特許第6985180号(P6985180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6985180
(24)【登録日】2021年11月29日
(45)【発行日】2021年12月22日
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/416 20060101AFI20211213BHJP
   B23Q 15/013 20060101ALI20211213BHJP
【FI】
   G05B19/416 F
   B23Q15/013
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-33780(P2018-33780)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-149041(P2019-149041A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年7月10日
【審判番号】不服2020-14036(P2020-14036/J1)
【審判請求日】2020年10月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宇野 宏祐
【合議体】
【審判長】 河端 賢
【審判官】 田々井 正吾
【審判官】 見目 省二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/193574(WO,A1)
【文献】 特許第(JP,B2)6715542
【文献】 特開2017−209743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/00 - 19/46
B23Q 15/00 - 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工に関連して発生する時系列データの特徴量を出力する数値制御装置であって、
センサから前記時系列データを取得するデータ取得部と、
前記時系列データをその値に従ってソートし、前記値の変化量が所定のしきい値以下である前記時系列データの集合を抽出し、前記集合を代表する前記特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量を出力する特徴量出力部と、を有することを特徴とする
数値制御装置。
【請求項2】
加工に関連して発生する時系列データの特徴量を出力する数値制御装置であって、
センサから前記時系列データを取得するデータ取得部と、
前記時系列データの値の出現頻度をカウントし、前記出現頻度が所定のしきい値以上である前記時系列データの集合を抽出し、前記集合を代表する前記特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量を出力する特徴量出力部と、を有することを特徴とする
数値制御装置。
【請求項3】
前記数値制御装置は主軸負荷に基づいて送り速度を制御する主軸制御部をさらに備え、 前記データ取得部は、前記主軸負荷の時系列データを取得し、
前記主軸制御部は、前記特徴量出力部が出力する前記特徴量を目標値として、前記送り速度を制御することを特徴とする
請求項1または2の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は数値制御装置に関し、特に加工に関連するデータから特徴量を取得する数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数値制御装置は、加工に関連して発生するデータをモータやセンサ等から取得し、取得したデータに基づいて各種制御を行うことが可能である。例えば主に荒加工でのサイクルタイム短縮や工具寿命の延長を目的として、主軸負荷を検出し、主軸負荷が一定となるように送り速度を制御する数値制御装置がある。このような制御は適応制御と呼ばれており、適応制御を実現するフィードバック制御の手法の一つとしてPID制御がある(図1)。
【0003】
特許文献1には、主軸負荷値が一定となるように主軸の移動速度を制御するPID制御を行う数値制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−097701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような制御を行うためには目標となる主軸負荷等の値を加工条件に応じて決める必要がある。例えば経験豊富な技術者が、加工に伴う主軸負荷の変動をプロットしたグラフを見て、安定して加工が実施されている部分の負荷を読み取ることで目標値を設定していた。このように、従来は目標値が経験やノウハウに基づいて決定されており、手間もかかるものであるという問題があった。よって、加工に関連して発生するデータ(例えば主軸負荷)の特徴を簡便かつ適切に取得する手法が求められていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、加工に関連するデータから特徴量を取得する数値制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、加工に関連して発生する時系列データの特徴量を出力する数値制御装置であって、センサから前記時系列データを取得するデータ取得部と、前記時系列データをその値に従ってソートし、前記値の変化量が所定のしきい値以下である前記時系列データの集合を抽出し、前記集合を代表する前記特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量を出力する特徴量出力部と