特許第6985178号(P6985178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6985178あと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985178
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】あと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20211213BHJP
【FI】
   E04G23/02 DESW
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-32662(P2018-32662)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-148098(P2019-148098A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2020年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】米田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 和範
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−228315(JP,A)
【文献】 特開平7−224544(JP,A)
【文献】 特開2017−49905(JP,A)
【文献】 特開2014−148847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あと施工補強部材を挿入するための削孔位置を管理するためのシステムであって、
削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得する配筋設計データ取得手段と、
前記配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定する削孔位置決定手段と、
施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像を投影する投影手段と、
投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置を取得する実配筋位置データ取得手段と、
前記削孔位置と前記実際の配筋位置とを比較して、前記削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて前記削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定する修正削孔位置決定手段と、
を備え、
前記投影手段は、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、修正削孔位置を特定する映像を投影する、
ことを特徴とするあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム。
【請求項2】
前記配筋設計データ、前記削孔位置及び前記修正削孔位置のデータは三次元データからなり、
前記投影手段は、削孔位置及び修正削孔位置を特定する映像を三次元的に表現可能なプロジェクションマッピングを用いて、映像を投影する、
ことを特徴とする請求項1に記載のあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム。
【請求項3】
あと施工補強部材を挿入するための削孔位置を管理するための方法であって、
削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得する工程と、
取得した配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定する工程と、
施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像を投影する工程と、
投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置を取得する工程と、
削孔位置と実際の配筋位置とを比較して、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定する工程と、
施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、修正削孔位置を特定する映像を投影する工程と、
を含むことを特徴とするあと施工補強部材を挿入するための削孔管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法に関するもので、詳しくは、既設コンクリート構造物に対して補強工事を行う際に用いるあと施工補強部材を挿入するための削孔を管理するためのシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模地震の発生が懸念される中、既設の鉄筋コンクリート構造物に対する耐震補強のニーズが高まっている。既設の鉄筋コンクリート構造物のせん断耐荷力が不足する場合には、主鉄筋と交差する方向に補強鋼材を追加することで、構造物のせん断耐荷力を増加させなければならない。このような補強工事では、補強部材が確実に定着することが必要であると共に、既設構造物の損傷を最小限とし、さらに容易に施工できることが要求される。
【0003】
このような補強工事には、補強部材を埋め込むための削孔を行う必要がある。この際、予め定めた適正な位置に計画通りの削孔を行うために、削孔径、削孔深さ、鉄筋位置等を考慮して削孔を行わなければならない。そして、適正な位置に計画通りの削孔が行われていない場合には、設計通りに構造物のせん断耐荷力を増加させることができないばかりでなく、鉄筋を損傷してしまう場合があり、削孔位置の決定は重要な作業となる。
【0004】
