(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0011】
本実施形態に係る光学ガラスは、カチオン%で、P
5+成分:34〜43%、Al
3+成分:10〜15%、Ba
2+成分:20〜26%、Ca
2+成分:6〜11%、Mg
2+成分:0.2〜13%、Sr
2+成分:5〜9%、La
3+成分:0.1〜0.9%、であり、アニオン%で、F
−成分:27〜45%、である、光学ガラスである。
【0012】
本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率低分散でありながら、液相温度が低く、高価な成分をほとんど含まなくともよいため低コストで生産できる光学ガラスである。従来、高屈折率を実現するにはBa
2+やSr
2+を含有させる手法等がとられているが、そうすると液相温度を低下させるP
5+やAl
3+の比率が低下し液相温度が上昇する傾向がある。そして、液相温度が上昇すると、熔融ガラスを冷却固化する際に揮発成分の蒸発による組成変動を誘発し、ガラス内部に脈理を生じやすいといった問題が起こりうる。この点、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる液相温度の上昇を抑制でき、ガラス内部の脈理の発生を抑制でき、さらには、高屈折率、低分散化、高い部分分散比を実現することもできる。
【0013】
なお、一般的に、ガラスのアッベ数が大きく(低分散に)なると屈折率が小さくなる。本明細書における高屈折率とは、同等のアッベ数を有する一般的なガラスに比べて比較的屈折率が高いことを意味しており、必ずしも屈折率の絶対値が大きいことを意味するわけではない。
【0014】
本明細書中において、特に断りがない場合は、各成分の含有比率は全てモル比をベースにしたカチオン%あるいはアニオン%であるものとする。
【0015】
(カチオン成分)
P
5+は、ガラス骨格を形成し、液相温度を低下させる成分である。P
5+の含有量は、34〜43%であり、好ましくは34〜42%であり、より好ましくは36〜41%である。この範囲とすることで、液相温度を上昇させずに高屈折率を図ることができ、かつ、失透を効果的に抑制することができる。
【0016】
Al
3+は、化学的耐久性を向上させる成分である。Al
3+の含有量は、10〜15%であり、好ましくは10〜14%であり、より好ましくは11〜14%である。この範囲とすることで、失透安定性を高め、成形性を良好にしながら高屈折率を図ることができ、かつ、優れた熔融性を維持し、失透を効果的に抑制することができる。
【0017】
Ba
2+は、屈折率を高め、アッベ数を低下させる成分である。Ba
2+の含有量は、20〜26%であり、好ましくは21〜25%であり、より好ましくは22〜25%である。
【0018】
Ca
2+は、屈折率を高め、アッベ数を低下させる成分である。Ca
2+の含有量は、6〜11%であり、好ましくは7〜11%であり、より好ましくは8〜11%である。
【0019】
Mg
2+は、屈折率を高め、アッベ数を低下させる成分である。Mg
2+の含有量は、0.2〜13%であり、好ましくは0.2〜12%であり、より好ましくは6〜12%である。この範囲とすることで、液相温度を上昇させずに高屈折率化、低分散化を実現することができる。
【0020】
Sr
2+は、屈折率を高め、アッベ数を低下させる成分である。Sr
2+の含有量は、5〜9%であり、好ましくは6〜9%であり、より好ましくは6〜8%である。
【0021】
Ba
2++Ca
2++Sr
2+の含有量の合計は、好ましくは37〜42%であり、より好ましくは38〜42%であり、更に好ましくは38〜40%である。屈折率と液相温度のコントロールの観点から、Ba
2++Ca
2++Sr
2+の含有量をこの範囲とすることで、屈折率の低下と液相温度の上昇を一層効果的に抑制できる。
【0022】
本実施形態の領域の光学ガラスで液相温度を低下させるには、一般的に失透防止成分であるP
5+やAl
3+の比率を増やすことが有効であるとされているが、本発明者が鋭意検討した結果、本実施形態の領域の光学ガラスでは、P
5+やAl
3+の含有比率よりもBa
2+、Ca
2+、Sr
2+の含有比率の総和に液相温度との相関があることを見出した。かかる知見に基づき、従来とは異なる観点から液相温度が低い光学ガラスを実現することもできる(但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない。)。
【0023】
La
3+は屈折率を高め、アッベ数を低下させる成分であるが、多量に含有するとバッチの熔融性が低下する傾向がある。La
3+の含有量は、0.1〜0.9%であり、好ましくは0.2〜0.9%であり、より好ましくは0.4〜0.9%である。
【0024】
また、本実施形態における光学ガラスは、任意成分であるGd
3+、Zn
2+、Li
+の含有量を、Gd
3+:0〜0.8%、Zn
2+:0〜2.2%、Li
+:0〜12%としてもよい。Gd
3+、Zn
2+は、光学ガラスの光学恒数値の調整に有用である。Li
+はガラス転移温度(T
g)を低下させるのに有用である。
【0025】
Gd
3+の含有量は、好ましくは0〜0.8%であり、より好ましくは0〜0.7%であり、更に好ましくは0〜0.5%である。
【0026】
Zn
2+の含有量は、好ましくは0〜2.2%であり、より好ましくは0〜2.1%であり、更に好ましくは0〜1.5%である。
【0027】
Li
+の含有量は、好ましくは0〜12%であり、より好ましくは0〜10%であり、更に好ましくは0〜8%である。
【0028】
さらに、本実施形態における光学ガラスは、任意成分であるY
3+、Yb
3+、Lu
3+の含有量を、Y
3+:0〜0.9%、Yb
3+:0〜0.9%、Lu
3+:0〜0.9%としてもよい。Y
3+、Yb
3+、Lu
3+は、光学恒数の調整に有用である。
【0029】
またさらに、Y
3++La
3++Gd
3++Yb
3++Lu
