルなどのモデル、並びに米国特許第2011/0124711号及び米国特許第7,998,980号に記載された他のモデルを用いて、痛み及び/又はNav1.7を介した痛みの低減又は緩和効果を試験してもよい。カラギーナン誘発異痛症及びCFA誘発異痛症は、炎症性疼痛のモデルである。ベネット(Bennett)モデルは、術後痛、複合性局所疼痛症候群、及び反射性交感神経性ジストロフィーを含む慢性疼痛の動物モデルを提供する。
【0151】
前述の動物モデルのいずれかを用いて、痛み及び/又はNAv1.7を介した痛みの治療における本発明のプロトキシン−II変異体阻害剤の有効性を評価してもよい。本発明のプロトキシン−II変異体の有効性を、無治療又はプラシーボ対照のものと比較してもよい。追加的に又は代替的に、有効性を、1つ又は複数の既知の鎮痛薬剤との比較により評価してもよい。
【0152】
本発明は、Nav1.7を介した痛みを、以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本発明のプロトキシン−II変異体を用いて治療する方法を提供するものである。文献における開示及び示唆とは異なり、本発明者らによる係属中の出願(米国特許出願第61/781,276号)において、Nav1.7遮断ペプチドの投与が、種々の動物モデルの痛みにおける痛みの治療及び/又は緩和に効果的であることが見出されている。過剰発現されたNav1.7を用いたインビトロ細胞培養モデル、又は血液神経関門がデシーシング又は高張食塩水の注射により破壊されている単離されたニューロンにおいて、Nav1.7のペプチド阻害剤が有効であり、及び/又はNav1.7に対して選択的であることが示されているが、痛みのインビボ動物モデルでは効果がないことが従来示されており、効果がない理由として、ペプチドが血液神経関門を通過できないことが報告されている。疼痛の動物モデルにおける、又は単離された神経におけるNav1.7遮断性ペプチドの有効性の欠如については、いくつかの文献に記載されている。例えば、Hackelら、Proc Natl Acad Sci 109:E2018−27、2012には、ProTx−IIが単離された神経における活動電位発火を阻害することは、神経周囲関門(このモデルにおける拡散障壁となる)が危うくならない限り、できないことが記載されている。ProTx−IIは、急性及び炎症性痛覚のげっ歯類モデルにおいて効果がないことが解っており、その説明によると、ProTx−IIは血液神経関門を通過できないとのことである(Schmalhoferら、Mol Pharmacol 74:1476〜1484、2008)。Nav1.7ペプチド毒素遮断薬は経口バイオアベイラビリティが不十分であり、神経終末への送達が困難であることが提言されており、それらの治療薬としての使用が制限されることを示唆するものである(Dib−Hajjら、Nature Rev Neuroscience 14、49〜62、2013)。
【0153】
Nav1.7の発現は、末梢神経系において、例えば侵害受容後根神経節(DRG)において、具体的には侵害受容小直径DRGニューロンにおいて、特に皮膚内の末梢端において、脳内表現がほとんどない状態で行われる。Nav1.7の分布(例えば感覚神経終末)及び生理機能は、Nav1.7が痛覚刺激の伝達に主要な役割を担う素因となっている。
【0154】
本発明の一実施形態は、Nav1.7を介した痛みを治療する方法であって、以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される治療的有効量の本発明のプロトキシン−II変異体を、それを必要とする対象に、Nav1.7を介した痛みを治療するのに十分な時間投与することによる、方法である。
【0155】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、Nav1.7を介した痛み、又は他の感覚ニューロン機能障害若しくは交感神経ニューロン機能障害の治療が望ましい任意の療法において用いてもよい。痛みの「処置」又は「治療」には、痛みの知覚を部分的若しくは完全に防止、停止、阻害、低減又は遅延することが含まれることを意味する。
【0156】
いくつかの実施形態では、Nav1.7を介した痛みは、慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、術後の痛み、熱痛、幻肢痛、又は炎症状態に付随する痛み、肢端紅痛症(PE)、発作性高度疼痛症(PEPD)、変形性関節症、リウマチ性関節炎、腰部椎間板切除術、膵炎、線維筋痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷若しくは多発性硬化症、又は疾患及び変性に付随する痛みである。
【0157】
神経因性疼痛としては、例えば、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、又は三叉神経痛(TN)が挙げられる。神経因性疼痛の他の原因としては、脊髄損傷、多発性硬化症、幻肢痛、脳卒中後痛、及びHIV関連痛が挙げられる。また、慢性的な背痛、変形性関節症、及び癌などの状態は、神経障害性関連の痛みの生成に至る場合があり、したがって潜在的に、本発明のプロトキシン−II変異体を用いた治療に適している。
【0158】
別の実施形態では、Nav1.7を介した痛みは、原発性皮膚紅痛症(PE)、発作性激痛症(PEPD)、変形性関節症、関節リウマチ、腰椎椎間板切除、膵炎又は線維筋痛症に付随するものである。
【0159】
本発明の方法において、本発明のプロトキシン−II変異体を第2のポリペプチドに結合して、融合タンパク質を形成してもよい。このような融合タンパク質は、例えば、ペプチド阻害剤の半減期を延長するヒト血清アルブミンに対する公知のFc融合である。結合は、リンカー(例えば、グリシン−セリンリッチリンカー)を介した直接結合であってもよい。このようなリンカーは当該技術分野では周知である。更なる部分を取り入れている本発明のプロトキシン−II変異体は、公知の方法及び本明細書に記載の方法を用いて、そのNav1.7遮蔽能力及び痛みの治療又は低減における有効性について比較することができる。
【0160】
本発明のプロトキシン−II変異体を用いて治療できる感覚ニューロン機能障害又は交感神経ニューロン機能障害の他の疾患としては、ぜんそく、咳、胸焼け、痒み、皮膚炎、膀胱不安定性、及びReynaudの疾患が挙げられる。
【0161】
医薬組成物
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、薬学的に許容されるビヒクル又は担体中に製剤化されてもよい。本発明の一実施形態は、本発明の単離されたプロトキシン−II変異体及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0162】
適当なビヒクル又は担体は、場合により、非経口投与用の組成物において一般的な他の物質を補った注射用蒸留水、生理食塩水又は人工脳脊髄液であってよい。中性緩衝生理食塩水、又は血清アルブミンと混合された生理食塩水は、更なる例示的なビヒクルである。これらの溶液は無菌であり、粒子状物質を通常含まず、従来の周知の滅菌法(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、pH調整及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤などの生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。適当なビヒクル及びそれらの配合及びパッケージングについては、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(21st ed.,Troy,D.ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD(2005)Chapters 40 and 41)に記載されている。
【0163】
本発明の方法において、本発明のプロトキシン−II変異体は末梢投与によって投与されてもよい。「末梢投与」又は「末梢に投与される」とは、中枢神経系の外側において対象に薬剤を導入することを意味する。末梢投与には、脊椎又は脳への直接投与以外のあらゆる投与経路が含まれる。
【0164】
末梢投与は、局所的又は全身的であってよい。関節、手術創、傷害/外傷部位、末梢神経線維、各種臓器(消化器、泌尿生殖器等)又は炎症組織への局所投与などの局所投与を用いることで、治療薬を作用部位に集中させることができる。全身投与では、医薬組成物は対象の末梢神経系のほぼ全体に送達されることになり、更に組成物の性質によっては中枢神経系にも送達される可能性がある。
【0165】
末梢投与経路には、これらに限定されるものではないが、局所投与、静脈内、皮下、筋肉内、関節内、又は他の注射、及び埋め込み式ミニポンプ、又は他の持続放出装置若しくは製剤が含まれる。
【0166】
化合物は、直接中枢神経系に投与(例えば鞘内又は嚢内投与)されてもよい。持続鞘内投与は、脊髄注入用の埋め込み式薬剤ポンプを使用して実施できる。
【0167】