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、加工に関連して発生する時系列データの特徴量を出力する数値制御装置であって、センサから前記時系列データを取得するデータ取得部と、前記時系列データの値の出現頻度をカウントし、前記出現頻度が所定のしきい値以上である前記時系列データの集合を抽出し、前記集合を代表する前記特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量を出力する特徴量出力部と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施の形態にかかる数値制御装置は、前記数値制御装置は主軸負荷に基づいて送り速度を制御する主軸制御部をさらに備え、前記データ取得部は、前記主軸負荷の時系列データを取得し、前記主軸制御部は、前記特徴量出力部が出力する前記特徴量を目標値として、前記送り速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工に関連するデータから特徴量を取得する数値制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】数値制御装置が実施しうる各種制御を示す図である。
図2】数値制御装置1のハードウェア構成図である。
図3】数値制御装置1の機能構成を示すブロック図である。
図4】時系列データの一例を示す図である。
図5】特徴量算出部102が行う処理を示す図である。
図6】特徴量算出部102が行う処理を示す図である。
図7】特徴量算出部102が行う処理を示す図である。
図8】特徴量算出部102が行う処理を示す図である。
図9】特徴量算出部102が行う処理を示す図である。
【0010】
本発明の実施の形態にかかる数値制御装置1の構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態にかかる数値制御装置1の要部の概略的なハードウェア構成図である。
【0011】
数値制御装置1が備えるCPU11は、数値制御装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、不揮発性メモリ14に格納されたプログラムをバス20を介して読み出し、プログラムに従って数値制御装置1全体を制御する。
【0012】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、数値制御装置1の電源がオフされても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ14に記憶されているプログラム、データは、利用時には揮発性メモリ13に展開されても良い。揮発性メモリ13には、不揮発性メモリ14から展開されたプログラム、データの他、一時的な計算データや表示データ、入力装置を介して入力されたデータ等が格納される。
【0013】
表示器/MDIユニット70はディスプレイやキーボード等を備えたデータ入出力装置である。表示器/MDIユニット70のキーボードから入力された指令やデータは、インタフェース15を介してCPU11に渡される。また、CPU11から出力された表示データは、インタフェース15を介して表示器/MDIユニット70のディスプレイに表示される。
【0014】
センサ80は、加工に伴って発生する種々の時系列データを出力する装置である。例えば、工作機械に外付けされる温度センサや速度センサ等のほか、負荷や温度等の値を出力可能なモータ等もこれに含まれる。センサ80から出力されたデータは、インタフェース16を介してCPU11に渡される。
【0015】
<実施の形態1>
以下、本発明の実施の形態1として数値制御装置1の一構成例について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る数値制御装置1の概略的な機能構成を示すブロック図である。数値制御装置1は、データ取得部101、特徴量算出部102、特徴量出力部103を有する。
【0016】
データ取得部101は、センサ80が出力する時系列データを取得する。図4に、時系列データの一例として、データ取得部101が取得した主軸負荷の波形を示す。ここで、波形が密になっている部分(図3において楕円で囲んだ部分)は、安定的に加工がなされている部分である。従来、熟練の技術者は時系列データからこのような安定部分を発見し、安定部分の代表値(例えば平均値や中央値など)を抽出して各種制御の目標値として利用していた。
【0017】
特徴量算出部102は、データ取得部101が取得した時系列データを値の大きさでソートし、ソートしたデータ間の微分値をそれぞれ算出し、微分値が一定の条件(典型的には所定のしきい値以下であるなど)に収まるデータを抽出する。これにより、時系列データの安定している部分(以下、特徴量という)の値を抽出する処理を行う。図5及び図6を用いて、特徴量算出部102が行う処理について説明する。
【0018】
図5は、特徴量算出部102がソート処理を行う前の時系列データを示すグラフである。縦軸は主軸負荷、横軸は時間を示している。図6の上図は、特徴量算出部102がソート処理を行った後の時系列データを示すグラフである。縦軸は主軸負荷、横軸はデータ数の累計値を示しており、主軸負荷について昇順に整序されたデータは、横軸の正方向に向かって順に並べられた形となっている。図6の下図は、ソート後の時系列データ(図6上図)に基づいて、データ間の微分値をプロットしたグラフである。図6上図と下図とを比較すると、下図において微分値が所定のしきい値を下回っているとき、上図においてデータの間隔が密になっていることが分かる。この密な部分はすなわち安定部分であるから、特徴量算出部102はここに属するデータの特性を特徴量として抽出する。