特許文献1に記載された技術は、コンクリート構造物のコンクリート充填不良箇所を補修するコンクリート構造物補修方法に関するものである。このコンクリート構造物補修方法は、コンクリート構造物表面の状態に不具合があるが否かを判定する工程と、コンクリート構造物表面の状態に不具合がある場合、コンクリート構造物内の鉄筋位置を把握し、コンクリート構造物内の状態を確認する確認孔の削孔位置を鉄筋位置と交差しないように決定する工程と、コンクリート構造物に確認孔を削孔する工程と、コンクリート構造物の補修範囲を確定する工程と、コンクリート構造物の補修範囲の空隙を把握する工程と、確認孔から、注入孔と排出孔を決めて、充填材を注入する工程と、確認孔とは異なる検査孔を削孔する工程と、検査孔内に充填不良箇所又は空隙が存在するか否かを判定する工程と、検査孔内に充填不良箇所又は空隙が存在しない場合、検査孔を後埋めする工程とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−148847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、あと施工補強部材を挿入するための削孔は、適切な位置に削孔を行う必要があるが、削孔位置を決定するには、設計図に基づいて鉄筋位置を把握することにより墨出しを行っていた。このような作業は人手に頼っており、計測ミスや墨出しミスが発生するおそれがあり、作業効率を向上させるとともに、削孔位置を正確に決定するための技術の開発が望まれていた。
【0007】
なお、特許文献1に記載された技術は、コンクリート構造物のコンクリート充填不良箇所を補修する技術であるが、削孔を行うために鉄筋位置を把握することが記載されている。そして、鉄筋位置を把握するには、設計図等で確認を行い、さらに、金属探知センサ等で実際に鉄筋位置を確認することが好ましいとしている。しかし、特許文献1に記載された技術を含めて、従来の技術では、鉄筋位置を把握して削孔位置を決定するものの、作業効率を向上させたり、削孔位置を正確に決定したりする技術には言及していない。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、作業効率を向上させるとともに、正確な削孔位置を提示することが可能なあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システムは、あと施工補強部材を挿入するための削孔位置を管理するためのシステムに関するものであり、配筋設計データ取得手段と、削孔位置決定手段と、投影手段と、実配筋位置データ取得手段と、修正削孔位置決定手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
配筋設計データ取得手段は、削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得するための手段である。削孔位置決定手段は、配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定するための手段である。投影手段は、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像及び修正削孔位置を特定する映像を投影するための手段である。実配筋位置データ取得手段は、投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置を取得するための手段である。修正削孔位置決定手段は、削孔位置と実際の配筋位置とを比較して、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定するための手段である。
【0011】
また、上述したあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システムにおいて、配筋設計データ、削孔位置データ及び修正削孔位置のデータは三次元データからなり、投影手段は、削孔位置及び修正削孔位置を特定する映像を三次元的に表現可能なプロジェクションマッピングを用いて、映像を投影することが好ましい。
【0012】
本発明に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理方法は、あと施工補強部材を挿入するための削孔位置を管理するための方法であって、削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得する工程と、取得した配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定する工程と、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像を投影する工程と、投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置を取得する工程と、削孔位置と実際の配筋位置とを比較して、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定する工程と、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、修正削孔位置を特定する映像を投影する工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法によれば、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像及び修正削孔位置を特定する映像を投影することができる。また、削孔位置と実際の配筋位置とを比較して、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて、削孔位置を修正して修正削孔位置を決定している。
【0014】
このように、配筋位置を避けた修正削孔位置をコンクリート構造物の壁面に投影することにより、作業効率を向上させるとともに、正確な削孔位置を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システムの構成を示すブロック図。
図2】本発明の実施形態に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システムにおける削孔位置の決定及び提示手順を説明する説明図。
図3】本発明の実施形態に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理方法のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るあと施工補強部材を挿入するための削孔管理システム及び削孔管理方法(以下、削孔管理システム、削孔管理方法という)を説明する。図1図3は本発明の実施形態に係る削孔管理システム及び削孔管理方法を説明するもので、図1は削孔管理システムの構成を示すブロック図、図2は削孔管理システムにおける削孔位置の決定及び提示手順を説明する説明図、図3は削孔管理方法のフローチャートである。