本発明の医薬組成物には、本発明のプロトキシン−II変異体を持続放出型又は制御放出型の製剤中に含有させた製剤が含まれる。これらの製剤は、例えば注射可能な微小球、生物分解性粒子、マイクロエマルション、ナノ粒子、ナノカプセル、マクロエマルション、高分子化合物(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、ポリグリコール酸又はエチレンビニルアセテートコポリマー)、ビーズ又はリポソーム、ヒアルロン酸又は埋め込み可能な薬物送達デバイスを用いることによって実現してもよい。
【0168】
以下で列挙される番号付けされた実施形態を含む、本明細書に開示される本発明のプロトキシン−II変異体は、非経口(皮下、筋肉内、又は静脈内)、脳内(実質内)、鞘内、関節内、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、又は病巣内投与用;持続放出システムによって若しくは埋め込み装置によって、又は任意の他の投与用(特に溶液又は懸濁液の形態での投与);口腔又は舌下投与用(例えば錠剤又はカプセル形態);又は鼻腔内投与用(例えば粉末、点鼻剤、若しくはエアロゾル、又はその他の薬剤の形態);経皮投与用(ゲル、軟膏、ローション、クリーム若しくは粉剤、懸濁液若しくはパッチ送達システムの形態)に調製されてもよい。また、経皮投与では、皮膚構造を変化させるか若しくは経皮パッチ中の薬物濃度を増加させる、又はタンパク質及びペプチドを含む製剤を皮膚上に塗布することを可能にする(国際公開第98/53847号)、若しくは一次的な輸送経路を形成する(例えば電気穿孔法)、若しくは皮膚を通過する荷電薬剤の移動性を向上させる(例えばイオン導入法)、電界の印加を可能にする、又は超音波の印加する(例えばソノフォレーシス)(米国特許第4,309,989号及び第4,767,402号)ことを可能にする、化学的促進剤を用いて調製されてもよい。組成物は、所望の分子が吸収又は封入された膜、スポンジ、又は別の適当な材料の埋め込みによって局所的に投与されてもよい。
【0169】
特定の実施形態では、埋め込み式装置が使用される場合には、この装置は任意の適当な組織又は臓器内に埋め込むことができ、所望の分子の送達は、拡散、時限放出ボーラス(timed-release bolus)、又は持続投与により行ってもよい。
【0170】
このような製剤処方における本発明のプロトキシン−II変異体又はNav1.7の他のペプチド阻害剤の濃度は、大幅に、例えば約0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2重量%から、又は2重量%〜5重量%、最大で15重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%程度まで変えることができ、主に流体体積、粘性率、及び選択した特定の投与方法による他の要因に基づいて選択することができる。本発明のプロトキシン−II変異体は、貯蔵用に凍結乾燥して、使用前に好適なビヒクル中で再構成することができる。この技術は、従来のタンパク質調製に対して効果的であることが分かっている。凍結乾燥及び再構成の技術は当該技術分野において公知である。
【0171】
本発明の例示的な医薬組成物は、約pH7.0〜8.5のTris緩衝液、又は約pH4.0〜5.5の酢酸塩緩衝液を含んでよく、ソルビトール、スクロース、Tween−20、及び/又はこれらの適当な代用物を更に含んでよい。
【0172】
適切な治療的に効果的な有効な用量は、当業者であれば容易に決定することができる。有効な用量は、望ましい結果をもたらすのに十分な量又は用量、すなわち任意の疼痛医学的状態に付随する痛みの知覚を部分的若しくは完全に防止し、停止し、阻害し、低減し、又は遅延するのに十分な量又は用量を指す。有効な量は、特定のビヒクル及び選択された本発明のプロトキシン−II変異体に応じて変わってもよく、また治療すべき対象及び痛みの重症度に関係する種々の要因及び状態に依存している。例えば、本発明の医薬組成物を投与すべき対象の年齢、体重、及び健康状態などの要因、並びに前臨床動物研究において得られる用量反応曲線及び毒性データが、考慮事項として挙げられる。必要に応じて、決定された用量を、治療期間中、医師又は他の当業者(例えば、看護士、獣医、又は獣医技師)によって適切に選択された適切な時間間隔で反復投与してもよい。所与の薬剤の有効量又は治療的有効量の決定は、当業者の技量の範囲内である。
【0173】
したがって、本発明の医薬組成物は、筋肉注射用に、1mLの滅菌緩衝液、及び約1ng〜約100mg、約50ng〜約30mg、又は約5mg〜約25mgの本発明のプロトキシン−II変異体を含有させて調製することができる。同様に、本発明の医薬組成物は、静脈内注射用に、約250mLの滅菌済みRinger溶液及び約1mg〜約30mg又は約5mg〜約25mgの本発明のプロトキシン−II変異体を含有させて調製することができる。非経口投与可能な組成物を実際に調製する方法は周知であり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」、15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PAに詳細に記載されている。
【0174】
本発明の更なる実施形態
以下に、本明細書の他の箇所の開示に従う、本発明の更なる実施形態を列挙する。本明細書に開示される本発明に関連するものとして上述された本発明の実施形態の特徴は、これらの番号付けされた更なる実施形態のうちの1つ1つにもまた関係する。
1)X
1X
2X
3CX
4X
5WX
6QX
7CX
8X
9X
10X
11X
12CCX
13X
14FX
15CX
16LWCX
17KKLW(配列番号403)の配列を含む単離されたプロトキシン−II変異体であり、
X
1は、G、P、A又は欠失であり;
X
2は、P、A又は欠失であり;
X
3は、S、Q、A、R又はYであり;
X
4は、Q、R、K、A又はSであり;
X
5は、K、S、Q又はRであり;
X
6は、M又はFであり;
X
7は、T、S、R、K又はQであり;
X
8は、D又はTであり、
X
9は、S、A又はRであり、
X
10は、E、R、N、K、T又はQであり、
X
11は、R又はKであり;
X
12は、K、Q、S又はAであり;
X
13は、E、Q又はDであり;
X
14は、G又はQであり;
X
15は、V又はSであり;
X
16は、R又はTであり;並びに
X
17は、K又はRであり;
N末端伸長又はC末端伸長を任意に有し、
ポリペプチドは、約1×10
−7M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害し、このIC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定される。
2)N末端伸長が、配列番号372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384又は385のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のプロトキシン−II変異体。
3)C末端伸長が、配列番号374、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396又は397のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載のプロトキシン−II変異体。
4)N末端及び/又はC末端伸長が、プロトキシン−II変異体にリンカーを介して結合される、請求項2又は3に記載のプロトキシン−II変異体
5)リンカーが、配列番号383、392、398、399、400、401又は402のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のプロトキシン−II変異体。
6)配列番号30、40、44、52、56、56、59、65、78、109、110、111、114、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、162、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、177、178、179、180、182、183、184、185、186、189、190、193、195、197、199、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、224、226、227、231、232、243、244、245、247、249、252、255、258、261、263、264、265、266、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、332、334、335、336、337、339、340、341、342、346、351、358、359、364、366、367、又は368のアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
7)約3×10
−8M以下のIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