3+の含有量の合計は、好ましくは0.8〜0.9%であり、より好ましくは0.8〜0.85%であり、更に好ましくは0.8〜0.82%である。これらの希土類成分の含有量の総和をこの範囲とすることで、一層高い物性を発現させることができる。
【0030】
さらに、La
3++Gd
3+の含有量の合計が、0.8%を超えて0.9%未満であり、かつ、Y
3+を実質的に含有しないことが好ましい。この範囲にあることで、原料コストを低減し、失透を抑制することができる。
【0031】
本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないことを意味する。例えば、100ppm程度の含有量であれば、実質的に含有しないとみなす。
【0032】
Ta
5+は高価な原料であるため、その含有量は、好ましくは0〜10%であり、より好ましくは0〜5%であり、更に好ましくはTa
5+を実質的に含有しないことである。本実施形態に係る光学ガラスは、高価な原料であるTa
5+を含有せずとも優れた物性を発現できるため、コストの面でも優れている。
【0033】
(アニオン成分)
F
−の含有量は、27〜45%であり、好ましくは28〜44%であり、より好ましくは28〜41%である。この範囲とすることで、本実施形態に係る光学ガラスは、フッ化系ガラスとして好適に用いることができ、かつ、一層の高屈折率かつ低分散性を有するものとすることができる。
【0034】
O
−の含有量は、好ましくは55〜73%であり、より好ましくは56〜72%であり、更に好ましくは59〜72%である。この範囲とすることで、一層の高屈折率と低分散性を有する光学ガラスとすることができる。
【0035】
さらに、その他必要に応じて清澄、着色、消色や光学恒数値の微調整等の目的で、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、酸化物等の成分をガラス組成に適量添加することができる。また、上述した成分に限らず、本実施形態の光学ガラスの効果が得られる範囲でその他成分を添加することもできる。
【0036】
次に、本実施形態の光学ガラスの物性値について説明する。
【0037】
レンズの薄型化の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率を有している(屈折率(n
d)が大きい)ことが望ましい。しかしながら、一般的に、屈折率が高いほどアッベ数が低下する傾向にあるから、本実施形態に係る光学ガラスの屈折率(n
d)は、1.54を下限、1.58を上限とした、1.54〜1.58の範囲とすることが好ましい。
【0038】
レンズの収差補正の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、低分散性を有している(アッベ数(ν
d)が大きい)ことが望ましい。しかしながら、一般的に、アッベ数が大きいほど屈折率が低下する傾向にあるから、本実施形態に係る光学ガラスのアッベ数(ν
d)は、68を下限、74を上限とした、68〜74の範囲とすることが好ましい。
【0039】
さらに、上述した観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、液相温度(Tl)を790℃以下とすることができる。また、本実施形態に係る光学ガラスは、部分分散比(P
g,F)を0.540〜0.550とすることができる。
【0040】
そして、本実施形態に係る光学ガラスのガラス転移温度(T
g)は、496℃以下であることが好ましく、490℃以下であることがより好ましく、460℃以下であることが更に好ましく、440℃以下であることがより更に好ましい。このガラス転移温度とすることで、モールド成形性を良好にすることができる。
【0041】
光学系の可視光透過率の観点からは、本実施形態に係る光学ガラスは、内部透過率の80%表示値(光路長10mmにおける内部透過率が80%となる波長;λ
80)を336nm以下とすることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る光学ガラスは、高価な組成成分であるTa
5+等を含有せずとも、低分散、高屈折率であり、高い部分分散比や低い液相温度を実現することができるから、コストの面でも優れている。
【0043】
上述した観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、例えば、光学装置の備える光学素子として好適に用いることができる。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。これら光学素子を含む光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、多光子顕微鏡等の顕微鏡に用いることができる。なお、光学装置としては、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、ビデオカメラ、テレコンバーター、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、レーザー距離計、プロジェクタ等も含まれる。以下にこれらの一例を説明する。
【0044】
<撮像装置>
図1は、光学装置を撮像装置とした場合の一例の斜視図である。撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0045】
図2は、光学装置を撮像装置とした場合の他の例の概略図である。
図2(a)は撮像装置CAMの正面図を、
図2(b)は撮像装置CAMの背面図を示す。撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
【0046】
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニターMに表示される。撮影者は、液晶モニターMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリー(不図示)に記録保存する。
【0047】
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0048】