【0017】
<削孔管理システムの概要>
本発明の実施形態に係る削孔管理システム10は、図1に示すように、配筋設計データ取得手段11と、削孔位置決定手段12と、実配筋位置データ取得手段13と、修正削孔位置決定手段14と、投影手段15とを備えている。各手段は、コンピュータの機能手段や各種の計器により構成する。また、コンピュータでは、これにインストールされたプログラムがCPU等のハードウエア資源と協同して動作することにより、各手段としての機能を発揮する。なお、プログラムには、これと同等の機能を発揮する論理回路を含んでいる。
【0018】
<配筋設計データ取得手段>
配筋設計データ取得手段11は、削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得するための手段である。配筋設計データは、例えば、他の設計データとともに、管理事務所等に設置したサーバー20に設計データベースとして格納されている。配筋設計データ取得手段11は、サーバー20とデータ通信を行い、サーバー20から配筋設計データをダウンロードする。なお、配筋設計データは三次元データからなることが好ましい。
【0019】
<削孔位置決定手段>
削孔位置決定手段12は、取得した配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定するための手段である。削孔位置の決定では、削孔深さ等、削孔に関する仕様を考慮し、設計上、削孔範囲内に配筋された鉄筋を避けるように削孔位置を決定する。なお、削孔位置のデータは三次元データからなることが好ましい。
【0020】
<投影手段>
投影手段15は、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像を投影するための手段である。また、修正削孔位置が決定された場合には、コンクリート構造物の壁面に、修正削孔位置を特定する映像を投影する。また、投影するデータが三次元データである場合には、削孔位置及び修正削孔位置を特定する映像を三次元的に表現可能なプロジェクションマッピングを用いて投影する。
【0021】
図示しないが、投影手段15は、光源、映像を壁面に結像させるための光学系、光像の明るさや色彩等を調整するための映像調整手段等を備えている。本発明の投影手段15は、配筋設計データを用いて、削孔位置及び修正削孔位置を特定する映像を投影するため、映像は実寸大で、配筋設計データに重畳させる必要がある。したがって、例えば、壁面に設置したマーカーを認識して、投影する映像の位置合わせを行う必要がある。このため、投影する映像の位置合わせを行うための手段も備えている。
【0022】
<実配筋位置データ取得手段>
実配筋位置データ取得手段13は、投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置を取得するための手段である。実配筋位置データは、例えば、金属探知センサにより取得することができる。
【0023】
金属探知センサで探知した実配筋位置データは、作業者が入力手段を用いて入力し、入力された実配筋位置データを実配筋位置データ取得手段13により取得してもよいが、金属探知センサとコンピュータとの間で無線通信を行い、実配筋位置データ取得手段13により、直接、実配筋位置データを取得することが好ましい。このように、金属探知センサとコンピュータとの間で無線通信を行って実配筋位置データを取得することにより、作業者による入力ミスを防止することができるとともに、作業効率を向上させることができる。
【0024】
<修正削孔位置決定手段>
修正削孔位置決定手段14は、削孔位置と実際の配筋位置とを比較して、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定するための手段である。すなわち、配筋設計に基づいて配筋を行っているが、何らかの事情で配筋位置がずれてしまうことがある。このように、配筋設計からずれて配筋が行われてしまうことにより、削孔位置に鉄筋が配筋されている場合に、修正を行わずに削孔を実施すると鉄筋を損傷してしまう。そこで、修正削孔位置決定手段14により、鉄筋を避けて修正削孔位置を決定する。なお、修正削孔位置のデータは三次元データからなることが好ましい。
【0025】
<削孔位置の決定及び提示手順>
図2及び図3を参照して、本発明に係る削孔管理システム10を用いた削孔位置の決定及び提示の手順を説明する。本発明に係る削孔管理方法では、サーバー20等に配筋設計データが格納されていることが前提となる。また、本発明に係る削孔管理システム10は、コンピュータの機能により実現される配筋設計データ取得手段11、削孔位置決定手段12、実配筋位置データ取得手段13、修正削孔位置決定手段14と、光学系機器からなる投影手段15とを主要な構成要素としており、各種のデータの取得及び演算はコンピュータで実施し、投影手段15により、削孔位置及び修正削孔位置を特定するための映像をコンクリート構造物の壁面に投影する。
【0026】
本発明に係る削孔管理方法では、まず初めに、削孔の施工場所に関する配筋設計データを取得する(S1)。そして、取得した配筋設計データに基づいて設計された配筋位置を特定し、当該配筋位置を避けて削孔位置を決定する(S2)。削孔位置が決定されると、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、決定した削孔位置を特定する映像を投影する(S3)。
【0027】
この状態で、投影された削孔位置の映像付近における実際の配筋位置データを取得する(S4)。そして、削孔位置と実際の配筋位置とを比較して(S5)、削孔位置に配筋がされている場合に、当該配筋位置を避けて削孔位置を修正し、修正削孔位置を決定する(S6)。修正削孔位置が決定されると、投影手段15により、施工場所であるコンクリート構造物の壁面に、修正削孔位置を特定する映像を投影する(S7)。
【0028】
また、配筋設計データ、削孔位置及び修正削孔位置のデータが三次元データである場合には、投影手段15は、削孔位置及び修正削孔位置を特定する映像を三次元的に表現可能なプロジェクションマッピングを用いて、映像を投影する。
【符号の説明】
【0029】
10 削孔管理システム
11 配筋設計データ取得手段
12 削孔位置決定手段
13 実配筋位置データ取得手段
14 修正削孔位置決定手段
15 投影手段
20 サーバー
図1
図2
図3