8)約3×10
−8M〜約1×10
−9MのIC
50値でヒトNav1.7活性を阻害する、請求項7に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
9)アミノ酸配列GPQCX
1X
2WX
3QX
4CX
5X
6X
7X
8X
9CCX
10X
11FX
12CX
13LWCX
14KKLW(配列番号:404)を含み、
X
1は、Q、R、K、A又はSであり;
X
2は、K、S、Q又はRであり;
X
3は、M又はFであり;
X
4は、T、S、R、K又はQであり;
X
5は、D又はTであり、
X
6は、S、A又はRであり、
X
7は、E、R、N、K、T又はQであり、
X
8は、R又はKであり;
X
9は、K、Q、S又はAであり;
X
10は、E、Q又はDであり;
X
11は、G又はQであり;
X
12は、V又はSであり;
X
13は、R又はTであり;並びに
X
14は、K又はRである、請求項7又は8に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
10)配列番号56、78、111、114、117、118、119、122、123、129、130、131、132、133、134、135、136、138、139、140、141、142、145、146、147、149、150、151、152、153、154、156、158、159、165、172、173、175、177、178、183、184、185、186、189、190、193、197、199、207、210、211、216、217、224、266、273、282又は335のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
11)変異体が、ヒトNav1.7を選択的に阻害する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
12)配列GPX
1CQKWMQX
2CDX
3X
4RKCCX
5GFX
6CX
7LWCX
8KKLW(配列番号405)を含み、
X
1は、Y、Q、A、S又はRであり、
X
2は、T又はSであり、
X
3は、S、R又はAであり、
X
4は、E、T又はNであり、
X
5は、E又はQであり、
X
6は、V又はSであり;
X
7は、R又はTであり;並びに
X
8は、K又はRである、請求項11に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
13)配列番号56、59、65、78、111、114、117、118、119、121、122、123、129、130、133、150、190、217、281、324、325又は326のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
14)配列GPQCQKWMQX
1CDX
2X
3RKCCX
4GFX
5CX
6LWCX
8KKLW(配列番号406)を含み、
X
1は、T又はSであり、
X
2は、S、R又はAであり、
X
3は、E、T又はNであり、
X
4は、E又はQであり、
X
5は、V又はSであり;
X
6は、R又はTであり;並びに
X
7は、K又はRである、請求項12に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
15)単離されたプロトキシン−II変異体であって、配列番号78(GPQCQKWMQTCDRERKCCEGFVCTLWCRKKLW−COOH)のアミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一性のアミノ酸配列を含み、
a)アミノ酸配列が、残基番号付けが配列番号1に従うときに、位置1におけるQ、位置7におけるQ、及び位置19におけるFを有し、
b)ポリペプチドが、約30×10
−9M以下のIC
50値でIC
50値の測定を、阻害し、このIC
50値は、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞中に25×10
−6Mの3−ベラトロイルベラセビンの存在下で、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を用いたFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイを用いて測定され、
c)ポリペプチドが、Nav1.7を選択的に阻害する、単離されたプロトキシン−II変異体。
16)遊離C末端カルボン酸、アミド、メチルアミド又はブチルアミド基を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の単離されたプロトキシン−II変異体。
17)半減期延長部分に結合した、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロトキシン−II変異体を含む、単離された融合タンパク質。
18)半減期延長部分が、ヒト血清アルブミン(HSA)、アルブミン結合ドメイン(ABD)、Fc又はポリエチレングリコール(PEG)である、請求項17に記載の融合タンパク質。
19)請求項12又は15に記載のプロトキシン−II変異体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
20)請求項19に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、ベクター。
21)請求項20に記載のベクターを含む、宿主細胞。
22)単離されたプロトキシン−II変異体を製造する方法であって、請求項21に記載の宿主細胞を培養することと、宿主細胞によって生成されたプロトキシン−II変異体を回収することとを含む、方法。
23)請求項1、6、12、13又は15に記載の単離されたプロトキシン−II変異体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
24)対象におけるNav1.7を介した痛みを治療する方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロトキシン−II変異体を、痛みの治療に有効な量で、それを必要とする対象に投与することを含む、方法。
25)痛みが、慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、癌による痛み、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、術後の痛み、熱痛、幻肢痛、又は炎症状態に付随する痛み、肢端紅痛症(PE)、発作性高度疼痛症(PEPD)、変形性関節症、リウマチ性関節炎、腰部椎間板切除術、膵炎、線維筋痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷又は多発性硬化症である、請求項24に記載の方法。
26)プロトキシン−II変異体が、末梢に投与される、請求項24に記載の方法。
27)プロトキシン−II変異体が、関節、脊髄、手術創、傷害若しくは外傷部位、末梢神経線維、泌尿生殖器臓器、又は炎症組織に局所的に投与される、請求項24に記載の方法。
28)対象がヒトである、請求項24に記載の方法。
29)痛みの治療を必要とする対象における痛みの治療に使用される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のプロトキシン−II変異体。
30)痛みが、慢性の痛み、急性の痛み、神経障害性疼痛、癌による痛み、侵害受容性の痛み、内臓痛、背痛、術後の痛み、熱痛、幻肢痛、又は炎症状態に付随する痛み、肢端紅痛症(PE)、発作性高度疼痛症(PEPD)、変形性関節症、リウマチ性関節炎、腰部椎間板切除術、膵炎、線維筋痛、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、疹後神経痛(PHN)、三叉神経痛(TN)、脊髄損傷又は多発性硬化症である、請求項29に記載の使用のためのプロトキシン−II変異体。
31)プロトキシン−II変異体が、末梢に投与される、請求項29又は30に記載の使用のためのプロトキシン−II変異体。
32)プロトキシン−II変異体が、関節、脊髄、手術創、傷害若しくは外傷部位、末梢神経線維、泌尿生殖器臓器、又は炎症組織に局所的に投与される、請求項29、30又は31に記載の使用のためのプロトキシン−II変異体。
【0175】
次に、本発明を以下の特定の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0176】
実施例1:プロトキシン−II変異体の設計及び生成
プロトキシン−IIの一部位限定アミノ酸置換スキャニングライブラリーを設計し、選択性、ペプチド収率、及び同質性をどの程度まで向上させることができるかを評価した。
【0177】