<多光子顕微鏡>
図3は、多光子顕微鏡2の構成の例を示すブロック図である。多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0049】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0050】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0051】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0052】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0053】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0054】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
【0055】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0056】
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0057】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0058】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
【0059】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0060】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各表に、光学ガラスの成分組成、屈折率(n
d)、アッベ数(ν
d)、部分分散比(P
g,F)、液相温度(Tl)、内部透過率(λ
80)及び、ガラス転移温度(T
g)の測定結果を示す。
【0062】
<光学ガラスの作製>
各実施例及び各比較例に係る光学ガラスは、以下の手順で作製した。まず、各表に記載の化学組成となるよう、フッ化物、酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、炭酸塩、及び硝酸塩等のガラス原料を秤量した。次に、秤量した原料を混合して白金ルツボに投入し、1100℃の温度で50分間熔融させて攪拌均一化した。泡切れを行った後、適当な温度に下げてから金型等に鋳込んで510℃以下で徐冷し、成形することで各サンプルを得た。
【0063】
(1)屈折率(n
d)とアッベ数(ν
d)
各サンプルの屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)は、屈折率測定器(株式会社島津製作所製;「KPR−2000」)を用いて測定及び算出した。n
dは、587.562nmの光に対する光学ガラスの屈折率を示す。ν
dは、以下の式(1)より求めた。n
C、n
Fは、それぞれ波長656.273nm、486.133nmの光に対する光学ガラスの屈折率を示す。
ν
d=(n
d−1)/(n
F−n
C)・・・(1)
【0064】
(2)部分分散比(P
g,F)
各サンプルの部分分散比(P
g,F)は、主分散(n
F−n
C)に対する部分分散(n
g−n
F)の比を示し、以下の式(2)より求めた。n
gは、波長435.835nmの光に対するガラスの屈折率を示す。
(P
g,F)=(n
g−n
F)/(n
F−n
C)・・・(2)
【0065】
(3)液相温度(Tl)
本明細書において、各サンプルの液相温度(Tl)は、ガラス約30mgを白金容器に入れ、熱分析装置を用いて20℃/分の昇温速度にて1000℃まで加熱し、得られたTG曲線に確認できる重量減少開始温度と定義される。重量減少開始温度は、重量減少前のベースラインの直線部分と重量減少の立ち下がり部分の最大傾斜の点で引いた接線とを外挿して得ることができる。なお、この重量減少の原因は昇温時に発生したガラス表面の失透が融解したことによるフッ素成分等の揮発によるものと考えられる。特に、フッ素は、溶融状態において原料中や空気中の水と反応した方が化学的に安定であり、DTA曲線では発熱ピークとして確認される。DTA曲線において、上述した重量減少開始温度の近傍に発熱ピークが確認されていれば、TG曲線における重量減少の原因にフッ素成分の揮発が関係していることを示唆しているといえる。DTA曲線における発熱ピーク前のベースラインと発熱ピーク立ち上がり部分の最大傾斜の点で引いた接線とを外挿して得られる交点の温度を発熱開始温度として各表に記載し、重量減少開始温度、すなわち液相温度(Tl)の近傍の値であるかも併せて確認した。
【0066】
(4)内部透過率が80%となる波長(λ
80)
各サンプルの内部透過率が80%となる波長(λ
80)は、以下の要領で求めた。まず、12mm厚と2mm厚の平行研磨されたガラス試料を用意し、厚み方向と平行に光が入射した際の波長200〜700nmの範囲における内部透過率を測定し、厚さ10mmにおける内部透過率に換算した。そして、内部透過率が80%となる波長をλ
80とした。
【0067】
(5)ガラス転移温度(T
g)
各サンプルのガラス転移温度(T
g)は、熱分析装置を用いて、4℃/分の昇温速度で測定して得られたDTA曲線から算出した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
本実施例の光学ガラスは、高屈折率・低分散でありながら、液相温度が低く、高い部分分散を有することが確認された。このことは、ガラス製造時、特に熔融成形時の脈理の抑制において、極めて有用であることを示す。
【0074】
また、ガラス転移温度(T
g)は高い方がガラスの固化が早いため脈理の抑制に有用ではあるが、Li
+の導入によって低温側にシフトさせることも可能であり、この場合には熱による金型へのダメージが少ないモールド用硝材としても好適に使用できることも確認された。さらには、内部透過率(λ
80)は336nm以下で、着色が抑制され、透過性にも優れていることも確認された。