【0019】
特徴量算出部102は、例えば微分値が所定のしきい値を下回るデータの平均値又は中央値を、特徴量として算出しても良い。又は、図7に示すように、所定のしきい値を下回るデータの上限値及び/又は下限値、あるいは上限値及び/又は下限値から所定の範囲内に存在する値を、特徴量として算出しても良い。この場合の特徴量は、例えば安定した加工が行える主軸負荷の推奨範囲の上限及び/又は下限を示すものとなる。下限値(又はそこから所定範囲内に存在する値)は、工具寿命を優先する場合の主軸負荷の推奨値といえる。一方、上限値(又はそこから所定範囲内に存在する値)は、サイクルタイムを優先する場合の主軸負荷の推奨値といえる。
【0020】
特徴量算出部102が時系列データをソートすると、時間的な順序関係に関する情報は失われる。その代わりに、時系列データの安定部分、すなわち微分値が一定未満であって変化が緩やかなデータの集合が抽出可能となる。例えば主軸負荷の適応制御は、負荷の高いときはこれを抑制し、低いときはこれを上昇させる制御であるので、負荷の安定している部分を適切に特定して制御の目標値とすることが重要である。特徴量算出部102は、上述の処理により主軸負荷などの安定部分を適切に抽出し、目標値として利用可能な特徴量を算出することができる。
【0021】
特徴量算出部102が安定部分を特定するために使用するしきい値は、予め固定値として与えられてもよく、任意の方法で計算等により求められるものであっても良い。例えば、微分結果の平均値をしきい値として使用しても良い。
【0022】
なお図8に示すように、微分値がしきい値未満となる範囲が複数存在する場合があり得る。図8において、主軸負荷0付近に分布する集団(1)と、主軸負荷の安定部分に分布する集団(2)は、いずれも微分値がしきい値未満のものである。言うまでもなく、特徴量として有用なのは(2)であるから、(1)を抽出結果から除外する必要がある。例えば特徴量算出部102は、複数の集団が抽出された場合、両者に含まれるデータの代表値(最小値、最大値、平均値など)が小さい方の集団を抽出結果から除外することができる。あるいは特徴量算出部102は、複数の集団が抽出された場合、両者に含まれるデータ(主軸負荷など)の代表値(最小値、最大値、平均値など)が所定の第2のしきい値よりも小さい方の集団を抽出結果から除外することができる。あるいは、データ取得部101が、実際に工具がワークに当たっているとき、すなわち加工中にのみ時系列データを取得することもできる。そうすれば、そもそも除外すべきデータを取得することを避けられる。実際に工具がワークに当たっているかどうかは、例えば主軸負荷の微分値が一定以上になったことをもって検出できる。
【0023】
特徴量出力部103は、特徴量算出部102が算出した特徴量を出力する。例えば特徴量出力部103は、特徴量算出部102が算出した、安定部分のデータの平均値又は中央値、上限値又は下限値、あるいは上限値又は下限値から所定の範囲内に存在する値などの特徴量を、画面上に表示することができる。又は、数値制御装置1の他の機能、例えば適用制御やPID制御を実行する処理部に対して、特徴量を直接出力することもできる。
【0024】
例えば主軸負荷のフィードバック制御は、主軸負荷を目標値に近づけるよう、送り速度を制御することで実現している。数値制御装置1がこのような主軸負荷のフィードバック制御を行う主軸制御部を有している場合、主軸制御部は、特徴量出力部103が出力する特徴量を主軸負荷の目標値として送り速度を制御することができる。すなわち、外乱によって変化し得る指令に関する数値を制御するための目標値として、本発明の特徴量を使用することが可能である。
【0025】
本実施の形態によれば、数値制御装置1は、実際の加工に関連して取得された時系列データのうち極端に高い値及び低い値を除外した安定部分から、特徴量を簡便かつ適切に抽出できる。これにより技術者は、所望の制御に適した目標値を容易に設定することができる。
【0026】
また本実施の形態では、数値制御装置1は時系列データを値の大きさに基づいてソートしてから特徴量を抽出するため、安定部分の上限及び下限を織り込んだ特徴量を出力することができる。すなわち幅を持った特徴量を出力できる。これは産業用機械の制御などに特に適した特徴量である。これにより、技術者は安定部分の上限及び下限の範囲内で、目的に応じ任意の目標値を設定することができる。例えば、サイクルタイム短縮や工具寿命延長などの要望に応じて、安定部分の上限及び下限の範囲内で高い又は低い主軸負荷を選択することが可能となる。
【0027】
<実施の形態2>
実施の形態2として、数値制御装置1の他の実現例について説明する。
実施の形態2にかかる数値制御装置1も、図3に示すように、データ取得部101、特徴量算出部102、特徴量出力部103を有する。実施の形態1との違いは特徴量算出部102の処理である。実施の形態2における特徴量算出部102は、データ取得部101が取得した時系列データに対して、値又は値の範囲ごとの出現数、換言すれば出現頻度をカウントする。そして出現数が一定の条件(典型的には所定のしきい値以上であるなど)に収まるデータを抽出する。これにより、時系列データの安定している部分すなわち特徴量を抽出する処理を行う。図9を用いて、特徴量算出部102が行う処理について説明する。
【0028】