プロトキシン−II変異体を、HRV3Cプロテアーゼ切断可能なHSA融合タンパク質として、N末端からC末端まで、6xHis−HSA−リンカー−HRV3C切断可能なペプチド−プロトキシン−II変異体(配列番号108として開示される「6xHis」)のフォーマットで設計した。リンカーは(GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS;配列番号80であり、HSAは配列番号106の配列を有し、HRV3Cは配列番号82の配列を有する切断可能なペプチドである)。各プロトキシン−II変異体は、HSAから切断した後に、切断部位からの残りのN末端GPを有していた。
【0178】
FLIPR(登録商標)Tetraを用いる膜脱分極アッセイにおいて、実施例3のFLIPR(登録商標)Tetra膜脱分極アッセイで記載されるように、及びQPatchアッセイを用いる全細胞パッチクランプ実験において、実施例3で記載されるように、変異体の特性評価を行った。
【0179】
天然ペプチドと比較して更に向上した効能及び選択性プロファイルを有するNav1.7アンタゴニストを生成する目的で、選択された単一位置ヒット化合物の相加的効果について試験するためのコンビナトリアルライブラリーを設計した。
【0180】
発現ベクターの構造
設計されたプロトキシン−II変異体遺伝子の生成を、米国特許第6,521,427号に記載された合成遺伝子構築技術を用いて行った。設計されたペプチド変異体のアミノ酸配列を、ヒトの高頻度コドンを用いてDNA配列に逆翻訳したた。各変異体遺伝子のDNA配列を、DNAクローニング部位を含むベクターDNAの一部と共に、一部が縮重コドンを含む複数のオリゴヌクレオチドとして合成し、これらを完全長のDNAフラグメントに組み」立てた。組み立てられたDNAフラグメントをPCRにより増幅した後、PCR産物をプールとしてクローニングした。プールしたPCR産物を、適切な制限酵素を用いて消化し、各毒素変異体遺伝子をベクター内に含まれるシグナルペプチド及び融合パートナ(6xHis−HSA−リンカー−HRV3C切断可能なペプチド(配列番号108として開示された「6xHis」)に融合するようにして、設計した発現ベクターにクローニングした。標準的な分子生物学の手法を用いて、各設計した変異体について陽性クローンを特定した。これらの陽性クローンからのプラスミドDNAを精製し、配列を確認した後、プロトキシン−IIペプチド変異体融合タンパク質を標準的な方法を用いて発現させた。
【0181】
タンパク質発現
HEK 293−F細胞を293 Freestyle(商標)培地(Invitrogen Cat#12338)内で維持し、細胞濃度が1.5〜2.0×10
6細胞/mLとなったときに分割した。加湿インキュベーター(37℃及び8% CO
2に設定)内で懸濁液を125RPMで振とうしながら、細胞培養を行った。HEK 293F細胞を1.0×10
6細胞/mLに希釈した後、DNA/脂質複合体を用いて一過性にトランスフェクションした。複合体を生成するために、トランスフェクション1mL当たり1.25μgのDNAを1.0mLのOptiPro培地(Invitrogen Cat#12309)で希釈し、1.25mLのFreestyle(商標)Maxトランスフェクション試薬(Invitrogen Cat #16447)を、1.0mLのOptiPro培地で希釈した。DNA及びMaxトランスフェクション試薬を一緒に混合し、細胞に添加する前に、10分間室温でインキュベートした。加湿インキュベーター(37℃及び8% CO
2に設定)内で、トランスフェクトされた細胞を、125RPMで振盪しながら4日間維持した。5,000×gにおいて10分間遠心分離を行い、0.2μmフィルタ(Corning;Cat#431153)を通して濾過した後、Amicon Ultra Concentrator 10K(Cat#UFC901096)を使用して3,750×gで約10分間遠心分離し、上澄みを細胞から分離した。
【0182】
実施例2:プロトキシン−II変異体の精製
プロトキシン−II変異体を、実施例1に示したHSA融合タンパク質として発現させ、プロトキシン−II変異体ペプチドをHRV3Cプロテアーゼによって切断した後、精製を行った。プロトキシン−II変異体の効率的な精製に関し、2つの方法を試験した。
【0183】
タンパク質の精製
RP−HPLCによるプロトキシン−II変異体の精製
1mLのHisTrapHPカラム(GE Healthcare Cat#17−5247−01)を用い、IMACにより、分泌タンパク質を発現上清から精製した。AKTA Xpressを使用してクロマトグラフィー法を行い、イミダゾールの段階的勾配を用いてタンパク質をカラムから溶出させた。ピーク分画をプールし、HRV3Cプロテアーゼ(1μgプロテアーゼ/150μg融合物)を用いて一晩消化させた。
【0184】
逆相Phenomenex Luna 5μm C18(2)カラム(Cat#00B−4252−P0−AX)を装着したDionex HPLCシステムを用いて、切断されたペプチド融合プールを更に精製した。0〜68%アセトニトリル(0.05% TFA)直線勾配を用いて、サンプルをカラムから溶出した。溶出画分をプールし、一晩凍結乾燥し、HEPES緩衝食塩水(pH7.4)(10mM HEPES、137mM NaCl、5.4mM KCl、5mMグルコース、2mM CaCl
2、1mM MgCl
2)に再構成した。
【0185】
RP−HPLCによって精製されたプロトキシン−II変異体の収率を表4に示す。平均収率は0.01615mg/Lであった。
【0186】
【表4】
【0187】
固相抽出(SPE)によるプロトキシン−II変異体の精製
1mLのHisTrapHPカラム(GE Healthcare Cat#17−5247−01)を用い、IMACにより、分泌タンパク質を発現上清から精製した。AKTA Xpressを使用してクロマトグラフィー法を行い、イミダゾールの段階的勾配を用いてタンパク質をカラムから溶出させた。ピーク分画をプールし、HRV3Cプロテアーゼ(1μgプロテアーゼ/150μg融合)を用いて一晩消化させた。切断後のサンプルを50kDa分子量カットオフ遠心フィルタユニット(Millipore UFC805096)内に充填し、切断されたペプチドを濾液分画内に回収した。
【0188】
ペプチドのプールを96ウェルの固相抽出ブロック(Agilent Bond Elut Plexa A3969030)に充填し、更に精製、脱塩及び濃縮を行った。ブロックを真空マニフォールド(Whatman)と共に用いた。ペプチドサンプルを0.05% TFA水溶液に充填及び洗浄し、0.05% TFA水溶液を用いたアセトニトリルの段階的勾配を用いて溶出させた。溶出画分を次に一晩凍結乾燥し、HEPES緩衝食塩水、pH7.4(10mM HEPES、137mM NaCl、5.4mM KCl、5mMグルコース、2mM CaCl
2、1mM MgCl
2)中に再構成した。
【0189】
HEPES緩衝食塩水、pH7.4(10mM HEPES、137mM NaCl、5.4mM KCl、5mMグルコース、2mM CaCl
2、1mM MgCl
2)を補ってペプチドを再構成し、吸光度の測定を280nmで行った。次に、各サンプルの吸光度係数を用いて濃度値を算出した。2μgの各ペプチドをInvitrogen NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis−Tris Gel 15ウェルのゲル上に充填し、MES緩衝液(非還元)中で実行した。
【0190】
Phenomenex Luna C18(2)分析カラム(Cat#00A−4041−B0)を装着したAgilent 1100 HPLC上において、0.05% TFAの直線勾配中の4〜80%アセトニトリルを用いて、サンプルの分析を行った。すべてのペプチドの濃度を標準化し、合計1.3μg/サンプルに対して10μLを注入した。吸光度を220nmにおいてモニターし、Chromeleonソフトウェアを用いてクロマトグラム分析を行った。
【0191】
SPEによって精製されたプロトキシン−II変異体の収率(mg)を表5に示す。平均収率(mg/L)は0.05353であった。
【0192】
SPE精製プロセスの効果により、サンプルの処理が、RP−HPLC上での順次的処理ではなく96−ウェルブロック内での並列的に行われるため、精製が容易になり、スループット並びに収率が向上した。RP−HPLCの場合と比較し、SPEによって精製された変異体の収率(mg/L)は、平均で3倍超高かった。
【0193】
【表5-1】
【0194】
【表5-2】
【0195】
実施例3:プロトキシン−II変異体の特徴付け
選択プロトキシン−II変異体を膜脱分極及び全細胞パッチクランプアッセイにおいて特性評価を行い、その効能及びNav1.7に対する選択性を評価した。
【0196】
FLIPR(登録商標)Tetra膜における脱分極アッセイ
生成されたペプチドによる、Nav1.7作動薬ベラトリジン(3−ベラトロイルベラセビン;Biomol、Catalog#NA125)によって誘発される膜脱分極の阻害能を、FLIPR(登録商標)Tetra上のFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイを使用し、DISBAC2(3)(Invitrogen、K1018)を電子受容体として、PTS18(トリナトリウム8−オクタデシルオキシピレン−1,3,6−トリスルホネート)(Sigma)をドナーとして用いて、ドナーを390〜420nmで励起して、FRETを515〜575nmで測定することによって、測定した。
【0197】
10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、400μg/mLジェネティシン、及び100μM NEAA(試薬はすべてInvitrogen製)を補ったDMEM/F−12培地(1:1)において、ヒトNav1.7を安定発現するHEK293細胞を培養した。ポリリジンコーティングされた384−ウェルの黒色の透明底プレート内に、50μLの採取細胞を25,000細胞/ウェル、でプレーティングした。プレートを室温(RT)で15分間インキュベートした後、37℃で一晩中インキュベートした。インキュベートはすべて、特に明記しない限り暗所で行った。翌日、アッセイ緩衝液(137mM NaCl、4mM KC、2mM MgCl
2、2mM CaCl
2、5mMグルコース、10mM HEPES、pH7.4)を用いてウェルを4回洗浄し、25μLのアッセイ緩衝液に再懸濁した。DMSO中の10%プルロニックF127に色素を1:1(v/v比)で懸濁させ、PTS18色素の2xストック(6μM)を調製した。25μLの2x PTS18ストックをウェル内に添加し、細胞を30分間室温で染色した後、アッセイ緩衝液を用いて色素を洗い流した。アッセイ緩衝液(10μM DISBAC2(3)及び400μM VABSC−1を含む)中に最終濃度の3倍の濃度となるようにペプチドを懸濁させ、バックグラウンド蛍光を抑制した(Sigma、cat#201987)。25μL/ウェルの懸濁されたペプチドを各ウェルに添加し、60分間室温でインキュベートした。最終濃度25μMのベラトリジンによって(75μM(3x)ストック溶液を25μL/ウェルで添加することによって)脱分極を誘発し、アゴニストを添加した30〜100秒後に、FRET色素蛍光の平均強度の減少を測定した。常法に従いベラトリジンを添加した後、測定済みの各ペプチドの1.3倍希釈を行い、FLIPR(登録商標)Tetraアッセイの開始時の濃度を報告する。
【0198】
各実験系において合成プロトキシン−II(Peptide International)の濃度反応曲線を作成し、対照として用いた。シグナルを、陰性対照(作動薬ベラトリジン単独に対応する)値と陽性対照(10μMテトラカインの存在下でのベラトリジンに対応する)値との差に対して標準化することによって、各ウェルに対する蛍光カウントを%応答に変換した。測定を行うために、FLIPR(登録商標)Tetraの「空間均一性補正」(すべての蛍光トレースを平均初期開始強度に標準化)及び「バイアス値減算」(初期開始強度を各トレースから減算)をオンにした。各データポイントは、各ウェルにおける応答を表わしていた。すべての個々のデータポイントを非線形最小二乗法フィッティングにおいて用いて、Origin(Microcal)を用いてHill関数に対するベストフィットを求めた。得られた近似曲線からIC
50値を算出した。陽性(P)及び陰性(N)対照の平均応答を用いて、ウェルにおける%応答の算出を以下のように行った:%応答=100
*(N−R)/(N−P)。
【0199】
その日の対照アンタゴニストの効能がその履歴平均の±0.5対数単位内である場合に、アッセイプレートを容認した。
【0200】
QPatchアッセイ
ヒトNav1.5(配列番号105)、Nav1.7(配列番号79)又はNav1.6(配列番号407)を安定発現するHEK293細胞を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、400μg/mLジェネティシン、及び100μM NEAA(試薬はすべてInvitrogen社製)を補ったDMEM/F−12培地(1:1)において培養した。細胞を37℃、5% CO
2の条件に維持し、約50〜90%コンフルエンスに達した時点でアッセイを行った。テトラサイクリン誘導可能な方法(配列番号407)でヒトNav1.6を安定発現するCHO細胞を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、10μg/mL Blasticidin、及び400μg/mL Zeocinを補ったHAMs F12において培養した。細胞を37℃及び5% CO
2の条件に維持し、約50〜90%コンフルエントに達した時点でアッセイを行った。実験の24〜48時間前に、1μg/mLのテトラサイクリンを用いてNav1.6発現を誘発した。
【0201】
QPatch HT(Sophion)による試験の前に、最初にCHO−S−SFM培地(Life Technologies)中に細胞を再懸濁し、0.05%トリプシンを用いて(5分間、37℃で)分離させ、穏やかに粉砕して細胞塊をバラバラにした。同じ培地を用いて細胞密度を1〜2×10
6/mLに調整し、細胞をQPatch HTの細胞「ホテル」に移し、数時間に渡る試験に用いた。ギガオームシール形成及び全細胞パッチクランプ記録の場合、細胞外溶液に、137mM NaCl、5.4mM KC、1mM MgCl
2、2mM CaCl
2、5mMグルコース、及び10mM HEPES(pH=7.4及び浸透圧モル濃度=315mOsm)を含有させた。細胞内液には、135mM CsF、10mM CsCl、5mM EGTA、5mM NaCl、及び10mM HEPES(pH=7.3、浸透圧モル濃度=290mOsm)を含有させた。アッセイで用いた電圧プロトコルは以下のとおりである。保持電位を−75mV(Nav1.7)、−60mV(Nav1.6)、又は−105mV(Nav1.5)とした後、細胞を最初に−120mVに2秒間過分極化させ、更に0mVに5ms脱分極させた後、保持電位に戻した。このプロトコルを、液体供給時に、60秒毎に1回繰り返した(下記参照)。細胞は、その他の場合には、前述の電圧プロトコルが実行されなかったときに保持電位に保持した。全細胞の記録構成を設定しる際、当該記録に用いる細胞に対して、細胞外溶液(いずれも0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含み、試験化合物を有する又は有さず但し最後の添加では1μM TTX又は10mMリドカインを陽性対照として含有していた)を計5回添加した。最初の液体供給には対照緩衝液(5μL)のみが含まれていた。供給の5秒後、電圧プロトコルを10回(全体で10分間の長さ)行った。次の3回の液体供給(各5μL)には、試験化合物(3回の供給すべてにおいて同じ化合物を同じ濃度)又は対照緩衝液(対照細胞に対してのみ)が含まれていた。これらの各供給の5秒後に、電圧プロトコルを再度10回実施した(同様に毎分1回)。最後の供給には陽性対照が含まれており(10μLで3回副供給、それぞれ2秒間隔)、5秒後に同じ電圧プロトコルを2回実行してベースライン電流を得た。電流を25kHzでサンプリングし、8極Bessleフィルタにより5kHzでフィルタリングした。直列抵抗の補償レベルを80%に設定した。各細胞に対して、最初の4回の液体供給における各電流トレースの0mVにおけるピーク電流振幅を、陽性対照の存在下での最後のトレースのピーク電流振幅から最初に減算した後、最初の(対照緩衝液)供給における最後のトレースのピーク電流振幅に対して、阻害率(%)として標準化した。電流のランダウン(rundown)を調整するため、試験化合物の存在下における各細胞のこの値(阻害率(%))を、同じ実験中の対照細胞の平均(通常5〜6個の)の阻害率(%)の値に対して更に標準化した。最後の化合物供給における最後の2つの測定値の平均(すなわち、試験化合物の各濃度に対する補正された阻害率(%)値)を、試験した特定の化合物濃度における各細胞に対する%阻害値として取得した。各化合物濃度において試験したすべての細胞に対する阻害率(%)値を平均化し、濃度応答算出において用いた。実験はすべて、室温(約22℃)で行った。データを平均±標準誤差として表す。野生型プロトキシン−IIは、各実験において陽性対照として含めた。データは、プロトキシン−IIの効能がその履歴平均の±0.5対数単位内である場合にのみ容認した。
【0202】
FLIPR(登録商標)Tetraを用いて得られた選択プロトキシン−II変異体に対する、Nav1.7のIC
50値を表6に示す。
【0203】
【表6】
【0204】
選択プロトキシン−II変異体を、QPatchを用いてヒトNav1.5に対する選択性に対して試験した。選択ペプチドに対するNav1.7及びNav1.5の両方のIC
50値を、表7に示すQPatchを用いて得た。
【0205】
【表7】
【0206】
実施例4.コンビナトリアルプロトキシン−II変異体の生成及び特性評価
いくつかのアプローチを用いて天然ペプチドと比較して更に改善された効能及び選択性プロファイルを有するNav1.7アンタゴニストを生成するため、コンビナトリアルライブラリーを設計し、選択された単一位置ヒットによる相加的効果について試験した。
【0207】