図9左図は、データ取得部101が取得した時系列データを示すグラフである。縦軸は主軸負荷、横軸は時間を示している。図9右図は、特徴量算出部102がカウント処理を行った後の時系列データを示すグラフである。縦軸は主軸負荷、横軸はカウント数すなわち時系列データ中の当該主軸負荷の出現数を示している。ここで特徴量算出部102は、時系列データの値を一定の範囲毎に区切ってカウントを行っても良い。例えば、サンプリングで得られた主軸負荷の値を1%区切りでグルーピングし、各グループに属するデータの数をカウントすることなどができる。図9右図においてカウント数が所定のしきい値を上回っているとき、図9左図においてデータの間隔が密になっていることが分かる。この密な部分はすなわち安定部分であるから、特徴量算出部102はここに属するデータの特性を特徴量として抽出する。安定部分からの特徴量の抽出方法は実施例1と同様である。
【0029】
本実施の形態によれば、数値制御装置1は、実施の形態1と同様の特徴を備える特徴量を、より少ない計算量や使用メモリ量で算出することができる。
【0030】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。例えば、上述の実施の形態では数値制御装置1がデータ取得部101、特徴量算出部102、特徴量出力部103を有する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば1以上の数値制御装置に接続された上位装置が、データ取得部101、特徴量算出部102、特徴量出力部103を有することとしても良い。すなわち、1以上の数値制御装置から出力されるセンサ値が上位装置のデータ取得部101によって取得され、1以上の数値制御装置から出力されるセンサ値を用いて、特徴量算出部102及び特徴量出力部103が特徴量の算出や出力を行う。上位装置は、ネットワーク上に配置されたサーバ等のコンピュータであっても良く、ネットワークにより相互接続された複数の数値制御装置のうち1つの数値制御装置であっても良い。
【0031】
また、上述の実施の形態では、本発明の適用例として主軸負荷の特徴量の算出処理を示したが、本発明は他の様々な時系列データからの特徴量抽出に適用することが可能である。また、このようにして算出した特徴量は、適応制御やPID制御以外の様々な制御に利用可能である。以下に2つの応用例を示す。
【0032】
<応用例1>
ワークの加工を開始する前に、工作機械を暖めるため空運転を行うことがある。空運転の終了の判断は、例えば切削液の温度が安定したことを条件として行うことができる。この条件の成就の判断を、本発明を適用することにより実現することが可能である。
【0033】
データ取得部101は、温度センサとしてのセンサ80が出力する、切削液の温度の時系列データを取得する。特徴量算出部102は、データ取得部101が取得した時系列データの安定部分を、実施の形態1又は2に示した手法により特定する。そして特徴量算出部102は、例えば安定部分に含まれる温度データの平均値を特徴量として抽出する。特徴量出力部103は、特徴量を図示しない判定部に出力する。数値制御装置1は、この一連の処理を一定時間毎に繰り返し、特徴量を一定時間毎に出力する。
【0034】
判定部は、特徴量出力部103から一定時間毎に出力される特徴量(安定部分に含まれる温度データの平均値)を受信する。例えば特徴量の微分値が所定のしきい値以下となるなど、特徴量の時間変化が十分小さくなったと判断できたときに、空運転を終了すべきと判断する。
【0035】
<応用例2>
工具の劣化が進むと、主軸負荷の安定部分は徐々に上昇する。このことに着目して、主軸負荷の特徴量の時間変化を観察することで、工具寿命を推測することができる。
【0036】
データ取得部101は、センサ80が出力する、主軸負荷の時系列データを取得する。特徴量算出部102は、データ取得部101が取得した時系列データの安定部分を、実施の形態1又は2に示した手法により特定する。そして特徴量算出部102は、例えば安定部分に含まれる主軸負荷の平均値を特徴量として抽出する。特徴量出力部103は、特徴量を図示しない判定部に出力する。数値制御装置1は、この一連の処理を一定時間毎に繰り返し、特徴量を一定時間毎に出力する。
【0037】
判定部は、特徴量出力部103から一定時間毎に出力される特徴量(安定部分に含まれる主軸負荷の平均値)を受信する。例えば特徴量が所定のしきい値を超えるなど、特徴量が限界を超えて上昇したと判断できたときに、工具寿命が近いと判断する。
【0038】
<応用例3>
応用例2の手法は、工具以外の寿命予測にも適用可能である。例えば、切削液の温度の安定部分は、切削液のヒータの経年劣化とともに変化する可能性がある。したがって、切削液のヒータの寿命予測に、切削液の温度データの特徴量の時間変化を利用することができる。
【0039】
データ取得部101は、温度センサとしてのセンサ80が出力する、切削液の温度の時系列データを取得する。特徴量算出部102は、データ取得部101が取得した時系列データの安定部分を、実施の形態1又は2に示した手法により特定する。そして特徴量算出部102は、例えば安定部分に含まれる温度データの平均値を特徴量として抽出する。特徴量出力部103は、特徴量を図示しない判定部に出力する。数値制御装置1は、この一連の処理を一期間毎に繰り返し、特徴量を一定期間毎に出力する。ここでの期間は、応用例1と異なり、例えば日単位などより長いスパンに設定することができる。
【0040】
判定部は、特徴量出力部103から一定時間毎に出力される特徴量(安定部分に含まれる温度データの平均値)を受信する。例えば特徴量の微分値が所定のしきい値以上となるなど、特徴量の時間変化が一定以上大きくなったと判断できたときに、ヒータ寿命が近いと判断する。
【符号の説明】
【0041】
1 数値制御装置
11 CPU
13 揮発性メモリ
14 不揮発性メモリ
15,16 インタフェース
70 表示器/MDIユニット
80 センサ
101 データ取得部
102 特徴量算出部
103 特徴量出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9