すべての非システインプロトキシン−II位置において、多様化のためにA、D、Q、R、K及びSを用いて、限定的なアミノ酸スキャンを行った。これらの実験においては、実施例1に記載のように、プロトキシン−IIを発現させ、一価のFc融合タンパク質として試験した。このスキャンにより、結果として得られる変異体の効能及び/又は選択性を向上させた置換Y1Q、W7Q、S11Aが同定された。
【0208】
位置M6及びM19における全アミノ酸スキャン(cys及びtrpを除く)も行った。このスキャンから、結果として得られる変異体の効能及び/又は選択性を向上させたM19F置換が同定された。
【0209】
プロトキシン−II/フエントキシン−IVの単一位置キメラを双方向から設計した。このライブラリーの目的は、野生型プロトキシン−IIの効能及び選択性プロファイルを保持したプロトキシン−II変異体を得ることであり、フエントキシン−IVに付随する有用なリフォールディング特性が得られであろう。このスキャンから置換R22T及びE12Nが同定された。
【0210】
R、K、T、A、D、E、Q及びSを用いた限定的なアミノ酸スキャンによって位置Y1を変異させ、また電荷クラスタエンジニアリングによってペプチドNV1G1153を更に設計し、ペプチドの三次元構造内のすべての荷電残基組(D10/E12、K4/E17、D10/E12/R13)を変異させた。
【0211】
作用部位に対するペプチド分布を改善し、かつ得られるペプチドの分子量を著しく増加させることなくペプチドの半減期を改善することを目的として、N−及びC末端伸長を選択されたペプチド(例えばNV1G1153)に導入した。使用したN−及びC末端伸長は、表8及び9にそれぞれ示すとおりであり、Oiら、Neuroscience Letters 434、266〜272、2008;Whitneyら、Nature Biotechnology 2011 29:4、352〜356;Sockoloskyら、(2012)109:40、16095〜16100にも記載されている。また細胞透過性ペプチドであるHIV Tat及びポリアルギニンも用いた。種々のリンカーを用いて、プロトキシン−II変異体をN−及び/又はC末端伸長に結合させた。使用したリンカーを表10に示す。
【0212】
実施例3に記載の方法を用い、各操作から得たプロトキシン−II変異体を、Nav1.7に対するそれらの効能及び選択性に関して試験した。Nav1.7を200nM以下のIC
50値で阻害した変異体のアミノ酸配列を表3に示す。野生型プロトキシン−IIと比較したときの選択された変異体におけるアミノ酸置換、及びFLIPR TetraアッセイにおけるNav1.7阻害のIC
50値を表11に示す。
【0213】
【表8】
【0214】
【表9】
【0215】
【表10】
【0216】
【表11-1】
【0217】
【表11-2】
【0218】
【表11-3】
【0219】
【表11-4】
【0220】
【表11-5】
【0221】
【表11-6】
【0222】
【表11-7】
【0223】
【表11-8】
【0224】
【表11-9】
【0225】
野生型プロトキシン−IIは、実施例3で説明したように、FLIPRアッセイにおいて約4nMのIC
50値でNav1.7を阻害する。著しいNav1.7の効能を保持する変異体を更に特性評価した。
図1は、30nM以下のIC
50値でNav1.7を阻害する、生成されたプロトキシン−II変異体の配列属である。
【0226】
QPatchを用いて、選択されたプロトキシン−II変異体を、そのNav1.7の阻害及びそのヒトNav1.6に対する選択性に関して試験した。QPatchを用いて得られた選択ペプチドに対するNav1.7及びNav1.6の両方に対するIC
50値を
図2に示す。これらのペプチドは30nM以下のIC
50でNav1.7を阻害し、Nav1.6と比較したときにNav1.7に対して少なくとも30倍の選択性を有していた。
【0227】
図2に示すペプチドのアミノ酸配列を
図3に示す。これらのペプチドはすべて、野生型プロトキシン−IIと比較したときに、W7Q及びM19F置換を有していた。
【0228】
プロトキシン−II変異体の発現及び精製は、実施例1に記載のとおり行ったか、又は標準的な固相合成方法によって合成した。組み換え型又は合成ペプチドの収率を、野生型プロトキシン−IIの収率と比較した。表12は、選択プロトキシン−II変異体の収率がプロトキシン−IIの収率よりも著しく高いことを示しており、変異体のフォールディング特性の向上を示している。固相合成のスケールは0.5mmolであった。
【0229】
【表12】
【0230】
実施例5.プロトキシン−II変異体は、痛みのインビボモデルにおいて効果的である。
材料及び方法
動物:雄のC57Bl/6マウス(24〜26g)(Charles Riverから発注、別個に収容)を本試験で用いた。
【0231】
行動試験
Von Frey試験:機械的(触覚)閾値を、Von Frey Hairsによって、Up−Down法(Dixon、1980、Chaplanら、1994)によって評価した。7つの段階的な刺激(von Frey繊維:0.03、0.07、0.16、0.4、0.6、1、2g;Stoelting,Wood Dale,IL)を用いた。Von Frey毛を、後足上の中央の足底領域(骨隆起の間)に対して垂直に与えた。十分な力を印加してフィラメントをわずかに曲げて、3秒間保持した。Chaplanの論文によると、陽性応答は、フィラメントを取り除いたときに、1)急に逃避する、又は2)即座に振り回すこととすることができる。詳細についてはChaplanらを参照のこと。試験前に、30〜60分間、試験チャンバー内のワイヤメッシュにマウスを順応させた。
【0232】
Hargreaves試験:改良されたHargreaves boxを用いて、熱足逃避潜時(PWL)を測定した(Hargreavesら、1988、Pain、32:77〜88;Dirigら、1997、J Neurosci.Methods,76:183〜191)。この箱は、一定温度(27℃)に維持されたガラス製高床付きのチャンバーからなる。熱侵害刺激は、ガラス表面下方の投影電球光線から発生する。光線を骨隆起(中央の足底)間の領域に向ける。「開始」ボタンによって光照射を開始し、タイマーを開始する。刺激を受けた足に動き(例えば突然の逃避)がある場合には、スイッチがトリガーされて消灯し、タイマーが停止する。潜時(秒)が表示される。動きが起きない場合、電球は20秒(カットオフ)後に消灯し、組織傷害を防止する。PWL測定前の30〜60分間、動物をガラス表面上で馴化させた。一定のアンペア数を試験全体に渡って用いた結果、予備試験の足逃避潜時が8〜12秒となった(少なくとも5分間間隔を置いて行った3〜6回の読み取りに対して平均化した場合)。
【0233】
MPE%の算出:パーセント最大可能効果(MPE%)=(T
1−T
0)/(Tc−T
0)×100%。T
0:0日目の閾値(CFA後、ポンプ前);T
1:ポンプ埋め込み後、1日目の閾値;Tc:試験のカットオフ(Hargreaves試験では20秒、Von Frey試験では2g)。
【0234】
ホットプレート試験:25cm×25cm(10”×10”)の金属プレートを、4つのプレキシグラス壁(38センチメートル(15インチ)高さ)で囲んだものの上に動物を置いた。プレートを50又は55℃の温度に維持した。反応潜時(動物が最初にその後ろ足を振り回すか若しくは舐める、飛び上がる、又は声を出すときの時間)を測定し、動物をプレートから取り除いた。応答を示さない動物を、40秒後(50℃)又は20秒(55℃)後にプレートから取り除いて、起こり得るいかなる組織損傷も防止した。このトライアルを、1日に15〜60分毎に2〜5回繰り返した。
【0235】
炎症性痛覚モデル
CFAモデル:動物をイソフルランで麻酔し(4%で誘導、及び2%維持)、50μLのハミルトンシリンジに装着した27ゲージのニードルを用い、100%のフロイントの完全アジュバント(CFA;Sigma−Aldrich;Saint Louis,MO)20μLを1本の後足の足底領域の中央部に注入した。
【0236】
カラギーナンモデル:動物をイソフルランで麻酔し(4%で誘導、及び2%維持)、通常の生理食塩水に溶解させた2%のλ−カラギーナン(Sigma−Aldrich;Saint Louis,MO)を含む25μLの液体を、インシュリンシリンジ(BD;Franklin Lakes,New Jersey)を用いて後足の足底領域の中央部に注入した。
【0237】
ミニポンプの埋め込み
Alzetマイクロオスモティックミニポンプ(Durect Corporation Model 1003D及び2001D)を整備し、製造業者のガイドに従い初期化した。マウスにイソフルランを用いて麻酔した(5%誘導;2%維持)。マウスの背中を剃毛し、イソプロピルアルコール及びポビドンヨードで拭きとり、肩甲骨の間に小さい切開を行った。一対のピンセット又は止血鉗子を用いて、皮下結合組織を広げて分離させることにより小さいポケットを形成した。流量調節材が切開から離れる方向に向くようにして、ポンプをポケット内に挿入した。この後、7mmのステープラーを用いて皮膚の切開を閉じ、動物を飼育ケージ内で回復させた。
【0238】
データ解析
平均±標準誤差としてデータを表す。Prism(Graphpad Software Inc.,La Jolla,CA)を用いて、グラフ化及び統計分析を図った。時間に対する閾値を比較するため、双方向ANOVA及びそれに続くBonferroniの多重比較検定を、p<0.05の有意水準で用いた。ホットプレート及びMPE%データを一方向ANOVAによって分析した後、Bonferroniの多重比較検定を行った。
【0239】
結果
変異体NV1D3034−OH(NV1D3034−COOH)、NV1D3368−OH(NV1D3368−COOH)及びNV1D2775−OH(NV1D2775−COOH)の効果を、CFAモデル(炎症性痛覚モデルとして広く使用)において試験した。CFAを後足に注射することにより、足浮腫(図示せず)及び熱刺激(熱痛覚過敏)に対する過敏症が誘発され、これは0日目に注射された足において熱潜時が減少したことにより示される(
図6A)。NV1D3034−OHを684及び1824μg/日で、皮下浸透圧ミニポンプによって投与したとき、熱痛覚過敏が完全に逆転された(
図4A及び4B)。
【0240】
NV1D3368−OHによって、684及び1824μg/日で、CFA誘発熱痛覚過敏が十分に逆転された(
図5A及び5B)。
【0241】
NV1D2775−OHはCFAモデルにおける強い効果を示した。熱潜時は、NV1D2775投与後のカットオフに近い値に到達しており(
図6A及び6B、1824μg/日)、これは、抗痛覚過敏効果に加えて強力な無痛覚効果を示唆するものである。更に、NV1D2775−OHによりCFA誘発触覚異痛症が逆転された(
図6C及び6D、1824μg/日)。NV1D2775−OHの抗痛覚過敏効果は、ポンプを埋め込んでから早くも4時間後に見られた(
図7A)。熱及び触覚試験の両方において8時間目において効果が最大に達し(
図7A及び7B)、これが24時間維持された。熱潜時及び触覚閾値は、ポンプ埋め込み後48時間(ポンプが空になってから約24時間後)でコントロールのレベルに戻った(
図7A及び7B)。
【0242】
2つの更なるペプチド、NV1D3368−アミド(NV1D3368−NH
2)及びNV1D3034−N−メチルアミド(NV1D3034−NHMe)により、CFA誘発熱痛覚過敏が容易に逆転された。熱MPE%の試験結果を表13にまとめる。
【0243】
【表13】
【0244】
またNV1D2775−OHは、ホットプレート試験において強い用量依存性有効性を示した(
図8)。50℃及び55℃における潜時は、1824μg/日の投与の後にカットオフに近い値に達した。228μg/日において、NV1D2775−OHは、熱潜時がPBS対照と比較して少なめだが著しく増加した。
【0245】
NV1D2775−OHの有効性を、炎症性痛覚の別のモデル(カラギーナンモデル)において評価した。動物に、NV1D2775−OH又はPBSポンプを埋め込んだ。ポンプ埋め込み前及びポンプ埋め込み後1日目に熱逃避潜時の測定を行った。λ−カラギーナンを後足に注射し、熱潜時の再測定をカラギーナン注入の2、3、及び4時間後に行った。NV1D2775−OHは、1824μg/日において著しい無痛覚を示した(
図9)。4時間の試験時間に渡り、λ−カラギーナンを後足に注射すると炎症が誘発され(図示せず)、Hargreaves試験における熱足逃避潜時が短縮された(
図9、PBS群)。NV1D2775−OHを用いて1824μg/日で動物を前処理した結果、カラギーナン誘発痛覚過敏から十分に保護された。
【0246】
実施例6.コンビナトリアルプロトキシン−II変異体の生成及び特性評価
プロトキシン−IIのアミノ酸スキャニングライブラリーを構築した。プロトキシン−IIのすべての非システイン位置(Tyr1、Gln3、Lys4、Trp5、Met6、Trp7、Thr8、Asp10、Ser11、Glu12、Arg13、Lys14、Glu17、Gly18、Met19、Val20、Arg22、Leu23、Trp24、Lys26、Lys27、Lys28、Leu29及びTrp30)において、天然の残基の代わりに、Ala、Asp、Glu、Phe、Gly、His、Ile、Lys、Leu、Asn、Pro、Gln、Arg、Ser、Thr、Val及びTyrの残基を置換した。
【0247】
ヒト血清アルブミンに対する組み換え融合体として、変異体ペプチドを発現させ、HRV3Cを用いて部位特異的・酵素的に切断し、実施例1に記載のプロトキシン−II変異体を生成した。各プロトキシン−II変異体は、HSAによる切断後に、切断部位からのN末端GPの残留物を有していた。プロトキシン−II変異体毎に、ヒトNav1.7に対するIC50値を、実施例3に記載のプロトコルに従い、FLIPR Tetra又はQpatchを用いて測定した。Qpatch電気生理学的方法を用い、更なるhNavチャネルに対する選択性に関して、ヒトNav1.7に対するIC
50≦100nMを示す変異体をカウンタースクリーニングした。選択性についてヒットしたものを同定し、組み換え発現及び固層ペプチド合成を用いて産生させたコンビナトリアルペプチドライブラリーの設計に用いた。上で詳述したのと同じストラテジーを用いて、コンビナトリアル変異体をスクリーニングした。
【0248】
得られた結果によると、選択性の改善のために変異導入し得る位置として、Gln3、Ser11、Glu12、Lys14、Glu17、Gly18、Leu29及びTrp30が挙げられる(残基番号付けは配列番号1に従う)。
【0249】
溶液中のプロトキシン−IIの構造をNMRで解析し、その表面表現を
図10に示す。図の左側は、前述(Parkら、J.Med.Chem.2014,57:6623〜6631)した、M6を取り囲むTrp残基のリングW5/W7/W24を示す。分子の反対側については、本試験において変異導入及びNMR構造の両方を用い、他のナトリウムチャネルアイソフォームよりもhNav1.7に対する選択性を向上させるために変異導入できる複数のアミノ酸位置からなるプロトキシン−IIの選択性表面を同定した。選択性表面に存在する残基としては、残基Ser11、Glu12、Lys14、Glu17、Gly18、Leu29及びTrp30が挙げられる(残基番号付けは配列番号1に従う)。Nav1.7に対する選択性に関与する選択性表面及びその内部の複数の位置の同定はこれまでに報告がない。
【0250】
Ser11の置換によるプロトキシンII変異体の選択性の向上は予想外である。それは、従来の報告では、Ser11の変異が複数のNavチャネルに対して影響を与え、ゆえに残基はプロトキシン−IIのNav1.7に対する選択性には関与しないと判断されたからである(Parkら、J.Med.Chem.2014,57:6623〜6631)。
【0251】
プロトキシン−II変異体の合成的製造において鍵となるステップは、ジスルフィド対合が形成される、直鎖状ペプチドの酸化的フォールディングである。フォールディング後の天然のプロトキシン−II精製のためのRP−HPLCトレースの結果、異なる滞留時間において複数のピークが見られ、それらは、分子量は正しいものの活性レベルが異なり、すなわち正しくフォールディングされた異性体ペプチドとそうでないものとの混合物であることを示すものである。
【0252】
RP−HPLCの主要なピークの相対強度、したがって正しくフォールディングされたペプチドの相対強度は、プロトキシン−IIの様々な位置における置換により向上させることができた。Trp7又はTrp30の変異により、得られるプロトキシン−II変異体のフォールディングが改善された。Trp7及びTrp30の療法の変異により、得られるプロトキシン−II変異体のフォールディングが更に改善され、リフォールディング困難なプロトキシン−II変異体のフォールディングをレスキューできた。
【0253】
選択性を向上させる1つ又は2つ以上の置換(Gln3、Ser11、Glu12、Lys14、Glu17、Gly18及びLeu29)、並びにTrp7及びTrp30の変異を有するコンビナトリアル変異体ペプチドの製造により、高い選択性及び好適なリフォールディング特性の両方を有するペプチドが得られた。プロトキシン−IIは、阻害性システインノットペプチドのファミリー3に属する(Klintら,Toxicon 60:478〜491,2012)。Trp7は、すべてのファミリー3のメンバーで保存され、別のファミリー3の阻害性システインノットペプチドであるジンザオトキシン(Jingzhaotoxin)−Vのこの位置の置換、並びにTrp5及びMet6の置換により効能が低下したことから、ジンザオトキシン−Vの位置5、6及び7の疎水性残基が、ジンザオトキシン−VのNav1.7阻害能に必須であることを示すものである(国際公開第2014/165277号)。Trp5/Met6/Trp7はまた、プロトキシン−IIでも保存されており、したがって、Trp7の極性残基による置換が、プロトキシン−II活性を損なわずに顕著にリフォールディング特性を向上させ得ることは予想外であった。Trp30の置換により、変異体ペプチドのNav1.7選択性及びリフォールディング特性が同時に向上することが示され、また個々の有利な置換が典型的に1つのパラメーターのみを改善するため、予想外であった。
【0254】
表13は、選択により得られたプロトキシン−II変異体のアミノ酸配列を示す。
【0255】
【表14】
【0256】
選択された変異体を、実施例3に記載のFLIPR Tetra又はQpatchを用いてそれらのNav1.7の阻害を特性評価した。表15は得られたIC
50値を示す。いくつかの変異体については、1つの濃度(10nM又は30nM)における阻害能(%)(%バルク、コントロールのパーセントブロック)のみをQpatchで記録した。
【0257】
【表15】
【0258】
選択された変異体を、様々なヒトNav1.xチャネルに関して試験した。表16はそれらの試験結果を示す。各チャネルに対するIC
50値は、QPatchを用いて測定した。
【0259】
【表16】
【0260】
プロトキシン−II変異体の発現及び精製は、実施例1に記載のとおり行ったか、又は標準的な固相合成方法によって合成した。組み換え型又は合成ペプチドの収率を、野生型プロトキシン−IIの収率と比較した。表17は、選択プロトキシン−II変異体の収率がプロトキシン−IIの収率よりも著しく高いことを示しており、変異体のフォールディング特性の向上を示している。固相合成のスケールは0.1mmolであった。
【0261】
【表17】
【0262】
実施例7.プロトキシン−II変異体は、鞘内投与後の疼痛のin vivoモデルにおいて有効である。
鞘内投与後の疼痛の減少における選択プロトキシン−II変異体の有効性を評価した。
【0263】
ペプチドNV1D2775−OH、NV1D3034及び63955918を試験に用いた。動物モデルを用い激しい熱疼痛(テールフリック及び熱いプレート)、並びに損傷により誘発される疼痛(ホルマリンフリンチング)を測定した。
【0264】
テールフリック試験:動物をテールフリック装置(Ugo Basile)に置いた。当該装置は、焦点赤外光加熱領域(直径5mm)を有する。動物の尾部(遠位端部から1/3〜1/2の部分)を焦点加熱領域に置いた。ビヒクルで処理した動物で10秒以内にテールフリックが引き起されるよう、熱源の温度を調節した。文献に通常記載されるように、15秒のカットオフ時間を用いて、組織の損傷を防止した。熱刺激の開始と何らかの回避反応との間の経過時間を自動的に測定し、試験群毎に記録した。
【0265】
ホットプレート試験:25cm×25cm(10”×10”)の金属プレートを、4つのプレキシグラス壁(38センチメートル(15インチ)高さ)で囲んだものの上に動物を置いた。プレートを52.5℃の温度に維持した。反応潜時(動物が最初にその後ろ足を振り回すか若しくは舐める、飛び上がる、又は声を出すときの時間)を測定して、動物をプレートから取り除いた。応答を示さない動物を30秒後にプレートから取り除き、起こり得るいかなる組織損傷も防止した。
【0266】
ホルマリンフリンチング:UCSD社製の自動「フリンチ反応」測定装置を用いて、ホルマリンにより誘発される疼痛行動(すなわち足の振り回し)を測定した。当該装置は、装置床の下に装備した動作センサーを使用して、動物の片方の後足に貼着した金属バンドのいかなる突然の移動も検出する。ホルマリン注入の30分〜1時間前に、シアノアクリレートを小滴垂らし、片方の後足の足底表面に小型の金属バンドを取り付け、動物を試験チャンバーに置き、馴化させた。金属バンドが装着された足の背側にホルマリン(2.5%、50μL)を皮下注入した。足底へのホルマリン注入の直後、特注したシリンダー(25×10×20cm、San Diego Instrument社製)中に動物を置いた。足の振り回しを自動的に記録した。
【0267】
急性熱疼痛モデルでは、プロトキシン−II変異体63955918は、テールフリック試験(
図11A及び
図11B)及びホットプレート試験(
図11C、
図11D)において、鞘内単回投与後、長い潜時に示されるように、強力かつ遷延性の痛覚脱失を生じさせた。痛覚脱失の有意性及び持続期間は用量依存的だった。
【0268】
後足へのホルマリン注入は、損傷により誘発される疼痛において通常用いられるモデルである。注入により、特徴的な二相性のフリンチ行動が誘発され、それは試験動物における疼痛を示すものである。
図11Eで示すように、プロトキシン−II変異体63955918の鞘内注入の前処理を受けた動物では、ホルマリン試験においてフリンチが少なく、損傷により誘発される疼痛の阻害が示唆される。
【0269】
同様に、ペプチドNV1D2775−OH及びNV1D3034は、テールフリック、ホットプレート及びホルマリン試験において、鞘内単回投与後に有意な効果を示した(
図12A、
図12B、
図12C、
図12D、
図12E、
図13A、
図13B、
図13C、
図13D、
図13E)。
【0270】
実施例8.更なるプロトキシン−II変異体の特性評価
実施例6に記載の方策及び方法を用いて、更なるプロトキシン−II変異体を設計し、発現させ、実施例3に記載のプロトコルに従い、FLPR Tetra及び/又はQpatchで特性評価した。
【0271】
表18は、選択により得られたプロトキシン−II変異体のアミノ酸配列を示す。
【0272】
【表18-1】
【0273】
【表18-2】
【0274】
【表18-3】
【0275】
【表18-4】
【0276】
【表18-5】
【0277】
【表18-6】
【0278】
【表18-7】
【0279】
【表18-8】
【0280】
【表18-9】
【0281】
【表18-10】
【0282】
選択された変異体を、実施例3に記載のFLIPR Tetra又はQpatchを用いてそれらのNav1.7の阻害を特性評価した。表19は得られたIC
50値を示す。いくつかの変異体については、1つの濃度(10nM又は30nM)における阻害能(%)(% blk、コントロールのパーセントブロック)のみをQpatchで記録した。se;標準誤差
【0283】
【表19-1】
【0284】
【表19-2】
【0285】
【表19-3】
【0286】
【表19-4】
【0287】
【表19-5】
【0288】
実施例9.変異体63955918の生成
野生型プロトキシン−IIと比較するとき、プロトキシン−II変異体63955918はW7Q及びW30L置換を有する。実施例6に記載のように、Trp7及びTrp30の変異(一方又は両方)により、得られるプロトキシン−II変異体のフォールディングが改善され、リフォールディング困難なプロトキシン−II変異体のフォールディングをレスキューできた。
【0289】
63955918をバックボーンとして更なる変異体を生成し、分子の特性の更なる改善特徴を評価した。いくつかの変異体を実施例6及び7に更に記載する。
【0290】
生成された変異体及びそれらの配列を表20に示す。
【0291】
【表20-1】
【0292】
【表20-2】
【0293】
変異体を上記のとおり特性評価した。表21は、IC
50値及び/又はパーセントブロック(% blk)を示す(コントロールサンプルとの比較による、電流の%阻害)。Se:標準誤差。
【0294】
【表21】
【0295】
実施例10.変異体63955918の生成
得られるペプチドの体内分布を改善するために、更なる63955918の変異体を設計した。
【0296】
種々のファミリー3抑制性システインノットペプチドについても、W7及びW30置換を設計し、これらの変異による選択性及びリフォールディング特性の改善が、プロトキシン−IIを越えて他の相同性の高いペプチド配列にも見られるか否かを評価した。Klintら(Toxicon 60:478〜491,2012)により定義されるように、Navチャネル(NaSpTx)を阻害するファミリー3クモ毒素を、位置7におけるQの組み込み及び位置30におけるLの組み込みのための足場として選択した(番号付けは配列番号1に従う)。これらの配列としては、β−セラフォトキシン−Gr1c、β−セラフォトキシン−Gr1e、β/κ−セラフォトキシン−Cg2a、κ−セラフォトキシン−Ps1a、κ−セラフォトキシン−Ps1b、κ−セラフォトキシン−Gr2b、κ−セラフォトキシン−Gr2c、κ−セラフォトキシン−Gr2d、κ−セラフォトキシン−Cg2a、κ−セラフォトキシン−Cg2b、κ−セラフォトキシン−Ec2c、β−セラフォトキシン−Gr1d、β/κ−セラフォトキシン−Pm2a、κ−セラフォトキシン−Ec2a及びκ−セラフォトキシン−Ec2bが挙げられる。
【0297】
変異に用いる更なるファミリー3NaSpTx足場は、Arachnoserver(http://__www_arachnoserver_org/__mainMenu_html.)において同定された。ファミリー3毒素のアラインメントを
図14に示す。
【0298】
表22は、設計された変異体の配列を示す。
【0299】
【表22-1】
【0300】
【表22-2】
【0301】
【表22-3】
【0302】
【表22-4】
【0303】
非天然アミノ酸を組み込んだ得られる変異体は、標準的な固相ペプチド合成及び酸化的リフォールディング法により生成される。
【0304】
PEG基を有する変異体は、標準的な化学的コンジュゲーション法により生成される。
【0305】
実施例3に記載のように、得られる変異体を、FLIPR Tetra及びQPatchアッセイにおいてそれらのNav1.7阻害能を試験する。
【0306】
生成される変異体を、実施例3に記載の方法を用いて、それらの選択性を試験する。